説明

空気供給システム及び空気供給方法

【課題】空気供給が行われる反応槽における亜酸化窒素ガス濃度を検出し、亜酸化窒素ガスの発生量を高精度に制御することのできる空気供給システム及び空気供給方法を提供すること。
【解決手段】この空気供給システムSは、好気性微生物を利用した下水処理を行うための反応槽2内に空気を供給する空気供給システムSであって、反応槽2から発生する亜酸化窒素ガスGの濃度を検出するガス濃度センサー6と、ガス濃度センサー6による濃度データD1の変化に基づき、反応槽2内に供給する空気Bの量を制御するコンピュータ5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気供給システム及び空気供給方法に係り、特に、好気性微生物を利用した下水処理における反応槽内に反応促進のための空気を供給する空気供給システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理においては、生活廃水、工場排水等の下水中に含まれるアンモニア性窒素の硝化のために、従来より好気性微生物を利用したいわゆる好気処理が行われている。この好気処理は、反応槽内の下水に硝化菌等の好気性微生物を投入し、又は下水中に元々存在する好気性微生物を利用して、酸素環境下で分解処理を行うものである。
【0003】
例えば、最初沈殿池で沈殿汚泥が除去された下水は反応槽に送られて反応槽内で好気処理される。その際、好気性微生物が酸素を利用してアンモニア性窒素を硝化し、増殖しつつ硝酸又は亜硝酸を作成する。増殖した好気性微生物はフロックを形成し、活性汚泥として反応槽内に滞留し、最終沈殿池で沈殿する。その活性汚泥の一部は、集められて除去され、汚泥焼却工程において焼却処理される。活性汚泥が除去された上澄水は、次の処理のために最終沈殿池へと送られる。
【0004】
この反応槽においては、硝化反応を促進するために、エアレーションがよく行われる。エアレーションは、反応槽内の下水中へ空気又は酸素を供給することにより行われ、それにより、下水の溶存酸素濃度を上昇させて好気性微生物の反応を促進する。
【0005】
一方、反応槽における好気処理において、亜酸化窒素ガス(NOガス、一酸化二窒素ガスとも言う。)が発生することが知られている。この亜酸化窒素ガスは温室効果ガスであり、その温室効果は二酸化炭素(CO)ガスの約310倍と非常に高い。したがって、反応槽での処理において、亜酸化窒素ガスの発生を抑制することが、地球環境保護の観点から急務とされている。
【0006】
例えば、特許文献1には、AOSBR(無酸素好気回分式活性汚泥法)において、亜酸化窒素ガスをモニタリングし、その発生終了を検知することにより硝化反応の終了を判定して、無酸素好気配分を決定する提案が開示されている。また、亜酸化窒素ガスの発生時間に基づき硝化反応の停滞・悪化を判断する提案も開示されている。これにより、亜酸化窒素ガスの有無やその発生時間に基づき、処理の良好/不良を検知することができて、最適なシステム運転に寄与するものとされている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−244949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示のものは、亜酸化窒素ガスの有無又はその発生時間に基づき処理の良好/不良を検知するものであり、亜酸化窒素ガスの濃度に基づき、亜酸化窒素ガスの発生量を細やかに制御する(減少させる)ものではない。また、特許文献1には、AOSBR以外の処理法(例えば、標準法)において、反応槽で発生する亜酸化窒素ガスを減少させる方法については開示されていない。
【0009】
したがって、例えば最初沈殿池、反応槽、最終沈殿池を有する一般的な標準法に基づく下水処理システムにおいて、空気供給によって好気処理が行われる反応槽での亜酸化窒素ガスの発生量を精度よく制御する提案が必要とされている。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、空気供給が行われる反応槽における亜酸化窒素ガス濃度を検出し、亜酸化窒素ガスの発生量を高精度に制御することのできる空気供給システム及び空気供給方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の例示的側面としての空気供給システムは、好気性微生物を利用した下水処理を行うための反応槽内に空気を供給する空気供給システムであって、反応槽から発生する亜酸化窒素ガスの濃度を検出する濃度検出手段と、濃度検出手段による検出濃度の変化に基づき、反応槽内に供給する空気量を制御する制御手段とを有する。
【0012】
反応槽から発生する亜酸化窒素ガスの濃度を検出し、その検出濃度の変化に基づき供給空気量を制御するので、反応槽からの亜酸化窒素ガスの発生量を細やかに制御することができ、亜酸化窒素ガスの発生量低減に寄与することができる。
【0013】
