説明

空気液化分離装置及びその運転方法

【課題】吸着器の吸着筒の切り替えによる圧力変動等がなく、安全に運転が可能な空気液化分離装置の運転方法を提供する。
【解決手段】複式精留塔の二次側に設けられた圧送手段により、クリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を臨界圧力以上に圧縮して導出する圧送工程と、液体酸素が含有する炭化水素類と酸素とを反応させて水及び二酸化炭素を生成する触媒反応工程と、生成した水及び二酸化炭素を吸着除去する吸着工程と、吸着器から導出後の気体を二分し、一方の気体をクリプトン及びキセノンを低温精留する後工程に導入するとともに、他方の気体を再生後の吸着筒に導入して充圧する工程と、後工程に導入する一方の気体の流量又は圧力が一定となるように、流量又は圧力を測定し、その測定値の変動量に応じて圧送手段から導出する液体酸素の流量を増加又は減少させて制御する工程と、を備えることを特徴とする空気液化分離装置の運転方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気液化分離装置及びその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
精留分離法は、空気液化分離装置など多くの分野で用いられている。精留分離法では、原料流体を精留塔に導入し、原料流体を構成する各成分の沸点差を利用して分離する。ここで、各精留塔の底部(下部、塔底と称される場合もある)には、各精留塔内流体成分中の高沸点成分が液状で貯液されている。
【0003】
ところで、クリプトン及びキセノンは大気中の微量成分であり、大気中にそれぞれ、1.14ppm、0.087ppm含まれている。クリプトンは、ランプの封入ガス等に用いられている。一方、キセノンはキセノンランプ封入ガス、イオンエンジンの推進剤、二層断熱ガラス等に用いられている。
【0004】
クリプトン及びキセノンは、工業的には空気の低温蒸留によって分離される。つまり、空気分離を主目的とする複式精留塔で濃縮された後、所定の分離プロセスを経て分離、精製される。クリプトン及びキセノンの沸点は酸素よりも高いため、複式精留塔の低圧塔底部の液体酸素中に濃縮される。
【0005】
一方、原料空気に微量含まれる炭化水素の沸点は酸素よりも高いため、クリプトン及びキセノンと共に低圧塔底部の液体酸素中に濃縮される。従って、基本的にはクリプトン、キセノン及び炭化水素が濃縮された液体酸素を原料として、炭化水素が除去された後、クリプトン、キセノンが更に濃縮され、それぞれ分離精製されることとなる。
【0006】
ところで、液体酸素中から炭化水素を除去する方法としては、特許文献1が知られている。具体的に、この特許文献1には、炭化水素、クリプトン、キセノンを濃縮した液体酸素を原料としてクリプトン、キセノンを精製分離するプロセスが記載されている。このプロセスでは、図4に示すように、複式精留塔102以降の経路L101〜L102を流通する液体酸素中に含まれる炭化水素は触媒塔105で酸化され、その結果生じた水分、二酸化炭素は二塔式の吸着器106で吸着除去される。
【0007】
ここで、二筒式の吸着器106は、一般的な切り替え式吸着器であり、一定時間毎に各吸着筒を再生する必要がある。吸着筒の再生は、一般的には低圧で行われ、再生が終了した吸着筒は吸着運転に必要な圧力まで充圧されることになる(この工程を、「充圧工程」という)。
【0008】
しかしながら、上記充圧工程では、吸着工程にある吸着筒から導出された処理流体の一部が充圧用流体として用いられるので、下流の脱酸素塔107に導入される流体の流量が減少し、脱酸素塔の運転圧力が変動(低下)するという問題があった。
【0009】
上記問題を解決するために、吸着器から下流の機器に導出される流体流量を一定とする方法として、特許文献2及び特許文献3が知られている。
【0010】
具体的に、特許文献2には、吸着器から空気分離装置に導入される原料空気の流量が一定となる様に原料空気圧縮機の吸入ガイドベーンを制御する方法が記載されている。
また、特許文献3には、吸着器の充圧工程において、実際に充圧される流量を測定し、その流量分だけ原料空気圧縮機の増量運転する方法が開示されている。
すなわち、特許文献2及び特許文献3に開示された方法は、無尽蔵に存在する空気を用いて原料空気圧縮機を増量運転することにより、吸着器の充圧に必要な流体を確保する方法である。
【0011】
しかしながら、複式精留塔の後工程に設置された吸着器の充圧用流体として、無尽蔵の大気を取り入れることは不適切であり、必要時に自由に充圧用流体を確保することが困難である。すなわち、対象としている吸着器の充圧工程で必要な充圧流体は、主成分が酸素であり、しかも希ガスであるクリプトン、キセノンが所定量濃縮されている流体である。したがって、キセノン等が濃縮された酸素流体であっても、組成の異なる流体を用いた場合、後工程の脱酸素塔に導入される流体組成が変動し、プロセス変動の一因となるという問題があった。
【0012】
そこで、吸着器の充圧流体を確保するため、図4に示すように、吸着器106と脱酸素塔107との間に所定の容量のバッファータンク125を設置することにより、吸着器の充圧工程時のプロセス変動を低減することが可能であると考えられる。しかしながら、この様なバッファータンク125を吸着器106と脱酸素塔107との間に設置すると、このバッファータンク125内を対象の流体で置換する必要があるため、装置起動に更に長い時間が必要となるという問題があった。
