説明

空気中からの二酸化炭素の除去

本発明は、空気流が層流状態または層流に近い状態に保たれているところで、溶媒で覆われた表面を該空気流に曝露することからなる、空気から二酸化炭素を捕捉する方法に関する。また本発明は、溶媒で覆われた表面を空気流に曝露し得るように配置された層流スクラッバーという装置を提供する。他の態様では、本発明は、溶媒中に結合された二酸化炭素(CO)を分離する方法および装置に関するものである。本発明は、空気から捕捉されたCOを含有する水酸化物溶液の処理に関連してとくに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一態様では、空気中からの選択された気体の除去に関する。本発明は、空気中からの二酸化炭素(CO)の抽出・取り出しにとくに有用であり、その他の有用性も考えられるが、以下では、かかる有用性に関連して本発明を説明する。
【背景技術】
【0002】
外界空気から二酸化炭素(CO)を抽出すれば、炭素を主成分とする燃料を使用し、事後の関連する温室ガス放出に対処することが可能になるであろう。COは、数ppm量では、有毒でも有害でもないが、単に大気中に蓄積するだけで、環境問題を惹起するから、空気からCOを除去して、どこかほかの場所での、時を異にしての同規模の放出を相殺することが可能である。空気捕捉の全般的体系は周知である。
【0003】
COの産出は、発電所の石炭からの発生、機関などの燃焼装置で燃焼される燃料の典型的主成分である炭化水素の使用におけるなど、種々の産業上の応用において生起する。かかる燃焼装置から排出される排気ガスはCOを含有しており、それは、現在のところ、単に大気中へ放出されている。しかし、温室ガスへの関心が増すにつれて、すべての発生源からのCOの放出を削減しなければならなくなるであろう。移動性発生源の場合、最上の選択肢は、おそらく、自動車や航空機中の移動性燃焼装置からではなく、直接空気からCOを集めることであろう。空気からCOを除去することの利点は、それによって移動性装置上でCOを貯蔵する必要がなくなることである。
【0004】
空気からCOを除去するための種々の方法および装置が開発されてきている。それらの一つでは、ラシヒリングと呼ばれるものを充填したタンク中でアルカリ性溶液によって空気を洗浄する。少量のCOを除去するには、ゲル吸収体も使用されてきた。これらの方法は、COを除去するのに効率的であるが、それらが空気から二酸化炭素を効率的に除去するためには、洗浄処理の間に比較的高い圧力損失が生じるために、空気をかなり高い圧力で吸収剤のそばを流さなければならないという重大な欠点をもっている。さらに、その高圧力を得るためには、なんらかの種類の圧縮手段が必要とされ、これらの手段はある量のエネルギーを消費する。空気の圧縮に用いられるこの追加エネルギーは、空気圧増大に要するエネルギーが、捕捉、処理されなければならないそれ自身のCOを生じるために、当該処理の全二酸化炭素収支の点からとくに不利な影響をもたらすであろう。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,047,894号明細書
【発明の開示】
【0006】
かくして、先行技術の諸方法では、それらの処理が空気を加熱または冷却するか、あるいは空気の圧力を相当量変化させるために、空気からのCOの捕捉が不十分な結果となってしまう。すなわち、当該クリーニング処理により、該処理に動力を供給するための発電の際の副生物としてCOが大気中に導入されるため、COの正味の減量はごくわずかである。
【0007】
それゆえ、空気からCOを分離するためのスクラッバー構想は既に存在するが、それら構想は、通常は、典型的には他の気体から微量の不純物のすべてを除去することを目的とした充填層タイプの手段に限られている。特許文献1に記載されているかかる一装置は、ハウジング内で互いに間隔をおいて配置されたポリ塩化ビニル(PVC)または炭素製の複数の多孔性焼結板からなる吸収要素を包含している。ハウジング内でそれらの板を組立てるのに先立ち、それら多孔板に水酸化カリウムが含浸させられる。かかる装置には、空気からCOを分離するのに用いられる吸収性材料を、装置ハウジングを分解せずには補充できないという欠点がある。
【0008】
他の態様では、本発明は、一般的には、溶媒中に結合された二酸化炭素(CO)を分離する方法および装置に関するものである。本発明は、空気から捕捉されたCOを含有する水酸化物溶液の処理に関連してとくに有用であり、他の用途も考えられるが、以下ではかかる有用性に関連して記述する。
【0009】
空気からCOを捕集する処理は、典型的には、空気からCOを物理的または化学的に結合する溶媒に従っている。実用的なCO溶媒の一群には、たとえば水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの強アルカリ性水酸化物溶液が包含される。0.1モル濃度より多い濃度の水酸化物溶液は、容易に、空気からCOを除去することができ、それは、たとえば炭酸塩として結合される。より高い水酸化物濃度が望ましく、効率的な空気接触器には、1モルより多い水酸化物溶液が使用されるであろう。水酸化ナトリウムがとくに有用な選択肢であるが、有機アミンなどの他の溶媒も使用できる。吸収剤のさらに別の選択肢には、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム溶液などの弱アルカリ性ブラインが包含される。以下の議論では、COを少なくとも部分的にイオン性炭酸塩または重炭酸塩の形で貯蔵できるすべての溶媒に適用される。
【0010】
COを目的として空気と接触することを意図した空気接触器系の設計は、他の特許および文献[1,2,3]で取扱われている。本発明のこの一態様は、吸収剤の回復に関すものであり、そこではCO含有吸収剤を活性化し、COを該液体から分離するものである。以下、空気捕捉ユニットと組合せて、水酸化物溶液を回復させ、別個の、場合によっては加圧下の流れの中でCOを捕集することのできる一連の電気化学的処理を記載する。
【0011】
すべての処理は、水酸化ナトリウムを電気化学的手段によって炭酸塩または他の塩から分離する点で共通している。一対の電極のみを包含するいくつかの電解処理があるが、ほとんどの処理は、双極性膜および/または少なくとも一種類のタイプの陽イオン性膜または陰イオン性膜を使用する分離方式を含んでいる。さらに、これら処理のいくつかは、気体状COを放出することになる通常のか焼および/または酸塩基反応を含んでいる。本発明では、いくつかのかかる処理を請求し、それらを、以下に詳細に論じるように、7つの明確に識別される類に分類する。
【0012】
すなわち、本発明の一目的は、炭素に制約された世界において炭化水素燃料の使用を可能にする上で重要なツールである、空気から二酸化炭素を捕捉するための処理設計を改良し、合理化することである。これら処理の多くは、水酸化物溶媒中に結合されたCOを該溶媒から完全にまたは部分的に除去しなければならない他の用途においても利用できるであろう。
【0013】
上記先行技術の不都合な点は、本発明に包含されるCO分離膜およびそれの使用方法によって対処、克服される。
【0014】
空気からCOを除去する目的は、たとえば乗り物や発電所の運転で生じるCO放出を相殺することである。本発明によって軽減可能なCO放出のもっとも明瞭な発生源は、放出時点でCOを捕捉することが困難または不可能なものであるが、本発明はかかる発生源に限らず、他のあらゆる発生源の場合にも相殺することができるであろう。実際に、このCO削減へのアプローチは、いつか将来に、人間が生み出した空気中の二酸化炭素濃度が高すぎると社会が考えたならば、大気中CO濃度を低下させるために使用できるであろう。
【0015】
本発明の目的は、大気の全二酸化炭素収支を管理するために空気から二酸化炭素を捕捉することであるが、CO濃度の低い気体から二酸化炭素を捕捉する理由が異なるものであっても、当該概念は等しく適用できるであろう。例としては、食品産業または石油産業における販売目的でのCO捕捉あるいは室内空気、トンネル、その他の閉鎖空間中に存在する希薄気流からの二酸化炭素または他の酸性ガスの捕捉が挙げられる。
【0016】
本発明は、その一態様において、空気スクラッバー装置(洗浄器)、該スクラッバーで使用した溶媒からCOを回収する方法ならびに上記装置およびCO除去方法を利用するための商業的方法に関する。本発明の空気スクラッバーは最小限の空気圧低下で機能し、該空気スクラッバー中を流れている空気からCOの大部分を除去するのに有効である。以下で明らかになる理由から、該スクラッバーのデザインをラメラ(薄板)デザインと呼ぶ。このラメラを主材料としたスクラッバーユニットは空気を通過させるためのより大きい上位構造のモジュールとなることができ、それは特定のデザインに適合するよう変更することができる。空気は、自然の風や熱対流やファンによって押し流すことができる。
【0017】
本発明の別の態様では、前記スクラッバー装置中に捕捉された二酸化炭素を回収する方法および装置が提案される。ほとんどすべての空気捕捉デザインでは、空気からCOを捕捉する全プロセスが、溶媒または吸収剤中へCOを束縛することによって空気からCOを除去する空気接触器を必要とする。使用済み吸収剤は、つぎに、好ましくは加圧下の濃縮気流中で、処理され、COのすべてまたは一部が回収される。元の状態に戻った溶媒は、CO捕集装置へ送り返される。
【0018】
本出願は、酸を塩基から分離できる電気化学的処理によって水酸化物を主成分とする吸収剤を回収するいくつかの処理について述べる。かかる処理は存在し、種々の酸について実証されている。ここでは、これら処理を採用し、それらを組合せて、機能的で効率的なCO回収ユニットを構築せんとする。
【0019】
本発明は、また、ここで考えている応用例にとくに適合させた諸単位工程のいくつかの新しいデザインに関するものでもある。
【0020】
本発明の利点はいくつかある:第一に、炭酸イオンを炭酸カルシウムに変化させ、つぎにこれをか焼してCOを遊離させる中間工程を回避することによって、空気から二酸化炭素を捕捉する全体のフローシートが当該方法によって大きく簡素化される。かかる転化工程での大規模取扱いは複雑である。第二に、より直接的な電気化学的処理により、全エネルギー消費を減少させる方法も提供される。第三に、従来の炭酸カルシウム経由回収ユニットでは必要な固体物質流の処理のための複雑で動く設備の必要性が大いに減じる。
【0021】
最後に、このタイプの実施手段は、空気抽出以外にプロセスからの炭酸塩および水酸化物溶液の分離が必要な系においても使用できることが注目される。
【0022】
本発明のさらなる特徴および長所は、添付の図面と関連させての以下の詳細な説明から理解されるであろう。図面中、同じ数字は同様の部分を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1−4について見れば、本発明の一態様に従った空気スクラッバーユニットは、低圧力勾配によって維持された空気流からCOを除去する。該空気スクラッバーユニットは、下向きに流れる吸収剤中に覆われ、狭い空気空間の境界となる2枚のシートまたはプレート5であるラメラを有する集風器(ウィンドコレクター)10ならびに液体だめ12からなる。ラメラを形成する2枚のシートは、剛性のフレーム1によって支持された通し棒2に通されたシート間のスペーサー4によって隔てられていることが好ましい。ただし、ラメラは、他の手段によって間隔を置いて支持されていてもよい。
【0024】
一般に、吸収剤物質は、ラメラシートを伝って流下し、空気流は、シート間の狭い空気空間の間を通過する。空気と吸収剤物質との接触により化学反応が起こり、それによりCOが除去される。しかしながら、該空気スクラッバーユニットは、空気中に存在する他の気体を捕捉することもできる。
【0025】
吸収剤は、確立された技術水準のアプローチに従って、たとえば噴霧ノズルやたとえばヘッダー6から供給を受けている波形管3からの液体迸出によって、ラメラシートへ適用される。また、デザインによっては、頂部付近の垂直面を濡らし、液を重力によって表面上を流過させて、全面を被覆させることもできよう。別法として、表面を平らなディスクとして形成し、それらが液だめを通って回転するときに濡らすこともできよう。その動きにより、表面に沿って液が分配されることになる。
【0026】
ラメラを横切っての空気流を移動させるための典型的な圧力勾配は、それらが自然の空気流、たとえば風、あるいは温度勾配によって生じるようなものである。当該ユニットを横切っての圧力低下は、ほぼゼロないし数百パスカルの範囲であり、好ましい範囲は1−30Paであり、最適範囲は3−20Paであろう。しかしながら、空気および対流を導くためのダクト配管付き、または無しのファンも、空気流を動かすために使用できよう。
【0027】
[ラメラ]
集風器の目的は、空気流を、吸収剤で覆われたスクラッバーまたは集風器の表面と密接に接触させることである。集風器の基本ユニットは、吸収剤で覆われた2枚のシートによって境界を定められた薄い空気空間である単一のラメラである。もっとも単純なデザインでは、それらのシートは平らであるが、その上を通過する空気が直線方向に動きうる限り、それらのシートは湾曲している、すなわちそれらのシートが風の流れに垂直な方向に湾曲していることも可能である。各空気スクラッバー装置は、ラメラのシート上に吸収剤を分配し、使用済み吸収剤を再捕捉する手段を包含する。
【0028】
以下は、ウィンド室用ラメラのためのデザイン例のリストである:
1)互いに平行に整列させられた平らで長方形のシートまたはプレート。
2)互いに平行に並べられ、表面が空気流の方向には直線状の波形シート。
3)中心軸のまわりに回転し、空気は回転軸に対して直角に流れる平らなディスク。吸収剤は、円形運動の底部の近くで液中へ浸漬しているホイールによって適用できよう。静止した吸収剤は、ディスクの外縁を覆うだけであっても、ずっと軸まで達してもよい。それに代えて、軸の近くでの液濡れと重力および回転運動によるディスクのまわりを流れることとによって吸収剤が縁の上まで注がれるようにしてもよい。
4)同心管または類似の形状物であって、空気が管の軸に沿って流れているもの。かかる管は、向流デザインの場合、鉛直に配置して、濡れが上縁で始められるように、あるいは、ほぼ水平に配置して、吸収剤が一端の一点へ入り、管の緩やかな回転運動によって分配されるようにすることができる。
【0029】
ラメラを横切る空気流は、自然な風の流れであっても、あるいは、他の手段によって、たとえば意図的な熱による上昇気流によって得てもよい。しかし、速度が大きくなるとより高速度のエネルギーが放散されることになるから、高い風速は逆効果を生むことになろう。遅い空気流速度は、ラメラ表面での空気の吸収剤物質との接触時間を最大化し、その一方、系内での運動エネルギーの損失を最小限にする。かくして、スクラッバーユニットを通っての空気流の速度は、実質的に流れない状態から毎秒数十メートルまで変動しうる。好ましい範囲は、0.5−15m/sで、最適範囲は、風によって駆動される系の場合、1−6m/秒である。
【0030】
実用的には、集風器を通過する空気流の流速は、代表的風速の実質的部分である必要がある。よりよい幾何学的構造を選択すれば、流速が若干低下することになるかもしれないが、機能強化は正味2桁の倍率になるであろう。
【0031】
本発明の具体的実施例では、2m/sの空気流速度を採用するが、空気流速は0.5m/sから4m/sまで変動させてよい。公称速度2m/sの場合、風の単位面積当りのCO流量は30mmol/m/sである。水酸化ナトリウム溶液中への流量は、水酸化物表面に対して約0.06mmol/m/sに限定され、約2−4mmを超える境界層厚みの場合には、空気横(サイド)輸送係数が支配的影響力をもつ。
【0032】
この実施例では、捕捉系はできる限りコンパクトであり、寸法上の制約が装置の幾何学的形態を決定する。平らな吸収用シートをおよそ0.5cm間隔で配置すると、1立方メートルの内部のシート表面積は約500mになる。実際の長さは、およそ1.2mプラスそれらシートの最終的厚みについての許容差である。それらのシートを折りたたむか、または管状に成形すれば、若干より大きいシート表面積を得ることが可能である。しかし、液状吸収剤は集風器の頂部から底部へと流れるから、断絶部や折り目をもつシートは通過中の空気を偏向させ、系に乱れを加え、境界層厚みを減じるであろう。それゆえ、平らな鉛直シートが自然な選択肢である。平らなプレートは、最適境界層厚みですでに機能しているから、かかる乱れがCO取込み性能を向上させることはなく、それは装置中で放散されるエネルギーを増加させるであろう。
【0033】
しかしながら、構造上の理由から1mより大きい奥行きをもつ集風器をもったきわめて大型の系も考えられる。かかる装置でも、前面開口1平方メートル当り500mのシート表面積に最適化されよう。この実施例では、プレート間の自然な間隙は最適な境界層厚みを超えるであろうから、乱流を生じる形材の導入が必要であろう。その乱流は、境界層厚みを望ましい値2−4mmへ戻してくれるであろう。たとえば、奥行き20mのフィルター系には、1立方メートル当り約25mの充填物が必要であろう。そして、典型的なシート間隔は、最適な境界層にしてはあまりにも大きい約8cmとなるであろう。センチメートル規模で渦を生じさせれば、実際に境界層厚みが減少し、かくして、必要な空気側のCO流量がもたらされるであろう。
【0034】
シートまたはプレート間隔が0.6cmで、奥行きが1mのユニットを通過する流れは、比較的高い流速まで層流となるであろう。レイノルズ数を
【数1】

