空気入りタイヤ
【課題】 ベルト層43の部分的あるいは全体的な弧状変形を強力に抑制する。
【解決手段】 空気入りタイヤ31のベルト層43は内圧が充填されると、主溝52の位置で部分的に弧状に変形しようとするが、ほぼラジアル方向に延びるスチールコードが埋設された補強層57を設ける一方、前記スチールコードの断面二次モーメントを同一断面積である円形断面の断面二次モーメントより大とすれば、曲げ剛性の値が従来の円形断面のスチールコードより高くなり、これにより、前述の弧状変形が抑制される。
【解決手段】 空気入りタイヤ31のベルト層43は内圧が充填されると、主溝52の位置で部分的に弧状に変形しようとするが、ほぼラジアル方向に延びるスチールコードが埋設された補強層57を設ける一方、前記スチールコードの断面二次モーメントを同一断面積である円形断面の断面二次モーメントより大とすれば、曲げ剛性の値が従来の円形断面のスチールコードより高くなり、これにより、前述の弧状変形が抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルト層に重なり合う補強層を設けた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤ11の内部には所定圧の内圧が充填されているため、図13に示すように、該空気入りタイヤ11を構成するカーカス層12、ベルト層13は前記内圧を受けて半径方向外側に膨出しようとする。ここで、接地領域に位置するカーカス層12、ベルト層13のうち、陸部14(リブ、ブロック等)に重なり合っている部位は、該陸部14が突っ張りとなって前述の膨出変形が規制されるが、陸部14間の主溝15に重なり合っている部位は、突っ張りとなる陸部14が存在せず、しかも、ベルト層13内の補強コードはタイヤ赤道に対し10〜40度の角度で傾斜し幅方向曲げ剛性が低いため、半径方向外側に向かって弧状に突出するよう膨出変形してしまう。
【0003】
そして、このように主溝15に重なり合っている部位近傍のカーカス層12、ベルト層13が弧状に変形すると、この変形が周囲の陸部14に伝達されて主溝15近傍の陸部14における圧縮量が陸部14の中央部における圧縮量より大となり、この結果、陸部14における接地圧が、主溝15近傍の幅方向両側部では高く、一方、幅方向中央部では低くなって不均一となり、操縦安定性が低下するとともに、陸部14の幅方向両側部が中央部に比較して早期摩耗することにより偏摩耗が生じて耐摩耗性が低下するという問題があった。
【0004】
また、タイヤ内圧が漏出しても安全に走行することができる空気入りタイヤ21として、図14に示すようなサイドウォール部22の内面側に断面略三日月状の補強ゴム層23を配設したランフラットタイヤが提案されているが、このような空気入りタイヤ21でランフラット走行(タイヤ内圧が0となった状態での走行)を行うと、サイドウォール部22が潰れて幅方向外側に膨出変形する一方、接地領域のトレッド部24は全体が半径方向内側に向かって弧状に変形(トレッド中央部が路面から浮き上がるよう変形)する。そして、このようにトレッド部24の全体が弧状に変形すると、該トレッド部24内のベルト層25も同様に弧状に変形し、この結果、トレッド端部における発熱が増加するとともに、サイドウォール部22における変形が助長されるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば以下の特許文献1に記載されているように、タイヤ赤道に対する傾斜角が70〜90度の範囲内である多数本のスチールコードが埋設され、幅が幅方向最外側に位置する2本の主溝における外側壁面間の間隔より広幅である1層の補強層をベルト層に重ね合わせて配置し、これにより、該補強層内の各スチールコードを曲げに抵抗する剛性の高い梁として機能させるとともに、該スチールコードを前記弧状変形により発生する圧縮力あるいは引張力に対する抵抗として機能させて弧状変形を抑制することも考えられる。
【特許文献1】特開平10−44712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の空気入りタイヤにあっては、前述したベルト層の部分的あるいは全体的な弧状変形をある程度抑制することができるものの、近年、車両の乗り心地性向上、対費用効果向上等の要求から、空気入りタイヤにさらなる操縦安定性、耐久性が求められるようになってきたが、前述したような従来の空気入りタイヤでは、充分にその要求に応えることができないという課題があった。このような課題を解決するため、前記スチールコードの直径を太くしたり、打ち込み密度を高くすることが考えられるが、このようにすると、空気入りタイヤの重量が増大し、これにより、舵角初期の応答性が悪化したり、レーンチェンジ後における車両の振動収まりが悪化して、操縦安定性が低下し、しかも、製造費が高価となってしまうという課題がある。
【0007】
この発明は、重量増加を招くことなくベルト層の部分的あるいは全体的な弧状変形を強力に抑制することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、ビード間をトロイダル状に延び少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス層と、該カーカス層の半径方向外側に配置され、少なくとも2枚のベルトプライからなるベルト層と、前記カーカス層、ベルト層の半径方向外側に配置され、外周に複数本の主溝が形成されたトレッドとを備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ赤道に対する傾斜角が60〜90度の範囲内である多数本のスチールコードが埋設され、幅が幅方向最外側に位置する2本の主溝における外側壁面間の間隔より広幅である補強層をベルト層に重ね合わせて設ける一方、前記補強素子の断面の中立軸をタイヤ接線方向と略平行とするとともに、各補強素子の断面形状を、前記中立軸に関する断面二次モーメントが同一断面積である円形断面の断面二次モーメントより大となるような形状とすることにより、達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
前述のようにベルト層が内圧によって主溝の位置で部分的に、あるいは、ランフラット走行によって全体的に弧状に変形しようとするが、この発明においては、幅方向最外側の主溝間の間隔より広幅の補強層をベルト層に重ね合わせて配置するとともに、この補強層内に主溝にほぼ直交するヤング率の高いスチールコードを埋設したので、各スチールコードは、全ての主溝を横切って主溝位置での部分的な弧状変形に抵抗する剛性の高い梁として機能するとともに、トレッド部全体の弧状変形に抵抗する剛性の高い梁としても機能する。
【0010】
しかも、この発明では、各スチールコードの断面二次モーメントを同一断面積である円形断面の断面二次モーメントより大としたので、直径や打ち込み密度を変化させることなく、曲げ剛性の値を、断面が円形である従来のスチールコードより高くすることができ、これにより、前述した弧状変形の抑制効果が強力となる。また、これらスチールコードは、前記弧状変形によって曲げの中立軸(通常、半径方向最内側のベルトプライ近傍に位置している)より凸側において発生する引張力、または、凹側において発生する圧縮力に対する抵抗としても機能する。このようなことからベルト層の部分的あるいは全体的な弧状変形が重量増加を招くことなく強力に抑制され、これにより、空気入りタイヤの操縦安定性、耐久性が簡単かつ確実に向上するとともに、製作費を安価とすることができる。
【0011】
そして、断面二次モーメントの値が円形断面の断面二次モーメントより大である形状としては、請求項2〜5に記載のような断面形状のものを挙げることができ、このような形状のものは製造が容易である。
