説明

空気入りタイヤ

【課題】より重荷重、高速度化、高ライフの要求に対しても満足のいくものとなり、過酷な条件下でもカーカス部におけるスチールコードとコーティングゴムとの接着耐久性に優れ、耐久性に優れた空気入りタイヤの提供。
【解決手段】一枚以上のカーカスプライからなるカーカス4と、該カーカス4のタイヤ半径方向外側に配設した一枚以上のベルト層6からなるベルトとを備え、上記カーカス4がコーティングゴムで被覆したスチールコードよりなる層を含む空気入りタイヤAであって、上記カーカス4のスチールコードを被覆するコーティングゴムに、ゴム成分と、硫黄と、特定の一般式で表される加硫促進剤(例えば、ベンゾチアゾ-ル基の2位にスルフェンアミド基を有するスルフェンアミド系加硫促進剤)とを含有してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーカスプライの少なくとも1層をスチールコードの層で形成したカーカスを有する空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、スチールコードに対する接着性に優れたゴム組成物をカーカスのスチールコード用のコーティングゴムに用いた耐久性に優れた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車用タイヤに要求される性能は益々厳しくなってきており、タイヤの耐久性の更なる改良が望まれている。更に、近年、空気入りタイヤは、効率化を求めるため、より重荷重、高速度、高ライフを要求されている。
【0003】
カーカスプライの少なくとも1層をスチールコードの層で形成したカーカスを有するスチールコード補強空気入りタイヤにおいては、タイヤの使用条件が重荷重化、高速度化すると、カーカス部のゴム−スチールコード間の接着力低下が促進され、タイヤの耐久性に問題が生じることが知られている。
このスチールコードで補強した空気入りタイヤにおいては、スチールコードと該コードを被覆するコーティングゴムとの接着性を確保することが非常に大きな課題として取り組まれており、これまでスチールコードとコーティングゴムとの接着性を改良するために、様々な検討が行われてきている。
【0004】
例えば、接着耐久性を向上させるために、カーカスゴムの配合の硫黄分を増加させる、カーカスゴムのカーカスコードからクッションゴム間のゲージを増やすなどの手法が知られている。また、クッションゴムの配合でショルダー部の接着耐久性を向上する技術については、ポリメトキシメチルメラミンを配合することで加硫促進剤から放出されたアミン成分をトラップし、接着の湿熱劣化を抑える技術(例えば、特許文献1参照)や、ポリサルファイドを配合し、カーカスコードの接着耐久性を向上させる技術(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0005】
しかしながら、これらの特許文献1及び2に記載される技術を用いても、より重荷重、高速度化、高ライフを要求されるニーズに対しては未だ不十分である点に課題があり、スチールコードとコーティングゴムとの接着耐久性に優れ、耐久性に優れた空気入りタイヤが切望されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−148986号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2005−67358号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状に鑑み、これを解消しようとするものであり、より重荷重、高速度化、高ライフの要求に対しても満足のいくものとなり、過酷な条件下でもカーカス部におけるスチールコードとコーティングゴムとの接着耐久性に優れ、耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、該カーカスのタイヤ半径方向外側に配設した一枚以上のベルト層からなるベルトとを備え、上記カーカスがコーティングゴムで被覆したスチールコードよりなる層を含む空気入りタイヤにおいて、上記カーカスのスチールコードを被覆するコーティングゴムに、特定物性のゴム組成物を用いることにより、上記目的の空気入りタイヤが得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(18)に存する。
(1) 一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、該カーカスのタイヤ半径方向外側に配設した一枚以上のベルト層からなるベルトとを備え、上記カーカスがコーティングゴムで被覆したスチールコードよりなる層を含む空気入りタイヤであって、上記カーカスのスチールコードを被覆するコーティングゴムに、ゴム成分と、硫黄と、下記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤とを含有してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【化1】

(2) 前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤0.1〜10質量部を含有してなる上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(3) 前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄0.3〜10質量部を含有してなる上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(4) 前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄0.3〜10質量部と、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤0.1〜10質量部とを含有してなる上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(5) 