説明

積層成形部材、及びシロキサン共重合ポリカーボネート

【課題】表面硬度及び滑り性に優れ、外観の良い積層成形部材の提供。
【解決手段】1種類以上のビスフェノール系化合物一般式(A)と、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるシロキサン共重合ポリカーボネートを主成分として含有する第1の組成物からなる層と、該第1の層と隣接する、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネートを主成分として含有する第2の組成物からなる層とを少なくとも有し、前記第1の組成物からなる層の表面が、鉛筆硬度H以上で、且つ静止摩擦係数が0.4以下である積層形成部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の構造のポリカーボネートを主成分として含有する組成物からなる層を有する、表面硬度及び滑り性に優れるとともに、外観の良い積層成形部材に関するものである。また、本発明は、当該積層部材等の作製に有用なシロキサン共重合ポリカーボネートにも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、優れた電気特性、難燃性、透明性、寸法安定性、及び機械的物性を示し、且つ軽量であることから、電気電子分野、自動車分野、及び建築資材分野で広く用いられている。特にビスフェノールA由来のポリカーボネート樹脂は、安価で透明性、耐衝撃強度に優れることから無機ガラスの代替材料として、シート状、及びフィルム状に成形され、電気電子部品、建築資材等に広く利用されている。しかしながら、ビスフェノールA由来のポリカーボネート樹脂は表面硬度に劣るという欠点があった。
【0003】
この問題を解決する手段として、ビスフェノールA由来のポリカーボネート樹脂の成形体の表面を改質する手法が種々提案され、例えば、シリコーン系もしくはアクリル系材料を用いて表面にハードコートを施す方法、及びアクリル系ポリマー材料の層を積層する方法が提案されている。また、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂基体の表面に、所定のフィラーが透明樹脂マトリックス中に分散してなる樹脂組成物からなる薄層を形成して、表面強度を改善することが提案されている。
これらの方法では、ビスフェノールA由来のポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂を主原料とする基体の表面に、ポリカーボネート樹脂と異なる材料からなる層を積層する必要があり、密着不良が生じ易く、また、吸水率の違い及び線膨張係数の違いにより反りの発生が生じ易いという問題があった。また、使用後のリサイクルの観点では、分別回収が困難であるという欠点もある。
【0004】
また、特許文献2には、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(以下、CBPZと略)を出発原料の一つとするポリカーボネート樹脂を用いることで、引掻き耐性特性(表面硬度)を改善することが提案されている。しかしながら、CBPZからなるポリカーボネート樹脂は、加熱溶融成形法により成形体を得る際に、熱劣化(焼け易い)しやすいという欠点があり、電気電子機器に搭載される表示パネルとして用いた際に外観が良好な積層成形体を得ることができなかった。
【0005】
一方、特許文献3〜8には、シロキサン構造単位を有するポリカーボネート共重合体からなる、キャストフィルム、押出成形フィルム、及び射出成形品が提案されているが、積層形成部材については、なんら記載されていない。
また、フィルム状又はシート状の成形体を連続的に生産するためには、長尺状のフィルムを支持体上で搬送し、巻き取る等の工程が必要であり、搬送を安定的に行うためには、シート状及びフィルム状の成形体には、ある程度の滑り性があることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−145015号公報
【特許文献2】特表2009−500195号公報
【特許文献3】特開平5−65354号公報
【特許文献4】特開平5−65399号公報
【特許文献5】特開平5−200761号公報
【特許文献6】特開平5−200827号公報
【特許文献7】特開平5−202181号公報
【特許文献8】特開平5−202182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、表面硬度及びすべり性に優れたポリカーボネート樹脂からなる積層成形部材の外観性の改善である。
より具体的には、表面硬度に優れるとともに、滑り性に優れ、しかも外観が良好な、ポリカーボネート樹脂組成物からなる積層成形部材を提供することを課題とする。
また、本発明は、表面硬度に優れるとともに、滑り性に優れ、しかも外観が良好な積層成形部材の作製に有用なシロキサン共重合ポリカーボネートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、芳香環にメチル基を有する所定の構造のビスフェノール化合物と、所定の構造のシロキサン構造を有する化合物とを原料とするシロキサン共重合ポリカーボネートが、熱劣化(焼け易い)し難い材料であるとともに、滑材としても作用して、滑り性の向上にも寄与し、さらに、高い表面硬度の形成体となり得るとの知見を得た。前記構造のシロキサン共重合ポリカーボネートは、ビスフェノールA由来のポリカーボネート樹脂と共に加熱溶融共押出しが可能であり、簡便な加熱溶融共押出成形法により、高い表面硬度を有するとともに、滑り性も良好で、且つ外観が良好な積層成形部材が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 1種類以上の一般式(A)
【化1】

(式中、Xは、
【0010】
【化2】

であり;R1及びR2はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表すか、R1とR2が結合して、炭素原子数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成する基を表し;R3及びR4はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;aは0〜20の整数を表す。)で表される化合物と、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるシロキサン共重合ポリカーボネートを主成分として含有する第1の組成物からなる層と、該第1の層と隣接する、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネートを主成分として含有する第2の組成物からなる層と、を少なくとも有し、前記第1の組成物からなる層の表面が、鉛筆硬度H以上で、且つ静止摩擦係数が0.4以下である積層形成部材。
【0011】
[2] 前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、一般式(B)、一般式(C)、一般式(D)、及び一般式(E)の群から選ばれる化合物である[1]の積層形成部材。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(式中、R5〜R9は各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基を有することもでき;R10は炭素原子数1〜10の脂肪族基を表すか、又は結合を表し;Yは、
【0012】
【化7】