ここで、製造時におけるばらつきにより、スチールコードの曲げ剛性が最大となる方向、即ち、楕円の長軸、長方形の長辺または縦延在部の延在方向がタイヤ径方向に対して傾斜することもあるが、この傾斜角が30度以内であれば、弧状変形を強力に抑制することができるため、この範囲内での傾斜は許容される。なお、この角度範囲内であれば、スチールコード毎に傾斜角度がばらついていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、31は高性能乗用車等に装着される空気入りラジアルタイヤであり、この空気入りタイヤ31はリング状のビード32がそれぞれ埋設された一対のビード部33と、これらビード部33から略半径方向外側に向かってそれぞれ延びるサイドウォール部34と、これらサイドウォール部34の半径方向外端同士を連結する略円筒状のトレッド部35とを備えている。
【0013】
そして、この空気入りタイヤ31は前記ビード32間をトロイダル状に延びてサイドウォール部34、トレッド部35を補強するカーカス層38を有し、このカーカス層38の両端部は前記ビード32の回りを軸方向内側から軸方向外側に向かって折り返されている。前記カーカス層38は少なくとも1枚、ここでは1枚のカーカスプライ39から構成され、このカーカスプライ39はタイヤ赤道Sに対して70〜90度のコード角で交差する、即ちラジアル方向(子午線方向)に延びるナイロン、芳香族ポリアミド、スチール等から構成された多数本の補強コード40をゴムコーティングすることで構成され、この結果、このカーカスプライ39内には前記補強コード40が埋設されていることになる。
【0014】
43はカーカス層38の半径方向外側に配置されたベルト層であり、このベルト層43は複数枚(ここでは2枚)のベルトプライ44、45を積層することで構成され、これらベルトプライ44、45は、例えば多数本のスチール、芳香族ポリアミドからなる非伸張性補強コード46、47をゴムコーティングすることで構成され、この結果、これらのベルトプライ44、45内には前記補強コード46、47がそれぞれ埋設されていることになる。そして、これら補強コード46、47はタイヤ赤道Sに対して10〜40度の角度で傾斜するとともに、少なくとも2枚のベルトプライ44、45においてタイヤ赤道Sに対し逆方向に傾斜して互いに交差している。
【0015】
51は前記カーカス層38、ベルト層43の半径方向外側に配置されたゴムからなるトレッドであり、このトレッド51の外周には広幅で実質上周方向に延びる複数本、ここでは4本の主溝52が形成されている。ここで、これら主溝52は、この実施形態のように直線状に延びていてもよいが、ジグザグ状に折れ曲がっていてもよく、また、周方向に対して多少の角度、例えば30度程度で傾斜し略ハの字状を呈していてもよい。このようにトレッド51の外周に主溝52が形成されると、トレッド端と主溝52との間および隣接する主溝52間には陸部54、ここではリブが画成される。ここで、前述したトレッド51の外周には略タイヤ幅方向に延び主溝52に交差する横溝が形成される場合があるが、この場合には前述の陸部54はブロックとなる。
【0016】
そして、このような空気入りタイヤ31に所定圧の内圧を充填した後、路面上を負荷転動させると、接地領域におけるカーカス層38、ベルト層43のうち、主溝52に重なり合っている部位近傍は、前述のように突っ張りとして機能する陸部54が存在せず、しかも、ベルト層43の曲げ剛性が比較的低い値であるため、半径方向外側に向かって部分的に弧状に突出するよう変形しようとする。
【0017】
このため、この実施形態においては、曲げの中立軸(通常、半径方向最内側のベルトプライ44近傍に位置している)から半径方向内側に離れた、ベルト層43とカーカス層38との間に補強層57を該ベルト層43に重ね合わせて配置したのである。そして、前記補強層57の幅Wを、幅方向最外側に位置する2本の主溝52における外側壁面52a間の間隔Mより広幅として、補強層57を全ての主溝52に重ね合わせるとともに、該補強層57内にタイヤ赤道Sに対する傾斜角Kが60〜90度の範囲内である、即ち、主溝52にほぼ直交する方向に延びるヤング率の高い多数本のスチールコード58、ここではモノフィラメントコードを埋設している。
【0018】
このようにすれば、補強層57内の各スチールコード58は、後述の試験結果に示されているように、全ての主溝52を横切って主溝52位置での部分的な弧状変形に抵抗する剛性の高い梁として機能するため、全ての主溝52位置での部分的な弧状変形が強力に抑制される。そして、このような抑制機能は前記傾斜角Kが90度に近くなるほど大となる。なお、前記補強層57の幅Wをトレッド幅より広くすると、補強層57の幅方向外側端に亀裂が発生し易くなるため、前記補強層57の幅Wはトレッド幅より幅狭とすることが好ましい。
【0019】
また、この実施形態においては、図3に示すように、前述した各スチールコード58の断面形状を製造が容易な楕円とするとともに、該スチールコード58を断面の中立軸がタイヤ周方向に対する接線方向と略平行となるよう配置することで、該楕円の長軸Cがタイヤ径方向に沿うよう配置し、これにより、各スチールコード58の前記断面の中立軸に関する断面二次モーメントを同一断面積である円形断面の断面二次モーメントより大となるようにしている。この結果、梁として機能するスチールコード58の曲げ剛性の値を、直径や打ち込み密度を変化させることなく、断面が円形である従来のスチールコードより高くすることができ、これにより、前述した主溝52位置での部分的な弧状変形を重量増加を招くことなく強力に抑制することができる。このとき、スチールコード58のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Kが前述のような値であるため、補強層57の曲げ剛性はタイヤ幅方向において強化され、タイヤ周方向は殆ど変化しない。
【0020】
ここで、製造時におけるばらつきにより、前記スチールコード58の曲げ剛性が最大となる方向、ここでは、楕円の長軸Cがタイヤ径方向に対して、図4に示すように、傾斜することもあるが、この傾斜角Aが30度以内であれば、弧状変形を強力に抑制することができるため、この範囲内での傾斜は許容される。なお、この角度範囲内であれば、スチールコード58毎に傾斜角度がばらついていてもよい。また、前記スチールコード58として、モノフィラメントコードの他に、図5に示すようなスチールフィラメント59を数本、ここでは6本撚って構成した撚りコードを用いてもよい。
【0021】
また、前述した主溝52位置での部分的な弧状変形により、曲げの中立軸より凸側においては引張力が、また、凹側においては圧縮力が発生するが、この圧縮力に対して曲げの中立軸より半径方向内側に配置された補強層57内のスチールコード58が抵抗として機能するため、前述の弧状変形はさらに抑制される。このようなことから空気入りタイヤ31の操縦安定性、耐摩耗性を簡単かつ確実に向上させることができるとともに、製作費を安価とすることができる。さらに、前記補強層57に埋設されているスチールコード58間の間隔は5mm以上であることが好ましい。その理由は、隣接するスチールコード58間の間隔を5mm以上とすれば、軽量化を図りながらベルト層43の弧状変形を強力に抑制することができるからである。
【0022】
図6は、この発明の実施形態2を示す図である。この実施形態においては、モノフィラメントコードからなるスチールコード63の断面形状を製造が容易な長方形とするとともに、該スチールコード63を長方形の長辺Bがタイヤ径方向に沿うよう配置している。このようにした場合も実施形態1と同様に、梁として機能する各スチールコード63の断面二次モーメントが大となって、曲げ剛性の値が、断面が円形である従来のスチールコードより高くなり、これにより、前述した主溝52位置での部分的な弧状変形を重量増加を招くことなく強力に抑制することができる。
【0023】
