説明

空気圧縮式空気清浄装置

【課題】高効率で、処理する空気の量に関わらずメンテナンスコストに優れる空気圧縮式の空気清浄装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の空気清浄装置は、空気導入経路と、上記空気導入経路に配設され上記空気導入経路内の空気を加湿する加湿手段と、上記空気導入経路の下流端に配設された空気圧縮機と、上記空気圧縮機の排気口に接続された排気経路と、上記排気経路に配設され空気の圧縮又は冷却によって生成する凝縮水を排出する排水手段とを備える空気清浄装置である。上記空気圧縮機の圧縮比が2以上25以下であるとよい。上記空気導入経路が、吸入される空気を加熱する空気加熱手段を上記加湿手段の上流に有するとよい。上記排気経路が、上記空気圧縮機から排気される空気を貯留する複数の気水分離タンクを有し、この複数の気水分離タンクが並列に上記排気経路に接続されているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄装置に関し、詳細には、加湿した空気を圧縮によって除湿することで、空気中の汚染物を除去することができる空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境対策として、生産工程等において排出される汚染物質を含有した汚染空気を清浄な空気へと変換する空気清浄装置が用いられている。この空気清浄装置としては、水の噴霧等による加湿によって空気内の汚染物質を水で捕捉し、その後除湿することによって汚染物質を除去する空気清浄装置が発案されている(特開2005−106358号公報等参照)。
【0003】
このような従来の空気清浄装置では、加湿した空気から水蒸気を除去する除湿手段として、冷却した金属板で水蒸気を結露させる方法、吸湿材で吸湿する方法、中空糸膜で水分子を分離する方法等が用いられている。しかしながら、金属板を用いた方法は腐食が懸念され、吸湿材を用いた方法は吸湿材の定期的な再生が必要となり、中空糸膜を用いた方法は中空糸膜自体が破損しやすく頻繁なメンテナンスが必要となる。さらに、処理する空気量に対応して、上記の除湿手段として用いられる部材が増減されるため、処理量が大きくなった場合には、さらなるメンテナンスコストの増大が避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−106358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、高効率で、処理する空気の量に関わらずメンテナンスコストに優れる空気圧縮式の空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、
空気導入経路と、
上記空気導入経路に配設され、上記空気導入経路内の空気を加湿する加湿手段と、
上記空気導入経路の下流端に配設された空気圧縮機と、
上記空気圧縮機の排気口に接続された排気経路と、
上記排気経路に配設され空気の圧縮又は冷却によって生成する凝縮水を排出する排水手段と
を備える空気清浄装置である。
【0007】
当該空気清浄装置は、空気導入経路と、上記空気導入経路に配設され、上記空気導入経路内の空気を加湿する加湿手段と、上記空気導入経路の下流端に配設された空気圧縮機と、上記空気圧縮機の排気口に接続された排気経路と、上記排気経路に配設され空気の圧縮又は冷却によって生成する凝縮水を排出する排水手段とを備えるため、吸入した空気が含有する汚染物質を加湿によって吸入空気に含有させた水で捕捉し、この含有させた水(水蒸気)を含んだ空気を空気圧縮機によって圧縮することで、汚染物質を捕捉した水蒸気を凝縮して凝縮水を生成し、この凝縮水を系外に排出することができる。この結果、当該空気清浄装置は、効率的に吸入した空気から汚染物質を除去して清浄な空気に変換することができる。
【0008】
また、当該空気清浄装置は、水蒸気の凝縮過程(除湿過程)において消耗性の部材の使用量が少ないため、処理する空気の量に関わらずメンテナンスのコスト及び手間を削減することができる。
【0009】
上記空気圧縮機の圧縮比が2以上25以下であるとよい。空気圧縮機の圧縮比が2以上であることによって、当該空気清浄装置は、効率的に気水分離を行うことができ、また、空気圧縮機の圧縮比が25以下であることによって、当該空気清浄装置のコストを低減することができる。
