積層型PTCサーミスタおよびその実装構造
【課題】複雑な製造工程を必要とせずに低抵抗および高耐電圧を高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを提供すること。
【解決手段】半導体セラミック層2と内部電極層3とが交互に積層されている素子本体10と、内部電極層3と電気的に接続され、素子本体10の相互に向き合う両端面10dにそれぞれ設けられている外部端子電極4と、を備える積層型PTCサーミスタである。素子本体10の側面にはガラス膜5が形成され、かつ素子本体10の実装基板側の少なくとも1つの側面10bに放熱用端子電極6が設けられている。
【解決手段】半導体セラミック層2と内部電極層3とが交互に積層されている素子本体10と、内部電極層3と電気的に接続され、素子本体10の相互に向き合う両端面10dにそれぞれ設けられている外部端子電極4と、を備える積層型PTCサーミスタである。素子本体10の側面にはガラス膜5が形成され、かつ素子本体10の実装基板側の少なくとも1つの側面10bに放熱用端子電極6が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型PTCサーミスタおよびその実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サーミスタとして、正の抵抗温度特性を有するPTC(Positive Temperature coefficient)サーミスタが知られている。このPTCサーミスタは、温度の上昇に対して抵抗が増加する。このPTCサーミスタは、自己制御型発熱体、過電流保護素子、温度センサ等として利用されている。従来、このようなPTCサーミスタとして、主成分のチタン酸バリウム(BaTiO3 )に微量の希土類元素等を添加して導電性をもたせた半導体セラミック層と、半導体セラミック層を挟む一対の外部端子電極とを備えた単板型のPTCサーミスタが用いられてきた。
【0003】
近年、特に過電流保護用途のPTCサーミスタに対しては、消費電力を抑制するため、非作動時の常温における抵抗率(以下、便宜上「室温抵抗率」という)が十分に小さいことが強く望まれている。PTCサーミスタの室温抵抗率は電極面積に反比例するため、電極面積が大きいほど室温抵抗率を低減することができる。
【0004】
そこで、従来の単板型のPTCサーミスタに代わるものとして、複数の半導体セラミック層と複数の内部電極層とが交互に積層された積層型PTCサーミスタが提案されている。積層型PTCサーミスタでは、内部電極層を複数積層することによって電極面積を大幅に増やすことができるため、室温抵抗率を低下させることができる。
【0005】
積層型PTCサーミスタの一例としては、下記特許文献1に、チタン酸バリウム系半導体セラミック層と卑金属系内部電極層とが交互に積層された電子部品本体と、電子部品本体の端面上に形成された外部端子電極とを有する積層型PTCサーミスタが開示されている。このような積層型PTCサーミスタは、低コストかつ低抵抗を有することが示されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、チタン酸バリウム系半導体セラミック層と卑金属系内部電極層とが交互に積層された電子部品本体と、電子部品本体の端面上に形成された外部端子電極とを有する積層型PTCサーミスタであって、電子部品本体にガラス成分を含浸させた積層型PTCサーミスタが開示されている。特許文献2には、このような積層型PTCサーミスタは、低抵抗及び高耐電圧を有することが示されている。
【0007】
また、下記特許文献3には、チタン酸バリウム系半導体セラミック層と卑金属系内部電極層とが交互に積層された電子部品本体と、電子部品本体の端面上に形成された外部端子電極とを有する積層型PTCサーミスタの中央部に、空洞や内部電極層に開口または切り込みを設けたりすることで、電圧が印加されても発熱しない非発熱部分を設け、ホットスポットが形成されることを回避し、耐電圧性能の向上を図っていることが示されている。
【0008】
しかしながら、本発明者等が検討を行ったところ、従来の特許文献1〜3に示すような積層型積層型PTCサーミスタでは、室温抵抗を低下させることができる一方、電圧印加による素子の発熱量が大きく、熱暴走を引き起こすため、十分な耐電圧特性が得られないことが判明した。また、特に特許文献3に示すような積層型積層型PTCサーミスタでは、製造工程が複雑となり、コストがかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−47508号公報
【特許文献2】特許3636075号公報
【特許文献3】特開2004−311959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、複雑な製造工程を必要とせずに低抵抗および高耐電圧を高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層型PTCサーミスタは、
半導体セラミック層と内部電極層とが交互に積層されている素子本体と、
前記内部電極層と電気的に接続され、前記素子本体の相互に向き合う両端面にそれぞれ設けられている外部端子電極と、を備える積層型PTCサーミスタであって、
前記素子本体の側面にはガラス膜が形成され、かつ前記素子本体の実装基板側の少なくとも1つの前記側面に放熱用端子電極が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の積層型PTCサーミスタは、放熱用端子電極を介して実装基板に熱を逃がすことができ、電圧印加時の素子発熱量を抑えることができるので、低い室温抵抗と高耐電圧とを高水準で両立させることができる。また、本発明では、放熱用端子電極は、外部端子電極と同時に形成することができるので、複雑な製造工程を必要とせずに低抵抗および高耐電圧を高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを提供することができる。
【0013】
好ましくは、前記素子本体における隣り合う少なくとも3つの前記側面にわたって前記放熱用端子電極が形成してある。少なくとも3つの前記側面にわたって放熱用端子電極を形成することで、放熱面積が増大し、電圧印加時の素子発熱量をさらに抑制することができる。
【0014】
好ましくは、前記放熱用端子電極の各側面における面積割合が、当該放熱用端子電極が形成されている当該側面の面積に対して、35%以上、さらに好ましくは40%以上である。各側面での放熱用端子電極の面積を所定値以上に確保することで、放熱特性が向上する。ただし、その放熱用端子電極の面積は、各側面において、少なくともいずれか一方の前記外部端子電極に対して絶縁されるように決定されることが好ましい。素子本体の両端面に形成してある外部端子電極が短絡しないようにするためである。
【0015】
好ましくは、前記外部端子電極が半田により基板に接合してあると共に、これらの外部端子電極とは絶縁されて、前記放熱用端子電極は、半田により基板に接合されている。さらに好ましくは、放熱用端子電極は、基板のグランド端子に接続してあることが好ましい。このような構成にすることで、素子本体に発生する熱が放熱用端子電極、半田およびグランド端子を通して良好に放熱される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層型PTCサーミスタの断面図である。
【図2】図2(A)は図1に示す積層型PTCサーミスタの平面側斜視図、図2(B)は図2(A)に示す積層型PTCサーミスタの背面側斜視図である。
【図3】図3は図1に示す積層型PTCサーミスタの背面図である。
【図4】図4は図1に示す積層型PTCサーミスタの製造方法を示す概略図である。
【図5】図5は図1に示す積層型PTCサーミスタの使用例を示す斜視図である。
【図6】図6は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの平面側斜視図、図6(B)は図6(A)に示す積層型PTCサーミスタの背面側斜視図である。