図7は、この発明の実施形態3を示す図である。この実施形態においては、モノフィラメントコードからなるスチールコード65の断面形状を、タイヤ径方向に延びる1つの縦延在部66と、縦延在部66の径方向内外端に一体連結され、タイヤ周方向に対する接線方向に延びる2つの横延在部67、68とから構成し、全体として製造が容易なI字状としている。このようにした場合も実施形態1と同様に、梁として機能する各スチールコード65の断面二次モーメントが大となって、曲げ剛性の値が、断面が円形である従来のスチールコードより高くなり、これにより、前述した主溝52位置での部分的な弧状変形を重量増加を招くことなく強力に抑制することができる。
【0024】
図8は、この発明の実施形態4を示す図である。この実施形態においては、モノフィラメントコードからなるスチールコード70の断面形状を、タイヤ径方向に延び互いに重なり合う2つの縦延在部71、72と、縦延在部71、72の径方向中央部に両端が一体連結され、タイヤ周方向に対する接線方向に延びる1つの横延在部73とから構成し、全体として製造が容易なH字状としている。このようにした場合も実施形態1と同様に、梁として機能する各スチールコード70の断面二次モーメントが大となって、曲げ剛性の値が、断面が円形である従来のスチールコードより高くなり、これにより、前述した主溝52位置での部分的な弧状変形を重量増加を招くことなく強力に抑制することができる。
【0025】
なお、前記実施形態2、3、4のようにスチールコード63、65、70の断面形状を長方形、I字状、H字状とした場合も、前記実施形態1と同様に、製造時におけるばらつきにより、前記スチールコード63、65、70の曲げ剛性が最大となる方向、長方形では長辺C、I字状、H字状では、縦延在部66、71、72がタイヤ径方向に対して傾斜することもあるが、この場合も傾斜角Aが30度以内であれば、弧状変形を強力に抑制することができるため、この範囲内での傾斜は許容される。
【0026】
そして、前述の試験結果は以下の試験により得たものである。この試験に当たっては、図9に示すような、ゴムシート74の厚さ方向中央に、断面円形で直径が0.98mmのモノフィラメントからなるスチールコード75が多数本埋設された補強層77を1層配置した試験片1と、ゴムシート74の厚さ方向中央に、断面が楕円で長軸Cの長さが 1.6mm、短軸の長さが 0.6mmのモノフィラメントからなるスチールコード75を、前記長軸Cを厚さ方向に揃えて多数本埋設した補強層77を1層配置した試験片2と、ゴムシート74の厚さ方向中央に、直径が 0.4mmである断面円形のスチールフィラメントを6本撚ることで、外接曲線の形状を長軸Cの長さが 1.6mm、短軸の長さが 1.0mmである楕円としたスチールコード75を、前記長軸Cを厚さ方向に揃えて多数本埋設した補強層77を1層配置した試験片3と、ゴムシート74の厚さ方向中央に、断面が長方形で長辺Bの長さが 1.5mm、短辺の長さが 0.5mmのモノフィラメントからなるスチールコード75を、前記長辺Bを厚さ方向に揃えて多数本埋設した補強層77を1層配置した試験片4とを準備した。
【0027】
ここで、これら試験片1〜4は、各辺の長さが 200mmで厚さが 2mmの正方形であり、また、各試験片1〜4において、タイヤ赤道S(ゴムシート74の一側辺に平行な直線をタイヤ赤道Sと仮定)に対するスチールコード75の交差角Kを 0度から90度まで10度ずつ変化させながら10枚ずつ製作した。また、前記各試験片1〜4におけるスチールコード75間の間隔はいずれも10mmであり、その重量も断面積が実質上同一であるため、実質上同一であった。
【0028】
次に、タイヤ赤道Sに平行に延びるとともに 200mmだけ離れた水平な一対の支持部材78によって各試験片1〜4の両側端をそれぞれ下方から支持した後、該試験片1〜4の幅方向中央上にタイヤ赤道Sに平行に延びる 9.8Nの文鎮状(四角柱状)をした重錘79を載置することで、荷重を付与した。そして、前述のような荷重を各試験片に付与したときの重錘79の直下での最大撓み量を測定し、前記交差角Kが90度である試験片1の最大撓み量の逆数を曲げ強さの指数 100として図10に示した。ここで、交差角Kが90度である試験片1の最大撓み量は28mmであった。この試験結果から前記交差角Kが60〜90度の範囲内であると、曲げ強さが高い値を維持していることが、また、スチールコード75を断面二次モーメントの大きな形状とすると、断面円形の場合より曲げ強さを効果的に高くできることが理解できる。
【0029】
再び、図1、2において、81はベルト層43の幅方向両端部でその半径方向外側に配置され、少なくとも1枚の補助プライ82からなる一対の補助層であり、これら補助プライ82内には実質上周方向に延びる有機繊維、例えばナイロン、ポリエステルから構成された補強コード83が埋設されている。
【0030】
図11はこの発明の実施形態5を示す図である。この実施形態は、サイドウォール部34の内面側にそれぞれ断面略三日月状を呈する比較的硬質の補強ゴム層85を配設することで、タイヤ内圧が漏出しても安全に走行することができる空気入りタイヤ(ランフラットタイヤ)86に適用したもので、この空気入りタイヤ86においては、補助層81を省略する一方、カーカス層38を2枚のカーカスプライ39から構成している。そして、このような空気入りタイヤ86でランフラット走行(タイヤ内圧が0となった状態での走行)を行うと、サイドウォール部34が潰れて幅方向外側に膨出変形する一方、接地領域のトレッド部35(ベルト層43)は全体が半径方向内側に向かって弧状に変形しようとする。
【0031】
しかしながら、この実施形態では、前記実施形態1と同様にベルト層43の半径方向内側、詳しくはベルト層43とカーカス層38との間に配置された補強層57内のスチールコード58の断面を楕円、長方形、I字状、H字状とすることで、該スチールコード58の断面二次モーメントを大とするとともに、前記楕円の長軸、長方形の長辺、I字状、H字状の縦延在部をタイヤ径方向に沿わせたので、梁として機能するスチールコード58の曲げ剛性の値が、断面が円形である従来のスチールコードより高くなり、これにより、前述したトレッド部35における全体的な弧状変形を重量増加を招くことなく強力に抑制することができる。なお、他の構成、作用は前記実施形態1と同様である。
【実施例1】
【0032】
次に、試験例1について説明する。この試験に当たっては、補強層が配置されていない従来タイヤ1と、断面が円形で交差角Kが90度であるスチールコードが埋設された1層の補強層をベルト層とカーカス層との間に配置した比較タイヤ1と、断面が楕円で交差角Kが90度であるスチールコードが埋設された1層の補強層をベルト層とカーカス層との間に配置した実施タイヤ1とを準備した。
【0033】
ここで、前述の各タイヤは高性能乗用車用タイヤで、サイズが215/55R15であった。また、これらタイヤの骨格構造は、図1、2に示すようにタイヤ赤道Sに対して90度で交差するナイロンコードが埋設された1枚のカーカスプライからなるカーカス層と、タイヤ赤道Sに対して25度で逆方向に交差するスチールコードが埋設された2枚のベルトプライからなるベルト層と、タイヤ赤道Sに実質上平行に延びるナイロンコードが埋設された補助層とを備えたものである。
【0034】
また、前記比較タイヤ1の補強層に埋設されているスチールコードは、断面円形で直径が0.98mmのモノフィラメントから構成され、一方、実施タイヤ1の補強層に埋設されているスチールコードは、断面が楕円で長軸Cの長さが 1.6mm、短軸の長さが 0.6mmのモノフィラメントから構成され、長軸Cがタイヤ径方向に延びている。さらに、前記補強層の幅Wを 150mmとするとともに、いずれの補強層においてもスチールコードは10mm間隔で打ち込まれている。
【0035】
