説明

積層型圧電変換子

【課題】本発明は圧電変換子の大きさ、つまり底面積を一定にしたままで、感度低下を極力抑えることができる圧電変換子を提供することを目的とする。
【解決手段】第一導体3を二枚の圧電体で挟み込んでなる圧電素子Zを有し、前記二枚の圧電体の第一導体3に対向する表面同士を導通させるための第二導体4を備える積層型圧電変換子A。また、複数個の前記圧電素子Zが電気的に並列に接続され、且つそれらが積み重なった状態である積層型圧電変換子A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線の高温化または導線の延長に伴う浮遊容量の増加に起因する感度の低下を防止する圧電変換子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業プラント内や製造工場内に配備された装置の欠陥や破壊などを予知または発見するための各種のセンサとして、例えば圧電体のピエゾ効果を応用した圧電変換子が使用されている。
高温で稼働する機器、設備等で用いられる圧電変換子には、高温環境であっても安定した感度を示す高い耐熱性が要求されている。
【0003】
しかし、従来の圧電変換子に使用されていた圧電体には、強誘電体のバルク体が採用されているので、300℃程度が作動限界温度であった。従って、300℃以上の高温な環境下においても安定して作動する圧電変換子の開発が求められていた。
そして近年、窒化アルミニウムに代表されるような、極めて高温な800℃以上の環境下であっても使用可能な圧電体が開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−122948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、圧電変換子と測定装置を接続するために使用される導線は、800℃以上の高温で使用されると、その導線に内在する静電容量(いわゆる「浮遊容量」という)が急激に大きくなる傾向がある。その結果、周囲の温度が800℃以上の環境下で圧電変換子を作動させると、急激に感度が低下し、圧電変換子としての使用が不可能になるという問題があった。
【0005】
図1は、圧電変換子と導線との電気的な接続をモデル化して示した回路図である。なお、ここで圧電変換子が持つ静電容量をCc、導線に内在する浮遊容量をC、測定電圧、すなわち測定感度をVとする。
例えば圧電変換子が振動した場合、圧電変換子内部の圧電体の表面に電荷Qが発生する。しかし、圧電変換子と圧電変換子に接続されている導線に内在する浮遊容量とは電気的に並列に接続されていることと等価であるため、圧電変換子と浮遊容量とに加わる測定感度Vの大きさが等しくなるまで、電荷Qは圧電変換子と浮遊容量のそれぞれに移動する。
従って、圧電変換子には電荷Qが蓄積され、浮遊容量には電荷Qが蓄積され、その結果として以下の式が成立する。
【0006】


この式1と式2より

となる。
また、図2の導線の静電容量と温度の関係を示したグラフから分かるように、導線の浮遊容量Cは約800℃を越えたあたりの温度から急激に増大する。
すなわち、圧電変換子が持つ静電容量Cc及び圧電変換子内部の圧電体に発生した電荷Qが一定の場合、浮遊容量Cの急激な増加は測定感度Vの低下を意味する。従って、圧電変換子の感度はこの付近の温度で急激に低下することになる。
【0007】
上記問題を解決する手段の一つが、複数個の圧電体を同一平面上に配置させ、且つこれらの圧電体を電気的に並列に接続させた圧電変換子を用いることである。
すなわち、複数個の圧電体を圧電変換子に備えさせることで、該圧電変換子内部の圧電体の表面に発生する電荷Qを増加させることができる。
また同時に、これら圧電体は並列に接続されているので、圧電変換子の静電容量Ccも増加させることができる。
従って、圧電体の数を適宜選択することでCcをCに比べて十分に大きくすることができる。その結果、浮遊容量Cの増加が回路全体の静電容量の大きさCc+Cに与える影響を小さくすることができる。なおこのとき、発生電荷Qも増加しているため感度が低下することはない。
【0008】
ただしこの場合、圧電変換子自体の大きさが大きくなり、測定対象物体への配設が困難となる等の問題が生じる。
【0009】
また、浮遊容量が増加する別の原因として導線の延長もある。元々導線は単位長さあたり所定の浮遊容量を有しているため、導線の延長に伴い、導線に内在する浮遊容量の大きさも増大する。結果、所定の長さ以上の導線を用いた場合にも、圧電変換子の感度を低下させる問題があった。
【0010】
本発明は上記のような課題背景を基になされたものである。
即ち、圧電変換子の大きさ、つまり底面積を一定にしたままで、感度低下を極力抑えることができる圧電変換子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者はこのような課題背景を考慮し鋭意研究を重ねた結果、第一導体を二枚の圧電体で挟んでなる圧電素子を形成し、且つ該圧電素子の二枚の圧電体の第一導体の対向する表面同士を導通させるための第二導体を備える圧電変換子を用いることで、導線に内在する浮遊容量の増加による影響を極力小さくし、感度を低下させることなく振動等を測定できることを見出し、その知見に基づき本発明を完成させたものである。