上記一般式(I)中のRは、tert−アルキル基であり、n=0である上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(6) 上記一般式(I)中のRは、tert−ブチル基であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖アルキル基であり、R〜Rは、水素原子である上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(7) 上記一般式(I)中のRは、tert−ブチル基であり、n=0であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖アルキル基であり、R〜Rは、水素原子である上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(8) 上記一般式(I)中のRは、tert−ブチル基であり、n=0であり、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基であり、R〜Rは、水素原子である上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
(9) 前記ゴム組成物には、更に、コバルト及び/又はコバルトを含有する化合物を含有する上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
(10) コバルト及び/又はコバルトを含有する化合物の含有量がコバルト量として、ゴム成分100質量部に対し、0.03〜3質量部である上記(9)に記載の空気入りタイヤ。
(11) コバルトを含有する化合物が、有機酸のコバルト塩である上記(9)又は(10)に記載の空気入りタイヤ。
(12) 前記ゴム組成物のゴム成分が、天然ゴム及びポリイソプレンゴムの少なくとも一方を含む上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
(13) 前記ゴム組成物のゴム成分が、50質量%以上の天然ゴム及び残部を合成ゴムよりなる上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
(14) 前記ゴム組成物には、更に、ゴム成分100質量部に対し、アミン化合物を0.8〜3質量部含有する上記(1)〜(13)の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
(15) 空気入りタイヤが重荷重用空気入りタイヤであることを上記(14)記載の空気入りタイヤ。
(16) ショルダー部の最大厚さが100mm以上である上記(15)記載の空気入りタイヤ。
(17) オフザロードタイプである上記(16)記載の空気入りタイヤ。
(18) トラック・バスタイプである上記(15)記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より重荷重、高速度化、高ライフの要求に対しても満足のいくものとなり、過酷な条件下でもカーカス部におけるスチールコードとコーティングゴムとの接着耐久性に優れ、耐久性に優れた空気入りタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら、詳しく説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示す横断面図である。
本実施形態の空気入りタイヤAは、図1に示すように、トレッド部1を備え、該トレッド部1の側部から半径方向内方へ延びる一対のサイドウォール部2と、該サイドウォール部2の半径方向内端に連なるビード部3を備えている。
【0013】
ここでは、本実施形態の空気入りタイヤAは、タイヤの骨格構造をなし、タイヤの上記トレッド部1、サイドウォール部2及びビード部3を補強するカーカス4を、一枚以上のカーカスプライにて構成すると共に、それぞれのビード部3に配設したそれぞれのビードコア5間にトロイダルに延びる本体部と、各ビードコア5の周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部を有する構造となっている。なお、図1中のカーカス4は、一枚のカーカスプライよりなるが、本発明の空気入りタイヤにおいては、カーカスプライの枚数は複数であってもよい。
【0014】
また、図中6は、ベルトを示し、ベルト6は、カーカス4のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配設した一枚以上のベルト層から構成されている。図中のベルト6は、二枚のベルト層よりなるが、本発明の空気入りタイヤにおいては、ベルト層の枚数はこれに限られるものではない。
【0015】
本実施形態の空気入りタイヤAは、カーカス4がコーティングゴムで被覆したスチールコードの層を含むものである。すなわち、カーカス4のカーカスプライの少なくとも一枚が、スチールコードの層であればよく、一枚以上のカーカスプライ層がスチールコードの層であってもよい。
【0016】
本発明では、上記空気入りタイヤAのカーカス4のスチールコードを被覆するコーティングゴムに、ゴム成分と、硫黄と、下記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤とを含有してなるゴム組成物を用いたことを特徴とするものである。
【化2】

【0017】
上記コーティングゴムに用いられるゴム組成物のゴム成分としては、ゴム弾性を示すものであれば特に制限はないが、天然ゴムの他、ビニル芳香族炭化水素/共役ジエン共重合体、ポリイソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等の合成ゴム等の公知のゴムの総てを用いることができる。該ゴム成分は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。スチールコードとの接着特性及びゴム組成物の破壊特性の観点から、該ゴム成分は、天然ゴム及びポリイソプレンゴムの少なくとも一方よりなるか、50質量%以上の天然ゴムを含み残部が合成ゴムであることが好ましい。
