説明

積層型電子部品の製造方法

【課題】切断ズレや積層ズレを容易に検出することが可能であり、しかも、湿式研磨時やメッキ時の不都合が生じない積層型電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】切断マークM1が、第1切断予定線30xの線幅W2に収まらない第1突出部分32と、第2切断予定線30yに収まらない第2突出部分34とを有し、第1突出部分32が、第2切断予定線30yの線幅W2内に収まり、且つ、第2突出部分34が第1切断予定線30xの線幅W2内に収まるマーク形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品は、たとえば以下のようにして製造される。すなわち、可撓性支持体上にドクターブレード法により、セラミック塗料を用いてグリーンシートを形成し、その上に、電極パターンをスクリーン印刷により形成する。セラミック塗料は、セラミック粉、有機バインダー、可塑剤、溶剤等を含む。電極パターンを形成するための電極ペーストは、パラジウム、銀、ニッケル等の導電性粉末を含む。
【0003】
電極パターンが形成されたグリーンシートは、所定の枚数で積層された後に、プレスされ、切断工程を経てセラミックグリーンチップを得る。セラミックグリーンチップは、脱バインダ処理および焼成処理されてセラミック焼結体となり、端子電極が形成され、積層セラミック電子部品が完成する。
【0004】
ところが、グリーンシートを積層する際や、グリーンシートの積層体を切断する際に、積層ズレや切断ズレが発生すると、ショート不良などの原因となる。このために、積層ズレや切断ズレを防止する方法が望まれている。たとえば下記の特許文献1では、積層ズレや切断ズレを防止するために、積層体における切断予定線の交差部に、切断マークを形成している。切断マークは、たとえば電極パターンを形成するための電極ペーストで形成されることが多い。
【0005】
しかしながら、従来の切断マークでは、切断マークに沿って設計通りに切断された場合でも、切断後のグリーンチップには、切断マークが残ることになる。その後に、グリーンチップの角部に丸みを持たせるためのバレル研磨などの湿式研磨を行うことがあるが、その時に、切断マークからなる電極ペースト部分のために、グリーンチップを均一に研磨することができないなどの不都合がある。
【0006】
また、グリーンチップを焼成後に端子電極を形成するが、そのためのメッキ処理時に、切断マークからなる電極部分から、メッキ液がチップ内に浸入し、チップの割れやショート不良などを引き起こすおそれがある。
【特許文献1】特開平6−314630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、切断ズレや積層ズレを容易に検出することが可能であり、しかも、湿式研磨時やメッキ時の不都合が生じない積層型電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層型電子部品の製造方法は、
内部電極パターンがそれぞれ形成された複数のグリーンシートを準備する工程と、
前記グリーンシートに、前記内部電極パターンと共に、第1切断予定線および第2切断予定線の交差部に、切断マークを形成する工程と、
前記内部電極パターンおよび切断マークが形成してあるグリーンシートを積層して積層体を得る工程と、
前記第1切断予定線および第2切断予定線に沿って前記積層体を切断する工程と、を有する積層型電子部品の製造方法であって、
前記切断マークが、前記第1切断予定線および前記第2切断予定線の双方に切断ズレが生じない場合には、切断後のチップに前記切断マークが残らず、
前記切断マークが、前記第1切断予定線または前記第2切断予定線のいずれか/もしくは両方に切断ずれが生じた場合に、切断後のチップに前記切断マークが残ることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る方法では、設計通りにグリーンシートが積層され、しかも設計通りに切断されると、切断後に得られる良品のグリーンチップには、切断マークは残らない。したがって、良品のグリーンチップを湿式研磨する際には、電極ペーストからなる切断マークがないために、グリーンチップを均一に研磨することができる。また、グリーンチップを焼成後に端子電極を形成する際に、メッキ処理時に、切断マークからなる電極部分から、メッキ液がチップ内に浸入することもない。
【0010】
また、設計通りにグリーンシートが積層されなかった場合や、設計通りに切断されなかった場合には、切断後に得られる不良品のグリーンチップには、切断マークが残ってしまう。たとえば第1切断予定線がずれなくても、他の第2切断予定線のいずれかに沿ってずれて切断された場合には、切断マークは切断後のチップに残ってしまう。また、その逆でも、切断マークは、切断後のチップに残ってしまう。そのために、グリーンチップの外観検査を行うことで、グリーンチップの積層不良や切断不良を容易且つ簡便に検出することができる。
【0011】
