説明

空気供給装置

【課題】エアーポンプの吐出能力を変えることなく、エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力を目標値(第1設定値)に調整することが可能な空気供給装置を提供すること。
【解決手段】空気供給装置Aは、車輪Bの回転に基づいてエアーチャンバー(車輪Bのタイヤ空気室Ra)に加圧空気を供給可能なエアーポンプ20と、このエアーポンプ20のポンプ室Ro外に設けられて同ポンプ室Roから前記エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力が第1設定値に達するとポンプ室Roから前記エアーチャンバーへの加圧空気の供給を制限するチェンジバルブ30と、前記第1設定値を調整可能な調整装置40を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気供給装置、特に、車輪の回転に基づいて車輪のタイヤ空気室または同タイヤ空気室に加圧空気を供給可能なアキュムレータの蓄圧室等のエアーチャンバーに加圧空気を供給可能な空気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の空気供給装置は、例えば、下記特許文献1に示されていて、この特許文献1に記載されている空気供給装置は、車輪の回転に基づいて車輪のタイヤ空気室に加圧空気を供給可能なエアーポンプを備えるとともに、タイヤ空気室の最大空気圧(目標空気圧)を調整可能な調整ネジを備えている。
【特許文献1】特開2003−341320号公報
【0003】
ところで、上記した特許文献1に記載されている空気供給装置においては、調整ネジがエアーポンプにおけるピストンの最大移動量を調整可能に設けられていて、エアーポンプでの圧縮比を調整ネジにより調整することによって、タイヤ空気室の最大空気圧(目標空気圧)を調整するように構成されている。このため、タイヤ空気室の最大空気圧(目標空気圧)の調整に伴って、エアーポンプの吐出能力が変化してしまう。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、上記した問題に対処すべくなされたものであり、空気供給装置が、車輪の回転に基づいてエアーチャンバーに加圧空気を供給可能なエアーポンプと、このエアーポンプのポンプ室外に設けられて同ポンプ室から前記エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力が第1設定値に達すると前記ポンプ室から前記エアーチャンバーへの加圧空気の供給を制限する制限手段と、前記第1設定値を調整可能な調整手段を備える構成としたことに特徴がある。
【0005】
この空気供給装置においては、エアーポンプのポンプ室からエアーチャンバーへの加圧空気の供給を制限する制限手段がエアーポンプのポンプ室外に設けられており、また制限手段がエアーポンプのポンプ室からエアーチャンバーへの加圧空気の供給を制限するタイミング(第1設定値)を調整手段によって調整可能である。このため、調整手段によって上記したタイミング(第1設定値)を調整しても、エアーポンプの吐出能力は変化しない。したがって、エアーポンプの吐出能力を変えることなく、エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力を目標値(第1設定値)に調整することが可能である。
【0006】
また、本発明の実施に際して、前記制限手段は、前記ポンプ室から前記エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力が第1設定値未満であるとき、前記ポンプ室から大気への空気流れを規制しかつ前記ポンプ室から前記エアーチャンバーへの空気流れを許容し、前記ポンプ室から前記エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力が第1設定値以上であるとき、前記ポンプ室と大気間での空気流れを許容しかつ前記ポンプ室と前記エアーチャンバー間での空気流れを規制するチェンジバルブであることも可能である。
【0007】
この場合には、エアーポンプのポンプ室からエアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力が第1設定値以上であるとき、チェンジバルブがポンプ室と大気間での空気流れを許容するため、エアーポンプの駆動に要する負荷を軽減することが可能である。
【0008】