より詳細に説明すると、反応槽内に供給する空気量が適正量である場合には、好気性微生物による硝化反応が適正に行われるので、その結果、反応槽の亜酸化窒素ガスの発生量が少なく、そのガス濃度は低濃度となる。しかしながら、供給空気量が一定であっても、例えば、反応槽に流入する下水量(下水処理量)、撹拌の程度、温度、活性汚泥量等の外部要因によって、下水中の溶存酸素濃度が適正反応に対して相対的に過剰となったり不足となったりして、硝化反応が適正に行われなくなる場合がある。
【0014】
硝化反応が適正に行われないと、結果的に亜酸化窒素ガスの発生量が増加し、検出される亜酸化窒素ガス濃度も高濃度となる。したがって、濃度検出手段による検出濃度の変化(例えば、検出濃度の上昇)に基づいて、下水中の溶存酸素濃度を調整すべく反応槽内への供給空気量を制御すれば、再び硝化反応が適正反応へと向かい、亜酸化窒素ガスの発生量を減少させることができる。
【0015】
なお、硝化反応が適正に行われるとは、下水処理設備における処理目的に応じて設計通りの程度に硝化反応が進行することを言い、具体的には、硝化反応を充分に進行させてアンモニア性窒素の殆どを硝酸に変化させる場合と、硝化反応を殆ど進行させずに硝酸又は亜硝酸を殆ど生成しない場合とを含む。この硝化反応の適正化が行われた場合には、亜酸化窒素ガスの発生量が少ない。好気性微生物は、酸素呼吸によりアンモニア性窒素を硝酸又は亜硝酸に硝化するバクテリア(硝化菌)や、酸素を利用して有機物を分解する従属栄養細菌を含む。
【0016】
また、本発明に係る空気供給システムは、下水処理設備における反応槽に適用することができるが、その下水処理設備としては、未硝化型、硝酸型、亜硝酸型、硝化脱窒型等の種々の設備を包含することができる。また、下水処理設備は、下水が最初沈殿池から反応槽を経由して更に最終沈殿池へと送られるものや沈殿槽を兼ねた回分式反応槽を有するものを含む。反応槽内で好気処理のみを行う標準法に係るもの以外にも、反応槽内で嫌気処理や再曝気処理を行うことにより、脱窒処理を実現する高度処理法(AO法、A2O法、AOAO法等)に係るものも含む。いわゆる標準活性汚泥法、循環式硝化脱窒法、ステップ流入式AOAO法、ステップ流入式A2O法に係る処理設備も含む。
【0017】
反応槽への空気供給は、下水中に配置した多孔質のヘッドから空気を放出する散気装置によって行われる場合や、下水中への空気噴射と撹拌とを行うエアレータによって行われる場合を含む。また、反応槽内での硝化反応には酸素が必要であるので、空気供給の代わりに酸素供給を行ってもよい。
【0018】
濃度検出手段は、亜酸化窒素ガス濃度を検出可能な公知の濃度センサーを適用することができる。また、制御手段は、典型的にはコンピュータであるが、もちろん汎用のコンピュータであっても、本発明に係る制御アルゴリズムに基づいて動作指令を送出する専用コンピュータ(CPU)であってもよい。
【0019】
制御手段が、検出濃度の上昇に基づき空気量を減少させる制御を行ってもよい。
【0020】
下水処理設備には、反応槽内の滞留時間が比較的短い運転を行うもの(すなわち、未消化型)がある。この未硝化型の下水処理設備においては下水の硝化を目的とせず、下水に含まれる有機物の分解を目的とするいわゆる標準活性汚泥法による処理を目的としている。したがって、好気性微生物による有機物の分解が行われるが、アンモニア性窒素の硝化が余り行われないように、反応槽内における下水の滞留時間が短く(すなわち、下水の流量に対し反応槽が小さく)設計されている。このような処理設備においては、通常状態においては硝化反応が余り進まないので、反応槽からの亜酸化窒素ガスの発生は少ない。
【0021】
しかしながら、下水処理場において処理すべき下水量は常に一定とは限らず、一般的には時刻に応じて変動する。例えば夜中の時間帯において処理すべき下水量が少なくなると、下水流量が減少し、反応槽内での下水の滞留時間が長くなってしまう。そうすると、本来余り進行しないはずであった反応槽内における好気性微生物によるアンモニア性窒素の硝化反応が進行してしまい、以下の反応式に示すように、亜酸化窒素ガスが発生してしまう。
【0022】
【化1】

【0023】
しかしながら、この発明においては、亜酸化窒素ガス濃度の上昇に基づき、反応槽内に供給する空気量を減少させるので、下水の流量が小さい場合でも硝化反応の進行を減速又は停止させることができる。その結果、硝化反応が進まなくなり、亜酸化窒素ガスの発生量を減少させることができる。予期せず下水の滞留時間が長くなってしまっても、硝化反応の進行を予防して亜酸化窒素ガスの発生を抑制することができる。
【0024】
制御手段が、検出濃度の上昇に基づき空気量を増加させる制御を行ってもよい。
【0025】
下水処理設備には、反応槽内の滞留時間が比較的長い運転を行うもの(例えば、硝酸型、硝化脱窒型)がある。この硝酸型の下水処理設備においては、反応槽内において下水の硝化を行うことを目的としている。また、硝化脱窒型の下水処理設備においては、反応槽内において下水の硝化及び脱窒を行うことを目的としている。したがって、好気性微生物による硝化反応が充分に行われるように、反応槽内における下水の滞留時間が長く(すなわち、下水の流量に対し反応槽が大きく)設計されている。このような処理設備においては、通常状態においては硝化反応が略完全に進行するので、反応槽からの亜酸化窒素ガスの発生は少ない。
