説明

空気の脱臭方法及び装置

【課題】 大容量化の可能な低廉な空気脱臭方式を提供する。
【解決手段】 本発明の脱臭方法は、汚染空気を筒状本体(1)の軸線方向に供給しつつ内部で旋回流(3)を生じさせ、該旋回流中に液状脱臭剤をミスト状に噴霧して臭気成分を除去すると共に、前記旋回流によって脱臭剤ミスト(4a)を前記筒状本体(1)の周壁面(1c)に付着させて壁面流(4b)として分離し、浄化空気は筒状本体の他端から軸線方向に排出させるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の悪臭成分を除去して清浄な空気となす空気の脱臭方法と装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気の清浄化装置は、従来から多くの分野において使用されている。例えば、家庭用や事務所の喫煙室用の小型のものから、ビルの換気システム用やごみ処理施設用等の大型のものまで種々の装置があり、既に多くの分野で実用化されている。
【0003】
これらの空気の脱臭浄化装置のうち一般家庭用の空気浄化装置としては、高電場内に空気を通すことにより空気中にイオンを発生させ、このイオンによって臭気成分を分解する方式があるが、イオンが極めて不安定で空気中の臭気成分の分子と接触する前に消滅してしまうため、極めて効率が悪いという問題がある。更に、近年注目されている空気浄化方式としては光触媒を用いる方式がある。この方式は、空気中の臭気成分が光触媒と接触することによって分解されるものであるが、充分な時間を掛けて自然に空気を浄化させる方式であるので、大量の空気を短時間で処理する方式には適合し難い。
【0004】
一方、大型の空気清浄化装置としては活性炭を使用するものが主流であり、活性炭の吸着力を利用して空気中の悪臭成分を吸着除去する方式である。しかしながら、活性炭が経時的に劣化することは避けられないので、活性炭をカセット方式として着脱自在となし、定期的に取り替えるか賦活再生処理を行うかの何れかが必要となり、いずれもメンテナンス費用が発生する。更に、活性炭吸着方式は、大型化すればするほど大量の活性炭を必要とし、メンテナンス費用も増大することになる。
【0005】
又、他の大容量の空気清浄化装置としては、空気中の臭気成分を吸収したり、或いは分解させる脱臭成分を含む液状脱臭剤を、空気流中に噴霧する方式がある。液状脱臭剤としては、臭気成分の物性によって適宜選択され、酸性水であったりアルカリ水であったりするが、汎用性の液状脱臭剤としてオゾン水が用いられる場合もある。この種の装置においては、大量の空気と液状脱臭剤とを如何に効率良く接触させるかが課題であり、効率的な方式としてサイクロンを用いるものがある(例えば特許文献1)。
【0006】
このサイクロン方式は、一対の円筒体を併設し且つ両円筒体の下端部を接線方向に連通させ、一方の円筒体の上端接線方向から汚染空気を供給することによって両円筒体内に旋回流を形成し、両円筒体の軸線方向に沿った中央部に噴霧管を配置し、水の電解によって生成した酸性水とアルカリ水を、夫々前記噴霧管から噴霧するもので、これによって汚染空気と酸性水又はアルカリ水を接触させてアルカリ性臭気成分や酸性臭気成分を吸収除去する方式である。尚、噴霧された酸性水とアルカリ水は円筒体内を流下し、下方に設置された水槽内で中和されて排出されるようになっている。
【特許文献1】特許第3349359号公報(図1及び特許請求の範囲参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記サイクロン方式は、汚染空気を円筒体の接線方向に供給して該円筒体内に旋回流を形成し、この旋回流中に脱臭剤である酸性水やアルカリ水を噴霧しているので、単なる平行気流中に噴霧する方法に比べて気液の接触時間は長くなり、臭気成分の捕集効率では優れているが、空気の旋回流を形成するための方策として円筒体の接線方向から汚染空気を供給する方式が採用されている。この結果、旋回流を形成するためには、接線方向に汚染空気を供給する空気供給ノズルの大きさや形状に制約があり、円筒体壁面に沿った長穴スリット状のノズル形状が要求される。即ち、空気処理量に応じた太径のパイプを汚染空気供給ノズルとして採用するためには、該ノズル径よりも遙に大きな径の円筒体が必要とされ、さもなければ、円筒体内での旋回流の形成が困難となる。
