積層電子部品
【課題】積層体の表面の中央部分に積層方向に応力がかかる場合でも、積層体に割れや欠けが発生するのを防ぐことが可能な積層型電子部品を提供すること。
【解決手段】積層コンデンサC1は、誘電体層21と内部電極層31,41とが積層されてなるコンデンサ素体1と、コンデンサ素体1の両端面側にそれぞれ設けられた端子電極と、を備えている。コンデンサ素体1は、誘電体層21よりも硬度が高い領域51を含んでいる。領域51は、コンデンサ素体1の両端面の対向方向から見て、該対向方向とコンデンサ素体1における積層方向とに直交する方向での内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、両端面にわたって上記対向方向に連続して伸びている。
【解決手段】積層コンデンサC1は、誘電体層21と内部電極層31,41とが積層されてなるコンデンサ素体1と、コンデンサ素体1の両端面側にそれぞれ設けられた端子電極と、を備えている。コンデンサ素体1は、誘電体層21よりも硬度が高い領域51を含んでいる。領域51は、コンデンサ素体1の両端面の対向方向から見て、該対向方向とコンデンサ素体1における積層方向とに直交する方向での内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、両端面にわたって上記対向方向に連続して伸びている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コンデンサ等の積層電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体層と内部電極層とが積層されてなる積層体と、前記積層体の両端面側にそれぞれ設けられた端子電極と、を備えており、積層体が上記誘電体層よりも硬度が高い領域を含んでいる積層電子部品が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された積層電子部品では、セラミック焼結体の複数の内部電極により挟まれている部分がBaTiO3を主体とするセラミックスにより構成されており、複数の内部電極が積層されている部分の上部及び下部がCaZrO3を主体とするセラミックスにより構成されている。一般に、CaZrO3はBaTiO3よりも焼成後の硬度が高い。したがって、特許文献1に記載された積層電子部品では、複数の内部電極が積層されている部分の上部及び下部が硬度の高い領域となる。
【0004】
特許文献2に記載された積層電子部品では、複数の誘電体セラミック層と複数の内部電極層とを交互に積層したコンデンサ本体の側面に、コンデンサして機能しないセラミックスからなる一対のサイドマージン部を有しており、誘電体セラミック層がBaTiO3を主成分とし、サイドマージン部がCaZrO3を含んでいる。したがって、特許文献2に記載された積層電子部品では、サイドマージン部が硬度の高い領域となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−233363号公報
【特許文献2】特開平10−050545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、積層型電子部品を基板等に実装する場合、積層体の積層方向に直交する表面を吸着面とし、この吸着面の中央部分を部品実装機(マウンタ)の吸着ノズルで吸引、保持し、実装している。このとき、マウンタの吸着ノズルから積層型電子部品に応力がかかることがあり、この応力により積層体に割れや欠けが生じてしまうことがある。
【0007】
特許文献1に記載された積層電子部品では、複数の内部電極が積層されている部分を積層方向に挟む上部及び下部の硬度が高い。しかしながら、吸着ノズルからの応力は、積層体に対して積層方向に加わることから、積層方向に平行な方向に存在する外層部は積層方向にかかる応力に対して耐える力が低く、積層体に割れや欠けが生じてしまう懼れがある。特許文献2に記載された積層電子部品では、サイドマージン部の硬度が高いものの、吸着面の中央部分に応力がかかることから、サイドマージン部が中央部分にかかる応力に対する支えにはなり難く、どうしても積層体に割れや欠けが生じてしまう懼れがある。特に、積層体の積層方向での長さ(積層体の厚み)が十分に小さい、低背化された積層型電子部品では、積層方向にかかる応力に対して極めて弱く、割れや欠けの発生が顕著となる。積層体の厚みが、積層体の幅の1/3程度以下となると、積層方向にかかる応力に対して著しく弱くなる。
【0008】
本発明は、積層体の表面の中央部分に積層方向に応力がかかる場合でも、積層体に割れや欠けが発生するのを防ぐことが可能な積層型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、誘電体層と内部電極層とが積層されてなる積層体と、積層体の両端面側にそれぞれ設けられた端子電極と、を備えた積層電子部品であって、積層体は、誘電体層よりも硬度が高い領域を含んでおり、領域は、両端面の対向方向から見て、該対向方向と積層体における積層方向とに直交する方向での内部電極層の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、両端面にわたって対向方向に連続して伸びていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、誘電体層よりも硬度が高い領域が、両端面の対向方向から見て、該対向方向と積層体における積層方向とに直交する方向での内部電極層の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、両端面にわたって対向方向に連続して伸びている。このため、積層体の積層方向に直交する表面の中央部分をマウンタの吸着ノズルで吸引、保持して、積層型電子部品を実装する際に、積層体の上記表面の中央部分に当該積層体の積層方向から応力がかかったとしても、上記領域が、表面の中央部分において積層方向にかかる応力に対する支えとして機能し、積層方向にかかる応力に対して耐える力が高くなり、積層体の強度が増すこととなる。したがって、本発明によれば、積層体の表面の中央部分に積層方向からかかる応力に対して強く、積層体に割れや欠けが発生するのを防止することができる。
【0011】
好ましくは、領域は、対向方向から見て、該対向方向と積層方向とに直交する方向での中央部に位置している。この場合、応力がかかる中央部における積層体の強度が増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0012】
好ましくは、領域は、積層体の積層方向に対向する両側面に至るように積層体を積層方向に貫通している。この場合、支えとして機能する上記領域において、積層方向にかかる応力に対して耐える力が更に高くなる。したがって、積層体の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0013】
好ましくは、積層体は、内部電極層を含む容量形成部と、該容量形成部を積層方向で挟む外層部と、を有しており、外層部は、誘電体層よりも硬度が高い。この場合、積層体の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0014】
好ましくは、積層体は、内部電極層を含む容量形成部と、該容量形成部を対向方向と積層方向とに直交する方向で挟むサイドマージン部と、を有しており、サイドマージン部は、誘電体層よりも硬度が高い。この場合、積層体の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0015】
好ましくは、積層体において、積層方向での長さは、対向方向での長さ、及び、対向方向と積層方向とに直交する方向での長さよりも小さい。本発明は、積層体の積層方向での長さ、すなわち積層体の厚みが小さい低背化された積層型電子部品において、特に、顕著な割れや欠けの発生防止効果を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、積層体の表面の中央部分に積層方向に応力がかかる場合でも、積層体に割れや欠けが発生するのを防ぐことが可能な積層型電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿った断面における構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【図5】第1実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【図6】第1実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【図7】第2実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線に沿った断面における構成を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【図10】第2実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【図11】第2実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【図12】第2実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【図13】第3実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。
【図14】図13におけるXIV−XIV線に沿った断面における構成を示す図である。
【図15】第3実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【図16】第3実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【図17】第3実施形態に係る積層コンデンサの製造方法の変形例を説明するための図である。
【図18】第3実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【図19】第3実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【図20】第3実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
(第1実施形態)
まず、図1〜図3に基づいて、第1実施形態に係る積層コンデンサC1の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。図2は、図1におけるII−II線に沿った断面における構成を示す図である。図3は、第1実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【0020】
積層コンデンサC1は、図1に示されるように、積層体としてのコンデンサ素体1と、コンデンサ素体1の一端面側に設けられた第1端子電極11と、コンデンサ素体1の他端面側に設けられた第2端子電極13と、を備える。コンデンサ素体1は、直方体形状を呈しており、相対向する長方形状の第1主面2及び第2主面3と、相対向する第1端面4及び第2端面5と、相対向する第1側面6及び第2側面7と、を含んでいる。第1端面4及び第2端面4は、第1主面2と第2主面3との間を連結するように第1主面2及び第2主面3の短辺方向に伸びている。第1側面6及び第2側面7は、第1主面2と第2主面3との間を連結するように第1主面2及び第2主面3の長辺方向に伸びている。第1主面2及び第2主面3は、コンデンサ素体1の側面でもある。本実施形態では、第2主面3が他の部品(例えば、回路基板や電子部品等)に対する実装面となり、第1主面2がマウンタにより吸着される面(吸着面)となる。
【0021】
第1及び第2主面2,3の対向方向、第1及び第2端面4,5の対向方向、及び第1及び第2側面6,7の対向方向は、互いに直交している。コンデンサ素体1においては、第1及び第2主面2,3での長さ(厚み)が、第1及び第2端面4,5の対向方向での長さ及び第1及び第2側面6,7の対向方向での長さ(幅)よりも小さく設定されている。本実施形態では、コンデンサ素体1の厚みは0.1〜0.3mm程度であり、コンデンサ素体1の長さは0.6〜1.0mm程度であり、コンデンサ素体1の幅は0.3〜0.5mm程度である。