【0010】
上記空気導入経路に吸入される空気を加熱する空気加熱手段を上記加湿手段の上流に有するとよい。このように上記空気導入経路に吸入される空気を加熱する空気加熱手段を上記加湿手段の上流に有することによって、当該空気清浄装置は、吸入空気の飽和水蒸気量を増加させてより多くの水蒸気を吸入空気に含有させることができる。この結果、当該空気清浄装置は、より効果的に空気を清浄することができる。
【0011】
上記排水手段として、上記空気圧縮機から排気される空気を貯留する複数の気水分離タンクを有し、この複数の気水分離タンクが並列に上記排気経路に接続されているとよい。このように上記排水手段として、上記空気圧縮機から排気される空気を貯留する複数の気水分離タンクを有し、この複数の気水分離タンクが並列に上記排気経路に接続されていることによって、当該空気清浄装置は、圧縮機から排気される空気をこれらの気水分離タンクに貯留し冷却することができ、この空気が含む水蒸気をさらに除去することができる。そのため、当該空気清浄装置は、より効果的に空気を清浄することができる。また、清浄する空気の量に関わらず、メンテナンスコストを低減することができる。
【0012】
上記空気圧縮機から排気される空気を冷却する空気冷却手段を有するとよい。このように上記空気圧縮機から排気される空気を冷却する空気冷却手段を有することによって、当該空気清浄装置は、空気圧縮機から排気される空気が含む水蒸気を短時間で凝縮して除去することができる。この結果、当該空気清浄装置は、より効率的に空気を清浄することができる。
【0013】
上記空気圧縮機から排気される空気を洗浄する空気洗浄タンクを有するとよい。このように上記空気圧縮機から排気される空気を洗浄する空気洗浄タンクを有することによって、当該空気清浄装置は、空気の清浄度をより高めつつ、処理する空気の量に関わらずメンテナンスのコスト及び手間を削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の空気清浄装置は、空気を加湿した後に圧縮による除湿を行うことによって、高効率で空気に含有される汚染物質を除去することができ、かつ処理する空気の量に関わらずメンテナンスコストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気清浄装置の模式的説明図である。
【図2】図1の空気清浄装置とは異なる形態に係る空気清浄装置の模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳説する。
図1の空気清浄装置1は、空気圧縮機2、空気導入経路3、水噴霧装置4、複数の気水分離タンク6、複数の空気洗浄タンク7を備える。
【0017】
<空気圧縮機2>
空気圧縮機2は、水が噴霧された空気を空気導入経路3より吸入し、この吸入空気を圧縮し、気水分離タンク6に排気する。
【0018】
上記空気圧縮機2の圧縮比の下限としては、2が好ましく、3がさらに好ましく、4が特に好ましい。一方、空気圧縮機2の圧縮比の上限としては、25が好ましく、20がさらに好ましく、15が特に好ましい。空気圧縮機2の圧縮比が上記範囲より小さいと空気が含有している水蒸気を十分に凝縮させることができないおそれがある。逆に、空気圧縮機2の圧縮比が上記範囲より大きいと、空気圧縮機2が大型化するほか、気水分離タンク6および配管系統の耐圧を大きく設計する必要があり、製造コストが増大するおそれがある。
【0019】
空気圧縮機2の圧縮方式は、特に限定されるものではなく、例えば、ターボ式(軸流式、遠心式)、容積式等を用いることができる。これらの中でも、1台当たりの処理容量を大きくすることができるターボ式が特に好ましい。また、空気圧縮機が単位時間当たりに吸引する空気の容量は空気清浄を実施する部屋等の空間体積及び単位時間当たりの換気回数を考慮して適宜決定することができる。
【0020】
空気圧縮機2は、無給油式であることが好ましい。空気圧縮機2が無給油式であることによって、圧縮される空気に空気清浄機から漏洩した油分が含有され、空気の清浄度が低下することを防止することができる。
【0021】
<空気導入経路3>