【0008】
又、一対の円筒体の底部を接線方向の連通管で連結し、一方の円筒体から他方の円筒体に空気を送給すると共に、前記連通管の下部は前記噴霧した酸性水やアルカリ水の流下水の中和槽となっているが、一方の円筒体から他方の円筒体に空気が送給される際に、前記酸性水やアルカリ水のミストの同伴は避けられず、このため、浄化空気の出口側には、水分離器としての湿式フィルタが配置されている。この湿式フィルタの存在は、空気の流通抵抗をもたらし、空気処理量を低下させるか、電力原単位を高めることになる。更に、水の電解装置も必要であり、設備コストや運転コストが高くなる問題もある。
【0009】
そこで、本発明は、大量に汚染空気を処理することができ且つ設備コストや運転コストの低廉な脱臭装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的達成のためになされたもので、発明者らが長年研究して実績のある軸流式サイクロンの原理を応用したものであり、その特徴とするところは、臭気成分を含む汚染空気を流通させつつ該汚染空気中に液状脱臭剤を噴霧して前記臭気成分を除去する脱臭方法であって、
長軸方向の一端部に汚染空気導入口を有し、他端部に浄化空気排出口を有する筒状本体の前記汚染空気導入口より、汚染空気を前記筒状本体の長軸方向に連続的に供給し、
該長軸方向に供給された汚染空気を、前記筒状本体内に設置された螺旋流路を通して汚染空気の旋回流を形成すると共に、
該旋回流を形成する前又は該旋回流を形成した後に、前記筒状本体の長軸方向の略中心部に配置された噴霧ノズルから前記汚染空気中に前記液状脱臭剤をミスト状に噴霧し、これにより該脱臭剤と前記汚染空気とを接触させて前記臭気成分を除去すると共に、
前記汚染空気の旋回流の作用により前記噴霧されたミスト状脱臭剤を前記筒状本体の内壁面に吹き飛ばして壁面流となし、これによって前記旋回流の気液分離を行い、
前記臭気成分を除去された浄化空気は前記浄化空気排出口から前記筒状本体の長軸方向に排出させ、前記壁面流は脱臭剤排出口から筒状本体の側方に排出させるようにした空気の脱臭方法にある。
【0011】
尚、前記噴霧ノズルが前記螺旋流路の上流側と下流側の両方に配置され、前記気液混相流を旋回流となした後に、更に該旋回流中に前記液状脱臭剤を噴霧するようになすことも可能であり、これにより、前記螺旋流路の混合作用によって前記ミスト状脱臭剤と汚染空気との均一混合が促進され、脱臭効率を高めることが可能となる。
【0012】
又、前記筒状本体の胴部から内部に紫外線を照射して、内部の空気の殺菌処理を行うようになすことも可能である。この場合に、紫外線を汚染空気と脱臭剤のミストとの混相流中に照射するのが好ましい。
【0013】
上記脱臭方法を実施するための装置としては、臭気成分を含む汚染空気を流通させつつ該汚染空気中に液状脱臭剤を噴霧して前記臭気成分を除去する空気の脱臭装置であって、その特徴とするところは、
長軸方向の一端部に汚染空気導入口を有し、他端部に浄化空気排出口を有する筒状本体と、
該筒状本体内に設けられた螺旋流路と、
該旋回流路の上流側又は下流側若しくはその両方の前記筒状本体の略長軸方向に設置されて、前記液状脱臭剤をミスト状に噴霧する噴霧ノズルと、
前記螺旋流路によって形成された汚染空気の旋回流の作用により、該旋回流中の前記噴霧された前記ミスト状脱臭剤を前記筒状本体の壁面に吹き飛ばして壁面流となし、前記浄化空気排出口に連通して前記筒状本体内に配置された内筒部材と前記筒状本体との間に形成された環状空間内に前記壁面流を流入させる気液分離部と、
該気液分離部で分離された壁面流を前記環状空間に連通して前記筒状本体の側方に排出する脱臭剤排出口と、を有する点にある。
【0014】
又、前記装置の脱臭剤排出口を、液状脱臭剤を貯蔵する脱臭剤タンクに接続し、該脱臭剤タンク内の液状脱臭剤を送給ポンプを介して前記噴霧ノズルに送給する様にして、脱臭剤の循環使用を行える様になすことも可能である。
【0015】
又、前記螺旋流路を複数個直列に配置して旋回流を強力なものとなし、気液の一層の混合を図り、脱臭効率を高める方式も可能である。
【0016】