から選ばれた構造単位の組合せからなる直鎖状もしくは分岐状の単独重合体、又はブロックもしくはランダム共重合体を表し、重合度は1〜200であり;R11〜R15は各々独立して水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基を有することもできる。Zは、
【0013】
【化8】

であり;R16及びR17はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表すか、R16とR17が結合して、炭素原子数5〜20の炭素環又は元素数5〜12の複素環を形成する基を表し;R18及びR19はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;cは0〜20の整数を表す。)
【0014】
[3] 前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、一般式(D)で表される化合物である[2]の積層形成部材。
[4] 前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、一般式(E)で表される化合物である[2]の積層形成部材。
[5] 前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、一般式(B)で表される化合物である[2]の積層形成部材。
[6] 前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、一般式(C)で表される化合物である[2]の積層形成部材。
[7] 一般式(B)、一般式(C)、一般式(D)、及び一般式(E)中のR11〜R15がそれぞれ、メチル基、n−ブチル基、又は及びフェニル基から選ばれる基である[2]〜[6]のいずれかの積層形成部材。
[8] 前記シロキサン共重合ポリカーボネート中の、前記1種類以上の一般式(A)で表される化合物の割合が、全モノマー成分(1種類以上の一般式(A)で表される化合物+1種類以上のシロキサン構造を有する化合物)に対して、90〜99.9重量%である[1]〜[7]のいずれかの積層形成部材。
[9] 前記シロキサン共重合ポリカーボネート中の、前記1種類以上の一般式(A)で表される化合物が、全モノマー成分(1種類以上の一般式(A)で表される化合物+1種類以上のシロキサン構造を有する化合物)に対して、95〜99.5重量%である[1]〜[8]のいずれかの積層形成部材。
[10] 前記シロキサン共重合ポリカーボネートの極限粘度[η]が、0.2〜1.0〔dl/g〕である[1]〜[9]のいずれかの積層形成部材。
[11] 前記1種類以上の一般式(A)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1’−ビフェニル−3,3’−ジメチル−4,4’−ジオール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシ3−メチルフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロへキサン、及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3メチルフェニル)フルオレンの群から選ばれる化合物である[1]〜[10]のいずれかの積層形成部材。
【0015】
[12] 前記シロキサン共重合ポリカーボネートが、一般式(A1)
【化9】

(式中、X1は、
【化10】

で表される化合物と、一般式(A2)
【化11】

(式中、X2は、
【化12】

であり;R1’及びR2’はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;R3及びR4はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;aは0〜20の整数を表す。)で表される化合物と、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるシロキサン共重合ポリカーボネートである[1]〜[10]のいずれかの積層形成部材。
【0016】
[13] 前記1種類以上の一般式(A)で表される化合物が、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタンである[1]〜[12]のいずれかの積層形成部材。
[14] 前記炭酸エステル形成化合物が、ホスゲンである[1]〜[13]のいずれかの積層形成部材。
[15] 第1及び第2の組成物を溶融共押出法によって成形してなる[1]〜[14]のいずれかの積層成形部材。
[16] シート状又はフィルム状である[1]〜[15]のいずれかの積層成形部材。
【0017】
[17] 1種以上の一般式(A1)
【化13】

(式中、X1は、
【化14】

で表される化合物と、1種以上の一般式(A2)
【化15】

(式中、X2は、
【化16】

であり;R1’及びR2’はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;R3及びR4はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;aは0〜20の整数を表す。)で表される化合物と、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られ、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、全モノマー成分(1種類以上の一般式(A1)で表される化合物+1種類以上の一般式(A2)で表される化合物+1種類以上のシロキサン構造を有する化合物)に対して、0.1〜10重量%であり、ガラス転移温度(Tg)が130〜160℃であるシロキサン共重合ポリカーボネート。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、表面硬度に優れ、滑り性が良好で、しかも外観が良好な積層成形部材を提供することができる。
また、本発明によれば、表面硬度に優れるとともに、滑り性に優れ、しかも外観が良好な積層成形部材の作製に有用なシロキサン共重合ポリカーボネートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の積層形成部材は、所定のシロキサン共重合ポリカーボネートを主成分として含有する第1の組成物と、該第1の層と隣接する、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネートを主成分として含有する第2の組成物からなる層とを少なくとも有する積層形成部材に関する。
まず、第1及び第2の組成物について詳細に説明する。
1.第1の組成物
第1の組成物は、
1種類以上の一般式(A)
【化17】

(式中、Xは、
【化18】

であり;R1及びR2はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表すか、R1とR2が結合して、炭素原子数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成する基を表し;R3及びR4はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;aは0〜20の整数を表す。)で表される化合物と、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるシロキサン共重合ポリカーボネートを主成分として含有する。
【0020】
本発明では、前記一般式(A)で表される化合物1種のみ用いても、2種以上併用してもよい。但し、本発明のポリカーボネートは、前記一般式(A)で表される化合物以外のビスフェノール類から誘導される単位を含まない。
前記一般式(A)で表される化合物の具体例には、1,1’−ビフェニル−3,3’−ジメチル−4,4’−ジオール、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジメチル−4,4’−ジオール、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ケトン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、2,2―ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ブタン、2,2―ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロへキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)シクロへキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)シクロドデカン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、3,3’−ジメチル−4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、2,2’−ジメチル−4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールなどが例示される。これらは、2種類以上併用して用いてもよい。
【0021】
また、これらの中でも特に2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1’−ビフェニル−3,3’−ジメチル−4,4’−ジオール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシ3−メチルフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロへキサン、及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3メチルフェニル)フルオレンが好ましい。
【0022】
前記1種以上の一般式(A)のビスフェノール類は、純度が98%以上に精製されたものが好ましく、さらに好ましくは、99%以上に精製されたものである。特に2,4’−ジヒドロキシ化合物等を始めとする異性体等の多いものは、反応性も低下し重合の制御が困難となり好ましくない。
【0023】
前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物は、一般式(B)、一般式(C)、一般式(D)、及び一般式(E)の群から選ばれる化合物であるのが好ましい。
【0024】
【化19】

