説明

空気入りタイヤ及びその製造方法

【課題】製造が容易で確実に空洞共鳴音の低減を図ることのできる空気入りタイヤ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤ内面に複数種類の短繊維10が接着剤にて固着されて設けられていることを特徴とする空気入りタイヤ、並びに、タイヤ内面に接着剤を塗布する工程と、前記接着剤を塗布した部位に複数種類の短繊維10を接着させる工程とを有することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法である。前記複数種類の短繊維10は、複数種類の長さの短繊維からなることも、複数種類の材質の短繊維からなることも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ及び該空気入りタイヤの製造方法に関し、特には、空洞共鳴音を低減させるためにタイヤ内面に無数の短繊維を立設させた低騒音タイヤ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、その構造上、タイヤ内部の円管長さに起因する空洞共鳴現象を有することが知られている。そして、いずれの空気入りタイヤにおいても、その空洞共鳴周波数は200〜270Hzの範囲の複数の周波数からなり、不快な車室内騒音の一因となっている。
【0003】
上記の通り、車室内騒音の発生要因がタイヤ内部の空気の共鳴であることから、従来の改良手法としては、タイヤ内部で吸音させる方法が有効であり、例えば、特開2004−82387号公報に記載されているように、タイヤ内面に短繊維を接着する手法等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−82387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2004−82387号公報に開示のような従来の手法は、一種類の短繊維を使用しており、ここで、短繊維による吸音特性は、主として使用する短繊維の種類により決定されるため、一種類の短繊維を使用した場合は、効果が現れる周波数の範囲が狭く、必ずしも十分な吸音効果が得られないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、製造が容易で確実に空洞共鳴音の低減を図ることのできる空気入りタイヤ及び該空気入りタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、空気入りタイヤの内面に複数種類の短繊維を接着剤にて固着して設けることにより、広範囲の周波数の空洞共鳴音を低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ内面に複数種類の短繊維が接着剤にて固着されて設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の空気入りタイヤの好適例においては、前記複数種類の短繊維が複数種類の長さの短繊維からなる。
【0010】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記複数種類の短繊維が複数種類の材質の短繊維からなる。ここで、該複数種類の材質の短繊維は、それぞれ比重が異なることが好ましい。
【0011】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記複数種類の短繊維は、最も短い短繊維の平均長さが0.5〜3mmであり、最も長い短繊維の平均長さが該最も短い短繊維の平均長さの1.5〜3.3倍であることが好ましい。
ここで、本発明における短繊維の平均長さとは、短繊維の長さを横軸、本数を縦軸としたグラフにプロットしたとき、複数のピークを有する場合はピークとなる長さのことである。
これは、ある一定の長さの短繊維群を製造し、異なる長さの短繊維群を混合した場合を想定している。製造上の誤差等から、短繊維の長さを横軸・本数を縦軸としたグラフはピークを複数持つ分布となる。このピークが各々の短繊維群のピークとなり、最も長いピークと最も短いピークを上記平均長さの比較に用いればよい。
また、本発明は、上記グラフの分布がピークを複数有するものに限られず、ランダムな分布でもよい。この場合は横軸を長さ/縦軸を数としたグラフにプロットし、全繊維の平均長さを測定し、その平均長さ以下の部分と以上の部分に分けて、各々の部分の平均長さを比較すればよい。
【0012】
本発明の空気入りタイヤにおいて、前記複数種類の短繊維の本数構成比率は、最も短い短繊維が全体の30〜60%であることが好ましく、また、最も含有量が少ない短繊維が全体の30〜50%であることも好ましい。
なお、ここでいう本数構成比率・含有量は、ある一定の長さの短繊維群を製造し、異なる長さの短繊維群を混合した場合に、各短繊維群の中で最も短い短繊維群・もっとも含有量の少ない短繊維群の本数構成比率・含有量(重量)を比較すればよい。
【0013】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記複数種類の短繊維は、平均長さが0.5〜10mmである。
【0014】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例において、前記複数種類の短繊維がタイヤ内面に固着されている領域の面積は、タイヤ内面の面積の25%以上である。また、本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記複数種類の短繊維がタイヤ内面に固着されている領域において、前記複数種類の短繊維が1平方センチメートル当たり100本以上設けられている。
【0015】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、前記複数種類の短繊維は、平均直径が1〜500μmである。
【0016】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記複数種類の短繊維の固着されている領域が複数の短繊維群からなり、該複数の短繊維群が互いに独立して固着されていることが好ましい。
