説明

積層造形装置

【課題】積層造形装置において、装置の小型化が可能で、しかも粉末材料の供給を簡便なものとする。
【解決手段】積層造形装置1は、粉末材料Mから成る粉末層Sを形成する粉末層形成部2と、粉末層形成手段2に粉末材料Mを供給する材料供給手段と、粉末層Sの所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結又は溶融固化させて硬化層Hを形成する硬化層形成部3とを備え、材料供給手段としては、粉末材料Mが充填されるカートリッジ部5を備える。粉末材料Mは、カートリッジ部5から供給されるので、高さを抑制したコンパクトな装置が得られる。また、粉末材料Mが酸化や吸湿等による劣化を受け難いようにすることができ、しかも、ユーザは粉末材料Mに直接接することなく、カートリッジ部5を所定箇所に設置するだけで良いので、材料供給を簡便に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料の所定箇所に光ビームを照射して当該箇所を硬化させて三次元形状の積層造形物を製造する積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基台(ベース)上に無機質又は有機質の粉末材料から成る粉末層を形成すると共に、この粉末層の所定箇所に光ビームを照射して当該箇所の粉末を焼結硬化させて硬化層を形成し、上記ベースを昇降させながらこれらの工程を繰り返すことで、硬化層を積層一体化させた三次元造形物を製造する積層造形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8(a)(b)は、この種の積層造形装置の構成の一部を示す。積層造形装置は、粉末層及び硬化層が形成される造形部104と、この造形部104に粉末材料を供給する材料供給部105とを備える。造形部104は、造形テーブル140と、この造形テーブル140を昇降させる昇降機142と、造形テーブル140を囲む造形枠141とを有する。材料供給部105は、粉末材料を収容する収容タンク151と、収容タンク151内の粉末材料を押し上げる昇降機構152及び昇降テーブル150と、収容タンク151内の粉末材料の上層に位置する粉末材料を造形テーブル140側に移送すると共に、造形テーブル140に移送された粉末材料の表面を均す材料供給ブレード120とを有する。
【0004】
この積層造形装置は、光ビームを照射する硬化層形成手段(図示せず)を用いて、造形テーブル140上に形成された粉末層の所定箇所を焼結させて硬化層を形成した後、造形テーブル140を下降させて、次層の粉末層を形成する。ここで粉末層の形成は、昇降テーブル150を僅かに上昇させた後、収容タンク151内の粉末材料の上層を造形枠141の上面よりも僅かに高い位置にすると共に、材料供給ブレード120をスライドさせて、昇降テーブル150上の粉末材料を造形テーブル140側に移動させることにより行われる。
【特許文献1】特開2002−115004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した積層造形装置においては、昇降テーブル150を昇降させるために、材料供給部105の高さh2が、収容タンク151の高さh1の2倍以上になることがあり、このような材料供給部の構造が装置の大型化を招く原因となっていた。また、収容タンク151に収容された粉末材料は密閉されていない空間に置かれるので、粉末材料が酸化又は吸湿等による劣化を受け易い。そのため、光ビームによる焼結硬化が不均一になることがあり、造形物の形成精度が低下する虞があった。更に、造形加工の途中に粉末材料が不足して、収容タンク151に粉末材料を供給する必要があるときには、装置を停止させなければならず、これが作業効率を低下させる要因になっていた。しかも、材料供給時には、粉末の一部が舞い上がって装置内を汚してしまうこともあり、材料供給を簡便に行うことができなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、装置の小型化が可能で、粉末材料が酸化や吸湿等による劣化を受け難く、しかも材料供給が簡便な積層造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、粉末材料から成る粉末層を形成する粉末層形成手段と、前記粉末層形成手段に粉末材料を供給する材料供給手段と、前記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結又は溶融固化させて硬化層を形成する硬化層形成手段とを備え、前記粉末層形成手段による粉末層の形成と、前記硬化層形成手段による硬化層の形成とを繰り返すことにより複数の硬化層が積層一体化された三次元造形物を製造する積