【0025】
式中、R5〜R9は各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基を有することもでき;R10は炭素原子数1〜10の脂肪族基を表すか、又は結合を表し;Yは、
【0026】
【化20】

【0027】
から選ばれた構造単位の組合せからなる直鎖状もしくは分岐状の単独重合体、又はブロックもしくはランダム共重合体を表し、重合度は1〜200(好ましくは5〜100、より好ましくは10〜80、さらに好ましくは20〜70、よりさらに好ましくは20〜60)であり;R11〜R15は各々独立して水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基を有することもできる。Zは、
【0028】
【化21】

【0029】
である。R16及びR17はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表すか、R16とR17が結合して、炭素原子数5〜20(好ましくは5〜10、より好ましくは5〜7)の炭素環又は元素数5〜12の複素環を形成する基を表し;R18及びR19はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12のアリール基を表し;cは0〜20(好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5)の整数を表す。
【0030】
式(B)中、ヒドロキシ基は、−C(R9)(R19−Y)−に対してパラ位に置換しているのが好ましい。また、式(B)中、R5〜R8は水素原子、又は炭素原子数1〜10(より好ましくは炭素原子数1〜5)のアルキル基であるのが好ましい。R5及びR6の一方が水素原子で、他方が炭素原子数1〜10(より好ましくは炭素原子数1〜5)のアルキル基;及びR7及びR8の一方が水素原子で、他方が炭素原子数1〜10(より好ましくは炭素原子数1〜5)のアルキル基であるのがより好ましい。なお、アルキル基の置換位置は、−C(R9)(R10−Y)−に対してメタ位であるのが好ましい。
【0031】
式(C)中、ヒドロキシ基は、−R10−Yに対してオルト位又はパラ位に置換しているのが好ましく、オルト位に置換しているのがより好ましい。また、式(C)中、R5及びR6は、水素原子、炭素原子数1〜10(より好ましくは炭素原子数1〜5)のアルキル基、又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基であるのが好ましく、双方が水素原子であるのがより好ましい。
【0032】
式(D)中、ヒドロキシ基は、−Z−に対してパラ位に置換しているのが好ましく、また、−R10−Yは、−Z−に対してメタ位に置換しているのが好ましい。また、式(D)中、R5〜R8はそれぞれ、水素原子、又は炭素原子数1〜10(より好ましくは炭素原子数1〜5)のアルキル基であるのが好ましく、全てが水素原子であるのがより好ましい。
【0033】
式(E)中、ヒドロキシ基は、−R10−Y−Si(R11)(R12)−R10−に対して、オルト位又はパラ位に置換しているのが好ましく、オルト位に置換しているのがより好ましい。また、式(E)中、R5〜R8はそれぞれ、炭素原子数1〜10(より好ましくは炭素原子数1〜5)のアルキル基、又は炭素原子数1〜5のアルコキシ基であるのが好ましく、全てが水素原子であるのがより好ましい。
【0034】
前記一般式(B)、一般式(C)、一般式(D)、及び一般式(E)中のシロキサンセグメントの置換基、即ち、R11〜R15はそれぞれ、メチル基、n−ブチル基、又は及びフェニル基から選ばれる基であるのが好ましい。これら互いに同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0035】
式(B)で表されるシロキサン化合物の例には、下記式(B’)で表される化合物が含まれる。
【化22】

【0036】
式(B’)中のR10及びR15は、式(B)中のR10及びR15とそれぞれ同義であり、xは10〜80の数である。
式(B’)中、R10はC110(より好ましくはC510)のアルキレン基であるのが好ましく、及びR15はC110(より好ましくはC15)のアルキル基であるのが好ましく、xは20〜60の数であるのが好ましい。
【0037】
前記一般式(B)で表されるシロキサン化合物の例には、下記構造式の化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。下記構造式の化合物中、シロキサンセグメントは、直鎖状又は分岐状であってもよく、また2以上のセグメントは、互いに同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0038】
【化23】

【0039】
上記Ybには、ジメチルシロキサン単位が1〜200(好ましくは5〜100、より好ましくは10〜80、さらに好ましくは20〜70、よりさらに好ましくは20〜60)個含まれるものが好ましい。中でも、特に、α−11−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ウンデカン−ω−ブチル−ポリジメチルシロキサン、及びα−3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン−ω−ブチル−ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0040】
式(C)で表される化合物の例には、下記式(C’)で表される化合物が含まれる。
【化24】

【0041】
式(C’)中のR10及びR15は、式(C)中のR10及びR15とそれぞれ同義であり、xは10〜80の数である。
式(C’)中、R10はC110(より好ましくはC510)のアルキレン基であるのが好ましく、及びR15はC110(より好ましくはC15)のアルキル基であるのが好ましく、xは20〜60の数であるのが好ましい。
【0042】
前記一般式(C)で表されるシロキサン化合物の例には、下記構造式のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。下記構造式の化合物中、シロキサンセグメントは、直鎖状又は分岐状であってもよく、また2以上のセグメントは、互いに同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0043】
【化25】

【0044】
上記Ycには、ジメチルシロキサンが1〜200(好ましくは5〜100、より好ましくは10〜80、さらに好ましくは20〜70、よりさらに好ましくは20〜60)個含まれるものが好ましい。中でも、特に、α−3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピル−ω−ブチル−ポリジメチルシロキサン、α−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル−ω−ブチル−ポリジメチルシロキサン、α−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシ−フェニル)プロピル−ω−ブチル−ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0045】
前記式(D)で表される化合物の例には、下記式(D’)で表される化合物が含まれる。
【化26】