であると定義すれば、層流領域は約1400にまで達する。言換えれば、0.6cm間隔で配置されたプレートの場合、流れは、約4m/sまで層流のままである。以下では、かかる重ねプレート中での空気流に対する抵抗を算出した。
単位長さ当りの圧力降下は、次式によって与えられる:
【数2】

2つの側壁に垂直な面を横切る圧力が一定であると仮定すれば、幅Δy、高さh、奥行きΔxの空気部分に働く力は、
【数3】

または
【数4】

または
【数5】

によって与えられる。
2つの積分定数は、2つの境界条件から得られる。すなわち、
【数6】

それより、下記が得られる:
【数7】

従って、プレート間でのピーク速度は、次の通りとなる:
【数8】

ここに、Lはプレートの長さ、ΔPはこの距離にわたっての圧力降下である。平均流速は、下式によって与えられる:
【数9】

または
【数10】

または
【数11】

我々が、
【数12】

となるようなLを求めようとすれば、
【数13】

となり、v=2m/sのとき、L=0.2mが得られる。
より一般的には、設計規則は、
【数14】

となろう。ここに、Reは流れのレイノルズ数である。
そして、プレート間の流れは、プレート間の距離の変動によって影響される。系の単位幅当りの質量流量が次式によって与えられることを指摘しておく:
【数15】

Qが一定であり、dがxの関数であると仮定すれば、次式が得られる:
【数16】

単純化した場合では、ラメラの半分の幅がdであり、他方の半分ではdである。さらに、下記を仮定する:
【数17】

そうすれば、下記が得られる:
【数18】

補正係数は、α=1の場合1であるが、α=2の場合にはそれが1.89まで上昇する。狭いスポットのまわりを空気が流れる完全に三次元の系では、全狭窄(絞り)は実際には相対的に小さい。
【0035】
上で誘導した方程式は、プレート間で十分に発達した層流に当てはまるだけであることに注意されたい。しかしながら、流れが十分に展開していないプレートの始まり部分がある。その領域では、圧力降下が、別々のプレートの表面の抗力によってもっともよく特徴付けられる。境界層厚みが増し、隣接プレートからの境界層が流れと重なり合い始めると、流れは、2つのプレートの間に観察される定常流パターンへと発展する。
【0036】
無限に薄いプレートの片側での単位幅当り抗力は、次式によって与えられる:
【数19】