【0012】
すなわち本発明は、(1)導線に接続された圧電変換子であって、第一導体を二枚の圧電体で挟み込んでなる圧電素子を有し、前記二枚の圧電体の第一導体に対向する表面同士を導通させるための第二導体を備える積層型圧電変換子に存する。
【0013】
また本発明は、(2)複数個の前記圧電素子が電気的に並列に接続され、且つそれらが積み重なった状態である上記(1)記載の積層型圧電変換子に存する。
【0014】
また本発明は、(3)第二導体が金属板である上記(1)記載の積層型圧電変換子に存する。
【0015】
また本発明は、(4)複数個の圧電素子が積み重ねられている上記(3)記載の積層型圧電変換子に存する。
【0016】
また本発明は、(5)圧電体が窒化アルミニウムである上記(1)記載の積層型圧電変換子に存する。
【0017】
また本発明は、(6)使用される温度が800℃以上である上記(1)記載の積層型圧電変換子に存する。
【0018】
また本発明は、(7)前記導線の長さが1m以上である上記(1)記載の積層型圧電変換子に存する。
なお本発明の目的に添ったものであれば上記各(1)〜(7)の発明を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る積層型圧電変換子は、第一導体を二枚の圧電体で挟み込んでなる圧電素子を有し、前記二枚の圧電体の第一導体に対向する表面同士を導通させるための第二導体を備えるので、その底面積を一定にしたまま、本発明に係る積層型圧電変換子の静電容量を二枚の圧電体の静電容量の和に増加させることができる。
その結果、導線の高温化や導線の延長に伴って浮遊容量が増加しても、感度を低下させることなく正確に振動等を測定することができる。
【0020】
また、複数個の圧電素子を電気的に並列に接続し、且つそれらの圧電素子を積み重ねることで、本発明に係る圧電変換子の底面積を一定の大きさに維持したまま、その静電容量を使用環境や測定対象に応じて自在に調節することができる。
【0021】
その結果、本発明に係る積層型圧電変換子は、同等の静電容量を持つ従来の圧電変換子に比して、測定対象物体への配設がより容易になる。また、本発明に係る積層型圧電変換子を配設可能な箇所が増加する利点もある。
【0022】
また、第二導体を金属板にした場合、圧電素子を積み重ねるだけで、圧電素子同士が電気的に並列に接続された状態となるので、本発明に係る積層型圧電変換子の静電容量をより簡便に増加させることができる。
さらに、第二導体を金属板とすることで、圧電素子を外部からの衝撃から守ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔第一の実施形態〕
本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。本実施形態に係る積層型圧電変換子は、それを構成する圧電体同士を導通させるための導体を備える特殊な構造であるので、上記積層型圧電変換子の底面積を一定の大きさに維持したまま、その静電容量を増加させることができる。
その結果、本実施形態に係る積層型圧電変換子に接続される導線に内在する浮遊容量が、該導線の高温化や延長が原因で増大した場合でも、本実施形態に係る積層型圧電変換子は、感度を低下させることなく測定対象物体の振動等を測定することができる。
【0024】
図3は、本実施形態に係る積層型圧電変換子の構造を模式的に示した説明図である。図3に示すように、本実施形態に係る積層型圧電変換子Aは、第一導体3を二枚の圧電体1及び圧電体2で挟んでなる圧電素子Zを有する。このとき、圧電体1及び圧電体2はそれぞれの分極方向が相対向するように配置される。
さらに、圧電体1及び圧電体2を導通させるための第二導体4を、圧電体1及び圧電体2の第一導体3と接触している面と対向する面に電気的に接続させて、圧電体1と圧電体2とを導通させる。
そして、電圧を測定するオシロスコープ等の測定器5を第二導体4と第一導体3に接続させ、第一導体3と第二導体4の間の電圧を測定することで測定対象物体の振動等を測定する。
【0025】
図4は、本実施形態の積層型圧電変換子と電気的に等価な回路図である。なお、図4において、静電容量C1を持つコンデンサーが圧電体1に相当し、且つ静電容量C2を持つコンデンサーが圧電体2に相当する。
図4に示すように、圧電体1と、圧電体2とを第二導体4を用いて導通させることで、二つの圧電体、すなわちコンデンサーが並列に接続されたことと等価な状態になる。
その結果、本実施形態に係る積層型圧電変換子の静電容量は圧電体1の静電容量C1と圧電体2の静電容量C2の和であるC1+C2になる。
【0026】
本実施形態に係る積層型圧電変換子は上記のような構造であるので、圧電素子Zを構成する圧電体1及び圧電体2に採用する材質の種類によって、その静電容量の大きさを自由に調節することができる。
