説明

空気清浄機構及びそれを用いた画像形成装置

【課題】オゾンや揮発性有機化合物、NOxを除去する空気清浄機構において、長期間にわたって持続的に安定して働くようにする。
【解決手段】酸化チタン層51a,51bと、蓄光顔料層52a,52bと、酸化チタン層51a,51b及び蓄光顔料層52a,52bに光を照射する除電ランプ76とを設ける。そして除電ランプ76が点灯しているときは、除電ランプ76から光の照射によって、また除電ランプ76が消灯しているときは、蓄光顔料層52a,52bからの光の照射によって、装置内で発生したオゾンと窒素酸化物、揮発性有機化合物を酸化チタン層51a,51bの光触媒作用で分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオゾンと窒素酸化物、揮発性有機化合物を光触媒層で分解する空気清浄機構およびそれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の気密性が向上したこともあって、室内に設置されているファクシミリやプリンタ、複写機などの各種事務機器から発生するオゾンや窒素酸化物(NOx=NO、NO2等)、揮発性有機化合物などに対する関心が高まっている。これらの物質を室内から取り除くフィルタを備えた空気清浄機を室内に設置することも広く行われている。
【0003】
また事務機器から外部に排出されるオゾンや揮発性有機化合物の濃度は、ドイツのブルーエンジェルマーク審査基準(RAL-UZ62、85、114)で規定されている。一方、NOxの排出濃度規制は現在のところなされていないものの、NOxは空気中の水分と反応して硝酸を生成し、また金属と反応して硝酸塩を生成するので、NOxによって機器内の各種部材が悪影響を受ける。
【0004】
そこで事務機器内で発生したオゾンや揮発性有機化合物、NOxなどの物質を取り除くため、前述の空気清浄機と同様に、これらの物質を吸着除去するフィルタが事務機器内にも一般に設置されている。また、光触媒フィルタを用いて揮発性有機化合物や臭気成分を除去する技術も提案されている(特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2005−70264号公報
【特許文献2】特開2000−19905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フィルタによるオゾンの吸着除去では、フィルタの吸着性能がオゾンの吸着によって短期間で落ちてしまい、ユーザやサービスマンがフィルタを頻繁に交換しなければならないという問題があった。また、フィルタによるオゾン除去率を向上させるために、フィルタのメッシュを細かくしたり、フィルタの厚みを厚くして、フィルタの表面積を増大させると、フィルタでの圧力損失が増大して、容量の大きいファンを取り付ける必要が生じ、装置の製造コストが高くなる。また同時に消費電力が増大する。加えて、ファンによる騒音が大きくなるおそれがある。一方、光触媒フィルタを用いて揮発性有機化合物や臭気成分を除去する技術では、紫外線ランプからの紫外線光が光触媒に照射されている間しかオゾン等を分解除去できないという問題があった。
【0006】
そこで本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、オゾンや揮発性有機化合物、NOxを長期間にわたって持続的に安定して除去できる空気清浄機構を提供することにある。
【0007】
また本発明の目的は、装置内で発生するオゾンや揮発性有機化合物、NOxを持続的に安定して除去し、これらの物質の外部への排出を抑えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る空気清浄機構は、光触媒層が形成された光触媒保持体と、蓄光顔料層が形成された蓄光顔料保持体と、光触媒層及び蓄光顔料層に紫外線光を照射する光源とを備え、光源及び蓄光顔料層の少なくとも一方からの紫外線光の照射によって、オゾンと窒素酸化物、揮発性有機化合物を光触媒層で分解することを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る空気清浄機構は、透光性基体の一方面に光触媒層が形成され、他方面に蓄光顔料層が形成された保持部材と、光触媒層及び蓄光顔料層に紫外線光を照射する光源とを備え、光源及び蓄光顔料層の少なくとも一方からの紫外線光の照射によって、オゾンと窒素酸化物、揮発性有機化合物を光触媒層で分解することを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る画像形成装置は、光触媒層と、蓄光顔料層と、光触媒層及び蓄光顔料層に紫外線光を照射する光源とを備え、光源及び蓄光顔料層の少なくとも一方からの紫外線光の照射によって、装置内で発生したオゾンと窒素酸化物、揮発性有機化合物を光触媒層で分解することを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る画像形成装置は、透光性基体の一方面に光触媒層が形成され、他方面に蓄光顔料層が形成された保持部材と、光触媒層及び蓄光顔料層に紫外線光を照射する光源とを備え、光源及び蓄光顔料層の少なくとも一方からの紫外線光の照射によって、装置内で発生したオゾンと窒素酸化物、揮発性有機化合物を光触媒層で分解することを特徴とする。