【図7】図7は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの平面側斜視図、図7(B)は図7(A)に示す積層型PTCサーミスタの背面側斜視図である。
【図8】図8は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの背面図である。
【図9】図9は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの背面図である。
【図10】図10は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの背面図である。
【図11】図11は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの背面図である。
【図12】図12は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0018】
第1実施形態
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層型PTCサーミスタ1は、半導体セラミック層2と内部電極層3とが交互に積層されている素子本体10を有する。図2(A)および図2(B)に示すように、素子本体10は、平面側側面10aと、背面側側面10bと、その他の2側面10cとを有する。また、素子本体10は、図1に示すように、内部電極層3が交互に引き出される方向に端面10dを有し、全体として直方体形状となっている。
【0019】
半導体セラミック層2は、たとえばチタン酸バリウム系半導体セラミック、などで構成される。内部電極層3は、たとえばニッケル、パラジウム、これらの金属の少なくとも一部を含む合金などで構成される。
【0020】
半導体セラミック層2の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜200μm、内部電極層3の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1〜5μmである。
【0021】
図1に示すように、素子本体10の4つの側面10a〜10cには、ガラス膜5が形成してある。素子本体10の相互に向き合う端面10dには、図示する例ではガラス膜が形成されてないが、ガラス膜5が形成されていても良い。ガラス膜5は、素子本体10の保護機能を有し、基板実装時のフラックスの燃焼により半導体セラミック層2が還元されることを抑制してPTC特性が低下することを防止する機能を有する。ガラス膜5は、低温で焼き付けが可能なガラス膜が好ましく、たとえばBi系ガラス、B系ガラス、Zn系ガラスなどが好ましい。ガラス膜5の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜10μmである。
【0022】
素子本体10の相互に向き合う端面10dには、それぞれ外部端子電極4が形成してあり、それぞれ交互に引き出される内部電極層3と接続してある。外部端子電極4は、それぞれ、素子本体10の端面10dに密着する電極端面部4aと、素子本体10の4つの側面10a〜10cに跨がる電極側面部4bとを有する。外部端子電極4は、たとえばAg、Pd、Cu、Ni、Zn、Al、Sn、これらの金属の少なくとも一部を含む合金などで構成され、その厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜30μmである。外部端子電極4は、単層でも良いが、複数の層の積層膜であっても良い。
【0023】
本実施形態では、図2(A)および図2(B)に示すように、4つの側面10a〜10cに跨がって連続して放熱用端子電極6が形成してある。放熱用端子電極6は、双方の外部端子電極4と電気的に導通しないように、素子本体10の長手方向(外部端子電極4の相互を結ぶ方向)の中央位置に形成してある。
【0024】
図2(A)に示すように、2012サイズ積層型PTCサーミスタ1の長さ(外部端子電極4の相互間方向)L0は、好ましくは1.8〜2.2mmである。また、積層型PTCサーミスタ1の厚み(図1に示す内部電極層3の積層方向)T0は、好ましくは1.05〜1.45mmである。さらに、積層型PTCサーミスタ1の幅(長さL0および厚みT0に垂直方向)W0は、好ましくは1.05〜1.45mmである。
【0025】
たとえば図3に示すように、素子本体10の背面側側面10bでは、放熱用端子電極6は、素子本体10の長さL0の略中心位置に形成され、放熱用端子電極6の幅L1は、外部端子電極4の電極側面部4bの幅L2と同等以上の幅であることが好ましい。ただし、放熱用端子電極6の幅L1が大きすぎると、外部端子電極4の電極側面部4bと短絡する恐れがあることから、これらと短絡しないように、外部端子電極4との距離L3が0.1mm以上となるように決定される。
【0026】
なお、放熱用端子電極6と外部端子電極4との距離L3は、放熱用端子電極6の両側で必ずしも同一寸法になる必要はない。また、外部端子電極4の電極側面部4bの幅L2も、両側で必ずしも同一である必要はない。
【0027】
本実施形態では、素子本体10の背面側側面10bにおいて、放熱用端子電極6の面積S1は、L1×W0で表せるが、側面10bの全面積S0=L0×W0に対して、40〜70%の面積であることが好ましい。このような面積に設定することで、後述する放熱効果が向上すると共に、外部端子電極4との短絡も防止できる。
【0028】
放熱用端子電極6は、外部端子電極4と同様な金属または合金で構成することができ、好ましくは外部端子電極4と同時に形成され、同等な厚みを有する。
【0029】
次に、積層型PTCサーミスタ1の製造方法について説明する。
まず、図1に示す半導体セラミック層2の原料を含む半導体セラミック層形成用スラリーを準備する。次に、半導体セラミック層形成用スラリーをペットフィルムの上にドクターブレード法などで塗布、乾燥してグリーンシートを作製する。
【0030】
このグリーンシートの表面に、図1に示す内部電極層3を形成するための内部電極用ペーストをスクリーン印刷などで印刷する。内部電極用ペーストが印刷されたグリーンシートを、必要枚数で積層し、プレス機で積層方向に加圧、圧着して圧着体を得る。この圧着体をカッターなどで切断し、図1に示す素子本体10に対応するサイズの積層チップを得る。
【0031】
次に、積層チップを、大気中、250〜500℃で1〜10時間加熱保持してバインダを除去した後、H2 /N2 雰囲気中、1150〜1250℃で0.5〜4時間、積層チップを焼結し、素子本体(焼結体)10を得る。
【0032】
続いて得られた素子本体10を、大気中で、500〜800℃で0.5〜6時間加熱保持することにより、再酸化処理を行う。再酸化処理により、半導体セラミック層2のPTC特性を発現させる。
【0033】
酸化処理後の素子本体10に、たとえばスプレー処理などにより無機ガラススラリーを吹き付けた後、大気中600〜700℃で焼き付けて素子本体10の全表面にガラス膜5を形成する。
【0034】
続いて、ガラス膜5が形成された素子本体10の4側面10a〜10cに、図4に示すように、レジスト膜12を付ける。レジスト膜12は、図2(A)および図2(B)に示す素子本体10の外周面で電極4および6が形成されない領域に形成される。レジスト膜12は、素子本体10が図4に示すペースト14が貯留してあるペースト容器16の内部に浸漬された場合に、ペースト14が素子本体10の外面に付着することを防止する。ペースト14は、図1に示す電極4および6を形成するための電極ペーストである。
【0035】
ペースト14は、レジスト膜12以外の素子本体10の表面に付着する。レジスト膜12以外の素子本体10の表面にペーストが付着された素子本体10を、大気中500〜600℃で焼き付ければ、図1に示すように、放熱用端子電極6と外部端子電極4とが形成してある素子本体10が得られる。レジスト膜12は、ペースト焼き付け時に除去される樹脂などで構成されることが好ましい。
