説明

積層管製造装置および積層管製造装置を用いた積層管製造方法

【課題】押さえロールを用いて、種々の径の積層管にも低コストで対応可能な積層管製造装置を提供するとともに、このような積層管製造装置を用いた積層管製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】熱硬化性樹脂基材を用いて積層管を製造する積層管製造装置であって、 熱硬化性樹脂基材を送り出す繰出ロール、上記熱硬化性樹脂基材を巻きつけ、管状に形成するリング、上記リング内部に配置された押さえロール、上記リングの下側に配置された1つ以上の支持ロールおよび加熱ロールからなり、上記リングは中空の鋼板からなるリングであり、上記支持ロールおよび上記加熱ロールが回転して、繰出ロールから送り出された熱硬化性樹脂基材を上記リングへ誘導し、上記リングに上記熱硬化性樹脂基材を巻きつけ、上記押さえロールが回転しながら上記リングを下方へ押さえつけ、上記リングを介して上記リングに巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材を内側から加圧し、上記加熱ロールにより上記熱硬化性樹脂基材を加熱し、積層管を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層管製造装置に関し、特に熱硬化性樹脂基材を用いた積層管製造装置および積層管製造装置を用いた積層管製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層管の製造装置14としては、図6に示すような、熱ロール17上にマンドレル15が配置された装置が用いられている。
【0003】
このような装置を用いた積層管の製造方法は、上記積層管の製造装置14の上記マンドレル15に連続的に熱硬化性樹脂基材18を巻きつけ、上記マンドレル15の上部に配置したロール16で加圧し、さらに、熱硬化性樹脂基材を巻きつけた状態でマンドレルを乾燥機内に入れて加熱硬化させて積層管を形成するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、従来の装置14では、積層管19の径に合わせたマンドレル15が必要であり、積層管の径が大きくなると、それに合わせて径の大きなマンドレルが必要となる。
【0005】
積層管の径が大きくなると大径のマンドレルが必要となるが、大径のマンドレルは高価であり、また、積層管の径に合わせてマンドレルを複数用意するのは費用がかかるという問題があった。
【0006】
また、マンドレルはその上部に配置されたロール16の加圧に耐えるために、堅牢な構造を用いる必要があり、マンドレル15が大径になると共に重量も増加し、その結果、ハンドリングが悪くなるという問題もあった。
【0007】
さらに、このような従来の装置を用いた積層管製造方法では、マンドレル駆動シャフトのセットに時間がかかることにより、積層管の製造時間に影響を与えることと、熱硬化性樹脂基材を巻きつけた状態でマンドレルを乾燥機内に入れて積層管の加熱、乾燥を行うために、特に大口径の積層管では乾燥機内で大きなスペースが必要となることにより、製造効率が悪くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記のような従来の装置の問題点を解決するために、押さえロールを用いて、種々の径の積層管にも低コストで対応可能な積層管製造装置を提供するとともに、このような積層管製造装置を用いた積層管製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の積層管製造装置は、熱硬化性樹脂基材を用いて積層管を製造する積層管製造装置であって、熱硬化性樹脂基材を送り出す繰出ロール、上記熱硬化性樹脂基材を巻きつけ、管状に形成するリング、上記リング内部に配置された押さえロール、上記リングの下側に配置された1つ以上の支持ロールおよび加熱ロールからなり、上記リングは中空の鋼板からなるリングであり、上記支持ロールおよび上記加熱ロールが回転して、繰出ロールから送り出された熱硬化性樹脂基材を上記リングへ誘導し、上記リングに上記熱硬化性樹脂基材を巻きつけ、上記押さえロールが回転しながら上記リングを下方へ押さえつけ、上記リングを介して上記リングに巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材を内側から加圧し、上記加熱ロールにより上記熱硬化性樹脂基材を加熱し、積層管を形成することを特徴とする。