層造形装置であって、前記材料供給手段は、粉末材料が充填されるカートリッジ部を備えるものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部をクランプすると共に、該カートリッジ部を搬送する搬送手段を更に備えるものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の積層造形装置において、前記粉末層形成手段は、粉末材料貯蔵部を備え、前記材料供給手段は、前記カートリッジ部に充填された粉末材料を前記粉末材料貯蔵部に供給するように構成されていることものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の積層造形装置において、前記粉末材料貯蔵部は、前記カートリッジ部の一部又は全部を嵌合挿入できるように構成されているものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、複数個を連結できるように構成されているものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、その形状が下方に向けて先細りとなるよう形成されていることものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、その内側面に螺旋状の溝又は突起が形成されているものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、その底部に穴が開けられることにより、内部に充填された粉末材料が落下するように構成されているものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載の積層造形装置において、前記粉末層形成手段は、前記カートリッジ部の底部に穴をあけるための針部を備えるものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、粉末材料を供給するための粉末供給口が開閉自在に構成されているものである。
【0017】
請求項11の発明は、請求項10に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、前記材料粉末貯蔵部に挿入されたときに前記粉末供給口が開口するように構成されているものである。
【0018】
請求項12の発明は、請求項10記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、前記粉末層形成手段の移動に同期して前記粉末供給口が開口するように構成されているものである。
【0019】
請求項13の発明は、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、スクリューが内蔵されているものである。
【0020】
請求項14の発明は、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部内に充填された粉末材料を乾燥させる乾燥手段を更に備えるものである。
【0021】
請求項15の発明は、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部を振動させる振動手段を更に備えるものである。
【0022】
請求項16の発明は、請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、粉末材料が充填される内部空間が密閉状態となるように構成されているものである。
【0023】
請求項17の発明は、請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、再利用可能なプラスチック材料又は密閉性を確保できる紙材料を原材料として構成されているものである。
【0024】
請求項18の発明は、請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の積層造形装置において、前記カートリッジ部は、充填された粉末材料の成分を記憶する記憶メモリを備えるものである。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の発明によれば、カートリッジ部から粉末材料を供給できるので、高さを抑制したコンパクトな装置が得られる。また、粉末材料をカートリッジ部に充填することで、酸化や吸湿等による劣化を受け難いようにすることができ、しかも、カートリッジ部を所定箇所に設置するだけで良いので、材料供給を簡便に行うことができる。
【0026】
請求項2の発明によれば、搬送手段を作動させることにより、造形作業中でも適宜にカードリッジ部を搬送して、粉末材料を供給することができる。