【0018】
上記コーティングゴムに用いられるゴム組成物に含有される硫黄としては、特に制限はないが、通常粉体を用いる。上記コーティングゴム用ゴム組成物に含有される硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.3〜10質量部の範囲であり、3〜8質量部の範囲が好ましい。
この硫黄の含有量がゴム成分100質量部に対して0.3質量部以上であると、スチールコードとの接着性の点で好ましく、10質量部以下であると、過剰な接着層の生成が抑制されるため、接着性が低下しないので好ましい。
【0019】
上記コーティングゴム用ゴム組成物に配合される上記一般式(1)で表される化合物は、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド同等の加硫遅延効果を有し、かつ、スチールコード等の金属補強材との直接加硫接着における接着耐久性に優れており、スチールコードを有するカーカスゴム層のコーティング用ゴム組成物に好適に使用するものである。
更に、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤の中で、特に、Rが、tert−ブチル基であり、x=1又は2、n=0であり、Rは直鎖がより好ましいが、直鎖の中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基であり、最も好ましいのはメチル基、エチル基であり、R〜Rが好ましくは水素原子であるスルフェンアミド化合物を加硫促進剤として用いることが接着性と加硫遅延効果の点で最も好ましい。これらのスルフェンアミド系加硫促進剤は、本発明で初めて加硫促進剤として用いられるものであり、かつ、従来のスルフェンアミド系加硫促進剤の中で、最も加硫反応に遅効性を与える加硫促進剤として知られるN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド以上の加硫遅延効果を有しながら十分な加硫促進能力を両立するものであり、しかも、スチールコード等の金属補強材との直接加硫接着における接着耐久性に優れている。そのため、本発明の空気入りタイヤのカーカスプライ層のスチールコードとの直接加硫接着における接着耐久性に優れたコーティング用等のゴム組成物に好適に使用するものである。
【0020】
本発明において、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のRは、炭素数3〜12の分岐アルキル基を表す。このRが炭素数3〜12の分岐アルキル基であれば、一般式(I)で表される化合物の加硫促進性能が良好であると共に、接着性能を高めることができる。
上記一般式(I)で表される化合物のRの具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、トリイソブチル基、sec−ブチル基,tert−ブチル基、イソアミル基(イソペンチル基)、ネオペンチル基、tert−アミル基(tert−ペンチル基)、イソヘキシル基、tert−ヘキシル基、イソヘプチル基、tert−ヘプチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、イソノニル基、tert−ノニル基、イソデシル基、tert−デシル基、イソウンデシル基、tert−ウンデシル基、イソドデシル基、tert−ドデシル基などが挙げられる。
これらの中でも、加硫速度、接着性、人体蓄積性等の点から、Rはα位に分岐を有することが好ましく、更に好ましくは、好適なスコーチタイムが得られるなどの効果の点から、炭素数3〜12のtert−アルキル基が好ましく、特に、tert−ブチル基、tert−アミル基(tert−ペンチル基)、tert−ドデシル基、中でもtert−ブチル基が合成面、原料入手の観点から経済的に優れており、しかも、DCBS(DZ)と同等の加硫速度が得られ、かつ、更なる接着性の点から特に望ましい。
【0021】
また、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のRは、炭素数1〜10の直鎖アルキル基を表す。このRが炭素数1〜10の直鎖アルキル基であれば、一般式(I)で表される化合物の加硫促進性能が良好であると共に、接着性能を高めることができる。
上記一般式(I)で表される化合物のRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基(n−ペンチル基)、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。これらの中でも、合成のし易さや原材料コストなどの効果の点から、炭素数1〜8の直鎖アルキル基、更に炭素数1〜6の直鎖アルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が好ましい。
特に好ましくは、好適なムーニースコーチタイムが得られかつ高いスチールコード接着が得られる点で、炭素数1〜6の直鎖アルキル基が望ましい。これは炭素数が増えると加硫が更に遅れるため生産性が低下したり、接着性が低下するためである。これらの中でも、炭素数4以下の直鎖アルキル基であるメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基が最も望ましい。
また、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のR〜Rは、水素原子、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐のアルキル基又はアルコキシ基であり、これらは同一であっても異なっていてもよく、なかでも、RとRが、炭素数1〜4の直鎖アルキル基又はアルコキシ基、炭素数3〜4の分岐のアルキル基又はアルコキシ基であることが好ましい。また、R〜Rが、炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基の場合、炭素数1であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。好ましいいずれの場合も、化合物の合成のし易さ及び加硫速度が遅くならないためである。