【0010】
また、上記支持ロールおよび上記加熱ロールが同速度で回転する駆動ロールであることが好ましい。
【0011】
そして、上記支持ロールが、上記リングに巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材を、下方から押さえつけて外側から加圧することが好ましい。
【0012】
また、上記押さえロールが中空であることが好ましい。
【0013】
さらに、上記中空の押さえロールを補強するための強化環が、上記押さえロール内部に設けられていることが好ましい。
【0014】
また、上記押さえロールの両端には、それぞれエアシリンダが設けられ、上記エアシリンダに設けられたピストンにより上記押さえロールは回転可能に支持され、上記エアシリンダの作動によって上記ピストンが下方に移動することにより、上記押さえロールが上記リングを下方へ押さえつけることが好ましい。
【0015】
あるいは、2個の押さえロールが、上記リング内部の両端にそれぞれ1個ずつ配置され、上記2個の押さえロールの上記リングの外側になる端部にそれぞれエアシリンダが設けられ、上記エアシリンダに設けられたピストンにより上記押さえロールの片側の端部は回転可能に支持され、上記エアシリンダの作動によって上記ピストンが下方に移動することにより、上記2個の押さえロールが上記リングを下方へ押さえつけることが好ましい。
【0016】
上述のような積層管製造装置を用いた本発明の積層管製造方法は、上記繰出ロールに、ロール状の熱硬化性樹脂基材をセットし、上記繰出ロールの下方から送り出された上記熱硬化性樹脂基材を、上記支持ロールおよび上記加熱ロールの下方を通して回転する上記支持ロールおよび上記リングの間へと誘導し、さらに上記支持ロールおよび上記リングの間を通し、上記リングが回転して上記熱硬化性樹脂基材の巻き付けを行うと、上記エアシリンダの作動により上記押さえロールが回転しながら上記リングを下方へ加圧することにより上記リングを介して上記熱硬化性樹脂基材を内側から加圧して回転している上記支持ロールおよび上記加熱ロールに上記熱硬化性樹脂基材を押し付け、さらに、上記支持ロールが回転しながら上記リングに巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材を下方から押さえつけることにより外側から加圧しながら、上記加熱ロールに内蔵されたヒータにより上記熱硬化性樹脂基材に熱を加えることにより積層された上記熱硬化性樹脂基材を溶融・圧着して積層管を形成することを特徴とする。
【0017】
さらに、上記積層管が形成された状態の上記リングを積層管製造装置から取り外し、乾燥機に入れて、上記リングを立てて、キュアーを行い、キュアー完了後、上記リングから積層管を取り外すことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層管製造装置は、熱硬化性樹脂基材を用いて積層管を製造する積層管製造装置であって、熱硬化性樹脂基材を送り出す繰出ロール、上記熱硬化性樹脂基材を巻きつけ、管状に形成するリング、上記リング内部に配置された押さえロール、上記リングの下側に配置された1つ以上の支持ロールおよび加熱ロールからなり、上記リングは中空の鋼板からなるリングであり、上記支持ロールおよび上記加熱ロールが回転して、繰出ロールから送り出された熱硬化性樹脂基材を上記リングへ誘導し、上記リングに上記熱硬化性樹脂基材を巻きつけ、上記押さえロールが回転しながら上記リングを下方へ押さえつけ、上記リングを介して上記リングに巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材を内側から加圧し、上記加熱ロールにより上記熱硬化性樹脂基材を加熱し、積層管を形成することにより、押さえロールのコスト削減が可能となり、さらに、リングを変更することにより1種類の押さえロールで複数の径の積層管に対応可能となる。
【0019】
また、上記支持ロールおよび上記加熱ロールが同速度で回転する駆動ロールであることにより、スムーズな熱硬化性樹脂基材の誘導が可能となる。
【0020】