従って、本実施形態に係る積層型圧電変換子が、浮遊容量が増大し始める約800℃以上の環境で使用される場合でも、上記積層型圧電変換子に用いられる圧電体を適切に選定することで、感度を極力低下させることなく測定対象物体の振動等を正確に測定することができる。
【0027】
また同様に、本実施形態に係る積層型圧電変換子に接続される導線の長さが、測定感度に影響を与える長さである1mを超える場合であっても、二枚の圧電体の材質を適切に選定することで、上記積層型圧電変換子の測定感度を低下させることなく測定対象物体の振動等を測定することができる。
【0028】
そして、圧電素子Zは圧電体1と圧電体2とが上下に積み重なった構造であるため、本実施形態に係る積層型圧電変換子の底面積を拡大させることなく、その静電容量を増加させることができる。
【0029】
圧電体1と圧電体2の材質は特に限定されるものではなく、適宜使用状況に応じて、その材料を変更することが可能である。例えば、800℃以上の環境で使用する場合には窒化アルミニウム等の耐熱圧電体を用いることが好ましい。
【0030】
第一導体3として採用される材質は特に限定されるものではなく、例えば高温環境下において使用されることを想定すると、白金、ロジウム等の貴金属ならびにそれらの合金、インコネルに代表されるニッケル基超合金をはじめとする耐熱合金、シリコン、シリコンカーバイド等の材料が採用可能である。
【0031】
第二導体4として採用される材質は、二つの圧電体を導通させることができる材質であれば特に限定されるものではなく、上記同様に高温環境下での使用が想定される場合は、白金、インコネル等が採用される。
【0032】
〔第二の実施形態〕
また、複数個の圧電素子Zを電気的に並列に接続させ、それらの圧電素子Zを積み重ねることで、静電容量の大きさを更に増加させることができる。その結果、本実施形態に係る積層型圧電変換子の感度の低下は、より確実に防止される。
【0033】
図5は、複数個(図面では二個)の圧電素子を電気的に並列に接続する方法を模式的に示した説明図である。図5に示すように、圧電素子Z1と圧電素子Z2とを積み重ね、第二導体41と第二導体42とを電気的に接続させ、第一導体31と第一導体32とを導通させることで、圧電素子Z1と圧電素子Z2とは電気的に並列に接続される。
【0034】
これにより、図6に示すように、本実施形態に係る積層型圧電変換子は4つのコンデンサーが並列接続された回路と等価になる。すなわち、本実施形態に係る積層型圧電変換子の静電容量Cは下記式4に示される通り、圧電体11の静電容量C11と、圧電体21の静電容量C21と、圧電体12の静電容量C12と、圧電体22の静電容量C22との和になる。
C=C11+C21+C12+C22(式4)
同様に、積み重ねる圧電素子の数を増やすことで、本実施形態に係る積層型圧電変換子の静電容量を更に増加させることができる。
【0035】
〔第三の実施形態〕
図7は、第二導体に金属板を用いた積層型圧電変換子を模式的に示す説明図である。
図7に示す通り、第二導体4として圧電素子Zと同じ幅の屈曲した金属板を用い、該金属板を圧電体1及び圧電体2の第一導体3と接触している面と対向する面に接合させることで、圧電素子Zの周囲を金属板で覆うことができる。
その結果、圧電素子Zは金属板によって外部から加わる衝撃から守られる。
【0036】
図8は、第二導体に金属板を用いた積層型圧電変換子を、複数個(図面では二個)電気的に並列に接続させた様子を示す模式図である。図8に示すように、第二導体に金属板を用いた圧電素子Z1と、第二導体に金属板を用いた圧電素子Z2とを積み重ねるだけで、両圧電素子は電気的に並列に接続される。
従って、予め第二導体に金属板を用いた静電容量が異なる圧電素子を、複数個作成することで、本実施形態に係る積層型圧電変換子の静電容量を状況に応じて自由に、且つ容易に調節することが可能となる。
【0037】
〔実施例1〕
次に、本発明の積層型圧電変換子の高温環境下における性能を証明するための試験を行い、その結果を示す。
図9は、実験装置の横からの状態を模式的に示す説明図である。図9に示すように、本実験装置は試験対象である積層型圧電変換子50と、振動を発生させるための加振センサ51とで、加振センサ51が発生させた振動を間接的に圧電変換子に伝えるためのアルミナ板Xを挟み込み一体化させたものである。
積層型圧電変換子50と発生した電圧を測定するためのオシロスコープ52とを耐熱同軸ケーブル(0.5m)で接続し、また加振センサ51に振動を発生させるための発信器53を同軸ケーブルで接続した。
耐熱同軸ケーブル接続後、積層型圧電変換子50及び加振センサ51を任意の温度環境を作ることができる図示しない電気炉内に配設した。
【0038】
図10は、本試験に用いた圧電変換子の構造を模式的に示す説明図である。図10に示すように、Si基板63上に窒化アルミニウム製の圧電体61(静電容量:210pF)を形成し、Si基板の表面のうち圧電体61が形成された面と反対側の面に白金製で薄膜状の電極65をSi基板63の縁から延出するように形成した。