空気導入経路3は、空気圧縮機2の空気吸入口に接続されており、空気清浄を実施する部屋等の空気を空気圧縮機へ導引する。また、この空気導入経路3には、加湿手段として空気導入経路3内に水を噴霧する水噴霧装置4が配設されている。
【0022】
この空気導入経路3は、吸入空気が空気圧縮機2に到達する前に、水噴霧装置4が噴霧する水が十分吸入空気内に拡散するだけの距離(長さ)を有する。汚染物質を含む吸入空気は、この空気導入経路3を通る間に水を噴霧され加湿された後、空気圧縮機2に吸引され圧縮される。なお、空気導入経路3は、直管でも曲管でもよい。また、空気導入経路3の断面は矩形でもよく、円形でもよいが、圧力損失の少ない形状が好ましい。
【0023】
上記空気導入経路3は空気加熱手段3aを備えている。この空気加熱手段3aとしては、例えば、空気導入経路3の内周面に伝熱コイルを巻き付けたものを用いることができる。この空気加熱手段3aによって、吸入空気が加熱され、吸入空気が含有することができる水蒸気量(飽和水蒸気量)が大きくなる。そのため、水噴霧装置4から水を噴霧した時に吸入空気の飽和水蒸気量を増加させることができ、より多くの水を吸入空気に含有させることができる。この結果、吸入空気に含まれる汚染物質が水(水蒸気)に捕捉されやすくなり、汚染物質除去効果を高めることができる。
【0024】
<水噴霧装置4>
水噴霧装置4は、上記空気導入経路3内に吸入された空気に水を噴霧する装置である。水噴霧装置4は水供給タンク4a、水供給ポンプ4b、水噴霧ノズル4c、水供給ライン4d及び残留水排出ライン4eを有し、水噴霧ノズル4cは、空気導入経路3内に突出する形で配設される。
【0025】
この水噴霧装置4は、水供給タンク4a内の水を水供給ポンプ4bで水噴霧ノズル4cに送水することによって、空気導入経路3内に水を噴霧する。水供給ポンプ4bとしては、一般の遠心式ポンプを用いることができ、吐出圧は空気導入経路3内に水を噴霧できる圧以上であればよく、例えば、0.1MPaG以上が好ましい。噴霧水量は、清浄する空気の汚染物質含有量によって適宜決定することができるが、例えば、吸入空気量に対して50重量%以上の噴霧水量が好ましい。水噴霧ノズル4cは、広範囲に微細な水滴を噴霧可能であれば限定されるものではなく、周知の形状のものを用いることができる。また、噴霧ノズル4cは、固定式でもよく、回転式でもよいが、より広範囲に水を噴霧できる回転式が好ましい。この水噴霧ノズル4cは、加熱された空気に水を噴霧できるように空気導入経路3内の空気加熱手段3aよりも下流側(空気圧縮機2側)に配設される。さらに、吸入空気が空気圧縮機2に到達する前に、噴霧した水が十分吸入空気内に拡散するように、空気導入経路3の出口(空気圧縮機2の入口)からできるだけ離れた上流側の位置に水噴霧ノズル4cが配設されることが好ましい。
【0026】
水噴霧ノズル4cから空気導入経路3内に噴霧された水のうち、水蒸気化して空気に含有されることなく、空気導入経路3内に残留した水は、残留水排出ライン4eによって空気導入経路3の外部へと排出される。この残留水排出ライン4eは、例えば、水供給タンク4a内に接続して、この残留水を噴霧水として再利用してもよいし、後述の凝縮水排出ライン14と同様に系外に排出してもよい。
【0027】
水噴霧装置4によって噴霧される水供給タンク4a内の水は、不純物濃度を低下させた純水が好ましい。この純水としては、周知の方法で得られる純水を用いることができ、この方法として、例えば、イオン交換樹脂、電気再生式イオン交換装置、逆浸透膜等を用いた方法を挙げることができる。また、この純水に、水による汚染物質の捕捉効果を上昇させるために、清浄する空気に含有される汚染物質を捕捉しやすい微粒子等を適宜混合させてもよい。
【0028】
水噴霧装置4から噴霧される水の温度の下限としては、例えば、10℃が好ましく、20℃がさらに好ましく、30℃が特に好ましい。一方、水噴霧装置4から噴霧される水の温度の上限としては、100℃が好ましく、95℃がさらに好ましく、90℃が特に好ましい。水噴霧装置4から噴霧される水の温度が上記範囲未満の場合、吸入空気の温度が低下し、吸入空気の飽和水蒸気量が低下して十分な量の水蒸気を含有させることができないおそれがある。逆に、水噴霧装置4から噴霧される水の温度が上記範囲を超えると、水の取扱いが困難となるおそれがある。なお、「噴霧時」とは、水を噴霧するノズル等からダクト内に水が射出された時点を意味する。