【0022】
コンデンサ素体1の第1端面4には、第1端子電極11が配置されている。第1端子電極11は、第1端面4を覆うように、第1及び第2主面2,3並びに第1及び第2側面6,7に渡って形成されている。コンデンサ素体1の第2端面5には、第2端子電極13が配置されている。第2端子電極13は、第2端面5を覆うように、第1及び第2主面2,3並びに第1及び第2側面6,7に渡って形成されている。第1及び第2端子電極11,13は、例えば、導電性金属粉末及びガラスフリットを含む導電性ペーストをコンデンサ素体1の対応する外表面の付与し、焼き付けることによって形成される。必要に応じて、焼き付けられた電極の上にめっき層が形成されることもある。
【0023】
コンデンサ素体1は、図2及び図3に示されるように、複数の誘電体層21と、複数の第1内部電極層31と、複数の第2内部電極層41と、を有している。コンデンサ素体1は、内部電極層31,41を含む容量形成部1aと、容量形成部1aを第1及び第2主面2,3の対向方向で挟む外層部1bと、容量形成部1aを第1及び第2側面6,7の対向方向で挟むサイドマージン部1cと、からなる。
【0024】
各誘電体層21は、第1及び第2主面2,3に平行な方向に伸びており、第1及び第2主面2,3の対向方向に積層されている。すなわち、第1及び第2主面2,3の対向方向と、コンデンサ素体1における積層方向とは、一致している。コンデンサ素体1は、第1内部電極層31と第2内部電極層41とが誘電体層21を挟んで対向するように積層されてなる構造を有している。
【0025】
各誘電体層21は、BaTiO3を主成分として含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の積層コンデンサC1では、各誘電体層21は、誘電体層21の間の境界が視認できない程度に一体化されている。第1内部電極層31と第2内部電極層41とは、コンデンサ素体1において、誘電体層21の積層方向、すなわち第1及び第2主面2,3の対向方向に交互に配置されている。
【0026】
各第1内部電極層31は、同じ層に位置する複数(本実施形態では、2つ)の第1内部電極33を含んでいる。第1内部電極33は、第1及び第2側面6,7の対向方向に、互いの間に間隔を有して併置されている。第1内部電極33は、矩形状を呈しており、主電極部と、第1端面4に端部が露出するように主電極部から第1端面4に伸びる引き出し部と、からなる。第1端子電極11は、第1内部電極33の引き出し部における第1端面4に露出した部分をすべて覆うように形成されており、各引き出し部は、第1端子電極11に直接接続される。これにより、第1内部電極層31(第1内部電極33)は、第1端子電極11に物理的且つ電気的に接続されることとなる。
【0027】
各第2内部電極層41は、同じ層に位置する複数(本実施形態では、2つ)の第2内部電極43を含んでいる。第2内部電極43は、第1及び第2側面6,7の対向方向に、互いの間に間隔を有して併置されている。第2内部電極43は、矩形状を呈しており、第1内部電極33と同様に、主電極部と、第2端面5に端部が露出するように主電極部から第2端面5に伸びる引き出し部と、からなる。第2端子電極13は、第2内部電極43の引き出し部における第2端面5に露出した部分をすべて覆うように形成されており、各引き出し部は、第2端子電極13に直接接続される。これにより、第2内部電極層41(第2内部電極43)は、第2端子電極13に物理的且つ電気的に接続されることとなる。
【0028】
第1側面6寄りに位置する第1及び第2内部電極33,43における第1側面6側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での一方の端縁を構成する。同様に、第2側面7寄りに位置する第1及び第2内部電極33,43における第2側面7側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での他方の端縁を構成する。各第1及び第2内部電極33,43は、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料(例えば、卑金属であるNi等)からなる。各第1及び第2内部電極33,43は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0029】
コンデンサ素体1は、BaTiO3を主成分とする誘電体層21よりも硬度が高い領域51を複数含んでいる。各領域51は、CaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成される。
【0030】
領域51は、各内部電極33,43と同じ層で且つ内部電極33,43の間にそれぞれ位置している。すなわち、複数の領域51は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、上記内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置しており、第1及び第2主面2,3の対向方向に併置されている。本実施形態では、領域51は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。領域51は、第1及び第2端面4,5にわたって第1及び第2端面4,5の対向方向に連続して伸びている。すなわち、領域51は、一端が第1端面4に露出し、他端が第2端面5に露出している。
【0031】
続いて、図4を参照して、積層コンデンサC1の製造方法について説明する。図4は、第1実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【0032】
まず、誘電体層21を形成するための第1セラミックペースト、領域51を形成するための第2セラミックペースト、及び、第1及び第2内部電極層31,41(第1及び第2内部電極33,43)を形成するための内部電極ペーストをそれぞれ準備する。
【0033】
第1セラミックペーストは、上述したBaTiO3を主成分とする誘電体材料の原料に有機ビヒクル等を混合・混錬して得ることができる。第2セラミックペーストは、上述したCaZrO3を主成分とする誘電体材料の原料に有機ビヒクル等を混合・混錬して得ることができる。各誘電体材料の原料としては、例えば、誘電体材料が上述したような各種の複合酸化物系材料である場合は、当該複合酸化物に含まれる各金属原子の酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などの組み合わせが挙げられる。
【0034】
有機ビヒクルは、バインダー及び溶剤を含むものである。バインダーとしては、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂等が挙げられる。また、溶剤としては、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、キシレン、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤が挙げられる。
【0035】
各セラミックペーストは、上記以外に各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体等が必要に応じて含有されていてもよい。
【0036】
内部電極ペーストは、第1及び第2内部電極層31,41(第1及び第2内部電極33,43)を構成するための導電材料と有機ビヒクルとを混合・混錬したものである。導電材料としては、上述したような金属材料を用い、球状やリン片状等の種々の形状のものを適用できる。また、内部電極ペースト中には、必要に応じて無機化合物を適量含有させることが好ましい。これにより、後述する焼成時において、セラミックグリーンシート及び内部電極ペースト層の体積変化の差を小さくして、これに起因する応力の発生を低減することができる。その結果、この応力に基づくクラックや反り等の不具合を抑制することが可能となる。
【0037】
有機ビヒクルは、バインダー及び溶剤を含むものである。バインダーとしては、例えば、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、またはこれらの共重合体等が挙げられる。溶剤としては、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン、アセトン等が挙げられる。
【0038】
内部電極ペースト中には、適宜、可塑剤を含有させてもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)等のフタル酸エステル、アジピン酸、リン酸エステル、グリコール類等が適用できる。
【0039】
次に、例えばPET等からなるキャリアシートCS上に第1セラミックペーストをドクターブレード法等の公知の方法により付与し、セラミックグリーンシートCGを形成する(図4(a)参照)。そして、セラミックグリーンシートCG上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、内部電極層31,41に対応する内部電極パターンEPをそれぞれ形成する(図4(b)参照)。その後、セラミックグリーンシートCG上に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、領域51に対応するセラミックパターンCPを形成する(図4(c)参照)。
【0040】
次に、内部電極パターンEP及びセラミックパターンCPが形成されたセラミックグリーンシートCGを所定の大きさに揃えて所定の枚数で積層し、積層方向から加圧してグリーン積層体を得る。そして、グリーン積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る。
【0041】
次に、グリーンチップから、各部に含まれるバインダーを除去した後(脱バインダー)、このグリーンチップを焼成する。この焼成により、セラミックグリーンシートCGから誘電体層21が、また、内部電極パターンEPから第1及び第2内部電極層31,41が、また、セラミックパターンCPから領域51がそれぞれ形成されたコンデンサ素体1が得られる。脱バインダーは、グリーンチップを、空気中、又は、N2及びH2の混合ガス等の還元雰囲気中で、200℃〜600℃程度に加熱することにより行うことができる。また、焼成は、脱バインダー後のグリーンチップを、例えば、還元雰囲気下で1100℃〜1300℃程度に加熱することにより行うことができる。
【0042】
次に、コンデンサ素体1の両端部に導電性ペーストを付与して焼付けし、さらにめっきを施すことにより第1及び第2端子電極11,13を形成する。導電性ペーストは、Cuを主成分とする金属粉末にガラスフリット及び有機ビヒクルを混合したものを用いることができる。金属粉末は、Ni、Ag−PdあるいはAgを主成分とするものであってもよい。めっきは、Ni,Sn,Ni−Sn合金,Sn−Ag合金,Sn−Bi合金などの金属めっきを施すことができる。また、金属めっきは、例えば、NiとSnとで2層以上形成した多層構造としてもよい。これらの工程により、図1に示されるような構成の積層コンデンサC1が得られる。
【0043】
以上のように、本実施形態では、誘電体層21よりも硬度が高い領域51が、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での各内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、第1及び第2端面4,5にわたって対向方向に連続して伸びている。このため、コンデンサ素体1の積層方向に直交する表面、すなわち第1主面2の中央部分をマウンタの吸着ノズルで吸引、保持して、積層コンデンサC1を実装する際に、コンデンサ素体1の第1主面2の中央部分に当該コンデンサ素体1の積層方向から応力がかかったとしても、上記領域51が、第1主面2の中央部分において積層方向にかかる応力に対する支えとして機能し、積層方向にかかる応力に対して耐える力が高くなり、コンデンサ素体1の強度が増すこととなる。したがって、コンデンサ素体1は第1主面2の中央部分に積層方向からかかる応力に対して強く、コンデンサ素体1に割れや欠けが発生するのを防止することができる。