ここに、xはプレートの始まりからの距離である。
抗力係数Cは、文献に従い、次式によって与えられる:
【数20】

いまだ互いに干渉しあわないだけ十分に短い一組の平行プレートを横切っての圧力降下は、下式によって与えられよう:
【数21】

(ここに、dは無限に薄いプレート間の間隔である)または
【数22】

最初、開始によって影響を受ける境界層が相対的に小さいので、空気流は異なって見える。
【0037】
さらに、ある特定のデザインでは、外界風速vに遭遇するかもしれない。ラメラの前で空気はよどみ、速度vまで減速する。ラメラを通して空気を推し進める圧力は、下記によって与えられる:
【数23】

または
【数24】

【数25】

二次方程式の2つの解のうち、物理的解、すなわち正のものを選択する。
【0038】
[吸収剤]
強水酸化物溶液中へのCO取込みの速度は、よく研究されている。本発明の空気スクラッバーは、自然の風の流れまたは類似の駆動力、たとえば熱によって起こる対流を受ける流れから直接COまたは他の気体を取り出す装置である。
強水酸化物溶液へのCO取込みは、溶解過程を大きく加速する化学反応を包含する。全反応は次の通りである:
【数26】

この反応が起こりうるいくつかの異なる経路がある。高いpHの場合に関連する2つの段階は次の通りである:
【数27】

これに続く
【数28】

後者の反応は、非常に速いことが知られている;他方、最初の反応は比較的遅い速度で進行する。反応(2)の反応速度は、下記によって示される:
【数29】

ゆえに、この反応速度を記述する時定数は、次の通りである:
【数30】

速度定数κは、20℃、無限希釈で下記の通り測定されている:
【数31】

イオン強度補正は、下記により与えられる:
【数32】

気体中のCO濃度が高い場合、1モル溶液についての0.14msでの時定数がかなり短くても、反応(2)の速度が取込み速度を限定する。
【0039】
標準的化学工学モデル、たとえばダンクヴェルトやアスタリタに従って、気体側の流れの移動係数と液体側の移動係数とを組合せて界面を通る全体の流れを示す標準モデルと一致して、気体成分が吸収剤に溶解または化学的に吸収される移動過程を示すことができる。全流量は下記によって表わされる:
【数33】

ここに、ρおよびρ′はそれぞれ気体中および溶液中のCOのモル濃度である。パラメーターxは界面からの距離を表わす。気体中への距離は負とみなす。境界では、ヘンリーの法則が成立つので、下記が成立つ:
【数34】

無次元係数として表現すれば、K=0.7
:典型的には、気体側の濃度は分圧、すなわちパスカル単位または気圧(atm)単位で測定され、液体側の濃度は典型的には1リットル当りのモル数として測定されるから、ヘンリーの定数は次元をもつことに注意されたい。かくして、典型的な単位はリットル/モル/atmとなろう。]
気体側については、移動定数は下記の通りであると推定できる:
【数35】

ここに、Aは、界面の表面に生じる層流をなす副層(サブレイヤー)の厚みである。この層の厚みは、流れの幾何学的形状および気体流中の乱れに依存する。流れの幾何学的形状および気体流中の乱れが与えられたならば、Aの最適選択候補を求められるはずである。
【0040】
流体パッケージについて、移動係数を推定する標準的アプローチは、流体表面上の一小部分について滞留時間τを想定する。この時間は吸収剤の流れ特性に由来し、その特性は表面の形成および破壊ならびに表面近傍での乱流性液体混合を包含する。
【数36】

時間τ内の拡散は溶解COを厚み層中へ混入させることができるので、表面からの流量は、下式によって与えられる:
【数37】

ここに、DはCOの拡散定数であり、ρ′はCOの液体側濃度である。勾配は表面で求める。当該液体の移動係数は下記方程式から定義される:
【数38】

該勾配を
【数39】

によって近似すると、拡散によって推進される吸収過程について、
【数40】

が示される。ここに、Dは吸収剤中でのCOの拡散速度である。
【0041】
反応時間がτ<<τである速い化学反応が存在するとき、COを吸収する層は、この短い時間によって特徴づけられ、それゆえ、移動係数は下式によって与えられる:
【数41】

それゆえ、化学反応が存在するときには、移動係数はこのように下記倍率だけ増大させられる:
【数42】

【0042】
しかし、この増大は、吸収剤中の反応物の供給が限られていない場合にのみ維持されうる。水酸化物溶液を中和するCOの場合、境界層中の水酸化物を消費させることが可能である。層厚みλは、面積密度ρOHλの水酸化物イオンを含有し、減少速度は2κLρ′COである:かくして、速い反応の限界(方程式41)について、下記が当てはまる:
【数43】

我々の場合には、
【数44】

ゆえに、当該条件は、下記のように書き直すことができる:
【数45】

【0043】
速い反応速度論から瞬間的反応へ遷移するための臨界時間は、外界空気の場合、およそ10秒である。この遷移は、溶液中の水酸化物濃度には依存しない。しかし、いったん遷移状態を通過すると、取込み速度は、水酸化物イオンが表面へ流れる速度によって限定される。それゆえ、それは速い限界におけるよりも低くなり、CO流量は下記によって与えられる:
【数46】

瞬間的形態においては、流量は、境界層中のCO濃度とは無関係である。
該流量は、有効移動係数によって特徴づけられ、それは下記のように記述することができる:
【数47】