更に、前記筒状本体の少なくとも一部を内管と外管とからなる二重管構造とし、前記内管を紫外線透過性を有する合成樹脂製の部材で形成し、前記外管を金属製となし、該内外管の間に紫外線照射装置を配置して汚染空気又は浄化空気の殺菌処理を行うようになすことも可能である。特に、この二重管部を、汚染空気と脱臭剤ミストとの混相流部に形成するのが好ましい態様である。
【0017】
又、前記筒状本体をユニット化し、該筒状本体の複数のユニットを直列に接続すれば、脱臭率を高めることができる。この場合に,複数個の筒状本体ユニットの内の下流側ユニットの前記脱臭剤排出口から排出される前記液状脱臭剤を、その上流側ユニットの噴霧ノズルを通して該上流側ユニット内に噴霧し、最上流側ユニットの脱臭剤排出口から装置外に排出すると共に、最下流側のユニットの噴霧ノズルには、新鮮な液状脱臭剤を供給するように液状脱臭剤の配管を接続するのが好ましい。
【0018】
更に、前記筒状本体をユニット化し、該筒状本体の複数のユニットを複数個並列に配置する方式も可能であり、これにより容易に大処理量の脱臭装置の製作を行うことが可能となる。
【0019】
また、前記噴霧ノズルの複数個所から前記液状脱臭剤を多量に噴霧するようになすのも好ましい態様である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の脱臭方法によると、汚染空気は筒状本体の軸線方向に流通し、旋回流は筒状本体内に設置された螺旋流路によって形成される構成となっているので、接線方向に汚染空気導入口を設ける方式に比して、該空気導入部の設計の自由度が高まり、装置の要求される空気処理能力に応じた設計が容易となる。
【0021】
又、前記噴霧ノズルを前記螺旋流路の上流側に配置する方式を採用すれば、軸方向の汚染空気の流れの中に脱臭剤がミスト状に噴霧されて気液混相流が形成され、この混相流が螺旋流路によって旋回流となる過程で気液の混合が進み、脱臭率を高めることが可能となる。更に、前記螺旋流路を、複数個直列に配置しておけば、気液の混合が一層促進され、脱臭効率を更に高めることが可能となる。
【0022】
又、前記筒状本体の一部から内部の空気に対して紫外線照射を行い、空気の殺菌を行うようにすれば、空気の殺菌と脱臭が同時に行える効果がある。特に、脱臭剤ミストと空気との混相流中に紫外線を照射すると、紫外線がミスト(水滴)表面で反射したり、透過する際の屈折により、単に空気中を直進する紫外線の場合よりも滞留時間が長くなり、従って紫外線密度が高くなり、殺菌効率を高める効果が期待される。
【0023】
又、前記汚染空気の旋回流中に噴霧された前記脱臭剤を、該旋回流の作用(遠心力)によって前記筒状本体の壁面に吹き飛ばして壁面流となし、前記筒状本体内に配置された内筒部材と前記筒状本体との間に形成された環状空間内に前記壁面流を流入させる構造の気液分離部を形成しているので、格別な気液分離器は不要となり、装置の製作コストやメンテナンスコストの低減が可能となる。
【0024】
又、筒状本体をユニット化し、該筒状本体の複数のユニットを直列に接続する構成を採用すれば、装置の脱臭率を容易に高めることが可能となる。又、この場合に、脱臭剤を下流側のユニットから順次上流側のユニットに供給するようにしておけば、脱臭剤をワンスルーで流通させて使用することができ、脱臭剤の使用効率を高めることが可能となる。
【0025】
又、前記ユニット化した前記筒状本体を複数個並列に配置して使用することにより、装置の能力を容易に増大させることが可能となるので、装置コストを大幅に低減させることが可能となる。
【0026】
又、前記噴霧ノズルの複数個所から前記液状脱臭剤を噴霧するように構成すれば、大量の脱臭剤ミストを汚染空気中に供給することができ、脱臭効率の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明に係る脱臭装置の基本構造を示す第1実施例であり、同図において、円筒状の筒状本体1の上部には、縮径した汚染空気導入口1aが形成され、下部には、同様に縮径した浄化空気排出口1bが形成されており、汚染空気Aは、前記汚染空気導入口1aから本体内に供給され、後述する作用によって臭気成分が除去された浄化空気A’は、前記浄化空気排出口1bから装置外に送出されるようになっている。前記筒状本体1の内部の上流部には、中央部の軸体2aの外周部に螺旋状の通路2bが形成された構造の螺旋流路2が形成されており、汚染空気が、この螺旋状の通路2bを通過する過程で気流に旋回力が付与され、旋回流3となって該螺旋流路2から下方に送出されることになる。この旋回流3中に、液状の脱臭剤Bが筒状本体1の略中心部に長手方向に沿って配置された噴霧ノズル5から噴霧され、該ノズル5から噴霧されたミスト状の脱臭剤4aは、汚染空気の旋回流3に乗って混合され、該汚染空気中の臭気成分を吸収除去することになる。