【0044】
本実施形態においては、領域51は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。これにより、応力がかかる中央部におけるコンデンサ素体1の強度が増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0045】
ところで、CaZrO3を主成分として含むセラミックグリーンシートの焼結体にて誘電体層21を構成することにより、コンデンサ素体1の強度を高めることはできる。しかしながら、CaZrO3はBaTiO3に比して誘電率が低く、誘電体層21の主成分をCaZrO3とした場合、同じサイズの積層コンデンサで比較して、本実施形態に係る積層コンデンサC1よりも静電容量が小さくなってしまう。したがって、CaZrO3を誘電体層21の主成分とした場合、近年要求が高まっている、積層コンデンサの大静電容量化を実現するためには、内部電極の積層数を増やすといった更なる対応が求められることとなり、積層コンデンサ(コンデンサ素体)が大型化するという弊害が生じてしまう。
【0046】
本実施形態では、内部電極層31,41と同じ層に領域51が位置していることから、領域51が存在しない構成の積層コンデンサに比して、静電容量が低くなる。しかしながら、静電容量の低下代は、誘電体層21の主成分をCaZrO3とした積層コンデンサよりも極めて小さい。また、内部電極層31,41の対向面積を僅かに大きく設定する等の手法により、積層コンデンサ(コンデンサ素体)が大型化させることなく、静電容量の低下代を補うことが可能である。
【0047】
続いて、図5及び図6を参照して、積層コンデンサC1の変形例の構成について説明する。図5及び図6は、第1実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【0048】
図5に示された変形例では、領域51だけでなく、外層部1bもCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体1の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0049】
図6に示された変形例では、領域51及び外層部1bだけでなく、サイドマージン部1cもCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体1の強度が更に増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、図7〜図9に基づいて、第2実施形態に係る積層コンデンサC2の構成について説明する。図7は、第2実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。図8は、図7におけるVIII−VIII線に沿った断面における構成を示す図である。図9は、第2実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【0051】
積層コンデンサC2は、図7に示されるように、コンデンサ素体61と、第1端子電極11と、第2端子電極13と、を備えている。コンデンサ素体61は、図8及び図9に示されるように、複数の誘電体層21と、複数の第1内部電極層31と、複数の第2内部電極層41と、を有している。コンデンサ素体61は、容量形成部1aと、外層部1bと、サイドマージン部1cと、からなる。
【0052】
各誘電体層21は、BaTiO3を主成分として含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の積層コンデンサC2においても、積層コンデンサC1と同じく、各誘電体層21は、誘電体層21の間の境界が視認できない程度に一体化されている。第1内部電極層31と第2内部電極層41とは、コンデンサ素体61において、誘電体層21の積層方向、すなわち第1及び第2主面2,3の対向方向に交互に配置されている。
【0053】
各第1内部電極層31は、一つの第1内部電極33を含んでいる。第1内部電極33は、第1端子電極11に物理的且つ電気的に接続されている。各第2内部電極層41は、一つの第2内部電極43を含んでいる。第2内部電極43は、第2端子電極13に物理的且つ電気的に接続されている。第1及び第2内部電極33,43における第1側面6側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での一方の端縁を構成する。同様に、第1及び第2内部電極33,43における第2側面7側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での他方の端縁を構成する。
【0054】
コンデンサ素体61は、BaTiO3を主成分とする誘電体層21よりも硬度が高い領域53を複数含んでいる。各領域53は、領域51と同じく、CaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成される。
【0055】
領域53は、第1及び第2内部電極層31,41との間に位置する誘電体層21と同じ層で且つ第1及び第2内部電極層31,41との間に位置している。すなわち、複数の領域53は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、上記内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置しており、第1及び第2主面2,3の対向方向に併置されている。本実施形態では、領域53は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。領域53は、第1及び第2端面4,5にわたって第1及び第2端面4,5の対向方向に連続して伸びている。すなわち、領域53は、一端が第1端面4に露出し、他端が第2端面5に露出している。
【0056】
続いて、図10を参照して、積層コンデンサC2の製造方法について説明する。図10は、第2実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【0057】
まず、上記第1及び第2セラミックペースト並びに内部電極ペーストをそれぞれ準備する。そして、キャリアシートCS上に第1セラミックペーストをドクターブレード法等の公知の方法により付与し、セラミックグリーンシートCGを形成する(図10(a)参照)。このとき、セラミックグリーンシートCGは、互いの間に所定の間隔を有するように形成されている。そして、セラミックグリーンシートCG上における、セラミックグリーンシートCGの間の間隙に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、領域53に対応するセラミックパターンCPを形成する(図10(b)参照)。その後、セラミックグリーンシートCG及びセラミックパターンCP上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、内部電極層31,41に対応する内部電極パターンEPを形成する(図10(c)参照)。
【0058】
次に、内部電極パターンEP及びセラミックパターンCPが形成されたセラミックグリーンシートCGを所定の大きさに揃えて所定の枚数で積層し、積層方向から加圧してグリーン積層体を得る。そして、グリーン積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る。
【0059】
次に、グリーンチップから、各部に含まれるバインダーを除去した後(脱バインダー)、このグリーンチップを焼成する。この焼成により、セラミックグリーンシートCGから誘電体層21が、また、内部電極パターンEPから第1及び第2内部電極層31,41が、また、セラミックパターンCPから領域53がそれぞれ形成されたコンデンサ素体61が得られる。
【0060】
次に、コンデンサ素体61の両端部に導電性ペーストを付与して焼付けし、さらにめっきを施すことにより第1及び第2端子電極11,13を形成する。これらの工程により、図7に示されるような構成の積層コンデンサC2が得られる。
【0061】
以上のように、本実施形態では、誘電体層21よりも硬度が高い領域53が、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での各内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、第1及び第2端面4,5にわたって対向方向に連続して伸びている。このため、コンデンサ素体61の積層方向に直交する表面、すなわち第1主面2の中央部分をマウンタの吸着ノズルで吸引、保持して、積層コンデンサC1を実装する際に、コンデンサ素体61の第1主面2の中央部分に当該コンデンサ素体61の積層方向から応力がかかったとしても、上記領域53が、第1主面2の中央部分において積層方向にかかる応力に対する支えとして機能し、積層方向にかかる応力に対して耐える力が高くなり、コンデンサ素体61の強度が増すこととなる。したがって、コンデンサ素体61は第1主面2の中央部分に積層方向からかかる応力に対して強く、コンデンサ素体61に割れや欠けが発生するのを防止することができる。
【0062】
本実施形態においては、領域53は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。これにより、応力がかかる中央部におけるコンデンサ素体61の強度が増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0063】
続いて、図11及び図12を参照して、積層コンデンサC2の変形例の構成について説明する。図11及び図12は、第2実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【0064】
図11に示された変形例では、領域53だけでなく、外層部1bもCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体61の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0065】
図12に示された変形例では、領域53及び外層部1bだけでなく、サイドマージン部1cもCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体61の強度が更に増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0066】
本実施形態では、誘電体層21と同じ層に領域53が位置していることから、領域53が存在しない構成の積層コンデンサに比して、静電容量が低くなる。しかしながら、領域53も低い値ながら静電容量を生じさせ得ることから、静電容量の低下代を低く抑えることが可能である。また、内部電極層31,41の対向面積を僅かに大きく設定する等の手法により、積層コンデンサ(コンデンサ素体)が大型化させることなく、静電容量の低下代を補うことも可能である。
【0067】
(第3実施形態)
次に、図13〜図15に基づいて、第3実施形態に係る積層コンデンサC3の構成について説明する。図13は、第3実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。図14は、図13におけるXIV−XIV線に沿った断面における構成を示す図である。図15は、第3実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【0068】
積層コンデンサC3は、図13に示されるように、コンデンサ素体71と、第1端子電極11と、第2端子電極13と、を備えている。コンデンサ素体71は、図14及び図15に示されるように、複数の誘電体層21と、複数の第1内部電極層31と、複数の第2内部電極層41と、を有している。コンデンサ素体71は、容量形成部1aと、外層部1bと、サイドマージン部1cと、からなる。
【0069】