【0017】
本発明の空気入りタイヤの他の好適例においては、エチレン−ビニルアルコール共重合体にエポキシ化合物を反応させて得られる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるインナーライナーを具える。
【0018】
また、本発明の空気入りタイヤの製造方法は、
タイヤ内面に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を塗布した部位に複数種類の短繊維を接着させる工程と
を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の空気入りタイヤの製造方法の好適例においては、静電植毛加工により前記複数種類の短繊維をタイヤ内面に設ける。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タイヤ内面に複数種類の短繊維が接着剤にて固着して設けられており、製造が容易で確実に空洞共鳴音の低減を図ることが可能な空気入りタイヤを提供することができる。また、かかる空気入りタイヤの簡便な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一実施態様の右半分の断面図である。
【図2】実施例1、実施例2、比較例1、参照例1のタイヤにおける測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図を参照しながら本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の空気入りタイヤの一実施態様の右半分の断面図である。図1に示す空気入りタイヤは、一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なるトレッド部3とを有し、上記一対のビード部1間にトロイド状に延在してこれら各部1,2,3を補強する一枚のカーカスプライからなるカーカス4と、該カーカス4のタイヤ半径方向外側に配置された二枚のベルト層からなるベルト5と、該ベルト5のタイヤ半径方向外側に配置された一層のベルト補強層6と、前記ビード部1内に夫々埋設したリング状のビードコア7のタイヤ半径方向外側に配置されたビードフィラー8と、上記カーカス4のタイヤ内面側に配置したインナーライナー9とを具える。
【0023】
図示例のカーカス4は、一枚のカーカスプライから構成され、また、一対のビードコア7間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア7の周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明の空気入りタイヤにおいて、カーカス4のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。また、図示例の空気入りタイヤにおいては、カーカス本体部とカーカス折り返し部との間にビードフィラー8が配置されている。
【0024】
また、図示例の空気入りタイヤにおいては、上記カーカス4のクラウン部のタイヤ半径方向外側には二枚のベルト層からなるベルト5が配置されており、該ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるスチールコードのゴム引き層からなり、2枚のベルト層は、該ベルト層を構成するスチールコードが互いにタイヤ赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト5を構成する。なお、図中のベルト5は、二枚のベルト層からなるが、本発明の空気入りタイヤにおいては、ベルト5を構成するベルト層の枚数は、3枚以上であってもよい。また、図示例の空気入りタイヤにおいては、一層のベルト補強層6が、ベルト5のタイヤ半径方向外側に配置されているが、本発明の空気入りタイヤは、ベルト補強層6を具えていなくてもよく、また、ベルト補強層6の枚数は、2枚以上であってもよい。
【0025】
ここで、図1に示す空気入りタイヤにおいては、タイヤ内面、即ち、インナーライナー9のタイヤ内面側に複数種類の短繊維10が接着剤にて固着されて設けられていることを要する。本発明の空気入りタイヤにおいては、タイヤ内面に複数種類の短繊維が接着剤にて固着されて設けられているので、タイヤをリムに装着したときに形成される空気室内面に対してこれらの短繊維が設けられることになる。そして、タイヤ内面に固着された短繊維は、空洞共鳴音を吸音するので、該短繊維により空洞共鳴現象に起因する騒音を低減することができる。また、本発明の空気入りタイヤにおいては、複数種類の短繊維が使用されているので、単一種類の短繊維を使用した場合よりも、吸音効果の発現する周波数範囲が広がり、より大きな騒音低減効果を得ることができる。
ここで「複数種類」とは、例えば、材質・形状(長さ・太さ・曲率など)・物性(密度・剛性など)などの性質が異なることをいう。
【0026】
上述のように、本発明の空気入りタイヤにおいては、タイヤ内面に複数種類の短繊維が設けられているが、該複数種類の短繊維は複数種類の長さの短繊維からなることが好ましい。短繊維による吸音特性は、その長さによって変化するため、複数種類の長さの短繊維を使用することにより、単一長さの短繊維を使用した場合よりも、広い周波数範囲にわたって吸音効果が現れ、より大きな騒音低減効果を得ることができる。
【0027】
なお、図示例のタイヤのタイヤ内面には、長さが短い短繊維10Aと、長さがより長い短繊維10Bの2種類の短繊維が固着されているが、本発明のタイヤにおいては、短繊維の種類は、3種類以上であってもよい。
【0028】
また、本発明の空気入りタイヤにおいて、前記複数種類の短繊維は、最も短い短繊維の平均長さが0.5〜3mmであり、最も長い短繊維の平均長さが該最も短い短繊維の平均長さの1.5〜3.3倍であることが好ましい。最も短い短繊維の平均長さが0.5mm未満では、空洞共鳴音を低減する効果が小さくなる。一方、最も長い短繊維の平均長さが10mmを超えると、短繊維同士が絡み易くなって作業性が悪化すると共に、タイヤ内面への均一な分散が困難となり、吸音効果が十分に発現できなくなるおそれがある。また、平均長さの比率が、長い方(即ち、最も長い短繊維)が短い方(即ち、最も短い短繊維)の1.5〜3倍でないと、吸音効果の現れる周波数範囲を広く取る効果が小さくなり、十分な騒音低減効果が得られない恐れがある。