【0013】
一方、クリプトン、キセノンの濃縮工程を安全に実施するための方法として、特許文献4が知られている。この特許文献4には、クリプトン、キセノンの濃縮工程における液体酸素とそれに含まれる炭化水素との反応を回避するために、この酸素自体を化学反応で他の成分に変えるプロセスが開示されている。すなわち、特許文献4に開示されたプロセスは、クリプトン、キセノン及び炭化水素を含む液体酸素にメタンを導入し、水素と一酸化炭素(合成ガス)とするものである。これにより、酸素と炭化水素との反応を抑制することができるため、爆発等の懸念がなく安全に上記濃縮工程を実施することができる。
【0014】
しかしながら、上記反応によって生じた水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気等とクリプトン、キセノンとの深冷分離が新たに必要となるという問題があった。また、上記反応は、基本的には天然ガスの部分酸化技術であり、高温(例えば約340℃)のスチームが必要となるため、設備コストが大きく上昇するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平07−139876号公報
【特許文献2】特開平04−121577号公報
【特許文献3】特許第3195982号公報
【特許文献4】特開2003−212524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、複式精留塔の後工程にあるクリプトン及びキセノンの分離精製プロセスにおける吸着器の吸着筒の切り替えによる圧力変動等がなく、安全に運転が可能な空気液化分離装置の運転方法及び空気液化分離装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
請求項1に記載の発明は、複式精留塔の低圧塔底部からクリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を抜き出し、それを原料としてクリプトン及びキセノンを低温精留で分離する空気液化分離装置の運転方法であって、
複式精留塔の二次側に設けられた圧送手段により、クリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を臨界圧力以上に圧縮し、所定の流量で導出する圧送工程と、
前記圧送手段から導出された前記液体酸素を常温まで昇温した後に減圧手段に導入し、臨界圧力以下まで減圧する減圧工程と、
前記減圧手段から導出された臨界圧力以下の酸素ガスを触媒反応筒に導入し、当該液体酸素が含有する炭化水素類と酸素とを反応させて水及び二酸化炭素を生成する触媒反応工程と、
前記触媒反応筒から導出後の気体を、吸着、再生及び充圧を交互に行なう2以上の吸着筒を有する切替式の吸着器の少なくとも1つの吸着筒に導入し、前記気体中から水及び二酸化炭素を吸着除去する吸着工程と、
前記吸着器から導出後の気体を二分し、一方の気体を冷却した後にクリプトン及びキセノンを低温精留する後工程に導入するとともに、他方の気体を再生後の吸着筒に導入して当該吸着筒を充圧する充圧工程と、
クリプトン及びキセノンを低温精留する前記後工程に導入する前記一方の気体の流量又は圧力が一定となるように、前記流量又は前記圧力を、連続あるいは所定の間隔で測定し、当該流量又は当該圧力の測定値の変動量に応じて前記圧送手段から導出する前記液体酸素の流量を増加又は減少させて制御する工程と、を備えることを特徴とする空気液化分離装置の運転方法である。
【0018】
請求項2に記載の発明は、前記触媒反応工程において、
前記圧送手段から導出された前記液体酸素を加熱手段に導入し、
前記加熱手段の一次側と二次側との差圧を連続あるいは所定の間隔で測定することを特徴とする請求項1記載の空気液化分離装置の運転方法である。
【0019】
請求項3に記載の発明は、複式精留塔の低圧塔底部からクリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を抜き出し、それを原料としてクリプトン及びキセノンを低温精留で分離する空気液化分離装置であって、
複式精留塔の二次側に設けられ、クリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を臨界圧力以上に圧縮し、所定の流量で導出する圧送手段と、
前記圧送手段から導出された前記液体酸素を常温まで昇温する加熱手段と、
前記加熱手段の一次側と二次側との差圧を測定するための圧力測定手段と、
前記加熱手段から導出された超臨界状態の流体を臨界圧力以下まで降圧する減圧手段と、
前記減圧手段から導出された臨界圧力以下の酸素ガス中に含まれる炭化水素類と酸素とを反応させて水及び二酸化炭素を生成する触媒反応筒と、
吸着、再生及び充圧を交互に行なう2以上の吸着筒を有し、前記触媒反応筒から導出された気体中から水及び二酸化炭素を吸着除去する切替式の吸着器と、
前記吸着器の二次側に設けられ、当該吸着器から導出された流体の残部からクリプトン及びキセノンを分離する分離手段と、
前記分離手段に導入される前記流体の流量及び圧力の少なくとも一方を測定する測定手段と、