また、この場合において、前記チェンジバルブは、前記ポンプ室と前記エアーチャンバーに連通する通路に移動可能に組付けられて移動位置に応じて空気流れを制御する弁体と、この弁体に可動側端部にて係合して同弁体の移動位置を制御可能で前記弁体への付勢力を前記調整手段によって調整可能なスプリングを備えていることも可能である。また、前記調整手段は、前記スプリングの固定側端部(前記弁体の移動時に移動しない端部)を支持するスプリングサポートと、このスプリングサポートの位置を調整可能なネジ機構を備えていることも可能である。
【0009】
この場合において、前記ネジ機構は、進退可能な調整ネジを備えていて、この調整ネジは前記スプリングサポートと別体で構成されていることも可能である。この場合には、調整ネジをスプリングサポートに対して回転可能とすることができて、調整ネジの回転が、スプリングサポートによって固定側端部を支持されているスプリングに、伝達されないようにすることが可能である。
【0010】
また、前記調整手段は、前記スプリングサポートの位置を微調整可能な変速機構を備えていることも可能である。この場合には、スプリングサポートの位置を容易に微調整することができて、調整手段による調整精度を向上させることが可能である。
【0011】
また、本発明の実施に際して、前記ポンプ室から前記エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力が前記第1設定値より高い第2設定値以上のときに大気に逃がすリリーフバルブを設けることも可能である。この場合には、エアーチャンバー内の圧力が高くなり過ぎることを防ぐことが可能である。
【0012】
この場合において、前記リリーフバルブは、前記チェンジバルブが前記ポンプ室と大気間での空気流れを許容しかつ前記ポンプ室と前記エアーチャンバー間での空気流れを規制する状態でのみ作動可能となるように設定されていることも可能である。この場合には、リリーフバルブの無用な作動を防ぐことが可能である。
【0013】
また、この場合において、前記リリーフバルブは前記チェンジバルブの内部に配置されていることも可能である。この場合には、当該空気供給装置のコンパクト化を図ることが可能である。また、前記調整手段は、前記第1設定値と前記第2設定値を同時に調整可能として実施することも可能である。この場合において、前記チェンジバルブの構成部材であるスプリングの固定側端部を支持するスプリングサポートと前記リリーフバルブの構成部材であるスプリングの固定側端部を支持するスプリングサポートを一体化することも可能である。これらの場合には、調整手段によって第1設定値と第2設定値を同時に調整することができて、調整作業の簡素化を図ることが可能である。
【0014】
また、本発明の実施に際して、前記ネジ機構による前記スプリングサポートの位置調整を電気信号に変換する検出手段を設けることも可能である。この場合において、前記検出手段は前記スプリングサポートの位置を検出するストロークセンサであることも可能である。これらの場合には、スプリングサポートの位置を精度よく検出することが可能である。また、前記ストロークセンサは前記スプリングサポートを可動部とするセンサであることも可能である。この場合には、ストロークセンサをシンプルに構成することが可能である。
【0015】
また、本発明の実施に際して、前記調整手段は電動アクチュエータを備えていて、この電動アクチュエータの作動は電気制御装置によって制御可能であることも可能である。この場合には、電動アクチュエータを作動させることにより、上記した設定値を調整できるため、遠隔操作による調整作業が可能である。
【0016】
また、本発明の実施に際して、前記エアーポンプ、前記制限手段および前記調整手段は、前記車輪とともに回転する回転軸に対して同軸的に配置されていることも可能である。この場合において、前記制限手段は、前記エアーポンプと前記調整手段間に配置されていることも可能である。この場合には、制限手段での気密性を容易に確保することが可能である。また、この場合において、前記調整手段は、最も車両外側に配置されていることも可能である。この場合には、調整手段を容易に操作することが可能であり、メンテナンス性が向上する。
【0017】
また、この場合において、前記エアーポンプ、前記制限手段および前記調整手段は、前記車輪とともに回転するハブに組付けられていて、このハブの車両内側端には駆動車軸がトルク伝達可能に連結されていることも可能である。この場合には、車輪を支持して車輪とともに回転するハブに、当該空気供給装置をコンパクトに組み込むことが可能であり、ハブを有効に活用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1および図2は本発明による空気供給装置Aを、車輪Bとともに回転するハブ11に組付けた実施形態を示していて、ハブ11の車両内側端には駆動車軸12がスプライン嵌合されていてトルク伝達可能に連結されている。なお、ハブ11と駆動車軸12の連結は、ロックナット13によって固定されている。