【0029】
また、本発明の空気入りタイヤにおいて、前記複数種類の短繊維の本数構成比率は、最も短い短繊維が全体の30〜60%であることが好ましい。短繊維の本数構成比率は最も短い短繊維が、全体の30〜60%の範囲にないと、吸音効果の現れる周波数範囲を広く取る効果が小さくなり、十分な騒音低減効果が得られない恐れがある。
【0030】
また、本発明の空気入りタイヤにおいては、前記複数種類の短繊維が複数種類の材質の短繊維からなることも好ましい。短繊維による吸音特性は、その材質によっても変化するため、長さと同様に、異なる種類の材質の短繊維を使用することにより、効果の現れる周波数範囲が広がり、単一種類の場合よりも大きな騒音低減効果を得ることができる。
【0031】
ここで、短繊維としては、有機合成繊維、無機繊維、再生繊維、天然繊維等の短繊維を用いることができる。また、有機合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン、ナイロン等の脂肪族ポリアミド、ケブラー等の芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリメチルメタクリレート等のポリエステル、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン、及びこれらの共重合体等からなる繊維が挙げられる。また、無機繊維としては、例えば、カーボン繊維、グラスファイバー等が挙げられる。また、再生繊維としては、例えば、レーヨン、キュプラ等が挙げられる。また、天然繊維としては、例えば、綿、絹、羊毛等が挙げられる。これらの中でも、できるだけ比重の異なる繊維を組合せる観点およびコスト・汎用性等の観点から、ナイロン、ポリプロピレン等の比較的比重の小さい繊維とポリエステル、レーヨン等の比較的比重の大きい繊維を組合せることが好ましい。
【0032】
また、本発明の空気入りタイヤにおいて、前記複数種類の短繊維の本数構成比率は、最も含有量が少ない短繊維が全体の30〜50%であることが好ましい。短繊維の本数構成比率は、最も含有量が少ない短繊維が全体の30〜50%範囲にないと、吸音効果の現れる周波数範囲を広く取る効果が小さくなり、十分な騒音低減効果が得られない恐れがある。
【0033】
また、本発明の空気入りタイヤにおいて、前記複数種類の短繊維は、平均長さが0.5〜10mmであることが好ましい。短繊維の平均長さが0.5mm未満では、空洞共鳴音を低減する効果が小さくなる。一方、短繊維の平均長さが10mmを超えると、短繊維同士が絡み易くなって作業性が悪化すると共に、タイヤ内面への均一な分散が困難となり、吸音効果が十分に発現できなくなるおそれがある。
【0034】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記複数種類の短繊維がタイヤ内面に固着されている領域の面積は、タイヤ内面の面積の25%以上であることが好ましい。短繊維がタイヤ内面に固着されている領域の面積を、タイヤ内面の面積の25%以上にすることにより、空洞共鳴を確実に低減することができる。
【0035】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記複数種類の短繊維がタイヤ内面に固着されている領域において、前記複数種類の短繊維が1平方センチメートル当たり100本以上設けられていることが好ましい。短繊維の密度が低いと、空洞共鳴の低減効果が不足するため、空洞共鳴の低減効果を確実に得るには、短繊維の固着されている領域において、短繊維を1平方センチメートル当たり100本(平均値)以上設けることが好ましい。
【0036】
また、本発明の空気入りタイヤにおいて、前記複数種類の短繊維は、平均直径が1〜500μmであることが好ましい。短繊維の平均直径が1μm未満になると、短繊維の製造工程において糸切れが多発し、短繊維の生産性が低下する。一方、短繊維の平均直径が500μmを超えると、短繊維の総重量が大きくなり、タイヤの回転バランスに影響する恐れがある。
【0037】
本発明の空気入りタイヤにおいては、前記複数種類の短繊維の固着されている領域が複数の短繊維群からなり、該複数の短繊維群が互いに独立して固着されていることが好ましい。短繊維の固着されている領域を、連続せずに設けることにより、仮に接着層がはがれることがあったとしても、はがれる範囲が極僅かで止まり、空洞共鳴抑制効果を維持することができる。
【0038】
また、本発明の空気入りタイヤの製造方法は、(i)タイヤ内面に接着剤を塗布する工程と、(ii)前記接着剤を塗布した部位に複数種類の短繊維を接着させる工程とを有することを特徴とする。本発明のタイヤの製造方法では、まずタイヤの内面の短繊維接着箇所に接着剤を塗布し、次に、接着剤を塗布した部位に無数の複数種類の短繊維を接着させることにより、上述したような優れた吸音効果を得ることのできる空気入りタイヤを効率的に製造することができる。ここで、使用する接着剤は特に限定されず、任意の接着剤を使用することができる。
【0039】
本発明の空気入りタイヤの製造方法おいては、静電植毛加工により前記複数種類の短繊維をタイヤ内面に設けることが好ましい。無数の複数種類の短繊維は、種々の方法でタイヤ内面に接着させることができるが、静電植毛加工を用いることにより、無数の短繊維を簡単にタイヤ内面に立設させた状態で固着させることができ、吸音効果を得ることのできる空気入りタイヤを効率的に製造することができる。
【0040】
静電植毛加工は、短繊維を帯電させ、静電気力により、予め接着剤を塗布した物体に短繊維を垂直に植毛する加工技術であるため、複雑な形状の物体表面にも均一に短繊維を植毛することができ、3次元的に曲率をもったタイヤ内面に短繊維を植毛するのに適している。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