【0027】
請求項3及び請求項4の発明によれば、粉末材料貯蔵部という限定的な領域に粉末材料が供給されるので、粉末材料が造形部等に飛び散らず、効率的に粉末材料を供給することができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、連結されるカートリッジ部の個数を変えることにより、一度に供給できる粉末材料の量を調整することができる。
【0029】
請求項6又は請求項7の発明によれば、カートリッジ部の形状等により、カートリッジ部内に粉末材料が残存することなく、効率的に粉末材料を供給することができる。
【0030】
請求項8及び請求項9の発明によれば、簡単な構成でカートリッジ部から粉末材料貯部へ粉末材料を供給することができる。
【0031】
請求項10の発明によれば、カートリッジ部の粉末供給口を開閉自在とすることにより、粉末材料の供給量を適宜に調整することができる。
【0032】
請求項11の発明によれば、カートリッジ部が粉末材料貯部へ挿入されたときに粉末供給口が開口するので、粉末材料を確実に供給することができる。
【0033】
請求項12の発明によれば、材料供給が必要な時のみ粉末供給口を開口させて適量の粉末材料を供給することができ、粉末材料の劣化も抑制することができる。
【0034】
請求項13の発明によれば、カートリッジ部内でスクリューを回転させて、粉末材料を攪拌することにより、カートリッジ部内での材料詰まりを抑制し、スムーズな粉末材料の供給が可能となる。また、粉末供給口を閉口させた状態においても、充填された粉末材料を撹拌することができ、材料成分の粒径や均一性を一定に保つことができる。
【0035】
請求項14の発明によれば、カートリッジ部内の粉末材料を過熱することにより、粉末材料の吸湿を抑制できる。
【0036】
請求項15の発明によれば、カートリッジ部内に粉末材料が停滞することなく、無駄なく粉末材料を使い切ることができる。
【0037】
請求項16の発明によれば、カートリッジ部が使用されない状態に置かれても、酸化や吸湿等による粉末材料の劣化が生じ難くなり、カートリッジ部の長期保存も可能になる。
【0038】
請求項17の発明によれば、ユーザはカートリッジ部を使い捨てることができ、カートリッジ部の利便性が高くなる。
【0039】
請求項18の発明によれば、ユーザは記憶メモリのデータを読み出すことにより、カートリッジ部内に充填された粉末材料の状態を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の第1の実施形態に係る積層造形装置について、図1(a)(b)を参照して説明する。本実施形態の積層造形装置1は、無機質又は有機質の粉末材料Mから成る粉末層を形成する粉末層形成部2(粉末層形成手段)と、この粉末層の所定箇所を光ビームにより焼結又は溶融固化させて硬化層を形成する光学機器3(硬化層形成手段)と、粉末層及び硬化層がその上面側に形成されるベース40及びこのベース40の外周を囲むベース枠体41を有する造形部4と、粉末材料Mを粉末層形成部2に供給するためのカートリッジ部5(材料供給手段)と、積層一体化された三次元造形物の表面の切削加工を行うと共に、カートリッジ部5を搬送する切削加工部6(搬送手段)とを備える。カートリッジ部5は、その内部に粉末材料Mが充填された筐体であり、粉末層形成部2の適宜の位置に着脱自在に構成されている。
【0041】
粉末層形成部2は、ベース枠体41の上面に沿ってスライド自在に配置されたスライド部材20と、ベース枠体41の上面と平行に配置された水平レール21と、この水平レール21に沿ってスライド部材20をスライドさせるスライド駆動部22とを備える。スライド部材20は、その下面部がベース枠体41の上面と接しており、スライド駆動部22の駆動力を得て水平レール21に沿って移動することにより、粉末材料Mをベース40上に移動させる。
【0042】
スライド部材20は、その下面の開口面積がベース40の上面面積よりも大きくなるよう形成されたスライド枠23と、このスライド枠23に併設され、カートリッジ部5から供給された粉末材料Mを貯蔵する材料貯蔵枠24(粉末材料貯蔵部)とを備える。好ましくは、材料貯蔵枠24は、カートリッジ部5の一部又はその全部を嵌合挿入できるように構成されている。なお、スライド部材20には、ベース40の上面に供給された粉末材料Mの表面を均すことができるように、少なくともベース40の幅よりも大きな幅を有するブレード状の部材(図示せず)又はスライド枠23のみが用いられてもよい。この場合、粉末材料Mはカートリッジ部5からベース枠体41上面の所定位置に直接的に供給される。また、スライド部材20として材料貯蔵枠24のみが用いられてもよい。
【0043】