好ましくは、前記切断マークが、前記第1切断予定線の線幅に収まらない第1突出部分と、前記第2切断予定線に収まらない第2突出部分とを有し、
前記第1突出部分が、前記第2切断予定線の線幅内に収まり、且つ、前記第2突出部分が前記第1切断予定線の線幅内に収まるマーク形状を有することを特徴とする。
好ましくは、前記切断マークにおける前記第1突出部分の線幅が、前記第2切断予定線の線幅以下の寸法であり、前記第2突出部分の線幅が、前記第1切断予定線の線幅以下の寸法である。そのような関係にあるときに、設計通りにグリーンシートが積層され、しかも設計通りに切断されると、切断後に得られる良品のグリーンチップには、切断マークは残らない。
あるいは、切断マークが、前記第1切断予定線および第2切断予定線の交差部の範囲内に収まるマーク形状であっても良い。この場合には、第1切断予定線および第2切断予定線の両方に切断ズレが生じた場合にのみ、切断後のチップには、切断マークが残ることになる。
【0012】
好ましくは、前記第1切断予定線および第2切断予定線の交差部に形成される切断マークが、十字形状である。十字形状のマークは、作製しやすいと共に見やすく、積層ズレや切断ズレを効果的に防止することができる。
【0013】
あるいは、前記第1切断予定線および第2切断予定線の交差部に形成される切断マークが、円形状であり、その円形状の直径が、前記第1切断予定線および第2切断予定線の線幅よりも大きく、且つ、当該線幅の√2の寸法と同等以下の寸法であっても良い。このような切断マークであっても、十字形状のマークと同様な作用効果を奏する。また、切断マークは、菱形であってもよい。
【0014】
好ましくは、前記第1切断予定線および第2切断予定線の交差部に形成される切断マークが、他の交差部に形成される切断マークに対して、前記第1切断予定線および第2切断予定線の線幅以下の線幅の連絡マークにより接続してある。交差部に位置する切断マーク同士が連絡マークにより接続されることで、切断マークが見やすくなり、積層ズレや切断ズレを効果的に防止することができる。また、積層ズレや切断ズレが生じた場合には、交差部に位置する切断マークのみでなく、連絡マークも、切断後のチップの外面に現れるので、不良をより容易に検出することができる。
【0015】
好ましくは、前記切断マークは、前記内部電極パターンを横切らない前記第1切断予定線および第2切断予定線の交差部に形成される。また、前記切断マークは、前記内部電極パターンを横切らない前記第1切断予定線と、前記内部電極パターンを横切る前記第2切断予定線との交差部にも形成されてもよい。これらの切断予定線の交差部に、切断マークを形成することで、切断マークが見やすくなり、積層ズレや切断ズレを効果的に防止することができる。また、積層ズレや切断ズレが生じた場合には、交差部に位置する切断マークが、積層されるグリーンシートの全ての層に現れるので、不良をより容易に検出することができる。
【0016】
好ましくは、前記切断マークは、前記内部電極パターンと同じ手段により同時に形成される。切断マークの形成が容易になる。好ましくは、前記積層体を切断した後に形成されるチップを湿式研磨する工程をさらに有する。本発明の方法では、湿式研磨時に、良品のグリーンチップには切断マークが残らないので、それに基づく不都合も防止することができる。
【0017】
前記切断予定線の線幅は、切断方法にもよるが、切断刃により切断する際に、切断刃の厚みに対応する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る方法により製造される積層セラミックコンデンサの概略断面図、
図2は図1に示す積層セラミックコンデンサを製造する過程で得られるグリーン積層体の斜視図、
図3は図2に示すグリーン積層体の要部断面図、
図4Aはグリーンシートに付される電極パターンおよび切断マークの一例を示すグリーンシートの平面図、
図4Bは積層される他のグリーンシートに付される電極パターンおよび切断マークの一例を示すグリーンシートの平面図、
図5は切断予定線と切断マークとの関係を示す平面図、
図6は図5の要部拡大平面図、
図7は設計通りに切断された場合における良品のグリーンチップの斜視図、
図8は設計通りではなく切断マークからずれて切断された場合における切断予定線と切断マークとの関係を示す平面図、
図9は図8に示すIX部において切断された切断ズレを持つ不良品のグリーンチップの斜視図、
図10は図8に示すX部において切断された切断ズレを持つ不良品のグリーンチップの斜視図、
図11Aは本発明の他の実施形態に係るグリーンシートに付される電極パターンおよび切断マークの一例を示すグリーンシートの平面図、
図11Bは積層される他のグリーンシートに付される電極パターンおよび切断マークの一例を示すグリーンシートの平面図、
図12は切断予定線と切断マークとの関係を示す平面図、
図13は本発明の他の実施形態に係る切断予定線と切断マークとの関係を示す平面図である。
第1実施形態
【0019】