そして、このような各タイヤに200kPaの内圧を充填した状態で室内試験機に装着した後、5kNの垂直荷重を負荷しながら路面上をスリップ角 3度でゆっくりと2回転させ、回転後の静止状態において前記荷重直下の断面をX線で撮影し、幅方向最外側の主溝に重なり合っている内側ベルトプライ内のスチールコードの最大変形量を計測した。その結果、前記最大変形量は従来タイヤ1では 0.8mm、比較タイヤ1では 0.4mmであったが、実施タイヤ1では 0.2mm以下まで激減していた。
【0036】
また、前述した各タイヤを乗用車に装着し、テストドライバーによって操縦安定性の評価を行った。その結果、60km/hでの直進時からのレーンチェンジにおいて、実施タイヤ1は非常にクイックに反応し、きびきびした動きをすると評価され、また、比較タイヤ1は従来タイヤ1より良好であるが、実施タイヤ1には及ばないと評価された。その評価をテストドライバーに 100点満点で点数を付けてもらったところ、従来タイヤ1では50点、比較タイヤ1では70点、実施タイヤ1では90点であった。
【実施例2】
【0037】
次に、試験例2について説明する。この試験に当たっては、補強層が配置されていない従来タイヤ2と、断面が長方形で交差角Kが90度であるスチールコードが埋設された幅が 160mmの補強層をベルト層とカーカス層との間に1層配置した実施タイヤ2と、断面がH字状で交差角Kが90度であるスチールコードが埋設された幅が 160mmの補強層をベルト層とカーカス層との間に1層配置した実施タイヤ3とを準備した。
【0038】
ここで、前述の各タイヤは、サイドウォール部の内面側にそれぞれ断面略三日月状を呈する比較的硬質の補強ゴム層が配設された乗用車用ランフラットタイヤで、サイズが225/50R16であった。また、これらタイヤの骨格構造は、図11に示すようにタイヤ赤道Sに対して90度で交差するナイロンコードが埋設された2枚のカーカスプライからなるカーカス層と、タイヤ赤道Sに対して25度で逆方向に交差するスチールコードが埋設された2枚のベルトプライからなるベルト層とを備えたものである。
【0039】
また、前記実施タイヤ2における補強層のスチールコードは、長辺Bの長さが 3mm、短辺の長さが 1.5mmの断面長方形のモノフィラメントから構成されるとともに、長辺Bがタイヤ径方向に延びており、一方、実施タイヤ3における補強層のスチールコードは、高さが 3mm、幅が 3mm、肉厚が一律 0.6mmの断面H字状をしたモノフィラメントから構成されるとともに、縦延在部がタイヤ径方向に延びている。また、実施タイヤ2、3においては、スチールコードを20mm間隔で補強層内に埋設した。
【0040】
次に、このような各タイヤを内圧0(大気圧)の状態で室内試験機に装着した後、5kNの垂直荷重を負荷しながら路面上をスリップ角0度(直進走行)でゆっくりと2回転させ、回転後の静止状態において前記荷重直下の断面をX線で撮影し、タイヤ赤道におけるトレッド外表面の路面からの浮き上がり量U(図14参照)を計測した。その結果は、従来タイヤ2における浮き上がり量Uを指数 100とすると、実施タイヤ2、3では共に50まで効果的に抑制することができた。ここで、指数 100は22mmであった。また、サイドウォール部の潰れも従来タイヤ2より実施タイヤ2、3で少なかった。
【0041】
また、前述した各タイヤを後輪駆動の乗用車に装着した後、後輪右側のタイヤのバルブを外すことで内圧を0とする一方、残り3本のタイヤに220kPaの内圧を充填し、その後、1周約3kmのオーバルコースを時速90kmの定速で、前記後輪右側のタイヤが故障して走行が困難となるまで反時計回りにランフラット走行をさせた。このときの従来タイヤ2の走行距離を指数 100とすると、実施タイヤ2では 370まで、実施タイヤ3では 350まで走行距離が伸びていた。ここで、指数 100は60kmであった。
【0042】
なお、前述の実施形態においては、補強層57をベルト層43の半径方向内側、即ち、ベルト層43とカーカス層38との間に配置したが、この発明においては、図12に示すように、ベルト層43の半径方向外側、即ち、ベルト層43とトレッド51との間に配置してもよく、あるいは、カーカス層38が2枚のカーカスプライ39から構成されているとき、これらカーカスプライ39間に配置するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明は、空気入りタイヤの産業分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施形態1を示す空気入りタイヤの子午線断面図である。
【図2】トレッド部の一部破断平面図である。
【図3】補強層の周方向断面図である。
【図4】補強層の他の例の周方向断面図である。
【図5】スチールコードの他の例を示す断面図である。
【図6】この発明の実施形態2を示す補強層の周方向断面図である。
【図7】この発明の実施形態3を示す補強層の周方向断面図である。
【図8】この発明の実施形態4を示す補強層の周方向断面図である。
【図9】試験片の斜視図である。
【図10】試験結果を示すグラフである。
【図11】この発明の実施形態5を示す空気入りタイヤの子午線断面図である。
【図12】空気入りタイヤの他の例を示す子午線断面図である。
【図13】従来の空気入りタイヤの接地時における断面形状を示す部分子午線断面図である。
【図14】従来の空気入りタイヤのランフラット走行時における断面形状を示す子午線断面図である。
【符号の説明】
【0045】
31…空気入りタイヤ 32…ビード
38…カーカス層 39…カーカスプライ
43…ベルト層 44、45…ベルトプライ
51…トレッド 52…主溝
52a…外側壁面 57…補強層
58…スチールコード S…タイヤ赤道
K…傾斜角 M…間隔
W…幅 A…傾斜角
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルト層に重なり合う補強層を設けた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤ11の内部には所定圧の内圧が充填されているため、図13に示すように、該空気入りタイヤ11を構成するカーカス層12、ベルト層13は前記内圧を受けて半径方向外側に膨出しようとする。ここで、接地領域に位置するカーカス層12、ベルト層13のうち、陸部14(リブ、ブロック等)に重なり合っている部位は、該陸部14が突っ張りとなって前述の膨出変形が規制されるが、陸部14間の主溝15に重なり合っている部位は、突っ張りとなる陸部14が存在せず、しかも、ベルト層13内の補強コードはタイヤ赤道に対し10〜40度の角度で傾斜し幅方向曲げ剛性が低いため、半径方向外側に向かって弧状に突出するよう膨出変形してしまう。
【0003】
そして、このように主溝15に重なり合っている部位近傍のカーカス層12、ベルト層13が弧状に変形すると、この変形が周囲の陸部14に伝達されて主溝15近傍の陸部14における圧縮量が陸部14の中央部における圧縮量より大となり、この結果、陸部14における接地圧が、主溝15近傍の幅方向両側部では高く、一方、幅方向中央部では低くなって不均一となり、操縦安定性が低下するとともに、陸部14の幅方向両側部が中央部に比較して早期摩耗することにより偏摩耗が生じて耐摩耗性が低下するという問題があった。
【0004】