また、同様にSi基板64上に窒化アルミニウム製の圧電体62(静電容量:200pF)を形成し、Si基板の表面のうち圧電体62が形成された面と反対側の面に白金製で薄膜状の電極66をSi基板64上に形成した。なお、圧電体61と圧電体62の底面積は同一にした。
【0039】
そして、圧電体61と圧電体62とで白金製の第一導体60を挟み込んで接合した。Si基板63よりも底面積が大きいアルミナ板Xを、Si基板63の電極65が接合されている側の面に接合した。このとき、第一導体65も併せてアルミナ板Xに接合した。
【0040】
第二導体として耐熱性の導線を用い、電極65と電極66を接続することで、圧電体61と圧電体62を導通させ、該導線とオシロスコープ52とを耐熱同軸ケーブルで接続した。また、電極60とオシロスコープ52を耐熱同軸ケーブルで接続した。
【0041】
図11は、加振センサの構造を模式的に示す説明図である。図11に示すように、Si基板70上に窒化アルミニウム製の圧電体71(静電容量:200pF)を形成し、該圧電体71の上に圧電体71と同じ底面積を持つ白金製の電極72を接合する。また、Si基板の表面のうち圧電体71と対向する面に白金製で薄膜状の電極73を接合する。
Si基板70よりも底面積が大きいアルミナ板XにSi基板70を接合した。このとき電極73も併せてアルミナ板Xに接合した。
【0042】
次に試験方法について述べる。電気炉内部の温度を100℃に設定し、電気炉内部の温度が定値に達したことを確認後、圧電変換子及び加振センサを電気炉内に挿入した。
そして、発信器から200kHzの電圧信号を加振センサ対して発信し、加振センサに振動を発生させた。加振センサが発生させた振動がアルミナ板を通して圧電変換子に伝え、圧電変換子に電圧を発生させた。その発生させた電圧をオシロスコープで検出し、その結果を記録した。試験結果を表1に示した。
【0043】
〔実施例2〕
電気炉内の温度を200℃としたこと以外は全て実施例1と同様の手順で行った。その結果及び実施例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表1に示す。
【0044】
〔実施例3〕
電気炉内の温度を300℃としたこと以外は全て実施例1と同様の手順で行った。その結果及び実施例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表1に示す。
【0045】
〔実施例4〕
電気炉内の温度を400℃としたこと以外は全て実施例1と同様の手順で行った。その結果及び実施例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表1に示す。
【0046】
〔実施例5〕
電気炉内の温度を500℃としたこと以外は全て実施例1と同様の手順で行った。その結果及び実施例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表1に示す。
【0047】
〔実施例6〕
電気炉内の温度を600℃としたこと以外は全て実施例1と同様の手順で行った。その結果及び実施例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表1に示す。
【0048】
〔実施例7〕
電気炉内の温度を700℃としたこと以外は全て実施例1と同様の手順で行った。その結果及び実施例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表1に示す。
【0049】
〔実施例8〕
電気炉内の温度を800℃としたこと以外は全て実施例1と同様の手順で行った。その結果及び実施例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表1に示す。
【0050】
〔実施例9〕
電気炉内の温度を900℃としたこと以外は全て実施例1と同様の手順で行った。その結果及び実施例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表1に示す。
【0051】
〔実施例10〕
電気炉内の温度を1000℃としたこと以外は全て実施例1と同様の手順で行った。その結果及び実施例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表1に示す。
【0052】
〔比較例1〕
加振センサと同一の構造で、且つ実施例1で使用した圧電体と同じ底面積の圧電体を用いて作成した従来の圧電変換子100を、圧電変換子50の代わりに用い、実施例1と同一の試験を行った(図12参照)。その試験結果を表2に実施例1と比較して示す。
【0053】
〔比較例2〕
電気炉内の温度を200℃としたこと以外は全て比較例1と同様の手順で行った。その結果及び比較例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表2に示す。
【0054】
〔比較例3〕
電気炉内の温度を300℃としたこと以外は全て比較例1と同様の手順で行った。その結果及び比較例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表2に示す。