まず、本発明の実施形態に係る方法により製造される積層型電子部品の一実施形態として、積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、第1内部電極層12および第2内部電極層13を有し、第1内側誘電体層10および第2内側誘電体層11の間に、これらの内部電極層12,13が交互に積層してある。
【0021】
コンデンサ素体4は、その積層方向の両端面に、外側誘電体層14を有する。交互に積層される一方の第1内部電極層12は、コンデンサ素体4の第1端部の外側に形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の第2内部電極層13は、コンデンサ素体4の第2端部の外側に形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
【0022】
第1および第2内側誘電体層10,11および外側誘電体層14の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。各内側誘電体層10,11の厚みは、特に限定されないが、数μm〜数十μmのものが一般的である。また、外側誘電体層14からなる外層部の厚みは、特に限定されないが、好ましくは10〜200μmの範囲である。
【0023】
端子電極6および8の材質も特に限定されないが、通常、Ni,Pd,Ag,Au,Cu,Pt,Rh,Ru,Ir等の少なくとも1種、又はそれらの合金を用いることができる。通常は、Cu,Cu合金、Ni又はNi合金等や、Ag,Ag−Pd合金、In−Ga合金等が使用される。端子電極6および8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
【0024】
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.2〜5.7mm)×横(0.1〜5.0mm)×厚み(0.1〜3.2mm)程度である。
次に、本発明の一実施形態としての積層セラミックコンデンサ2の製造方法について説明する。
【0025】
まず、図2に示すグリーン積層体4aを形成する。このグリーン積層体4aを形成するために、図3に示すように、第1内部電極パターン12aが形成された第1グリーンシート10aと、第2内部電極パターン13aが形成された第2グリーンシート11aとを交互に積層し、グリーン積層体4aを形成する。
【0026】
グリーンシート10a,11aを形成するための誘電体用ペーストは、通常、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。本実施形態では、これらのペーストは、有機溶剤系ペーストであることが好ましい。
【0027】
なお、有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。
【0028】
内部電極パターン12a,13aを形成するための内部電極用ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。なお、内部電極用ペーストには、必要に応じて、共材としてセラミック粉末が含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。
【0029】
グリーンシート10a,11aは、上記の誘電体用ペーストを用いたドクターブレード法などで形成される。また、グリーンシート10a,11aの各表面に内部電極パターン12a,13aを形成するには、上記の内部電極用ペーストを用いてスクリーン印刷などを行えばよい。
【0030】
グリーン積層体4aにおける第1グリーンシート10aは、最終的には図1に示す第1内側誘電体層10となる部分であり、第2グリーンシート11aは、最終的には図1に示す第2内側誘電体層11となる部分である。また、第1内部電極パターン12aは、最終的には図1に示す第1内部電極層12となる部分であり、第2内部電極パターン13aは、最終的には図1に示す第2内部電極層13となる部分である。
【0031】
図3では、図示の容易化のために、グリーン積層体4aにおける内部電極層12aおよび13aの積層数を少なく図示してあるが、数層から数百層と自由に設定することができる。
【0032】
なお、図2および図3に示すように、グリーン積層体4aにおける積層方向Zの両端部には、外側誘電体層14となるべきグリーンシート14aが積層してある。グリーン積層体4aにおける積層方向Zの厚みは、焼成後において、図1に示すコンデンサ素体4の厚みに対応する。
【0033】
図2および図3に示すように、グリーン積層体4aにおいて、第1内部電極パターン12aと第2内部電極パターン13aとは、パターン12a,13aの長手方向X(以下、X軸とも言う)に沿って、半パターンずらしてある直線の繰り返しパターンである。
【0034】
また、パターン12a,13aの長手方向Xと積層方向Z(以下、Z軸とも言う)との双方に垂直であるグリーン積層体4aの長手方向Y(以下、Y軸とも言う)に沿って見れば、第1内部電極パターン12aと第2内部電極パターン13aとは、同じピッチ長さの分離した直線パターンである。
【0035】