【0019】
空気供給装置Aは、ハブ11の軸部(回転軸)11aに同軸的に配置したエアーポンプ20、チェンジバルブ30および調整装置40を備えるとともに、チェンジバルブ30の内部に同軸的に配置したリリーフバルブ50を備えている。エアーポンプ20は、エアーポンプ20、チェンジバルブ30および調整装置40の中で、最も車両内側に配置されている。チェンジバルブ30は、エアーポンプ20と調整装置40間に配置されている。調整装置40は、エアーポンプ20、チェンジバルブ30および調整装置40の中で、最も車両外側に配置されている。
【0020】
エアーポンプ20は、車輪Bの回転に基づいて車輪Bのタイヤ空気室Raに加圧空気を供給可能であり、回転不能な円筒部材21と、ハブ11の軸部11aに形成した回転可能なシリンダ22と、往復動体としてのピストン23を備えるとともに、カム部材24と一対のカムフォロア25を備えている。
【0021】
円筒部材21は、支持部材(図示省略)に回転不能に支持されるものであり、その内部にはシリンダ(ハブ)22が一対の軸受Br1とBr2と一対の環状シール部材26,27を介して車輪Bの回転中心回りに回転可能かつ液密的に支持されている。一対の軸受Br1とBr2は、軸方向に所定量離れて配置されていて、カム部材24を軸方向にて挟むようにして円筒部材21とシリンダ22間に介装されており、シリンダ22を円筒部材21に対して回転可能としている。一対の環状シール部材26,27は、軸方向に所定量離れて配置されていて、カム部材24と両軸受Br1とBr2を軸方向にて挟むようにして円筒部材21とシリンダ22間に介装されており、円筒部材21とシリンダ22間を液密的にシールしている。
【0022】
シリンダ22は、シリンダ本体22Aと、このシリンダ本体22Aの車両外側端部に気密的に螺着されたシリンダヘッド22Bによって構成されていて、シリンダ本体22Aには、一対の軸方向長孔22aと、軸方向に延びるシリンダ内孔22bが形成されており、シリンダヘッド22Bには、吸入兼吐出通路22cと連通路22dとリリーフ通路22eが形成されている。一対の軸方向長孔22aは、ピストン23と各カムフォロア25をシリンダ22と一体回転可能かつ軸方向に往復動可能にガイドするガイド手段であり、シリンダ22の周方向にて180度の間隔で形成されている。
【0023】
シリンダ内孔22bは、ピストン23を収容していて、ピストン23とによりポンプ室Roを形成している。吸入兼吐出通路22cは、チェンジバルブ30の弁体31に設けた連通路31aに常時連通していて、チェンジバルブ30の弁体31に組付けた吸入チェック弁Viを通してポンプ室Roに空気を導入可能であるとともに、チェンジバルブ30の弁体31に組付けた吐出チェック弁Voを通してポンプ室Roから空気を導出可能である。
【0024】
連通路22dは、チェンジバルブ30の弁体31に設けた大気連通路31bに常時連通していて、チェンジバルブ30の弁体31に設けた連通路31aに対しては連通・遮断可能である。リリーフ通路22eは、リリーフバルブ50によって大気に対して開放・遮断可能であるとともに、チェンジバルブ30の弁体31に組付けたシール部材33によってハブ11に設けた吐出通路11bに対して連通・遮断可能である。
【0025】
ピストン23は、シリンダ22のシリンダ内孔22bに一対の環状シール部材28,29を介して挿入されていて、シリンダ22に対して一体回転可能かつ軸方向に往復動可能に組付けられている。また、ピストン23には、環状溝23aと径方向に延びる貫通孔23bが形成されている。一対の環状シール部材28,29は、軸方向に所定量離れて配置されていて、ピストン23の軸方向端部にてピストン23とシリンダ22間に介装されており、ピストン23とシリンダ22間を気密的かつ液密的にシールしている。
【0026】
環状溝23aは、一対の環状シール部材28,29間にてピストン23の外周に形成されていて、シリンダ22間に環状空間R1を形成している。この環状空間R1は、シリンダ22の各軸方向長孔22aを通して、一対の環状シール部材26,27間に形成された環状空間R2に連通している。各環状空間R1,R2は、ピストン23が軸方向に往復動しても容積が変化しないものであり、4個のシール部材26,27,28,29によって密封されている。また、環状空間R1,R2等は、所要量の潤滑油を収容するオイル室であって、このオイル室には、軸受Br1,Br2、カム部材24、カムフォロア25および圧縮コイルスプリングSp等が収容されている。
