説明

空気動式湿式比重選別装置

【課題】低比重物質と高比重物質のまったく異なる性状の物質であっても、選別精度の高い空気動式湿式比重選別機を提供する。
【解決手段】 従来の空気動式湿式比重選別機は、分散板の上面の選別室で整流脈動により選別をおこなっていたが、本発明は、分散板の下面の脈動室と同一の位置にある選別室で選別をおこなう方式であり、分離版の下槽室で選別をおこなうことにより、水より低い比重の浮上物質は常に分離板の下にあるため、浮上物質への載荷を水中での強制不整流脈動によりはずすことができ、かつ、線状物質が突き刺さっている状態に対しても水を任意の強制の不整流脈動力を与えることにより分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水より比重の低い低比重物質に付着している水より比重の重い導線又は長形硬物質である高比重物質を分離する手段として水の上下作動を利用する脈動式の湿式比重選別機の網の下槽に選別室を設け、脈動水と共に回収される低比重物質中に残留している本来、高比重物質として回収される物質が低比重物質中に混入することを防止し、低比重物質の品質精度を向上させ、低比重物質の純度を上げる技術である。
【背景技術】
【0002】
従来の水より比重の低い低比重物質に水より比重の重い高比重物質が付着した場合の除去方法を図1に示す。通常の分散板の上面で選別を行う空気動式湿式比重選別機1は、選別室2と脈動室3とその間に分散板4で構成されていて、脈動室3には、水の整流脈動を与える空気室5が備えられ、加圧空気の入気及び排気を行う入排気口8aが設けられている。又、選別対象物9に水の比重に近い軽比重選別対象物及び水より比重が低い選別対象物がある場合は、強制的に選別対象物9を水中に没しさせる機能を持った反転装置6が取付けられている。又選別対象物9が水の整流脈動によって選別され、高比重線状選別物10及び高比重選別物11は高比重排出装置7により定量的に排出される。選別された低比重選別物12には、水と共に排出される方法が一般的な空気動式湿式比重選別機1である。
【0003】
但し、反転装置6の目的は、選別対象物9を強制的に水中に没しさせ、その際水より比重の高い物質が水より比重が低い物質に載荷され、比重選別されないで高比重線状選別物10が低比重選別物12と共に排出することを防止するため、水中にもぐらさせて沈降させるためであるが、この方法では選別対象物9が積層されていることもあり、反転機構のみでは十分な分離機能とならなく、低比重選別物12内に高比重線状選別物10が混入する。
【0004】
又、従来の技術として、図2に示すように木屑等比重が水より低い異物質14は、低比重選別物15として回収されないように異物除去装置13を取付けることがある。但し、この場合は、異物を除去することであり、異物質14内に低比重物質15に混入することになり、高比重線状選別物10及び高比重選別物11の誤込み物を除外する目的ではない。
【特許文献1】特開 2001−220192広報
【特許文献2】特開 2004−34674広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の空気動式湿式比重選別機の適性な選別対象物は無機系物質がほとんどであるが、本発明の湿式比重選別機は鉱物原料と異なり、水より低い物質又は水に近い物質の比重例えば、比重1.05〜1.2と水より高い比重、例えば比重2.0以上を製品産物として回収することが多く、例えば、産業廃棄物のように複合廃材物とした多種の比重の異なるプラスチックと金属の混合物が多く、これらを個別に選別し資源物として回収する必要性がある。従って、低比重物質と高比重物質とはまったく異なる性状の物質であるため、相互物質の混入を皆無にしなければならない。このため従来の空気動式湿式比重選別機の機能では、相互物質の混入を精度を高くして選別することは出来ない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来の空気動式湿式比重選別機は、分散板の上面の選別室2で整流脈動により選別をおこなっていたが、本発明は、分散板の下面の脈動室3で選別をおこなう方式、即ち分離板の下槽室で選別をおこなうことにより課題を解決することができる。即ち、水より低い比重の浮上物質は常に分離板の下にあるため、浮上物質への載荷を水中での強制の脈動運転によりはずすことで解決でき、かつ、線状物質が突き刺さっている状態に対しても水を任意の強制の不整流脈動力を与えることにより分離することができる。
【発明の効果】
【0007】
高比重物質の載荷物を除外するため、従来の反転装置方式を採用する場合は、図1の反転装置の数を増やさなければならなかったが、本装置の発明により低比重物回収物中の混入物はほとんどなくなり、低比重物質である浮上物質の純度が上る。又、従来型の湿式比重選別機は構造上反転装置が取付けられない場合が多くあった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
浮上物質内に沈降物質が混入させない方法として、浮上物質を強制的に水中に没しさせ、水の上下方向の脈動を与えることにより、浮上物質浮上物質に付着している沈降物質を分離させるが、浮上物質を水中にある分離板の下面で水と同様な水中での上下動作をおこなわせる事により、分離効率が最適となることを利用する構造とした湿式比重選別機の形態である。更に脈動は整流状態でなく不規則な脈動を与えることにより、より効果のある分離状態となる。