【0036】
なお、電極4および6は、スパッタリングなどの成膜法により形成しても良い。また、図1に示す素子本体10の端面10dに形成されるガラス膜は、外部端子電極4が形成される前に、端面加工などにより除去しても良いが、除去しなくとも、内部電極層3の端部は、外部端子電極4の焼き付け処理時に接続される。
【0037】
このようにして得られる図1に示す構成の積層型PTCサーミスタ1は、図5に示すように、実装基板20に実装される。すなわち、積層型PTCサーミスタ1の背面側側面(実装基板側)10bを実装基板20に対向させて配置し、実装基板20の配線端子22に外部端子電極4が接触し、グランド端子24に放熱用端子電極6が接触するように配置する。その後に、半田30のリフロー処理などにより半田付けを行う。半田30は、背面側側面(実装基板側)10bに位置する電極4および6のみでなく、その背面側側面10bに隣接する側面10cに位置する電極4および6の下部にまで昇ってくる。
【0038】
本実施形態の積層型PTCサーミスタ1は、放熱用端子電極6、半田30およびグランド端子24を介して実装基板20に熱を逃がすことができる。そのため、電圧印加時の素子本体10の発熱量を抑えることができるので、低い室温抵抗と高耐電圧とを高水準で両立させることができる。また、本実施形態では、放熱用端子電極6は、外部端子電極4と同時に形成することができるので、複雑な製造工程を必要とせずに低抵抗および高耐電圧を高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタ1を提供することができる。
【0039】
特に本実施形態では、素子本体10における隣り合う4つの側面10a〜10cにわたって放熱用端子電極6が形成してある。4つの側面10a〜10cにわたって放熱用端子電極6を形成することで、放熱面積が増大し、電圧印加時の素子発熱量をさらに抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、放熱用端子電極6の各側面における面積割合が、当該放熱用端子電極6が形成されている当該各側面10a〜10cの面積に対して、40%以上である。各側面での放熱用端子電極6の面積を所定値以上に確保することで、放熱特性が向上する。
【0041】
第2実施形態
本実施形態では、図6(A)および図6(B)に示すように、素子本体10における平面側側面10aには、放熱用端子電極6がほとんど形成されず、背面側側面10bとその両側の側面10cとを含む、隣り合う3つの側面10b〜10cにわたって放熱用端子電極6が形成してある。
【0042】
図5に示すように、半田30は、背面側側面(実装基板側)10bに位置する電極4および6のみでなく、その背面側側面10bに隣接する側面10cに位置する電極4および6の下部にまで昇ってくる。そのため、少なくとも3つの側面10b〜10cにわたって放熱用端子電極6を形成することで、3つの側面10b〜10cで半田30を介してグランド端子24と接続される。その結果、放熱用端子電極6から半田30を介してグランド端子24に放熱される放熱量が確保され、本実施形態の積層型PTCサーミスタ1aは、第1実施形態と同等な作用効果を奏する。 その他の構成および作用効果は第1実施形態と同様である。
【0043】
第3実施形態
本実施形態では、図7(A)および図7(B)に示すように、素子本体10における平面側側面10aおよびそれに隣接する2つの側面10cには、放熱用端子電極6が形成されず、背面側側面10bのみに放熱用端子電極6が形成してある。
【0044】
図5に示すように、背面側側面10bに形成してある放熱用端子電極6は、半田30を介してグランド端子24に接続される部分であり、少なくともその背面側側面10bに放熱用端子電極6を形成すれば、グランド端子に放熱される放熱量が確保される。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1bは、第1実施形態よりは劣るが、第1実施形態と同じような作用効果が期待できる。その他の構成および作用効果は第1実施形態と同様である。
【0045】
第4実施形態
本実施形態では、図8に示すように、素子本体10の背面側側面10bに形成する放熱用端子電極6が、素子本体10の幅W0の方向に複数に分割されている以外は、第3実施形態と同様である。ただし、側面10bにおいて、複数に分割されている放熱用電極6の合計面積S1は、側面10bの全面積S0に対して、第3実施形態と同様なパーセント割合である。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1cは、第3実施形態と同様な作用効果が期待できる。
【0046】
第5実施形態
本実施形態では、図9に示すように、素子本体10の背面側側面10bに形成する放熱用端子電極6が、素子本体10の長さL0の方向に複数に分割されている以外は、第3実施形態と同様である。ただし、側面10bにおいて、複数に分割されている放熱用電極6の合計面積S1は、側面10bの全面積S0に対して、第3実施形態と同様なパーセント割合である。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1dは、第3実施形態と同様な作用効果が期待できる。
【0047】
第6実施形態
本実施形態では、図10に示すように、素子本体10の背面側側面10bに形成する放熱用端子電極6の幅L1が、外部端子電極4の電極側面部4bの幅L2より短く、放熱用端子電極6の面積S1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さいが35%以上である。その他の構成は、第3実施形態と同様である。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1eは、放熱用端子電極6の面積S1が小さいため、第3実施形態よりは本発明の作用効果が小さい。
【0048】
第7実施形態
本実施形態では、図11に示すように、素子本体10の背面側側面10bに形成する放熱用端子電極6のS1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さいが35%以上である以外は、第3実施形態と同様である。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1fは、放熱用端子電極6の面積S1が小さいため、第3実施形態よりは本発明の作用効果が小さい。
【0049】
第8実施形態
本実施形態では、図12に示すように、素子本体10の背面側側面10bに形成する放熱用端子電極6のS1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さいが35%以上である以外は、第4実施形態と同様である。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1fは、放熱用端子電極6の面積S1が小さいため、第4実施形態よりは本発明の作用効果が小さい。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0052】
実施例1
得られるチタン酸バリウム系化合物が下記式(A)の組成になるように、BaCO3 、TiO2 、Gd2 O3 、Nb2 O5 、SiO2 およびMn(NO3 )2 ・6H2 Oをそれぞれ秤量した後、純水ならびに粉砕用ボールとともにナイロン製ポット内に入れて6時間混合し、乾燥させて混合粉末を得た。
【0053】
(Ba0.999 Gd0.001 )1.02(Ti0.999 Nb0.001 )O3 +0.05SiO2+0.001Mn・・・(A)
【0054】
得られた混合粉末を仮成形し、これを1150℃の大気中に4時間保持して仮焼して、仮焼体を得た。次いで、この仮焼体を解砕して得た仮焼粉末を純水ならびに粉砕用ボールとともにナイロン製ポットに入れ、これに溶剤、バインダ及び可塑剤を添加してボールミルにて20時間混合し、半導体セラミック層形成用スラリーを得た。