各誘電体層21は、BaTiO3を主成分として含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の積層コンデンサC3においても、積層コンデンサC1,C2と同じく、各誘電体層21は、誘電体層21の間の境界が視認できない程度に一体化されている。第1内部電極層31と第2内部電極層41とは、コンデンサ素体71において、誘電体層21の積層方向、すなわち第1及び第2主面2,3の対向方向に交互に配置されている。
【0070】
各第1内部電極層31は、同じ層に位置する複数(本実施形態では、2つ)の第1内部電極33を含んでいる。第1内部電極33は、第1及び第2側面6,7の対向方向に、互いの間に間隔を有して併置されている。第1内部電極33は、第1端子電極11に物理的且つ電気的に接続されている。各第2内部電極層41は、同じ層に位置する複数(本実施形態では、2つ)の第2内部電極43を含んでいる。第2内部電極43は、第1及び第2側面6,7の対向方向に、互いの間に間隔を有して併置されている。第2内部電極43は、第2端子電極13に物理的且つ電気的に接続されている。
【0071】
第1側面6寄りに位置する第1及び第2内部電極33,43における第1側面6側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での一方の端縁を構成する。同様に、第2側面7寄りに位置する第1及び第2内部電極33,43における第2側面7側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での他方の端縁を構成する。
【0072】
コンデンサ素体71は、BaTiO3を主成分とする誘電体層21よりも硬度が高い領域55を含んでいる。領域55は、領域51,53と同じく、CaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成される。
【0073】
領域55は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、内部電極33,43の間に、上記内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置している。本実施形態では、領域55は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。領域55は、第1及び第2端面4,5に至るようにコンデンサ素体71を第1及び第2端面4,5の対向方向に貫通すると共に、第1及び第2主面2,3に至るようにコンデンサ素体71を第1及び第2主面2,3の対向方向に貫通している。すなわち、領域55の端は、第1及び第2主面2,3並びに第1及び第2端面4,5に露出している。
【0074】
続いて、図16〜図18を参照して、積層コンデンサC3の製造方法について説明する。図16〜図18は、第3実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【0075】
まず、上記第1及び第2セラミックペースト並びに内部電極ペーストをそれぞれ準備する。そして、キャリアシートCS上に第1セラミックペーストをドクターブレード法等の公知の方法により付与し、セラミックグリーンシートCGを形成する(図16(a)参照)。このとき、セラミックグリーンシートCGは、互いの間に所定の間隔を有するように形成されている。そして、セラミックグリーンシートCG上における、セラミックグリーンシートCGの間の間隙に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、領域55に対応するセラミックパターンCPを形成する(図16(b)参照)。このとき、セラミックパターンCPは、その厚みがセラミックグリーンシートCGの厚みと後に形成される内部電極パターンEPの厚みとの和と同等となるように形成されている。その後、セラミックグリーンシートCG上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、内部電極層31,41に対応する内部電極パターンEPをそれぞれ形成する(図16(c)参照)。
【0076】
セラミックグリーンシートCG、セラミックパターンCP、及び内部電極パターンEPは、図17に示されるようにして形成されてもよい。すなわち、まず、キャリアシートCS上に第1セラミックペーストをドクターブレード法等の公知の方法により付与し、セラミックグリーンシートCGを形成する(図17(a)参照)。このとき、セラミックグリーンシートCGは、互いの間に所定の間隔を有するように形成されている。そして、セラミックグリーンシートCG上における、セラミックグリーンシートCGの間の間隙に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、領域55に対応するセラミックパターンCPを形成する(図17(b)参照)。このとき、セラミックパターンCPは、その厚みがセラミックグリーンシートCGの厚みと同等となるように形成されている。その後、セラミックグリーンシートCG上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、内部電極層31,41に対応する内部電極パターンEPをそれぞれ形成する(図17(c)参照)。そして、内部電極パターンEPの間の間隙、すなわちセラミックパターンCP上に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、再度セラミックパターンCPを形成する。
【0077】
また、外層部に形成するためのセラミックグリーンシートとして、キャリアシートCS上に第1セラミックペーストをドクターブレード法等の公知の方法により付与し、セラミックグリーンシートCGを形成する(図18(a)参照)。このとき、セラミックグリーンシートCGは、互いの間に所定の間隔を有するように形成されている。そして、セラミックグリーンシートCG上における、セラミックグリーンシートCGの間の間隙に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、領域55に対応するセラミックパターンCPを形成する(図18(b)参照)。このとき、セラミックパターンCPは、その厚みがセラミックグリーンシートCGの厚みと同等となるように形成されている。
【0078】
次に、内部電極パターンEP及びセラミックパターンCPが形成されたセラミックグリーンシートCGを所定の大きさに揃えて所定の枚数で積層し、積層方向から加圧してグリーン積層体を得る。そして、グリーン積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る。
【0079】
次に、グリーンチップから、各部に含まれるバインダーを除去した後(脱バインダー)、このグリーンチップを焼成する。この焼成により、セラミックグリーンシートCGから誘電体層21が、また、内部電極パターンEPから第1及び第2内部電極層31,41が、また、セラミックパターンCPから領域55がそれぞれ形成されたコンデンサ素体71が得られる。
【0080】
次に、コンデンサ素体71の両端部に導電性ペーストを付与して焼付けし、さらにめっきを施すことにより第1及び第2端子電極11,13を形成する。これらの工程により、図13に示されるような構成の積層コンデンサC3が得られる。
【0081】
以上のように、本実施形態では、誘電体層21よりも硬度が高い領域55が、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での各内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、第1及び第2端面4,5にわたって対向方向に連続して伸びている。このため、コンデンサ素体71の積層方向に直交する表面、すなわち第1主面2の中央部分をマウンタの吸着ノズルで吸引、保持して、積層コンデンサC1を実装する際に、コンデンサ素体71の第1主面2の中央部分に当該コンデンサ素体71の積層方向から応力がかかったとしても、上記領域55が、第1主面2の中央部分において積層方向にかかる応力に対する支えとして機能し、積層方向にかかる応力に対して耐える力が高くなり、コンデンサ素体71の強度が増すこととなる。したがって、コンデンサ素体71は第1主面2の中央部分に積層方向からかかる応力に対して強く、コンデンサ素体71に割れや欠けが発生するのを防止することができる。
【0082】
本実施形態においては、領域55は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。これにより、応力がかかる中央部におけるコンデンサ素体71の強度が増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0083】
本実施形態においては、領域55は、第1及び第2主面2,3に至るようにコンデンサ素体71を第1及び第2主面2,3の対向方向に貫通している。これにより、支えとして機能する領域55において、積層方向にかかる応力に対して耐える力が更に高くなる。したがって、コンデンサ素体71の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を更に確実に防止することができる。
【0084】
続いて、図19及び図20を参照して、積層コンデンサC3の変形例の構成について説明する。図19及び図20は、第3実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【0085】
図19に示された変形例では、領域55だけでなく、外層部1b全体もCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体71の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0086】
図20に示された変形例では、領域55及び外層部1bだけでなく、サイドマージン部1cもCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体71の強度が更に増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本発明は、積層コンデンサに限られることなく、コンデンサとインダクタとの積層複合部品や、コンデンサとビーズとの積層複合部品等にも適用できる。
【符号の説明】
【0088】
1,61,71…コンデンサ素体、1a…容量形成部、1b…外層部、1c…サイドマージン部、2…第1主面、3…第2主面、4…第1端面、5…第2端面、6…第1側面、7…第2側面、11…第1端子電極、13…第2端子電極、21…誘電体層、31…第1内部電極層、33…第1内部電極、41…第2内部電極層、43…第2内部電極、51,53,55…領域、C1,C2,C3…積層コンデンサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コンデンサ等の積層電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体層と内部電極層とが積層されてなる積層体と、前記積層体の両端面側にそれぞれ設けられた端子電極と、を備えており、積層体が上記誘電体層よりも硬度が高い領域を含んでいる積層電子部品が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1に記載された積層電子部品では、セラミック焼結体の複数の内部電極により挟まれている部分がBaTiO3を主体とするセラミックスにより構成されており、複数の内部電極が積層されている部分の上部及び下部がCaZrO3を主体とするセラミックスにより構成されている。一般に、CaZrO3はBaTiO3よりも焼成後の硬度が高い。したがって、特許文献1に記載された積層電子部品では、複数の内部電極が積層されている部分の上部及び下部が硬度の高い領域となる。
【0004】
特許文献2に記載された積層電子部品では、複数の誘電体セラミック層と複数の内部電極層とを交互に積層したコンデンサ本体の側面に、コンデンサして機能しないセラミックスからなる一対のサイドマージン部を有しており、誘電体セラミック層がBaTiO3を主成分とし、サイドマージン部がCaZrO3を含んでいる。したがって、特許文献2に記載された積層電子部品では、サイドマージン部が硬度の高い領域となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−233363号公報