ここでは、モル濃度は、遠隔の気体および遠隔の液体中の漸近値を表わす。水酸化物溶液の場合、後者は0である。ゆえに、
【数48】

または
【数49】

最適デザインは、気体側限界と液体側限界との間の境界に近い。それゆえ、我々は、空気側の境界厚みの設計値を確立する。
【数50】

これは、空気を主材料とするCO抽出の場合、ほぼ4mmである。
【0044】
これらの制約が一緒になって、実用的デザインが著しく限定される。1モル溶液の場合、全溶液流は6x10−5モル・m−2・s−1と測定されたが、これを有効値に変換すると0.4cm/sとなり、これは理論値に近い。
【0045】
COを吸収する吸収剤のタイプについては、きわめて種々の使用可能な選択肢がある。一実施例では、吸収剤物質として水酸化物水溶液を使用する。これらは、0.1モルを超え、可能な最大レベル(およそ20モル)までの強い水酸化物溶液となる傾向がある。
【0046】
吸収剤として使用される水酸化物は、種々の陽イオンのものでありうる。水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムがもっとも顕著なものであるが、MEA、DEAなどの有機吸収剤を含む他のものも現実味のある可能性である。さらに、それらの水酸化物は純粋である必要はなく、吸収剤の種々の性質を変化または改良するために添加される他の混入物を含有していてもよい。たとえば、添加剤は、水酸化物と空気からのCOとの反応速度を上昇させうるであろう。かかる触媒は、当該溶液に溶解させた界面活性剤または分子であってよい。MEAなどの有機化合物の添加は、ほんの一例である。他の添加剤は、溶液をより吸湿性にすることによって水の損失が減少するのに役立つであろう。さらに別の添加剤を使用して、当該流体の流れまたは濡れ特性を改善し、あるいは水酸化物溶液の腐食作用から表面保護を助長するようにしてもよい。加うるに、本発明で使用するいずれの吸収剤も、ラメラシートの表面を濡らすものでなければならない。このためには、当該技術において種々の手段が知られている。それらには、親水性を増大させる表面処理、吸収剤中の界面活性剤および他の手段が包含される。
【0047】
本発明は、下記の重要な設計上の特徴を含む:
1)ラメラシートは、その寸法でのシート間隙と矛盾しない寸法尺度で、空気流の方向に実質的に平滑である。(しかし、ずっと細かい尺度での偶然的なまたは加工した構造を使用して、CO移動係数を向上させるようにしてもよい。)空気流に対して直角な形状上の変化は、プレート、シートまたは表面の効率的濡れに干渉しないのであれば、相対的にあまり関心がもたれるものではない;
2)それらのシートは、それらが曲ったり、はためいたりして、ラメラ間での圧力変動を有意に減少させないよう、十分しっかりまたは固定して動かないように定位置に保持される。
3)表面における開口を通っての空気流は、それがラメラ間の圧力変動に有意に影響しないよう、止められる。
4)ラメラ間の間隔は、系が層流状態から遷移してしまわないよう、または少なくともその状態からあまり逸脱しないように、選択される。
5)膜ユニットの奥行きは、当該ユニットの前方部で空気がほぼ完全に空になるのを避けるのに十分なだけ短く保たれる。
6)シートの両側を利用するために、ラメラを鉛直に配置することが好ましい。しかし、他の流れ最適化の場合には、かかるデザインからの逸脱も考えることができよう。
7)ラメラの高さは、表面の濡れ性が最適化され、流体を何回も再処理する必要を最小限にするよう、選択される。
【0048】
CO回収系の構成要素
本発明の他の態様にあっては、本発明で記述したCO捕捉系において、またはCOを捕捉した任意の他の装置において、下記の電気化学的処理を利用することができる。これらの電気化学的処理は、いずれも、双極性膜を用いての電気透析によって塩をそれの酸および塩基に分離することに基づいており、その酸およびその塩基は溶液中に留まる。例としては、塩化ナトリウムからの水酸化ナトリウムと塩酸の生成および酢酸ナトリウムからの水酸化ナトリウムと酢酸の生成が挙げられる。他の酸・塩基の組合せも、一般文献中で、特許文献中で、また産業上の慣例において、実証されている。本発明との関連では、このタイプのユニットが、水酸化物および炭酸塩溶液の分離に使用されるであろう。また、弱酸の塩を対応する酸および塩基に分離するユニットが使用されるであろう。
【0049】
以下に、我々が考えているプロセスの基本的構成要素となるいくつかの処理工程を示す。
1.水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物の水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムへの電気化学的分離。この処理工程のためには、現存の構成要素に従うことができ、また分離のために電気透析を用いる特別設計のユニットを用いてもよい。これらの手法は、ナトリウム以外の陽イオン、たとえば、それらに限定されるものではないが、カリウムおよびアンモニアならびにモノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)などの有機アミンのカチオン類にも拡張適用できる。いずれの場合にも、基本反応は、R−OHとRCOとの混合物の膜処理によりR−OHおよびRHCOの別々の溶液への分離である。
2.金属重炭酸塩の金属炭酸塩およびCOへの電気化学的分離。この処理には、双極性膜の関与を伴う電気透析を用いるのが好ましいが、他の電解過程が文献に記載されており、それらを使用してもよい。
3.金属重炭酸塩の金属水酸化物およびCOへの分離。この処理も、双極性膜を用いての電気透析に従うが、それは、水素を生じる金属重炭酸塩の電気分解によっても達成でき、水素は水素電極で再使用されてCOを生ぜしめる。
4.上記構成要素2と3または4とを組合せて単一ユニットとするユニット。たとえば、炭酸塩と水酸化物との混合物を最後まで、すなわち水酸化物溶液とCOガスにもっていく処理。
【0050】
以下は、電気化学を伴わない追加の構成要素である:
1.濃度勾配を利用して、ナトリウムなどの陽イオンを溶媒から分離し、投入溶媒中の水酸化物を減少または除去する膜処理。場合によっては、このユニットは溶媒を炭酸塩から重炭酸塩へと部分的に転化させることができる。
2.炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムとの混合物から沈殿を介して炭酸ナトリウムを分離するための温度変動(スウィング)処理。
3.重炭酸塩溶液を、温度または圧力変動によって炭酸塩溶液へと導く処理。かかる処理は、炭酸ナトリウムまたはカリウムとCOとの間の重炭酸塩を生成する反応のための十分に高いCO圧で動作する一定のCO洗浄系で普通は配備されている。
4.重炭酸塩溶液を受取り、蒸発または温度変動を用いて溶液から重炭酸塩を析出させる処理。
5.重炭酸塩をか焼して炭酸塩とする処理。ここでとくに関心がもたれるのは重炭酸ナトリウムまたはカリウムである。
6.酸を水酸化物−炭酸塩混合物と混合して該混合物を中和し、これらの塩の固体の沈殿を形成させる処理。この処理は、純粋な炭酸塩で停止することも、さらに進行して、炭酸塩/重炭酸塩混合物を形成するかまたは最後の重炭酸塩に至るまで進行することもできる。
7.酸を用いてすべてのCOを重炭酸塩あるいは炭酸塩または水酸化物混合物から追出す処理。この処理は、配管系圧でCOを配送するために高昇温度で実施することができる。
【0051】
プロセス全体の機構の概要
すべてのプロセスは、ユニットにおける空気からの二酸化炭素の抽出・取り出しから始まるが、ここではユニットについては詳述することはしない。特定の一実施例は、本発明の他の態様で取扱った。このユニットの詳細はここでは重要な事ではなく、ただ、このユニットが水酸化物を主成分とする溶媒を消費し、これが全部または部分的に炭酸塩に転化されることだけを指摘しておく。溶媒を部分的に重炭酸塩に転化させることも可能である。この後者の場合には、炭酸塩を出発溶媒として使用することも考えられる。投入溶媒は、まさしく水酸化物以外の化学物質を含有していてもよい。たとえば、その投入溶媒は、処理性能を改善するある種の添加剤を含有しうるが、とりわけ、先の処理サイクルからの残留炭酸塩を含有することができる。
【0052】
本発明のこの項の目的は、溶媒の循環ならびに好ましくは後続処理工程に適した圧力下で濃縮流中へCOを部分的または完全に回収するための処理および方法の概略を述べることである。以下の論述では、明快を目的として、特定の水酸化物および特定の酸に言及する。しかしながら、当該処理はこれらの特定の化学物質に限定されるものではなく、他のイオン種を包含するように一般化することが容易にできることを強調しておきたい。
【0053】
下記の例では、空気接触器ユニットは、濃度が、水酸化ナトリウムが1リットル当り1モルを超える水酸化ナトリウム溶液を使用する。先行処理サイクルからの溶媒中になお若干の残留炭酸塩があるかもしれないが、該溶媒を空気に曝露するとき、水酸化物が炭酸塩に転化され、溶液の炭酸塩濃度が、それ以上の転化が望ましくはなくなるまで上昇し始める。この吸収過程を停止させるのには、いくつかの理由がある。とくに、水酸化物が消費されるから、処理が停止させられるかもしれず、あるいは炭酸塩濃度が飽和レベルに達する。ほとんどの捕捉デザインの場合、吸収器中での炭酸塩の析出は望ましくない。生じた炭酸塩溶液は、つぎに、さらなる処理のために捕捉ユニットから戻される。
【0054】
概念的に、当該回収プロセスにおいて下記の3つの工程を考えることができる:
1.未転化水酸化物の炭酸塩からの分離;
2.炭酸ナトリウムの水酸化ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムへの分解。これは酸塩基分解である;および
3.重炭酸ナトリウムの水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムと炭酸への分解。
【0055】
実施態様によっては、これらの工程を結びつけて、2つの処理工程に、さらには単一の処理工程とすることができる。
【0056】
別法として、これらの工程の各々を、弱酸を用いて塩基(ここではナトリウム)を中和することによって実施することができる。該酸のナトリウム塩が沈殿すれば、酸陰イオンをその沈殿した形で液体から分離することは簡単であるから、処理を任意の点で停止することができる;さもなければ、中和処理を完了まで行なわなければならず、その場合の結果は気体状COおよび当該塩基の塩である。空気捕捉に水酸化ナトリウムを使用し、酸が酢酸であるならば、結果として酢酸ナトリウムとなる。この生じた酢酸ナトリウムは、水酸化ナトリウムと酢酸とに分離する。両者ともに再循環する。酢酸ナトリウムの分解は、双極性膜を包含する電気透析ユニットを用いて実施するのが最善である。高圧COが必要ならば、酢酸よりも強い酸が必要である。
【0057】
プロセス1:
