説明

積層材の積層成形方法および積層成形システム

【課題】 ラミネート工程における積層材の送り動作と切断工程等の後工程における前記積層材の送り動作が相違している場合であっても、送り動作の相違に影響されずに、積層材の搬送を行うことができる積層材の積層成形方法および積層成形システムを提供する。
【解決手段】 連続した帯状の積層材Fが停止された状態で加圧するラミネータ装置14にて加圧した後、後工程の装置19で処理する積層材の積層成形システム11において、ラミネータ装置14における前記積層材Fの送り動作Cと後工程における前記積層材Fの送り動作A,Bが相違している場合に、ラミネータ装置14の送り動作Cと後工程の装置19の送り動作A,Bを連動させずに前記積層材Fの搬送を行うことが可能な送り動作調整装置17が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続した帯状の積層材をバッチ式のラミネート工程にて貼合せした後、後工程の装置で処理する積層材の積層成形方法および積層成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
連続した帯状の積層材をバッチ式のラミネート工程にて貼合せした後、後工程の装置で処理する積層材の積層成形方法としては、特許文献1、特許文献2に記載されたものが公知である。特許文献1は、連続した帯状の積層材3a,3bと被積層材5をバッチ式のラミネート工程である積層装置1で加圧した後、後工程へ搬送し、後工程の上部板9aと下部板9bの間で加圧する。また特許文献2は、連続した帯状のドライフィルム4と基板1をバッチ式のラミネート工程である圧着装置6で圧着した後、後工程へ搬送し、後工程の後圧着装置7で再度圧着し、更には切断手段10で切断する。ところが前記特許文献1および特許文献2のものはいずれも全ての装置の間のフィルム等の積層材の送り動作は、同じ送り量でかつ同期した送りタイミングて送られるようになっている。従って各装置の送り量や送りタイミングが異なる場合には、対応ができないものであった。
【0003】
また特許文献1、特許文献2のようなバッチ式の積層装置では、真空室を形成する必要性から真空室の周囲はOリング等のシール部により、連続した帯状の積層材の一部を押圧する必要がある。その結果、シール部により押圧された積層材は、部分的な強加圧や高温のために変質し、送り動作毎に一定幅の使用不可能な不要部が発生する。従ってラミネート後の連続した帯状の積層材には、積層成形部と不要部が交互に形成される。そして前記積層材を切断して個別の積層製品を得ようとする場合は、前記不要部を切断して除去する必要がある場合が多い。しかし従来の特許文献2等のタイプの切断手段では、積層材の送り量と同じ間隔以外の間隔にフィルム等の積層材を切断することができない。従って従来の特許文献2等のタイプは、切断手段では不要部を除去することはできず、切断手段の後工程で更に不要部だけを手作業等により除去する必要があり、作業負担が大きかった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−129431号公報(0020、図1)
【特許文献2】特公平6−22200号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では上記の問題を鑑みて、ラミネート工程における積層材の送り動作と切断工程等の後工程における前記積層材の送り動作が相違している場合であっても、送り動作の相違に影響されずに、積層材の搬送を行うことができる積層材の積層成形方法および積層成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層材の積層成形方法は、連続した帯状の積層材をバッチ式のラミネート工程にて貼合せした後、後工程の装置で処理する積層材の積層成形方法において、ラミネート工程における積層材の送り動作と後工程における積層材の送り動作が相違している場合に、前工程の送り動作と後工程の送り動作を連動させずに積層材の搬送を行うことを特徴とする。