【0026】
しかしながら、例えば昼間の時間帯において処理すべき下水量が多くなると、下水流量が増加し、反応槽内での下水の滞留時間が短くなってしまう。そうすると、反応槽内における好気性微生物と溶存酸素との接触時間が短くなり、部分的に嫌気性の脱窒反応が生じて、結果としてアンモニア性窒素の硝化反応が不充分となってしまう。その結果、以下の反応式に示すように、亜酸化窒素ガスが発生してしまう。
【0027】
【化2】

【0028】
しかしながら、この発明においては、亜酸化窒素ガス濃度の上昇に基づき、反応槽内に供給する空気量を増加させるので、下水の流量が大きい場合でも好気性微生物と溶存酸素との接触時間を充分に長く確保することができる。その結果、硝化反応を促進して充分に進行させることができ、亜酸化窒素ガスの発生量を減少させることができる。予期せず下水の滞留時間が短くなってしまっても、硝化反応を充分に進行させて亜酸化窒素ガスの発生を抑制することができる。
【0029】
空気供給システムが、反応槽における下水の滞留時間を検知する滞留時間検知手段を更に有し、制御手段が、検知された滞留時間の変化及び検出濃度の変化に基づき、反応槽内に供給する空気量を制御してもよい。
【0030】
滞留時間検知手段が反応槽における下水の滞留時間を検知するので、その滞留時間の変化、すなわち滞留時間が増加傾向にあるか又は減少傾向にあるかを把握することができる。そして、その滞留時間の変化及び検出濃度の変化に基づき、反応槽内に供給する空気量を制御することにより、未硝化型の下水処理設備においても硝酸型や硝化脱窒型等の下水処理設備においても硝化反応を適正化して亜酸化窒素ガスの発生量を低減することができる。
【0031】
制御手段が、滞留時間の増加及び検出濃度の上昇に基づき空気量を減少させる制御を行うと共に、滞留時間の減少及び検出濃度の上昇に基づき空気量を増加させる制御を行ってもよい。
【0032】
滞留時間が増加した場合において検出濃度が上昇した場合は、その下水処理設備が滞留時間の短い運転を行っている設備、すなわち未硝化型の設備であると判断することができる。その判断に基づき、空気量を減少させる制御を行えば、硝化反応の進行を減速又は停止させて亜酸化窒素ガスの発生量を減少することができる。
【0033】
一方、滞留時間が減少した場合において検出濃度が上昇した場合は、その下水処理設備が滞留時間の長い運転を行っている設備、すなわち硝酸型、硝化脱窒型等の設備であると判断することができる。その判断に基づき、空気量を増加させる制御を行えば、硝化反応を促進して充分に進行させることができ、亜酸化窒素ガスの発生量を減少させることができる。
【0034】
下水処理設備における処理態様ごとに制御態様を変更する必要なく、複数の処理態様を自動的に判定して処理態様ごとに適切に供給空気量の制御を行うことができる。
【0035】
滞留時間検知手段が、反応槽における下水の流量を計測する流量計、又は流量を算出する流量算出手段を有して構成されてもよい。
【0036】
反応槽の容量は、特定の下水処理設備においては一定容量であるので、反応槽における下水の流量(すなわち、反応槽への下水の流入量又は反応槽からの下水の流出量)を検知すれば、その流量に基づいて反応槽内での下水の滞留時間を検知することができる。例えば、流量計を用いて滞留時間検知手段を構成すれば、本発明に係るシステムを簡単な構成で安価に構成することができる。
【0037】
なお、安定的な系においては、反応槽への下水の流入量と反応槽からの下水の流出量とは略同量であり、それが反応槽における下水の流量と略等価となる。また、例えば、ポンプによって下水を最初沈殿池へと送水し、その最初沈殿池から反応槽へと下水を送水するシステムにおいては、そのポンプによる送水量が、すなわち反応槽における流量と等価となる。
【0038】
例えば、流量計によって反応槽における下水の流量を検知する場合、反応槽の容量V、流量(流量計による計測値)Qとすれば、滞留時間Tは、流量算出手段によってT=V/Qとして算出することができる。流量算出手段は、例えば、CPUを有するコンピュータであってもよいし、上記のように特定の算出手順がプログラムとして記録され、流量計測値の入力に対して滞留時間を出力する制御装置であってもよい。
【0039】
なお、必ずしも滞留時間の絶対値が必要でなく、滞留時間の変化(増加又は減少)のみを検知すればよい場合においては、流量Qと滞留時間Tとが反比例の関係にあることから、特段流量算出手段による演算を必要としない。流量計の計測値のみに基づき滞留時間の変化を検知することもできる。
【0040】
一方、上記ポンプによって下水を最初沈殿池へ送水する場合において、ポンプの回転数及びH−Q曲線等に基づき、流量計を用いずに流量算出手段によって反応槽における流量を算出するように構成することもできる。この方法によれば、流量計を用いることなく下水の流量を、ひいてはその流量に基づく下水の滞留時間を検知することができるので、やはりシステムを簡単かつ安価とすることができる。
【0041】
空気供給システムが、反応槽における下水の硝化速度を検知する硝化速度検知手段を更に有し、制御手段が、検知された硝化速度の変化及び検出濃度の変化に基づき、反応槽内に供給する空気量を制御してもよい。