【0027】
カム部材24は、軸方向にて連接した一対のカムスリーブ24A,24Bによって構成されていて、円筒部材21に一体的に(軸方向に移動不能かつ回転不能に)設けられており、シリンダ22に対して同軸的に配置されている。また、カム部材24は、環状で軸方向に変動のあるカム部24aを有していて、同カム部24aはカム溝であり、各カムフォロア25のボール25cが係合している。カム部24aは、各カムフォロア25のボール25cから軸方向の荷重(図示左右方向の荷重)と径方向の荷重(図示上下方向の荷重)を受けるカム面を有していて、このカム面は断面形状がV字形状であり、シリンダ22の周方向にて偶数周期(例えば、2周期)で形成されている。
【0028】
各カムフォロア25は、ピストン23内にて二分割されたシャフト25aと、これら各シャフト25aに組付けられたローラー25bおよびボール25cによって構成されていて、シャフト25aにてピストン23の貫通孔23bにピストン23の径方向へ移動可能に設けられている。また、各カムフォロア25は、径方向に延出する端部、すなわち、ボール25cにてカム部材24のカム部(カム溝)24aに係合していて、カム部材24に対して相対回転することにより軸方向に移動する。
【0029】
各シャフト25aは、ピストン23の貫通孔23bにピストン23の径方向(貫通孔23bの軸方向)にて移動可能に組付けられた荷重伝達子であり、その内部に介装した圧縮コイルスプリングSpによってピストン23の径外方に付勢されている。また、各シャフト25aは、ローラー25bを回転可能に支持する支持体であって、ピストン23の貫通孔23bから突出する小径端部にてローラー25bを回転可能に支持している。
【0030】
各ローラー25bは、シャフト25aの小径端部に回転可能に嵌合された状態にてシリンダ22の軸方向長孔22aに転動可能に嵌合されていて、カムフォロア25の軸方向移動に伴ってシリンダ22の軸方向長孔22aに沿って転がることが可能である。また、各ローラー25bは、外端に半球凹状の受承部を有していて、この受承部にてボール25cを転動可能に支持している。
【0031】
各ボール25cは、ローラー25bに転動可能に支持されてカム部材24のカム部(カム溝)24aに対して転動可能に係合するカムフォロア25の凸部であり、シャフト25aとローラー25bを介して圧縮コイルスプリングSpの弾撥力を受けてカム部材24のカム部(カム溝)24aに隙間なく弾撥的に係合している。
【0032】
圧縮コイルスプリングSpは、各カムフォロア25のボール25cをカム部材24のカム部(カム溝)24aに向けてピストン23の径方向に押圧する押圧手段であって、各カムフォロア25のシャフト25aに設けた有底の取付孔に所定の予備荷重を付与した状態で組付けられている。
【0033】
このエアーポンプ20においては、チェンジバルブ30の弁体31が図示位置に保持されている状態でシリンダ(ハブ11)22が回転すると、ピストン23とカムフォロア25がシリンダ22と一体的に回転してカム部材24に対して相対回転し軸方向に移動する。このため、シリンダ22の回転運動をピストン23の往復動に変換可能であり、ピストン23の往復動によりポンプ室Roの容積を増大・減少させることができて、吸入チェック弁Viと吸入兼吐出通路22cを通して空気をポンプ室Roに吸入し、ポンプ室Roから吸入兼吐出通路22cと吐出チェック弁Voを通して空気を吐出することが可能である。
【0034】
チェンジバルブ30は、エアーポンプ20のポンプ室Ro外に設けられて同ポンプ室Roからタイヤ空気室Raに供給される加圧空気の圧力が第1設定値P1に達するとポンプ室Roからタイヤ空気室Raへの加圧空気の供給を制限する制限手段であり、ハブ11とシリンダヘッド22B間に形成されてポンプ室Roとタイヤ空気室Raに連通する通路Paに移動可能に組付けられて移動位置に応じて空気流れを制御する弁体31と、この弁体31に一端部(弁体31が軸方向に移動するときに移動する可動側端部)にて係合していて弁体31の移動タイミングと移動位置を制御可能で弁体31への付勢力を調整装置40によって調整可能な圧縮コイルスプリング32を備えている。
【0035】
弁体31は、上述した連通路31aと大気連通路31bを有していて、吸入チェック弁Viが組付けられるとともに吐出チェック弁Voが組付けられている。また、弁体31に環状のシール部材33,34,35,36が組付けられるとともに、ハブ11に螺着固定したスリーブ(ストッパ)37の内端部内周に環状のシール部材38が組付けられていて、ポンプ室Roからタイヤ空気室Raに供給される加圧空気の圧力が、ハブ11の吐出通路11bから弁体31の大径端部外周(車両内側端部外周)に作用するとともに弁体31の段部(車両外側端部に形成した段部)に作用して、弁体31が圧縮コイルスプリング32の付勢力に抗して移動可能に構成されている。なお、大気連通路31bは、調整装置40の調整ネジ42に形成した大気連通路42bを通して常時大気に連通している。