【0007】
積層材の積層成形システムは、連続した帯状の積層材が停止された状態で加圧するラミネータ装置にて加圧した後、後工程の装置で処理する積層材の積層成形システムにおいて、
ラミネータ装置における積層材の送り動作と後工程における積層材の送り動作が相違している場合に、ラミネータ装置の送り動作と後工程の装置の送り動作を連動させずに積層材の搬送を行うことが可能な送り動作調整装置が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層材の積層成形方法は、連続した帯状の積層材をバッチ式のラミネート工程にて貼合せした後、後工程の装置で処理する積層材の積層成形方法において、ラミネート工程における積層材の送り動作と後工程における積層材の送り動作が相違している場合に、前工程の送り動作と後工程の送り動作を連動させずに積層材の搬送を行うので、ラミネート工程と後工程の送り動作の相違に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態の積層材の積層成形システムの概略図である。
【0010】
積層成形システム11は、積層材であるフィルムFの供給用ローラ12と、キャリアフィルム供給用ローラ13と、真空ラミネータ装置14と、チャック式のフィルム送り装置15と、キャリアフィルム巻取用ローラ16と、送り動作調整装置であるダンサーローラ17と、ローラ式のフィルム送り装置であるニップローラ18と、切断装置19と、不要部回収装置20と、積層製品部回収装置21とが前工程から後工程へ順に設けられ、図示しない制御装置と各装置が接続されている。フィルムFの供給用ローラ12は上下に設けられ、回転ローラの軸部12aにはブレーキ装置が設けられている。そして下方の供給用ローラ12から連続した帯状の積層材であるフィルムFが供給される部分は、別の積層材である回路基板Pの載置部22が設けられている。なお供給用ローラ12はいずれか一方のみでもよくサーボモータによりテンションが制御されるものでもよい。
【0011】
キャリアフィルム供給用ローラ13とキャリアフィルム巻取用ローラ16は、少なくとも真空ラミネータ装置14を挟んで前方側と後方側の上下に設けられる。PETフィルムからなるキャリアフィルムCFは、真空ラミネータ装置14内で加熱・加圧されたフィルムFや回路基板Pが溶融して流出した溶融樹脂等が、ダイヤフラム23等に付着しないように設けられている。なお本発明にとってキャリアフィルムCFは、必須のものではない。
【0012】
真空ラミネータ装置14(ラミネータ装置)は、積層材であるフォルムFと基板P等が停止された状態で加圧するバッチ式のラミネータ装置である。真空ラミネータ装置14は、上盤24または下盤25の少なくとも一方が移動可能に設けられ、上盤24と下盤25の間に真空室が形成可能となっている。そして真空室の内部側は、上盤24、下盤25ともに熱板26が配設されている。そして上盤24と下盤25のうち一方の盤には加圧膜体であるダイヤフラム23が設けられ、他方の盤の熱板26にはゴム膜27が貼付けられている。また前記真空室の周囲には、真空室を形成するための壁部28が形成され、一方の盤の壁部28にはシール部材であるOリング29が設けられている。そして前記帯状の積層材Fは、真空ラミネータ装置14の前方側における上下の壁部28,28の間の開口部である入口部30から真空室内を経て、後方側における上下の壁部28,28の間の開口部である出口部31へ連続して送られるようになっている。なお本発明のバッチ式のラミネータ装置は、ダイヤフラム23により加圧するもの以外に、弾性体が取付けられたプレス板により、積層材を加圧するものでもよい。または常圧または僅かな減圧下でラミネート工程を行うものでもよい。
【0013】