【0042】
硝化速度検知手段が反応槽における下水の硝化速度を検知するので、その硝化速度の変化、すなわち硝化速度が上昇(加速)傾向にあるか又は減少(減速)傾向にあるかを把握することができる。そして、その硝化速度の変化及び検出濃度の変化に基づき、反応槽内に供給する空気量を制御することにより、未硝化型の下水処理設備においても硝酸型や硝化脱窒型等の下水処理設備においても硝化反応を適正化して亜酸化窒素ガスの発生量を低減することができる。
【0043】
制御手段が、硝化速度の上昇及び検出濃度の上昇に基づき空気量を減少させる制御を行うと共に、硝化速度の減少及び検出濃度の上昇に基づき空気量を増加させる制御を行ってもよい。
【0044】
硝化速度が上昇した場合において検出濃度が上昇した場合は、その下水処理設備が滞留時間の短い運転を行っている設備、すなわち未硝化型の設備であると判断することができる。その判断に基づき、空気量を減少させる制御を行えば、硝化反応の進行を減速又は停止させて亜酸化窒素ガスの発生量を減少することができる。
【0045】
一方、硝化速度が減少した場合において検出濃度が上昇した場合は、その下水処理設備が滞留時間の長い運転を行っている設備、すなわち硝酸型、硝化脱窒型等の設備であると判断することができる。その判断に基づき、空気量を増加させる制御を行えば、硝化反応を促進して充分に進行させることができ、亜酸化窒素ガスの発生量を減少させることができる。
【0046】
下水処理設備における処理態様ごとに制御態様を変更する必要なく、複数の処理態様を自動的に判定して処理態様ごとに適切に供給空気量の制御を行うことができる。
【0047】
硝化速度検知手段が、反応槽内における下水による酸素摂取を計測する呼吸速度計を有して構成されてもよい。
【0048】
呼吸速度計を用いることにより、反応槽内での下水による酸素摂取を計測することができる。その酸素摂取の速度の変化は、反応槽内の好気性微生物による硝化反応の速度変化を略指標するので、呼吸速度計により硝化速度検知手段を構成することができる。したがって、本発明に係るシステムを簡単な構成で安価に構成することができる。なお、反応槽内のNH−N、NO−N又はNO−Nの濃度検出を行うことにより、硝化速度を検知することもできる。
【0049】
反応槽から発生する亜酸化窒素ガスを収集すべく反応槽の開口を覆う覆蓋部と、覆蓋部により収集された亜酸化窒素ガスを濃度検出手段へと導く導出手段とを有してもよい。
【0050】
覆蓋部が反応槽の開口を覆って亜酸化窒素ガスを収集し、それを導出手段が濃度検出手段へと導くので、反応槽から発生する亜酸化窒素ガスを殆ど漏らさずに濃度検出手段へと導くことができる。濃度検出手段による濃度検出の精度を向上させることができ、この空気供給システムによる亜酸化窒素ガス低減の効率を向上させることができる。
【0051】
本発明の他の例示的側面としての空気供給方法は、好気性微生物を利用した下水処理を行うための反応槽内に空気を供給する空気供給方法であって、反応槽から発生する亜酸化窒素ガスの濃度を検出するステップと、濃度検出手段による検出濃度の変化に基づき、反応槽内に供給する空気量を制御するステップとを有する。
【0052】
この空気供給方法によれば、上記の空気供給システムと同様の効果を得ることができる。すなわち、反応槽から発生する亜酸化窒素ガスの濃度を検出し、その検出濃度の変化に基づき供給空気量を制御するので、反応槽からの亜酸化窒素ガスの発生量を細やかに制御することができ、亜酸化窒素ガスの発生量低減に寄与することができる。
【0053】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、反応槽から発生する亜酸化窒素ガスの濃度を検出し、その検出濃度の変化に基づき供給空気量を制御するので、反応槽からの亜酸化窒素ガスの発生量を細やかに制御することができ、亜酸化窒素ガスの発生量を高精度に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
[実施の形態1]
<滞留時間の短い運転を行う下水処理場>
以下、本発明の実施の形態1に係る空気供給システムSについて図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る空気供給システムSが適用される下水処理設備Aの全体構成の概略を模式的に示す概略構成図である。この下水処理設備Aは、最初沈殿池1、反応槽2、最終沈殿池3を有して構成され、いわゆる標準活性汚泥法による未硝化型の下水処理を行うものであり、下水Wの滞留時間が比較的短く設定されている。
【0056】
最初沈殿池1は、その上流側の沈砂池において粒子の大きいゴミや砂等が除去された上澄みとしての下水Wが流入する沈殿池である。最初沈殿池1においては、下水Wを緩やかに流水させて、比較的粒子の小さいゴミ等を沈殿させる。そして、その粒子の小さいゴミ等が除去された上澄みとしての下水Wは、最初沈殿池1から下流側の反応槽2へと送られるようになっている。
【0057】