また、タイヤ内圧が漏出しても安全に走行することができる空気入りタイヤ21として、図14に示すようなサイドウォール部22の内面側に断面略三日月状の補強ゴム層23を配設したランフラットタイヤが提案されているが、このような空気入りタイヤ21でランフラット走行(タイヤ内圧が0となった状態での走行)を行うと、サイドウォール部22が潰れて幅方向外側に膨出変形する一方、接地領域のトレッド部24は全体が半径方向内側に向かって弧状に変形(トレッド中央部が路面から浮き上がるよう変形)する。そして、このようにトレッド部24の全体が弧状に変形すると、該トレッド部24内のベルト層25も同様に弧状に変形し、この結果、トレッド端部における発熱が増加するとともに、サイドウォール部22における変形が助長されるという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するため、例えば以下の特許文献1に記載されているように、タイヤ赤道に対する傾斜角が70〜90度の範囲内である多数本のスチールコードが埋設され、幅が幅方向最外側に位置する2本の主溝における外側壁面間の間隔より広幅である1層の補強層をベルト層に重ね合わせて配置し、これにより、該補強層内の各スチールコードを曲げに抵抗する剛性の高い梁として機能させるとともに、該スチールコードを前記弧状変形により発生する圧縮力あるいは引張力に対する抵抗として機能させて弧状変形を抑制することも考えられる。
【特許文献1】特開平10−44712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の空気入りタイヤにあっては、前述したベルト層の部分的あるいは全体的な弧状変形をある程度抑制することができるものの、近年、車両の乗り心地性向上、対費用効果向上等の要求から、空気入りタイヤにさらなる操縦安定性、耐久性が求められるようになってきたが、前述したような従来の空気入りタイヤでは、充分にその要求に応えることができないという課題があった。このような課題を解決するため、前記スチールコードの直径を太くしたり、打ち込み密度を高くすることが考えられるが、このようにすると、空気入りタイヤの重量が増大し、これにより、舵角初期の応答性が悪化したり、レーンチェンジ後における車両の振動収まりが悪化して、操縦安定性が低下し、しかも、製造費が高価となってしまうという課題がある。
【0007】
この発明は、重量増加を招くことなくベルト層の部分的あるいは全体的な弧状変形を強力に抑制することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、ビード間をトロイダル状に延び少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス層と、該カーカス層の半径方向外側に配置され、少なくとも2枚のベルトプライからなるベルト層と、前記カーカス層、ベルト層の半径方向外側に配置され、外周に複数本の主溝が形成されたトレッドとを備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ赤道に対する傾斜角が60〜90度の範囲内である多数本のスチールコードが埋設され、幅が幅方向最外側に位置する2本の主溝における外側壁面間の間隔より広幅である補強層をベルト層に重ね合わせて設ける一方、前記補強素子の断面の中立軸をタイヤ接線方向と略平行とするとともに、各補強素子の断面形状を、前記中立軸に関する断面二次モーメントが同一断面積である円形断面の断面二次モーメントより大となるような形状とすることにより、達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
前述のようにベルト層が内圧によって主溝の位置で部分的に、あるいは、ランフラット走行によって全体的に弧状に変形しようとするが、この発明においては、幅方向最外側の主溝間の間隔より広幅の補強層をベルト層に重ね合わせて配置するとともに、この補強層内に主溝にほぼ直交するヤング率の高いスチールコードを埋設したので、各スチールコードは、全ての主溝を横切って主溝位置での部分的な弧状変形に抵抗する剛性の高い梁として機能するとともに、トレッド部全体の弧状変形に抵抗する剛性の高い梁としても機能する。
【0010】
しかも、この発明では、各スチールコードの断面二次モーメントを同一断面積である円形断面の断面二次モーメントより大としたので、直径や打ち込み密度を変化させることなく、曲げ剛性の値を、断面が円形である従来のスチールコードより高くすることができ、これにより、前述した弧状変形の抑制効果が強力となる。また、これらスチールコードは、前記弧状変形によって曲げの中立軸(通常、半径方向最内側のベルトプライ近傍に位置している)より凸側において発生する引張力、または、凹側において発生する圧縮力に対する抵抗としても機能する。このようなことからベルト層の部分的あるいは全体的な弧状変形が重量増加を招くことなく強力に抑制され、これにより、空気入りタイヤの操縦安定性、耐久性が簡単かつ確実に向上するとともに、製作費を安価とすることができる。
【0011】
そして、断面二次モーメントの値が円形断面の断面二次モーメントより大である形状としては、請求項2〜5に記載のような断面形状のものを挙げることができ、このような形状のものは製造が容易である。
ここで、製造時におけるばらつきにより、スチールコードの曲げ剛性が最大となる方向、即ち、楕円の長軸、長方形の長辺または縦延在部の延在方向がタイヤ径方向に対して傾斜することもあるが、この傾斜角が30度以内であれば、弧状変形を強力に抑制することができるため、この範囲内での傾斜は許容される。なお、この角度範囲内であれば、スチールコード毎に傾斜角度がばらついていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、31は高性能乗用車等に装着される空気入りラジアルタイヤであり、この空気入りタイヤ31はリング状のビード32がそれぞれ埋設された一対のビード部33と、これらビード部33から略半径方向外側に向かってそれぞれ延びるサイドウォール部34と、これらサイドウォール部34の半径方向外端同士を連結する略円筒状のトレッド部35とを備えている。
【0013】
そして、この空気入りタイヤ31は前記ビード32間をトロイダル状に延びてサイドウォール部34、トレッド部35を補強するカーカス層38を有し、このカーカス層38の両端部は前記ビード32の回りを軸方向内側から軸方向外側に向かって折り返されている。前記カーカス層38は少なくとも1枚、ここでは1枚のカーカスプライ39から構成され、このカーカスプライ39はタイヤ赤道Sに対して70〜90度のコード角で交差する、即ちラジアル方向(子午線方向)に延びるナイロン、芳香族ポリアミド、スチール等から構成された多数本の補強コード40をゴムコーティングすることで構成され、この結果、このカーカスプライ39内には前記補強コード40が埋設されていることになる。
【0014】
43はカーカス層38の半径方向外側に配置されたベルト層であり、このベルト層43は複数枚(ここでは2枚)のベルトプライ44、45を積層することで構成され、これらベルトプライ44、45は、例えば多数本のスチール、芳香族ポリアミドからなる非伸張性補強コード46、47をゴムコーティングすることで構成され、この結果、これらのベルトプライ44、45内には前記補強コード46、47がそれぞれ埋設されていることになる。そして、これら補強コード46、47はタイヤ赤道Sに対して10〜40度の角度で傾斜するとともに、少なくとも2枚のベルトプライ44、45においてタイヤ赤道Sに対し逆方向に傾斜して互いに交差している。
【0015】
51は前記カーカス層38、ベルト層43の半径方向外側に配置されたゴムからなるトレッドであり、このトレッド51の外周には広幅で実質上周方向に延びる複数本、ここでは4本の主溝52が形成されている。ここで、これら主溝52は、この実施形態のように直線状に延びていてもよいが、ジグザグ状に折れ曲がっていてもよく、また、周方向に対して多少の角度、例えば30度程度で傾斜し略ハの字状を呈していてもよい。このようにトレッド51の外周に主溝52が形成されると、トレッド端と主溝52との間および隣接する主溝52間には陸部54、ここではリブが画成される。ここで、前述したトレッド51の外周には略タイヤ幅方向に延び主溝52に交差する横溝が形成される場合があるが、この場合には前述の陸部54はブロックとなる。
【0016】