また真空ラミネータ装置14の後工程側には、チャック式のフィルム送り装置15が配設されている。チャック式のフィルム送り装置15には、キャリアフィルムCFとフィルムFおよび基板Pが積層成形された積層材F1(ラミネート後に切断されるまでの状態を積層材F1と称す)の両側を上下方向から挟むチャック32がそれぞれ設けられている。そしてチャック32は、図示しない駆動手段により積層製品部Sと不要部Uを含む連続した積層材F1の搬送方向と同方向へ移動可能となっている。前記フィルム送り装置15のチャック32の移動距離は、真空ラミネータ装置14における積層材F1(またはフィルムF)の1ピッチ分の送り量C1であり、積層材F1(またはフィルムF)の正確で高速での移動を可能とする。なお、チャック式のフィルム送り装置15は必須ではなく、代わりにニップローラによるフィルム送り装置を設けてもよい。
【0014】
フィルム送り装置15の後工程側には、送り動作調整装置であるダンサーローラ17が配設されている。積層材F1の一側と他側の両側に僅かに隔たった位置には、ガイドバー33が立設されている。そして一側のガイドバー33と他側のガイドバー33はそれぞれ、積層材F1の搬送方向と同方向に僅かな間隔33a,33aを開けて平行に設けられた2本のガイドバー33が設けられている。そして前記ガイドバー33,33の間隙33a,33aには、ダンサーローラ17の回転軸34が挟まれている。ダンサーローラ17の回転軸34は、ベアリングにより外側の円筒部に対して中心軸が回転自在に設けられ、中心軸とローラ部35は固着されている。従ってダンサーローラ17は、外側の円筒部がガイドバー33に回転不能にガイドされるとともに、ローラ部35と中心軸は、ガイドバー33に対して回転自在となっている。そしてダンサーローラ17は、前記間隙33aにおいて積層材F1に自重が支えられる形で回転自在かつ昇降自在に保持されている。本実施形態でローラ部35は、アルミ製であり、積層材F1にテンションを与えることができる重量(5〜20kg)となっている。またダンサーローラ17のローラ部35の直径は、積層材F1が小径で屈曲しないよう15〜40cmとすることが望ましく、幅は、前記積層材F1の幅よりも広いことが望ましい。
【0015】
ダンサーローラ17の回転軸34の中心軸の両端にはタイミングベルト36が固定され、タイミングベルト36は上方に設けられたプーリ37,37を介して錘38に接続されている。錘38については、最下方の錘はタイミングベルト36に接続されるガイド杆に固定され四角形状の固定錘であり、前記固定錘の上に四角形に切れ目が入った調整用錘が、前記ガイド杆を挟むように着脱自在に重ねて載置できるようになっている。従って錘38の重量を変更することにより、ダンサーローラ17による積層材F1のテンションを調整ができる。前記錘38は、ダンサーローラ17の重量よりも一例として3〜12kg程度軽くすることにより、積層材F1の張力が適切に保たれる。またダンサーローラ17の前後にも同じ直径の従動ローラ39a,39bが一定位置で回転自在に設けられている。従って積層材F1は、従動ローラ39,40の部分でも大径のローラを使用することにより、積層製品部Sが許容以上に屈曲して悪影響が発生しないようになっている。なおダンサーローラ17はバネ、シリンダ、モータ等によりローラ部35に対して上方、下方、または斜め方向への力を加え、積層材F1の張力調整を行うものでもよい。またガイドバー33には回転軸34の下降位置を検出するセンサ39が配設されている。
【0016】
ダンサーローラ17の後工程側には、ローラ式のフィルム送り装置であるニップローラ18が配設されている。ニップローラ18のローラ41は表面がゴムからなり少なくとも一方のローラ41がローラ41,41間の間隔調整のために他方のローラ41に向けて移動可能またはバネにより付勢可能となっている。また両方のローラ41は図示しないサーボモータ等のモータにより回転が可能となっている。
【0017】
またニップローラ18の後工程側には切断装置19が配設されている。切断装置19は一方に直線状の固定刃42が配設され、他方に円筒面に螺旋状の刃が設けられた回転刃43が使用されており、連続した帯状の積層材F1を搬送方向に直角方向に切断する。なお切断装置19は他の直線状の固定刃でもよく、回転刃が回転しながら前記フィルムFの搬送方向と直角方向に移動して前記フィルムFを切断するものでもよい。またレーザーや熱を使用して切断を行うものでもよい。