反応槽2は、最初沈殿池1から送られた下水Wに対し、好気性微生物による好気処理を行って浄水するためのものである。反応槽2内には、好気性微生物としての従属栄養細菌と独立栄養細菌(硝化菌)とが存在している。その従属栄養細菌は、酸素を消費しながら下水W中の有機物を分解しつつ増殖し、フロックを形成して反応槽2内を滞留し、最終沈殿池底部にて沈殿する。硝化菌も酸素を消費しつつ下水W中のアンモニア性窒素を硝化するが、硝化反応は有機物の分解に比較して進行が遅いので、反応槽2内での下水Wの滞留時間を短く設定することにより、硝化反応を殆ど進行させないようにすることができる。本実施の形態1に係る下水処理設備Aは、滞留時間を短く設定しており、有機物の分解を主目的とするが、硝化を目的としない処理設備である。
【0058】
反応槽2には、本発明の実施の形態1に係る空気供給システムSが適用されている。図2は、下水処理設備Aにおける反応槽2及びその周辺部分の概略を模式的に示す概略構成図である。この空気供給システムSは、散気装置4、コンピュータ(制御手段)5、ガス濃度センサー(濃度検出手段)6、覆蓋部7、ガイド管(導出手段)8を有して大略構成されている。
【0059】
散気装置4は、反応槽2内に設置されて下水W中に空気Bを放出するための装置である。例えば、空気ポンプ、多孔質部材、吸気管等を有して構成され、吸気管を介して空気ポンプにより大気を吸気し、多孔質部材から下水W中に放出するが、詳細については省略する。散気装置4は、コンピュータ5からの制御指令に基づき、供給する空気量を制御することができるようになっている。
【0060】
コンピュータ5は、散気装置4による放出空気量(供給空気量)を制御するためのものである。コンピュータ5は、散気装置4及びガス濃度センサー6に接続されており、ガス濃度センサー6からの濃度データD1に基づき散気装置4へ向けて供給空気量を制御するための制御指令D2を送出する機能を有する。例えば、コンピュータ5はCPU及び記憶装置を有して構成されている。その記憶装置内には空気供給プログラムが記憶されており、そのプログラムの機能に基づきコンピュータ5の主要部としてのCPUがガス濃度センサー6からの濃度データD1を受信する機能、濃度データD1に基づいて後述する亜酸化窒素ガスGの濃度変化を判定する機能、濃度変化の判定結果に応じて散気装置4に向けて制御指令D2を送信する機能を発揮するように構成されていてもよい。
【0061】
ガス濃度センサー6は、反応槽2から発生する亜酸化窒素ガスGのガス濃度を検出するためのものである。ここで、反応槽2から発生する亜酸化窒素ガスGのガス濃度とは、反応槽2内にて液相状態で発生した亜酸化窒素が気相へと相移動し、その結果反応槽2からガス状態で放出された亜酸化窒素ガスGの濃度を意味する。亜酸化窒素の相移動は、液相の亜酸化窒素濃度と供給する空気B中の亜酸化窒素ガス濃度との濃度差に起因して発生する。
【0062】
ガス濃度センサー6は、亜酸化窒素ガスGの濃度を常時又は継続的に監視し、その濃度データD1を常時又は継続的にコンピュータ5へと送信するようになっている。なお、反応槽2内での従属栄養細菌による有機物の分解反応では亜酸化窒素ガスGは発生しないが、反応槽2内での下水Wの滞留時間が長時間になるほど反応槽2内の硝化菌による硝化反応が進行してしまい、亜酸化窒素ガスGの発生量が増加し、ひいてはガス濃度センサー6による検出濃度が上昇する。
【0063】
覆蓋部7は、反応槽2の開口を覆って反応槽2からの亜酸化窒素ガスGを収集するための蓋部材である。覆蓋部7の一部にはガイド管8の一端が接続されており、このガイド管8の他端はガス濃度センサー6に接続されている。そして、覆蓋部7によって収集された亜酸化窒素ガスGを殆ど外部に漏出することなくガス濃度センサー6へと導くことができるようになっている。
【0064】
反応槽2において好気処理によって有機物の分解が行われて浄化された下水Wは、下流側の最終沈殿池3へと送られるようになっている。最終沈殿池3では、反応槽2で発生したフロックが沈殿する。その沈殿物は凝縮されて一部が余剰汚泥として焼却処理されたり、反応槽2へと返送されて好気性微生物源として利用される。上澄みとしての下水Wは、消毒やpH調整が行われて、河川や外海に放流される。
【0065】
次に、この空気供給システムSの動作について説明する。
【0066】
反応槽2から発生した亜酸化窒素ガスGの濃度がガス濃度センサー6によって検出されると、ガス濃度センサー6はコンピュータ5に向けて濃度データD1を送信する。コンピュータ5はガス濃度センサー6からの濃度データD1を常時又は継続的に受信し、その濃度変化を判定する。
【0067】
具体的には、反応槽2内の下水Wの滞留時間が長くなり硝化反応が進行すると、濃度データD1は上昇傾向となる。したがって、コンピュータ5は、濃度データD1が上昇傾向にあるか否かを判断し、上昇傾向にある場合に散気装置4に向けて供給空気量を減少させるための制御指令D2を送信する。制御指令D2を受信した散気装置4が供給空気量を減少させると、反応槽2内の硝化反応が減速又は停止する。そうすると、亜酸化窒素ガスGの発生量が減少し、ガス濃度センサー6による濃度データD1も減少傾向に転じる。濃度データD1の減少傾向を判定すると、コンピュータ5は供給空気量減少の制御指令D2の送信を停止し、例えば供給空気量を維持又は増加させる制御指令D2を散気装置4に向けて送信する。