【特許文献2】特開平10−050545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、積層型電子部品を基板等に実装する場合、積層体の積層方向に直交する表面を吸着面とし、この吸着面の中央部分を部品実装機(マウンタ)の吸着ノズルで吸引、保持し、実装している。このとき、マウンタの吸着ノズルから積層型電子部品に応力がかかることがあり、この応力により積層体に割れや欠けが生じてしまうことがある。
【0007】
特許文献1に記載された積層電子部品では、複数の内部電極が積層されている部分を積層方向に挟む上部及び下部の硬度が高い。しかしながら、吸着ノズルからの応力は、積層体に対して積層方向に加わることから、積層方向に平行な方向に存在する外層部は積層方向にかかる応力に対して耐える力が低く、積層体に割れや欠けが生じてしまう懼れがある。特許文献2に記載された積層電子部品では、サイドマージン部の硬度が高いものの、吸着面の中央部分に応力がかかることから、サイドマージン部が中央部分にかかる応力に対する支えにはなり難く、どうしても積層体に割れや欠けが生じてしまう懼れがある。特に、積層体の積層方向での長さ(積層体の厚み)が十分に小さい、低背化された積層型電子部品では、積層方向にかかる応力に対して極めて弱く、割れや欠けの発生が顕著となる。積層体の厚みが、積層体の幅の1/3程度以下となると、積層方向にかかる応力に対して著しく弱くなる。
【0008】
本発明は、積層体の表面の中央部分に積層方向に応力がかかる場合でも、積層体に割れや欠けが発生するのを防ぐことが可能な積層型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、誘電体層と内部電極層とが積層されてなる積層体と、積層体の両端面側にそれぞれ設けられた端子電極と、を備えた積層電子部品であって、積層体は、誘電体層よりも硬度が高い領域を含んでおり、領域は、両端面の対向方向から見て、該対向方向と積層体における積層方向とに直交する方向での内部電極層の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、両端面にわたって対向方向に連続して伸びていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、誘電体層よりも硬度が高い領域が、両端面の対向方向から見て、該対向方向と積層体における積層方向とに直交する方向での内部電極層の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、両端面にわたって対向方向に連続して伸びている。このため、積層体の積層方向に直交する表面の中央部分をマウンタの吸着ノズルで吸引、保持して、積層型電子部品を実装する際に、積層体の上記表面の中央部分に当該積層体の積層方向から応力がかかったとしても、上記領域が、表面の中央部分において積層方向にかかる応力に対する支えとして機能し、積層方向にかかる応力に対して耐える力が高くなり、積層体の強度が増すこととなる。したがって、本発明によれば、積層体の表面の中央部分に積層方向からかかる応力に対して強く、積層体に割れや欠けが発生するのを防止することができる。
【0011】
好ましくは、領域は、対向方向から見て、該対向方向と積層方向とに直交する方向での中央部に位置している。この場合、応力がかかる中央部における積層体の強度が増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0012】
好ましくは、領域は、積層体の積層方向に対向する両側面に至るように積層体を積層方向に貫通している。この場合、支えとして機能する上記領域において、積層方向にかかる応力に対して耐える力が更に高くなる。したがって、積層体の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0013】
好ましくは、積層体は、内部電極層を含む容量形成部と、該容量形成部を積層方向で挟む外層部と、を有しており、外層部は、誘電体層よりも硬度が高い。この場合、積層体の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0014】
好ましくは、積層体は、内部電極層を含む容量形成部と、該容量形成部を対向方向と積層方向とに直交する方向で挟むサイドマージン部と、を有しており、サイドマージン部は、誘電体層よりも硬度が高い。この場合、積層体の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0015】
好ましくは、積層体において、積層方向での長さは、対向方向での長さ、及び、対向方向と積層方向とに直交する方向での長さよりも小さい。本発明は、積層体の積層方向での長さ、すなわち積層体の厚みが小さい低背化された積層型電子部品において、特に、顕著な割れや欠けの発生防止効果を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、積層体の表面の中央部分に積層方向に応力がかかる場合でも、積層体に割れや欠けが発生するのを防ぐことが可能な積層型電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿った断面における構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【図5】第1実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【図6】第1実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【図7】第2実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線に沿った断面における構成を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【図10】第2実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【図11】第2実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【図12】第2実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【図13】第3実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。
【図14】図13におけるXIV−XIV線に沿った断面における構成を示す図である。
【図15】第3実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【図16】第3実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【図17】第3実施形態に係る積層コンデンサの製造方法の変形例を説明するための図である。
【図18】第3実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【図19】第3実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【図20】第3実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
(第1実施形態)
まず、図1〜図3に基づいて、第1実施形態に係る積層コンデンサC1の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。図2は、図1におけるII−II線に沿った断面における構成を示す図である。図3は、第1実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【0020】
積層コンデンサC1は、図1に示されるように、積層体としてのコンデンサ素体1と、コンデンサ素体1の一端面側に設けられた第1端子電極11と、コンデンサ素体1の他端面側に設けられた第2端子電極13と、を備える。コンデンサ素体1は、直方体形状を呈しており、相対向する長方形状の第1主面2及び第2主面3と、相対向する第1端面4及び第2端面5と、相対向する第1側面6及び第2側面7と、を含んでいる。第1端面4及び第2端面4は、第1主面2と第2主面3との間を連結するように第1主面2及び第2主面3の短辺方向に伸びている。第1側面6及び第2側面7は、第1主面2と第2主面3との間を連結するように第1主面2及び第2主面3の長辺方向に伸びている。第1主面2及び第2主面3は、コンデンサ素体1の側面でもある。本実施形態では、第2主面3が他の部品(例えば、回路基板や電子部品等)に対する実装面となり、第1主面2がマウンタにより吸着される面(吸着面)となる。
【0021】
第1及び第2主面2,3の対向方向、第1及び第2端面4,5の対向方向、及び第1及び第2側面6,7の対向方向は、互いに直交している。コンデンサ素体1においては、第1及び第2主面2,3での長さ(厚み)が、第1及び第2端面4,5の対向方向での長さ及び第1及び第2側面6,7の対向方向での長さ(幅)よりも小さく設定されている。本実施形態では、コンデンサ素体1の厚みは0.1〜0.3mm程度であり、コンデンサ素体1の長さは0.6〜1.0mm程度であり、コンデンサ素体1の幅は0.3〜0.5mm程度である。
【0022】
コンデンサ素体1の第1端面4には、第1端子電極11が配置されている。第1端子電極11は、第1端面4を覆うように、第1及び第2主面2,3並びに第1及び第2側面6,7に渡って形成されている。コンデンサ素体1の第2端面5には、第2端子電極13が配置されている。第2端子電極13は、第2端面5を覆うように、第1及び第2主面2,3並びに第1及び第2側面6,7に渡って形成されている。第1及び第2端子電極11,13は、例えば、導電性金属粉末及びガラスフリットを含む導電性ペーストをコンデンサ素体1の対応する外表面の付与し、焼き付けることによって形成される。必要に応じて、焼き付けられた電極の上にめっき層が形成されることもある。
【0023】
コンデンサ素体1は、図2及び図3に示されるように、複数の誘電体層21と、複数の第1内部電極層31と、複数の第2内部電極層41と、を有している。コンデンサ素体1は、内部電極層31,41を含む容量形成部1aと、容量形成部1aを第1及び第2主面2,3の対向方向で挟む外層部1bと、容量形成部1aを第1及び第2側面6,7の対向方向で挟むサイドマージン部1cと、からなる。
【0024】
各誘電体層21は、第1及び第2主面2,3に平行な方向に伸びており、第1及び第2主面2,3の対向方向に積層されている。すなわち、第1及び第2主面2,3の対向方向と、コンデンサ素体1における積層方向とは、一致している。コンデンサ素体1は、第1内部電極層31と第2内部電極層41とが誘電体層21を挟んで対向するように積層されてなる構造を有している。
【0025】
各誘電体層21は、BaTiO3を主成分として含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の積層コンデンサC1では、各誘電体層21は、誘電体層21の間の境界が視認できない程度に一体化されている。第1内部電極層31と第2内部電極層41とは、コンデンサ素体1において、誘電体層21の積層方向、すなわち第1及び第2主面2,3の対向方向に交互に配置されている。
【0026】
各第1内部電極層31は、同じ層に位置する複数(本実施形態では、2つ)の第1内部電極33を含んでいる。第1内部電極33は、第1及び第2側面6,7の対向方向に、互いの間に間隔を有して併置されている。第1内部電極33は、矩形状を呈しており、主電極部と、第1端面4に端部が露出するように主電極部から第1端面4に伸びる引き出し部と、からなる。第1端子電極11は、第1内部電極33の引き出し部における第1端面4に露出した部分をすべて覆うように形成されており、各引き出し部は、第1端子電極11に直接接続される。これにより、第1内部電極層31(第1内部電極33)は、第1端子電極11に物理的且つ電気的に接続されることとなる。