前記測定手段の流量及び圧力の少なくとも一方の測定値に基づいて、前記圧送手段からの前記液体酸素の流量を増加又は減少させて制御する制御手段と、を備えることを特徴とする空気液化分離装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の空気液化分離装置の運転方法及び空気液化分離装置によれば、触媒反応筒から導出後の気体を切替式の吸着器に導入して水及び二酸化炭素を吸着除去した後、吸着器から導出後の気体を二分し、一方をクリプトン及びキセノンを低温精留する後工程に導入するとともに、他方を再生後の吸着筒に導入して吸着筒を充圧する構成となっている。すなわち、当該吸着器が複式精留塔の二次側に設けられており、充圧用の酸素ガス流体の成分が限定される場合であっても、一方の吸着筒によって水及び二酸化炭素が除去された気体を製造し、再生後の他方の吸着筒の充圧に用いることができる。
そして、後工程に導入する気体の流量又は圧力が一定となるように、流量又は圧力を連続あるいは所定の間隔で測定し、この測定値の変動量に応じて圧送手段から導出する液体酸素の流量を増加又は減少させて制御する制御手段を備える構成となっている。このように、吸着器から導出されて後工程となる分離手段に導入される流体の流量又は圧力を測定し、この測定値の変動量に応じて圧送手段から導出する液体酸素の流量を増加又は減少させて制御することにより、分離手段に導入される流体の流量又は圧力を一定に保つことができる。
したがって、吸着器と後工程を構成する分離手段との間にバッファータンク等を設けることなく、吸着器における吸着筒の切り替え時の流量変動及び圧力変動を抑制することができるため、空気液化分離装置の安定した運転が可能となる。
【0021】
また、本発明の空気液化分離装置の運転方法及び空気液化分離装置によれば、複式精留塔の二次側に設けられた圧送手段により、クリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を臨界圧力以上に圧縮し、この液体酸素を加熱手段によって常温まで昇温し、減圧手段によって臨界圧力以下まで減圧した後に触媒反応筒に導入する構成となっている。このように、圧送手段によって液体酸素を臨界圧力以上に昇圧することにより、加熱手段において酸素が超臨界状態の流体となるため、液体酸素の一部が気化して生じる気液界面の発生を抑制することができる。したがって、気液界面における液側での炭化水素の濃縮を低減することができるため、空気液化分離装置を安全に運転することができる。
そして、炭化水素を含む酸素は、常温まで加温された後は、気液平衡による炭化水素の濃縮を懸念する必要はなく、触媒反応、吸着或いは後工程の精留運転に適切な圧力まで減圧することができる。
【0022】
さらに、空気液化分離装置に、加熱手段の一次側と二次側との差圧を測定するための圧力測定手段を設けた場合には、この間の圧力損失の変化を早期に発見することができる。これにより、内部の機器配管のパージ等の処置を早期に講じることが可能となり、空気液化分離装置をより安全に運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した一実施形態である空気液化分離装置の構成を示す系統図である。
【図2】本発明の効果を説明するための図であり、空気液化分離装置の運転中における各圧力計の測定値の変動を示す図である。
【図3】本発明の効果を説明するための図であり、空気液化分離装置の運転中における液体酸素ポンプの回転数と流量計の測定値とを示す図である。
【図4】従来の空気液化分離装置の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を適用した一実施形態である空気液化分離装置の運転方法について、これに用いる空気液化分離装置とともに図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0025】
先ず、本発明を適用した一実施形態である空気液化分離装置の運転方法に用いる空気液化分離装置の構成について説明する。
本実施形態の空気液化分離装置は、複式精留塔の低圧塔底部からクリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を抜き出し、それを原料としてクリプトン及びキセノンを低温精留で分離する装置である。より具体的には、クリプトン及びキセノンと共に濃縮された炭化水素をこの液体酸素から除去した後、クリプトン、キセノンを更に濃縮し、それぞれ分離精製するものである。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の空気液化分離装置1は、複式精留塔2の二次側に順次設けられた、液体酸素ポンプ(圧送手段)3、酸素昇温器(加熱手段)4、減圧弁(減圧手段)13、触媒反応筒5、切替式の吸着器6、脱酸素塔(分離手段)7、を備えて概略構成されている。さらに、空気液化分離装置1は、酸素昇温器4の一次側と二次側との差圧を測定する差圧計(圧力測定手段)8と、濃縮塔7に導入される流体の流量を測定する流量計(測定手段)9と、液体酸素ポンプ3からの液体酸素の流量を制御するインバーター(制御手段)10と、を備えることを特徴としている。
【0027】