【0068】
なお、濃度データD1に基づく制御指令D2の送信態様については、種々の態様が考えられる。例えば、予め濃度の上限値を定めておき、検出された濃度データD1が上限値を超えた場合に、供給空気量を所定量減少させる制御指令D2を送信する構成とすることもできる。その場合において、濃度データD1が予め設定された下限値未満となった場合に、供給空気量を所定量増加させる制御指令D2を送信することもできる。
【0069】
また、予め濃度の上昇速度(時間当たりの濃度の増大量)の基準値(基準速度)を定めておき、検出された濃度データD1による濃度上昇速度が基準速度を超えた場合に、供給空気量を所定量減少させる制御指令D2を送信する構成とすることもできる。その場合において、検出された濃度データD1による濃度減少速度が予め設定された基準減速度未満となった場合に、供給空気量を所定量増加させる制御指令D2を送信することもできる。
【0070】
濃度データD1の増分に応じて(例えば、比例するように)、供給空気量の減少量を設定するように制御指令D2を送信する構成とすることもできる。すなわち、濃度データD1の上昇が小さい場合には供給空気量の減少程度も小さく、濃度データD1の上昇が大きい場合には供給空気量の減少程度も大きくなるように設定することができる。もちろん、この場合には、濃度データD1の減少分に応じて、供給空気量の増加量を設定するように制御指令D2が送信される。
【0071】
[実施の形態2]
<滞留時間の長い運転を行う下水処理場>
本発明の実施の形態2に係る空気供給システムSについて説明する。この空気供給システムS及びそれが適用される下水処理設備Aの構成は、大略において上記実施の形態1において説明したものと同様であるので、図1及び図2を用いて同様の符号に基づき説明する。この下水処理設備Aは、いわゆる標準活性汚泥法による硝酸型の下水処理を行うものであり、下水Wの滞留時間を比較的長く設定することにより、反応槽2内で積極的に硝化菌による硝化反応を進行させるものである。
【0072】
反応槽2内には、従属栄養細菌と共に独立栄養細菌としての硝化菌が存在する。そして、従属栄養細菌が下水W中の有機物を分解すると共に硝化菌が下水W中のアンモニア性窒素を硝化する。反応槽2内での下水Wの滞留時間が長いので硝化反応が充分に進行する。この処理状態においては、反応槽2からの亜酸化窒素ガスGの発生は硝化反応に伴うもののみである。
【0073】
しかし、処理下水量の増加等の外部要因により、反応槽2内の滞留時間が短縮されると、散気装置4からの供給空気Bと下水W内の硝化菌との接触時間を充分に確保することが難しくなる。その結果、供給酸素量が不足し、硝化反応が充分に進行することができなくなり、下水W中の一部で無酸素による嫌気反応(脱窒反応)が発生する。この脱窒反応によって亜酸化窒素ガスGが生成され、ガス濃度センサー6による検出濃度が上昇する。
【0074】
したがって、本実施の形態2に係る空気供給システムSにおいては、コンピュータ5が、ガス濃度センサー6による亜酸化窒素ガスGの検出濃度上昇に応じて、供給空気量を増加させる制御指令D2を散気装置4へ向けて送信する。供給空気量が増加すると、供給空気Bに起因する溶存酸素と硝化菌との接触時間を充分確保することができるようになり、硝化反応が促進されて充分に進行し、亜酸化窒素ガスGの発生を減少させることができる。
【0075】
例えば、この空気供給システムSにおいては、反応槽2から発生した亜酸化窒素ガスGの濃度がガス濃度センサー6によって検出されると、ガス濃度センサー6はコンピュータ5に向けて濃度データD1を送信する。コンピュータ5はガス濃度センサー6からの濃度データD1を常時又は継続的に受信し、その濃度変化を判定する。
【0076】
具体的には、反応槽2内の下水Wの滞留時間が短くなり硝化反応が充分に進行しなくなると、濃度データD1は上昇傾向となる。したがって、コンピュータ5は、濃度データD1が上昇傾向にあるか否かを判断し、上昇傾向にある場合に散気装置4に向けて供給空気量を増加させるための制御指令D2を送信する。制御指令D2を受信した散気装置4が供給空気量を増加させると、反応槽2内の硝化反応が送信されて充分に進行する。そうすると、亜酸化窒素ガスGの発生量が減少し、ガス濃度センサー6による濃度データD1も減少傾向に転じる。濃度データD1の減少傾向を判定すると、コンピュータ5は供給空気量増加の制御指令D2の送信を停止し、例えば供給空気量を維持又は減少させる制御指令D2を散気装置4に向けて送信する。
【0077】
[実施の形態3]
図3は、本発明の実施の形態3に係る空気供給システムS3の概略構成を模式的に示す概略構成図である。この空気供給システムS3は、散気装置4、コンピュータ(制御手段)5、ガス濃度センサー(濃度検出手段)6、覆蓋部7、ガイド管(導出手段)8に加え、流量計(滞留時間検知手段)9を有して構成されている。
【0078】
その流量計9は、最初沈殿池1から反応槽2へと至る流路の途中に配置されており、反応槽2へ流入する下水Wの流量が計測できるようになっている。そして、流量計9とコンピュータ5とが接続されており、流量計9による流量データD3がコンピュータ5へと送信できるようになっている。