【0055】
得られた半導体セラミック層形成用スラリーをペットフィルムの上にドクターブレード法で塗布、乾燥してグリーンシートを作製した。このグリーンシートの表面に内部電極用Niペーストをスクリーン印刷で印刷してNi内部電極層を形成した。
【0056】
内部電極層の一端面がセラミック層の左端部、右端部に交互に露出するようグリーンシートを積層し、これをプレスで積層方向に加圧、圧着した。圧着体をカッターで切断し、2mm×1.2mm×1.2mmの積層チップを得た。
【0057】
積層チップを大気中、300℃で8時間加熱保持してバインダを除去した後、H2/N2雰囲気中、1200℃で2時間、積層体を焼結し、素子本体10(焼結体)を得た。
【0058】
続いて、得られた素子本体10を大気中、700℃で2時間加熱保持することにより、再酸化処理を行った。酸化処理後の素子本体10に、スプレーでBi系無機ガラススラリーを吹き付けた後、大気中650℃で焼き付けて素子本体表面にガラス膜を形成した。
【0059】
続いてガラス膜が形成された本体の4側面および両端面に、図2(A)および図2(B)に示すようなパターンでAgペーストを塗布した後、大気中600℃で焼き付けて、放熱用端子電極6と外部端子電極4を形成した。このようにして得られた図1に示す構成の積層型PTCサーミスタ1について、放熱用端子電極6および両端部外部端子電極4の合わせて3端子で、図5に示すように、プリント配線基板からなる実装基板20上に半田付けした。
【0060】
実装基板20上に半田付けした積層型PTCサーミスタ1を恒温槽内に入れ、25℃における抵抗値(R25℃、単位:Ω)、及び200℃における抵抗値(R200℃、単位:Ω)、をそれぞれデジタルマルチメータにて測定した。さらに、25℃における抵抗値(R25℃)、200℃における抵抗値(R200℃)の各測定値から、PTCジャンプ{[log10(R200℃/R25℃)]、単位:桁}を求めた。
【0061】
また、上記3端子でプリント基板上にはんだ付けした積層型PTCサーミスタを25℃の恒温槽内に入れ、両端面の電極間に直流電源を接続して0Vより徐々に印加電圧を上昇させ、積層型サーミスタが破壊するまで昇圧し、破壊直前の電圧を耐電圧とした。これらの測定結果を表1に示す。
【0062】
なお、この実施例1では、図3に示すように、素子本体10の背面側側面10bにおいて、放熱用端子電極6の面積S1は、側面10bの全面積S0に対して、40〜70%の範囲内であった。
【0063】
実施例2
図7に示すように、素子本体の背面側側面10bのみに放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0064】
実施例3
図6に示すように、素子本体の背面側側面10bおよびその両側に位置する側面10cのみに放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0065】
実施例4
図8に示すように、素子本体の背面側側面10bにおいて、2つに分割された放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例2と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0066】
実施例5
図9に示すように、素子本体の背面側側面10bにおいて、3つに分割された放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例2と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0067】
比較例1
素子本体10にガラス膜5および放熱用端子電極6を形成していない以外は、実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0068】
比較例2
素子本体10にガラス膜5を形成していない以外は、実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0069】
比較例3
素子本体10に放熱用端子電極6を形成していない以外は、実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0070】
実施例6
図10に示すように、素子本体の背面側側面10bにおいて、放熱用端子電極6の幅L1が、外部端子電極4の電極側面部4bの幅L2より短く、放熱用端子電極6の面積S1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さい以外は、実施例2と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0071】
実施例7
図11に示すように、素子本体の背面側側面10bにおいて、放熱用端子電極6の面積S1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さい放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例2と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0072】
実施例8
図12に示すように、素子本体の背面側側面10bにおいて、放熱用端子電極6の面積S1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さい放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例4と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示す測定結果から明らかなように、素子本体にガラス膜が形成されていない比較例1と比較例2では、PTCジャンプと耐電圧いずれも低い値となっている。これは、素子本体10の表面にガラス膜5が形成されていないために、基板実装時のフラックスの燃焼により、積層型PTCサーミスタ1の半導体セラミック層2が還元されたためと考えられる。また素子本体10にガラス膜5は形成されているが、放熱用端子電極6が形成されていない比較例3では、PTCジャンプが高いにも関わらず、20Vに満たない低い耐電圧となっている。
【0075】
これらの比較例1〜3に対して、実施例1〜8では、PTCジャンプも高く耐電圧も高いことがわかる。これは、放熱用端子電極6を介して実装基板20に熱を逃がすことができ、電圧印加時の素子発熱量を抑えることができたためと考えられる。なお、実施例6〜8に比較して、実施例1〜5での耐電圧が高いのは、放熱用端子電極6の面積が大きいためであると考えられる。
【符号の説明】
【0076】
1,1a〜1g…積層型PTCサーミスタ、
2…半導体セラミック層、
3…内部電極層、
4…外部端子電極、
4a…電極端面部、
4b…電極側面部、
5…ガラス膜、
6…放熱用端子電極、
10…素子本体、
10a…平面側側面、
10b…背面側側面、
10c…その他側面、
10d…端面
20…実装基板、
22…配線端子、
24…グランド端子、
30…半田。
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型PTCサーミスタおよびその実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サーミスタとして、正の抵抗温度特性を有するPTC(Positive Temperature coefficient)サーミスタが知られている。このPTCサーミスタは、温度の上昇に対して抵抗が増加する。このPTCサーミスタは、自己制御型発熱体、過電流保護素子、温度センサ等として利用されている。従来、このようなPTCサーミスタとして、主成分のチタン酸バリウム(BaTiO3 )に微量の希土類元素等を添加して導電性をもたせた半導体セラミック層と、半導体セラミック層を挟む一対の外部端子電極とを備えた単板型のPTCサーミスタが用いられてきた。