【0012】
ここで部品点数を減らして装置の小型・軽量化等を図る観点から、前記光源として、感光体表面の電荷を除去するための除電ランプを用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る空気清浄機構および画像形成装置では、光源から紫外線光を受けているときはもちろんのこと、光源が消灯した後も蓄光顔料層から照射される紫外線光によって光触媒の分解機能は持続的に発揮される。これにより、光源の点灯中および消灯中も、光触媒によってオゾンや揮発性有機化合物、NOxが継続して分解・除去し続けることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る空気清浄機構及び画像形成装置について図に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明に係る空気清浄機構を用いた空気清浄機の一実施形態を示す概説図である。図1の空気清浄機1は、前面に吸気口12、上面に排気口13が形成された直方体形状のハウジング11と、吸気口12に対向するようにハウジング11内に配設された集塵フィルタ14と、集塵フィルタ14の背面側に取り付けられたファン15と、ファン15と排気口13との間に設けられた、光触媒としての酸化チタン層22(図2に図示)が表面に形成されたハニカム形状のフィルタ(光触媒保持体)2と、酸化チタン層22(図2に図示)に紫外線光を照射するUVランプ(光源)3と、UVランプ3の、フィルタ2と反対の側に取り付けられた、内周面に蓄光顔料層42(図2に図示)が形成された反射板(蓄光顔料保持体)4とを備える。
【0016】
このような構成の空気清浄機において、ファン15が駆動すると、吸気口12からハウジング11内に空気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は集塵フィルタ14を通過する。このとき、空気中に含まれる塵や埃が集塵フィルタ14によってまず除去される。次に、ファン15に引き込まれた空気は、ファン15の中心部から半径方向外方へ吹き出され、ハウジング11の上面に形成された排気口13に向かって流れる。排気口13の手前には、酸化チタン層22(図2に図示)が表面に形成されたフィルタ2が配置されている。フィルタ2にはUVランプ3から紫外線光が照射される。このため、空気中に含まれるオゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質は、フィルタ2を通過する際に、酸化チタン層22(図2に図示)の触媒作用によって分解除去される。そしてオゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が除去された空気は排気口13から外へ排出される。
【0017】
図2に、フィルタ2及びUVランプ3の周辺の拡大図を示す。フィルタ2はハニカム構造の基体21と、基体21の表面に形成された酸化チタン層22を有する。フィルタ2の下方には2本のUVランプ3が平行に配置されている。そしてUVランプ3の下側には、断面半円状の反射板4が取り付けられている。この反射板4は、紫外光を反射する基体41と、基体41の内周面に形成された蓄光顔料層42とを有する。UVランプ3から下方へ放射された紫外線光は、この反射板4で反射されてフィルタ2へ照射する。
【0018】
UVランプ3が点灯してときは、UVランプ3から放射された紫外線光が直接および反射板4で反射してフィルタ2の酸化チタン層22に照射し、酸化チタン層22の触媒作用が発揮されて、空気中のオゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が分解除去される。このとき同時に反射板4の蓄光顔料層42に紫外線光が蓄積される。一方、UVランプ3が消灯しているときは、反射板4の内周面に形成された蓄光顔料層42が発光し、この蓄光顔料層42からの光が酸化チタン層22に照射し、前記と同様に酸化チタン層22の触媒作用が奏されるようになり、オゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が分解除去される。このように、本発明に係る空気清浄機構を用いた空気清浄機1では、UVランプ3が点灯しているときのみならず消灯しているときであっても、蓄光顔料層42の発光によって酸化チタン層22における触媒作用が奏され、オゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質を分解除去できるようになる。