複式精留塔2は、空気分離を主目的とするものであり、低圧塔2Aの底部の液体酸素中にはクリプトン及びキセノンとともに高沸点不純物である炭化水素類が濃縮される。また、低圧塔2Aの底部と液体酸素ポンプ3との間の経路L1には、バッファータンク11が設けられており、低圧塔2Aの底部から導出される液体酸素を一時的に貯留することができるようになっている。
【0028】
炭化水素類は、原料空気中に微量に含まれるものであれば特に限定されるものではない。このような炭化水素類としては、具体的には、メタン、エタン、プロパン等が挙げられる。
【0029】
液体酸素ポンプ3は、複式精留塔2の二次側に設けられている。この液体酸素ポンプ3は、低圧塔2Aの底部から導入された液体酸素を臨界圧力である5.05MPa以上に圧縮した後に、所定の流量(設定流量)で液体酸素を導出する圧送手段である。なお、液体酸素ポンプ3としては、液体酸素を臨界圧力以上に圧縮し、所定の流量で導出することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。
【0030】
酸素昇温器4は、液体酸素ポンプ3の二次側に設けられている。この酸素昇温器4は、液体酸素ポンプ3からフィルター12を介して導入される、臨界圧力以上に圧縮された液体酸素を加熱して、常温まで昇温する加熱手段である。また、酸素昇温器4からは、常温まで昇温された気体(酸素流体)が導出される。なお、酸素昇温器4としては、液体酸素を常温まで昇温することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。
【0031】
減圧弁(減圧手段)13は、酸素昇温器4によって常温まで昇温された超臨界状態の流体を臨界圧力以下まで減圧するために、酸素昇温器4と触媒反応筒5との間の経路L3に設けられている。この減圧弁13を設けることにより、炭化水素を含む酸素は、常温まで加温された後に、気液平衡による炭化水素の濃縮を懸念する必要がなく、触媒反応、吸着或いは後工程の精留運転に適切な圧力まで減圧することができる。なお、減圧弁13としては、超臨界状態の流体を臨界圧力以下まで減圧することが可能なものであれば特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。
【0032】
また、酸素昇温器4と触媒反応筒5との間の経路L3には、減圧弁13の二次側に上記気体をさらに昇温するための熱交換器14及び加熱器15がこの順で設けられている。
【0033】
触媒反応筒5は、減圧弁13から導出された臨界圧力以下の酸素ガス中に含まれる炭化水素類と酸素とを反応させて、水及び二酸化炭素を生成させるために、酸素昇温器4の二次側に設けられている。この触媒反応筒5には、触媒が所定量充填されている。例えば、触媒は白金(Pt)又はパラジウム(Pd)のような貴金属触媒でも良い。これら金属触媒は、単独は勿論それぞれを組み合わせて積層充填して用いても良い。なお、触媒反応筒5としては、酸素昇温器4から導出された気体中に含まれる炭化水素類を酸化により水と二酸化炭とに分解させることが可能なものであれば特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。また、触媒反応筒5から導出される気体中に含まれる炭化水素類の濃度は、検出限界以下(例えば、0.05ppm以下)であることが好ましい。
【0034】
また、触媒反応筒5と吸着器6との間の経路L4には、触媒反応筒5によって炭化水素類が除去された酸素ガス冷却するための熱交換器14及び冷却器16、ドレンセパレーター17がこの順で設けられている。
【0035】
吸着器6は、上記触媒反応筒5から導出される気体中から、水及び二酸化炭素を吸着除去するためのものであり、触媒反応筒5の二次側に設けられている。この吸着器6は、吸着、再生及び充圧を交互に行なう2つの吸着筒6A,6Bを有する切替式の吸着器である。ここで、本実施形態の吸着器6では、上述したように2つの吸着筒を有した例であるが、これに限定されるものではなく、2以上の吸着筒を有し、これらを交互に吸着、再生及び充圧を行なうような構成としても良い。
【0036】
吸着筒6A,6Bは、同一の構成となっており、弁18〜21の開閉操作により、吸着筒6A及び吸着筒6B内に導入するガスの流れをそれぞれ切り替え可能に構成されている。また、吸着筒6A及び吸着筒6Bには、内部の圧力を測定するための圧力計22,23がそれぞれ設けられている。
【0037】
吸着筒6A(6B)内には、上記触媒反応筒5から導出される気体の流入側(図1では、底部側)から流出側(図1では上部側)に向けて、水及び二酸化炭素を吸着除去するための吸着剤が単層で、あるいは積層されて充填されている。
【0038】
ここで、上記触媒反応筒5から導出される気体中の、水を吸着するための水分吸着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性アルミナ、シリカゲル、合成ゼオライトのいずれか1つもしくは2以上を用いることができる。また、二酸化炭素を吸着するための吸着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、合成ゼオライトを用いることができる。
【0039】