【0018】
また切断装置19の後工程側には図示しない駆動手段により所定幅のエンドレスゴムベルトが移動する第1ベルトコンベア44が配設されている。そして前記切断装置19と第1ベルトコンベア44の間には隙間を埋めるプレート45が配設され、切断により幅の短い不要部Uが分離されても落下しないようになっている。また第1ベルトコンベア44の後工程には、同一構造の第2ベルトコンベア46が設けられ、その間には、不要部回収装置20が配設されている。不要部回収装置20は、上方に扇形にエアを噴出する開口部47が設けられたエアパイプ48が設けられている。また第1ベルトコンベア44と第2ベルトコンベア46の間は、積層製品部Sが通過可能で不要部Uが確実に落下可能な開口49が設けられている。そして前記開口49の下方には不要部Uを収容する箱50が載置されている。なお不要部Uは、切断装置19と第1ベルトコンベア44の間から回収してもよい。そして第2ベルトコンベア46の後工程には積層製品部Sを収容する箱51が載置されている。
【0019】
次に前記積層成形システム11による積層成形方法について説明する。本実施形態は屈曲自在な回路基板Pに絶縁材料であるポリイミドフィルムを貼合せするフレキシブル基板の成形工程である。なお積層材としてのフィルムFとしては、ポリイミドの他、ポリアミド、PET、液晶ポリマ、エポキシ系等、種類を選ばない。また2層以上のフィルムを同時に積層するものであってもよく、2層に貼合わされていた支持フィルム層が積層成形後であって切断前あるいは切断後に剥離されるものでもよい。またフィルムFは絶縁材料の他に、導電材料やフォトレジスト形成層などでもよい。また積層材である回路基板Pについても製品毎に一定長さの板状となったもの以外に連続した帯状の基板であってもよい。更には単に積層材であるフィルムF同士を貼合わせるものでもよい。
【0020】
本実施形態では、回路基板Pは所定長さに切断したものを、真空ラミネータ装置14の送り量C毎に載置部22に載置する。即ち、前に送られた回路基板Pの後端と後に送られる回路基板Pの前端の間には、不要部Uの長さ分間隔が設けられた状態に回路基板Pを載置する。そして次のサイクルの送り量C分の送り動作で、回路基板PとフィルムFの上下にキャリアフィルムCFが重ねられ、その次のサイクルで真空ラミネータ装置14の上盤24と下盤25が開いた状態の入口部30から真空室内に送られる。すると上下の盤24,25が閉鎖され、図示しない真空手段により真空室の内部が真空状態とされる。
【0021】
この際にはダイヤフラム23はまだ下盤25に吸着され、フィルムFと回路基板Pは余熱が加えられている。そして真空室内が真空状態となると下盤25とダイヤフラム23の間に加圧空気を導入してダイヤフラム23を膨出させ、フィルムFに挟まれた回路基板Pを加圧する。ダイヤフラム式の真空ラミネータ装置14は、回路基板Pの凹凸に追従してフィルムFを埋めこむことが可能であり、連続ロール式のラミネータよりもボイドの発生も少なく有利である。しかしながら前記ダイヤフラム式の真空ラミネータ装置14の場合、上記したように壁部28,28の部分によりフィルムFの両面が押さえて真空室を形成するので、その部分は次に真空室内に搬送したとしても積層製品部Sとして使用することができず不要部Uとなる。従って壁部28,28により押圧されずにダイヤフラム23で加圧された部分だけが積層製品部Sとして利用できる。そして前記積層製品部Sの送り量Aと不要部Uの送り量Bを加えた長さが真空ラミネータ装置14の1サイクル分の送り量Cとなる。
【0022】
真空ラミネータ装置14でのラミネート工程が所定時間で完了すると、上盤24と下盤25の間が開かれ、フィルム送り装置15のチャック32でキャリアフィルムCFとフィルムFの両端を挟んで送り量分C1=Cを送り動作により移動させ、積層成形が完了したフィルムFと回路基板Pからなる積層材F1(ラミネート後に切断されるまでの状態を積層材F1と称す)を真空ラミネータ装置14から取出す。また前記に連動してキャリアフィルムCFの巻取用ローラ16も駆動回転させる。これにより同時に真空ラミネータ装置14の前方のフィルムFと回路基板Pが真空ラミネータ装置14内に搬入される。