光学機器3は、レーザ発振器を有する光源31と、集光レンズや光ビームの照射方向を偏向するガルバノメータミラー等を有するスキャン機構32と、光源31とスキャン機構32とを接続する光ファイバ33とを備える。光源31としては、例えば、粉末材料に鉄粉を含む場合、炭酸ガスレーザやNd:YAGレーザ等が用いられる。
【0044】
造形部4は、上述したベース40及びベース枠体41に加え、ベース40を固定するテーブル42と、ベース枠体41を昇降させる昇降機43とを備える。ベース40はテーブル42に固定されているので、昇降機43がベース枠体41を上昇させることにより、ベース40上にベース枠体41の内側面に囲われた空間、すなわち粉末材料Mが供給される所定の空間が生まれる。
【0045】
カートリッジ部5は、その内部に粉末材料Mが充填できるように構成された筐体50から成り、その底部には粉末材料Mを材料貯蔵枠24へ供給できるように供給口51が形成されている。カートリッジ部5は、搬送用の切削加工部6と接続するためのクランプユニット7が着脱できるように、例えば、カートリッジ部5の外部には、クランプユニット7によってクランプされ易いように、所定の溝又は突起等が設けられている(図示せず)。なお、カートリッジ部5の詳細な構成については後述する。クランプユニット7は、例えば、爪状部材を有しており、この爪状部材でカートリッジ部5を掴む又は引っ掛ける等して、カートリッジ部5をクランプすると共に、所定の位置及びタイミングでカートリッジ部5のクランプを解除できるよう構成されている。また、クランプユニット7は、切削加工部6との接続を可能とする接続部を有する。
【0046】
切削加工部6は、少なくともテーブル42に対して3軸制御が可能な主軸台61と、この主軸台61に搭載される加工機62と、硬化層が積層一体化された三次元造形物の表面を切削するエンドミルが取り付けられるスピンドルヘッド63とを備える。主軸台61は、図1に示すX軸,Y軸及びZ軸方向に可動となるように構成され、好ましくはエンドミルを自動交換できる機構が備えられる。上述した光学機器3は、好ましくは、図示したように、加工機62の側面に着脱自在となるよう構成される。
【0047】
スピンドルヘッド63は、クランプユニット7の接続部と嵌合して、これと接続及び切り離しできるように構成されている。すなわち、切削加工部6は、主軸台61、加工機62及びスピンドルヘッド63を動作させることで、クランプユニット7を介してカートリッジ部5を粉末層形成部2の所定箇所に、例えば、図示したように、材料貯蔵枠24上に搬送することができる。なお、カートリッジ部5の所定位置に磁性体を設け、クランプユニット7に電磁石を設けておき、磁力を用いてカートリッジ部5の着脱が可能となるよう構成してもよい。なお、本実施形態では、カートリッジ部5の搬送手段として切削加工部6が機能する例を示すが、切削加工部6とは別個に、カートリッジ部5を搬送する専用の搬送手段が設けられてもよい。
【0048】
ここで、カートリッジ部5のより詳細な構成について、図2(a)(b)を参照して説明する。カートリッジ部5は、それらを複数個連結するための連結機構52を備えている。この連結機構52は、例えば、複数のカートリッジ部5を上下にスライドさせることによってそれらが互いに噛み合うように形成された突起部52a及び溝部52bを有する。また、例えば、マグネットを用いて複数のカートリッジ部5を連結できるようにしてもよい。この構成によれば、連結されるカートリッジ部5の個数を変えることにより、一度に供給できる粉末材料Mの量を調整することができる。また、供給口51を開閉自在とすれば、材料貯蔵枠24の所定位置に選択的に粉末材料Mを供給することができ、粉末材料Mの過剰供給を抑制することができる。
【0049】
また、好ましくは、カートリッジ部5は、内部に充填された粉末材料Mを落下させ易い形状に形成される。具体的には、カートリッジ部5は、その形状が下方に向かって先細りとなるように形成される。更に好ましくは、カートリッジ部5の内側面には、螺旋状の溝又は突起53が形成される。こうすれば、カートリッジ部5内に粉末材料Mが残存することなく、効率的に粉末材料Mを材料貯蔵枠24に供給することができる。
【0050】
また、カートリッジ部5は、粉末材料Mが酸化や吸湿等による劣化を受け難いように、材料供給を行わないとき、その内部空間が密閉状態となるよう構成される。具体的には、筺体50は供給口51を除いて閉鎖空間を形成し、材料供給が行われないときは、供給口51は封止される。筺体50内には、例えば、窒素やアルゴン等の不活性ガスが封入される。こうすれば、カートリッジ部5が使用されない状態に置かれても、粉末材料Mの劣化が生じ難くなり、カートリッジ部5の長期保存も可能になる。また、カートリッジ部5を構成する筐体50には、例えば、再利用可能なプラスチックや、密閉性を確保できる紙等が原材料として用いられることが望ましい。こうすれば、ユーザはカートリッジ部5を使い捨てることができ、カートリッジ部5の利便性が高くなる。