脱酸素塔(分離手段)7は、上記吸着器6から導出された流体中からクリプトン及びキセノンを分離するための設備であり、吸着器6の二次側に設けられている。この脱酸素塔7には、塔底部にリボリラー7aが、塔頂部に凝縮器(コンデンサー)7bがそれぞれ設けられている。
【0040】
脱酸素塔7に導入された流体は精留され、この脱酸塔の塔底部には、クリプトン90〜95%、キセノン5〜10%及び酸素0.5ppm以下からなる液化ガス(流体)が分離される。そして、脱酸素塔7の塔底部から導出された流体が、この脱酸素塔7の二次側に設けられた図示略の分離塔の中段又は中下段に導入される。そして、この分離塔における精留により、塔頂部に純度99.99%以上のクリプトンが、塔底部に純度99.99%以上のキセノンが、それぞれ分離される。
【0041】
なお、本実施形態では、図1に示すように、脱酸素塔7のみを分離手段とした例を示しているが、これに限定されるものではなく、上述した分離塔等の低温精留工程を構成する他の装置と組み合わせたものとしてもよい。
【0042】
差圧計(圧力測定手段)8は、酸素昇温器(加熱手段)4の一次側と二次側との差圧を測定するために、経路2と経路3とに亘って設けられている。具体的には、図1に示すように、一端側がフィルター12の一次側に、他端側が減圧弁13の上流側に、それぞれ接続されている。なお、差圧計8としては、酸素昇温器4の一次側と二次側との差圧の測定が可能なものであれば特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。
【0043】
ここで、液体酸素ポンプ3と減圧弁13と間の運転圧力は、上述したように酸素の臨界圧力(5.05MPa)以上に設定されている。万一、高沸点成分である炭化水素類が機器や配管内に閉塞した場合には、液体酸素ポンプ3の運転圧力に比較すると、機器や配管の閉塞等によって生じる圧力損失(例えば、0.001MPa)は、相対的に小さいため、発見することが困難である。そこで、液体酸素ポンプ3〜減圧弁13間に差圧計8を設置することにより、この間の圧力損失の変化を早期に発見することができる。したがって、早期に機器や配管等の内部のパージが可能となり、プロセスの安全運転が可能となる。
【0044】
流量計(測定手段)9は、吸着器6から導出された後に脱酸素塔7に導入される流体の流量を測定するために、吸着器6と脱酸素塔7との間の流路L5に設けられている。なお、流量計9としては、脱酸素塔7に導入される流体の流量の測定が可能なものであれば特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、図1に示すように、流量計9のみを測定手段とした例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、図1に示すように、流路L5に設けられた圧力計24は、吸着器6から導出された後に脱酸素塔7に導入される流体の圧力を測定するものであるが、流量計9に代えて測定手段としてもよい。また、流量計9と圧力計24とを両方設けて、これを測定手段として用いてもよい。
【0046】
インバーター(制御手段)10は、流量計9及び圧力計24の少なくとも一方の測定値に基づいて、液体酸素ポンプ3からの液体酸素の流量を増加又は減少させて制御するものである。また、インバーター10は、図1に示すように、液体酸素ポンプ3と、流量計9或いは圧力計24とが制御可能となるように接続されている。これにより、インバーター10は、流量計9或いは圧力計24の値が一定となるように、液体酸素ポンプ3の回転数を増加又は減少させて圧送する液体酸素の流量を制御する構成となっている。
【0047】
次に、この空気液化分離装置1の運転方法(以下、単に「運転方法」という)について説明する。
本実施形態の運転方法は、複式精留塔2の二次側に設けられた液体酸素ポンプ(圧送手段)3により、クリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を臨界圧力以上に圧縮し、所定の流量で導出する圧送工程と、液体酸素ポンプ3から導出された液体酸素を常温まで昇温した後に減圧手段に導入し、臨界圧力以下まで減圧する減圧工程と、前記減圧手段から導出された臨界圧力以下の酸素ガスを触媒反応筒5に導入し、液体酸素が含有する炭化水素類と酸素とを反応させて水及び二酸化炭素を生成する触媒反応工程と、触媒反応筒5から導出後の気体を、吸着、再生及び充圧を交互に行なう吸着筒6A,6Bを有する吸着器6の少なくとも1つの吸着筒6A(あるいは6B)に導入し、気体中から水及び二酸化炭素を吸着除去する吸着工程と、吸着器6から導出後の気体を二分し、一方の気体を冷却した後にクリプトン及びキセノンを低温精留する後工程に導入するとともに、他方の気体を再生後の吸着筒6B(あるいは6A)に導入して当該吸着筒を充圧する充圧工程と、クリプトン及びキセノンを低温精留する後工程に導入する一方の気体の流量及び圧力の少なくとも一方が一定となるように、流量及び圧力の少なくとも一方を、連続あるいは所定の間隔で測定し、流量及び圧力の少なくとも一方の測定値の変動量に応じて液体酸素ポンプ3から導出する液体酸素の流量を増加又は減少させて制御する工程と、を備えて概略構成されている。
【0048】