【0003】
近年、特に過電流保護用途のPTCサーミスタに対しては、消費電力を抑制するため、非作動時の常温における抵抗率(以下、便宜上「室温抵抗率」という)が十分に小さいことが強く望まれている。PTCサーミスタの室温抵抗率は電極面積に反比例するため、電極面積が大きいほど室温抵抗率を低減することができる。
【0004】
そこで、従来の単板型のPTCサーミスタに代わるものとして、複数の半導体セラミック層と複数の内部電極層とが交互に積層された積層型PTCサーミスタが提案されている。積層型PTCサーミスタでは、内部電極層を複数積層することによって電極面積を大幅に増やすことができるため、室温抵抗率を低下させることができる。
【0005】
積層型PTCサーミスタの一例としては、下記特許文献1に、チタン酸バリウム系半導体セラミック層と卑金属系内部電極層とが交互に積層された電子部品本体と、電子部品本体の端面上に形成された外部端子電極とを有する積層型PTCサーミスタが開示されている。このような積層型PTCサーミスタは、低コストかつ低抵抗を有することが示されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、チタン酸バリウム系半導体セラミック層と卑金属系内部電極層とが交互に積層された電子部品本体と、電子部品本体の端面上に形成された外部端子電極とを有する積層型PTCサーミスタであって、電子部品本体にガラス成分を含浸させた積層型PTCサーミスタが開示されている。特許文献2には、このような積層型PTCサーミスタは、低抵抗及び高耐電圧を有することが示されている。
【0007】
また、下記特許文献3には、チタン酸バリウム系半導体セラミック層と卑金属系内部電極層とが交互に積層された電子部品本体と、電子部品本体の端面上に形成された外部端子電極とを有する積層型PTCサーミスタの中央部に、空洞や内部電極層に開口または切り込みを設けたりすることで、電圧が印加されても発熱しない非発熱部分を設け、ホットスポットが形成されることを回避し、耐電圧性能の向上を図っていることが示されている。
【0008】
しかしながら、本発明者等が検討を行ったところ、従来の特許文献1〜3に示すような積層型積層型PTCサーミスタでは、室温抵抗を低下させることができる一方、電圧印加による素子の発熱量が大きく、熱暴走を引き起こすため、十分な耐電圧特性が得られないことが判明した。また、特に特許文献3に示すような積層型積層型PTCサーミスタでは、製造工程が複雑となり、コストがかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−47508号公報
【特許文献2】特許3636075号公報
【特許文献3】特開2004−311959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、複雑な製造工程を必要とせずに低抵抗および高耐電圧を高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る積層型PTCサーミスタは、
半導体セラミック層と内部電極層とが交互に積層されている素子本体と、
前記内部電極層と電気的に接続され、前記素子本体の相互に向き合う両端面にそれぞれ設けられている外部端子電極と、を備える積層型PTCサーミスタであって、
前記素子本体の側面にはガラス膜が形成され、かつ前記素子本体の実装基板側の少なくとも1つの前記側面に放熱用端子電極が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の積層型PTCサーミスタは、放熱用端子電極を介して実装基板に熱を逃がすことができ、電圧印加時の素子発熱量を抑えることができるので、低い室温抵抗と高耐電圧とを高水準で両立させることができる。また、本発明では、放熱用端子電極は、外部端子電極と同時に形成することができるので、複雑な製造工程を必要とせずに低抵抗および高耐電圧を高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタを提供することができる。
【0013】
好ましくは、前記素子本体における隣り合う少なくとも3つの前記側面にわたって前記放熱用端子電極が形成してある。少なくとも3つの前記側面にわたって放熱用端子電極を形成することで、放熱面積が増大し、電圧印加時の素子発熱量をさらに抑制することができる。
【0014】
好ましくは、前記放熱用端子電極の各側面における面積割合が、当該放熱用端子電極が形成されている当該側面の面積に対して、35%以上、さらに好ましくは40%以上である。各側面での放熱用端子電極の面積を所定値以上に確保することで、放熱特性が向上する。ただし、その放熱用端子電極の面積は、各側面において、少なくともいずれか一方の前記外部端子電極に対して絶縁されるように決定されることが好ましい。素子本体の両端面に形成してある外部端子電極が短絡しないようにするためである。
【0015】
好ましくは、前記外部端子電極が半田により基板に接合してあると共に、これらの外部端子電極とは絶縁されて、前記放熱用端子電極は、半田により基板に接合されている。さらに好ましくは、放熱用端子電極は、基板のグランド端子に接続してあることが好ましい。このような構成にすることで、素子本体に発生する熱が放熱用端子電極、半田およびグランド端子を通して良好に放熱される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層型PTCサーミスタの断面図である。
【図2】図2(A)は図1に示す積層型PTCサーミスタの平面側斜視図、図2(B)は図2(A)に示す積層型PTCサーミスタの背面側斜視図である。
【図3】図3は図1に示す積層型PTCサーミスタの背面図である。
【図4】図4は図1に示す積層型PTCサーミスタの製造方法を示す概略図である。
【図5】図5は図1に示す積層型PTCサーミスタの使用例を示す斜視図である。
【図6】図6は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの平面側斜視図、図6(B)は図6(A)に示す積層型PTCサーミスタの背面側斜視図である。
【図7】図7は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの平面側斜視図、図7(B)は図7(A)に示す積層型PTCサーミスタの背面側斜視図である。
【図8】図8は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの背面図である。
【図9】図9は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの背面図である。
【図10】図10は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの背面図である。
【図11】図11は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの背面図である。
【図12】図12は本発明の他の実施形態に係る積層型PTCサーミスタの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0018】
第1実施形態
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層型PTCサーミスタ1は、半導体セラミック層2と内部電極層3とが交互に積層されている素子本体10を有する。図2(A)および図2(B)に示すように、素子本体10は、平面側側面10aと、背面側側面10bと、その他の2側面10cとを有する。また、素子本体10は、図1に示すように、内部電極層3が交互に引き出される方向に端面10dを有し、全体として直方体形状となっている。
【0019】
半導体セラミック層2は、たとえばチタン酸バリウム系半導体セラミック、などで構成される。内部電極層3は、たとえばニッケル、パラジウム、これらの金属の少なくとも一部を含む合金などで構成される。