【0019】
本発明で使用する蓄光顔料としては従来公知のものを使用でき、例えば酸素酸塩系蓄光顔料、硫化物系蓄光顔料などが挙げられる。酸素酸塩系蓄光顔料としては、Zn2SiO4/Mn、CaSiO3/Pb/Mn、BaSi25/Pb、Ca3(Pb42/Ce/Mn、Ca3(Pb42/Ce/Mn、BaSO4/Pbなどが挙げられる。また硫化物系蓄光顔料としては、CaS/Biまたは(Ca、Sr)S/Biである硫化カルシウム系蓄光顔料、或いは、ZnS/Cuまたは(Zn、Cd)S/Cuなどが挙げられる。この中でも特に、ストロンチウムアルミネートに希土類金属を結合させたものが残光時間や耐水性、耐光性の点から好ましい。市販されているものとしては、「ルミノーバ」(根本特殊化学社製)、「キプラス」(ネクスト・アイ社製)がある。吸収スペクトルの最大点が360nm、粒径が20μm〜50μmの範囲のものが好ましい。
【0020】
本発明で使用する光触媒としては、TiO2、ZnO、SrTiO3、CdS、CdO、CaP、InP、In23、CaAs、BaTiO3、K2NbO3、Fe23、Ta25などが挙げられる。この中でも特に酸化チタンが好ましい。市販されているものとしては、「ST−01」や「ST−31」(石原産業社製)がある。粒径は0.01μm〜0.07μmでゾル状のものが好適である。
【0021】
なお、光触媒は、その組成を調整(無機顔料や金属の添加)したり、製造過程での熱処理を調整するによって、触媒機能の発揮に必要とする紫外線光の波長(吸収帯)を変えることができる。例えばTiO2にCrO3を少量添加すると、長波長側に吸収帯が変位する。したがって光触媒の吸収波長を、蓄光顔料の発光スペクトル特性に合わせることによって、光触媒作用を効果的に発揮させることができるようになる。
【0022】
図3に、第2の発明に係る空気清浄機構を用いた空気清浄機の要部概説図を示す。図3の空気清浄機では、図2に示したハニカム状のフィルタ2に代えて、図4に示すような、円筒状のガラス管(透光性基体)23の外周面に蓄光顔料層24を形成し、内周面に酸化チタン層22を形成したフィルタ(保持部材)2aを複数本用いている。空気はこの円筒状のフィルタ2aの中空部を通過する。フィルタ2aの下方に配置されたUVランプ3からの紫外線光は直接及び反射板で反射して、その一部は酸化チタン層22および蓄光顔料層24に照射し、その多くはガラス管23の下端面から入射して、ガラス管23内を反射および透過しながら進行する。この間に、紫外線光はガラス管23を透過して酸化チタン層22又は蓄光顔料層24に照射する。酸化チタン層22に紫外線光が照射すると、酸化チタン層22の光触媒作用が奏されて空気中に含まれるオゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が分解除去される。他方蓄光顔料層24に紫外線光が照射すると、蓄光顔料層24に紫外線光が蓄積される。
【0023】
一方、UVランプ3が消灯しているときは、蓄光顔料層24に蓄積されていた紫外線光がカラス管23を通して酸化チタン層22に照射される。これによって、前記と同様に、酸化チタン層22の光触媒作用が奏されるようになり、オゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が分解除去される。
【0024】
図5に、第2の発明に係る空気清浄機構で使用する保持部材の他の形態を示す。図5の保持部材2bは、板状のガラス基板25の一方面に酸化チタン層22を形成し、他方面に蓄光顔料層24を形成したものである。例えばこの保持部材2bを一つの側壁として、酸化チタン層22が内側を向くように中空の多角柱を作製し、中空部を空気が流れるようにしてもよい。
【0025】
ここで使用する透光性基体としては透光性のものであれば特に限定はなく、例えばソーダガラス・硼珪酸ガラス・石英ガラスなどのガラス、アクリル・ポリスチレン・ポリカーボネートなどのプラスチックなどが挙げられる。なお、酸化チタン層の触媒作用によって生成される物質の中には酸性物質も含まれるため、生成した酸性物質によって蓄光顔料層が劣化しないようにするには、耐薬品性に優れたものが透光性基体としては望ましい。
【0026】