具体的には、先ず、原料空気中に微量含まれるクリプトン、キセノン及び炭化水素は、複式精留塔2の低圧塔2A底部の液体酸素中に濃縮される。この液体酸素の一部は、経路L1を構成する配管及びバッファータンク11を経由して、液体酸素ポンプ3に導入され、酸素の臨界圧力(=5.05MPa)以上に圧縮されて所定量で導出される(圧送工程)。そして、液体酸素ポンプ3から導出された液体酸素は、酸素昇温器4に導入されて昇温される。
【0049】
ここで、上述したように、液体酸素を液体酸素ポンプ3によって臨界圧力である5.05MPa以上まで昇圧する理由は、複式精留塔2によって液体酸素中に濃縮された炭化水素類の析出を回避するためである。
【0050】
一般的に、臨界圧力よりも低い圧力の液体酸素が熱(Q)を受けて気化すると、必ず気液界面が生じることとなる。ここで、液体酸素側に含まれる炭化水素の濃度を(C)とすると、気化した酸素ガス中の炭化水素の濃度も(C)となる。しかし、気液界面では、炭化水素の気液平衡関係が生じる。つまり、気液界面近傍では、液体酸素中の炭化水素濃度(Cs)は酸素ガス中の炭化水素濃度(C)と気液平衡関係にあり、液体酸素中濃度(C)よりも大きくなる。しかも、この気液界面付近の液体酸素中の炭化水素濃度(Cs)が液体酸素中の炭化水素の溶解度を超えると、炭化水素が析出してしまう。
【0051】
そこで、本実施形態の運転方法によれば、液体酸素を液体酸素ポンプ3によって臨界圧力である5.05MPa以上まで昇圧し、この臨界圧力以上に昇圧した状態で酸素昇温器4によって加熱する構成となっている。このため、酸素流体が常温の酸素になる過程において気液界面が生じることが無く、機器や配管での炭化水素の析出を抑制することができる。
【0052】
また、液体酸素ポンプ3から導出された液体酸素を酸素昇温器4に導入する際、差圧計8を用いて酸素昇温器4の一次側と二次側との差圧を連続あるいは所定の間隔で測定することが好ましい。これにより、液体酸素ポンプ3と減圧弁13と間において高沸点成分である炭化水素類による機器や配管の閉塞等によって生じた場合であっても、この間の圧力損失の変化を早期に発見することができる。したがって、早期に機器や配管等の内部のパージが可能となり、プロセスの安全運転が可能となる。
【0053】
次に、酸素昇温器4によって常温まで昇温された超臨界状態の流体は、減圧弁13によって臨界圧力以下まで減圧された後、熱交換器14及び加熱器15で再び昇温された後に触媒反応筒5に導入される。この触媒反応筒5では、酸素ガス中の炭化水素が酸化されて、水分及び二酸化炭素が生成される。すなわち、酸素ガス中から炭化水素類を除去される(触媒反応工程)。
【0054】
次に、触媒反応筒5から導出される気体、すなわち、炭化水素が除去された酸素ガスは、熱交換器14、冷却器16で冷却された後、吸着器6に導入される。以下、本実施形態では、吸着筒6Aが吸着工程であり、吸着筒6Bが再生工程である場合を例にして説明する。
【0055】
(吸着工程)
吸着筒6Aでは、触媒反応筒5から導出された酸素ガス中の水分、二酸化炭素が吸着除去される。具体的には触媒反応筒5から導出された酸素ガスが吸着筒6A内に導入されて、この吸着筒6A内に充填された吸着剤層によって水分及び二酸化炭素が吸着されて除去される。精製された酸素ガスは、吸着筒6Aから経路L5に導出された後、クリプトン、キセノンを分離精製する後工程の設備(脱酸素塔7)に導入される。
【0056】
(再生工程)
一方の吸着筒6Aにおいて吸着工程が行なわれている間、他方の吸着筒6Bでは再生工程が行なわれている。ここで、吸着筒6Bの再生が終了すると、吸着工程に備えて吸着筒6Bの内部は充圧される(充圧工程)。具体的には、弁21を開とすることにより、吸着筒6Aで精製された酸素ガスの一部を経路L5から吸着筒6B内に導入する。これにより、吸着筒6Aで精製された酸素ガスの一部を上記吸着筒6Bの充圧ガスとして用いることができる。
【0057】
ところで、従来の空気液化分離装置の運転方法では、複式精留塔の後工程に設置された吸着器の充圧用流体として、経路L5に流通する流体とは組成の異なる流体を用いていたため、後工程の脱酸素塔等に導入される流体組成が変動してプロセス変動の一因となるという問題があった。
【0058】
これに対して、本実施形態の運転方法によれば、再生工程における再生終了後の吸着筒6Bの充圧用酸素ガスとして、吸着筒6Aの吸着工程によって製造した酸素ガスを用いる構成となっている。このため、経路L5に流通する所定の組成(酸素、クリプトン、キセノンを有し、炭化水素、水分、二酸化炭素を含まない)に限定される流体を空気液化分離装置1自身(吸着工程にある吸着筒)で製造することが可能となり、外部から供給することを要しない。したがって、後工程の脱酸素塔7に導入される流体組成が変動することがなく、プロセス変動を抑制して安定運転が可能となる。
【0059】
そして、本実施形態の運転方法は、再生工程における再生終了後の吸着筒6Bの充圧用の酸素ガスとして、吸着工程における吸着筒6Aによって製造された酸素ガスの一部を用いる場合であっても、この吸着器6から後工程の脱酸素塔7に導入する酸素ガスの流量が一定となる様に、液体酸素ポンプ3から導出する液体酸素の流量を制御することを特徴としている。
【0060】
具体的には、吸着器6から脱酸素塔7に導入する酸素ガス流量又は圧力を、経路L5に設けられた流量計9及び圧力計24の一方又は両方によって連続あるいは所定の間隔で測定する。そして、この流量又は圧力の測定値の、少なくとも一方の変動量を、インバーター10に制御信号として送信する。この制御信号を受けたインバーター10は、経路L5に流通する流体の流量又は圧力の測定値の変動量に応じて、液体酸素ポンプ3の回転数を増加又は減少するように制御する。