【0055】
〔比較例4〕
電気炉内の温度を400℃としたこと以外は全て比較例1と同様の手順で行った。その結果及び比較例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表2に示す。
【0056】
〔比較例5〕
電気炉内の温度を500℃としたこと以外は全て比較例1と同様の手順で行った。その結果及び比較例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表2に示す。
【0057】
〔比較例6〕
電気炉内の温度を600℃としたこと以外は全て比較例1と同様の手順で行った。その結果及び比較例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表2に示す。
【0058】
〔比較例7〕
電気炉内の温度を700℃としたこと以外は全て比較例1と同様の手順で行った。その結果及び比較例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表2に示す。
【0059】
〔比較例8〕
電気炉内の温度を800℃としたこと以外は全て比較例1と同様の手順で行った。その結果及び比較例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表2に示す。
【0060】
〔比較例9〕
電気炉内の温度を900℃としたこと以外は全て比較例1と同様の手順で行った。その結果及び比較例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表2に示す。
【0061】
〔比較例10〕
電気炉内の温度を1000℃としたこと以外は全て比較例1と同様の手順で行った。その結果及び比較例1で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表2に示す。
【0062】
〔表1〕

【0063】
〔表2〕

【0064】
表1及び表2から分かるように、実施例では電気炉内の温度が同軸ケーブルの浮遊容量が急増する温度である800℃のときの電圧の減衰率は8.90%である。一方、比較例の場合、電気炉内の温度が800℃になると電圧の減衰率は30.1%となる。
また、実施例において電気炉内の温度が1000℃のときの減衰率が54.2%であるのに対し、比較例の場合の減衰率は79.4%である。
以上のことより、本発明の圧電変換子は同軸ケーブルの浮遊容量が増大する高温下であっても感度を低下させることなく正確に測定することが可能であることが分かる。
【0065】
〔実施例11〕
実施例1で、圧電変換子とオシロスコープとを接続する同軸ケーブルの長さを変化させて測定試験を行う。
実施例1と同一の実験装置を用い、圧電変換子50とオシロスコープ52とを接続する同軸ケーブルの長さを0.40mとし、電気炉内部の温度を25℃としたこと以外は全て実施例1と同様の手順で行った。その試験結果を表3に示す。
【0066】
〔実施例12〕
同軸ケーブルの長さを1.5mとしたこと以外は全て実施例11と同様の手順で行った。その試験結果及び実施例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表3に示す。
【0067】
〔実施例13〕
同軸ケーブルの長さを2.9mとしたこと以外は全て実施例11と同様の手順で行った。その試験結果及び実施例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表3に示す。
【0068】
〔実施例14〕
同軸ケーブルの長さを5.7mとしたこと以外は全て実施例11と同様の手順で行った。その試験結果及び実施例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表3に示す。
【0069】
〔実施例15〕
同軸ケーブルの長さを12mとしたこと以外は全て実施例11と同様の手順で行った。その試験結果及び実施例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表3に示す。
【0070】
〔実施例16〕
同軸ケーブルの長さを25mとしたこと以外は全て実施例11と同様の手順で行った。その試験結果及び実施例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表3に示す。
【0071】
〔実施例17〕
同軸ケーブルの長さを53mとしたこと以外は全て実施例11と同様の手順で行った。その試験結果及び実施例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表3に示す。
【0072】
〔比較例11〕
比較例1で用いた従来の圧電型の圧電センサ用いたこと以外は全て実施例11と同様の手順で行った。その試験結果を表4に示す。
【0073】
〔比較例12〕
同軸ケーブルの長さを1.5mとしたこと以外は全て比較例11と同様の手順で行った。その試験結果及び比較例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表4に示す。