そして、上記支持ロールが、上記リングに巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材を、下方から押さえつけて外側から加圧することにより、積層管が外側からと内側から均等な圧力を受けて形成され、厚み方向の圧力分布が均一化され、その結果、厚み方向の密度をより均質にすることが可能となり、積層管の機械的強度等の各種特性を安定化又は改善することができる。
【0021】
また、上記押さえロールが中空であることにより、押さえロールが軽量化され、押さえロールのリングへのセットが容易になり作業効率が向上する。
【0022】
さらに、上記中空の押さえロールを補強するための強化環が、上記押さえロール内部に設けられていることにより、中空である利点を維持しながら、中空である押さえロールの剛性を高くすることができ、熱硬化性樹脂基材に加える圧力を軸方向全体に対して均一にすることが可能となる。
【0023】
また、上記押さえロールの両端には、それぞれエアシリンダが設けられ、上記エアシリンダに設けられたピストンにより、上記押さえロールは回転可能に支持され、上記エアシリンダの作動によって上記ピストンが下方に移動することにより、上記押さえロールが上記リングを下方へ押さえつけることにより、熱硬化性樹脂基材へ効果的に圧力を加えることが可能となる。
【0024】
あるいは、2個の押さえロールが、上記リング内部の両端にそれぞれ1個ずつ配置され、上記2個の押さえロールの上記リングの外側になる端部にそれぞれエアシリンダが設けられ、上記エアシリンダに設けられたピストンにより上記押さえロールの片側の端部は回転可能に支持され、上記エアシリンダの作動によって上記ピストンが下方に移動することにより、上記2個の押さえロールが上記リングを下方へ押さえつけるにより、長尺の押さえロールよりも、押さえロールの取り付け作業が簡単になり、作業効率を大幅に改善することが可能となる。
【0025】
上述のような積層管製造装置を用いた本発明の積層管製造方法は、上記繰出ロールに、ロール状の熱硬化性樹脂基材をセットし、上記繰出ロールの下方から送り出された上記熱硬化性樹脂基材を、上記支持ロールおよび上記加熱ロールの下方を通して回転する上記支持ロールおよび上記リングの間へと誘導し、さらに上記支持ロールおよび上記リングの間を通し、上記リングが回転して上記熱硬化性樹脂基材の巻き付けを行うと、上記エアシリンダの作動により上記押さえロールが回転しながら上記リングを下方へ加圧することにより上記リングを介して上記熱硬化性樹脂基材を内側から加圧して回転している上記支持ロールおよび上記加熱ロールに上記熱硬化性樹脂基材を押し付け、さらに、上記支持ロールが回転しながら上記リングに巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材を下方から押さえつけることにより外側から加圧しながら、上記加熱ロールに内蔵されたヒータにより上記熱硬化性樹脂基材に熱を加えることにより積層された上記熱硬化性樹脂基材を溶融・圧着して積層管を形成することにより、従来よりも作業性が向上し、さらに、リングの交換だけで、種々の径の積層管が製造可能となる。
【0026】
さらに、上記積層管が形成された状態の上記リングを積層管製造装置から取り外し、乾燥機に入れて、上記リングを立てて、キュアーを行い、キュアー完了後、上記リングから積層管を取り外すことにより、キュアー時に、上記リングから押さえ上記ロールは取り外すことができるので、大径のリングの中に小径のリングを入れて配置することが可能となり、乾燥機内で従来よりも多数の積層管を同時にキュアーすることができ、作業効率が大幅に上昇する。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、図を用いて本発明の積層管製造装置1について説明する。
【0028】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態の積層管製造装置1は、熱硬化性樹脂基材7を送り出す繰出ロール6、上記熱硬化性樹脂基材7を巻きつけ、管状に形成するリング2、上記リング内部に配置された押さえロール3、上記リング2の下側に平行に配置された支持ロール4および加熱ロール5からなる。
【0029】