【0061】
このように、液体酸素ポンプ3の制御を採用することによって、液体酸素ポンプ3から導出される液体酸素の流量が増加又は減少されて、吸着器6の後段に設けられた脱酸素塔7に導入される酸素ガス流量が一定となる。したがって、後工程である脱酸素塔7の運転圧力が変動することなく、一定運転とすることができる(制御する工程)。
【0062】
最後に、後工程である脱酸素塔7に導入された流体は精留され、この脱酸素塔7の塔底部には、クリプトン90〜95%、キセノン5〜10%及び酸素0.5ppm以下からなる液化ガス(流体)分離される。そして、脱酸素塔7の塔底部から導出された流体は、この脱酸素塔7の二次側に設けられた図示略の分離塔において精留され、純度99.99%以上のクリプトンと、純度99.99%以上のキセノンとにそれぞれ分離される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の空気液化分離装置1及びその運転方法によれば、触媒反応筒5から導出後の気体を切替式の吸着器6に導入して水及び二酸化炭素を吸着除去した後、吸着器6から導出後の気体を二分し、一方を脱酸素塔7に導入するとともに、他方を再生後の吸着筒6Bに導入して吸着筒を充圧する構成となっている。すなわち、当該吸着器6が複式精留塔2の二次側に設けられており、充圧用の酸素ガス流体の成分が限定される場合であっても、一方の吸着筒6Aによって水及び二酸化炭素が除去された気体を製造し、再生後の他方の吸着筒6Bの充圧に用いることができる。
【0064】
また、本実施形態の空気液化分離装置1及びその運転方法によれば、吸着器6と脱酸素塔7との間の経路L5に設けられた流量計9及び圧力計24の少なくとも一方によって脱酸素塔7に導入される気体の流量又は圧力を連続あるいは所定の間隔で測定し、この測定値の変動量に応じて液体酸素ポンプ3の回転数をインバーター10により制御する構成となっている。これにより、液体酸素ポンプ3から導出する液体酸素の流量を増加又は減少させ、脱酸素塔7に導入する気体の流量又は圧力が一定となるように制御することができる。したがって、吸着器6と脱酸素塔7との間に新たなバッファータンク等を設けることなく、吸着器6における吸着筒6A,6Bの切り替え時の流量変動及び圧力変動を抑制することができるため、空気液化分離装置1の安定した運転が可能となる。
【0065】
また、本実施形態の空気液化分離装置1及びその運転方法によれば、複式精留塔2の二次側に設けられた液体酸素ポンプ3により、クリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を臨界圧力以上に圧縮し、この液体酸素を酸素昇温器4によって常温まで昇温した後に減圧弁13で臨界圧力以下まで減圧し、この臨界圧力以下の酸素ガスを触媒反応筒5に導入する構成となっている。このように、液体酸素ポンプ3によって液体酸素を臨界圧力以上に昇圧することにより、酸素昇温器4において酸素が超臨界状態の流体となるため、液体酸素の一部が気化して生じる気液界面の発生を抑制することができる。したがって、気液界面における液側での炭化水素の濃縮を低減することができるため、空気液化分離装置を安全に運転することができる。そして、炭化水素を含む酸素は、常温まで加温された後は、気液平衡による炭化水素の濃縮を懸念する必要はなく、触媒反応、吸着或いは後工程の精留運転に適切な圧力まで減圧することができる。
【0066】
さらに、本実施形態の空気液化分離装置1に、酸素昇温器4の一次側と二次側との差圧を測定するための差圧計8を設けた場合には、この間の圧力損失の変化を早期に発見することができる。これにより、内部の機器や配管のパージ等の処置を早期に講じることが可能となり、空気液化分離装置1をより安全に運転することができる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態の空気液化分離装置1では、吸着器6と脱酸素塔7との間に流量計9あるいは圧力計24を設け、これらの測定値からインバーター10に信号を送付する構成となっているが、必ずしもこの構成に限定されるものではない。たとえば、吸着筒6Bを充圧する際に開とする弁21に流量計を設け、この弁21を流れる充圧流体の流量を測定して、その分の流量を増量する様に液体酸素ポンプ3の回転数を制御しても目的を達成することが可能である。
【0068】
また、低圧塔2Aから採取する液体酸素の流量を一定とし、吸着器充圧時の液体酸素ポンプ3の増量運転分をバッファータンク11内に貯液することにより、吸着器6の充圧工程における低圧塔2Aへの影響を低減することができる。
【0069】
以下、具体例を示す。
(実施例)
図1に示す空気液化分離装置1を用いて、クリプトン及びキセノンを低温精留で分離する運転を実施した。図2は、空気液化分離装置1の圧力計22,23,24の、運転中における測定値を示している。また、図3は、空気液化分離装置1の液体酸素ポンプ3の、運転中における回転数と、流量計9の測定値とを示している。
なお、空気液化分離装置1の運転において、図2及び図3の横軸における運転時間0分では、吸着筒6Aは吸着工程、吸着筒6Bは再生工程であった。