【実証例】
【0009】
図3は、分離板の下槽に選別室のある湿式比重選別機の構造を示す。図1に示す従来型の空気動式湿式比重選別機1は分散板4の上面に選別室2があり、下面には脈動室3と空気室5がある構造であるが、本発明は分離板4Aの下面に選別室2Aと脈動室3A及び空気室5が存在する構造である。選別対象物9中の水より比重の低い物質である低比重物質12は反転装置6により強制的に分離板4Aの下面に沿って、水の流れと共に浮上物排出装置7Aに水の上下方向の動作に追従しながら移動し排出される。この時、同様に低比重物質12は、入排気口8bと排気口8cから個別の入気弁8bと排気弁8cによるランダムな加圧空気による水の上下方向の不整流脈動流を与えられることにより、低比重物質12に付着していた例えば、金属系長形物は不整流脈動の衝撃により分離され、高比重物質11となる。
【0010】
図4及び図5は、図3における脈動状況を説明する図であるが、図4は従来の整流脈動パターンシステムの1例である。1サイクル中に入気と排気が1回ずつ繰り返され、又、波高及び波形はすべて同一であることを特徴としている。図5は本発明の不整流脈動パターンシステムである。1サイクルの時間は一定であるが、波高及び波形を任意に変更することを特徴とし、この現象を与えることにより、選別対象物9の水中での動きに変化を与えることが出来る。この不整流脈動パターンが効果的に低比重物質に載荷された高比重物質を分離することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0000】
従来の軟質系発泡プラスチックに針状物が突き刺さった状態又は、水より比重の低い物質を選別する際に載荷された状況になった比重の重い物質が混入する現象は頻繁に生じ、分離精度が低下し、回収有用物の価値を低下させている。現状の技術では、人間が目視により取り除く手段しかなく結果的には、有用物としてではなく、廃棄物として埋め立て処分されることがほとんどである。本発明の技術により、産業廃棄物又は、解体処理業での分別作業のすべての物質の分別に適応可能となる。特に、自動車のシュレッダーダスト、廃家電シュレッダーダスト等には軟質系発泡ウレタン内の導線の混入は多量であり、この物質同士を分離することにより機械装置業及び回収業としてのリサイクル産業事業が成立し、又循環型社会の構築を目指す資源回収産業事業も成立する。
【図面の簡単な説明】
【0000】
【図1】反転装置付空気動式湿式比重選別機の説明図である。
【図2】木くず等浮上物除去装置付空気動式湿式比重選別機の説明図である。
【図3】本事業形態の分離板の下槽選別の空気動式湿式比重選別機の機能説明図である。
【図4】従来の整流脈動パターンシステムの説明図である。
【図5】本事業形態の不整流脈動パターンシステムの説明図である。
【符号の説明】
1 空気動式湿式比重選別機
1A 分離板下選別式空気動式湿式比重選別機
2 選別室
3 脈動室
4 分散板
4A 分離板
5 空気室
6 反転装置
7 高比重排出装置
7A 浮上物排出装置
8a 入排気口
8b 入気口
8c 排気口
8A 入排気空気弁
8B 入気空気弁
8C 排気空気弁
9 選別対象物
10 高比重線状選別物
11 高比重選別物
12 低比重選別物
13 異物除去装置
14 異物質
15 低比重物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン、発泡スチロールの軟質系発泡プラスチック等水より比重の低い低比重物質に線状、板状の異なる性状を持つ金属、プラスチック等水より比重の重い高比重物質が付着混在している複合破砕物に対して、水中に没して分離する方法として、水槽中に分離板を設置し、低比重物質を強制的に分離板の下に高比重物質内の付着混存物と共に装入し、水を上下方向に作動させ、複合破砕物も同様の動作をする低比重物質と高比重物質を分散板の下槽室で選別させる湿式比重選別装置。
【請求項2】
請求項1において、水を上下方向に作動させる方法は、加圧空気を利用するが、その構造は分離板の下に空気室を設け、空気室内にて加圧空気を入気及び排気を行うことにより、空気と水境界面とにおいて、空気力が水面に作動させて水面を上下する機構を持っている装置。
【請求項3】
請求項1において、水より比重の低いウレタン等発泡性プラスチックと比重の重い線状物質又は板状物質の分離は分離板の下部水槽で行われるが、比重の低い物質は分離板の下面に沿って、水と共に排出される排出調整機により回収し、比重の高い物質は沈降物として水槽下端部から、排出される装置。
【請求項4】
請求項1において、空気室から入気及び排気を繰り返すか、入気口と排気口は空気室の反対側板に位置し、入気と排気のタイミングを個別に調整する入気弁と排気弁を設けている装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−98377(P2007−98377A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321500(P2005−321500)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(500144491)アグロ技術株式会社 (6)
【出願人】(597164828)有限会社鉱物解析研究所 (3)
【Fターム(参考)】