上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物のR〜Rの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基,tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0022】
上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のR、Rがどちらも分岐アルキル基の場合は、合成の困難性が増すこととなり、しかも、安定したものが合成できにくいものとなる、特に、R、Rが共にtert−ブチル基の場合は合成がうまくできない。また、R、Rがどちらも分岐アルキル基の場合は、耐熱接着性が悪くなり、好ましくないものとなる。本発明では、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のRは、炭素数3〜12の分岐アルキル基であり、Rは、炭素数1〜10の直鎖アルキル基であり、この組み合わせにおいて、従来にない本発明の特有の効果を発揮するものとなる。
上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のR、Rの特に好ましい組み合わせとしては、Rがtert−ブチル基であり、Rが炭素数1〜10の直鎖アルキル基、R〜Rは、水素原子の組み合わせである。この組み合わせの中でも、ベストモードとなる組み合わせとしては、Rがtert−ブチル基であり、Rが炭素数4以下となるメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基となる場合であり、更に好ましくは、Rが炭素数3以下、特に好ましくは炭素数2以下であるこの組み合わせの場合に、加硫速度がDCBS(DZ)と同等、更なる接着性能確保、人体蓄積性の見地から最も性能バランスが良いものとなる。
上記ベストモードとなる組み合わせは、薬品の凝縮性を評価する簡易メジャーの一つであるオクタノール/水分配係数(logPOW)の数値から確認することができる。本発明では、このlogPの値は小さいほど、上記加硫速度、接着性能確保、人体蓄積性のバランスがより良好となる。
本発明(後述する実施例等を含む)において、上記オクタノール/水分配係数(logP)の測定は、JIS Z 7260−117(2006)に準拠して、高速液体クロマトグラフィー法により実施することができ、下記式により定義される。
logP=log(「Co」/「Cw」)
C0:1−オクタノール層中の被験物質濃度
Cw:水層中の被験物質濃度
【0023】
上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のxは1又は2の整数を表し、また、nは、0又は1の整数を表し、合成のし易さや原材料コストなどの効果の点から、nは、0であるものが望ましい。
以上のように、本発明に用いる上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物の中で好ましい化合物から更に好ましい化合物を順番にまとめてみると、具体的には、ムーニースコーチタイムが早くなりすぎず加工時にゴム焦げを起こさず、作業性の低下、かつ接着性の低下を回避する点等から、1)上記一般式(I)のRは、tert−ブチル基であり、n=0、Rは、炭素数1〜10の直鎖アルキル基であり、R〜Rは、水素原子であるもの、2)上記一般式(I)中のRは、tert−ブチル基であり、nは0又は1の整数、Rは、炭素数1〜6の直鎖アルキル基であり、R〜Rは、水素原子であるもの、3)上記一般式(I)中のRは、tert−ブチル基であり、n=0であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖アルキル基であり、R〜Rは、水素原子であるもの、4)上記一般式(I)中のRは、tert−ブチル基であり、n=0であり、Rは炭素数4以下の直鎖アルキル基(好ましくは炭素数3以下の直鎖アルキル基)であり、R〜Rは、水素原子であるもの、5)上記一般式(I)中のRは、tert−ブチル基であり、n=0であり、Rは炭素数2以下の直鎖アルキル基(メチル基、エチル基)であり、R〜Rは、水素原子であるものが好ましいものとなる(降順する程、好適なスルフェンアミド化合物となる)。
なお、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のRが炭素数3〜12の分岐アルキル基以外の各官能基(例えば、n−オクタデシル基等)や炭素数が12を超える分岐アルキル基である場合、また、Rが炭素数1〜10の直鎖アルキル基以外の各官能基(例えば、n−オクタデシル基等)や炭素数10を超える直鎖アルキル基である場合、更にR〜Rが上記範囲外の各官能基、各炭素数の範囲外である場合、更にまた、nが2以上の場合には、本発明の目的の効果を発揮することが少なく、好適なムーニースコーチタイムが遅くなり加硫時間が長くなることによる生産性低下、若しくは、接着性が低下したり、または、促進剤としての加硫性能やゴム性能が低下したりすることがある。更に、xが3以上では、安定性の点で好ましくない。また、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物中のRが分岐アルキル基である場合に、α位以外に分岐を有するもの、例えば、2−エチルヘキシル、2−エチルブチルなどの場合には、加硫速度、接着性能確保、人体蓄積性のバランスが悪化する傾向となるので、α位に分岐があることが望ましい。
【0024】