【0029】
また、空気導入経路3の水噴霧ノズル4cの下流側には、液剤供給器16が配設されている。この液剤供給器16は、空気導入経路3内の空気に、殺菌効果を有する消毒剤や毒性物質を中和する中和剤等の液剤を噴霧する。この液剤によって、清浄する空気に含有される細菌を死滅させたり、毒物を中和したりすることができ、当該空気清浄装置1の空気清浄効果を高めることができる。
【0030】
上記液剤としては、清浄する空気の性状に合わせて、一般に殺菌目的で用いられる消毒剤や毒性物質の中和目的で用いられる中和剤を選択して用いることができる。この消毒剤の具体例としては、例えば、アルコール類、フェノール類等を挙げることができる。
【0031】
<気水分離タンク6>
気水分離タンク6は、空気圧縮機2から吸入空気を圧縮した空気が送り込まれるタンクである。複数の気水分離タンク6は、排気ライン11の下流にそれぞれの入口弁を介して並列に接続されている。この気水分離タンク6に貯留された空気は、放熱により徐々に温度が低下し、これに伴って飽和水蒸気量が低下する。このため、圧縮された空気が含有していた水蒸気が凝縮して水滴となって凝集し、気水分離タンク6の下部に水が分離される。この下部に貯留した凝縮水は第二凝縮水排出ライン14によって系外に排出される。この第二凝縮水排出ライン14の下流には、例えば、凝縮水を貯留する上記排水貯留タンクを設けることができる。この排水貯留タンクに貯留された凝縮水は、例えば、濾過処理等によって清浄な水と汚染物質とに分離され、清浄な水は再度水噴霧装置4や後述の洗浄水タンク7に使用することができる。
【0032】
空気圧縮機2によって圧縮された空気は、複数の気水分離タンク6の中の1基の気水分離タンク6に入口弁6aを介して注入される。この気水分離タンク6の圧力が空気の注入によって設計圧まで達すると、この気水分離タンク6の入口弁6aを閉じ、他の気水分離タンク6の入口弁6aを開け、空気圧縮機2から空気を送り込む気水分離タンク6を切り替える。内圧が設計圧となるまで空気が送り込まれた気水分離タンク6は、入口弁6aが閉じられた後、他の気水分離タンク6の内圧が設計圧に達するまで、そのままの状態で静置される。他の気水分離タンク6の内圧が設計圧に達した後、出口弁6bが開けられ、貯留した空気が第一空気放出ライン12によって空気洗浄タンク7内に放出される。その後、入口弁6aが開けられ、再び圧縮機2から排気された空気が注入される。
【0033】
気水分離タンク6の下部に滞留する凝縮水は、第二凝縮水排出ライン14によって適宜系外へと排出される。この排出方法としては、例えば、気水分離タンク6の内圧が約200kPaA以下になった時に、排水弁6dを開け、凝縮水を排出する方法を用いることができる。また、その他の排出方法としては、気水分離タンク6にレベルスイッチを2つ設け、一定の高さに水位が達した場合に排水弁6dを開け、凝縮水を排出し、その後、一定の高さまで水位が下がった場合に排水弁6dを閉じる機構を用いた方法をあげることができる。一定の水位まで下がった時点で排水弁6dを閉じるのは、気水分離タンク6内の空気が第二凝縮水排出ライン14から放出されるのを防ぐためである。
【0034】
気水分離タンク6の容量及び数は、空気圧縮機2が単位時間当たりに排気する空気の容量を考慮して適宜決定することができるが、少なくとも、1基の気水分離タンク6内で空気と凝縮水とが十分分離され、貯留した空気を第一空気放出ライン12から十分放出することができる時間が確保できるように、空気圧縮機2から常時排気される空気を貯留することができる容量及び数が好ましい。気水分離タンク6の容量が大きいほど、また気水分離タンク6の数が多いほど気水分離タンク6内に空気を滞留しておくことができる時間が長くなるため、空気の清浄度を高めることができる。
【0035】
気水分離タンク6は、空気圧縮機2で圧縮された空気の圧に耐えることができる設計圧を有している。例えば、空気圧縮機2の圧縮比が10の場合は、設計圧は約1MPaGである。また、気水分離タンク6はそれぞれ、タンクの設計圧よりも若干高い値の設定圧力を有する逃し弁6cを有している。気水分離タンク6の圧力がタンクの設計圧を超え、逃し弁6cの設定圧力に達した場合には、この逃し弁6cが開き、空気逃しライン13によって空気を気水分離タンク6の外に逃がす。これによって気水分離タンク6や配管等の破裂を防ぐことができる。