【0036】
このチェンジバルブ30においては、ポンプ室Roからタイヤ空気室Raに供給される加圧空気の圧力が第1設定値P1未満であるとき、弁体31が図示位置に保持されていて、吸入チェック弁Viが大気からポンプ室Roへの空気流れを許容し、かつ吐出チェック弁Voがポンプ室Roからタイヤ空気室Raへの空気流れを許容した状態で、吸入チェック弁Viが吸入兼吐出通路22cおよび連通路31aと連通路22d間の連通を遮断してポンプ室Roから大気への空気流れを規制し、かつ吐出チェック弁Voがタイヤ空気室Raからポンプ室Roへの空気流れを規制する。
【0037】
また、このチェンジバルブ30においては、ポンプ室Roからタイヤ空気室Raに供給される加圧空気の圧力が第1設定値P1以上であるとき、弁体31が圧縮コイルスプリング32の付勢力に抗して図示位置から所定量軸方向に移動していて、吸入チェック弁Viがその機能(逆流阻止機能)を消失しており、吸入兼吐出通路22cおよび連通路31aが連通路22dに連通してポンプ室Roと大気間での空気流れを許容し、かつ吐出チェック弁Voが吐出通路11bと連通路31a間、すなわち、ポンプ室Roとタイヤ空気室Ra間での空気流れを規制する。なお、弁体31が圧縮コイルスプリング32の付勢力に抗して図示位置から所定量移動した状態では、弁体31の段部がスリーブ37に組付けた環状のシール部材38に当接している。
【0038】
調整装置40は、チェンジバルブ30における圧縮コイルスプリング32の他端部(弁体31の移動時に移動しない固定側端部)を支持するスプリングサポート41と、このスプリングサポート41の位置を調整可能な調整ネジ42を備えている。スプリングサポート41は、その位置を電気信号に変換して検出するストロークセンサSaの可動部であり、半球状の凸部41aにて調整ネジ42に回転可能に係合している。
【0039】
調整ネジ42は、スプリングサポート41とは別体で構成されていて、雄ネジ部42aと大気連通路42bを有しており、雄ネジ部42aにてハブ11の雌ネジ部11cに進退可能に螺着されている。また、調整ネジ42は、キャップを兼ねていて、車両外方から回転操作可能であり、外側端部には手動で操作可能な調整工具(図示省略)を脱着可能に取付けるための六角孔42cが形成されている。なお、大気連通路42bには、フィルタ43が装着されている。
【0040】
リリーフバルブ50は、ポンプ室Roからタイヤ空気室Raに供給される加圧空気の圧力すなわち吐出通路11b内の圧力が第1設定値P1より高い第2設定値P2以上のときに、加圧空気を大気に逃がすためのものであり、リリーフ通路22eを開放・遮断可能な弁体51と、この弁体51に一端部(可動側端部)にて係合していて同弁体51の移動タイミング(リリーフ通路22eの開放タイミング)を規定する圧縮コイルスプリング52を備えている。
【0041】
弁体51は、シリンダヘッド22Bにスリーブ39(チェンジバルブ30の弁体31とともに移動可能である)を介して軸方向に移動可能に組付けられていて、ストロークセンサSaのロッド部45(ストロークセンサSaの可動部に対して殆ど抵抗なく軸方向に相対移動可能な固定部)と当接している。圧縮コイルスプリング52は、他端部(固定側端部)にて上述したスプリングサポート41と一体のスプリングサポート44に係合していて、弁体51に作用する付勢力を調整装置40によって調整可能である。この調整装置40による調整時には、チェンジバルブ30の弁体31に作用する圧縮コイルスプリング32の付勢力も同時に調整され、上記した第1設定値P1と第2設定値P2が同時に調整可能である。
【0042】
このリリーフバルブ50においては、吐出通路11b内の圧力が第1設定値P1以上となって、チェンジバルブ30がポンプ室Roと大気間での空気流れを許容しかつポンプ室Roとタイヤ空気室Ra間での空気流れを規制する状態となり、吐出通路11bとリリーフ通路22eがシール部材33を通して連通するようになった状態でのみ、リリーフ通路22eに吐出通路11b内の圧力が付与されて、リリーフバルブ50が作動可能となるように設定されている。
【0043】