【0027】
各第2内部電極層41は、同じ層に位置する複数(本実施形態では、2つ)の第2内部電極43を含んでいる。第2内部電極43は、第1及び第2側面6,7の対向方向に、互いの間に間隔を有して併置されている。第2内部電極43は、矩形状を呈しており、第1内部電極33と同様に、主電極部と、第2端面5に端部が露出するように主電極部から第2端面5に伸びる引き出し部と、からなる。第2端子電極13は、第2内部電極43の引き出し部における第2端面5に露出した部分をすべて覆うように形成されており、各引き出し部は、第2端子電極13に直接接続される。これにより、第2内部電極層41(第2内部電極43)は、第2端子電極13に物理的且つ電気的に接続されることとなる。
【0028】
第1側面6寄りに位置する第1及び第2内部電極33,43における第1側面6側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での一方の端縁を構成する。同様に、第2側面7寄りに位置する第1及び第2内部電極33,43における第2側面7側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での他方の端縁を構成する。各第1及び第2内部電極33,43は、積層型の電気素子の内部電極として通常用いられる導電性材料(例えば、卑金属であるNi等)からなる。各第1及び第2内部電極33,43は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0029】
コンデンサ素体1は、BaTiO3を主成分とする誘電体層21よりも硬度が高い領域51を複数含んでいる。各領域51は、CaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成される。
【0030】
領域51は、各内部電極33,43と同じ層で且つ内部電極33,43の間にそれぞれ位置している。すなわち、複数の領域51は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、上記内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置しており、第1及び第2主面2,3の対向方向に併置されている。本実施形態では、領域51は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。領域51は、第1及び第2端面4,5にわたって第1及び第2端面4,5の対向方向に連続して伸びている。すなわち、領域51は、一端が第1端面4に露出し、他端が第2端面5に露出している。
【0031】
続いて、図4を参照して、積層コンデンサC1の製造方法について説明する。図4は、第1実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【0032】
まず、誘電体層21を形成するための第1セラミックペースト、領域51を形成するための第2セラミックペースト、及び、第1及び第2内部電極層31,41(第1及び第2内部電極33,43)を形成するための内部電極ペーストをそれぞれ準備する。
【0033】
第1セラミックペーストは、上述したBaTiO3を主成分とする誘電体材料の原料に有機ビヒクル等を混合・混錬して得ることができる。第2セラミックペーストは、上述したCaZrO3を主成分とする誘電体材料の原料に有機ビヒクル等を混合・混錬して得ることができる。各誘電体材料の原料としては、例えば、誘電体材料が上述したような各種の複合酸化物系材料である場合は、当該複合酸化物に含まれる各金属原子の酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などの組み合わせが挙げられる。
【0034】
有機ビヒクルは、バインダー及び溶剤を含むものである。バインダーとしては、例えば、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂等が挙げられる。また、溶剤としては、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、キシレン、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤が挙げられる。
【0035】
各セラミックペーストは、上記以外に各種分散剤、可塑剤、誘電体、ガラスフリット、絶縁体等が必要に応じて含有されていてもよい。
【0036】
内部電極ペーストは、第1及び第2内部電極層31,41(第1及び第2内部電極33,43)を構成するための導電材料と有機ビヒクルとを混合・混錬したものである。導電材料としては、上述したような金属材料を用い、球状やリン片状等の種々の形状のものを適用できる。また、内部電極ペースト中には、必要に応じて無機化合物を適量含有させることが好ましい。これにより、後述する焼成時において、セラミックグリーンシート及び内部電極ペースト層の体積変化の差を小さくして、これに起因する応力の発生を低減することができる。その結果、この応力に基づくクラックや反り等の不具合を抑制することが可能となる。
【0037】
有機ビヒクルは、バインダー及び溶剤を含むものである。バインダーとしては、例えば、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、またはこれらの共重合体等が挙げられる。溶剤としては、例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン、アセトン等が挙げられる。
【0038】
内部電極ペースト中には、適宜、可塑剤を含有させてもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸ベンジルブチル(BBP)等のフタル酸エステル、アジピン酸、リン酸エステル、グリコール類等が適用できる。
【0039】
次に、例えばPET等からなるキャリアシートCS上に第1セラミックペーストをドクターブレード法等の公知の方法により付与し、セラミックグリーンシートCGを形成する(図4(a)参照)。そして、セラミックグリーンシートCG上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、内部電極層31,41に対応する内部電極パターンEPをそれぞれ形成する(図4(b)参照)。その後、セラミックグリーンシートCG上に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、領域51に対応するセラミックパターンCPを形成する(図4(c)参照)。
【0040】
次に、内部電極パターンEP及びセラミックパターンCPが形成されたセラミックグリーンシートCGを所定の大きさに揃えて所定の枚数で積層し、積層方向から加圧してグリーン積層体を得る。そして、グリーン積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る。
【0041】
次に、グリーンチップから、各部に含まれるバインダーを除去した後(脱バインダー)、このグリーンチップを焼成する。この焼成により、セラミックグリーンシートCGから誘電体層21が、また、内部電極パターンEPから第1及び第2内部電極層31,41が、また、セラミックパターンCPから領域51がそれぞれ形成されたコンデンサ素体1が得られる。脱バインダーは、グリーンチップを、空気中、又は、N2及びH2の混合ガス等の還元雰囲気中で、200℃〜600℃程度に加熱することにより行うことができる。また、焼成は、脱バインダー後のグリーンチップを、例えば、還元雰囲気下で1100℃〜1300℃程度に加熱することにより行うことができる。
【0042】
次に、コンデンサ素体1の両端部に導電性ペーストを付与して焼付けし、さらにめっきを施すことにより第1及び第2端子電極11,13を形成する。導電性ペーストは、Cuを主成分とする金属粉末にガラスフリット及び有機ビヒクルを混合したものを用いることができる。金属粉末は、Ni、Ag−PdあるいはAgを主成分とするものであってもよい。めっきは、Ni,Sn,Ni−Sn合金,Sn−Ag合金,Sn−Bi合金などの金属めっきを施すことができる。また、金属めっきは、例えば、NiとSnとで2層以上形成した多層構造としてもよい。これらの工程により、図1に示されるような構成の積層コンデンサC1が得られる。
【0043】
以上のように、本実施形態では、誘電体層21よりも硬度が高い領域51が、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での各内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、第1及び第2端面4,5にわたって対向方向に連続して伸びている。このため、コンデンサ素体1の積層方向に直交する表面、すなわち第1主面2の中央部分をマウンタの吸着ノズルで吸引、保持して、積層コンデンサC1を実装する際に、コンデンサ素体1の第1主面2の中央部分に当該コンデンサ素体1の積層方向から応力がかかったとしても、上記領域51が、第1主面2の中央部分において積層方向にかかる応力に対する支えとして機能し、積層方向にかかる応力に対して耐える力が高くなり、コンデンサ素体1の強度が増すこととなる。したがって、コンデンサ素体1は第1主面2の中央部分に積層方向からかかる応力に対して強く、コンデンサ素体1に割れや欠けが発生するのを防止することができる。
【0044】
本実施形態においては、領域51は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。これにより、応力がかかる中央部におけるコンデンサ素体1の強度が増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0045】
ところで、CaZrO3を主成分として含むセラミックグリーンシートの焼結体にて誘電体層21を構成することにより、コンデンサ素体1の強度を高めることはできる。しかしながら、CaZrO3はBaTiO3に比して誘電率が低く、誘電体層21の主成分をCaZrO3とした場合、同じサイズの積層コンデンサで比較して、本実施形態に係る積層コンデンサC1よりも静電容量が小さくなってしまう。したがって、CaZrO3を誘電体層21の主成分とした場合、近年要求が高まっている、積層コンデンサの大静電容量化を実現するためには、内部電極の積層数を増やすといった更なる対応が求められることとなり、積層コンデンサ(コンデンサ素体)が大型化するという弊害が生じてしまう。
【0046】
本実施形態では、内部電極層31,41と同じ層に領域51が位置していることから、領域51が存在しない構成の積層コンデンサに比して、静電容量が低くなる。しかしながら、静電容量の低下代は、誘電体層21の主成分をCaZrO3とした積層コンデンサよりも極めて小さい。また、内部電極層31,41の対向面積を僅かに大きく設定する等の手法により、積層コンデンサ(コンデンサ素体)が大型化させることなく、静電容量の低下代を補うことが可能である。
【0047】
続いて、図5及び図6を参照して、積層コンデンサC1の変形例の構成について説明する。図5及び図6は、第1実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【0048】
図5に示された変形例では、領域51だけでなく、外層部1bもCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体1の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0049】
図6に示された変形例では、領域51及び外層部1bだけでなく、サイドマージン部1cもCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体1の強度が更に増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0050】
(第2実施形態)