【0036】
なお、気水分離タンク6が気水分離タンク6内の空気を冷却する空気冷却手段を備えるとよい。この空気冷却手段で気水分離タンク6内の空気を冷却することによって、より効率よく、かつ短時間に気水分離タンク6内の空気から水蒸気を分離させることができる。この空気冷却手段としては、例えば、配管等を気水分離タンク6内に配設して冷媒を循環させる熱交換器や、気水分離タンク6の表面を空冷するファンや、気水分離タンク6の外側に突設される放熱板(フィン)等を挙げることができる。
【0037】
<空気洗浄タンク7>
空気洗浄タンク7は、上記気水分離タンク6から放出された空気を水によって洗浄するタンクであり、気水分離タンク6に接続された第一空気放出ライン12の下流に直列に複数配設されている。空気洗浄タンク7は、容積の一部を残して水が貯留された水槽であり、その底部に空気注入口が設けられ、上部に空気放出口が設けられている。直列に接続された複数の空気清浄タンク7のうち、最も上流に配設される空気清浄タンク7の空気注入口には第一空気放出ライン12が接続され、最も下流に配設される空気清浄タンク7の空気放出口には第二空気放出ライン15が接続されている。
【0038】
気水分離タンク6から放出された空気は、第一空気放出ライン12を通じて、最も上流に配設された空気洗浄タンク7の空気注入口に送り込まれ、この空気洗浄タンク7に貯留された水中に放出される。水中に放出された空気は、気泡となって水面に向かって浮揚し、この空気洗浄タンク7の上部に貯留し、空気放出口から排出される。この排出された空気は、次の空気洗浄タンク7の空気注入口に送り込まれ、同様にこの空気清浄タンク7の空気放出口から排出される。この過程が直列に接続された全ての空気洗浄タンク7で繰り返され、最も下流に配設された空気清浄タンク7から排出された空気は、この空気清浄タンク7に接続された第二空気放出ライン15より順次外部へ開放される。この第二空気放出ライン15の下流端の開放口は、空気導入経路3の空気吸引口が配置された部屋等の空間と同じ空間としてもよいし、別の空間としてもよい。
【0039】
空気洗浄タンク7に貯留する水としては、上述の水噴霧装置4によって噴霧される水供給タンク4a内の水と同様に、不純物濃度を低下させた純水が好ましい。また、空気洗浄タンク7に貯留された水は清浄度を保つために、循環装置(図示せず)によって排出及び供給が繰り返される。この循環方法としては、常に一定量の水を排出及び供給する連続処理方式としてもよいし、各空気清浄タンク7において、並列に接続された切り替え用の空気洗浄タンク7を配設し、一定時間ごとに使用する空気洗浄タンク7を切り替え、この切り替えと同時にそれまで使用していた空気洗浄タンク7内の水を全て取り替えるバッチ処理方式としてもよい。
【0040】
このように、水を貯留した空気洗浄タンク7を通過させることによって、気水分離タンク6から放出された空気に残存する汚染物質や夾雑物を水に溶解又は捕捉させて取り除くことができる。結果として、当該空気清浄装置1によって処理される空気の清浄度をさらに高めることができる。また、気水分離タンク6から空気洗浄タンク7内に放出される空気は圧縮されており、一定の圧を有しているため、加圧装置等を用いずに水中に放出させることができる。
【0041】
なお、第一空気放出ライン12と第二空気放出ライン15にはそれぞれ空気フィルタ17を設けることができる。この空気フィルタ17によって気水分離タンク6及び空気洗浄タンク7で除去できなかった粒子等を捕捉することができる。この空気フィルタ17としては、一般に空気清浄用途に用いられるHEPAフィルタ等を用いることができる。
【0042】
<空気清浄装置1>
当該空気清浄装置1は、吸入した空気が含有する汚染物質を水噴霧装置4が噴霧した水で捕捉し、この噴霧水を含んだ空気を空気圧縮機2によって圧縮することで汚染物質を捕捉している水蒸気を凝縮し易くし、気水分離タンク6によってこの水蒸気を分離して系外に排出することができる。この結果、吸入空気から汚染物質を除去して清浄な空気に変換することができる。加えて、空気洗浄タンク7によって気水分離タンク6から放出された空気を洗浄することで、空気の清浄度をさらに高めることができる。また、当該空気清浄装置1は、水蒸気の凝縮過程において使用する消耗性の部材が少ないため、メンテナンスのコストを低減することができる。また、空気の処理量が大きくなっても、空気圧縮機2、気水分離タンク6等の容量の変更で対応することができるため、消耗性の部材の増加を少なくすることができ、メンテナンスコストの増大を抑制することができる。