上記のように構成したこの実施形態の空気供給装置Aにおいては、エアーポンプ20のポンプ室Roからタイヤ空気室Raへの加圧空気の供給を制限するチェンジバルブ30がエアーポンプ20のポンプ室Ro外に設けられており、またチェンジバルブ30がエアーポンプ20のポンプ室Roからタイヤ空気室Raへの加圧空気の供給を制限するタイミング(第1設定値P1)を調整装置40によって調整可能である。このため、調整装置40によって上記したタイミング(第1設定値P1)を調整しても、エアーポンプ20の吐出能力は変化しない。したがって、エアーポンプ20の吐出能力を変えることなく、タイヤ空気室Raに供給される加圧空気の圧力を目標値(第1設定値P1)に調整することが可能である。
【0044】
また、チェンジバルブ30は、ポンプ室Roからタイヤ空気室Raに供給される加圧空気の圧力が第1設定値P1未満であるとき、ポンプ室Roから大気への空気流れを規制しかつポンプ室Roからタイヤ空気室Raへの空気流れを許容し、ポンプ室Roからタイヤ空気室Raに供給される加圧空気の圧力が第1設定値P1以上であるとき、ポンプ室Roと大気間での空気流れを許容しかつポンプ室Roとタイヤ空気室Ra間での空気流れを規制する。
【0045】
このように、エアーポンプ20のポンプ室Roからタイヤ空気室Raに供給される加圧空気の圧力が第1設定値P1以上であるとき、チェンジバルブ30がポンプ室Roと大気間での空気流れを許容するため、エアーポンプ20の駆動に要する負荷を軽減することが可能である。
【0046】
また、チェンジバルブ30が弁体31と圧縮コイルスプリング32を備え、調整装置40が圧縮コイルスプリング32の他端部(固定側端部)を支持するスプリングサポート41と、このスプリングサポート41の位置を調整可能な調整ネジ42を備えていて、調整ネジ42はスプリングサポート41と別体で構成されている。このため、調整ネジ42をスプリングサポート41に対して回転可能とすることができて、調整ネジ42の回転が、スプリングサポート41によって支持されている圧縮コイルスプリング32に、伝達されないようにすることが可能である。
【0047】
また、この実施形態においては、吐出通路11bの圧力が第1設定値P1より高い第2設定値P2以上のときに加圧空気を大気に逃がすリリーフバルブ50が設けられている。このため、吐出通路11bの圧力すなわちタイヤ空気室Ra内の圧力が高くなり過ぎることを防ぐことが可能である。また、リリーフバルブ50は、チェンジバルブ30がポンプ室Roと大気間での空気流れを許容しかつポンプ室Roと吐出通路11b間での空気流れを規制する状態でのみ作動可能となるように設定されている。このため、リリーフバルブ50の無用な作動を防ぐことが可能である。また、リリーフバルブ50はチェンジバルブ30の内部に配置されている。このため、当該空気供給装置Aのコンパクト化を図ることが可能である。
【0048】
また、この実施形態においては、チェンジバルブ30の圧縮コイルスプリング32を支持するスプリングサポート41とリリーフバルブ50の圧縮コイルスプリング52を支持するスプリングサポート44が一体化されている。このため、調整装置40によって第1設定値P1と第2設定値P2(圧縮コイルスプリング32の付勢力と圧縮コイルスプリング52の付勢力)を同時に調整することができて、調整作業の簡素化を図ることが可能である。
【0049】
また、この実施形態においては、スプリングサポート41,44の位置調整を電気信号に変換してスプリングサポート41,44の位置を検出するストロークセンサSaが設けられている。このため、スプリングサポート41,44の位置を精度よく検出することが可能である。また、ストロークセンサSaはスプリングサポート41,44を可動部とするセンサであるため、ストロークセンサSaをシンプルに構成することが可能である。
【0050】
また、この実施形態においては、エアーポンプ20、チェンジバルブ30および調整装置40が車輪Bとともに回転するハブ11(回転軸)に対して同軸的に配置されていて、チェンジバルブ30は、エアーポンプ20と調整装置40間に配置されている。このため、チェンジバルブ30での気密性を容易に確保することが可能である。また、調整装置40が、エアーポンプ20、チェンジバルブ30および調整装置40の中で、最も車両外側に配置されているため、調整装置40を容易に操作することが可能であり、メンテナンス性が向上する。
【0051】
また、この実施形態においては、エアーポンプ20、チェンジバルブ30および調整装置40が車輪Bとともに回転するハブ11に組付けられていて、このハブ11の車両内側端には駆動車軸がトルク伝達可能に連結されている。このため、車輪Bを支持して車輪Bとともに回転するハブ11に、当該空気供給装置Aをコンパクトに組み込むことが可能であり、ハブ11を有効に活用することが可能である。
【0052】