【0028】
ここで使用する液状脱臭剤としては、臭気成分がアルコール等の水溶性の場合には水自体を脱臭剤として使用し、アンモニア等のアルカリ成分の場合には、酸性成分を溶解した酸性水を使用し、亜硫酸ガス等の酸性ガスの場合には、アルカリ成分を溶解したアルカリ液を使用し、又、有機性臭気成分の場合には、オゾン水を使用することも可能である。即ち、本発明においては、使用する脱臭剤の選択は任意であり、要は、除去したい臭気成分の種類によって適宜選択すればよいが、ノズルから噴霧可能な液体であることが必須である。
【0029】
尚、前記ノズル5には、少なくとも1つの噴霧孔が設けられており、該噴霧孔からミスト状に液状脱臭剤が噴霧される構造となっている。噴霧されるミストの大きさは小さい程好ましく、噴霧されるミスト状脱臭剤4aの噴霧方向は、汚染空気の上流側から水平方向が好ましい。これにより、噴霧されたミストと汚染空気との接触時間を長くすることができる。又、図示の如く前記ノズル5の前記筒状本体1の長軸方向に延在する部分に沿って異なる方向に複数の噴霧孔が形成されており、前記旋回流3中に大量の脱臭剤を噴霧できるようにしておくにのが好ましい。
【0030】
次に、前記ミスト状に脱臭剤4aを噴霧された汚染空気の旋回流は、筒状本体1内の空洞部6内で旋回流を保ちつつ筒状本体1内を下方に流下するが、この間に、該汚染空気中の臭気成分はミスト状の脱臭剤4aと接触して吸収され次第に浄化されていくと同時に、脱臭剤のミストは、旋回流の遠心力によって筒状本体1内の周壁1c側に移動し、遂には該周壁1cに衝突して壁面流4bとなって壁面に沿って流下する。即ち、該筒状本体1内の空洞部6(前記ノズル5の先端から後述する内筒9の先端部までの空間)は、空気の旋回流によって該旋回流中の液体成分であるミストを遠心力によって分離する機能、即ち、固液分離機能を有しているものであるから、この長さL2は、気液分離に必要な十分な長さを確保する必要がある。
【0031】
又、前記空洞部(気液分離部)6の下部には、前記浄化空気排出口1bに連通した内筒9が突入した構造となっており、該内筒9の外面と前記筒状本体1の周壁面1cとの間に環状空間6aが形成されている。従って、前記気液分離されて壁面流4bとなった脱臭剤は、前記環状空間6aに連通した脱臭液排出口7から本体1外に排出液B’として排出され、浄化された空気A’は、中央の前記内筒9を通って前記浄化空気排出口1bから系外に排出されることになる。尚、前記排出された脱臭液B’は、脱臭液タンク8に戻り、再度ポンプPから前記噴霧ノズル5に供給されて循環使用されるようになっている。
【0032】
次に、図2は本発明に係る脱臭装置の第2実施例を示す概念図であり、前記液状脱臭剤が、前記螺旋流路2の上下に配置された2つのノズル5,5’から噴霧されるように構成されている点で図1の装置と異なっている。係る構成を採用することにより、以下の如き作用効果が得られる。即ち、螺旋流路2の上流側では、汚染空気Aには旋回力が付与されていないので、この気流中に、ノズル5から噴霧された脱臭剤ミスト4aは、汚染空気の軸方向の平行流の中に漂った状態となっており、該脱臭剤ミスト4aは、噴出された角度によって疎密に分布した状態となっている。この状態で前記螺旋流路2内に流入すると、該螺旋流路2は混合作用も有しているので、汚染空気と脱臭剤ミスト4aとは混合されて均一な気液混相流となり、該脱臭剤ミスト4aが汚染空気内に均一に分散されて脱臭効果を高める効果がある。前記螺旋流路2を通ることによって旋回流3となった気液混相流内に下流側の噴霧ノズル5’から前述の要領で脱臭剤をミスト状に噴霧すると、更に高濃度のミストを含む混相旋回流となり、臭気成分の除去率を高めることになる。臭気成分を吸収したミストは、前述の気液分離部6で前述の通り旋回流の遠心力によって周壁部に吹き飛ばされて付着し、壁面流4bとなって流下し、脱臭液排出口7から筒状本体1外に排出液B’として排出され、浄化された空気は、浄化空気A’として前記浄化空気排出口1bから系外に排出される点は、図1の場合と同一である。尚、他の構成は図1と同一であるので、同一符号を付して重複説明は省略する。