【0051】
次に、カートリッジ部5から材料貯蔵枠24への粉末材料Mの材料供給方法について、図3を参照して説明する。カートリッジ部5は、その底部に設けられた供給口51が紙又はアルミ箔等から成る封止材によって封止され、また、粉末層形成部2の材料貯蔵枠24の内部には、カートリッジ部5の底部に穴をあけるための針部25が備えられる。すなわち、カートリッジ部5が材料貯蔵枠24上に搬送され、供給口51が材料貯蔵枠24内に押し込まれると、針部25によって封止材に穴が開けられ、カートリッジ部5内に充填された粉末材料Mが材料貯蔵枠24内に落下する。こうすれば、簡単な構成でカートリッジ部5から材料貯蔵枠24へ粉末材料Mを供給することができる。
【0052】
なお、カートリッジ部5は、例えば、充填された粉末材料Mの構成成分、材料を封入した年月日、及び粉末残存量等のデータを記憶する記憶メモリ(図示せず)を備えてもよい。こうすれば、ユーザは専用のデータ読取装置(図示せず)を用いて記憶メモリのデータを読み出すことでカートリッジ部5内に充填された粉末材料Mの状態を認識することができる。また、好ましくは、積層造形装置1は記憶メモリに記憶されたデータを読み取り又は書き込み可能な読取記録装置と、上記データを表示する表示部(図示せず)とを備える。ここでいう読取記録装置は、クランプユニット7又は材料貯蔵枠24を介して接触又は非接触方式でデータの読み取り等を行う。こうすれば、造形作業中もユーザはカートリッジ部5内に充填された粉末材料Mの状態を認識することができる。
【0053】
ここで、スライド部材20の具体的な構成について、上述した図3を参照して説明する。光ビームを粉末層に照射して焼結を行うとき、使用される粉末材料Mの種類によっては粉末層が外気に触れて酸化し、好適な焼結がなされないことがある。そこで、ウィンドウ26を備えたスライド枠23を焼結時にベース40上に配置し、ベース40、スライド枠23及びウィンドウ26で囲まれた空間内に不活性な雰囲気ガスを充填した状態で光ビームの照射を行う。こうすれば、粉末層と外気との接触を抑制できるので、粉末材料Mの酸化に伴う焼結の不具合を防止できる。なお、ウィンドウ26には、例えば、光ビームがYAGレーザであれば石英ガラスが、光ビームが炭酸ガスレーザであればジンクセレン等が使用される。また、ウィンドウ26は、単なる平行板ではなく、例えば、fθレンズとして機能するように構成されてもよい。こうすれば、焼結面における光ビームのスポット径を一定にすることができるために、高精度の焼結が可能になる。
【0054】
次に、本実施形態の積層造形装置1の動作例について、図4(a)〜(f)及び図5(a)〜(f)を参照して説明する。造形加工を開始するとき、昇降機43はベース枠体41をテーブル42から僅かに押し上げた状態におく。カートリッジ部5は、クランプユニット7を装着した状態でベース枠体41上に配置される。なお、カートリッジ部5の初期設置は、上述したベース枠体41上に限られない。また、この初期位置への設置は、ユーザによって行われてもよいし、切削加工部6又は専用の搬送機構(図示せず)によって自動的に行われてもよい。粉末材料Mを供給するとき、加工機62はクランプユニット7の上方に移動すると共に、スピンドルヘッド63を延伸させてクランプユニット7と連結させる(図4(a))。
【0055】
加工機62はスピンドルヘッド63及びクランプユニット7を介してカートリッジ部5を持ち上げ、主軸台61に沿って移動して(図4(b))、カートリッジ部5を材料貯蔵枠24上に搬送する(図4(c))。このように、加工機62を用いてカートリッジ部5を搬送すれば、造形作業中でも装置を停止等させることなく、適宜に粉末材料Mを供給することができる。
【0056】
次に、加工機62はスピンドルヘッド63を延伸させて、カートリッジ部5の供給口51を材料貯蔵枠24内に押し込む。これにより、材料貯蔵枠24内に設けられた針部25によって、供給口51を封止する封止材に穴が開けられ、カートリッジ部5内に充填された粉末材料Mが材料貯蔵枠24内に落下する(図4(d))。こうすれば、材料貯蔵枠24で囲われた限定的な領域に粉末材料Mが供給されるので、粉末材料Mがベース枠体41の上面に飛び散らず、スライド部材20をスライドさせることで効率的にベース40上に粉末材料Mを供給することができる。
【0057】
その後、カートリッジ部5とクランプユニット7とはクランプが解除され、クランプユニット7は所定位置に搬送される(図4(e))。そして、スライド部材20が水平レール21に沿ってスライドすることにより、材料貯蔵枠24の粉末材料Mがベース40上に供給されると共に、粉末材料Mの表面が均されて、第1層目の粉末層S1が形成される(図4(f))。