上記リング2はその材質、製造方法を特に限定されるものではなく、押出し、鍛接、電縫、板巻鋼管などから適宜選択可能である。またリングが真円であり、リング外周面がフラットで滑らかであれば、積層管8を形成後、リング2から抜き取ることが容易となる。
【0030】
上記リング2内部に配置された押さえロール3は、回転しながら上記リング2を、図1および2において矢印で示すように下方へ押さえつけ、上記リング2を介して上記リング2に巻きつけられた熱硬化性樹脂基材7を内側から加圧し、積層管8を形成するように構成されている。
【0031】
上記支持ロール4は回転しながら、上記リング2に巻き付けられた熱硬化性樹脂基材7を下方から押さえつけ、外側から加圧するように構成することも可能である。このような構成とする理由は、従来の装置では、図6に示すように、マンドレル15の上方に配置されたロール16によって熱硬化性樹脂基材18は積層管19の外部より加圧される構造であったために、加圧される積層管19の内側に比べ外側の密度が高くなり、成形後の密度分布に違いが出るという問題に対応するためである。
【0032】
そのために、このように、上記支持ロール4に外側から加圧する機能を持たせ、上記押さえロール3と上記支持ロール4により、積層管8の内側と外側から加圧することにより、積層管8の厚み方向の圧力分布を均一とし、厚み方向の密度をより均質にすることが可能となる。その結果、積層管8の機械的強度等の各種特性を安定化または改善することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、上記支持ロール4を1つ配置する構造としているが、上記支持ロール4を複数配置し、さらに外側からの加圧効果を高めることもできる。
【0034】
そして、上記加熱ロール5は、ヒータ等を内蔵することにより、回転しながら上記熱硬化性樹脂基材7を加熱するように構成されている。また、上記支持ロール4および上記加熱ロール5は同速度で回転する駆動ロールである。
【0035】
次に、上記押さえロール3の構造及び上記押さえロール3を下方へ押さえつける構造について説明する。上記押さえロール3は、無垢のロールあるいは中空のロール等の様々な形態が考えられるが、本実施形態では無垢のロールの場合について説明する。
【0036】
図3に示すのが上記リング2および上記押さえロール3の概略断面図である。図3に示すように、上記押さえロール3の両端には、それぞれエアシリンダ10が設けられ、上記エアシリンダ10に設けられたピストン9により、上記押さえロール3は回転可能に支持され、上記エアシリンダ10の作動によって上記ピストン9が下方に移動することにより、上記押さえロール3が上記リング2を下方へ押さえつけ加圧することが可能となっている。これにより、上記リング2に巻きつけられた熱硬化性樹脂基材7は積層管8の内側から加圧されることとなる。
【0037】
そして、上記押さえロール3と上記ピストン9の連結部分の一方あるいは両方を、着脱可能とすることが好ましい。これにより、上記リング2の交換作業の作業効率が向上する。さらに、上記エアシリンダ10を、上記押さえリング3の軸方向に可動な構造とすることもできる。これにより、上記押さえロール3と上記ピストン9の連結部分の着脱作業時が容易になり、さらなる作業効率の向上が可能となる。
【0038】
次に、異なる構造の押さえロールを用いた第2の実施形態の積層管製造装置1について説明する。図4に示すのが第2の実施形態の積層管製造装置1である。
【0039】
第2の実施形態の積層管製造装置1は、押さえロール以外の全体の構造は第1の実施形態とほぼ同じであり、熱硬化性樹脂基材7を送り出す繰出ロール6、上記熱硬化性樹脂基材7を巻きつけ、管状に形成するリング2、上記リング内部に配置された押さえロール11、上記リング2の下側に平行に配置された支持ロール4および加熱ロール5からなる。
【0040】
本実施形態の特徴として、押さえロールに、中空の押さえロール11を用いる。上記中空の押さえロール11は、第1の実施形態の上記押さえロール3と同様に、ピストン9およびエアシリンダ10によりリング2を下方へ加圧する構造となっている。
【0041】
上記中空の押さえロール11の外観は、第1の実施形態に用いた押さえロール3とほぼ同じであるが、上記中空の押さえロール11は、無垢ではなく中空であるがゆえに、上記押さえロール3に比べ、非常に軽量であり、上記リング2内へのセットが容易になり、作業効率が向上する。