図5−7を参照すれば、プロセス1により、溶媒のグレードアップは3つの別個の工程に分けられる。まず、ブラインから炭酸塩の大部分を分離する。つぎに、それは電気化学的工程を用いて、ブラインからナトリウムイオンを実質的に取り出し、水酸化ナトリウムおよび重炭酸ナトリウムになる。最後に、生じた重炭酸ナトリウムが、酸を添加してそのCOを放出し、その酸は電気化学的工程へと再循環される。この処理の実施態様の利点は、それが高いエネルギー効率を加圧COを製出する能力の他に持つことである。二酸化炭素が高圧のもとで製出されうることが、電気化学的分離の長所である。
【0058】
工程1.1
使用済み溶媒から温度変動によって炭酸ナトリウムを取り出す。炭酸ナトリウムの溶解度は、水酸化ナトリウムの溶解液よりもずっと小さい。(同様の理論は他の水酸化物のいくつかにも当てはまるが、この実施態様は溶解度の範囲が適合するものに限定される)。したがって、濃縮炭酸ナトリウム溶液の場合、CO吸収によって炭酸ナトリウムへ転化されうる炭酸ナトリウムの最大量は限定される。高濃度の水酸化ナトリウムで運転する一つの短所は、使用済み溶媒が、水酸化ナトリウムによって、依然支配されていることであり、水酸化ナトリウムを費用のかかる多段階を経由して処理すべきではない。温度変動法は、水酸化ナトリウムすべてを膜系に通さずに炭酸塩の分離が可能になるがゆえに、上記の問題を克服する。使用済み溶液が炭酸ナトリウムでほぼ飽和している場合には、沈殿によって炭酸塩の一部を取り出すことができる。炭酸ナトリウムの溶解度は、0℃と25℃との間で3倍よりももっと変化する。かくして、入って来る流体と出て行く流体との間の熱交換による温度変動により、水酸化ナトリウム溶液を回復させることが可能である。このアプローチにより、最大温度変動の大きい暖かく乾燥した環境状態で外界の熱が利用される。この回復された水酸化物溶液は、空気接触器ユニットへ送り返される。また、このアプローチは、高濃度のNaOHが同時発生的な水分損失を減少させるのを助長するような乾燥気候条件下でより有利に展開される。
【0059】
工程1.2
炭酸ナトリウム沈殿を、水に最大濃度で溶解させる。炭酸ナトリウムを水酸化ナトリウム(塩基)と重炭酸ナトリウム(酸)とに分離できる酸/塩基分離用電気化学的ユニットの中で、炭酸ナトリウムをさらに処理する。この電気化学的分離には、いくつかの異なるデザインが可能である。いくつかのデザインは、双極性膜を使用する酸と塩基のための慣用の技術水準に属する一般的な分離器である。他のものは、水素電極を包含する。以下、炭酸ナトリウムの解離のために特に設計された特定のユニットについて記述する。
【0060】
工程1.3
工程1.2から得られた重炭酸塩溶液を、耐圧容器に注入して、そこでそれを弱酸と混合する。好ましい酸には、クエン酸、蟻酸および酢酸が含まれる。しかしながら、本発明はいずれかの特定の酸に限定されるものではない。酸塩基反応は、当該塩から炭酸を取り出す。つぎに、炭酸は分解して、COと水になる。COは、まず溶解してブラインになるが、まもなく、容器圧力を超える圧力に達し、加圧CO流が放出されることになる。このユニットについて設計上の制約があるため、酸の選択が若干制限される。もっとも重要なことは、該酸が、設計圧においても、溶液からCOを追出すのに十分に強いものである必要があることである。このユニットのさらなる考察については、下記を参照されたい。かかる系の長所は、それが、耐圧容器中に大型の電気化学的ユニットを組み込む必要なしに、配管系圧のもとで濃縮COの放出を可能ならしめることである。あとには、該弱酸の塩のブラインが残される。この塩は酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムまたは任意の他の弱酸塩であってよい。
工程1.4
【0061】
捕捉に用いた弱酸と塩基との塩が、水酸化ナトリウムおよび該弱酸の回収の目的で陽イオン性、陰イオン性または双極性の膜を用いた電気透析ユニットにおいて分解される。使用可能なこのユニットにはいくつかの変形がある。工程1.4の終結とともにCOが回収され、残留水酸化ナトリウムは全体のサイクルへ戻される。種々のデザイン選択肢のうちから選択する際、溶液から陰イオンを除去するよりもむしろ溶液からナトリウムイオンを除去するユニットを用いるのが有利である。残留陰イオンを空気接触器へ送り込むことは一般に望ましくないからである。これはまた、水酸化ナトリウムブラインの濃度を調節することをも可能にする。それゆえ、この実施態様の詳細な条件に応じて、この最後の処理は、水酸化ナトリウムの含水量を空気接触器で望まれるものに調節するのに利用できる。ここでは、電気透析処理で弱酸の回収に必要なエネルギーがより少なくてすむゆえに、概して弱酸について言及しているが、原則として、当該処理は強酸を用いても作用することに特に言及しておく。いくつかの特別な場合には、強酸は、本質的により高い電気化学ポテンシャルを克服する他の利点をもちうる。たとえば、ある種の膜は、より大きい有機酸によるよりも強酸の単純イオンによる、より大きい電流に耐えることができる。
【0062】
プロセス2:
図8を参照すれば、この処理はプロセス1にきわめて似ているが、それは第一工程を膜分離系によって置換えている。これで、濃縮が必要な相対的に希薄なNaOH溶液を生成させることになるであろう。それは、次工程で、膜の水酸化物側での出発ブラインとして使用することができよう。プロセス2は、空気抽出工程が溶媒からの蒸発による水分損失を引き起こし、かくしていずれにせよ溶媒に追加の水を添加することが必要であるとしても、とくに良好に作用する。
【0063】
工程2.1
希釈NaOH溶液と濃縮NaOH/NaCOブラインとを交互に含有するセルからなる周期系を使用する。一方の側では、それらのセルは陽イオン性膜によって隔てられており、他方の側では双極性膜によって隔てられている。最後のセルは最初のセルに接続されて、系を周期的に起こるものにしている。デザインを単一のセル対まで縮小することができるが、一般的には、幾何学的制約のため多セル系が有利である。陽イオン性膜を通って、ナトリウムが拡散するとき、セルの電荷が中性であることのために、双極性膜がH−OH対を提供することが要求される。Hはあとに残されたOHを中和する;OHは他の室の取り出されたナトリウムで塩基を形成する。第一近似では、2つの室中のナトリウム濃度が釣合い、使用済み溶媒中のNaOHの少なくとも半分が炭酸ナトリウムに転化されていれば、この分離が電力投入なしに実施できることが示唆される。そうでなければ、この系を用いて、NaOH濃度を部分的に低下させることがなお可能であり、溶液の含水量を高めたければ、それらのナトリウムイオンの大部分を、系の炭酸塩側の残留ナトリウムイオン濃度よりも低いナトリウムイオン濃度を維持する必要のある新しい水酸化物室へ移動させることができる。多くの空気接触器のデザインではもともと溶液中にあった水の若干が失われているであろうから、この点でのブラインの希釈は実際に望ましいことかもしれない。しかし、処理工程1.2に類似の処理工程2.2は、NaOHの抽出があまり完全でなくても、進行可能である。
【0064】
多数のこれらのセル配置(末端を閉鎖しない)を行い、重炭酸ナトリウムを生成させるための工程2.2で使用するスタック(積層構造)にそれらを組み込むことにより、濃度によって運転されるセルの動力を利用でき、転化の第二工程のためにその駆動力発現を部分的に提供することができる(図8)。
【0065】
工程2.2
この処理は、上記の工程1.2にきわめて類似している。相違点は、炭酸ナトリウムが溶解された形で供給され、投入ブライン中に残留水酸化ナトリウムが存在している可能性があることである。
【0066】
工程2.3および工程2.4
工程1.3および1.4と同じ。
【0067】
プロセス3
図9を参照すると、プロセスを単純化する目的で、炭酸ナトリウムを水酸化ナトリウムと重炭酸ナトリウムとに電気化学的に分離する工程を削除する。代りに、弱酸を用いて直接COを産生させる。この実施態様は、単純化したために包含させたのであり、それは将来に技術水準を利用することを可能にするがゆえに、いくつかの特定の酸/塩基対での酸/塩基分離のためのきわめて効率的な実施態様に到達していると言ってもよい。もちろん、工程1.1と2.1をちょうど炭酸塩の境界までよりもさらに推し進めることのできるハイブリッドプロセスを生み出すことも可能である。別の代替法として、1.2および2.2での電気化学的分離を用いて、重炭酸ナトリウムの全面形成の手前で止めることもできよう。
【0068】
工程3.1
この工程は、投入ブライン中の水酸化ナトリウムから炭酸ナトリウムを分離する。この工程は、工程1.1と同様にして、または工程2.1と同様にして、実施できる。水酸化物・炭酸塩混合物を工程3.2へ導入することによって、それを完全に除去することもできる。
【0069】
工程3.2
この工程は、工程1.3および2.3に類似のものであるが、2倍量の酸を必要とする。かかる実施態様の利点は、フローシートの実質的合理化である。
【0070】
工程3.3
この工程は、工程1.4および2.4に類似のものであるが、2倍量の酸を製出する。
【0071】
プロセス4:
図10を参照すれば、プロセス4は、プロセス1および2と同様にスタートするが、つぎに、酸分解を、COを溶液から追出す双極性膜過程によって置換える。
【0072】
工程4.1
この工程は工程1.1または工程2.1と同じである。
工程4.2
この工程は工程1.2または工程2.2と同じである。
【0073】
工程4.3
NaHCOのCOとNaOHへの電気化学的分離。これは、双極性膜による電気透析に基づいている。高圧COを得るためには、当該電気透析ユニットは、セル全体にわたって所望のCO圧を維持する耐圧容器内に配置すべきである。この理由から、工程4.2と4.3を結びつけないことが望ましい。その理由は圧力下に維持される必要のあるユニットの寸法を増大させるからである。しかし、2つのユニットを1つに合わせることは可能である。かかるデザインの利点は、プロセス工程数の減少であろう。さらに、3つのユニットを1つの結びつけることも可能であろう。他の実施態様は他の電気化学的手段、たとえば、カソードで水素を発生させ、アノードには、該カソードで産生された水素を消費する水素電極を使用する電解系を使用するものであろう。
【0074】
プロセス5:
プロセス5および6は、重炭酸塩ブラインからCOを抽出し、少なくとも部分的に炭酸ナトリウムを製出し、かくして、最終諸工程と上流諸工程との間に新しい再循環ループを導入する。プロセス5は重炭酸ナトリウムを析出させ、プロセス6は該プロセスの水性版を実行する。結果として、これらのプロセスは、炭酸塩のみを産生し、この炭酸塩をCO捕捉のための新鮮な吸収剤として使用する実施態様によく適している。図11参照。
【0075】
工程5.1
この工程は工程1.1または工程2.1と同じである。
工程5.2
この工程は工程1.2または工程2.2と同じである。しかし、このユニットへの投入物は、一部は過程5.1から、または一部は工程5.5由来の再循環炭酸ナトリウムから得られたものである。
【0076】
工程5.3