そして、このような空気入りタイヤ31に所定圧の内圧を充填した後、路面上を負荷転動させると、接地領域におけるカーカス層38、ベルト層43のうち、主溝52に重なり合っている部位近傍は、前述のように突っ張りとして機能する陸部54が存在せず、しかも、ベルト層43の曲げ剛性が比較的低い値であるため、半径方向外側に向かって部分的に弧状に突出するよう変形しようとする。
【0017】
このため、この実施形態においては、曲げの中立軸(通常、半径方向最内側のベルトプライ44近傍に位置している)から半径方向内側に離れた、ベルト層43とカーカス層38との間に補強層57を該ベルト層43に重ね合わせて配置したのである。そして、前記補強層57の幅Wを、幅方向最外側に位置する2本の主溝52における外側壁面52a間の間隔Mより広幅として、補強層57を全ての主溝52に重ね合わせるとともに、該補強層57内にタイヤ赤道Sに対する傾斜角Kが60〜90度の範囲内である、即ち、主溝52にほぼ直交する方向に延びるヤング率の高い多数本のスチールコード58、ここではモノフィラメントコードを埋設している。
【0018】
このようにすれば、補強層57内の各スチールコード58は、後述の試験結果に示されているように、全ての主溝52を横切って主溝52位置での部分的な弧状変形に抵抗する剛性の高い梁として機能するため、全ての主溝52位置での部分的な弧状変形が強力に抑制される。そして、このような抑制機能は前記傾斜角Kが90度に近くなるほど大となる。なお、前記補強層57の幅Wをトレッド幅より広くすると、補強層57の幅方向外側端に亀裂が発生し易くなるため、前記補強層57の幅Wはトレッド幅より幅狭とすることが好ましい。
【0019】
また、この実施形態においては、図3に示すように、前述した各スチールコード58の断面形状を製造が容易な楕円とするとともに、該スチールコード58を断面の中立軸がタイヤ周方向に対する接線方向と略平行となるよう配置することで、該楕円の長軸Cがタイヤ径方向に沿うよう配置し、これにより、各スチールコード58の前記断面の中立軸に関する断面二次モーメントを同一断面積である円形断面の断面二次モーメントより大となるようにしている。この結果、梁として機能するスチールコード58の曲げ剛性の値を、直径や打ち込み密度を変化させることなく、断面が円形である従来のスチールコードより高くすることができ、これにより、前述した主溝52位置での部分的な弧状変形を重量増加を招くことなく強力に抑制することができる。このとき、スチールコード58のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Kが前述のような値であるため、補強層57の曲げ剛性はタイヤ幅方向において強化され、タイヤ周方向は殆ど変化しない。
【0020】
ここで、製造時におけるばらつきにより、前記スチールコード58の曲げ剛性が最大となる方向、ここでは、楕円の長軸Cがタイヤ径方向に対して、図4に示すように、傾斜することもあるが、この傾斜角Aが30度以内であれば、弧状変形を強力に抑制することができるため、この範囲内での傾斜は許容される。なお、この角度範囲内であれば、スチールコード58毎に傾斜角度がばらついていてもよい。また、前記スチールコード58として、モノフィラメントコードの他に、図5に示すようなスチールフィラメント59を数本、ここでは6本撚って構成した撚りコードを用いてもよい。
【0021】
また、前述した主溝52位置での部分的な弧状変形により、曲げの中立軸より凸側においては引張力が、また、凹側においては圧縮力が発生するが、この圧縮力に対して曲げの中立軸より半径方向内側に配置された補強層57内のスチールコード58が抵抗として機能するため、前述の弧状変形はさらに抑制される。このようなことから空気入りタイヤ31の操縦安定性、耐摩耗性を簡単かつ確実に向上させることができるとともに、製作費を安価とすることができる。さらに、前記補強層57に埋設されているスチールコード58間の間隔は5mm以上であることが好ましい。その理由は、隣接するスチールコード58間の間隔を5mm以上とすれば、軽量化を図りながらベルト層43の弧状変形を強力に抑制することができるからである。
【0022】
図6は、この発明の実施形態2を示す図である。この実施形態においては、モノフィラメントコードからなるスチールコード63の断面形状を製造が容易な長方形とするとともに、該スチールコード63を長方形の長辺Bがタイヤ径方向に沿うよう配置している。このようにした場合も実施形態1と同様に、梁として機能する各スチールコード63の断面二次モーメントが大となって、曲げ剛性の値が、断面が円形である従来のスチールコードより高くなり、これにより、前述した主溝52位置での部分的な弧状変形を重量増加を招くことなく強力に抑制することができる。
【0023】
図7は、この発明の実施形態3を示す図である。この実施形態においては、モノフィラメントコードからなるスチールコード65の断面形状を、タイヤ径方向に延びる1つの縦延在部66と、縦延在部66の径方向内外端に一体連結され、タイヤ周方向に対する接線方向に延びる2つの横延在部67、68とから構成し、全体として製造が容易なI字状としている。このようにした場合も実施形態1と同様に、梁として機能する各スチールコード65の断面二次モーメントが大となって、曲げ剛性の値が、断面が円形である従来のスチールコードより高くなり、これにより、前述した主溝52位置での部分的な弧状変形を重量増加を招くことなく強力に抑制することができる。
【0024】
図8は、この発明の実施形態4を示す図である。この実施形態においては、モノフィラメントコードからなるスチールコード70の断面形状を、タイヤ径方向に延び互いに重なり合う2つの縦延在部71、72と、縦延在部71、72の径方向中央部に両端が一体連結され、タイヤ周方向に対する接線方向に延びる1つの横延在部73とから構成し、全体として製造が容易なH字状としている。このようにした場合も実施形態1と同様に、梁として機能する各スチールコード70の断面二次モーメントが大となって、曲げ剛性の値が、断面が円形である従来のスチールコードより高くなり、これにより、前述した主溝52位置での部分的な弧状変形を重量増加を招くことなく強力に抑制することができる。
【0025】
なお、前記実施形態2、3、4のようにスチールコード63、65、70の断面形状を長方形、I字状、H字状とした場合も、前記実施形態1と同様に、製造時におけるばらつきにより、前記スチールコード63、65、70の曲げ剛性が最大となる方向、長方形では長辺C、I字状、H字状では、縦延在部66、71、72がタイヤ径方向に対して傾斜することもあるが、この場合も傾斜角Aが30度以内であれば、弧状変形を強力に抑制することができるため、この範囲内での傾斜は許容される。
【0026】
そして、前述の試験結果は以下の試験により得たものである。この試験に当たっては、図9に示すような、ゴムシート74の厚さ方向中央に、断面円形で直径が0.98mmのモノフィラメントからなるスチールコード75が多数本埋設された補強層77を1層配置した試験片1と、ゴムシート74の厚さ方向中央に、断面が楕円で長軸Cの長さが 1.6mm、短軸の長さが 0.6mmのモノフィラメントからなるスチールコード75を、前記長軸Cを厚さ方向に揃えて多数本埋設した補強層77を1層配置した試験片2と、ゴムシート74の厚さ方向中央に、直径が 0.4mmである断面円形のスチールフィラメントを6本撚ることで、外接曲線の形状を長軸Cの長さが 1.6mm、短軸の長さが 1.0mmである楕円としたスチールコード75を、前記長軸Cを厚さ方向に揃えて多数本埋設した補強層77を1層配置した試験片3と、ゴムシート74の厚さ方向中央に、断面が長方形で長辺Bの長さが 1.5mm、短辺の長さが 0.5mmのモノフィラメントからなるスチールコード75を、前記長辺Bを厚さ方向に揃えて多数本埋設した補強層77を1層配置した試験片4とを準備した。
【0027】