【0046】
式(D’)中のR10及びR15は、式(D)中のR10及びR15と同義であり、xは10〜80の数である。
式(D’)中、R10はC110(より好ましくはC15)のアルキレン基であるのが好ましく、R15はC110(より好ましくはC15)のアルキル基であるのが好ましく、xは20〜60であるのがより好ましい。
【0047】
前記一般式(D)で表されるシロキサン化合物の例には、下記構造式のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。下記構造式の化合物中、シロキサンセグメントは、直鎖状又は分岐状であってもよく、また2以上のセグメントは、互いに同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0048】
【化27】

【0049】
上記Ydには、ジメチルシロキサンが1〜200(好ましくは5〜100、より好ましくは10〜80、さらに好ましくは20〜70、よりさらに好ましくは20〜60)個含まれるものが好ましい。中でも、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ポリジメチルシロキシプロピル)プロパンが好ましい。
【0050】
式(E)で表される化合物の例には、下記式(E’)で表される化合物が含まれる。
【化28】

【0051】
式(E’)中のR10は、式(E)中のR10と同義であり、xは10〜80の数である。
式(E’)中、R10はC110(より好ましくはC15)のアルキレン基であるのが好ましく、xは20〜60の数であるのが好ましい。
【0052】
前記一般式(E)で表されるシロキサン化合物の例には、下記構造式のものが含まれるが、これらに限定されるものではない。下記構造式の化合物中、シロキサンセグメントは、直鎖状又は分岐状であってもよく、また2以上のセグメントは、互いに同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0053】
【化29】

【0054】
上記Yeには、ジメチルシロキサンが1〜100(好ましくは5〜100、より好ましくは10〜80、さらに好ましくは20〜70、よりさらに好ましくは20〜60)個含まれるものが好ましい。中でも、特に、α,ω−ビス[3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0055】
前記シロキサン共重合ポリカーボネート中の、前記1種類以上の一般式(A)で表される化合物が、全モノマー成分(1種類以上の一般式(A)で表される化合物+1種類以上のシロキサン構造を有する化合物)に対して、90〜99.9重量%であるのが好ましく、95〜99.5重量%であるのがより好ましい。
なお、シロキサン共重合ポリカーボネートは、シロキサン構造を有する化合物、及び一般式(A)で表される化合物、及び一般式(B)で表される化合物をそれぞれ2種以上利用して製造されるものであってもよいが、但し、前記シロキサン共重合ポリカーボネートは、これらのモノマー類以外のビスフェノール類から誘導される単位を含まない。好ましい例として、1種の一般式(A)で表される化合物及び1種の一般式(B)で表される化合物からそれぞれ誘導される単位を含むシロキサン共重合ポリカーボネート;並びに2種の一般式(A)で表される化合物及び1種の一般式(B)で表される化合物からそれぞれ誘導される単位を含むシロキサン共重合ポリカーボネート;が挙げられる。
【0056】
一方、本発明に利用可能な前記炭酸エステル形成性化合物の例には、ホスゲン、並びにジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、及びジナフチルカーボネートなどのビスアリルカーボネートが含まれる。
前記シロキサン共重合ポリカーボネートの製造には、前記炭酸エステル形成化合物を1種のみ用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
前記シロキサン共重合ポリカーボネートは、ビスフェノールAと炭酸エステル形成化合物からポリカーボネートを製造する際に利用される種々の方法、例えば、ビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、及びビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法のいずれの方法を採用しても製造することができる。
【0058】
ホスゲン法とエステル交換法では、1種以上の一般式(A)で表される化合物、及び1種以上のシロキサン構造を有する化合物の反応性を考慮した場合、ホスゲン法の方が好ましい。
【0059】
ホスゲン法においては、通常酸結合剤及び溶媒の存在下において、前記ビスフェノール類とホスゲンを反応させる。酸結合剤としては、例えばピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが用いられ、また溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルムなどが用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン又は第四級アンモニウム塩などの触媒を、また重合度調節には、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキル置換フェノール等一官能基化合物を分子量調節剤として加えることが好ましい。また、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトなどの酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノールなど分岐化剤を小量添加してもよい。反応は通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲とするのが適当である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0060】
一方、エステル交換法においては、前記ビスフェノール類とビスアリールカーボネートとを混合し、減圧下で高温において反応させる。反応は通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また減圧度は最終で好ましくは1mmHg以下にして、エステル交換反応により生成した該ビスアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜24時間程度である。反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく。また、所望に応じ、分子量調節剤、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。
【0061】
前記シロキサン共重合ポリカーボネートを溶融押出成形して、本発明の積層形成部材を作製する態様では、前記シロキサン共重合ポリカーボネートの極限粘度0.2〜1.0dl/gの範囲であることが好ましく、極限粘度が0.3dl/gを超え0.6dl/g以下であることがより好ましく、0.33〜0.4dl/gであるのがさらに好ましく、0.33dl/g以上0.4dl/g未満であるのがよりさらに好ましい。前記シロキサン共重合ポリカーボネートの極限粘度が前記範囲であると、シートもしくはフィルム状に成形した際に機械的強度が十分となり、また成形性も良好である。
【0062】
前記シロキサン共重合ポリカーボネートは、ガラス転移温度(Tg)が、130〜165℃であるのが好ましい。ガラス転移温度が、上記範囲であるので、後述する、ビスフェノールA由来のポリカーボネート樹脂と共に、加熱溶融共押出法といった簡易な方法で、積層成形部材として成形することができる。前記シロキサン共重合ポリカーボネートのTgは、130〜160℃であることが好ましく、140〜160℃であることがさらに好ましい。
なお、GPCによって測定される重量平均分子量(ポリスチレン換算)が、30,000〜70,000程度であると、粘度が上記範囲となる。
【0063】
前記シロキサン共重合ポリカーボネートの一例は、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3メチルフェニル)フルオレン(BCFL)と、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1’−ビフェニル−3,3’−ジメチル−4,4’−ジオールから選ばれる少なくとも1種と、前記一般式(B)〜(E)で表される化合物の少なくとも1種とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるシロキサン共重合ポリカーボネートである。この例では、BCFLの割合は、前記一般式(A)で表される他の化合物と比較して等しいか、又はより少ないのが好ましく、例えば、1種以上の前記一般式(A)で表される化合物の全重量中、20〜50重量%程度であるのが好ましい。但し、この範囲に限定されるものではない。
【0064】
前記シロキサン共重合ポリカーボネートの他の例は1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロへキサン(CBPZ)と、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1’−ビフェニル−3,3’−ジメチル−4,4’−ジオールから選ばれる少なくとも1種と、前記一般式(B)〜(E)で表される化合物の少なくとも1種とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるシロキサン共重合ポリカーボネートである。この例では、CBPZの割合は、前記一般式(A)で表される他の化合物と比較して等しいか、又はより多いのが好ましく、例えば、1種以上の前記一般式(A)で表される化合物の全重量中、50〜90重量%程度であるのが好ましい。但し、この範囲に限定されるものではない。
【0065】
前記シロキサン共重合ポリカーボネートの他の例は、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタンと、前記一般式(B)〜(E)で表される化合物の少なくとも1種とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるシロキサン共重合ポリカーボネートである。
【0066】
また、前記シロキサン共重合ポリカーボネートの他の例は、1種以上の一般式(A1)
【化30】