【0020】
半導体セラミック層2の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜200μm、内部電極層3の厚みは、特に限定されないが、好ましくは1〜5μmである。
【0021】
図1に示すように、素子本体10の4つの側面10a〜10cには、ガラス膜5が形成してある。素子本体10の相互に向き合う端面10dには、図示する例ではガラス膜が形成されてないが、ガラス膜5が形成されていても良い。ガラス膜5は、素子本体10の保護機能を有し、基板実装時のフラックスの燃焼により半導体セラミック層2が還元されることを抑制してPTC特性が低下することを防止する機能を有する。ガラス膜5は、低温で焼き付けが可能なガラス膜が好ましく、たとえばBi系ガラス、B系ガラス、Zn系ガラスなどが好ましい。ガラス膜5の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜10μmである。
【0022】
素子本体10の相互に向き合う端面10dには、それぞれ外部端子電極4が形成してあり、それぞれ交互に引き出される内部電極層3と接続してある。外部端子電極4は、それぞれ、素子本体10の端面10dに密着する電極端面部4aと、素子本体10の4つの側面10a〜10cに跨がる電極側面部4bとを有する。外部端子電極4は、たとえばAg、Pd、Cu、Ni、Zn、Al、Sn、これらの金属の少なくとも一部を含む合金などで構成され、その厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜30μmである。外部端子電極4は、単層でも良いが、複数の層の積層膜であっても良い。
【0023】
本実施形態では、図2(A)および図2(B)に示すように、4つの側面10a〜10cに跨がって連続して放熱用端子電極6が形成してある。放熱用端子電極6は、双方の外部端子電極4と電気的に導通しないように、素子本体10の長手方向(外部端子電極4の相互を結ぶ方向)の中央位置に形成してある。
【0024】
図2(A)に示すように、2012サイズ積層型PTCサーミスタ1の長さ(外部端子電極4の相互間方向)L0は、好ましくは1.8〜2.2mmである。また、積層型PTCサーミスタ1の厚み(図1に示す内部電極層3の積層方向)T0は、好ましくは1.05〜1.45mmである。さらに、積層型PTCサーミスタ1の幅(長さL0および厚みT0に垂直方向)W0は、好ましくは1.05〜1.45mmである。
【0025】
たとえば図3に示すように、素子本体10の背面側側面10bでは、放熱用端子電極6は、素子本体10の長さL0の略中心位置に形成され、放熱用端子電極6の幅L1は、外部端子電極4の電極側面部4bの幅L2と同等以上の幅であることが好ましい。ただし、放熱用端子電極6の幅L1が大きすぎると、外部端子電極4の電極側面部4bと短絡する恐れがあることから、これらと短絡しないように、外部端子電極4との距離L3が0.1mm以上となるように決定される。
【0026】
なお、放熱用端子電極6と外部端子電極4との距離L3は、放熱用端子電極6の両側で必ずしも同一寸法になる必要はない。また、外部端子電極4の電極側面部4bの幅L2も、両側で必ずしも同一である必要はない。
【0027】
本実施形態では、素子本体10の背面側側面10bにおいて、放熱用端子電極6の面積S1は、L1×W0で表せるが、側面10bの全面積S0=L0×W0に対して、40〜70%の面積であることが好ましい。このような面積に設定することで、後述する放熱効果が向上すると共に、外部端子電極4との短絡も防止できる。
【0028】
放熱用端子電極6は、外部端子電極4と同様な金属または合金で構成することができ、好ましくは外部端子電極4と同時に形成され、同等な厚みを有する。
【0029】
次に、積層型PTCサーミスタ1の製造方法について説明する。
まず、図1に示す半導体セラミック層2の原料を含む半導体セラミック層形成用スラリーを準備する。次に、半導体セラミック層形成用スラリーをペットフィルムの上にドクターブレード法などで塗布、乾燥してグリーンシートを作製する。
【0030】
このグリーンシートの表面に、図1に示す内部電極層3を形成するための内部電極用ペーストをスクリーン印刷などで印刷する。内部電極用ペーストが印刷されたグリーンシートを、必要枚数で積層し、プレス機で積層方向に加圧、圧着して圧着体を得る。この圧着体をカッターなどで切断し、図1に示す素子本体10に対応するサイズの積層チップを得る。
【0031】
次に、積層チップを、大気中、250〜500℃で1〜10時間加熱保持してバインダを除去した後、H2 /N2 雰囲気中、1150〜1250℃で0.5〜4時間、積層チップを焼結し、素子本体(焼結体)10を得る。
【0032】
続いて得られた素子本体10を、大気中で、500〜800℃で0.5〜6時間加熱保持することにより、再酸化処理を行う。再酸化処理により、半導体セラミック層2のPTC特性を発現させる。
【0033】
酸化処理後の素子本体10に、たとえばスプレー処理などにより無機ガラススラリーを吹き付けた後、大気中600〜700℃で焼き付けて素子本体10の全表面にガラス膜5を形成する。
【0034】
続いて、ガラス膜5が形成された素子本体10の4側面10a〜10cに、図4に示すように、レジスト膜12を付ける。レジスト膜12は、図2(A)および図2(B)に示す素子本体10の外周面で電極4および6が形成されない領域に形成される。レジスト膜12は、素子本体10が図4に示すペースト14が貯留してあるペースト容器16の内部に浸漬された場合に、ペースト14が素子本体10の外面に付着することを防止する。ペースト14は、図1に示す電極4および6を形成するための電極ペーストである。
【0035】
ペースト14は、レジスト膜12以外の素子本体10の表面に付着する。レジスト膜12以外の素子本体10の表面にペーストが付着された素子本体10を、大気中500〜600℃で焼き付ければ、図1に示すように、放熱用端子電極6と外部端子電極4とが形成してある素子本体10が得られる。レジスト膜12は、ペースト焼き付け時に除去される樹脂などで構成されることが好ましい。
【0036】
なお、電極4および6は、スパッタリングなどの成膜法により形成しても良い。また、図1に示す素子本体10の端面10dに形成されるガラス膜は、外部端子電極4が形成される前に、端面加工などにより除去しても良いが、除去しなくとも、内部電極層3の端部は、外部端子電極4の焼き付け処理時に接続される。
【0037】
このようにして得られる図1に示す構成の積層型PTCサーミスタ1は、図5に示すように、実装基板20に実装される。すなわち、積層型PTCサーミスタ1の背面側側面(実装基板側)10bを実装基板20に対向させて配置し、実装基板20の配線端子22に外部端子電極4が接触し、グランド端子24に放熱用端子電極6が接触するように配置する。その後に、半田30のリフロー処理などにより半田付けを行う。半田30は、背面側側面(実装基板側)10bに位置する電極4および6のみでなく、その背面側側面10bに隣接する側面10cに位置する電極4および6の下部にまで昇ってくる。
【0038】
本実施形態の積層型PTCサーミスタ1は、放熱用端子電極6、半田30およびグランド端子24を介して実装基板20に熱を逃がすことができる。そのため、電圧印加時の素子本体10の発熱量を抑えることができるので、低い室温抵抗と高耐電圧とを高水準で両立させることができる。また、本実施形態では、放熱用端子電極6は、外部端子電極4と同時に形成することができるので、複雑な製造工程を必要とせずに低抵抗および高耐電圧を高水準で両立可能な積層型PTCサーミスタ1を提供することができる。
【0039】
特に本実施形態では、素子本体10における隣り合う4つの側面10a〜10cにわたって放熱用端子電極6が形成してある。4つの側面10a〜10cにわたって放熱用端子電極6を形成することで、放熱面積が増大し、電圧印加時の素子発熱量をさらに抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、放熱用端子電極6の各側面における面積割合が、当該放熱用端子電極6が形成されている当該各側面10a〜10cの面積に対して、40%以上である。各側面での放熱用端子電極6の面積を所定値以上に確保することで、放熱特性が向上する。