本発明において、上記一般式(I)で表される化合物の代表例としては、N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−メチル−N−イソアミルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−イソアミルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−イソアミルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−ブチル−N−イソアミルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−メチル−N−tert−アミルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−tert−アミルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−tert−アミルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−ブチル−N−tert−アミルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−メチル−N−tert−ヘプチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−tert−ヘプチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−tert−ヘプチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−ブチル−N−tert−ヘプチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独で又は2種以上を混合して(本明細書では、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。
好ましくは、更なる接着性能の点から、N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドが好ましい。
これらの中でも、特に、最も長いスコーチタイムと優れた接着性能を有する点で、N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド、N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドを用いることが望ましい。
これらの化合物は、1種でも組み合わせて使用してもよい。また、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾ−ルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾ−ルスルフェンアミド(CBS)、ジベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)などの汎用の加硫促進剤と組み合わせて使用することも可能である。
【0025】
本発明の上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド化合物の好ましい製造方法としては、下記方法を挙げることができる。
すなわち、対応するアミンと次亜塩素酸ソーダの反応によりあらかじめ調製したN−クロロアミンとビス(ベンゾチアゾ−ル−2−イル)ジスルフィドを、アミンおよび塩基存在下、適切な溶媒中で反応させる。塩基としてアミンを用いた場合は、中和を行い、遊離のアミンに戻した後、得られた反応混合物の性状に従って、ろ過、水洗、濃縮、再結晶など適切な後処理をおこなうと、目的とするスルフェンアミドが得られる。
本製造方法に用いる塩基としては、過剰量用いた原料アミン、トリエチルアミンなどの3級アミン、水酸化アルカリ、炭酸アルカリ、重炭酸アルカリ、ナトリウムアルコキシドなどが挙げられる。特に、過剰の原料アミンを塩基として用いたり、3級アミンであるトリエチルアミンを用いて反応を行い、水酸化ナトリウムで生成した塩酸塩を中和し、目的物を取り出した後、ろ液からアミンを再利用する方法が望ましい。
本製造方法に用いる溶媒としては、アルコールが望ましく、特にメタノールが望ましい。
例えば、N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドでは、N−t−ブチルエチルアミンに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を0℃以下で滴下し、2時間攪拌後油層を分取した。ビス(ベンゾチアゾ−ル−2−イル)ジスルフィド、N−t−ブチルエチルアミンおよび前述の油層を、メタノ−ルに懸濁させ、還流下2時間攪拌した。冷却後、水酸化ナトリウムで中和し、ろ過、水洗、減圧濃縮した後、再結晶することで目的とするN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミド(白色固体)を得ることができる。
【0026】
これらのスルフェンアミド系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜10質量部、好ましくは、0.5〜5.0質量部、更に好ましくは、0.8〜2.5質量部とすることが望ましい。
この加硫促進剤の含有量が0.1質量部未満であると、十分に加硫しなくなり、一方、10質量部を越えると、ブルームが問題となり、好ましくない。
【0027】
更に、本発明のカーカス4のスチールコードを被覆するコーティングゴムに用いるゴム組成物には、初期接着性能の向上の点から、コバルト(単体)及び/又はコバルトを含有する化合物を含有せしめることが好ましい。
用いることができるコバルトを含有する化合物としては、有機酸のコバルト塩、無機酸のコバルト塩である塩化コバルト、硫酸コバルト、硝酸コバルト、リン酸コバルト、クロム酸コバルトの少なくとも1種が挙げられる。
好ましくは、更なる初期接着性能の向上の点から、有機酸のコバルト塩の使用が望ましい。
用いることができる有機酸のコバルト塩としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト等の少なくとも1種を挙げることができ、また、有機酸コバルトは有機酸の一部をホウ酸で置き換えた複合塩でもよく、具体的には、市販のOMG社製の商品名「マノボンド」等も用いることができる。なお、スチール(金属材)・ゴム接着反応において、コバルトを含むものであれば、脂肪酸等のコバルト塩でなくとも、接着性能は向上するものとなる。