(式中、X1は、
【化31】

で表される化合物と、1種以上の一般式(A2)
【化32】

(式中、X2は、
【化33】

であり;R1’及びR2’はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;R3及びR4はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;aは0〜20の整数を表す。)で表される化合物と、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られ、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、全モノマー成分(1種類以上の一般式(A1)で表される化合物+1種類以上の一般式(A2)で表される化合物+1種類以上のシロキサン構造を有する化合物)に対して、0.1〜10重量%であり、ガラス転移温度(Tg)が130〜160℃であるシロキサン共重合ポリカーボネートである。
前記1種以上のシロキサン構造を有する化合物は、式(B)〜(E)で表される化合物群から選択されるのが好ましく、またそれらの化合物の中の好ましい例も、上記と同様である。また、式(A2)で表される化合物は、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1’−ビフェニル−3,3’−ジメチル−4,4’−ジオールから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0067】
前記第1の組成物は、前記シロキサン共重合ポリカーボネートを主成分として含有する。ここで「主成分として含有する」とは、組成物の全成分(溶媒を含む場合は溶媒を除いた全成分)の合計重量に対して、50重量%以上含有する状態をいい、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含有する状態をいう。
【0068】
前記第1の組成物は、主成分である前記シロキサン共重合ポリカーボネート以外に、1種以上の添加剤を含有していてもよい。添加剤の例には、成形時に必要な安定性や離型性を確保することを目的として添加される添加剤が挙げられ、具体的には、ヒンダードフェノール系やホスファイト系酸化防止剤;シリコン系、脂肪酸エステル系、脂肪酸系、脂肪酸グリセリド系、密ろう等天然油脂などの滑剤や離型剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系、サリチレート系等の光安定剤;ポリアルキレングリコール、脂肪酸グリセリド等帯電防止剤;などが挙げられる。これらは、主成分である前記シロキサン共重合ポリカーボネートに対して、1重量%程度以下添加されるであろう。
本発明では、第1の組成物は、主成分として含む前記シロキサン共重合ポリカーボネート以外のポリカーボネート樹脂類を含まないのが好ましい。
【0069】
2.第2の組成物
本発明に用いる第2の組成物は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ち、ビスフェノールA、から誘導されるポリカーボネートを主成分として含有する。
第2の組成物が主成分として含有するポリカーボネートは、ビスフェノールAから誘導される繰り返し単位を有するポリカーボネート類である限りいずれであってもよい。但し、溶融共押出法により本発明の積層成形部材を形成する場合は、第1の組成物と第2の組成物のガラス転移温度の差が、10℃以下(より好ましくは5℃以下)であるのが好ましく、そのためには、第2の組成物が主成分として含有するポリカーボネートのガラス転移温度は、140〜155℃程度であるのが好ましい。前記範囲にガラス転移温度を有する、ビスフェノールAから誘導される単位を有するポリカーボネート類の中には、市販されているものもあり、例えば、「ユーピロンE−2000R」、「ユーピロンS−1000R」、「ユーピロンS−2000R」、「ユーピロンS−3000R」、「ユーピロンH−3000R」及び「ユーピロンH−4000」(全て、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)などがその例であり、これらの市販品を利用するのも好ましい。
【0070】
前記第2の組成物は、主成分であるポリカーボネート以外に、1種以上の添加剤を含有していてもよい。添加剤の例としては、第1の組成物に添加可能な添加剤の例と同様である。添加剤は、主成分であるポリカーボネートに対して、1重量%程度以下添加されるであろう。
また、本発明では、第2の組成物は、主成分として含むポリカーボネート以外のポリカーボネート樹脂類を含まないのが好ましい。
【0071】
3.積層形成部材
本発明の積層形成物は、第1の組成物からなる層と、該第1の層と隣接する、第2の組成物からなる層とを少なくとも有し、前記第1の組成物からなる層の表面が、鉛筆硬度H以上で、且つ静摩擦係数が0.4以下である積層形成部材である。前記第1の組成物が主成分として含有する前記シロキサン共重合ポリカーボネートは、シロキサン構造のユニットを含むので、滑材としても作用し、静摩擦係数の低下に寄与するが、一方で、シロキサン構造のユニットは、白色濁りを発生させ、外観を低下させる一因となる場合もある。本発明者が鋭意検討したところ、シロキサン化合物の共重合比が0.1〜10重量%(好ましくは0.5〜5重量%)であれば、シロキサン構造のユニットに起因した外観不良を引き起こすことなく、安定的に、表面硬度及び滑り性が良好である積層形成部材をより安定的に提供できることがわかった。
なお、本明細書では、「鉛筆硬度H以上」とは、試料表面に対して、鉛筆引っかき試験(JIS−K5600−5−4準拠;三菱鉛筆UNIのH使用)を実施し、5回の測定で傷発生が2回以下である場合をいう。また、静止摩擦係数は、高いほどよいが、これらの特性を満足することにより、高い表面硬度が要求される用途にも利用でき、また安定的な連続生産が可能となる。