【0023】
その際に本発明では次の送り動作調整装置であるダンサーローラ17により、真空ラミネータ装置14と後工程の切断装置19との間で、積層材F1の連動(同期移動)が断ち切られるようになっている。フィルム送り装置15から積層材F1がダンサーローラ17に向けて送られると、回転軸34が回転しつつローラ部35が自重により下降する。そしてダンサーローラ17の回転軸34およびローラ部35が下降したことは、センサ40により検出され図示しない制御装置へ送られる。すると制御装置からの信号によりニップローラ18が回転駆動を開始する。ただし本実施形態では、ニップローラ18の積層材F1の送り速度は、フィルム送り装置15の積層材F1の送り速度よりも遅いので、その差分についてはダンサーローラ17で吸収され、ローラ部35は更に一定だけ回転しながら図1で一点鎖線で示される位置まで下降される。
【0024】
この際ダンサーローラ17は、真空ラミネータ装置14と切断装置19の積層材F1の送り動作の連動を断つ以外に、錘38により調整されたローラ部35の自重により、フィルム送り装置15とニップローラ18の間で、積層成形の完了した積層材F1に適切なテンションを継続してかけることができる。従って積層材F1に皺が発生するなどの不良を発生することがない。そしてもし、フィルム送り装置15が無い場合であっても、ダンサーローラ17と供給用ローラ12のブレーキとの関係により適切なテンションを掛けた状態で、真空ラミネータ装置14から積層材F1を引出すことができるとともに次の積層成形をスタートさせることができる。
【0025】
ニップローラ18のローラ41の回転駆動による積層材F1の送り量は、次回に切断装置19で積層材F1を切断する長さ分に対応するだけローラ41を回転させる。次回に積層製品部Sを切断する場合は送り量Aであり、不要部Uを切断する場合は送り量Bである。なお送り量の制御は、切断装置19の後方に図示しないセンサを設けて、センサからの信号によりニップローラ18の停止を制御してもよい。そしてニップローラ18における積層材F1の送り動作は、送り量Aと送り量Bが交互に繰り返される。従って前記送り量A,Bを加えたものが、前工程の真空ラミネータ装置14の送り量Cとなる。その後、フィルム送り装置15のチャック32が送り量C1だけ送り動作完了して後工程側の停止位置32aに停止し、ダンサーローラ17のローラ部35が最も下降した位置から、ニップローラ18が回転駆動して積層材F1が切断装置19に送られることにより、ダンサーローラ17のローラ部35は回転されながら元の位置まで上昇される。その後にフィルム送り装置15のチャック32は、積層材F1のチャックを開いて元の位置に戻される。本発明では、前記のようにラミネータ工程と後工程のフィルム送り動作を同期させる必要がなく自由度が大きいが、ラミネート工程の1サイクルにおける送り量および所要時間と、後工程の1サイクルにおける合計送り量および合計所要時間は同じである必要がある。
【0026】
なおラミネータ工程と後工程の送り動作の関係については、ラミネータ工程の送り装置15の送り動作が完了してからニップローラ18の送り動作を開始するものでもよい。この場合は、フィルム送り装置15による積層材F1の送り量C1分は、一旦100%がダンサーローラ17のローラ部35の下降によって吸収され、真空ラミネータ装置14の送り量Cと後工程の切断装置19の送り量A,Bは全く連動されない。またはフィルム送り装置15の作動信号により、ニップローラ18も送り動作を開始するものでもよい。そして仮にニップローラ18のフィルム送り速度が、フィルム送り装置15のフィルム送り速度に同期するか極めて近い速度であり送りタイミングが一致したとしても、ニップローラ18は、送り量AまたはB分だけ回転した後は、切断のために停止されるので、残りの送り量Cとの差分は、ダンサーローラ17のローラ部35が下降することにより一旦吸収され、1サイクル全体では送り動作は連動されない。