【0074】
〔比較例13〕
同軸ケーブルの長さを2.9mとしたこと以外は全て比較例11と同様の手順で行った。その試験結果及び比較例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表4に示す。
【0075】
〔比較例14〕
同軸ケーブルの長さを5.7mとしたこと以外は全て比較例11と同様の手順で行った。その試験結果及び比較例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表4に示す。
【0076】
〔比較例15〕
同軸ケーブルの長さを12mとしたこと以外は全て比較例11と同様の手順で行った。その試験結果及び比較例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表4に示す。
【0077】
〔比較例16〕
同軸ケーブルの長さを25mとしたこと以外は全て比較例11と同様の手順で行った。その試験結果及び比較例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表4に示す。
【0078】
〔比較例17〕
同軸ケーブルの長さを53mとしたこと以外は全て比較例11と同様の手順で行った。その試験結果及び比較例11で示した電圧を基準とした電圧の減衰率を表4に示す。
【0079】
〔表3〕

【0080】
〔表4〕

表3及び表4から分かるように、本発明の圧電変換子は、接続される同軸ケーブルの長さが長くなったとしても、その感度を極力低下させることなく測定可能である。
【0081】
以上、本発明について説明したが、本発明はその目的を逸脱しない範囲で、これらの形態に囚われることなく、自由に実施の形態を変えても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、圧電変換子と同軸ケーブルとの電気的な接続を示した回路図である。
【図2】図2は、同軸ケーブルの静電容量と温度の関係を示したグラフである。
【図3】図3は、本発明の構造を示した模式図である。
【図4】図4は、本発明の圧電変換子と等価な回路図である。
【図5】図5は、複数個の圧電素子を電気的に並列に接続する方法を示した模式図である。
【図6】図6は、複数個の圧電素子を電気的に並列に接続した場合と等価な回路図である。
【図7】図7は、第二導体に金属板を用いた積層型圧電変換子を模式的に示す説明図である。
【図8】図8は、第二導体に金属板を用いた圧電素子を複数個並列に接続させた様子を示す模式図である。
【図9】図9は、実施例で使用した実験装置を模式的に示す説明図である。
【図10】図10は、本試験に用いた圧電変換子の構造を模式的に示す説明図である。
【図11】図11は、加振センサの構造を模式的に示す説明図である。
【図12】図12は、比較例で使用した実験装置を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1 圧電体
2 圧電体
3 第一導体
31 第一導体
32 第一導体
4 第二導体
41 第二導体
42 第二導体
5 測定器
50 積層型圧電変換子
51 加振センサ
52 オシロスコープ
53 発信器
60 第一導体
61 圧電体
62 圧電体
63 Si基板
64 Si基板
65 電極
66 電極
70 Si基板
71 圧電体
72 電極
73 電極
X アルミナ板
Z 圧電素子
Z1 圧電素子
Z2 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線に接続された圧電変換子であって、第一導体を二枚の圧電体で挟み込んでなる圧電素子を有し、前記二枚の圧電体の第一導体に対向する表面同士を導通させるための第二導体を備えることを特徴とする積層型圧電変換子。
【請求項2】
複数個の前記圧電素子が電気的に並列に接続され、且つそれらが積み重なった状態であることを特徴とする請求項1記載の積層型圧電変換子。
【請求項3】
第二導体が金属板であることを特徴とする請求項1記載の積層型圧電変換子。
【請求項4】
複数個の圧電素子が積み重ねられていることを特徴とする請求項3記載の積層型圧電変換子。
【請求項5】
圧電体が窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項1記載の積層型圧電変換子。
【請求項6】
使用される温度が800℃以上であることを特徴とする請求項1記載の積層型圧電変換子。
【請求項7】
前記導線の長さが1m以上であることを特徴とする請求項1記載の積層型圧電変換子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−311481(P2007−311481A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137881(P2006−137881)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】