次に、第3の発明に係る画像形成装置について説明する。図6に、この発明の画像形成装置の一実施形態を示す垂直断面図を示す。この図の画像形成装置は、いわゆる胴内排紙型画像形成装置である。装置本体Sの上下方向略中央部には、正面側が開口した排紙空間80が形成されている。この排紙空間80の底面には、排出される用紙を載置するためのトレイ87が筺体と一体成形されている。一方、排紙空間80の上側には、原稿を読み取るための読取機構91が内蔵され、排紙空間80の下側には、画像形成機構が内蔵されている。
【0027】
画像形成機構について説明する。感光体ドラム70は帯電装置71によってその表面が正又は負に一様に帯電される。他方、原稿載置台90に原稿(不図示)が載置され、その画像データが読取装置91によって読みとられる。読み取られた画像データはレーザスキャナ(露光装置)72によって感光体ドラム70の表面に書き込まれ、感光体ドラム70の表面に静電潜像が形成される。具体的には反転現像方式の場合には画像に相当する部分の帯電が除去され、正規現像方式の場合は背景に相当する部分の帯電が除去されて、それぞれ静電潜像が形成される。次に現像装置73によって感光体ドラム70上の静電潜像をトナーで可視像化する。このときトナーの帯電極性は、反転現像方式の場合には感光体ドラム70の帯電極性と同極性であり、正規現像の場合は感光体ドラム70の帯電極性と逆極性である。
【0028】
一方、給紙カセットCに収納されている用紙Pは、ピックアップローラ81により引き出され、給紙ローラ82とさばきローラ83とで挟持されて搬送路へ送られる。そしてレジストローラ対84によって、感光体ドラム70上のトナー画像が転写部に到達するのにタイミングを合わせて、用紙Pは転写部へ送り出される。転写部では、感光体ドラム70と転写ローラ74との間で用紙Pが挟持されている状態で、トナー帯電極性と逆極性の電荷が転写ローラ74に印加されることにより、感光体ドラム70上のトナー像が用紙P上に移動する。用紙P上に移動せず感光体ドラム70上に残留したトナーはクリーニングローラ75によって除去回収される。そして、感光体ドラム表面の残留電荷が除電ランプ76によって除去された後、帯電装置71によって再び感光体ドラム表面が一様に帯電され、前記の工程が同様に繰り返される。一方、トナー像を載置した用紙Pは定着ローラ対85へ搬送される。ここでトナー像は定着ローラ対85によって加熱・加圧されて用紙Pに定着する。そして用紙Pは排出ローラ対86に送られ、トレイ87へ排出される。なお、手差しトレイ88に載置された用紙Pは、給紙ローラ89によってレジストローラ対84へ送りだされ、それ以後は前述の搬送経路と同じ経路を通る。
【0029】
図7に、除電ランプ76の周辺拡大図を示す。線状の除電ランプ(光源)76が、感光体ドラム70と離隔対向するように取り付けられている。そして除電ランプ76の両端部の、除電ランプ76と感光体ドラム70との間にフレーム62a,62bが取り付けられ、その先端部には凹部63a,63bが形成されている。この凹部63a,63b内には蓄光顔料層52a,52bが形成されている。一方、除電ランプ76の、感光体ドラム70と反対側にフレーム61が取り付けられ、このフレーム61の、蓄光顔料層52a,52bで反射した光が当たる位置に酸化チタン層51a,51bが形成されている。
【0030】
このような構成の画像形成装置において、画像形成がなされているときは、除電ランプ76が連続的又は断続的に点灯して、感光体ドラム70表面に残留する電荷が除去される。このとき、除電ランプ76の両端部から放射された光は、フレーム62a,62bの凹部63a,63bに形成された蓄光顔料層62a,62bに当たり、その一部は蓄光顔料層62a,62bに蓄積され、残りは反射して酸化チタン層51a,51bに当たる。これによって酸化チタン層51a,51bにおいて光触媒作用が奏され、装置内で発生したオゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が分解除去される。一方、画像形成がなされていないとき、つまり除電ランプ76が点灯していないときは、蓄光顔料層52a,52bに蓄積されていた光が酸化チタン層51a,51bに照射される。これによって、前記と同様に、酸化チタン層51a,51bの光触媒作用が奏されるようになり、オゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が分解除去される。
【0031】
この発明で使用できる蓄光顔料および光触媒としては、前記例示したものがここでも使用できる。また、蓄光顔料層および光触媒層の形成位置および層厚は、除電ランプ76の取付位置や光照射角度、光量などから適宜決定すればよい。上記実施形態では除電ランプ76と感光体ドラム70との離間距離が短いため、フレーム62a,62bに凹部63a,63bを形成し、凹部63a,63bに蓄光顔料層52a,52bを形成しているが、除電ランプ76と感光体ドラム70との離間距離が長い場合には、凹部63a,63bを形成することなくフレーム62a,62bの先端に蓄光顔料層52a,52bを形成してもよい。