水除去による重炭酸塩濃度の増大。これは、水透過性膜を通して水を濃ブライン中へと通過させることによって最もよく達成できる。これらのブラインの可能な供給源は2つある:(1)空気接触器から出てくる濃ブライン;これは、工程5.1が工程2.1に続く場合にとくに有用である;(2)工程5.1が1.1に類似であり、固体炭酸ナトリウム沈殿が生じる場合には、その工程に由来する濃縮ブライン。結果は、重炭酸ナトリウムの濃縮ブラインである。それは、溶液全体にわたって外界より高いCO分圧を含むよう、気密容器中に収容することが必要である。
【0077】
ブラインから水を除くための別の選択肢は、通常の電気透析ユニット(双極性膜なし)を逆に運転することである。サイクル中のどこかで再使用される純水を用いる(系全体が水を失う)よりもむしろ、膜の他方側の濃縮ブラインを集めて、さらに使用する。このアプローチの利点は、より少量を膜に通過させるだけでよいことであるが、うまくいくためには起電力を必要とする
【0078】
工程5.4
ブラインから重炭酸ナトリウムを析出させるための温度変動。この温度変動は、NaCO析出のための温度変動ほど効率的ではない。しかし、25℃と0℃との間で操作することにより、重炭酸塩のおよそ1/3を除去することが可能になる。投入物と産出物との間の熱交換が、系内での熱損失を最小限にしてくれる。残留ブラインは工程5.3へ送り戻され、さらに脱水される。
【0079】
工程5.5
固体重炭酸ナトリウムのか焼による炭酸ナトリウムおよび加圧COの生成。COを加圧するために、耐圧容器中にか焼装置を納める。かかる系は、種々の廃熱源、たとえば精錬所あるいは発電所からの廃熱を利用できよう。別の代替手段は、カーボンニュトラルという長所をもつ太陽エネルギーであろう。化石炭素を用いる場合には、その熱源は空気よりもむしろ酸素を用いるべきであり、その燃焼で生じたCOを捕集すべきである。上流の電気透析ユニットで製出された水素および酸素は、他のCO不含エネルギー源を提供してくれるであろう。これに代えて、製出された炭酸ナトリウムの小部分を部分的に、燃焼過程からのCOを吸着するために使用できよう。この重炭酸ナトリウムブラインは、再度の水の除去のために5.3へ戻される。残りの炭酸ナトリウムは、工程5.2へ送り返される。COの流れがこのユニットから出て行く。
【0080】
この実施態様の長所は、それが電力需要を減少させ、部分的に低品位の熱で置換えることである。それゆえ、この方法は、電力が高価であるかまたはきわめてCOが強度な地域では、とくに有用である。方法1−4は、低コスト、低炭素電力、たとえば水力発電または大規模風車農場からの余剰風力のある地域で有利である。
【0081】
プロセス6:
プロセス6は、プロセス5に似ているが、沈殿/か焼を、直接溶液中での重炭酸ナトリウムの熱分解で置換える。プロセス5の長所は、CO流中で高圧を容易に得ることができることであるが、プロセス6は、実施が容易であり、慣用の流れ処理に従っている。図12参照。
【0082】
工程6.1
この工程は工程5.1と同じである。
工程6.2
この工程は工程5.2と同じである。
工程6.3
この工程は工程5.3と同じであるが、5.3の濃度よりも濃度を低く保つことができ、実施態様によっては省略できる。
【0083】
工程6.4
ブラインからCOを除去するために溶液を加熱するための温度変動および炭酸ナトリウムで富化されたブラインの工程6.2への送り戻し。エネルギー需要を最小限にするために、熱交換器を用いる。水凝縮はこのユニット内部で管理できる。考察については、下記を参照。潜在的な熱源は、工程5.5で列挙したものと同様である。6.2で生じたブラインの一部を、熱発生で生じたCOを吸収するために使用できる。生じた炭酸ナトリウムの富化ブラインは工程6.2へ戻される。
【0084】
プロセス7:
プロセス7は、CO発生ユニットを厳密に重炭酸塩と炭酸塩との間で運転する点ならびにこの点を通過後にCO発生器の電気透析を行なおうとしない点で、プロセス5および6に類似している。実際、高pHの溶液ができるのを避けるために、そのプロセスは、それよりも少し前に終ってもよい。図13参照。
【0085】
工程7.1
この工程は工程6.1と同じである。
工程7.2
この工程は工程6.2と同じである。
工程7.3
この工程は工程6.3と同じである。
【0086】
工程7.4
陰イオン性および双極性の膜が交互になったセルで、塩基性ブラインは重炭酸塩溶液として、酸性ブラインは純水として出発し、印加電圧が重炭酸イオンおよび炭酸イオンをして前記陰イオン性膜を通過させ、酸性側に炭酸を生ぜしめ、該酸性側がCOを放出する。炭酸陰イオンの除去とともに、塩基性側のブラインのpHが徐々に上昇する。この処理は、OH濃度が溶解した無機炭素と競合し始めるときに、停止しなければならない。これにより、重炭酸塩ブラインの炭酸塩ブラインへの変換が可能になる。
【0087】
残った炭酸塩ブラインは、先行ユニットへ送り返され、それは、若干の脱水ののち、重炭酸塩ブラインへと再転化されうる。
【0088】
諸プロセスの考察
上に概略を述べた諸プロセスは、異なる状況、異なる目的に対する異なる最適化態様を示している。いずれが最適であるかは、諸ユニットが運転される典型的温度、電力の地域コストおよび炭素強度、酸および塩基を製出する種々の電気化学的方式の進行によるであろう。この分野はいまだ若く、流動的であるので、やがてはもっと全電気化学的デザインへ優位性は移行していくことであろう。
【0089】
いずれも使用済み溶媒のCOへの変換に加え、回復させた溶媒の変換を完結させるために第二の酸に依存しているプロセス1−4は、酸/塩基分離およびCOの加圧を独立して最適化することを可能にする。これら方法の利点は、COを配管系圧まで上げるため圧縮機の必要性がなくなることである。プロセス5についても同じことが言えるが、プロセス6の場合、実施可能な最大圧力は、炭酸塩/重炭酸塩ブラインを上げたい温度によって限定される。プロセス6の一つの長所は、工程6.4が過去に大規模に実施されており、したがって、新規プロセスの規模拡大に伴うコスト上の不確実性が減ることである。
【0090】
他のプロセスユニットを、たとえば不純物を処理するために、全体流に組み込むことができる。たとえば、空気接触器から来た炭酸塩ブラインは濾過して、蓄積したダストを除去しなければならない。
【0091】
我々のデザインについて最適化される諸単位工程のより特別な実施態様を以下により詳しく考察するが、すべてのプロセスユニットについて標準的実施態様を用いることができる。
【0092】
炭酸塩の重炭酸塩および水酸化物への分離の実施態様
原則として、酸と塩基の分離用に確立された電気化学的処理のいずれの実施態様も、このプロセスユニットに適合させることができる。それらのすべてが双極性膜に頼っているわけではないが、多くがそうである。この目的で我々が開発した一つは、一連の陽イオン性および双極性の膜を併用している。その系は、水素および酸素を生成する2つの標準電極で終る。これらは、全エネルギー消費の数パーセントになるであろう。それらは、燃料電池を介してプロセスへ取込んでもよく、あるいは、熱を必要とするプロセス5および6では、COの放出なしに熱を発生させる目的でそれらを燃焼させてもよい。
【0093】
ナトリウムイオンは、混合物から水酸化ナトリウムを蓄積している次のセルへの濃度勾配か電気的勾配に従う。セルの異なる部分は、系内の電位差を最小化するために、異なる濃度で動作していてもよい。とくに、先に述べたように、濃度勾配のみによって駆動可能な上流での炭酸塩からの水酸化物の分離を包含させることができる。どのユニットも酸性pHには達しないから、プロトン濃度は、どこにおいても、陰イオン性膜によって隔てられた区画の必要性がなくなるのに十分なだけ小さい。それゆえ、その系は、プロトン流を制御する必要のある従来の双極性膜に比してより単純である。これらのセルでは、負イオンは、それらがその中で生じたセルを離れない。この工程に先立って溶媒ブラインから炭酸ナトリウムを取り出すことの利点は、それによって、これらの膜を通過しなければならないナトリウムの量が減ることである。しかし、この処理の簡略版では、この第一工程を削除できる。
【0094】
酸によって運転されるCO発生装置の実施態様
酸を炭酸ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムと混合すると、COが活発に産生することになる。その酸が十分に強い場合、反応が、所望の圧力に保たれた容器の中に封じ込められていれば、プロセス全体が高圧のCOを産生することができる。かかる系の一つの可能性ある利用法は、配管系圧よりも高い圧力でCOを発生させて、その後の圧縮の必要性がなくなることである。
【0095】
かかる系の一つの可能な実施態様は、3つの小型貯蔵容器、一つは酸で満たされたもの、一つは重炭酸塩で満たされたもの、第三はその酸の塩(たとえばナトリウム塩)で満たされたもの、を想定する。重炭酸塩および酸は、それぞれの貯蔵容器から、2つの液体の混合を助長するような形状とした流路へ注入される。酸が弱く、それゆえ反応が遅ければ、積極的に撹拌される容器を採用することも可能である。速い反応器中では、混合流路が高い点まで延びていて、そこで気体が液体流から分離され、液体流はつぎに下方へ導かれて、再び塩溶液の貯蔵容器へ入る。酸および塩基の貯蔵容器中への注入器は、塩排出貯蔵容器に機械的に接続されている。出口で利用される力学的エネルギーは、注入ポンプを駆動するのにほぼ十分である。直接の機械的結合は、力学的に連結されたピストン変位ポンプに基づくものであってよい。小型タービンも同様に連結できるであろう。力学的連結のためには、多くの技術水準のアプローチがある。
【0096】
それに代えて、小型の系は、投入タンクおよび送出タンクがたとえば隔壁によって隔てられているバッチ操作で運転される。圧力を解除するとき、空の投入タンクの充填が、充満送出タンクの排出を余儀なくさせる。つぎに、系が周囲から圧力の上で隔離され、2種の流体が投入タンクから送出タンクへポンプ輸送されるとき、COが製出される。送出タンクが充満したならば、COラインのバルブが閉じられ、このサイクルが繰り返される。他の実施態様は、移動隔壁に実質的に置換わるピストンを使用できるであろう。
【0097】
塩流およびCO流の送出エネルギーを電力に変換することによって、電気的結合をもたらすことももちろん可能である。体積上の小さな不適合は、CO送出ラインから若干の圧力エネルギーを抜取ることによって埋合わせできよう。原則として、これが、系全体内での多くのポンプ輸送の必要性を満足させる実質的な力学的エネルギー源でありえよう。この能力を利用して、炭酸と系を駆動するために用いる酸との間の強度不釣合いを調整することができる。
【0098】
このようにして、上記酸生成が力学的エネルギー供給の便利な方法となり、そのエネルギーは排気二酸化炭素から取り去られるものである。
【0099】
送出流中への二酸化炭素の注入に先立ち、特定の用途または特定の処理手段においてそれに課されているいかなる要件にも適合するよう、二酸化炭素を精製し、乾燥する必要がある。
【0100】