【0058】
続いて、光学機器3が粉末層S1の所定箇所に光ビームLを照射して該当個所の粉末を焼結することにより第1層目の硬化層H1が形成される(図5(a))。光ビームLの照射経路(ハッチング経路)は、積層造形物の三次元CADデータから予め作成しておく。すなわち、三次元CADモデルから生成したSTL(Standard Triangulation language)データを等ピッチでスライスした各断面の輪郭形状データを用いて各層毎の光ビームLの照射経路を作成する。このとき、積層造形物の少なくとも最表面が高密度(気孔率5%以下)となるように焼結させ、内部は低密度となるように焼結させる。すなわち、形状モデルデータを、予め表層部及び内部に分割しておき、内部についてはポーラスとなるような焼結条件で、表層部はほぼ粉末が溶融して高密度となる焼結条件で光ビームLを照射する。こうすれば、緻密な表面を持つ三次元造形物が得られる。
【0059】
焼結後、昇降機43はベース枠体41を所定高さで押し上げ(図5(b))、ベース40上には再び粉末材料Mが供給され、第2の粉末層S2が形成される(図5(c))。ベース枠体41を押し上げる高さは、第1の粉末層S1及び第1の硬化層H1の上に積層される第2の粉末層S2の厚みと等しくなる。各粉末層Sの厚みは、例えば、成形用金型等の積層造形物を形成する場合、0.05mm程度に設定される。これら粉末層Sの形成と、光学機器3による硬化層Hの形成とを繰り返すことにより(図5(d))、複数の硬化層Hが積層一体化された三次元造形物が形成される。また、上述したように、ベース枠体41を動かせば、ベース40を動かすことなく硬化層Hを積層できるので、三次元造形物を精度良く製造することができる。なお、上述したような、ベース40を固定状態としてベース枠体41を上昇させる構成に限らず、本実施形態においては、例えば、ベース枠体を固定状態としてベースを下降させる構成が用いられてもよい(図8(a)(b)参照)。
【0060】
図5(a)〜(d)に示された工程が繰り返され、積層された硬化層Hの全厚みが加工機62のスピンドルヘッド63に取り付けられるエンドミル64の工具長さ等から算出された所要の値になったとき、加工機62をベース40の上方に移動させて、積層一体化された三次元造形物の表面をエンドミル64で切削する(図5(e)(f))。エンドミル64には、例えば、超硬素材の二枚刃ボールエンドミセルが用いられ、加工形状や目的に応じて適宜にスクエアエンドミル、ラジアスエンドミル又はドリル等が用いられる。加工機62による切削経路は、光ビームLの照射経路と同様に、三次元CADデータから予め作成しておく。この切削加工によって、三次元造形物の表面に付着した粉末による余剰硬化部が除去されるので、三次元造形物の表面は高密度部が露出した状態となる。加工機62による切削後、再び粉末層Sの形成と硬化層Hの形成とが繰り返され、最終的に所望の三次元造形物が形成される。
【0061】
また、本実施形態の積層造形装置1は、好ましくは、エアポンプ及び吸引ノズル等から成る粉塵排除手段(図示せず)を備える。この粉塵排除手段により、加工機62による切削前には、切削精度を向上させるため、焼結されなかった余剰粉末層が排除され、切削後には、切削により生じた切削粉が排除される。更に好ましくは、粉塵排除手段は、余剰粉末層又は切削粉といった排除対象毎に複数の吸引ノズルを有し、余剰粉末及び切削粉は個別に回収される。
【0062】
上述した構成によれば、カートリッジ部5を用いて粉末材料Mを供給できるので、積層造形装置の高さを抑制することができ、従来の積層造形装置と比べて、コンパクトな装置が得られる。また、カートリッジ部5内に粉末材料Mが充填されているので、粉末材料Mが酸化や吸湿等による劣化を受け難いようにすることができ、しかも、材料供給時に粉末が装置内を汚すことも抑制できなる。更に、ユーザは粉末材料Mに直接接することなく、カートリッジ部5を所定箇所に設置するだけで良いので、材料供給を簡便に行うことができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施形態に係る積層造形装置について、図6(a)〜(c)を参照して説明する。本実施形態の積層造形装置1は、カートリッジ部5の構成及び材料貯蔵枠24の構成が上述した第1の実施形態と異なる。本実施形態においては、カートリッジ部5には、図示したようなドラム形状の筐体50が用いられる。この筐体50は、その一部又は全部が材料貯蔵枠24に嵌合挿入できるように構成されうる。また、カートリッジ部5の下方には、粉末材料Mを材料貯蔵枠24へ供給するための粉末供給口54が形成されている。更に、粉末供給口54が開閉自在となるように、粉末供給口54及び筐体50の側面をスライドする蓋板55が設けられている。本実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様に、カートリッジ部5は、切削加工部6及び筐体50の形状に対応したクランプユニット7によって搬送される(図示せず)。