【0033】
次に、図3は、本発明に係る脱臭装置の第3実施例を示す概念図であり、図1の装置に殺菌装置を配置した場合の例を示すものである。即ち、筒状本体1の前記汚染空気導入管1aの近傍から前記内筒9の入り口部近傍迄を内管1eと外管1fとからなる二重管となし、前記内管1eは紫外線透過性を有する透明な合成樹脂で形成し、前記外管1fは金属管で構成され、内外管の間の空間内に紫外線照射装置(例えば紫外線ランプ)10が配置され、これにより、汚染空気導入管1aから導入された汚染空気Aに紫外線を照射して殺菌すると同時に前述の要領で脱臭処理をも行うようにしたものである。
【0034】
ここで、前記螺旋流路2の下流側の前記内筒9の上端部までの空間は、前記汚染空気と脱臭剤ミスト4aとの混相流であるので、この部分に紫外線が照射されると、紫外線は微小液滴(ミスト)の表面で反射したり、透過する場合には屈折するので、紫外線が単に直進する場合に比較して、紫外線の筒状本体内での滞留時間が長くなり、即ち、紫外線密度が高くなるので、殺菌効果も向上することが期待できる。
【0035】
尚、図3では、前記螺旋流路2の上流側11にも前記内管1eが延在し、その外側にも紫外線照射装置10が延在しており、又、本体下部の前記浄化空気排出口1bの近傍部にも、内筒9の一部を紫外線透過性を有する合成樹脂製の内管1e’とし、その外部に金属管1f’を配置して二重管となし、その内外管の間に紫外線照射装置10’を配置している。この部分は、前記ミストが存在しない部分であるが、通常の紫外線による殺菌作用が行われる事になる。従って、本発明では、紫外線照射装置の配置位置は、ミストの有無に拘わらず基本的には任意であるが、前述のとおり、脱臭剤ミストの存在する気液混相流の部分に配置するのが好ましいといえる。特に、前記液状脱臭剤が循環使用されることを考慮すると、脱臭剤ミストの殺菌効果も期待できる点での効果も大きい。尚、他の構成は図1と同一であるので、同一符号を付して重複説明は省略する。
【0036】
上記した脱臭装置の構成が、本発明に係る脱臭装置の基本的な構成であるが、更に種々の変形例が存在する。例えば、図4は、筒状本体1における前記噴霧ノズル5の配置された部分から下の部分を最も大径の部分1dとなし、これによって前記ミスト4aが周壁部1cに到着するまでの時間を長くして、即ち、ミスト4aの滞留時間を長くして汚染空気との接触時間を長くし、脱臭効率を高くできるようにした例を示すものである。又、図5は、浄化空気排出口1bに連通した前記内筒9の上部開口を覆うように傘部材12を配置してものであり、これにより、前記内筒9の開口から脱臭剤ミスト4aが吸引されるのを防止する効果が期待される。
【0037】
以上の構成の本発明に係る脱臭装置の汚染空気処理能力や脱臭能力は、筒状本体1の径や長さ及び汚染空気の供給速度並びに噴霧ノズルの配置本数や螺旋流路の取り付け位置と数によって適宜設計により可変であるが、処理能力や脱臭率を大幅に向上させる必要も生じる。この場合に、その都度大型装置を設計することも可能であるが、上記した構成の脱臭装置をユニット化しておけば、これらへの要望にも容易に対応可能となる。
【0038】
図6は、その一例を示す概念図であり、図1に示した装置をユニットとして標準化した場合の例であり、図1に示した装置ユニットを2基直列に配置して1つの脱臭装置とした場合の例である。即ち、第1ユニット1の浄化空気排出口1bと第2ユニット1’の汚染空気導入口1a’とを接続し、第1ユニット1で脱臭処理された空気を第2ユニット1’に供給して脱臭処理するものである。この場合には、新鮮な液状脱臭剤Bは、第2脱臭剤タンク8bからポンプP2,第2ユニット1’の噴霧ノズル5’を経て第2ユニット1’内に噴霧され、該第2ユニット1’の脱臭液排出口7’から排出された使用済の脱臭液は、第1脱臭液タンク8a,ポンプP1を経て第1ユニット1の噴霧ノズル5から該第1ユニット1内に噴霧される。即ち、第2ユニット1’に供給される空気中の臭気成分は第1ユニット1で大部分が除去されているので、第2ユニット1’から排出される脱臭剤は、十分な脱臭能力を保有している。従って、これを第1ユニット1の脱臭剤として使用するものである。これにより、1基の脱臭装置では脱臭率が不十分な場合には、2基直列に配置することによって、脱臭率を高めることが可能となる。例えば、1基の脱臭率が90%の場合には、2基直列に配置することによって、総脱臭率を99%に高めることが可能となる。