熱変動CO発生器における水管理
重炭酸塩溶液を加熱する際、COは水蒸気を同伴するであろうが、それは凝縮除去する必要がある。多少の圧力のもとに溶液から出て行くCOは、水蒸気と混合されて貯蔵容器から流出するであろう。次の段階で、それは入来溶液を予熱するのに使用され、その過程でそれは水蒸気を凝縮分離する。集められた水は、重炭酸塩溶液と一緒にすべきではない。ブライン濃度の上昇は、溶液の圧力以上の高いCO分圧を上昇させるからである。
【0101】
上記の水は、工程6.2の電気化学的な酸/塩基分離において新しい重炭酸ナトリウムをつくるための投入原料を準備するに当って使用できる。
【0102】
石油産業におけるCO利用の機会が使い尽くされたので、隔離によってもたらされるCO「クレジット」について法規上の許可を導入する作業が進行中である。そうなれば、これらの「クレジット」は、多くの方法で利用される市場価値をもつであろう。一つの可能性は、地域の規制当局が、所望のレベルを実現できない乗り物の現行デザインの継続使用を許容する一方で、乗り物のマイレージを増加させる手段として、自動車の製造者および購入者に「クレジット証明書」を発行することであろう。
【0103】
従来の内燃機関技術(または炭化水素燃料に頼った進歩した推進システム)で自動車またはトラックを走らせることができ、同時に本プロセスによって大気からすでに十分なCOが除去されているからゼロエミッションの自動車であると主張できる時代を予想することは非現実的なことではない。これは、自動車またはトラックの購入価格に対して添えられる付属証明書として、あるいは運送産業に課される規制上の要求として、あるいは未だ規定されていないその他のなんらかの取決めとして、整備されるかもしれない。あるいは、社会的意識の強い人は、先行投資として、すなわち自動車購入の時点で、炭素を「買い占める」かもしれない。
【0104】
本発明は空気からCOを抽出する上でとくに有用であるが、本発明の空気スクラッバーは、異なる吸収剤物質を採用することによって、空気から他の気体を除去するために使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の好ましい一実施例に従って作成された空気スクラッバーユニットの斜視図である。
【図2】図1の空気スクラッバーユニットの上面図である。
【図3】図1の空気スクラッバーユニットの正面図、すなわち空気入口側の図である。
【図4】図1の空気スクラッバーユニットの側面立面図である。
【図5】本発明の他の一態様に従った炭酸塩/水酸化物溶液分離装置の図解図である。
【図6】本発明に従った炭酸塩/水酸化物溶液分離のための種々の処理および処理系の流れ図である。
【図7】本発明に従った炭酸塩/水酸化物溶液分離のための種々の処理および処理系の流れ図である。
【図8】本発明に従った炭酸塩/水酸化物溶液分離のための種々の処理および処理系の流れ図である。
【図9】本発明に従った炭酸塩/水酸化物溶液分離のための種々の処理および処理系の流れ図である。
【図10】本発明に従った炭酸塩/水酸化物溶液分離のための種々の処理および処理系の流れ図である。
【図11】本発明に従った炭酸塩/水酸化物溶液分離のための種々の処理および処理系の流れ図である。
【図12】本発明に従った炭酸塩/水酸化物溶液分離のための種々の処理および処理系の流れ図である。
【図13】本発明に従った炭酸塩/水酸化物溶液分離のための種々の処理および処理系の流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流が層流状態または層流に近い状態に保たれているところで、溶媒で覆われた表面を該空気流に曝露することからなる、空気から二酸化炭素を捕捉する方法。
【請求項2】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項1に記載の方法:
(a)該表面が平滑な平行プレートからなる;
(b)該表面は完全に平らとはいえないが、空気流の方向には平行な直線に追随している;
(c)該表面が波板、パイプ、チューブ、ハーモニカカバーに類似の角張った形材、またはそれらの任意の組合せからなり、空気流は依然直線に追随している;
(d)該表面が、表面間隔よりも小さい溝、くぼみ、隆起または他の小さい構造によって粗面化されており、それらの表面構造が空気流の層流境界内に十分に留まっている;
(e)該表面が、溝、くぼみ、隆起または他の小さい構造によって粗面化されており、これらの溝、くぼみ、隆起または他の小さい構造のまわりの流れのレイノルズ数が小さく、最適には0と100との間である;
(f)該表面がサンドブラストまたは他の類似の手段によって粗面化されている;
(g)該表面がエッチングまたは他の類似の手段によって粗面化されている;
(h)該表面が、鋼または他の水酸化物耐性金属から作られたプレート上にある;
(i)該表面がガラス製プレート上にある;
(j)該表面がプラスチック製の、好ましくはポリプロピレン製のプレート上にある;
(k)該表面が、プレートの親水性を高めるために被覆または処理されている。
【請求項3】
該表面が、ワイヤによって緊張状態に保持され、緊張状態のワイヤまたは金網によって支持されているフォイルまたは他の薄いフィルムである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項3に記載の方法:
(a)前部および背後の少数の支持ワイヤ以外のすべてのワイヤが風の流れの方向に平行に走っている;
(b)該フォイルまたはフィルムが、膜に構造上の剛性を付与しうる中実プレート、ハニカムまたは格子構造物であってよい剛性構造上に支持されている;
(c)該フィルムがプラスチックフォイルからなる;
(d)該フィルムが、表面の親水性を高めるために表面処理されたプラスチックフォイルからなる。
【請求項5】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項1に記載の方法:
(a)空気流の方向が水平である;
(b)該表面または表面の対称線が鉛直である;
(c)該液体溶媒流が、空気流の方向に対してほぼ直角である;
(d)表面間隔が約0.3cmから約3cmである;
(e)該表面の長さが空気流の方向に対してほぼ直角をなし、約0.30mから約10mである;
(f)空気流の速度が約0.1m/sから約10m/sである;
(g)該表面間の空気流の距離が約0.10mから約2mである;
(h)該液状溶媒が、該表面の上端へ噴霧によって適用される;
(i)該溶媒がプレートの両側に適用される;
(j)該溶媒が律動的に適用される;
(k)該液状溶媒が表面またはプレートの最下部で集められる;
(l)該液状溶媒が表面またはプレートの最下部で集められ、集められた流体は直接再生ユニットへ渡される;
(m)該液状溶媒が表面またはプレートの最下部で集められ、集められた流体はさらなるCO捕集のためにスクラッビングユニットの頂部へ再循環される;
(n)該表面と瞬間的な風の場との間の乖離による損失を最小限にするために、装置が空気流矯正機構を包含し、備えている;
(o)受動的または積極的に該表面を操縦して、それらが風の方向と同じ向きになるようにする機構を包含し、備えている。
【請求項6】
空気スクラッバーであって、
(a)該スクラッバーの前面での風の停滞;
(b)該スクラッバーへの入口および/または出口に対して実質的に直交する流れによって生み出された圧力降下;または
(c)熱対流によって生み出された圧力降下
からなる、自然の風の流れによって生み出された圧力降下を利用する層流風のためのスクラッバー。
【請求項7】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項6に記載のスクラッバー:
(a)該圧力降下が、冷却塔または中腹に沿っての熱対流によって生み出される;
(b)液状吸収剤によって少なくとも部分的に濡らされた複数のラメラを包含する;
(c)ラメラ間の間隔が、系が層流状態を変化させないように選択され、好ましくは約2−4mmである。
【請求項8】
該表面が回転ディスクであって、該ディスクの回転運動によって濡れが助長され、空気はその軸に対して直角に動いている請求項1に記載の方法。
【請求項9】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項8に記載の方法:
(a)該軸がほぼ水平であり、該ディスクがそれらの縁を該溶媒中に浸されており、それらの円を描く運動が該ディスク表面での該流体の分配を促進する;
(b)該ディスクが半径方向に配置された噴射装置のそばを動くときに該液がその上に噴霧される;
(c)該液体が、該軸の近傍で該ディスク上へ噴出される。
【請求項10】
該表面が円形または他の断面形状の同心チューブであり、空気がチューブの軸の方向に流れる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項10に記載の方法:
(a)該チューブが中心軸のまわりを回転する;
(b)該チューブが、ほぼ鉛直を向いた軸をもち、該溶媒が該チューブの該表面を流下するように適用される;
(c)該チューブが鉛直に対してある角度を向いた軸をもち、該溶媒が上部開口の単一点で挿入され、らせん運動しながら流下して、全表面を覆う。
【請求項12】
該溶媒が水酸化物溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項12に記載の方法:
(a)水酸化物濃度が0.1モルと20モルとの間である;
(b)水酸化物濃度が1モルと3モルとの間である;
(c)該溶液の濃度が3モルを超える;
(d)該溶液の濃度が、水の損失または増量を最小限にするように調節されている;
(e)該溶液の濃度が、それの蒸気圧が外界空気の蒸気圧に適合するまで自己調節することができる;
(f)該水酸化物が水酸化ナトリウムである:
(g)該水酸化物が水酸化カリウムである;
(h)該溶媒が、添加物または界面活性剤が添加されている水酸化物溶液である;
(i)該溶媒が、COと該溶液との反応速度を高める添加物または界面活性剤を含有する水酸化物溶液である;
(j)該溶媒が、該溶液の圧力以上に水の蒸気圧を低下させるべく添加物を含有する水酸化物溶液である;
(k)該溶媒が、該溶媒の粘度または他のレオロジー性状を変化させる添加物または界面活性剤を含有する水酸化物溶液である;
(l)該溶媒が、空気からCO以外の気体を洗浄除去するために該溶媒の吸収性を向上させる添加物または界面活性剤を含有する水酸化物溶液である。
【請求項14】
二酸化炭素が生成されたところから遠隔の場所で、吸収剤を用いて外界空気から二酸化炭素を抽出し、生じた炭素クレジットを第三者に販売し、第三者と物々交換し、または第三者に移譲することを包含する取引可能な炭素クレジットを生み出す方法。
【請求項15】
該二酸化炭素が請求項1の方法により外界空気から捕捉される請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該二酸化炭素が請求項6の装置により外界空気から捕捉される請求項14に記載の方法。