これらのコバルト及び/又はコバルトを含有する化合物の(合計)含有量は、コバルト量として、ゴム成分100質量部に対し、0.03〜3質量部、好ましくは、0.03〜1質量部、更に好ましくは、0.05〜0.7質量部とすることが望ましい。
これらのコバルト量の含有量が0.03質量部未満では、更なる接着性を発揮することができず、一方、3質量部を越えると、老化物性が大きく低下し、好ましくない。
【0028】
更に、本発明のカーカス4のスチールコードを被覆するコーティングゴムに用いるゴム組成物には、コーティングゴムの耐破壊性能を更に向上せしめる点から、ゴム成分100質量部に対し、アミン化合物を0.8〜3質量部含有せしめることが望ましい。
用いることができるアミン化合物としては、特に制限はなく、例えば、n−(1,3−ジメチルブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンとの反応物等のアミン−ケトン系化合物:フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4´−ビス(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェレンジアミン、N,N´−ジフェニル−p−フェレンジアミン、N−フェニル−N´−イソプロピル−p−フェレンジアミン、N−フェニル−N´−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェレンジアミン等の芳香族第二級アミン系化合物等のモノフェノール系化合物等が挙げられる。これらのアミンか化合物は防錆効果と老化防止効果があるため効果的である。これらのアミンか化合物は1種単独で用いても良く、2種以上併用してもよい。
本発明では、カーカス4のスチールコードを被覆するコーティングゴムに用いるゴム組成物には、アミン化合物を0.8〜3質量部含有せしめることにより、1)コーティングゴムの耐破壊性能を新品時及び走行後共に向上させることができ、2)アミン化合物は、スチールコードをコーティングゴムで被覆して放置(トリート放置)した際にスチールコード表面のCuSの層形成を防ぐことができるため、接着反応が安定化し加硫後の接着耐久性をより向上させることができ、また、3)アミンか化合物はスチールコードに対する防蝕作用を有するのでスチールコードの腐食を防止することができるものとなる。
ここで、前記ゴム組成物へのアミン化合物の含有量が0.8質量部未満であると、アミン化合物を含有せしめる効果が期待できず、一方、3.0質量部を越えると、未加硫時にアミン化合物がスチールコード表面にブルームし、部材間剥離を生ずることがある。
【0029】
本発明のカーカス4のスチールコードを被覆するコーティングゴムに用いるゴム組成物には、上記ゴム成分、硫黄、加硫促進剤、コバルト化合物の他に、空気入りタイヤで通常使用される配合剤を本発明の効果を阻害しない範囲で用いることができ、例えば、カーボンブラック、シリカ等の無機充填剤、軟化剤、老化防止剤などをタイヤ用途に応じて適宜配合することができる。
【0030】
本発明の空気入りタイヤは、上記各成分を、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー等により混練りすることによりカーカス4のスチールコードを被覆するコーティングゴム用ゴム組成物を調製でき、乗用車、トラック、バス、二輪車用等の空気入りタイヤのカーカス4のスチールコードを被覆するコーティングゴム用として、スチールコードとの直接加硫接着に好適に使用できるものとなる。
【0031】
このように構成される本発明の空気入りタイヤでは、特に強度が要求される自動車用、トラック・バス用の空気入りタイヤに好適に適用でき、より重荷重、高速度化、高ライフの要求に対しても満足のいく空気入りタイヤとなり、カーカス部におけるスチールコードとコーティングゴムとの接着耐久性に優れ、耐久性に優れた空気入りタイヤとなる。
また、コバルト(単体)及び/又はコバルトを含有する化合物を更に含有するゴム組成物を用いることにより、更に、空気入りタイヤのカーカス部に用いられるスチールコードとの接着耐久性に優れ、更に耐久性に優れた空気入りタイヤが得られるものとなる。
更に、ゴム成分100質量部に対し、アミン化合物を0.8〜3質量部含有するゴム組成物を用いることにより、コーティングゴムの耐破壊性能を新品時及び走行後共に向上させることができると共に、スチールコードをコーティングゴムで被覆して放置(トリート放置)した際にスチールコード表面のCuSの層形成を防ぐことができるため、接着反応が安定化し加硫後の接着耐久性をより向上させることができ、更に、スチールコードに対する防蝕作用を有するのでスチールコードの腐食を防止することができるものとなるので、重荷重用空気入りタイヤに好適荷てきようすることができ、特に、ショルダー部の最大厚さが100mm以上である重荷重用空気入りタイヤ、例えば、オフザロリードタイプの空気入りタイヤに好適に適用することができる。また、トレック、バス用の空気入りタイヤにも好適に適用することができる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明のカーカスのスチールコードを被覆するコーティングゴムに用いる加硫促進剤の製造例、並びに、本発明の空気入りタイヤの実施例及び比較例に基づいて更に詳述するが、本発明は、これらの製造例、実施例に何ら限定されるものではない。
また、得られた加硫促進剤(1〜4)のオクタノール/水分配係数(logP)を、JIS Z 7260−117(2006)に準拠して、高速液体クロマトグラフィー法により測定した。高速液体クロマトグラフィーは、島津製作所社製のものを使用した。
【0033】
〔製造例1:N−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドの合成〕