ここで、これら試験片1〜4は、各辺の長さが 200mmで厚さが 2mmの正方形であり、また、各試験片1〜4において、タイヤ赤道S(ゴムシート74の一側辺に平行な直線をタイヤ赤道Sと仮定)に対するスチールコード75の交差角Kを 0度から90度まで10度ずつ変化させながら10枚ずつ製作した。また、前記各試験片1〜4におけるスチールコード75間の間隔はいずれも10mmであり、その重量も断面積が実質上同一であるため、実質上同一であった。
【0028】
次に、タイヤ赤道Sに平行に延びるとともに 200mmだけ離れた水平な一対の支持部材78によって各試験片1〜4の両側端をそれぞれ下方から支持した後、該試験片1〜4の幅方向中央上にタイヤ赤道Sに平行に延びる 9.8Nの文鎮状(四角柱状)をした重錘79を載置することで、荷重を付与した。そして、前述のような荷重を各試験片に付与したときの重錘79の直下での最大撓み量を測定し、前記交差角Kが90度である試験片1の最大撓み量の逆数を曲げ強さの指数 100として図10に示した。ここで、交差角Kが90度である試験片1の最大撓み量は28mmであった。この試験結果から前記交差角Kが60〜90度の範囲内であると、曲げ強さが高い値を維持していることが、また、スチールコード75を断面二次モーメントの大きな形状とすると、断面円形の場合より曲げ強さを効果的に高くできることが理解できる。
【0029】
再び、図1、2において、81はベルト層43の幅方向両端部でその半径方向外側に配置され、少なくとも1枚の補助プライ82からなる一対の補助層であり、これら補助プライ82内には実質上周方向に延びる有機繊維、例えばナイロン、ポリエステルから構成された補強コード83が埋設されている。
【0030】
図11はこの発明の実施形態5を示す図である。この実施形態は、サイドウォール部34の内面側にそれぞれ断面略三日月状を呈する比較的硬質の補強ゴム層85を配設することで、タイヤ内圧が漏出しても安全に走行することができる空気入りタイヤ(ランフラットタイヤ)86に適用したもので、この空気入りタイヤ86においては、補助層81を省略する一方、カーカス層38を2枚のカーカスプライ39から構成している。そして、このような空気入りタイヤ86でランフラット走行(タイヤ内圧が0となった状態での走行)を行うと、サイドウォール部34が潰れて幅方向外側に膨出変形する一方、接地領域のトレッド部35(ベルト層43)は全体が半径方向内側に向かって弧状に変形しようとする。
【0031】
しかしながら、この実施形態では、前記実施形態1と同様にベルト層43の半径方向内側、詳しくはベルト層43とカーカス層38との間に配置された補強層57内のスチールコード58の断面を楕円、長方形、I字状、H字状とすることで、該スチールコード58の断面二次モーメントを大とするとともに、前記楕円の長軸、長方形の長辺、I字状、H字状の縦延在部をタイヤ径方向に沿わせたので、梁として機能するスチールコード58の曲げ剛性の値が、断面が円形である従来のスチールコードより高くなり、これにより、前述したトレッド部35における全体的な弧状変形を重量増加を招くことなく強力に抑制することができる。なお、他の構成、作用は前記実施形態1と同様である。
【実施例1】
【0032】
次に、試験例1について説明する。この試験に当たっては、補強層が配置されていない従来タイヤ1と、断面が円形で交差角Kが90度であるスチールコードが埋設された1層の補強層をベルト層とカーカス層との間に配置した比較タイヤ1と、断面が楕円で交差角Kが90度であるスチールコードが埋設された1層の補強層をベルト層とカーカス層との間に配置した実施タイヤ1とを準備した。
【0033】
ここで、前述の各タイヤは高性能乗用車用タイヤで、サイズが215/55R15であった。また、これらタイヤの骨格構造は、図1、2に示すようにタイヤ赤道Sに対して90度で交差するナイロンコードが埋設された1枚のカーカスプライからなるカーカス層と、タイヤ赤道Sに対して25度で逆方向に交差するスチールコードが埋設された2枚のベルトプライからなるベルト層と、タイヤ赤道Sに実質上平行に延びるナイロンコードが埋設された補助層とを備えたものである。
【0034】
また、前記比較タイヤ1の補強層に埋設されているスチールコードは、断面円形で直径が0.98mmのモノフィラメントから構成され、一方、実施タイヤ1の補強層に埋設されているスチールコードは、断面が楕円で長軸Cの長さが 1.6mm、短軸の長さが 0.6mmのモノフィラメントから構成され、長軸Cがタイヤ径方向に延びている。さらに、前記補強層の幅Wを 150mmとするとともに、いずれの補強層においてもスチールコードは10mm間隔で打ち込まれている。
【0035】
そして、このような各タイヤに200kPaの内圧を充填した状態で室内試験機に装着した後、5kNの垂直荷重を負荷しながら路面上をスリップ角 3度でゆっくりと2回転させ、回転後の静止状態において前記荷重直下の断面をX線で撮影し、幅方向最外側の主溝に重なり合っている内側ベルトプライ内のスチールコードの最大変形量を計測した。その結果、前記最大変形量は従来タイヤ1では 0.8mm、比較タイヤ1では 0.4mmであったが、実施タイヤ1では 0.2mm以下まで激減していた。
【0036】
また、前述した各タイヤを乗用車に装着し、テストドライバーによって操縦安定性の評価を行った。その結果、60km/hでの直進時からのレーンチェンジにおいて、実施タイヤ1は非常にクイックに反応し、きびきびした動きをすると評価され、また、比較タイヤ1は従来タイヤ1より良好であるが、実施タイヤ1には及ばないと評価された。その評価をテストドライバーに 100点満点で点数を付けてもらったところ、従来タイヤ1では50点、比較タイヤ1では70点、実施タイヤ1では90点であった。
【実施例2】
【0037】
次に、試験例2について説明する。この試験に当たっては、補強層が配置されていない従来タイヤ2と、断面が長方形で交差角Kが90度であるスチールコードが埋設された幅が 160mmの補強層をベルト層とカーカス層との間に1層配置した実施タイヤ2と、断面がH字状で交差角Kが90度であるスチールコードが埋設された幅が 160mmの補強層をベルト層とカーカス層との間に1層配置した実施タイヤ3とを準備した。
【0038】
ここで、前述の各タイヤは、サイドウォール部の内面側にそれぞれ断面略三日月状を呈する比較的硬質の補強ゴム層が配設された乗用車用ランフラットタイヤで、サイズが225/50R16であった。また、これらタイヤの骨格構造は、図11に示すようにタイヤ赤道Sに対して90度で交差するナイロンコードが埋設された2枚のカーカスプライからなるカーカス層と、タイヤ赤道Sに対して25度で逆方向に交差するスチールコードが埋設された2枚のベルトプライからなるベルト層とを備えたものである。
【0039】
また、前記実施タイヤ2における補強層のスチールコードは、長辺Bの長さが 3mm、短辺の長さが 1.5mmの断面長方形のモノフィラメントから構成されるとともに、長辺Bがタイヤ径方向に延びており、一方、実施タイヤ3における補強層のスチールコードは、高さが 3mm、幅が 3mm、肉厚が一律 0.6mmの断面H字状をしたモノフィラメントから構成されるとともに、縦延在部がタイヤ径方向に延びている。また、実施タイヤ2、3においては、スチールコードを20mm間隔で補強層内に埋設した。
【0040】
次に、このような各タイヤを内圧0(大気圧)の状態で室内試験機に装着した後、5kNの垂直荷重を負荷しながら路面上をスリップ角0度(直進走行)でゆっくりと2回転させ、回転後の静止状態において前記荷重直下の断面をX線で撮影し、タイヤ赤道におけるトレッド外表面の路面からの浮き上がり量U(図14参照)を計測した。その結果は、従来タイヤ2における浮き上がり量Uを指数 100とすると、実施タイヤ2、3では共に50まで効果的に抑制することができた。ここで、指数 100は22mmであった。また、サイドウォール部の潰れも従来タイヤ2より実施タイヤ2、3で少なかった。
【0041】