【0041】
第2実施形態
本実施形態では、図6(A)および図6(B)に示すように、素子本体10における平面側側面10aには、放熱用端子電極6がほとんど形成されず、背面側側面10bとその両側の側面10cとを含む、隣り合う3つの側面10b〜10cにわたって放熱用端子電極6が形成してある。
【0042】
図5に示すように、半田30は、背面側側面(実装基板側)10bに位置する電極4および6のみでなく、その背面側側面10bに隣接する側面10cに位置する電極4および6の下部にまで昇ってくる。そのため、少なくとも3つの側面10b〜10cにわたって放熱用端子電極6を形成することで、3つの側面10b〜10cで半田30を介してグランド端子24と接続される。その結果、放熱用端子電極6から半田30を介してグランド端子24に放熱される放熱量が確保され、本実施形態の積層型PTCサーミスタ1aは、第1実施形態と同等な作用効果を奏する。 その他の構成および作用効果は第1実施形態と同様である。
【0043】
第3実施形態
本実施形態では、図7(A)および図7(B)に示すように、素子本体10における平面側側面10aおよびそれに隣接する2つの側面10cには、放熱用端子電極6が形成されず、背面側側面10bのみに放熱用端子電極6が形成してある。
【0044】
図5に示すように、背面側側面10bに形成してある放熱用端子電極6は、半田30を介してグランド端子24に接続される部分であり、少なくともその背面側側面10bに放熱用端子電極6を形成すれば、グランド端子に放熱される放熱量が確保される。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1bは、第1実施形態よりは劣るが、第1実施形態と同じような作用効果が期待できる。その他の構成および作用効果は第1実施形態と同様である。
【0045】
第4実施形態
本実施形態では、図8に示すように、素子本体10の背面側側面10bに形成する放熱用端子電極6が、素子本体10の幅W0の方向に複数に分割されている以外は、第3実施形態と同様である。ただし、側面10bにおいて、複数に分割されている放熱用電極6の合計面積S1は、側面10bの全面積S0に対して、第3実施形態と同様なパーセント割合である。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1cは、第3実施形態と同様な作用効果が期待できる。
【0046】
第5実施形態
本実施形態では、図9に示すように、素子本体10の背面側側面10bに形成する放熱用端子電極6が、素子本体10の長さL0の方向に複数に分割されている以外は、第3実施形態と同様である。ただし、側面10bにおいて、複数に分割されている放熱用電極6の合計面積S1は、側面10bの全面積S0に対して、第3実施形態と同様なパーセント割合である。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1dは、第3実施形態と同様な作用効果が期待できる。
【0047】
第6実施形態
本実施形態では、図10に示すように、素子本体10の背面側側面10bに形成する放熱用端子電極6の幅L1が、外部端子電極4の電極側面部4bの幅L2より短く、放熱用端子電極6の面積S1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さいが35%以上である。その他の構成は、第3実施形態と同様である。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1eは、放熱用端子電極6の面積S1が小さいため、第3実施形態よりは本発明の作用効果が小さい。
【0048】
第7実施形態
本実施形態では、図11に示すように、素子本体10の背面側側面10bに形成する放熱用端子電極6のS1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さいが35%以上である以外は、第3実施形態と同様である。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1fは、放熱用端子電極6の面積S1が小さいため、第3実施形態よりは本発明の作用効果が小さい。
【0049】
第8実施形態
本実施形態では、図12に示すように、素子本体10の背面側側面10bに形成する放熱用端子電極6のS1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さいが35%以上である以外は、第4実施形態と同様である。本実施形態の積層型PTCサーミスタ1fは、放熱用端子電極6の面積S1が小さいため、第4実施形態よりは本発明の作用効果が小さい。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0052】
実施例1
得られるチタン酸バリウム系化合物が下記式(A)の組成になるように、BaCO3 、TiO2 、Gd2 O3 、Nb2 O5 、SiO2 およびMn(NO3 )2 ・6H2 Oをそれぞれ秤量した後、純水ならびに粉砕用ボールとともにナイロン製ポット内に入れて6時間混合し、乾燥させて混合粉末を得た。
【0053】
(Ba0.999 Gd0.001 )1.02(Ti0.999 Nb0.001 )O3 +0.05SiO2+0.001Mn・・・(A)
【0054】
得られた混合粉末を仮成形し、これを1150℃の大気中に4時間保持して仮焼して、仮焼体を得た。次いで、この仮焼体を解砕して得た仮焼粉末を純水ならびに粉砕用ボールとともにナイロン製ポットに入れ、これに溶剤、バインダ及び可塑剤を添加してボールミルにて20時間混合し、半導体セラミック層形成用スラリーを得た。
【0055】
得られた半導体セラミック層形成用スラリーをペットフィルムの上にドクターブレード法で塗布、乾燥してグリーンシートを作製した。このグリーンシートの表面に内部電極用Niペーストをスクリーン印刷で印刷してNi内部電極層を形成した。
【0056】
内部電極層の一端面がセラミック層の左端部、右端部に交互に露出するようグリーンシートを積層し、これをプレスで積層方向に加圧、圧着した。圧着体をカッターで切断し、2mm×1.2mm×1.2mmの積層チップを得た。
【0057】
積層チップを大気中、300℃で8時間加熱保持してバインダを除去した後、H2/N2雰囲気中、1200℃で2時間、積層体を焼結し、素子本体10(焼結体)を得た。
【0058】
続いて、得られた素子本体10を大気中、700℃で2時間加熱保持することにより、再酸化処理を行った。酸化処理後の素子本体10に、スプレーでBi系無機ガラススラリーを吹き付けた後、大気中650℃で焼き付けて素子本体表面にガラス膜を形成した。
【0059】
続いてガラス膜が形成された本体の4側面および両端面に、図2(A)および図2(B)に示すようなパターンでAgペーストを塗布した後、大気中600℃で焼き付けて、放熱用端子電極6と外部端子電極4を形成した。このようにして得られた図1に示す構成の積層型PTCサーミスタ1について、放熱用端子電極6および両端部外部端子電極4の合わせて3端子で、図5に示すように、プリント配線基板からなる実装基板20上に半田付けした。
【0060】
実装基板20上に半田付けした積層型PTCサーミスタ1を恒温槽内に入れ、25℃における抵抗値(R25℃、単位:Ω)、及び200℃における抵抗値(R200℃、単位:Ω)、をそれぞれデジタルマルチメータにて測定した。さらに、25℃における抵抗値(R25℃)、200℃における抵抗値(R200℃)の各測定値から、PTCジャンプ{[log10(R200℃/R25℃)]、単位:桁}を求めた。
【0061】