次に、図7〜図9に基づいて、第2実施形態に係る積層コンデンサC2の構成について説明する。図7は、第2実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。図8は、図7におけるVIII−VIII線に沿った断面における構成を示す図である。図9は、第2実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【0051】
積層コンデンサC2は、図7に示されるように、コンデンサ素体61と、第1端子電極11と、第2端子電極13と、を備えている。コンデンサ素体61は、図8及び図9に示されるように、複数の誘電体層21と、複数の第1内部電極層31と、複数の第2内部電極層41と、を有している。コンデンサ素体61は、容量形成部1aと、外層部1bと、サイドマージン部1cと、からなる。
【0052】
各誘電体層21は、BaTiO3を主成分として含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の積層コンデンサC2においても、積層コンデンサC1と同じく、各誘電体層21は、誘電体層21の間の境界が視認できない程度に一体化されている。第1内部電極層31と第2内部電極層41とは、コンデンサ素体61において、誘電体層21の積層方向、すなわち第1及び第2主面2,3の対向方向に交互に配置されている。
【0053】
各第1内部電極層31は、一つの第1内部電極33を含んでいる。第1内部電極33は、第1端子電極11に物理的且つ電気的に接続されている。各第2内部電極層41は、一つの第2内部電極43を含んでいる。第2内部電極43は、第2端子電極13に物理的且つ電気的に接続されている。第1及び第2内部電極33,43における第1側面6側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での一方の端縁を構成する。同様に、第1及び第2内部電極33,43における第2側面7側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での他方の端縁を構成する。
【0054】
コンデンサ素体61は、BaTiO3を主成分とする誘電体層21よりも硬度が高い領域53を複数含んでいる。各領域53は、領域51と同じく、CaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成される。
【0055】
領域53は、第1及び第2内部電極層31,41との間に位置する誘電体層21と同じ層で且つ第1及び第2内部電極層31,41との間に位置している。すなわち、複数の領域53は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、上記内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置しており、第1及び第2主面2,3の対向方向に併置されている。本実施形態では、領域53は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。領域53は、第1及び第2端面4,5にわたって第1及び第2端面4,5の対向方向に連続して伸びている。すなわち、領域53は、一端が第1端面4に露出し、他端が第2端面5に露出している。
【0056】
続いて、図10を参照して、積層コンデンサC2の製造方法について説明する。図10は、第2実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【0057】
まず、上記第1及び第2セラミックペースト並びに内部電極ペーストをそれぞれ準備する。そして、キャリアシートCS上に第1セラミックペーストをドクターブレード法等の公知の方法により付与し、セラミックグリーンシートCGを形成する(図10(a)参照)。このとき、セラミックグリーンシートCGは、互いの間に所定の間隔を有するように形成されている。そして、セラミックグリーンシートCG上における、セラミックグリーンシートCGの間の間隙に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、領域53に対応するセラミックパターンCPを形成する(図10(b)参照)。その後、セラミックグリーンシートCG及びセラミックパターンCP上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、内部電極層31,41に対応する内部電極パターンEPを形成する(図10(c)参照)。
【0058】
次に、内部電極パターンEP及びセラミックパターンCPが形成されたセラミックグリーンシートCGを所定の大きさに揃えて所定の枚数で積層し、積層方向から加圧してグリーン積層体を得る。そして、グリーン積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る。
【0059】
次に、グリーンチップから、各部に含まれるバインダーを除去した後(脱バインダー)、このグリーンチップを焼成する。この焼成により、セラミックグリーンシートCGから誘電体層21が、また、内部電極パターンEPから第1及び第2内部電極層31,41が、また、セラミックパターンCPから領域53がそれぞれ形成されたコンデンサ素体61が得られる。
【0060】
次に、コンデンサ素体61の両端部に導電性ペーストを付与して焼付けし、さらにめっきを施すことにより第1及び第2端子電極11,13を形成する。これらの工程により、図7に示されるような構成の積層コンデンサC2が得られる。
【0061】
以上のように、本実施形態では、誘電体層21よりも硬度が高い領域53が、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での各内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、第1及び第2端面4,5にわたって対向方向に連続して伸びている。このため、コンデンサ素体61の積層方向に直交する表面、すなわち第1主面2の中央部分をマウンタの吸着ノズルで吸引、保持して、積層コンデンサC1を実装する際に、コンデンサ素体61の第1主面2の中央部分に当該コンデンサ素体61の積層方向から応力がかかったとしても、上記領域53が、第1主面2の中央部分において積層方向にかかる応力に対する支えとして機能し、積層方向にかかる応力に対して耐える力が高くなり、コンデンサ素体61の強度が増すこととなる。したがって、コンデンサ素体61は第1主面2の中央部分に積層方向からかかる応力に対して強く、コンデンサ素体61に割れや欠けが発生するのを防止することができる。
【0062】
本実施形態においては、領域53は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。これにより、応力がかかる中央部におけるコンデンサ素体61の強度が増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0063】
続いて、図11及び図12を参照して、積層コンデンサC2の変形例の構成について説明する。図11及び図12は、第2実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【0064】
図11に示された変形例では、領域53だけでなく、外層部1bもCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体61の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0065】
図12に示された変形例では、領域53及び外層部1bだけでなく、サイドマージン部1cもCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体61の強度が更に増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0066】
本実施形態では、誘電体層21と同じ層に領域53が位置していることから、領域53が存在しない構成の積層コンデンサに比して、静電容量が低くなる。しかしながら、領域53も低い値ながら静電容量を生じさせ得ることから、静電容量の低下代を低く抑えることが可能である。また、内部電極層31,41の対向面積を僅かに大きく設定する等の手法により、積層コンデンサ(コンデンサ素体)が大型化させることなく、静電容量の低下代を補うことも可能である。
【0067】
(第3実施形態)
次に、図13〜図15に基づいて、第3実施形態に係る積層コンデンサC3の構成について説明する。図13は、第3実施形態に係る積層コンデンサの概略斜視図である。図14は、図13におけるXIV−XIV線に沿った断面における構成を示す図である。図15は、第3実施形態に係る積層コンデンサに含まれるコンデンサ素体の分解斜視図である。
【0068】
積層コンデンサC3は、図13に示されるように、コンデンサ素体71と、第1端子電極11と、第2端子電極13と、を備えている。コンデンサ素体71は、図14及び図15に示されるように、複数の誘電体層21と、複数の第1内部電極層31と、複数の第2内部電極層41と、を有している。コンデンサ素体71は、容量形成部1aと、外層部1bと、サイドマージン部1cと、からなる。
【0069】
各誘電体層21は、BaTiO3を主成分として含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の積層コンデンサC3においても、積層コンデンサC1,C2と同じく、各誘電体層21は、誘電体層21の間の境界が視認できない程度に一体化されている。第1内部電極層31と第2内部電極層41とは、コンデンサ素体71において、誘電体層21の積層方向、すなわち第1及び第2主面2,3の対向方向に交互に配置されている。
【0070】
各第1内部電極層31は、同じ層に位置する複数(本実施形態では、2つ)の第1内部電極33を含んでいる。第1内部電極33は、第1及び第2側面6,7の対向方向に、互いの間に間隔を有して併置されている。第1内部電極33は、第1端子電極11に物理的且つ電気的に接続されている。各第2内部電極層41は、同じ層に位置する複数(本実施形態では、2つ)の第2内部電極43を含んでいる。第2内部電極43は、第1及び第2側面6,7の対向方向に、互いの間に間隔を有して併置されている。第2内部電極43は、第2端子電極13に物理的且つ電気的に接続されている。
【0071】
第1側面6寄りに位置する第1及び第2内部電極33,43における第1側面6側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での一方の端縁を構成する。同様に、第2側面7寄りに位置する第1及び第2内部電極33,43における第2側面7側の縁が、第1及び第2内部電極層31,41の第1及び第2側面6,7の対向方向での他方の端縁を構成する。
【0072】
コンデンサ素体71は、BaTiO3を主成分とする誘電体層21よりも硬度が高い領域55を含んでいる。領域55は、領域51,53と同じく、CaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成される。
【0073】
領域55は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、内部電極33,43の間に、上記内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置している。本実施形態では、領域55は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。領域55は、第1及び第2端面4,5に至るようにコンデンサ素体71を第1及び第2端面4,5の対向方向に貫通すると共に、第1及び第2主面2,3に至るようにコンデンサ素体71を第1及び第2主面2,3の対向方向に貫通している。すなわち、領域55の端は、第1及び第2主面2,3並びに第1及び第2端面4,5に露出している。
【0074】
続いて、図16〜図18を参照して、積層コンデンサC3の製造方法について説明する。図16〜図18は、第3実施形態に係る積層コンデンサの製造方法を説明するための図である。
【0075】