【0039】
尚、本例においては、2基のユニットを直列に配置しているが、3基,4基と、必要な数のユニットを直列に接続して使用できることはいうまでもない。この場合に、前記脱臭剤は、最下流側から上流側に順次移行させて使用するのが好ましい。又、本例では、2基のユニットを上下に接続して配置しているが、これは2基を併設し、第1ユニット1の浄化空気排出口1bを第2ユニットの汚染空導入口1a’に配管にて接続することも可能である。要は、設置ペースを考慮して適宜決定すればよい。更にユニットの構造も、図1の装置に限定されるものではなく、図2乃至図5に示した如き各種構造のものを、適宜組み合わせて接続使用することも可能である。
【0040】
次に、図7は、ユニット化した装置を用いて汚染空気の処理量を増加させる場合の例であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。同図に示しているように、3つのユニット1,1’,1”を束ねて1つの脱臭装置となし、汚染空気集合導入管から導入された汚染空気は、各ユニットの汚染空気導入口1a,1a’,1a”から各ユニット1,1’,1”内に分配導入され、前述の要領で脱臭処理されて夫々の浄化空気排出口から排出されることになる。このように、3つのユニットを並列で用いることにより、汚染空気の処理量を3倍に増加させることが可能となる。尚、各ユニットの構成は図1と同一であるので、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0041】
尚、この場合も、3系列のユニットの夫々を、図6に示された2つのユニットを直列配置した構造のものにすれば、前述の通り各系列の脱臭率を向上させることも可能となり、大容量,高脱臭率の装置を構成することができる。
【0042】
以上の説明において、図1〜3には基本構成を示し、図4〜図5には各部の変形例を示し、図6,7には使用例を示しているが、本発明は、これらの各図に示した構成のものに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術思想に基づき、種々の変形例や応用例が存在することは言うまでもない。又、以上の説明においては、筒状本体を上下方向に縦型配置した場合について説明したが、本装置は斜めに傾斜配置することも可能である。この場合には、旋回流によって形成される脱臭剤の壁面流が自然流下する程度の傾斜は必要である。
【実施例1】
【0043】
次に、図1に示した脱臭装置を用いた脱臭試験について説明する。
〔試験装置の諸元〕
・汚染空気導入口1aの内径:d1=35.7mm
・浄化空気排出口1bの内径:d2=35.7mm
・筒状本体1の内径:D=72.3mm
・筒状本体1の直胴部長さ:L1=400mm
・筒状本体1の気液分離部長さ:L2=150mm
・螺旋流路2の長さ:L3=60mm
・螺旋通路2bの角度:45度
〔脱臭試験方法〕
上記試験装置の汚染空気導入口1aに臭気成分としての試薬(エタノール)をしみ込ませた布を配置して該導入口より0.2立米/分の流速で空気を供給し、脱臭剤(エタノール吸収剤)としての水を60cc/分の供給速度で噴霧ノズル5より空気中に噴霧しつつ前記汚染空気導入口1aと浄化空気排出口1bにおける空気中のエタノール濃度を測定した。噴霧された水滴の大きさは100μm程度と比較的大径の水滴であった。測定の過程でエタノールをしみ込ませた布を適宜交換しつつ試験(Run1〜Run3)を行った。
この測定結果を図8に示す。
【0044】
図8は、前記汚染空気導入口1aと前記浄化空気排出口1bにおける試薬濃度(エタノール濃度)の経時的変化を示したチャートであり、縦軸に試薬濃度(ppm)を示し、横軸に経過時間(分)を示している。同チャートにおいて、IN(点線)は前記汚染空気導入口濃度の経時的変化を示し、OUT(実線)は前記浄化空気排出口濃度の経時的変化を示している。又、同チャートの試験1(Run1)から試験3(Run3)における夫々の各測定時点 I〜111,IV〜VI,VII〜IXの値と脱臭率を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