なお、図2に示すように、これらの第1内部電極パターン12aおよび第2内部電極パターン13aは、グリーン積層体4aのY軸に沿って両端位置には形成されない領域が存在し、その領域が端部切り捨て部分26となる。
【0036】
本実施形態では、グリーン積層体4aは、図2および図3に示す切断予定線30に沿って切断される。図5に示すように、グリーン積層体4aのX−Y平面から見て、切断予定線30は、X軸に平行な第1切断予定線30xと、Y軸に平行な第2切断予定線30yとから成り、マトリックス状に形成され、切断予定線30(30x,30y)に沿って分割後には、グリーンチップ4bとなる。
【0037】
図4A、図4Bおよび図5に示すように、グリーン積層体4aのX−Y平面から見て正確な位置で切断予定線30を形成するために、グリーンシート10aおよび11aには、内部電極パターン12aまたは13aと共に、切断マークM1が所定位置に形成してある。これらの切断マークM1は、内部電極パターン12aまたは13aを印刷法により形成される際に、同じ電極ペーストを用いて印刷法により同時に形成することができる。
【0038】
これらの切断マークM1は、この実施形態では、十字形状であり、第1切断予定線30xと第2切断予定線30yとの交差部に形成してある。これらの切断マークM1は、グリーンシート14a自体にも形成しても良い。
【0039】
図6に示すように、切断マークM1は、第1切断予定線30xの線幅W2に収まらない第1突出部分32と、第2切断予定線30yに収まらない第2突出部分34とを有する十字形である。しかも、第1突出部分32が、第2切断予定線30yの線幅内W2に収まり、且つ、第2突出部分34が第1切断予定線30xの線幅W2内に収まる十字形の切断マークM1である。なお、切断予定線30xおよび30yの線幅W2は、切断具40の厚みW2aに対応する幅であり、切断具40の厚みW2aと同等以上の線幅である。ただし、切断マークM1の幅は、切断具40の厚みW2aよりも狭い。
【0040】
これらの切断予定線30xおよび30yの線幅W2は、電極パターン12a(13aも同様であり、以下省略する)相互間の幅W4よりも小さい。これらの切断予定線30xおよび30yに沿って切断するための切断具40としては、特に限定されず、たとえば回転刃が例示されるが、必ずしも機械的な切断具である必要はなく、レーザ光などのエネルギー光による切断であっても良い。
【0041】
これらの切断マークM1自体の線幅W1は、第1突出部分32の線幅および第2突出部分34の線幅と同様であるが、切断予定線30xおよび30yの線幅W2と同等以下の線幅である。この実施形態では、十字形の切断マークM1自体の代表長さW3は、電極パターン12a相互間の幅W4よりも小さく設計してあるが、必ずしも小さくする必要はない。たとえば、各十字形の切断マークM1は、連絡マークMbにより相互に接続してあっても良い。連絡マークMbの線幅は、切断マークM1自体の線幅W1と同等以下が好ましい。
【0042】
これらの切断マークM1は、電極パターン12aを横切らない第1切断予定線30xおよび第2切断予定線30yの交差部に形成されると共に、電極パターン12aを横切らない第1切断予定線30xと電極パターン12aを横切る第2切断予定線30yとの交差部にも形成されてもよい。これらの切断予定線30x,30yの交差部に、切断マークM1を形成することで、切断マークM1が見やすくなり、積層ズレや切断ズレを効果的に防止することができる。また、積層ズレや切断ズレが生じた場合には、交差部に位置する切断マークM1が、積層されるグリーンシート10a,11aの全ての層に現れるので、不良をより容易に検出することができる。
【0043】
このような切断マークM1が付されたグリーン積層体4aは、切断予定線30(30x,30y)に沿って、たとえば回転刃などの切断具40で切断され、個々のグリーンチップ4bとなる。図7に示すように、切断ズレがない場合には、内部電極パターン12aおよび13aは、グリーンチップ4bの内部に、X,YおよびZ方向に整然と対称形状に配置される。
【0044】
しかしながら、たとえば図8のIX部に示すように、実際の第1切断線30xaは、切断マークM1に沿って形成されたが、第2切断線30yaが切断マークM1からずれて形成されたとする。仮に切断マークM1が無い場合には、図7に示すように、正常に切断されたグリーンチップ4bと区別が付かない。
【0045】
本実施形態では、第2切断線30yaが切断マークM1からずれて形成されると、図8に示すマークM1における第1突出部分32がチップ4bの切断面に残り、図9に示すように、マークM1が露出する。
【0046】
また、たとえば図8のX部に示すように、実際の第2切断線30yaは、切断マークM1に沿って形成されたが、第1切断線30xaが切断マークM1からずれて形成されたとする。その場合には、図8に示すマークM1における第2突出部分34がチップ4bの切断面に残り、図10に示すように、マークM1が露出する。
【0047】
本実施形態では、マークM1が露出してしまったグリーンチップ4bは、容易に判別することができ、良品のグリーンチップ4bのみに、脱バインダ処理および焼成処理を施し、焼結体チップを得る。脱バインダ処理および焼成処理の諸条件は特に限定されないが、焼成温度としては、たとえば1000〜1400°Cである。