【0027】
そして切断工程では、ニップローラ18のローラ41の回転停止後に、切断装置19の回転刃43が作動され、連続した帯状の積層材F1から、切断装置19よりも後工程まで送られた積層製品部Sまたは不要部Uが切断、分離される。不要部Uは、上記したように真空ラミネータ装置14の壁部28により押えられていた部分であり、搬送方向の長さが短い帯状のフィルムFのみの部分である。そして第1ベルトコンベア44およびプレート45上に載置されて切断装置19によって切断された積層製品部Sまたは不要部Uは、第1ベルトコンベアの駆動とともに後工程へ搬送される。そして第1ベルトコンベア44と第2ベルトコンベア46の間の不要部回収装置20に不要部Uが運ばれると、上方のエアパイプ48の開口部47からエアが噴出されることにより、前記不要部Uは、開口49を通じて落下し、収容用の箱50に集められる。また第1ベルトコンベア44と第2ベルトコンベア46の間に積層製品部Sが搬送された場合は、エアは噴出されずに、積層製品部Sはそのまま前記開口49を通過して第2ベルトコンベア46へ送られる。そして第2ベルトコンベア46を経て積層製品部Sを収容する箱51に順に載置される。これら制御は各センサの検出と制御装置のタイマによりシーケンス制御等により制御される。
【0028】
次に別の実施形態について図2により説明をする。なお先の図1に示される実施形態に対し図2に示される別の実施形態の説明では、同一符号は同様の部分または相当する部分に付すものとして説明を省略し、相違点を説明する。図2の別の実施形態の積層材の積層成形システム60では、ラミネート工程の真空ラミネータ装置14に続いて平坦化プレス装置61が配設されている。平坦化プレス装置61は、真空ラミネータ装置14で貼合わされた積層材の凹凸を上盤62と下盤63の間で図示しない加圧装置により加圧して平坦にするプレス装置である。平坦化プレス装置61の上盤62の下面および対向する下盤63の上面には、鏡面板に弾性材であるゴム膜64が貼付けられており、その表面側に屈曲可能なステンレス薄板65が貼付けられている。
【0029】
またダンサーローラ66については、ローラ部67の軸芯68が揺動バー69に回転自在に取付けられ、揺動バー69は、支点70を中心に揺動するタイプである。そして揺動バー69にはワイヤ71により錘72が取付けられており、ローラ部67と錘72を加算した自重により積層材のテンションを調整する。また切断装置19の前後にニップローラ18,73が取付けられている。従ってニップローラ18,73間で、積層材F1にテンションを掛けた状態で切断装置19により切断をすることができる。更には不要部Uの取出しは、取出装置の吸盤74により吸着し、上方へ移動させて行う。なお別の実施形態について前工程である真空ラミネータ装置14および平坦化プレス装置61は、成形サイクル時間および送り量Cは同じであるが、後工程の切断装置19を含む部分は積層製品部Sと不要部Uに、長さを変えて切断するので、送り量A,Bとなっており、ラミネート工程の送り量Cと相違している。
【0030】
次に更に別の実施形態について図3により説明をする。なお先の図2に示される実施形態に対し図3に示される別の実施形態の説明では、同一符号は同様の部分または相当する部分に付すものとして説明を省略し、相違点を説明する。図3の別の実施形態の積層材の積層成形システム80では、ラミネート工程のバッチ式の真空ラミネータ装置と平坦化プレス装置の間に、ニップローラ81と送り動作調整装置であるダンサーローラ82が配設されている。更に別の実施形態は、真空ラミネータ装置14よりも後工程である平坦化プレス装置61の成形サイクル時間の方が長い場合であって、真空ラミネータ装置14内から加圧完了した積層材を早く搬出した場合や、次に真空ラミネータ装置14で加圧する積層材を早く予熱したい場合などで積層材F1の送り動作が異なる場合に用いられる。
【0031】