【0042】
しかし、無垢の押さえロール3に比べると強度の面で劣る可能性があるので、上記中空の押さえロール11の内部には、補強材として少なくとも1つ以上の強化環12を設けることが好ましい。
【0043】
本実施形態では、2個の強化環12を上記中空の押さえロール11の内部に左右対象となる位置に設けている。このような強化環12を設けることにより、中空である利点を維持しつつ、中空の押さえロール11の強度を高め、積層管8の成形時に熱硬化性樹脂基材7に加える圧力を軸方向に対して均一にすることが可能となる。
【0044】
次に、さらに異なる構造の押さえロールを用いた第3の実施形態の積層管製造装置1について説明する。図5に示すのが第3の実施形態の積層管製造装置1である。
【0045】
第3の実施形態の積層管製造装置1は、押さえロール以外の全体の構造は第1の実施形態とほぼ同じであり、熱硬化性樹脂基材7を送り出す繰出ロール6、上記熱硬化性樹脂基材7を巻きつけ、管状に形成するリング2、上記リング内部に配置された2個の押さえロール13、上記リング2の下側に配置された支持ロール4および加熱ロール5からなる。
【0046】
第3の実施形態の特徴として、図5に示すように、上記2個の押さえロール13を用いている。第1及び第2の実施形態では、1個の押さえロール3をその両端部に設けたエアシリンダ10により下方へ押さえつける構造であったが、本実施形態では、2個の押さえロール13にそれぞれ1つずつエアシリンダ10を設け、上記2個の押さえロール13が上記リング2を下方へ押さえつけ加圧する構造となっている。
【0047】
図5に示すように、本実施形態では、2個の押さえロール13が、リング2の両端に配置されている。上記2個の押さえロール13にそれぞれ1つずつエアシリンダ10を設け、上記エアシリンダ10に設けられたピストン9により、上記押さえロール3は片側の端部を回転可能に支持され、上記エアシリンダ10の作動によって上記ピストン9が下方に移動することにより、上記2個の押さえロール3が上記リング2を下方へ押さえつけ加圧する。これにより、これまでの実施形態とは異なり、図5に示されているような、片持ち梁のような構造となっており、それぞれの押さえロール13が独立した構造となっている。
【0048】
上記2個の押さえロール13を用いた構造とすることにより、長尺の押さえロールを上記リング2の中に挿入する必要が無くなり、上記押さえロール13の取り付け作業は大幅に簡単になり、作業性を大きく改善し、押さえロールのコストも削減することが可能となる。
【0049】
このように、様々な形態の押さえロールを用いることにより、本発明の積層管製造装置はさらなる効果を有することになる。
【0050】
次に、本発明の積層管製造装置1を用いた積層管製造方法について説明する。ここでは、第1の実施形態の積層管製造装置1を用いて説明する。
【0051】
上記繰出ロール6に、ロール状の熱硬化性樹脂基材7をセットする。そして、上記繰出ロール6の下方から送り出された熱硬化性樹脂基材7は上記支持ロール4および上記加熱ロール5の下方を通り、回転する支持ロール5および上記リング2の間へと誘導され、さらに上記支持ロール4および上記リング2の間を通り、上記リング2が回転し熱硬化性樹脂基材7を巻き付ける。
【0052】
この時に、上記エアシリンダ10の作動により、上記押さえロール3が回転しながらリング2を下方へ加圧し、リング2を介して上記熱硬化性樹脂基材7を内側から加圧し、回転している支持ロール4および加熱ロール5に熱硬化性樹脂基材7を押し付ける。
【0053】
さらに、上記支持ロール4が回転しながら、上記リング2に巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材7を下方から押さえつけ、外側から加圧する。このように、上記リング2に巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材7が、内側と外側から加圧され、上記熱硬化性樹脂基材7が積層されてできる積層管8の表面が平滑に仕上げられる。
【0054】
そして、上記加熱ロール5に内蔵されたヒータにより、上記熱硬化性樹脂基材7に熱が加えられ、上記熱硬化性樹脂基材7が溶融・圧着されて、積層管8が形成される。
【0055】