【0043】
また、当該空気清浄装置1は、清浄する空気を空気圧縮機2によって吸引するため、空気清浄を実施する部屋等の内圧が低下する。その結果、この空気清浄を実施する部屋等の空気が外部に漏洩しにくくなり、汚染空気の放出を防止することができる。
【0044】
本発明の空気清浄装置の用途は、汚染物質を含む空気を清浄する用途であれば特に限定されるものではないが、原子力発電所において放射能漏れが生じた場合に、放射性物質を除去する用途に特に好適に用いることができる。
【0045】
<その他の実施形態>
本発明の空気清浄装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、以下のような実施形態とすることもできる。
【0046】
図2の空気清浄装置21は、空気圧縮機2、空気導入経路3、水噴霧装置4、凝縮水排出装置5、空気洗浄タンク7から構成される。空気圧縮機2、空気導入経路3、水噴霧装置4、空気洗浄タンク7は、上記図1の空気清浄装置1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。ただし、空気圧縮機2から排気される圧縮された空気は、空気清浄装置1と異なり直接空気洗浄タンク7内に放出される。また、当該空気清浄装置21が備える空気洗浄タンク7は1基である。
【0047】
凝縮水排出装置5は、水を噴霧した吸入空気を空気圧縮機2で圧縮した時に、この吸入空気の体積減少によって飽和水蒸気量が低下し、吸入空気が含有する水蒸気が凝縮されて発生する凝縮水を排出する装置である。この凝縮水排出装置5は、空気圧縮機2の排気ライン11に設けた凝縮水分離器5a及び第一凝縮水排出ライン5bからなる。
【0048】
凝縮水分離器5aは、空気圧縮機2から圧縮された空気と供に排気される凝縮水を分離する機器である。凝縮水分離器5aとしては、例えば、サイクロン方式のドレンセパレーター等を使用することができる。
【0049】
凝縮水分離器5aから排出された凝縮水は、第一凝縮水排出ライン5bによって、系外に排出される。第一凝縮水排出ライン5bの下流(排出側)には、例えば、この凝縮水を貯留する排水貯留タンクを設けることができる。
【0050】
当該空気清浄装置21は、上記図1の空気清浄装置1と同様の働きを奏する。つまり、吸入した空気が含有する汚染物質を水噴霧装置4が噴霧した水で捕捉し、この噴霧水(水蒸気)を含んだ空気を空気圧縮機2によって圧縮することで、汚染物質を捕捉している水蒸気を凝縮させて凝縮水を生成し、この凝縮水を凝縮水排出装置5によって系外に排出することができる。また、空気圧縮機2から排気された空気は空気洗浄タンク7で洗浄され、第一空気開放ライン12から放出される。この結果、当該空気清浄装置21は、吸入空気から汚染物質を除去して清浄な空気とすることができる。また、本実施形態では、気水分離タンク6を装備しないため、装置の設置スペースを小さくすることができる。
【0051】
なお、本実施形態において、空気洗浄タンク7内の水の温度を低くすることによって、空気圧縮機2から排気された空気を空気清浄タンク7内で冷却することができる。これによって、この空気が含有していた水蒸気をさらに凝縮して凝縮水を生成し空気清浄タンク7内に貯留させることができ、当該空気清浄装置21の汚染物除去効果を高めることができる。
【0052】
上記各実施形態では空気導入経路に空気加熱手段を設けたが、この空気加熱手段を設けない実施形態も本発明の意図する範囲である。例えば、吸引する空気の温度が高温である場合や、水供給タンクに高温の水が供給される場合には、空気を加熱する必要がないため、上記空気加熱手段を配設しなくても十分に水蒸気を吸入空気に含有させることができる。また、水供給タンクや水供給ポンプを介さず、工場等の純水供給系統等から直接水を水噴霧ノズルに供給して噴霧してもよい。
【0053】
また、上記各実施形態では空気導入経路に配設される加湿手段として、水噴霧装置を用いたが、この加湿手段としては水噴霧装置に限定されない。他の加湿手段としては、例えば、空気導入経路の上部から水滴を落下させるシャワー装置や、水を染み込ませたフィルタに空気を通過させる湿潤フィルタ装置等を用いることができる。