上記した実施形態においては、調整ネジ42の六角孔42cに脱着可能で手動にて操作可能な調整工具(図示省略)により調整ネジ42を軸方向に移動させるように構成して実施したが、図3に示した変形実施形態のように、減速機付の電気モータ49(電動アクチュエータの一例)により調整ネジ42を軸方向に移動させるように構成して実施する(電気モータ49も調整装置40の構成部材として実施する)ことも可能である。
【0053】
電気モータ49は、電気制御装置ECUによって正逆回転を制御されるように構成されている。電気制御装置ECUは、タイヤ空気室Ra内の圧力を検出するセンサS1に接続されるとともに、運転席に設けられて運転者が任意にタイヤ空気圧を設定可能なタイヤ空気圧設定器S2と運転者が任意にON・OFF操作可能なスイッチS3に接続されている。この電気制御装置ECUでは、タイヤ空気室Ra内の圧力がタイヤ空気圧設定器S2にて設定されている場合には、その設定値にタイヤ空気圧が調整されるように電気モータ49の作動を制御するように構成され、また、タイヤ空気室Ra内の圧力がタイヤ空気圧設定器S2にて設定されていない場合には、スイッチS3のON・OFF操作に応じて電気モータ49の作動を制御するように構成されている。
【0054】
この場合には、電気モータ49を作動させることにより、上記した設定値(第1設定値P1と第2設定値P2)を調整できるため、遠隔操作による調整作業が可能である。また、電気モータ49が減速機付であるため、スプリングサポート41,44の位置を微調整可能であり、スプリングサポート41,44の位置を容易に微調整することができて、調整装置40による調整精度を向上させることが可能である。
【0055】
上記した各実施形態においては、エアーポンプ20からタイヤ空気室Raに加圧空気が直接に供給されるように構成して実施したが、例えば、エアーポンプからアキュムレータの蓄圧室(エアーチャンバー)に加圧空気が供給されて蓄えられ、アキュムレータに蓄えられた加圧空気が制御弁(タイヤ空気圧に応じて制御されるもの)を介してタイヤ空気室に供給されるように構成して実施することも可能である。
【0056】
また、上記した各実施形態においては、吸入チェック弁Viと吐出チェック弁Voをチェンジバルブ30の弁体31に組付けて実施したが、吸入チェック弁Viと吐出チェック弁Voをチェンジバルブ30とは別個に設けて、本発明を実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による空気供給装置の一実施形態を示した断面図である。
【図2】図1に示した空気供給装置の全体を示した断面図である。
【図3】本発明による空気供給装置の他の実施形態を示した要部断面図である。
【符号の説明】
【0058】
11…ハブ、12…駆動車軸、20…エアーポンプ、30…チェンジバルブ、31…弁体、32…圧縮コイルスプリング、40…調整装置、41,44…スプリングサポート、42…調整ネジ、50…リリーフバルブ、A…空気供給装置、Vi…吸入チェック弁、Vo…吐出チェック弁、Ro…ポンプ室、B…車輪、Ra…タイヤ空気室(エアーチャンバー)、Sa…ストロークセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転に基づいてエアーチャンバーに加圧空気を供給可能なエアーポンプと、このエアーポンプのポンプ室外に設けられて同ポンプ室から前記エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力が第1設定値に達すると前記ポンプ室から前記エアーチャンバーへの加圧空気の供給を制限する制限手段と、前記第1設定値を調整可能な調整手段を備えている空気供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気供給装置において、前記制限手段は、前記ポンプ室から前記エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力が第1設定値未満であるとき、前記ポンプ室から大気への空気流れを規制しかつ前記ポンプ室から前記エアーチャンバーへの空気流れを許容し、前記ポンプ室から前記エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力が第1設定値以上であるとき、前記ポンプ室と大気間での空気流れを許容しかつ前記ポンプ室と前記エアーチャンバー間での空気流れを規制するチェンジバルブであることを特徴とする空気供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の空気供給装置において、前記チェンジバルブは、前記ポンプ室と前記エアーチャンバーに連通する通路に移動可能に組付けられて移動位置に応じて空気流れを制御する弁体と、この弁体に可動側端部にて係合して同弁体の移動位置を制御可能で前記弁体への付勢力を前記調整手段によって調整可能なスプリングを備えていることを特徴とする空気供給装置。