上記熱構成樹脂基材7が層状に巻きつけられ形成された上記積層管8が所定の厚さに仕上がったら、上記積層管8が形成された状態の上記リング2を積層管製造装置1から取り外し、乾燥機に上記リング2を立てて、キュアーを行う。
【0056】
この時、上記リング2から押さえロール3は取り外されているので、上記リング2の内部は空洞となっており、積層管8が形成された径の異なる複数のリング2を配置するときに、大径のリング2の中に小径のリング2を入れて配置することが可能であり、これにより、乾燥機内で従来よりも多数の積層管8を同時にキュアーすることが可能となり、作業効率が上昇する。
【0057】
このようにして、キュアー完了後、リング2から積層管8を取り外し、積層管8の形成が完了する。
【0058】
本発明で用いる熱硬化性樹脂基材7としては、熱硬化性樹脂(フェノール、エポキシ、シリコンなど)を基材(紙、布、ガラスなど)に含浸、塗布、あるいは転写し、乾燥させてプリプレグ状態にしたものを用いる。
【0059】
熱硬化性樹脂基材7の具体例としては、紙基材フェノール樹脂、布基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、ガラス基材エポキシ樹脂等が用いられる。
【0060】
上述のような熱硬化性樹脂基材7の作成時に、上記繰出ロール6に巻き取らせておくと、そのまま本発明の積層管製造装置1にセットすることができる。
【0061】
本発明の積層管製造装置1によって形成される積層管の内径および厚みの例としては、積層管の長さが1mmの場合、内径が10〜25mmだと厚みが1mm、内径が26〜100mmだと厚みが1.5mm、内径が101〜200だと厚みが2mm等となる。厚みは、内径の大きさや管の長さに合わせて適宜設定可能である。
【0062】
このように、本発明の樹脂積層管製造装置は、小径の押さえロールを用いて大径の積層管を形成することも可能となり、押さえロールの製造コストを低減することが可能となる。
【0063】
また、1種類の押さえロールに必要な複数の径のリングを用いることにより、積層管の径の変更が簡単に行うことができ、リングは従来用いていたマンドレルに比べると安価であるために、従来よりも低コストで様々な径の積層管を製造することが可能となる。
【0064】
このように、1種類の押さえロールで、様々な径の積層管に対応可能となるので、本発明の樹脂積層管製造装置は、従来よりも、大幅なコストダウンが可能となる。
【0065】
また、乾燥機内では、従来用いていたマンドレルではなく、内部が空洞のリングを入れるだけですむので、リングを重ねて配置することによって、乾燥機のスペースを有効に活用することができる。
【0066】
さらに、様々な押さえロールを使用することが可能であるので、積層管に合わせて適切な押さえロールを選択することにより、さらなる作業性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の積層管製造装置の概略断面図である。
【図2】本発明の積層管製造装置の概略正面図である。
【図3】第1の実施形態のリングおよび押さえロールの概略断面図である。
【図4】第2の実施形態のリングおよび押さえロールの概略断面図である。
【図5】第3の実施形態のリングおよび押さえロールの概略断面図である。
【図6】従来の積層管製造装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 積層管製造装置
2 リング
3 押さえロール
4 支持ロール
5 加熱ロール
6 繰出ロール
7 熱硬化性樹脂基材
8 積層管
9 ピストン
10 エアシリンダ
11 中空の押さえロール
12 強化環
13 押さえロール
14 積層管の製造装置
15 マンドレル
16 ロール
17 熱ロール
18 熱硬化性樹脂基材
19 積層管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂基材を用いて積層管を製造する積層管製造装置であって、
熱硬化性樹脂基材を送り出す繰出ロール、上記熱硬化性樹脂基材を巻きつけ、管状に形成するリング、上記リング内部に配置された押さえロール、上記リングの下側に配置された1つ以上の支持ロールおよび加熱ロールからなり、