【0064】
蓋板55には、カートリッジ部5の長手方向に延伸された蓋レバー56が設けられ、また、材料貯蔵枠24には、上記の蓋レバー56と対応する位置から上方に突出したバー27が設けられる。また、蓋板55は粉末供給口54を閉口させるようにバネ等によって付整されている。そのため、蓋レバー56と材料貯蔵枠24のバー27とが離れているときは、粉末供給口54は閉口状態にある(図6(a))。そして、カートリッジ部5の粉末供給口54側が材料貯蔵枠24の方向へ移動すると、蓋レバー56がバー27に接触して、ローラー状の筐体50側面に沿ってスライドする。このとき、蓋レバー56と共に蓋板55もスライドして粉末供給口54が開口し、カートリッジ部5内に充填されている粉末材料Mが材料貯蔵枠24へ落下する(図6(b))。更に、カートリッジ部5が材料貯蔵枠24へ挿入されると、粉末供給口の開口面積が大きくなり、カートリッジ部5からの粉末材料Mの供給量が多くなる。このように、カートリッジ部5の粉末供給口54を開閉自在とすることにより、粉末材料Mの供給量を適宜に調整することができる。
【0065】
また、本実施形態のカートリッジ部5は、粉末層形成部2の移動に同期して粉末供給口54が開口するように構成されていてもよい。こうすれば、材料供給が必要な時のみ粉末供給口54を開口させて適量の粉末材料Mを供給することができ、粉末材料Mの劣化も抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態の変形例として、図7に示すように、カートリッジ部5は、スクリュー57が内蔵されていてもよい。このスクリュー57は、モータ58により駆動される。カートリッジ部5内でスクリュー57を回転させて、粉末材料Mを攪拌することにより、カートリッジ部5内での材料詰まりを抑制し、スムーズな粉末材料Mの供給が可能となる。また、粉末供給口54を閉口させた状態においても、充填された粉末材料Mを撹拌することができ、材料成分の粒径や均一性を保つことができる。
【0067】
また、カートリッジ部5は、内部に充填された粉末材料Mを乾燥させる乾燥手段を更に備えることが望ましい。乾燥手段としては、例えば、上記スクリュー57に電熱線(図示せず)を配置することが挙げられる。また、カートリッジ部5の側壁に電熱ヒータ等を配置してもよい。こうすれば、カートリッジ部5内の粉末材料Mの吸湿を抑制できる。また、積層造形装置1は、カートリッジ部5を振動させる振動手段を更に備えてもよい。この振動手段としては、例えば、切削加工部6の可動性を利用してもよいし、上記スクリュー57を駆動するモータ58の動力を利用するものでもよい。こうすれば、カートリッジ部5内に粉末材料Mが停滞することなく、無駄なく粉末材料Mを使い切ることができる。この振動手段は、上述した使い捨て式のカートリッジ部5に適用することが望ましい。
【0068】
なお、本発明は種々の変容が可能であり、必ずしも上述の実施形態に示した構成に限られない。上述した実施形態においては、カートリッジ部5が予めベース枠体41上に設置されている例を示したが、積層造形装置1内に、複数のカートリッジ部5を収納できるカートリッジ部収納部を設けてもよい。より好ましくは、積層造形装置1は、材料貯蔵部24内の粉末材料Mが少なくなると、搬送手段が自動的に新規のカートリッジ部5に取り替えるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る積層造形装置の斜視図、(b)は同装置の一部側断面図。
【図2】(a)は同積層造形装置に用いられるカートリッジ部の斜視図、(b)は同カートリッジ部の部分透視斜視図。
【図3】同積層造形装置における材料供給方法を説明するための斜視図。
【図4】(a)〜(f)は同積層造形装置の動作例を示す一部側断面図。
【図5】(a)〜(f)は同積層造形装置の動作例を示す一部側断面図。
【図6】(a)〜(c)は本発明の第2の実施形態に係る積層造形装置における材料供給手順を説明する斜視図。
【図7】同積層造形装置の変形例として用いられるカートリッジ部の一部透視斜視図。
【図8】(a)は従来の積層造形装置の一部分解斜視図、(b)は同積層造形装置の材料供給部の側断面図。
【符号の説明】
【0070】
1 積層造形装置
2 粉末層形成部(粉末層形成手段)
20 スライド部材
23 スライド枠
24 材料貯蔵枠
25 針部
3 光学機器(硬化層形成手段)
4 造形部
5 カートリッジ部材(材料供給手段)
53 溝又は突起
54 粉末供給口
57 スクリュー