また更に別の実施形態の変形例として、図示はしないが、例えば成形サイクル時間60秒の真空ラミネータ装置の後に、成形サイクル時間30秒の加熱用平坦化プレス装置および成形サイクル時間30秒の冷却用平坦化プレス装置を連続して設け、前記真空ラミネータ装置と加熱用平坦化プレス装置の間に、積層材の送り動作を調整する送り動作調整装置であるダンサーローラを設けても良い。そのことにより加熱用平坦化プレス装置で積層材を滞留させずに、ほとんど待ち時間なく冷却用平坦化プレス装置に積層材を搬送することができる。また図示はしないがバッチ式の真空ラミネータ装置と、ロール式やベルト式のラミネータ装置の間に送り動作調整装置であるダンサーローラを設けても良い。
【0032】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。ラミネータ装置の送り動作(送り量または送りタイミング)と後工程の装置の送り動作(送り量または送りタイミング)を連動させずに前記積層材の搬送を行うことが可能な送り動作調整装置としては、ダンサーローラ17,66,82が一般的であるが、ラミネータ装置に対して後工程の装置を往復移送させ、ラミネータ装置との距離を変更することにより、ラミネータ装置の送り動作を調整するものでもよい。その場合送り動作調整装置と切断装置等は別個に移動可能な方が望ましい。
【0033】
またラミネータ装置および送り動作調整装置の後工程で積層材の処理を行う装置としては、上記の切断装置と平坦化プレス装置の他、冷却装置、加熱装置(熱硬化装置を含む)、トリミング装置(穴あけ装置を含む)、露光装置、支持フィルム除去装置、および検査装置など、各種装置が想定される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態の積層成形システムを示す図である。
【図2】別の実施形態の積層成形システムを示す図である。
【図3】更に別の実施形態の積層成形システムを示す図である。
【符号の説明】
【0035】
11 積層成形品の成形システム
14 真空ラミネータ装置(真空ラミネート工程)
17 ダンサーローラ(送り動作調整装置)
19 切断装置(切断工程)
A,B,C 送り量(送り動作)
F フィルム(積層材)
F1 積層材
P 基板(積層材)
S 積層製品部
U 不要部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した帯状の積層材をバッチ式のラミネート工程にて貼合せした後、後工程の装置で処理する積層材の積層成形方法において、
前記ラミネート工程における前記積層材の送り動作と後工程における前記積層材の送り動作が相違している場合に、前工程の送り動作と後工程の送り動作を連動させずに前記積層材の搬送を行うことを特徴とする積層材の積層成形方法。
【請求項2】
前記後工程は切断工程であって、
前記切断工程における積層材の送り動作は、積層製品部の送り動作と不要部の送り動作とからなり、ラミネート工程の積層材の送り動作とは相違していることを特徴とする請求項1に記載の積層材の積層成形方法。
【請求項3】
連続した帯状の積層材が停止された状態で加圧するラミネータ装置にて加圧した後、後工程の装置で処理する積層材の積層成形システムにおいて、
前記ラミネータ装置における前記積層材の送り動作と後工程における前記積層材の送り動作が相違している場合に、ラミネータ装置の送り動作と後工程の装置の送り動作を連動させずに前記積層材の搬送を行うことが可能な送り動作調整装置が備えられていることを特徴とする積層材の積層成形システム。
【請求項4】
前記後工程の装置は切断装置であり、
前記切断装置における積層材の送り動作は、積層製品部の送り動作と不要部の送り動作とからなり、ラミネータ装置における積層材の送り動作とは相違していることを特徴とする請求項3に記載の積層成形品の成形システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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