【0032】
図8に、この発明に係る画像形成装置の他の実施形態を示す。図8の画像形成装置の前記実施形態と異なる点は、フレーム62a,62bの凹部63a,63bに蓄光顔料層を形成せず、光を反射させる部分として利用し、フレーム61の酸化チタン層が形成されていた位置に蓄光顔料層52a,52bを形成し、フレーム62a,62bの、蓄光顔料層52a,52bの対向位置に酸化チタン層51a,51bを形成した点にある。
【0033】
このような構成の画像形成装置では、除電ランプ76が点灯しているとき、除電ランプ76の両端部から放射された光は、フレーム62a,62bの凹部63a,63bで反射して蓄光顔料層52a,52bに当たる。光の一部は蓄光顔料層52a,52bに蓄積され、残りはさらに反射して酸化チタン層51a,51bに当たる。これにより酸化チタン層51a,51bにおいて光触媒作用が奏され、装置内で発生したオゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が分解除去される。一方、除電ランプ76が点灯していないときは、蓄光顔料層52a,52bに蓄積されていた光が、離隔対向した酸化チタン層51a,51bに照射される。これによって、前記と同様に、酸化チタン層51a,51bの光触媒作用が奏されるようになり、オゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が分解除去される。
【0034】
図9に、第4の発明に係る画像形成装置の要部概説図を示す。この発明に係る画像形成装置が、前記第3の発明に係る画像形成装置と異なる点は、光触媒層と蓄光顔料層とが形成された保持部材を用いる点にある。以下、この点を中心に説明する。
【0035】
図9の画像形成装置では、除電ランプ76の両端部の、除電ランプ76と感光体ドラム70との間にフレーム62a,62bが取り付けられ、このフレーム62a,62bの先端部に保持部材53が取り付けられている。もちろん、保持部材53の取付位置はここに限定されるものではなく、除電ランプ76からの光が当たる位置であればよい。この保持部材53の構造は、図5で示したものと同一であって、板状のガラス基板(透光性基体)531の一方面に酸化チタン層(光触媒層)532を形成し、他方面に蓄光顔料層533を形成したものである。そして、この保持部材53は、酸化チタン層532が外側となるようにフレーム62a,62bに取り付けられている。
【0036】
このような画像形成装置において、除電ランプ76が点灯しているとき、除電ランプ76の両端部から放射された光の一部は酸化チタン層532および蓄光顔料層533に直接当たり、また光の一部はガラス基板531の端面から入射して、ガラス基板531内を反射および透過しながら進行する。光がガラス基板531内を進行する間に、紫外線光はガラス基板531を透過して酸化チタン層532又は蓄光顔料層533に照射する。酸化チタン層532に紫外線光が照射すると、酸化チタン層532の光触媒作用が奏され、空気中に含まれるオゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が分解除去される。他方、蓄光顔料層533に紫外線光が照射すると、蓄光顔料層533に紫外線光が蓄積される。
【0037】
一方、除電ランプ76が点灯していないときは、蓄光顔料層533に蓄積されていた光がカラス基板531を通して酸化チタン層532に照射される。これによって、前記と同様に、酸化チタン層532の光触媒作用が奏されるようになり、オゾンやNOx、揮発性有機化合物などの物質が分解除去される。
【0038】
使用する透光性基体、光触媒、蓄光顔料としては、前記例示したものがここでも使用できる。
【0039】
以上説明した本発明に係る画像形成装置では、感光体ドラム70の残留電荷を除去する除電ランプ76を、光触媒層および蓄光顔料層へ紫外線光を照射する光源としても用いたが、除電ランプ76とは別に紫外線光を放射する光源を新たに設けてももちろん構わない。ただし、この場合には、部品点数が増えると同時に、新たな光源を設置する空間を確保する必要がある。このため、装置の小型・軽量化等の観点からは除電ランプを光源として兼用するのが望ましい。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
京セラミタ社製複写機「KM−5035」を改造して、図6及び図7に示した構造のものとして次の実験を行った。換気可能な容積5m3のチャンバー内に改造機を設置し、画像形成を連続30分間行った後、画像形成を行わない待機状態で48分間放置した。そして、画像形成時と待機状態時の最大オゾン濃度を測定した。また同時に、チャンバー内の空気を0.1L/minの速度でテナックス管に捕集し、テナックス管に吸着された気体成分をGC−MS装置を用いて分析した。そして、n−ヘキサンとn−ヘキサデカンの間に現れる有機ガス成分を定量して揮発性有機化合物(VOC)濃度を算出した。結果を表1に示す。