まず、上記第1及び第2セラミックペースト並びに内部電極ペーストをそれぞれ準備する。そして、キャリアシートCS上に第1セラミックペーストをドクターブレード法等の公知の方法により付与し、セラミックグリーンシートCGを形成する(図16(a)参照)。このとき、セラミックグリーンシートCGは、互いの間に所定の間隔を有するように形成されている。そして、セラミックグリーンシートCG上における、セラミックグリーンシートCGの間の間隙に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、領域55に対応するセラミックパターンCPを形成する(図16(b)参照)。このとき、セラミックパターンCPは、その厚みがセラミックグリーンシートCGの厚みと後に形成される内部電極パターンEPの厚みとの和と同等となるように形成されている。その後、セラミックグリーンシートCG上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、内部電極層31,41に対応する内部電極パターンEPをそれぞれ形成する(図16(c)参照)。
【0076】
セラミックグリーンシートCG、セラミックパターンCP、及び内部電極パターンEPは、図17に示されるようにして形成されてもよい。すなわち、まず、キャリアシートCS上に第1セラミックペーストをドクターブレード法等の公知の方法により付与し、セラミックグリーンシートCGを形成する(図17(a)参照)。このとき、セラミックグリーンシートCGは、互いの間に所定の間隔を有するように形成されている。そして、セラミックグリーンシートCG上における、セラミックグリーンシートCGの間の間隙に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、領域55に対応するセラミックパターンCPを形成する(図17(b)参照)。このとき、セラミックパターンCPは、その厚みがセラミックグリーンシートCGの厚みと同等となるように形成されている。その後、セラミックグリーンシートCG上に内部電極ペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、内部電極層31,41に対応する内部電極パターンEPをそれぞれ形成する(図17(c)参照)。そして、内部電極パターンEPの間の間隙、すなわちセラミックパターンCP上に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、再度セラミックパターンCPを形成する。
【0077】
また、外層部に形成するためのセラミックグリーンシートとして、キャリアシートCS上に第1セラミックペーストをドクターブレード法等の公知の方法により付与し、セラミックグリーンシートCGを形成する(図18(a)参照)。このとき、セラミックグリーンシートCGは、互いの間に所定の間隔を有するように形成されている。そして、セラミックグリーンシートCG上における、セラミックグリーンシートCGの間の間隙に第2セラミックペーストをスクリーン印刷法等の公知の方法により付与し、領域55に対応するセラミックパターンCPを形成する(図18(b)参照)。このとき、セラミックパターンCPは、その厚みがセラミックグリーンシートCGの厚みと同等となるように形成されている。
【0078】
次に、内部電極パターンEP及びセラミックパターンCPが形成されたセラミックグリーンシートCGを所定の大きさに揃えて所定の枚数で積層し、積層方向から加圧してグリーン積層体を得る。そして、グリーン積層体を切断機で所定の大きさのチップに切断しグリーンチップを得る。
【0079】
次に、グリーンチップから、各部に含まれるバインダーを除去した後(脱バインダー)、このグリーンチップを焼成する。この焼成により、セラミックグリーンシートCGから誘電体層21が、また、内部電極パターンEPから第1及び第2内部電極層31,41が、また、セラミックパターンCPから領域55がそれぞれ形成されたコンデンサ素体71が得られる。
【0080】
次に、コンデンサ素体71の両端部に導電性ペーストを付与して焼付けし、さらにめっきを施すことにより第1及び第2端子電極11,13を形成する。これらの工程により、図13に示されるような構成の積層コンデンサC3が得られる。
【0081】
以上のように、本実施形態では、誘電体層21よりも硬度が高い領域55が、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での各内部電極層31,41の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、第1及び第2端面4,5にわたって対向方向に連続して伸びている。このため、コンデンサ素体71の積層方向に直交する表面、すなわち第1主面2の中央部分をマウンタの吸着ノズルで吸引、保持して、積層コンデンサC1を実装する際に、コンデンサ素体71の第1主面2の中央部分に当該コンデンサ素体71の積層方向から応力がかかったとしても、上記領域55が、第1主面2の中央部分において積層方向にかかる応力に対する支えとして機能し、積層方向にかかる応力に対して耐える力が高くなり、コンデンサ素体71の強度が増すこととなる。したがって、コンデンサ素体71は第1主面2の中央部分に積層方向からかかる応力に対して強く、コンデンサ素体71に割れや欠けが発生するのを防止することができる。
【0082】
本実施形態においては、領域55は、第1及び第2端面4,5の対向方向から見て、第1及び第2側面6,7の対向方向での中央部に位置している。これにより、応力がかかる中央部におけるコンデンサ素体71の強度が増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0083】
本実施形態においては、領域55は、第1及び第2主面2,3に至るようにコンデンサ素体71を第1及び第2主面2,3の対向方向に貫通している。これにより、支えとして機能する領域55において、積層方向にかかる応力に対して耐える力が更に高くなる。したがって、コンデンサ素体71の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を更に確実に防止することができる。
【0084】
続いて、図19及び図20を参照して、積層コンデンサC3の変形例の構成について説明する。図19及び図20は、第3実施形態の変形例に係る積層コンデンサの断面構成を説明するための図である。
【0085】
図19に示された変形例では、領域55だけでなく、外層部1b全体もCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体71の強度がより一層増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0086】
図20に示された変形例では、領域55及び外層部1bだけでなく、サイドマージン部1cもCaZrO3を主成分として含むセラミックペーストの焼結体から構成されている。この場合、コンデンサ素体71の強度が更に増すこととなり、割れや欠けの発生を確実に防止することができる。
【0087】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本発明は、積層コンデンサに限られることなく、コンデンサとインダクタとの積層複合部品や、コンデンサとビーズとの積層複合部品等にも適用できる。
【符号の説明】
【0088】
1,61,71…コンデンサ素体、1a…容量形成部、1b…外層部、1c…サイドマージン部、2…第1主面、3…第2主面、4…第1端面、5…第2端面、6…第1側面、7…第2側面、11…第1端子電極、13…第2端子電極、21…誘電体層、31…第1内部電極層、33…第1内部電極、41…第2内部電極層、43…第2内部電極、51,53,55…領域、C1,C2,C3…積層コンデンサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と内部電極層とが積層されてなる積層体と、前記積層体の両端面側にそれぞれ設けられた端子電極と、を備えた積層電子部品であって、
前記積層体は、前記誘電体層よりも硬度が高い領域を含んでおり、
前記領域は、前記両端面の対向方向から見て、該対向方向と前記積層体における積層方向とに直交する方向での前記内部電極層の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、前記両端面にわたって前記対向方向に連続して伸びていることを特徴とする積層電子部品。
【請求項2】
前記領域は、前記対向方向から見て、該対向方向と前記積層方向とに直交する前記方向での中央部に位置していることを特徴とする請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項3】
前記領域は、前記積層体の前記積層方向に対向する両側面に至るように前記積層体を前記積層方向に貫通していることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層電子部品。
【請求項4】
前記積層体は、前記内部電極層を含む容量形成部と、該容量形成部を前記積層方向で挟む外層部と、を有しており、
前記外層部は、前記誘電体層よりも硬度が高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層電子部品。
【請求項5】
前記積層体は、前記内部電極層を含む容量形成部と、該容量形成部を前記対向方向と前記積層方向とに直交する方向で挟むサイドマージン部と、を有しており、
前記サイドマージン部は、前記誘電体層よりも硬度が高いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層電子部品。
【請求項6】
前記積層体において、前記積層方向での長さは、前記対向方向での長さ、及び、前記対向方向と前記積層方向とに直交する前記方向での長さよりも小さいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層電子部品。
【請求項1】
誘電体層と内部電極層とが積層されてなる積層体と、前記積層体の両端面側にそれぞれ設けられた端子電極と、を備えた積層電子部品であって、
前記積層体は、前記誘電体層よりも硬度が高い領域を含んでおり、
前記領域は、前記両端面の対向方向から見て、該対向方向と前記積層体における積層方向とに直交する方向での前記内部電極層の両端縁の間の範囲に位置し、且つ、前記両端面にわたって前記対向方向に連続して伸びていることを特徴とする積層電子部品。
【請求項2】
前記領域は、前記対向方向から見て、該対向方向と前記積層方向とに直交する前記方向での中央部に位置していることを特徴とする請求項1に記載の積層電子部品。
【請求項3】
前記領域は、前記積層体の前記積層方向に対向する両側面に至るように前記積層体を前記積層方向に貫通していることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層電子部品。
【請求項4】
前記積層体は、前記内部電極層を含む容量形成部と、該容量形成部を前記積層方向で挟む外層部と、を有しており、
前記外層部は、前記誘電体層よりも硬度が高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層電子部品。
【請求項5】
前記積層体は、前記内部電極層を含む容量形成部と、該容量形成部を前記対向方向と前記積層方向とに直交する方向で挟むサイドマージン部と、を有しており、
前記サイドマージン部は、前記誘電体層よりも硬度が高いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層電子部品。
【請求項6】
前記積層体において、前記積層方向での長さは、前記対向方向での長さ、及び、前記対向方向と前記積層方向とに直交する前記方向での長さよりも小さいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−35145(P2011−35145A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179565(P2009−179565)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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