6 切削加工部(搬送手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料から成る粉末層を形成する粉末層形成手段と、前記粉末層形成手段に粉末材料を供給する材料供給手段と、前記粉末層の所定箇所に光ビームを照射して該当個所の粉末を焼結又は溶融固化させて硬化層を形成する硬化層形成手段とを備え、前記粉末層形成手段による粉末層の形成と、前記硬化層形成手段による硬化層の形成とを繰り返すことにより複数の硬化層が積層一体化された三次元造形物を製造する積層造形装置であって、
前記材料供給手段は、粉末材料が充填されるカートリッジ部を備えることを特徴とする積層造形装置。
【請求項2】
前記カートリッジ部をクランプすると共に、該カートリッジ部を搬送する搬送手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
前記粉末層形成手段は、粉末材料貯蔵部を備え、
前記材料供給手段は、前記カートリッジ部に充填された粉末材料を前記粉末材料貯蔵部に供給するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層造形装置。
【請求項4】
前記粉末材料貯蔵部は、前記カートリッジ部の一部又は全部を嵌合挿入できるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の積層造形装置。
【請求項5】
前記カートリッジ部は、複数個を連結できるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項6】
前記カートリッジ部は、その形状が下方に向けて先細りとなるよう形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項7】
前記カートリッジ部は、その内側面に螺旋状の溝又は突起が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項8】
前記カートリッジ部は、その底部に穴が開けられることにより、内部に充填された粉末材料が落下するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項9】
前記粉末層形成手段は、前記カートリッジ部の底部に穴をあけるための針部を備えることを特徴とする請求項8に記載の積層造形装置。
【請求項10】
前記カートリッジ部は、粉末材料を供給するための粉末供給口が開閉自在に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項11】
前記カートリッジ部は、前記材料粉末貯蔵部に挿入されたときに前記粉末供給口が開口するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の積層造形装置。
【請求項12】
前記カートリッジ部は、前記粉末層形成手段の移動に同期して前記粉末供給口が開口するように構成されていることを特徴とする請求項10に記載の積層造形装置。
【請求項13】
前記カートリッジ部は、スクリューが内蔵されていることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項14】
前記カートリッジ部内に充填された粉末材料を乾燥させる乾燥手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項15】
前記カートリッジ部を振動させる振動手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項16】
前記カートリッジ部は、粉末材料が充填される内部空間が密閉状態となるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項17】
前記カートリッジ部は、再利用可能なプラスチック材料又は密閉性を確保できる紙材料を原材料として構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の積層造形装置。
【請求項18】
前記カートリッジ部は、充填された粉末材料の成分を記憶する記憶メモリを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の積層造形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−37599(P2010−37599A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202050(P2008−202050)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】