【0048】
その後に、焼結体チップに、図1に示す第1および第2端子電極6および8となる電極ペーストを塗布し、焼き付け処理を行う。焼き付け処理時の温度条件などは、特に限定されない。
【0049】
本実施形態に係る方法では、設計通りにグリーンシート10a,11aが積層され、しかも設計通りに切断されると、切断後に得られる良品のグリーンチップ4bには、切断マークM1は残らない。したがって、良品のグリーンチップ4bを湿式研磨する際には、電極ペーストからなる切断マークM1がないために、グリーンチップ4bを均一に研磨することができる。また、グリーンチップ4bを焼成後に端子電極を形成する際に、メッキ処理時に、切断マークM1からなる電極部分から、メッキ液がチップ内に浸入することもない。
【0050】
また、設計通りにグリーンシートが積層されなかった場合や、設計通りに切断されなかった場合には、上述したように、切断後に得られる不良品のグリーンチップには、切断マークM1が残ってしまう。そのために、グリーンチップ4bの外観検査を行うことで、グリーンチップ4bの積層不良や切断不良を容易且つ簡便に検出することができる。
第2実施形態
【0051】
図11A,図11Bおよび図12に示すように、本実施形態の方法では、第1切断予定線30xと第2切断予定線30yとの交差部に形成される切断マークM2が、円形状である。その円形状のマークM2の直径W3aは、第1切断予定線30xおよび第2切断予定線30yの線幅W2よりも大きく、且つ、当該線幅W2の√2の寸法と同等以下の寸法である。
【0052】
ただし、この円形状のマークM2でも、第1切断予定線30xの線幅W2に収まらない第1突出部分32と、第2切断予定線30yに収まらない第2突出部分34とを有する。このような切断マークM2であっても、十字形状のマークM1と同様な作用効果を奏する。
【0053】
また、図13に示すように、切断マークM3は、菱形であってもよい。その場合においても、切断マークM3は、第1切断予定線30xの線幅W2に収まらない第1突出部分32と、第2切断予定線30yに収まらない第2突出部分34とを有する。菱形の切断マークM3の代表長さW3bは、第1実施形態における十字形の切断マークM1における代表長さW3と同程度以下であることが好ましい。このような切断マークM3であっても、十字形状のマークM1と同様な作用効果を奏する。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0055】
たとえば、切断マークは、第1切断予定線30xおよび第2切断予定線30yの交差部の範囲内に収まるマーク形状であっても良い。すなわち、切断マークの線幅が、第1切断予定線30xおよび第2切断予定線30yの線幅と同等以下であり、マーク自体が、交差部の範囲内から突出する部分を、必ずしも持たなくても良い。この場合には、第1切断予定線および第2切断予定線の両方に切断ズレが生じた場合にのみ、切断後のチップには、切断マークが残ることになる。
また、本発明の方法は、積層セラミックコンデンサに限らず、その他の電子部品に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る方法により製造される積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【図2】図2は図1に示す積層セラミックコンデンサを製造する過程で得られるグリーン積層体の斜視図である。
【図3】図3は図2に示すグリーン積層体の要部断面図である。
【図4A】図4Aはグリーンシートに付される電極パターンおよび切断マークの一例を示すグリーンシートの平面図である。
【図4B】図4Bは積層される他のグリーンシートに付される電極パターンおよび切断マークの一例を示すグリーンシートの平面図である。
【図5】図5は切断予定線と切断マークとの関係を示す平面図である。
【図6】図6は図5の要部拡大平面図である。
【図7】図7は設計通りに切断された場合における良品のグリーンチップの斜視図である。
【図8】図8は設計通りではなく切断マークからずれて切断された場合における切断予定線と切断マークとの関係を示す平面図である。
【図9】図9は図8に示すIX部において切断された切断ズレを持つ不良品のグリーンチップの斜視図である。
【図10】図10は図8に示すX部において切断された切断ズレを持つ不良品のグリーンチップの斜視図である。
【図11A】図11Aは本発明の他の実施形態に係るグリーンシートに付される電極パターンおよび切断マークの一例を示すグリーンシートの平面図である。
【図11B】図11Bは積層される他のグリーンシートに付される電極パターンおよび切断マークの一例を示すグリーンシートの平面図である。
【図12】図12は切断予定線と切断マークとの関係を示す平面図である。
【図13】図13は本発明の他の実施形態に係る切断予定線と切断マークとの関係を示す平面図である。
【符号の説明】
【0057】