〔試験結果〕
図8及び表1から明らかなように、単に旋回気流中に水を噴霧するだけでも、70〜90%程度の除去率が得られることが分かる。今回の試験では、噴霧された水の水滴径が100μmと比較的大きな粒径であるが、これを更に微細な数μm程度の霧化水とすれば、更に除去率は向上するものと判断されるので、本装置は、十分に空気の脱臭装置として使用することが可能であることが分かる。
【0047】
以上に説明した通り、本発明に係る脱臭装置は、構造が極めて簡単であり、可動部を有しないので故障もなく設備価格も低廉なものとなり、しかも水等の脱臭剤をミスト状に噴霧して汚染空気中の臭気成分を除去する方式であるので、運転コストやメンテナンスコストも安価となるのみならず、大容量化も可能な装置といえる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の脱臭方法及び装置は、病院内の薬品臭等の異臭や飲食店の各種食品の調理臭等を除去するシステムとして、又、体育館内の空気の脱臭浄化するシステムとして、更に、生ゴミ処理装置等の廃棄物処理設備から発生する悪臭の空気の脱臭シシテム等として、幅広い利用分野が想定される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る脱臭装置の基本構成の一例を示す概念図である。
【図2】本発明に係る脱臭装置の他の基本構成を示す概念図である。
【図3】本発明に係る脱臭装置の更に他の基本構成を示す概念図である。
【図4】本発明に係る脱臭装置の一部変形例を示す要部概念図である。
【図5】本発明に係る脱臭装置の他の変形例を示す要部概念図である。
【図6】本発明に係る脱臭装置の使用例を示す概念図である。
【図7】本発明に係る脱臭装置の他の使用例を示す概念図であり、(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
【図8】本発明に係る脱臭装置を用いた脱臭方法の実施例の結果を示すチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 筒状本体
1a 汚染空気導入口
1b 浄化空気排出口
1c 内壁面
1d 太径胴部
1e 内管
1f 外管
2 螺旋流路
2a 軸
2b 螺旋状通路
3 旋回流
4a 噴霧されたミスト
4b 壁面流
5 噴霧ノズル
6 気液分離部(空洞部)
6a 環状空間
7 脱臭剤排出口
8,8a,8b 脱臭剤タンク
9 内筒部
10,10’ 紫外線照射装置
12 傘部材
A 汚染空気
A’ 浄化空気
B,B’ 液状脱臭剤
P,P1,P2 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気成分を含む汚染空気を流通させつつ該汚染空気中に液状脱臭剤を噴霧して前記臭気成分を除去する脱臭方法であって、
長軸方向の一端部に汚染空気導入口(1a)を有し、他端部に浄化空気排出口(1b)を有する筒状本体(1)の前記汚染空気導入口(1a)より、汚染空気(A)を前記筒状本体(1)の長軸方向に連続的に供給し、
該長軸方向に供給された汚染空気(A)を、前記筒状本体(1)内に設置された螺旋流路(2)を通して汚染空気の旋回流(3)を形成すると共に、
該旋回流(3)を形成する前又は該旋回流(3)を形成した後に、前記筒状本体(1)の長軸方向の略中心部に配置された噴霧ノズル(5)から前記汚染空気(A)中に前記液状脱臭剤(B)をミスト状に噴霧し、これにより該脱臭剤(B)と前記汚染空気(A)とを接触させて前記臭気成分を除去すると共に、
前記汚染空気(A)の旋回流(3)の作用により前記噴霧されたミスト状脱臭剤(4a)を前記筒状本体(1)の内壁面(1c)に吹き飛ばして壁面流(4b)となし、これによって前記旋回流の気液分離を行い、
前記臭気成分を除去された浄化空気(A’)は前記浄化空気排出口(1b)から前記筒状本体(1)の長軸方向に排出させ、前記壁面流(4b)は脱臭剤排出口(7)から筒状本体(1)の側方に排出させるようにしたことを特徴とする空気の脱臭方法
【請求項2】