【0070】
図2及び図3に示すように、運転時間0分の際に再生工程にあった吸着筒6Bは、時間A〜B間で充圧工程となる。そして、図2及び図3中に示す時間Bにおいて、吸着筒6Bは充圧工程が完了し、その後、吸着工程となる。
この吸着筒6Bの充圧工程において、液体酸素ポンプ3は、図3に示すように、回転数制御(回転数の増加)によって増量運転となり、吸着筒6Bの充圧に必要な流体を供給した。この結果、図2及び図3に示すように、後工程に導入される酸素流体の圧力(圧力計24の値)及び酸素流体の流量(流量計9の値)はほぼ一定とすることができた。このように、空気液化分離装置1の安定運転が可能となることを確認することができた。
【符号の説明】
【0071】
1・・・空気液化分離装置
2・・・複式精留塔
2A・・・低圧塔
3・・・液体酸素ポンプ(圧送手段)
4・・・酸素昇温器(加熱手段)
5・・・触媒反応筒
6・・・吸着器
6A,6B・・・吸着筒
7・・・脱酸素塔(分離手段)
8・・・差圧計(圧力測定手段)
9・・・流量計(測定手段)
10・・・インバーター(制御手段)
11・・・バッファータンク
12・・・フィルター
13・・・減圧弁
14・・・熱交換器
15・・・加熱器
16・・・冷却器
17・・・ドレンセパレーター
18〜21・・・弁
22,23,24・・・圧力計
L1〜L5・・・流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複式精留塔の低圧塔底部からクリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を抜き出し、それを原料としてクリプトン及びキセノンを低温精留で分離する空気液化分離装置の運転方法であって、
複式精留塔の二次側に設けられた圧送手段により、クリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を臨界圧力以上に圧縮し、所定の流量で導出する圧送工程と、
前記圧送手段から導出された前記液体酸素を常温まで昇温した後に減圧手段に導入し、臨界圧力以下まで減圧する減圧工程と、
前記減圧手段から導出された臨界圧力以下の酸素ガスを触媒反応筒に導入し、当該液体酸素が含有する炭化水素類と酸素とを反応させて水及び二酸化炭素を生成する触媒反応工程と、
前記触媒反応筒から導出後の気体を、吸着、再生及び充圧を交互に行なう2以上の吸着筒を有する切替式の吸着器の少なくとも1つの吸着筒に導入し、前記気体中から水及び二酸化炭素を吸着除去する吸着工程と、
前記吸着器から導出後の気体を二分し、一方の気体を冷却した後にクリプトン及びキセノンを低温精留する後工程に導入するとともに、他方の気体を再生後の吸着筒に導入して当該吸着筒を充圧する充圧工程と、
クリプトン及びキセノンを低温精留する前記後工程に導入する前記一方の気体の流量又は圧力が一定となるように、前記流量又は前記圧力を、連続あるいは所定の間隔で測定し、当該流量又は当該圧力の測定値の変動量に応じて前記圧送手段から導出する前記液体酸素の流量を増加又は減少させて制御する工程と、を備えることを特徴とする空気液化分離装置の運転方法。
【請求項2】
前記触媒反応工程において、
前記圧送手段から導出された前記液体酸素を加熱手段に導入し、
前記加熱手段の一次側と二次側との差圧を連続あるいは所定の間隔で測定することを特徴とする請求項1記載の空気液化分離装置の運転方法。
【請求項3】
複式精留塔の低圧塔底部からクリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を抜き出し、それを原料としてクリプトン及びキセノンを低温精留で分離する空気液化分離装置であって、
複式精留塔の二次側に設けられ、クリプトン及びキセノンが濃縮された液体酸素を臨界圧力以上に圧縮し、所定の流量で導出する圧送手段と、
前記圧送手段から導出された前記液体酸素を常温まで昇温する加熱手段と、
前記加熱手段の一次側と二次側との差圧を測定するための圧力測定手段と、
前記加熱手段から導出された超臨界状態の流体を臨界圧力以下まで降圧する減圧手段と、
前記減圧手段から導出された臨界圧力以下の酸素ガス中に含まれる炭化水素類と酸素とを反応させて水及び二酸化炭素を生成する触媒反応筒と、
吸着、再生及び充圧を交互に行なう2以上の吸着筒を有し、前記触媒反応筒から導出された気体中から水及び二酸化炭素を吸着除去する切替式の吸着器と、
前記吸着器の二次側に設けられ、当該吸着器から導出された流体の残部からクリプトン及びキセノンを分離する分離手段と、
前記分離手段に導入される前記流体の流量及び圧力の少なくとも一方を測定する測定手段と、
前記測定手段の流量及び圧力の少なくとも一方の測定値に基づいて、前記圧送手段からの前記液体酸素の流量を増加又は減少させて制御する制御手段と、を備えることを特徴とする空気液化分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−42079(P2012−42079A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182327(P2010−182327)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】