【請求項4】
請求項3に記載の空気供給装置において、前記調整手段は、前記スプリングの固定側端部を支持するスプリングサポートと、このスプリングサポートの位置を調整可能なネジ機構を備えていることを特徴とする空気供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載の空気供給装置において、前記ネジ機構は、進退可能な調整ネジを備えていて、この調整ネジは前記スプリングサポートと別体で構成されていることを特徴とする空気供給装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の空気供給装置において、前記調整手段は前記スプリングサポートの位置を微調整可能な変速機構を備えていることを特徴とする空気供給装置。
【請求項7】
請求項2乃至6の何れか一項に記載の空気供給装置において、前記ポンプ室から前記エアーチャンバーに供給される加圧空気の圧力が前記第1設定値より高い第2設定値以上のときに大気に逃がすリリーフバルブを設けたことを特徴とする空気供給装置。
【請求項8】
請求項7に記載の空気供給装置において、前記リリーフバルブは、前記チェンジバルブが前記ポンプ室と大気間での空気流れを許容しかつ前記ポンプ室と前記エアーチャンバー間での空気流れを規制する状態でのみ作動可能となるように設定されていることを特徴とする空気供給装置。
【請求項9】
請求項8に記載の空気供給装置において、前記リリーフバルブは前記チェンジバルブの内部に配置されていることを特徴とする空気供給装置。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れか一項に記載の空気供給装置において、前記調整手段は、前記第1設定値と前記第2設定値を同時に調整可能であることを特徴とする空気供給装置。
【請求項11】
請求項10に記載の空気供給装置において、前記チェンジバルブの構成部材であるスプリングの固定側端部を支持するスプリングサポートと前記リリーフバルブの構成部材であるスプリングの固定側端部を支持するスプリングサポートは一体化されていることを特徴とする空気供給装置。
【請求項12】
請求項4に記載の空気供給装置において、前記ネジ機構による前記スプリングサポートの位置調整を電気信号に変換する検出手段を設けたことを特徴とする空気供給装置。
【請求項13】
請求項12に記載の空気供給装置において、前記検出手段は前記スプリングサポートの位置を検出するストロークセンサであることを特徴とする空気供給装置。
【請求項14】
請求項13に記載の空気供給装置において、前記ストロークセンサは前記スプリングサポートを可動部とするセンサであることを特徴とする空気供給装置。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか一項に記載の空気供給装置において、前記調整手段は電動アクチュエータを備えていて、この電動アクチュエータの作動は電気制御装置によって制御可能であることを特徴とする空気供給装置。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか一項に記載の空気供給装置において、前記エアーポンプ、前記制限手段および前記調整手段は、前記車輪とともに回転する回転軸に対して同軸的に配置されていることを特徴とする空気供給装置。
【請求項17】
請求項16に記載の空気供給装置において、前記制限手段は、前記エアーポンプと前記調整手段間に配置されていることを特徴とする空気供給装置。
【請求項18】
請求項16に記載の空気供給装置において、前記調整手段は、最も車両外側に配置されていることを特徴とする空気供給装置。
【請求項19】
請求項16乃至18の何れか一項に記載の空気供給装置において、前記エアーポンプ、前記制限手段および前記調整手段は、前記車輪とともに回転するハブに組付けられていて、このハブの車両内側端には駆動車軸がトルク伝達可能に連結されていることを特徴とする空気供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−176356(P2007−176356A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377994(P2005−377994)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】