N−t−ブチルエチルアミン16.4g(0.162mol)に12%次亜塩素酸ナトリウム水溶液148gを0℃以下で滴下し、2時間攪拌後油層を分取した。ビス(ベンゾチアゾ−ル−2−イル)ジスルフィド39.8g(0.120mol)、N−t−ブチルエチルアミン24.3g(0.240mmol)および前述の油層を、メタノ−ル120mlに懸濁させ、還流下2時間攪拌した。冷却後、水酸化ナトリウム6.6g(0.166mol)で中和し、ろ過、水洗、減圧濃縮した後、再結晶することで目的とするN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドを41.9g(収率66%)の白色固体(融点60〜61℃)として得た。
得られたN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのスペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ=1.29(t,3H,J=7.1Hz,CH(エチル))、1.34(s,9H,CH(t−ブチル))、2.9−3.4(br−d,CH)、7.23(1H,m)、7.37(1H,m)、7.75(1H,m)、7.78(1H,m):13C−NMR(100MHz,CDCl)δ=15.12、28.06、47.08、60.41、120.70、121.26、123.23、125.64、134.75、154.93、182.63:質量分析(EI、70eV):m/z;251(M−CH)、167(M−C14N)、100(M−CNS):IR(KBr,cm−1):3061,2975,2932,2868,1461,1429,1393,1366,1352,1309,1273,1238,1198,1103,1022,1011,936,895,756,727。
また、このN−エチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、4.9であった。
【0034】
〔製造例2:N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドの合成〕
N−t−ブチルエチルアミンの代わりにN−t−ブチルメチルアミン14.1g(0.162mol)用いて実施例1と同様に行い、N−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドを46.8g(収率82%)の白色固体(融点56〜58℃)として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ=1.32(9H,s,CH(t−ブチル))、3.02(3H,s,CH(メチル))、7.24(1H,m)、7.38(1H,m)、7.77(1H,m)、7.79(1H,m):13C−NMR(100MHz,CDCl)δ=27.3、41.9、59.2、120.9、121.4、123.3、125.7、135.0、155.5、180.8:質量分析(EI,70eV)m/z;252(M)、237(M−CH)、223(M−C)、195(M−C)、167(M−C12N)、86(M−CNS)。
また、このN−メチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、4.5であった。
【0035】
〔製造例3:N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドの合成〕
N−t−ブチルエチルアミンの代わりにN−n−プロピル−t−ブチルアミン18.7g(0.162mol)を用いて実施例1と同様に行い、N−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドを白色固体(融点50〜52℃)として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:0.92(t,J=7.3Hz,3H),1.34(s,9H),1.75(br,2H),3.03(brd,2H),7.24(t,J=7.0Hz,1H),7.38(t,J=7.0Hz,1H),7.77(d,J=7.5Hz,1H),7.79(d,J=7.5Hz,1H)。
13C−NMR(100MHz,CDCl)δ:11.7,23.0,28.1,55.3,60.4,120.7,121.3,123.3,125.7,134.7,154.8,181.3。
また、このN−n−プロピル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、5.3であった。
【0036】
〔製造例4:N−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドの合成〕
N−t−ブチルエチルアミンの代わりにN−t−ブチル−n−ブチルアミン20.9g(0.162mol)を用いて実施例1と同様に行い、N−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドを42.4g(収率60%)の白色固体(融点55〜56℃)として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ=0.89(3H,t,J=7.32Hz,CH(n−Bu))、1.2−1.4(s+m,11H,CH(t−ブチル)+CH(n−ブチル))、1.70(br.s,2H,CH)、2.9−3.2(br.d,2H,N−CH)、7.23(1H,m)、7.37(1H,m)、7.75(1H,m)、7.78(1H,m);13C−NMR(100MHz,CDCl)δ:14.0、20.4、27.9、31.8、53.0、60.3、120.6、121.1、123.1、125.5、134.6、154.8、181.2;質量分析(EI,70eV)、m/z294(M)、279(M−CH)、237(M−C)、167(M−C18N)、128(M−CNS):IR(neat):1707cm−1,3302cm−1
また、このN−n−ブチル−N−t−ブチルベンゾチアゾ−ル−2−スルフェンアミドのオクタノール/水分配係数(logP)は、5.8であった。
【0037】
〔実施例1〜7及び比較例1〜5〕