また、前述した各タイヤを後輪駆動の乗用車に装着した後、後輪右側のタイヤのバルブを外すことで内圧を0とする一方、残り3本のタイヤに220kPaの内圧を充填し、その後、1周約3kmのオーバルコースを時速90kmの定速で、前記後輪右側のタイヤが故障して走行が困難となるまで反時計回りにランフラット走行をさせた。このときの従来タイヤ2の走行距離を指数 100とすると、実施タイヤ2では 370まで、実施タイヤ3では 350まで走行距離が伸びていた。ここで、指数 100は60kmであった。
【0042】
なお、前述の実施形態においては、補強層57をベルト層43の半径方向内側、即ち、ベルト層43とカーカス層38との間に配置したが、この発明においては、図12に示すように、ベルト層43の半径方向外側、即ち、ベルト層43とトレッド51との間に配置してもよく、あるいは、カーカス層38が2枚のカーカスプライ39から構成されているとき、これらカーカスプライ39間に配置するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明は、空気入りタイヤの産業分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施形態1を示す空気入りタイヤの子午線断面図である。
【図2】トレッド部の一部破断平面図である。
【図3】補強層の周方向断面図である。
【図4】補強層の他の例の周方向断面図である。
【図5】スチールコードの他の例を示す断面図である。
【図6】この発明の実施形態2を示す補強層の周方向断面図である。
【図7】この発明の実施形態3を示す補強層の周方向断面図である。
【図8】この発明の実施形態4を示す補強層の周方向断面図である。
【図9】試験片の斜視図である。
【図10】試験結果を示すグラフである。
【図11】この発明の実施形態5を示す空気入りタイヤの子午線断面図である。
【図12】空気入りタイヤの他の例を示す子午線断面図である。
【図13】従来の空気入りタイヤの接地時における断面形状を示す部分子午線断面図である。
【図14】従来の空気入りタイヤのランフラット走行時における断面形状を示す子午線断面図である。
【符号の説明】
【0045】
31…空気入りタイヤ 32…ビード
38…カーカス層 39…カーカスプライ
43…ベルト層 44、45…ベルトプライ
51…トレッド 52…主溝
52a…外側壁面 57…補強層
58…スチールコード S…タイヤ赤道
K…傾斜角 M…間隔
W…幅 A…傾斜角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビード間をトロイダル状に延び少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス層と、該カーカス層の半径方向外側に配置され、少なくとも2枚のベルトプライからなるベルト層と、前記カーカス層、ベルト層の半径方向外側に配置され、外周に複数本の主溝が形成されたトレッドとを備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ赤道に対する傾斜角が60〜90度の範囲内である多数本のスチールコードが埋設され、幅が幅方向最外側に位置する2本の主溝における外側壁面間の間隔より広幅である補強層をベルト層に重ね合わせて設ける一方、前記スチールコードの断面の中立軸をタイヤ接線方向と略平行とするとともに、各スチールコードの断面形状を、前記中立軸に関する断面二次モーメントが同一断面積である円形断面の断面二次モーメントより大となるような形状としたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記スチールコードの断面形状を楕円とするとともに、該スチールコードを楕円の長軸がタイヤ径方向に沿うよう配置した請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記スチールコードの断面形状を長方形とするとともに、該スチールコードを長方形の長辺がタイヤ径方向に沿うよう配置した請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記スチールコードの断面形状を、タイヤ径方向に延びる1つの縦延在部と、縦延在部の径方向内外端に一体連結されタイヤ接線方向に延びる2つの横延在部とから構成し、全体としてI字状とした請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記スチールコードの断面形状を、タイヤ径方向に延び互いに重なり合う2つの縦延在部と、縦延在部の径方向中央部に両端が一体連結されタイヤ接線方向に延びる1つの横延在部とから構成し、全体としてH字状とした請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記楕円の長軸、長方形の長辺または縦延在部のタイヤ径方向に対する傾斜角を30度以内とした請求項2〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項1】
ビード間をトロイダル状に延び少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス層と、該カーカス層の半径方向外側に配置され、少なくとも2枚のベルトプライからなるベルト層と、前記カーカス層、ベルト層の半径方向外側に配置され、外周に複数本の主溝が形成されたトレッドとを備えた空気入りタイヤにおいて、タイヤ赤道に対する傾斜角が60〜90度の範囲内である多数本のスチールコードが埋設され、幅が幅方向最外側に位置する2本の主溝における外側壁面間の間隔より広幅である補強層をベルト層に重ね合わせて設ける一方、前記スチールコードの断面の中立軸をタイヤ接線方向と略平行とするとともに、各スチールコードの断面形状を、前記中立軸に関する断面二次モーメントが同一断面積である円形断面の断面二次モーメントより大となるような形状としたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記スチールコードの断面形状を楕円とするとともに、該スチールコードを楕円の長軸がタイヤ径方向に沿うよう配置した請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記スチールコードの断面形状を長方形とするとともに、該スチールコードを長方形の長辺がタイヤ径方向に沿うよう配置した請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記スチールコードの断面形状を、タイヤ径方向に延びる1つの縦延在部と、縦延在部の径方向内外端に一体連結されタイヤ接線方向に延びる2つの横延在部とから構成し、全体としてI字状とした請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記スチールコードの断面形状を、タイヤ径方向に延び互いに重なり合う2つの縦延在部と、縦延在部の径方向中央部に両端が一体連結されタイヤ接線方向に延びる1つの横延在部とから構成し、全体としてH字状とした請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記楕円の長軸、長方形の長辺または縦延在部のタイヤ径方向に対する傾斜角を30度以内とした請求項2〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−111104(P2006−111104A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299637(P2004−299637)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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