また、上記3端子でプリント基板上にはんだ付けした積層型PTCサーミスタを25℃の恒温槽内に入れ、両端面の電極間に直流電源を接続して0Vより徐々に印加電圧を上昇させ、積層型サーミスタが破壊するまで昇圧し、破壊直前の電圧を耐電圧とした。これらの測定結果を表1に示す。
【0062】
なお、この実施例1では、図3に示すように、素子本体10の背面側側面10bにおいて、放熱用端子電極6の面積S1は、側面10bの全面積S0に対して、40〜70%の範囲内であった。
【0063】
実施例2
図7に示すように、素子本体の背面側側面10bのみに放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0064】
実施例3
図6に示すように、素子本体の背面側側面10bおよびその両側に位置する側面10cのみに放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0065】
実施例4
図8に示すように、素子本体の背面側側面10bにおいて、2つに分割された放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例2と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0066】
実施例5
図9に示すように、素子本体の背面側側面10bにおいて、3つに分割された放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例2と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0067】
比較例1
素子本体10にガラス膜5および放熱用端子電極6を形成していない以外は、実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0068】
比較例2
素子本体10にガラス膜5を形成していない以外は、実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0069】
比較例3
素子本体10に放熱用端子電極6を形成していない以外は、実施例1と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0070】
実施例6
図10に示すように、素子本体の背面側側面10bにおいて、放熱用端子電極6の幅L1が、外部端子電極4の電極側面部4bの幅L2より短く、放熱用端子電極6の面積S1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さい以外は、実施例2と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0071】
実施例7
図11に示すように、素子本体の背面側側面10bにおいて、放熱用端子電極6の面積S1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さい放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例2と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0072】
実施例8
図12に示すように、素子本体の背面側側面10bにおいて、放熱用端子電極6の面積S1が、側面10bの面積S0の40%よりも小さい放熱用端子電極6を形成した以外は、実施例4と同様にして積層型PTCサーミスタを作製し、そのR25℃、R200℃、PTCジャンプ、耐電圧をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示す測定結果から明らかなように、素子本体にガラス膜が形成されていない比較例1と比較例2では、PTCジャンプと耐電圧いずれも低い値となっている。これは、素子本体10の表面にガラス膜5が形成されていないために、基板実装時のフラックスの燃焼により、積層型PTCサーミスタ1の半導体セラミック層2が還元されたためと考えられる。また素子本体10にガラス膜5は形成されているが、放熱用端子電極6が形成されていない比較例3では、PTCジャンプが高いにも関わらず、20Vに満たない低い耐電圧となっている。
【0075】
これらの比較例1〜3に対して、実施例1〜8では、PTCジャンプも高く耐電圧も高いことがわかる。これは、放熱用端子電極6を介して実装基板20に熱を逃がすことができ、電圧印加時の素子発熱量を抑えることができたためと考えられる。なお、実施例6〜8に比較して、実施例1〜5での耐電圧が高いのは、放熱用端子電極6の面積が大きいためであると考えられる。
【符号の説明】
【0076】
1,1a〜1g…積層型PTCサーミスタ、
2…半導体セラミック層、
3…内部電極層、
4…外部端子電極、
4a…電極端面部、
4b…電極側面部、
5…ガラス膜、
6…放熱用端子電極、
10…素子本体、
10a…平面側側面、
10b…背面側側面、
10c…その他側面、
10d…端面
20…実装基板、
22…配線端子、
24…グランド端子、
30…半田。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体セラミック層と内部電極層とが交互に積層されている素子本体と、
前記内部電極層と電気的に接続され、前記素子本体の相互に向き合う両端面にそれぞれ設けられている外部端子電極と、を備える積層型PTCサーミスタであって、
前記素子本体の側面にはガラス膜が形成され、かつ前記素子本体の実装基板側の少なくとも1つの前記側面に放熱用端子電極が設けられていることを特徴とする積層型PTCサーミスタ。
【請求項2】
前記素子本体における隣り合う少なくとも3つの前記側面にわたって前記放熱用端子電極が形成してある請求項1に記載の積層型PTCサーミスタ。
【請求項3】
前記放熱用端子電極の各側面における面積割合が、当該放熱用端子電極が形成されている当該側面の面積に対して、35%以上であり、
前記放熱用端子電極が各側面において、前記外部端子電極に絶縁されるように形成してある請求項1または2に記載の積層型PTCサーミスタ。
【請求項4】
前記外部端子電極が半田により基板に接合してあると共に、これらの外部端子電極とは絶縁されて、前記放熱用端子電極は、半田により基板に接合されている請求項1〜3のいずれかに記載の積層型PTCサーミスタの実装構造。
【請求項1】
半導体セラミック層と内部電極層とが交互に積層されている素子本体と、
前記内部電極層と電気的に接続され、前記素子本体の相互に向き合う両端面にそれぞれ設けられている外部端子電極と、を備える積層型PTCサーミスタであって、
前記素子本体の側面にはガラス膜が形成され、かつ前記素子本体の実装基板側の少なくとも1つの前記側面に放熱用端子電極が設けられていることを特徴とする積層型PTCサーミスタ。
【請求項2】
前記素子本体における隣り合う少なくとも3つの前記側面にわたって前記放熱用端子電極が形成してある請求項1に記載の積層型PTCサーミスタ。
【請求項3】
前記放熱用端子電極の各側面における面積割合が、当該放熱用端子電極が形成されている当該側面の面積に対して、35%以上であり、
前記放熱用端子電極が各側面において、前記外部端子電極に絶縁されるように形成してある請求項1または2に記載の積層型PTCサーミスタ。
【請求項4】
前記外部端子電極が半田により基板に接合してあると共に、これらの外部端子電極とは絶縁されて、前記放熱用端子電極は、半田により基板に接合されている請求項1〜3のいずれかに記載の積層型PTCサーミスタの実装構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−204639(P2012−204639A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68293(P2011−68293)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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