【0072】
本発明の積層形成部材の製造方法については特に制限はない。溶融押出成形、射出成形、圧縮成形、湿式成形など公知の成形法で成形可能である。特に、前記シロキサン共重合ポリカーボネートは、熱劣化し難いので、溶融押出成形法等、加熱溶融成形法の原料として適する。
本発明の積層成形部材の製造方法の一例は、以下の通りである。
まず、前記第1及び第2の組成物をそれぞれ調製する。例えば、前記シロキサン共重合ポリカーボネートの粉末と、所望により添加剤とを混合して、第1の組成物を調製する。第2の組成物についても同様に調製する。次に、主押出機に第2の組成物を、及び副押出機に第1の組成物をそれぞれ導入し、シリンダー温度を220〜320℃程度に設定しそれぞれ溶融した後、Tダイから溶融共押出する。シート状に押出された溶融物を、その後、表面温度110〜160℃程度に設定した水平2本ロール間を通過させて、シート状又はフィルム状の積層成形部材を得る。
上記方法は、一例であり、この条件等に限定されるものではない。温度条件等の製造条件は、適宜設定することができる。また、上記では、2層からなる積層成形部材の製造方法の例を示したが、共押出法におり、3層以上からなる積層成形部材を製造することも勿論可能である。
【0073】
本発明の積層成形部材の形状については、特に制限はない。シート状及びフィルム状に成形されたものが挙げられる。また、第1の組成物からなる層、及び第2の組成物からなる層の厚みについても特に制限はなく、その相対的関係についても特に制限はない。前記シロキサン共重合ポリカーボネートを主成分として含有する第1の組成物からなる層は、特に高い硬度を示すので、例えば、第2の組成物からなる基体(例えば、厚みは20〜30,000μm程度)の表面に、第1の組成物からなる、高い表面硬度の層(例えば、厚みは30〜300μm程度)を有する態様が一例として挙げられる。
【0074】
本発明の積層成形部材は、電気電子分野、自動車分野、及び建築資材分野の部材として広く利用することができる。特に高い表面硬度を示し、外観も良好であるので、電気電子機器に搭載される表示パネル用の部材として有用である。
本発明の積層成形部材を構成する2つの層はいずれもポリカーボネート類を主成分として含有するので、密着性が良好であり、また吸水率の違いや線膨張係数の違いなどに起因する反りの発生なども生じ難い。また、他のポリマー類と混合した部材や、他のポリマー類からなるコート層を形成した部材と比較して、リサイクルの観点でも好ましい。
また、本発明のシロキサン共重合ポリカーボネートを主成分とする層のさらに表層(第2の組成物からなる基体の反対側)に、公知の熱硬化、紫外線硬化ハードコートをさらに積層させて表面硬度を向上させることもできる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何らの制限を受けるものではない。
【0076】
1.ポリカーボネートの合成
[合成例1]
7.0w/w%の水酸化ナトリウム水溶液700mlに、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(本州化学工業株式会社製、以下「BCFL」と略称)30.0g(0.079mol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(本州化学工業株式会社製、以下「BPC」と略称)60.1g(0.235mol)、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド0.08g、及びハイドロサルファイト0.2gを溶解した。
これにメチレンクロライド500mlを加えて撹拌しつつ、15℃に保ちながら、ついでホスゲン45gを30分で吹き込んだ。
ホスゲン吹き込み終了後、p−t−ブチルフェノール(以下「PTBP」と略称)2.36g、および下記構造のシロキサンモノマー(信越化学工業株式会社製、以下「Si−1」と略称)0.91gを加え激しく撹拌して、反応液を乳化させ、乳化後、1mlのトリエチルアミンを加え、20〜25℃にて約1時間撹拌し、重合させた。
【0077】
【化34】

【0078】
重合終了後、反応液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、先液(水相)の導電率が10μS/cm以下になるまで水洗を繰り返した。得られた重合体溶液を、60℃に保った温水に滴下し、溶媒を蒸発除去して白色粉末状沈殿物を得た。得られた沈殿物を濾過し、120℃、24時間乾燥して、重合体粉末を得た。
この重合体の塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における極限粘度は0.38dl/gであった。得られた重合体を赤外線吸収スペクトルにより分析した結果、1770cm-1付近の位置にカルボニル基による吸収、1240cm-1付近の位置にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有する下記構造式で示されるシロキサン共重合ポリカーボネート(以下PC−1と略称)であることが確認された。
【0079】
【化35】

【0080】
[合成例2]
Si−1 0.91gを、下記構造のシロキサンモノマー(信越化学工業株式会社製、以下「Si−2」と略称)0.91gに変更した以外は実施例1と同様に合成を行った。
【0081】
【化36】

【0082】
得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−2と略称)の極限粘度は0.37dl/gであった。ポリカーボネートであることの確認は、合成例1と同様にして行った。
【0083】
【化37】