【0079】
また、ポンプ(図示せず)によって下水Wを最初沈殿池1へと送水する場合において、そのポンプの回転数、H−Q曲線に基づいて反応槽2への流量を算出することもできる。
【0080】
反応槽2の容量は一定であるので、流量計9により下水Wの流量が計測できれば、下水Wの反応槽2内における滞留時間を大略算出することができる。例えば、下水Wの流量Q、反応槽の容量をVとすると、反応槽2内の下水Wの滞留時間Tは、T=V/Qとなり、流量Qと滞留時間Tとは、反比例の関係となる。
【0081】
この空気供給システムS3は、滞留時間T及びガス濃度センサー6による検出濃度の双方の情報に基づいて反応槽2内への供給空気量を制御する。すなわち、表1に示すように、滞留時間Tが増加している場合においてガス濃度センサー6による検出濃度が上昇している場合には、下水処理設備が未硝化型であると判断することができ、亜酸化窒素ガスの発生量を減少させるために供給空気量を減少させる制御を行う。一方、滞留時間Tが減少している場合においてガス濃度センサー6による検出濃度が上昇している場合には、下水処理設備が硝酸型であると判断することができ、亜酸化窒素ガスの発生量を減少させるために供給空気量を増加させる制御を行う。
【0082】
【表1】

【0083】
具体的には、この空気供給システムS3は、図4に示すフローチャートに基づく動作を行う。
【0084】
反応槽2から発生した亜酸化窒素ガスGの濃度がガス濃度センサー6によって検出されると、ガス濃度センサー6はコンピュータ5に向けて濃度データD1を送信する(S.1)。そして、反応槽2へと流入する下水Wの流量が流量計9によって計測されると、流量計9はコンピュータ5に向けて流量データD3を送信する(S.2)。コンピュータ5は濃度データD1及び流量データD3を常時又は継続的に受信する。
【0085】
コンピュータ5は、流量データD3が減少傾向にあるか否かを判定する(S.3)。そして、流量データD3が減少傾向(滞留時間Tの増加傾向)にあると判定した場合に(S.3:Y)、更に濃度データD1が上昇傾向にあるか否かを判定する(S.4)。濃度データD1が上昇傾向にあると判定した場合は(S.4:Y)、下水処理設備の処理態様が未硝化型であると判断し(S.5)、散気装置4に向けて供給空気量を減少させる制御指令D2を送信する(S.6)。なお、流量データD3が減少傾向にあることと、滞留時間Tが増加傾向にあることとは同義であり、流量データD3が増加傾向にあることと、滞留時間Tが減少傾向にあることとは同義である。また、供給空気量の減少の程度は、流量データD3の減少量や減少速度、濃度データD1の増加量や増加速度に基づいて設定されてもよい。一方、流量データD3が減少傾向にあると判定した場合において(S.3:Y)、濃度データD1が減少傾向にある場合には(S.4:N)、下水処理設備が硝酸型であるとの判断となる(S.7)。
【0086】
コンピュータ5が、流量データD3が増加傾向(滞留時間Tの減少傾向)にあると判定した場合に(S.3:N)、更に濃度データD1が上昇傾向にあると判定した場合には(S.8:Y)、下水処理設備の処理態様が硝酸型であると判断し(S.9)、散気装置4に向けて供給空気量を増加させる制御指令D2を送信する(S.10)。一方、流量データD3が増加傾向(滞留時間Tの減少傾向)にあると判定した場合において(S.3:N)、更に濃度データD1が減少傾向にあると判定した場合には(S.8:N)、下水処理設備の処理態様が未硝化型であるとの判断となる(S.11)。
【0087】
[実施の形態4]
図5は、本発明の実施の形態4に係る空気供給システムS4の概略構成を模式的に示す概略構成図である。この空気供給システムS3は、散気装置4、コンピュータ(制御手段)5、ガス濃度センサー(濃度検出手段)6、覆蓋部7、ガイド管(導出手段)8に加え、呼吸速度計(硝化速度検知手段)10を有して構成されている。
【0088】
その呼吸速度計10は、反応槽2内に配置されており、反応槽2内での酸素摂取量若しくは酸素摂取速度又はその両方が計測できるようになっている。そして、呼吸速度計10とコンピュータ5とが接続されており、呼吸速度計10による計測データD4がコンピュータ5へと送信できるようになっている。
【0089】
この酸素摂取量は、反応槽2内での硝化菌の活動を指標する。すなわち、硝化菌による硝化反応が促進されれば酸素消費量が上昇し、呼吸速度計10による計測データD4の数値も上昇する。逆に、硝化菌による硝化反応が減速すれば酸素消費量が減少し、呼吸速度計10による計測データD4の数値も減少する。したがって、計測データD4は硝化速度を指標するデータであり、本願においては、硝化速度上昇と計測データD4の上昇、硝化速度減少と計測データD4の減少を各々同義に取り扱う。
【0090】