【請求項17】
自動車またはトラックの販売またはリースとともに、または自動車またはトラック用の燃料とともに、炭素クレジットが販売、物々交換または移譲される請求14に記載の方法。
【請求項18】
炭化水素燃料の製造者によって炭素クレジットが販売される請求項14に記載の方法。
【請求項19】
水酸化物/炭酸塩ブラインを水酸化物とCOとに分離する方法であって、該ブラインをまず濃縮して、炭酸塩の飽和点に近づけ;濃縮された水酸化物/炭酸塩ブラインをつぎに、該ブラインからの炭酸塩の温度変動による析出によって分離し;該炭酸塩を電気化学的に、第一の電気化学的処理工程において水酸化ナトリウム溶液と重炭酸ナトリウム溶液とに分離し;該重炭酸塩を酸と混合して二酸化炭素を放出させ、該酸を第二の電気化学的処理工程においてその塩から回収する前記方法。
【請求項20】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項19に記載の方法:
(a)該水酸化ナトリウム溶液および該重炭酸ナトリウム溶液を、双極性膜を用いての電気透析によって該ブラインから分離する;
(b)該第二の電気化学的処理が双極性膜を用いての電気透析からなる;
(c)該ブラインを初期濃縮なしに処理する;
(d)該炭酸塩の少なくとも若干を、該第二の電気化学的処理工程において該水酸化物から分離する;
(e)該ブラインがCOを放出する前に、酸を用いてそれを中和する;
(f)該ブラインがCOを放出する前に、酸注入を用いてそれを中和し、該酸注入は、該混合物を重炭酸塩の生成を助長するpHレベルに調整する第一の低圧ユニットおよびCOを産生する第二の高圧系において実施する;
(g)高圧COを提供すべく、COが耐圧容器中での電気化学的処理によって放出される;
(h)双極性膜を用いての電気透析からなる電気化学的処理において該COが放出される;
(i)カソードで水素を発生し、それを水素アノードで再び使用する電気化学的処理において該COが放出される;
(j)該炭酸塩が、最後の工程で該水酸化物から分離される;
(k)該水酸化物および該炭酸塩の全部または一部がCO放出工程で分離される。
【請求項21】
双極性の膜と陽イオン性の膜とが交互になった膜手段によってある体積を複数のセルにわけており、一つおきの室を流れる流体は濃水酸化物/炭酸塩ブラインであり、それらと交互の室では希NaOH溶液が流れ、ナトリウムイオンが該陽イオン性膜を横切って移動して、該双極性膜は電荷の中性を維持するために必要な水酸化物イオンおよびプロトンを提供する装置において、水酸化物/炭酸塩ブラインを部分的に水酸化物溶液および炭酸塩溶液に分離する方法。
【請求項22】
下記の特徴の一つまたは双方を含む請求項21に記載の方法:
(a)該セルが、同じタイプのブラインを含有する最初および最後のセルの間に液体連絡路を有するスタックとして配列されている;
(b)該セルが円錐曲線回転体形状に配列されている;
(c)該セルが2つの別々のセルからなるスタックとして配列されている。
【請求項23】
炭酸塩溶液から水酸化物溶液を分離する電気化学的処理を用い;第一の電気化学的処理工程において該炭酸塩を電気化学的に水酸化ナトリウム溶液と重炭酸ナトリウム溶液とに分離し;該重炭酸塩を酸と混合して二酸化炭素を放出させ;該酸を第二の電気化学的処理工程を通じてその塩から回収する、水酸化物/炭酸塩ブラインを水酸化物溶液とCOとに分離する方法。
【請求項24】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項21に記載の方法:
(a)該水酸化ナトリウム溶液および該重炭酸ナトリウム溶液を、双極性膜を用いての電気透析によって、該ブラインから分離する;
(b)該酸をその塩から回収する該電気化学的過程が双極性膜を用いる電気透析からなる;
(c)該ブラインを初期濃縮なしに処理する;
(d)該炭酸塩の少なくとも若干を、該第二の電気化学的処理工程において該水酸化物から分離する;
(e)該ブラインがCOを放出する前に、酸を用いてそれを中和する;
(f)該ブラインがCOを放出する前に、酸注入を用いてそれを中和し、該酸注入は、該混合物を、重炭酸塩の生成を助長するpHレベルに調整する第一の低圧ユニットおよびCOを産生する第二の高圧系において実施する;
(g)電気化学的処理によってCO放出を達成する;
(h)高圧COを提供すべく、該COが耐圧容器中での電気化学的処理によって放出される;
(i)双極性膜を用いての電気透析からなる電気化学的処理において該COが放出される;
(j)カソードで水素を発生し、それを水素アノードで再び使用する電気化学的処理において該COが放出される;
(k)該炭酸塩が、最後の工程で該水酸化物から分離される;
(l)該水酸化物および該炭酸塩の全部または一部がCO放出工程で分離される。
【請求項25】
該重炭酸ナトリウムを炭酸ナトリウムとCOとへの熱分解に付したのち、該炭酸ナトリウムを当該プロセスの初期段階へ再循環する請求項19に記載の方法。
【請求項26】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項25に記載の方法:
(a)該重炭酸塩溶液の含水量を、濃度勾配または電気化学的勾配(逆電気透析)による膜分離によって減少させ、温度変動沈殿において該濃縮されたブラインから重炭酸塩を抽出し、続いて該重炭酸塩を熱か焼してCOと炭酸塩とし、生じた希重炭酸塩流出流を再循環して該重炭酸塩溶液を別に脱水する;
(b)該重炭酸塩溶液をCOが放出されるまで加熱して、炭酸塩/重炭酸塩ブラインを生ぜしめ、これを電気化学的に再処理して重炭酸塩とする;
(c)該重炭酸塩溶液が耐圧容器内でCOを放出する;
(d)エネルギー消費を最小限にするために、熱工程の流入物および流出物の間の熱交換を包含する;
(e)生じた希薄な水の流れを、該ブライン類から隔離しておき、排水として処理する;
(f)希薄な水の流れを、空気接触器ユニットへの投入物中の構成水として用いる;
(g)該塩基イオンがナトリウムである;
(h)該塩基イオンがカリウムである;
(i)該塩基イオンがナトリウムとカリウムを含む混合物である;
(j)該塩基が有機塩基からなる。
【請求項27】
該重炭酸ナトリウムを熱分解に付して、炭酸ナトリウムとCOとにしたのち、該炭酸ナトリウムを当該プロセスの初期の段階へ再循環する請求項21に記載の方法。
【請求項28】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項27に記載の方法:
(a)該重炭酸塩溶液の含水量を、濃度勾配または電気化学的勾配(逆電気透析)による膜分離によって減少させ、温度変動沈殿において該濃縮されたブラインから重炭酸塩を抽出し、続いて該重炭酸塩を熱か焼してCOと炭酸塩とし、生じた希重炭酸塩流出流を再循環して該重炭酸塩溶液を別に脱水する;
(b)該重炭酸塩溶液をCOが放出されるまで加熱して、炭酸塩/重炭酸塩ブラインを生ぜしめ、これを電気化学的に再処理して重炭酸塩とする;
(c)該重炭酸塩溶液が耐圧容器内でCOを放出する;
(d)エネルギー消費を最小限にするために、熱工程の流入物および流出物の間の熱交換を包含する;
(e)生じた希薄な水の流れを、該ブライン類から隔離しておき、排水として処理する;
(f)希薄な水の流れを、空気接触器ユニットへの投入物中の構成水として用いる;
(g)該塩基イオンがナトリウムである;
(h)該塩基イオンがカリウムである;
(i)該塩基イオンがナトリウムとカリウムを含む混合物である;
(j)該塩基が有機塩基からなる。
【請求項29】
酸を保持する貯蔵容器、塩基を保持する貯蔵容器および生成物である塩を保持する貯蔵容器;酸貯蔵容器と塩基貯蔵容器との流体が連通するラインであって、混合を増進する構造をもつライン;加圧下のCOを出口圧力弁へ送る気体分離ユニットであって、該塩貯蔵容器に接続されたユニット;および酸および塩基をそれぞれ該酸貯蔵容器および塩基貯蔵容器に送るポンプに機械的に接続された該塩ブライン貯蔵容器からの出口ラインを組合せて包含する、酸と重炭酸塩との混合によってCOを発生させる装置。
【請求項30】
下記の特徴の一つ以上を含む請求項29に記載の方法:
(a)該COが、当該装置へのポンプ輸送用動力要求の大部分を提供する;
(b)CO出口弁への過剰圧を使用可能な動力に変換する装置をさらに包含する;
(c)過剰圧を、当該2つの投入ポンプへ向けられるか、または他のいずれかの場所で使用できる使用可能動力に変換する。
【請求項31】
3つの貯蔵容器、一つは酸を保持するためのもの、一つは塩基を保持するためのもの、一つは生成物の塩を保持するためのものを包含する、酸と重炭酸塩との混合によってCOを発生させる装置であって、該貯蔵容器は膜によって互いに隔てられており、該装置は新しい流体が外界圧力で装入され、該流体がCO産生の間に加圧されるバッチ方式で運転されるものである前記装置。
【請求項32】
アルカリ性炭酸塩ブラインを陽イオンおよび重炭酸塩に分離する装置であって、該装置はアノードおよびカソードを包含し、そこへ動力が送られると、該陽イオンが陽イオン性膜を横切って移動させられ、それによって初期ブラインを重炭酸塩に転化させ、一方、該ブラインは純水酸化物溶液として徐々に蓄積する前記装置。
【請求項33】
該陽イオンがナトリウムまたはカリウムであるか、もしくは溶液から析出しないイオンである請求項32に記載の装置。
【請求項34】
CO含有重炭酸塩ブラインからCOを分離する装置であって、双極性膜と交互の陰イオン性膜によって隔てられ、COを産生する酸性セル中で酸と混合される流れの中で重炭酸イオンを製出し、塩基性セル中に炭酸イオンで富化された残留ブラインを残すための、酸性セルおよび塩基性セルを有する貯蔵容器を包含する前記装置。
【請求項35】
該熱分解工程を請求項34に記載の電気化学的処理で置き換えた、請求項25に記載の通りの水酸化物ブラインから二酸化炭素を分離する方法。
【請求項36】
該CO産生ユニットがCOの濃厚な流れを送るために加圧される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
該熱分解工程を請求項36に記載の電気化学的処理で置き換えた、請求項27に記載の通りの水酸化物ブラインから二酸化炭素を分離する方法。
【請求項38】
該CO産生ユニットが濃厚な流れを送るために加圧される請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−510600(P2008−510600A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528098(P2007−528098)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/029979
【国際公開番号】WO2006/036396
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(507055040)グローバル リサーチ テクノロジーズ,エルエルシー (4)
【Fターム(参考)】