【0084】
[合成例3]
Si−1 0.91gを、下記構造のシロキサンモノマー(信越化学工業株式会社製、以下「Si−3」と略称)0.91gに変更した以外は実施例1と同様に合成を行った。
【0085】
【化38】

【0086】
得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−3と略称)の極限粘度は0.38dl/gであった。ポリカーボネートであることの確認は、合成例1と同様にして行った。
【0087】
【化39】

【0088】
[合成例4]
Si−1 0.91gを、下記構造のシロキサンモノマー(信越化学工業株式会社製、以下「Si−4」と略称)0.91gに変更した以外は実施例1と同様に合成を行った。
【0089】
【化40】

【0090】
得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−4と略称)の極限粘度は0.36dl/gであった。ポリカーボネートであることの確認は、合成例1と同様にして行った。
【0091】
【化41】

【0092】
[合成例5]
BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 60.1g(0.235mol)を、BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 60.6g(0.237mol)に変更し、Si−1 0.91gをSi−1 0.46gに変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−5と略称)の極限粘度は0.39dl/gであった。ポリカーボネートであることの確認は、合成例1と同様にして行った。
【0093】
[合成例6]
BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 60.1g(0.235mol)を、BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 50.5g(0.221mol)に変更し、Si−1 0.91gをSi−1 4.55gに変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−6と略称)の極限粘度は0.33dl/gであった。ポリカーボネートであることの確認は、合成例1と同様にして行った。
【0094】
[合成例7]
Si−1 0.91gを、Si−1 0.46g及びSi−4 0.45gに変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−7と略称)の極限粘度は0.37dl/gであった。ポリカーボネートであることの確認は、合成例1と同様にして行った。
【0095】
【化42】

【0096】
[合成例8]
BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 60.1g(0.235mol)を、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(本州化学工業株式会社製、以下「CBPZ」と略称)72.1g(0.244mol)及び1,1‘−ビフェニル−3,3’−ジメチル−4,4‘−ジオール(本州化学工業株式会社製、以下「CBP」と略称)18.0g(0.084mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−8と略称)の極限粘度は0.33dl/gであった。ポリカーボネートであることの確認は、合成例1と同様にして行った。
【0097】
【化43】

【0098】
[合成例9]
BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 60.1g(0.235mol)を、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン(本州化学工業株式会社製、以下「CBPAP」と略称)90.1g(0.283mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−9と略称)の極限粘度は0.38dl/gであった。ポリカーボネートであることの確認は、合成例1と同様にして行った。
【0099】
【化44】

【0100】
[合成例10]
BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 60.1g(0.235mol)を、BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 61.0g(0.238mol)に変更し、Si−1 0.91gを添加しなかった以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−10と略称)の極限粘度は0.40dl/gであった。
【0101】
[合成例11]
BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 60.1g(0.235mol)を、BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 61.0g(0.238mol)に変更し、Si−1 0.91gを、Si−1 0.046gに変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−11と略称)の極限粘度は0.39dl/gであった。
【0102】
[合成例12]
BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 60.1g(0.235mol)を、BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 47.4g(0.185mol)に変更し、Si−1 0.91gを、Si−1 13.65gに変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−12と略称)の極限粘度は0.30dl/gであった。
【0103】
[合成例13]
BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 60.1g(0.235mol)を、CBPZ 94.7g(0.320mol)に、PTBP 2.36gを1.92gに変更し、Si−1 0.91gを添加しなかった以外は、合成例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−13と略称)の極限粘度は、0.37dl/gであった。
【0104】
[合成例14]
BCFL 30.0g(0.079mol)及びBPC 60.1g(0.235mol)を、CBPAP 45.1g(0.142mol)及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(三井化学株式会社製、以下「BPA」と略称)45.0g(0.197mol)に変更した以外は、実施例1と同様に合成を行った。得られたポリカーボネート樹脂(以下PC−14と略称)の極限粘度は0.39dl/gであった。
【0105】
【化45】

【0106】
2.積層形成部材の作製と評価
合成例1〜9と同じ原料仕込み比率でスケールアップ試作を行い、シート成形実施可能な重合体粉末を30kg以上製造した。得られたPC−1〜9それぞれの粉末に、トリス(2,4−ジターシャリーブチルフェニル)ホスファイト0.01重量%を混合後した粉末を副押出機(ベント付25mm単軸押出機、ムサシノキカイ株式会社製MK−25、シリンダー温度290℃)へ、またポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社、ユーピロンE−2000R;ガラス転移温度は150℃)を主押出機(ベント付30mm単軸押出機、ムサシノキカイ株式会社製MK−30、シリンダー温度290℃)にそれぞれ導入し、フィードブロック型のTダイを経て、水平2本ロール(ロール温度:150℃)により除冷し、積層押出シート(表面100μm厚にPC−1〜9、裏面200μm厚にポリカーボネート樹脂)を得た。得られた積層シートの表面に関して、鉛筆引っかき試験(JIS−K5600−5−4準拠)、静摩擦係数の測定、および目視によるシート外観評価を行った。
【0107】
合成例10〜14と同じ原料仕込み比率でスケールアップ試作を行い、シート成形実施可能な重合体粉末を30kg以上製造した。得られたPC−10〜14のそれぞれの粉末を用いた以外は、上記と同様にして、比較例用の積層押出シートをそれぞれ作製し、同様に評価した。
【0108】
結果を下記表に示す。なお、評価方法は以下の通りである。
極限粘度は、温度20℃で、各ポリマーの0.5%ジクロロメタン溶液を調製し、ハギンズ定数0.45で測定した値である。
ガラス転移温度(Tg)は、島津製作所製:DCS−50にて、窒素気流下にて測定(接線法によりTg算出)した値である。
メルトボリュームレイト(MVR)は、東洋精機製:D−Aにて、300℃、1.2kg荷重にて測定した値である。
鉛筆引っかき試験は、JIS−K5600−5−4準拠して、三菱鉛筆製UNIを使用して測定し、積層成形部材の試料の表面(PC−1〜14)に5回測定を行い、傷発生が2回以下なら合格とした。
静摩擦係数は、新東科学株式会社製 トライボギア ポータブル摩擦計 TYPE:94i―IIを用い、6ballにて測定した値である。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上の一般式(A)
【化1】