【0054】
さらに、図2の空気清浄装置21では、空気圧縮機2の排気経路に凝縮水排出装置5を設けたが、この凝縮水配設装置5を設けない実施形態も本発明の意図する範囲である。例えば、空気圧縮機2から排気される空気を直接空気洗浄タンク7に放出してもよい。この場合、空気圧縮により生成された凝縮水は空気洗浄タンク内7の水と混ざり貯留され、空気のみが第一空気放出ライン12から放出される。
【0055】
また、気水分離タンクを備える場合において、図1の空気清浄装置1では気水分離タンクの数を2基としたが、気水分離タンクの数は限定されるものではなく、当該空気清浄装置が気水分離タンクを3基以上備えていてもよい。
【0056】
さらに、当該空気清浄装置は、空気圧縮機を複数台備えることもできる。空気圧縮機を複数台備えることにより、清浄する空気の量を大きくすることができる。また、空気冷却器を備える部位は気水分離タンクに限られず、空気圧縮機の排出口と空気の放出口との間に適宜設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明の空気清浄装置は、空気を加湿した後に圧縮による除湿を行うことによって、高効率で空気に含有される汚染物質を除去することができ、かつ処理する空気の量に関わらずメンテナンスコストを低減させることができる。そのため、工場等の大規模な生産工程で発生する汚染空気の清浄装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 空気清浄装置
2 空気圧縮機
3 空気導入経路
3a 空気加熱手段
4 水噴霧装置
4a 水供給タンク
4b 水供給ポンプ
4c 水噴霧ノズル
4d 水供給ライン
4e 残留水排出ライン
5 凝縮水排出装置
5a 凝縮水分離器
5b 凝縮水排出ライン
6 気水分離タンク
6a 入口弁
6b 出口弁
6c 逃し弁
6d 排水弁
7 空気洗浄タンク
11 排気ライン
12 第一空気放出ライン
13 空気逃しライン
14 凝縮水排出ライン
15 第二空気放出ライン
16 液剤供給器
17 空気フィルタ
21 空気清浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気導入経路と、
上記空気導入経路に配設され、上記空気導入経路内の空気を加湿する加湿手段と、
上記空気導入経路の下流端に配設された空気圧縮機と、
上記空気圧縮機の排気口に接続された排気経路と、
上記排気経路に配設され空気の圧縮又は冷却によって生成する凝縮水を排出する排水手段と
を備える空気清浄装置。
【請求項2】
上記空気圧縮機の圧縮比が2以上25以下である請求項1に記載の空気清浄装置。
【請求項3】
上記空気導入経路に吸入される空気を加熱する空気加熱手段を上記加湿手段の上流に有する請求項1又は請求項2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
上記排水手段として、上記空気圧縮機から排気される空気を貯留する複数の気水分離タンクを有し、この複数の気水分離タンクが並列に上記排気経路に接続されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
上記空気圧縮機から排気される空気を冷却する空気冷却手段を有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気清浄装置。
【請求項6】
上記空気圧縮機から排気される空気を洗浄する空気洗浄タンクを有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−31822(P2013−31822A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172255(P2011−172255)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【特許番号】特許第4955118号(P4955118)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(511154320)
【Fターム(参考)】