【0041】
(比較例1)
酸化チタン層および蓄光顔料層を設けなかった以外は実施例1と同様にして実験を行った。結果を表1に合わせて示す。
【0042】
(比較例2)
酸化チタン層および蓄光顔料層を設けず、代わりに排気口に活性炭フィルタを取り付けた以外は実施例1と同様にして実験を行った。結果を表1に合わせて示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように、実施例1の複写機では、画像形成時および待機状態時において機外に排出されるオゾン濃度及びVOC濃度を従来に比べて格段に低く抑えることができた。これに対し、比較例1の複写機では、最大オゾン濃度が76ppb、VOC濃度が254μg/m3と実用上問題のあるレベルであった。また比較例2の複写機では、排気口に取り付けた活性炭フィルタによってオゾン及びVOCはある程度吸着除去されてはいるが、市場の要望に充分に応えられているとは言えないレベルであった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の発明に係る空気清浄機構を用いた空気清浄機の一例を示す概説図である。
【図2】図1の空気清浄機の要部拡大図である。
【図3】第2の発明に係る空気清浄機構を用いた空気清浄機の一例を示す要部拡大図である。
【図4】図3の空気清浄機で用いるフィルタを斜視図である。
【図5】図3の空気清浄機で用いるフィルタの他の例を示す斜視図である。
【図6】第3の発明に係る画像形成装置の一例を示す概説図である。
【図7】図6の画像形成装置における、除電ランプ周辺の拡大図である。
【図8】第3の発明に係る画像形成装置の他の例を示す除電ランプ周辺の拡大図である。
【図9】第4の発明に係る画像形成装置の一例を示す除電ランプ周辺の拡大図である。
【符号の説明】
【0046】
1 空気清浄機
2 フィルタ(光触媒保持体)
3 UVランプ(光源)
4 反射板(蓄光顔料保持体)
S 画像形成装置
21 基材
22 酸化チタン層(光触媒層)
23 ガラス管(透光性基体)
24 蓄光顔料層
25 カラス板(透光性基体)
41 基体
42 蓄光顔料層
51 酸化チタン層(光触媒層)
52 蓄光顔料層
53 保持部材
76 除電ランプ(光源)
531 ガラス板(透光性基体)
532 酸化チタン層(光触媒層)
533 蓄光顔料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒層が形成された光触媒保持体と、蓄光顔料層が形成された蓄光顔料保持体と、光触媒層及び蓄光顔料層に紫外線光を照射する光源とを備え、
光源及び蓄光顔料層の少なくとも一方からの紫外線光の照射によって、オゾンと窒素酸化物、揮発性有機化合物を光触媒層で分解することを特徴とする空気清浄機構。
【請求項2】
透光性基体の一方面に光触媒層が形成され、他方面に蓄光顔料層が形成された保持部材と、光触媒層及び蓄光顔料層に紫外線光を照射する光源とを備え、
光源及び蓄光顔料層の少なくとも一方からの紫外線光の照射によって、オゾンと窒素酸化物、揮発性有機化合物を光触媒層で分解することを特徴とする空気清浄機構。
【請求項3】
光触媒層と、蓄光顔料層と、光触媒層及び蓄光顔料層に紫外線光を照射する光源とを備え、
光源及び蓄光顔料層の少なくとも一方からの紫外線光の照射によって、装置内で発生したオゾンと窒素酸化物、揮発性有機化合物を光触媒層で分解することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
透光性基体の一方面に光触媒層が形成され、他方面に蓄光顔料層が形成された保持部材と、光触媒層及び蓄光顔料層に紫外線光を照射する光源とを備え、
光源及び蓄光顔料層の少なくとも一方からの紫外線光の照射によって、装置内で発生したオゾンと窒素酸化物、揮発性有機化合物を光触媒層で分解することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記光源として、感光体表面の電荷を除去するための除電ランプを用いる請求項3又は4記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−229036(P2007−229036A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51644(P2006−51644)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】