この空気供給システムS4は、硝化速度及びガス濃度センサー6による検出濃度の双方の情報に基づいて反応槽2内への供給空気量を制御する。すなわち、表2に示すように、硝化速度が上昇している場合においてガス濃度センサー6による検出濃度が上昇している場合には、下水処理設備が未硝化型であると判断することができ、亜酸化窒素ガスの発生量を減少させるために供給空気量を減少させる制御を行う。一方、硝化速度が減少している場合においてガス濃度センサー6による検出濃度が上昇している場合には、下水処理設備が硝酸型であると判断することができ、亜酸化窒素ガスの発生量を減少させるために供給空気量を増加させる制御を行う。
【0091】
【表2】

【0092】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態1に係る空気供給システムが適用される下水処理設備の全体構成の概略を模式的に示す概略構成図である。
【図2】図1に示す下水処理設備における反応槽及びその周辺部分の概略を模式的に示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係る空気供給システムの概略構成を模式的に示す概略構成図である。
【図4】図3に示す空気供給システムの動作を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態4に係る空気供給システムの概略構成を模式的に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0094】
A:下水処理設備
B:空気(供給空気)
D1:濃度データ
D2:制御指令
D3:流量データ
D4:計測データ
G:亜酸化窒素ガス
Q:流量
S,S3,S4:空気供給システム
T:滞留時間
V:容量
W:下水
1:最初沈殿池
2:反応槽
3:最終沈殿池
4:散気装置
5:コンピュータ(制御手段)
6:ガス濃度センサー(濃度検出手段)
7:覆蓋部
8:ガイド管(導出手段)
9:流量計(滞留時間検知手段)
10:呼吸速度計(硝化速度検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気性微生物を利用した下水処理を行うための反応槽内に空気を供給する空気供給システムであって、
前記反応槽から発生する亜酸化窒素ガスの濃度を検出する濃度検出手段と、
該濃度検出手段による検出濃度の変化に基づき、前記反応槽内に供給する前記空気量を制御する制御手段と、を有する空気供給システム。
【請求項2】
前記制御手段が、前記検出濃度の上昇に基づき前記空気量を減少させる制御を行う請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項3】
前記制御手段が、前記検出濃度の上昇に基づき前記空気量を増加させる制御を行う請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項4】
前記反応槽における下水の滞留時間を検知する滞留時間検知手段を更に有し、
前記制御手段が、該検知された滞留時間の変化及び前記検出濃度の変化に基づき、前記反応槽内に供給する前記空気量を制御する請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項5】
前記制御手段が、前記滞留時間の増加及び前記検出濃度の上昇に基づき前記空気量を減少させる制御を行うと共に、前記滞留時間の減少及び前記検出濃度の上昇に基づき前記空気量を増加させる制御を行う請求項4に記載の空気供給システム。
【請求項6】
前記滞留時間検知手段が、前記反応槽における前記下水の流量を計測する流量計、又は該流量を算出する流量算出手段を有して構成される請求項4又は請求項5に記載の空気供給システム。
【請求項7】
前記反応槽における下水の硝化速度を検知する硝化速度検知手段を更に有し、
前記制御手段が、該検知された硝化速度の変化及び前記検出濃度の変化に基づき、前記反応槽内に供給する前記空気量を制御する請求項1に記載の空気供給システム。
【請求項8】
前記制御手段が、前記硝化速度の上昇及び前記検出濃度の上昇に基づき前記空気量を減少させる制御を行うと共に、前記硝化速度の減少及び前記検出濃度の上昇に基づき前記空気量を増加させる制御を行う請求項7に記載の空気供給システム。
【請求項9】
前記硝化速度検知手段が、前記反応槽内における前記下水による酸素摂取を計測する呼吸速度計を有して構成される請求項7又は請求項8に記載の空気供給システム。
【請求項10】
前記反応槽から発生する前記亜酸化窒素ガスを収集すべく前記反応槽の開口を覆う覆蓋部と、
該覆蓋部により収集された前記亜酸化窒素ガスを前記濃度検出手段へと導く導出手段と、を有する請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載の空気供給システム。
【請求項11】
好気性微生物を利用した下水処理を行うための反応槽内に空気を供給する空気供給方法であって、
前記反応槽から発生する亜酸化窒素ガスの濃度を検出するステップと、
該濃度検出手段による検出濃度の変化に基づき、前記反応槽内に供給する前記空気量を制御するステップと、を有する空気供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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