上記リングは中空の鋼板からなるリングであり、上記支持ロールおよび上記加熱ロールが回転して、繰出ロールから送り出された熱硬化性樹脂基材を上記リングへ誘導し、上記リングに上記熱硬化性樹脂基材を巻きつけ、上記押さえロールが回転しながら上記リングを下方へ押さえつけ、上記リングを介して上記リングに巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材を内側から加圧し、上記加熱ロールにより上記熱硬化性樹脂基材を加熱し、積層管を形成することを特徴とする積層管製造装置。
【請求項2】
上記支持ロールおよび上記加熱ロールが同速度で回転する駆動ロールであることを特徴とする請求項1に記載の積層管製造装置。
【請求項3】
上記支持ロールが、上記リングに巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材を、下方から押さえつけて外側から加圧することを特徴とする請求項1または2に記載の積層管製造装置。
【請求項4】
上記押さえロールが中空であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の積層管製造装置。
【請求項5】
上記中空の押さえロールを補強するための強化環が、上記押さえロール内部に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の積層管製造装置。
【請求項6】
上記押さえロールの両端には、それぞれエアシリンダが設けられ、上記エアシリンダに設けられたピストンにより上記押さえロールは回転可能に支持され、上記エアシリンダの作動によって上記ピストンが下方に移動することにより、上記押さえロールが上記リングを下方へ押さえつけることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の積層管製造装置。
【請求項7】
2個の押さえロールが、上記リング内部の両端にそれぞれ1個ずつ配置され、上記2個の押さえロールの上記リングの外側になる端部にそれぞれエアシリンダが設けられ、上記エアシリンダに設けられたピストンにより上記押さえロールの片側の端部は回転可能に支持され、上記エアシリンダの作動によって上記ピストンが下方に移動することにより、上記2個の押さえロールが上記リングを下方へ押さえつけることを特徴とする請求項請求項1から5のいずれか1項に記載の積層管製造装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層管製造装置を用いた積層管製造方法であって、
上記繰出ロールに、ロール状の熱硬化性樹脂基材をセットし、上記繰出ロールの下方から送り出された上記熱硬化性樹脂基材を、上記支持ロールおよび上記加熱ロールの下方を通して回転する上記支持ロールおよび上記リングの間へと誘導し、さらに上記支持ロールおよび上記リングの間を通し、上記リングが回転して上記熱硬化性樹脂基材の巻き付けを行うと、上記エアシリンダの作動により上記押さえロールが回転しながら上記リングを下方へ加圧することにより上記リングを介して上記熱硬化性樹脂基材を内側から加圧して回転している上記支持ロールおよび上記加熱ロールに上記熱硬化性樹脂基材を押し付け、さらに、上記支持ロールが回転しながら上記リングに巻きつけられた上記熱硬化性樹脂基材を下方から押さえつけることにより外側から加圧しながら、上記加熱ロールに内蔵されたヒータにより上記熱硬化性樹脂基材に熱を加えることにより積層された上記熱硬化性樹脂基材を溶融・圧着して積層管を形成することを特徴とする積層管製造方法。
【請求項9】
上記積層管が形成された状態の上記リングを積層管製造装置から取り外し、乾燥機に入れて、上記リングを立てて、キュアーを行い、キュアー完了後、上記リングから積層管を取り外すことを特徴とする請求項8に記載の積層管製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−29002(P2009−29002A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194921(P2007−194921)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(591045703)利昌工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】