同一仕様のタイヤの内面に太さ15デニール(φ45μm)、長さ2mmのナイロン製短繊維(短繊維A)約24gを、タイヤ内面に静電植毛加工したタイヤ(比較例1、1平方センチメートル当たりの短繊維の本数=約2万本)と、同じ短繊維A12gと太さ15デニール(φ45μm)、長さ4mmのナイロン製短繊維(短繊維B)24gを同じ領域に静電植毛加工したタイヤ(実施例1、短繊維Aと短繊維Bの本数比率はそれぞれ50%、1平方センチメートル当たりの短繊維の本数=約1万本)と、短繊維A12gと太さ20デニール(φ45μm)、長さ4mmのレーヨン製短繊維(短繊維C)32gを同じ領域に静電植毛加工したタイヤ(実施例2、短繊維Aと短繊維Cの本数比率はそれぞれ50%、1平方センチメートル当たりの短繊維の本数=約1万本)と、短繊維を設けないタイヤ(参照例1)とを準備し、各タイヤに対して、室内ドラム試験を行った。
【0043】
また、比較例1、実施例1及び実施例2のタイヤにおいて、植毛した領域はタイヤ内面の75%の領域である。また、タイヤは、図1に示す構造を有するサイズ195/65R15の一般的な市販品であり、使用リムは6JJ−15であり、荷重4.25kN、内圧220kPa、速度60km/hの条件で、室内ドラム試験機にて上下方向タイヤ軸力を測定して、図2に示す周波数スペクトルを得た。
【0044】
図2において、225Hz、240Hz付近に見られるピークが空洞共鳴によるものであるが、短繊維Aのみの比較例1のタイヤは225Hz付近のピークは約5dB低減しているが、240Hz付近のピークは約3dBと低減効果が小さかった。一方、短繊維Aと短繊維Bを加工した実施例1のタイヤ、短繊維Aと短繊維Cを加工した実施例2のタイヤは、240Hz付近のピークも約7dB程と大きな低減効果が得られている。
【符号の説明】
【0045】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 トレッド部
4 カーカス
5 ベルト
6 ベルト補強層
7 ビードコア
8 ビードフィラー
9 インナーライナー
10 短繊維
10A 短い短繊維
10B より長い短繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内面に複数種類の短繊維が接着剤にて固着されて設けられていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記複数種類の短繊維が複数種類の長さの短繊維からなることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記複数種類の短繊維が複数種類の材質の短繊維からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記複数種類の材質の短繊維は、それぞれ比重が異なることを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記複数種類の短繊維は、最も短い短繊維の平均長さが0.5〜3mmであり、最も長い短繊維の平均長さが該最も短い短繊維の平均長さの1.5〜3.3倍であることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記複数種類の短繊維の本数構成比率は、最も短い短繊維が全体の30〜60%であることを特徴とする請求項2又は5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記複数種類の短繊維の本数構成比率は、最も含有量が少ない短繊維が全体の30〜50%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記複数種類の短繊維は、平均長さが0.5〜10mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記複数種類の短繊維がタイヤ内面に固着されている領域の面積は、タイヤ内面の面積の25%以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記複数種類の短繊維がタイヤ内面に固着されている領域において、前記複数種類の短繊維が1平方センチメートル当たり100本以上設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記複数種類の短繊維は、平均直径が1〜500μmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記複数種類の短繊維の固着されている領域が複数の短繊維群からなり、該複数の短繊維群が互いに独立して固着されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
エチレン−ビニルアルコール共重合体にエポキシ化合物を反応させて得られる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体からなるインナーライナーを具えることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
タイヤ内面に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を塗布した部位に複数種類の短繊維を接着させる工程と
を有することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項15】
静電植毛加工により前記複数種類の短繊維をタイヤ内面に設けることを特徴とする請求項14に記載の空気入りタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−254742(P2012−254742A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129517(P2011−129517)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】