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
4a… グリーン積層体
4b… グリーンチップ
6… 第1端子電極
8… 第2端子電極
10… 第1内側誘電体層
10a… 第1グリーンシート
11… 第2内側誘電体層
11a… 第2グリーンシート
12… 第1内部電極層
12a… 第1内部電極パターン
13… 第2内部電極層
13a… 第2内部電極パターン
30… 切断予定線
30x… 第1切断予定線
30y… 第2切断予定線
32… 第1突出部分
34… 第2突出部分
40… 切断具
M1,M2,M3… 切断マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極パターンがそれぞれ形成された複数のグリーンシートを準備する工程と、
前記グリーンシートに、前記内部電極パターンと共に、第1切断予定線および第2切断予定線の交差部に、切断マークを形成する工程と、
前記内部電極パターンおよび切断マークが形成してあるグリーンシートを積層して積層体を得る工程と、
前記第1切断予定線および第2切断予定線に沿って前記積層体を切断する工程と、を有する積層型電子部品の製造方法であって、
前記切断マークが、前記第1切断予定線および前記第2切断予定線の双方に切断ズレが生じない場合には、切断後のチップに前記切断マークが残らず、
前記第1切断予定線または前記第2切断予定線のいずれか/もしくは両方に切断ずれが生じた場合に、切断後のチップに前記切断マークが残ることを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記切断マークが、前記第1切断予定線および第2切断予定線の交差部の範囲内に収まるマーク形状を有する請求項1に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記切断マークが、前記第1切断予定線の線幅に収まらない第1突出部分と、前記第2切断予定線に収まらない第2突出部分とを有し、
前記第1突出部分が、前記第2切断予定線の線幅内に収まり、且つ、前記第2突出部分が前記第1切断予定線の線幅内に収まるマーク形状を有する請求項1に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記切断マークにおける前記第1突出部分の線幅が、前記第2切断予定線の線幅以下の寸法であり、前記第2突出部分の線幅が、前記第1切断予定線の線幅以下の寸法である請求項3に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記第1切断予定線および第2切断予定線の交差部に形成される切断マークが、十字形状である請求項1〜4のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1切断予定線および第2切断予定線の交差部に形成される切断マークが、円形状であり、その円形状の直径が、前記第1切断予定線および第2切断予定線の線幅よりも大きく、且つ、当該線幅の√2の寸法と同等以下の寸法である請求項1、3または4に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記第1切断予定線および第2切断予定線の交差部に形成される切断マークが、他の交差部に形成される切断マークに対して、前記第1切断予定線および第2切断予定線の線幅以下の線幅の連絡マークにより接続してある請求項1〜6のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記切断マークは、前記内部電極パターンを横切らない前記第1切断予定線および第2切断予定線の交差部に形成される請求項1〜7のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記切断マークは、前記内部電極パターンを横切らない前記第1切断予定線と、前記内部電極パターンを横切る前記第2切断予定線との交差部にも形成される請求項8に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記切断マークは、前記内部電極パターンと同じ手段により同時に形成される請求項1〜9のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記積層体を切断した後に形成されるチップを湿式研磨する工程をさらに有する請求項1〜10のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記切断予定線の線幅は、切断刃の厚みに対応する請求項1〜11のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−141143(P2009−141143A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316172(P2007−316172)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】