(式中、Xは、
【化2】

であり;R1及びR2はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表すか、R1とR2が結合して、炭素原子数5〜20の炭素環または元素数5〜12の複素環を形成する基を表し;R3及びR4はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;aは0〜20の整数を表す。)で表される化合物と、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるシロキサン共重合ポリカーボネートを主成分として含有する第1の組成物からなる層と、該第1の層と隣接する、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネートを主成分として含有する第2の組成物からなる層と、を少なくとも有し、前記第1の組成物からなる層の表面が、鉛筆硬度H以上で、且つ静止摩擦係数が0.4以下である積層形成部材。
【請求項2】
前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、一般式(B)、一般式(C)、一般式(D)、及び一般式(E)の群から選ばれる化合物である請求項1に記載の積層形成部材。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(式中、R5〜R9は各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基を有することもでき;R10は炭素原子数1〜10の脂肪族基を表すか、又は結合を表し;Yは、
【化7】

から選ばれた構造単位の組合せからなる直鎖状もしくは分岐状の単独重合体、又はブロックもしくはランダム共重合体を表し、重合度は1〜200であり;R11〜R15は各々独立して水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には置換基として、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基を有することもできる。Zは、
【化8】

であり;R16及びR17はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表すか、R16とR17が結合して、炭素原子数5〜20の炭素環又は元素数5〜12の複素環を形成する基を表し;R18及びR19はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;cは0〜20の整数を表す。)
【請求項3】
前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、一般式(D)で表される化合物である請求項2に記載の積層形成部材。
【請求項4】
前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、一般式(E)で表される化合物である請求項2に記載の積層形成部材。
【請求項5】
前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、一般式(B)で表される化合物である請求項2に記載の積層形成部材。
【請求項6】
前記1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、一般式(C)で表される化合物である請求項2に記載の積層形成部材。
【請求項7】
一般式(B)、一般式(C)、一般式(D)、及び一般式(E)中のR11〜R15がそれぞれ、メチル基、n−ブチル基、又は及びフェニル基から選ばれる基である請求項2〜6のいずれか1項に記載の積層形成部材。
【請求項8】
前記シロキサン共重合ポリカーボネート中の、前記1種類以上の一般式(A)で表される化合物の割合が、全モノマー成分(1種類以上の一般式(A)で表される化合物+1種類以上のシロキサン構造を有する化合物)に対して、90〜99.9重量%である請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層形成部材。
【請求項9】
前記シロキサン共重合ポリカーボネート中の、前記1種類以上の一般式(A)で表される化合物が、全モノマー成分(1種類以上の一般式(A)で表される化合物+1種類以上のシロキサン構造を有する化合物)に対して、95〜99.5重量%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層形成部材。
【請求項10】
前記シロキサン共重合ポリカーボネートの極限粘度[η]が、0.2〜1.0〔dl/g〕である請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層形成部材。
【請求項11】
前記1種類以上の一般式(A)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1’−ビフェニル−3,3’−ジメチル−4,4’−ジオール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシ3−メチルフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロへキサン、及び9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3メチルフェニル)フルオレンの群から選ばれる化合物である請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層形成部材。
【請求項12】
前記シロキサン共重合ポリカーボネートが、一般式(A1)
【化9】

(式中、X1は、
【化10】

で表される化合物と、一般式(A2)
【化11】

(式中、X2は、
【化12】

であり;R1’及びR2’はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;R3及びR4はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;aは0〜20の整数を表す。)で表される化合物と、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られるシロキサン共重合ポリカーボネートである請求項1〜10のいずれか1項に記載の積層形成部材。
【請求項13】
前記1種類以上の一般式(A)で表される化合物が、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタンである請求項1〜12のいずれか1項に記載の積層形成部材。
【請求項14】
前記炭酸エステル形成化合物が、ホスゲンである請求項1〜13のいずれか1項に記載の積層形成部材。
【請求項15】
第1及び第2の組成物を溶融共押出法によって成形してなる請求項1〜14のいずれか1項に記載の積層成形部材。
【請求項16】
シート状又はフィルム状である請求項1〜15のいずれか1項に記載の積層成形部材。
【請求項17】
1種以上の一般式(A1)
【化13】

(式中、X1は、
【化14】

で表される化合物と、1種以上の一般式(A2)
【化15】

(式中、X2は、
【化16】

であり;R1’及びR2’はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;R3及びR4はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又は各々置換基を有してもよい、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜12のアルケニル基、もしくは炭素原子数6〜12アリール基を表し;aは0〜20の整数を表す。)で表される化合物と、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物とを、炭酸エステル形成化合物と反応させて得られ、1種類以上のシロキサン構造を有する化合物が、全モノマー成分(1種類以上の一般式(A1)で表される化合物+1種類以上の一般式(A2)で表される化合物+1種類以上のシロキサン構造を有する化合物)に対して、0.1〜10重量%であり、ガラス転移温度(Tg)が130〜160℃であるシロキサン共重合ポリカーボネート。

【公開番号】特開2011−88377(P2011−88377A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244245(P2009−244245)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【出願人】(597003516)MGCフィルシート株式会社 (33)
【Fターム(参考)】