前記噴霧ノズル(5)が前記螺旋流路(2)の上流側と下流側の両方に配置され、前記気液混相流を旋回流となした後に、更に該旋回流中に前記液状脱臭剤を噴霧するようにしてなる請求項1に記載の空気の脱臭方法
【請求項3】
前記筒状本体(1)の胴部から内部に紫外線を照射して、内部の空気の殺菌処理を行うようにしてなる請求項2又は3に記載の空気の脱臭方法
【請求項4】
前記紫外線照射を、前記汚染空気(A)とミスト状脱臭剤(4a)との混相流に対して行うようにしてなる請求項3に記載の空気の脱臭方法
【請求項5】
臭気成分を含む汚染空気を流通させつつ該汚染空気中に液状脱臭剤を噴霧して前記臭気成分を除去する空気の脱臭装置であって、
長軸方向の一端部に汚染空気導入口(1a)を有し、他端部に浄化空気排出口(1b)を有する筒状本体(1)と、
該筒状本体(1)内に設けられた螺旋流路(2)と、
該旋回流路(2)の上流側又は下流側若しくはその両方の前記筒状本体(1)の略長軸方向に設置されて、前記液状脱臭剤(B)をミスト状に噴霧する噴霧ノズル(5)と、
前記螺旋流路(2)によって形成された汚染空気の旋回流の作用により、該旋回流中の前記噴霧された前記ミスト状の脱臭剤(4a)を前記筒状本体(1)の壁面に吹き飛ばして壁面流(4b)となし、前記浄化空気排出口(1b)に連通して前記筒状本体(1)内に配置された内筒部材(9)と前記筒状本体(1)との間に形成された環状空間(6a)内に前記壁面流(4b)を流入させる気液分離部(6)と、
該気液分離部(6)で分離された壁面流(4b)を前記環状空間(6a)に連通して前記筒状本体(1)の側方に排出する脱臭剤排出口(7)と、
を有する事を特徴とする空気の脱臭装置
【請求項6】
前記脱臭剤排出口(7)を液状脱臭剤(B)を貯蔵する脱臭剤タンク(8)に接続し、該脱臭剤タンク(8)内の液状脱臭剤(B)を送給ポンプ(P)を介して前記噴霧ノズル(5)に送給するようにしてなる請求項5に記載の空気の脱臭装置
【請求項7】
前記螺旋流路(2)が、複数個直列に配置されてなる請求項5又は6に記載の空気の脱臭装置
【請求項8】
前記筒状本体(1)の少なくとも一部を、紫外線透過性を有する合成樹脂製の部材(1e,1e’)で形成し、該合成樹脂製部材の外側に紫外線照射装置(10,10’)を配置してなる請求項5乃至7のいずれかに記載の空気の脱臭装置
【請求項9】
前記筒状本体(1)の少なくとも一部を内管(1e,1e’)と外管(1f,1f’)とからなる二重管構造とし、前記内管(1e,1e’)を、紫外線透過性を有する合成樹脂製の部材で形成し、前記外管(1f,1f’)を金属製となし、該内外管の間に紫外線照射装置(10,10’)を配置してなる請求項8に記載の空気の脱臭装置
【請求項10】
前記二重管構造部が、少なくとも前記螺旋流路(2)の下流側の前記汚染空気と脱臭剤ミスト(4a)との気液混相流部を含むものである請求項9に記載の空気の脱臭装置
【請求項11】
前記筒状本体をユニット化し、該筒状本体の複数のユニット(1,1’)を直列に接続してなる請求項5乃至10のいずれかに記載の空気の脱臭装置
【請求項12】
前記複数個の筒状本体ユニットの内の下流側ユニット(1’)の前記脱臭剤排出口(7’)から排出される前記液状脱臭剤を、その上流側ユニット(1)の噴霧ノズル(5)を通して該上流側ユニット(1)内に噴霧し、最上流側ユニット(1)の脱臭剤排出口(7)から装置外に排出すると共に、最下流側のユニット(1’)の噴霧ノズル(5’)には、新鮮な液状脱臭剤を供給するようにしてなる請求項11に記載の空気の脱臭装置
【請求項13】
前記筒状本体をユニット化し、該筒状本体の複数のユニット(1,1’,1”)を複数個並列に配置してなる請求項5乃至10のいずれかに記載の空気の脱臭装置
【請求項14】
前記噴霧ノズル(5)の複数個所から前記液状脱臭剤を噴霧するようにしてなる請求項5乃至13のいずれかに記載の空気の脱臭装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−25914(P2006−25914A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205925(P2004−205925)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(501489742)株式会社メディシン (1)
【Fターム(参考)】