2200mlのバンバリーミキサーを使用して、ゴム成分、硫黄、上記製造例で得た加硫促進剤、有機酸コバルト塩、その他の配合剤を下記表1及び表2に示す配合処方で混練り混合して未加硫のゴム組成物を調製した。次に、得られたゴム組成物でスチールコードを被覆してカーカス層を形成し、該カーカス層を備えた、サイズ18.00R25の空気入りラジルタイヤを常法により試作した。
得られた各試作タイヤを時速20km/hで、ステップロード(荷重:TRA規格100%、10ton、内圧800kPa、72時間毎に荷重20%アップ)で、320時間走行後停止し、ショルダー部最大ゲージ部中心に10cmの領域のカーカスコードゴム被覆率を初期(製造直後)と比較して求めた。このカーカスコードゴム被覆率の数値が高いほど、接着耐久性に優れ、耐久性に優れた空気入りタイヤとなる
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜7の空気入りタイヤは、本発明の範囲外となる比較例1〜5の空気入りタイヤに較べて、耐久性に優れた空気入りタイヤとなることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の空気入りタイヤでは、タイヤカーカスのスチールコードを被覆するコーティングゴムに、スチールコードとの直接加硫接着する好適なゴム組成物を用いることにより、乗用車、トラック、バス用等に好適なものとなる。
【符号の説明】
【0042】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス
5 ビードコア
6 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、該カーカスのタイヤ半径方向外側に配設した一枚以上のベルト層からなるベルトとを備え、上記カーカスがコーティングゴムで被覆したスチールコードよりなる層を含む空気入りタイヤであって、上記カーカスのスチールコードを被覆するコーティングゴムに、ゴム成分と、硫黄と、下記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤とを含有してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【化1】

【請求項2】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤0.1〜10質量部を含有してなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄0.3〜10質量部を含有してなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄0.3〜10質量部と、上記一般式(I)で表されるスルフェンアミド系加硫促進剤0.1〜10質量部とを含有してなる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
上記一般式(I)中のRは、tert−アルキル基であり、n=0である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
上記一般式(I)中のRは、tert−ブチル基であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖アルキル基であり、R〜Rは、水素原子である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
上記一般式(I)中のRは、tert−ブチル基であり、n=0であり、Rは、炭素数1〜6の直鎖アルキル基であり、R〜Rは、水素原子である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
上記一般式(I)中のRは、tert−ブチル基であり、n=0であり、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基であり、R〜Rは、水素原子である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物には、更に、コバルト及び/又はコバルトを含有する化合物を含有する請求項1〜8の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
コバルト及び/又はコバルトを含有する化合物の含有量がコバルト量として、ゴム成分100質量部に対し、0.03〜3質量部である請求項9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
コバルトを含有する化合物が、有機酸のコバルト塩である請求項9又は10に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ゴム組成物のゴム成分が、天然ゴム及びポリイソプレンゴムの少なくとも一方を含む請求項1〜11の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記ゴム組成物のゴム成分が、50質量%以上の天然ゴム及び残部を合成ゴムよりなる請求項1〜11の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記ゴム組成物には、更に、ゴム成分100質量部に対し、アミン化合物を0.8〜3質量部含有する請求項1〜13の何れか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
空気入りタイヤが重荷重用空気入りタイヤであることを請求項14記載の空気入りタイヤ。
【請求項16】
ショルダー部の最大厚さが100mm以上である請求項15記載の空気入りタイヤ。
【請求項17】
オフザロードタイプである請求項16記載の空気入りタイヤ。
【請求項18】
トラック・バスタイプである請求項15記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−275518(P2010−275518A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160393(P2009−160393)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】