説明

空気清浄装置

【課題】集塵効率を高めるために荷電効率がよく、オゾン発生量を多くすることができると共に、粉塵保持容量を大きくすることができる空気清浄装置を提供する。
【解決手段】空気清浄装置10は、放電電極1と、放電電極1に対峙する対向電極2との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電する荷電部10aと、荷電部10aにおいて帯電された塵埃を集塵する集塵部10bと、によって構成され、放電電極1は板状で、対向電極2との間に間隔を設けて配置され、該間隔の距離に応じて電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気清浄装置、特に、板状電極を利用した電気集塵方式の空気清浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気清浄装置として、圧力損失が低く、高い集塵性能が得られる電気集塵方式が知られている。電気集塵方式は、粒子及び粉塵を帯電させる荷電部と、荷電した粒子及び粉塵を電気的に捕捉する集塵部と、から構成されるものであって、集塵部については、電界を形成する電極上に粒子及び粉塵を捕捉する「平行平板方式」と、電荷を帯びたフィルタ上で捕捉する「ろ材方式」とがある。
平行平板方式は、低い圧力損失で高い集塵性能が得られるが、粉塵が平板上に堆積していくので、再飛散が起こりやすく、集塵部表面積も小さいため、粉塵保持容量も小さい。一方、ろ材方式のフィルタには、予め電荷を帯びたエレクトレットフィルタを用いる方法と、誘電率の高いフィルタを電極で挟み、電極間に電圧を印加することでフィルタ表面に電荷を帯びさせる方法とがある。
【0003】
従来の空気清浄装置は、粉塵を帯電させる荷電部と、帯電処理を施した集塵部と、からなり、集塵部のフィルタ層が、荷電部側に配置される除塵層と、荷電部側と反対側に配置される脱臭層とからなり、除塵層はアセトアルデヒドを除去するためのアミン系化合物が添着されている。このアミン系化合物は、硫酸アミン、ポリアリルアミン、界面活性剤のうちの1種、または2種以上で構成されている。(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3661694号公報(第5−6頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された発明は、集塵部の上流側で荷電することにより、通過した粒子に帯電させ、帯電処理した集塵部で粉塵を捕集するものであり、除塵層の荷電部側にアセトアルデヒドを除去するためにアミン系化合物を添着する特徴を持っているため、以下のような問題があった。
(あ)荷電部は放電線(ワイヤ電極)を使用しており、通過する粒子に対する荷電効率が低く、集塵効率が悪い。
(い)また、集塵フィルタに化合物を添着し、臭気成分を化学吸着することで脱臭するが、吸着剤の自己再生機能が無く、長時間使用することで、飽和状態になり、臭気成分の吸着ができなくなる。
(う)また、荷電と共に活性酸素を発生するが、ワイヤ電極荷電時のオゾン生成量が少ないため、空気清浄装置が必要とする高濃度オゾンによる脱臭に不向きである。
(え)更に、ワイヤ電極の荷電効率を高めるため、ワイヤの径を小さくすることができるが、ワイヤ線は使用中の不注意または劣化などによる切断事故が多く見られる。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑み、集塵効率を高めるために荷電効率がよく、オゾン発生量を多くすることができると共に、粉塵保持容量を大きくすることができる空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気清浄装置は、放電電極と、該放電電極に対峙する対向電極との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電する荷電部と、該荷電部において帯電された塵埃を集塵する集塵部とを備え、
前記放電電極は、板状で、前記対向電極の間に間隔を設けて配置され、該間隔の距離に応じて電圧が印加されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る空気清浄装置は、荷電部を構成する放電電極が板状であるから、放電電極と対向電極との間に電圧を印加することによって、放電電極と対向電極との間の間隔を通過する空気中の粒子に対し高効率の荷電をすることができる。
また、荷電と同時に発生したオゾンによって空気中の臭気成分が酸化、分解されるから、瞬時の消臭効果が得られる。
さらに、集塵部を、帯電している粒子及び粉塵を捕捉する集塵フィルタと、該集塵フィルタを挟んで対峙する接地電極および高圧電極と、から構成し、集塵フィルタに電界強度を付与するようにすれば、さらに高い集塵効率が得られる。
このとき、集塵フィルタを網目状に形成された無機繊維または有機繊維、多孔質体で構成しておけば、広い表面積が確保できるとともに、通過する粒子及び粉塵の繊維への接触確率を増大させるので、低い圧力損失で高い捕集効率が得られる。
また、かかる繊維の表面に触媒、吸着剤もしくは化学添着剤のうち少なくとも1つ以上の材料を担持して構成すれば、高い脱臭性能が得られると共に、集塵と脱臭、除菌とが同じ場所で実行されるため、多機能空気清浄装置を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[実施の形態1]
図1は本発明の実施形態1に係る空気清浄装置の構成を模式的に表した構成図である。
図1において、空気清浄装置10は、荷電部10aと、荷電部10aの下流側に配置される集塵部10bとから構成されている。
【0010】
(荷電部)
図2は本発明の実施形態1に係る空気清浄装置の構成を模式的に表した断面図である。
図2において、荷電部10aは、放電電極1と、その対向電極2と、両者間に所定の電圧を付与する電源8と、から形成され、粒子及び粉塵は両者の間を通過する際、帯電する。
放電電極1は、板状で、タングステン、銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、鉄などの金属、あるいはこれらの金属を主成分とする合金、もしくはこれらの金属に、銀、金、白金などの貴金属を表面にメッキしたもので形成されている。
対向電極2は、板状で、同様の金属あるいはカーボン、金属フィラー等を練り込んだ導電性樹脂で形成されている。
【0011】
(集塵部)
集塵部10bは、上流側(荷電部10a側に同じ)から下流側に向かって順次配置された、接地電極3と、誘電率の高い絶縁繊維で形成された集塵フィルタ5と、絶縁繊維の表面に脱臭剤が担持されている脱臭フィルタ6と、高圧電極4、から形成されている。接地電極3と高圧電極4と、両者間に所定の電圧を付与する集塵部用電源9と、から構成され、空気通過時の付帯粉塵を捕集、臭気成分を酸化、分解及び付着細菌を殺菌する。
すなわち、集塵フィルタ5と脱臭フィルタ6は、接地電極3と高圧電極4とによって挟まれているものの、集塵フィルタ5と脱臭フィルタ6が接地電極3と高圧電極4との間に電流が流れることを防止しているから、かかるフィルタ間に異常電流が流れることはない。したがって、集塵フィルタ5と脱臭フィルタ6は、電界が印加されて帯電しているから、前記荷電部10aにおいて帯電した粒子及び粉塵は、集塵フィルタ5及び脱臭フィルタ6に効率良く捕捉されることになる。
【0012】
(平行設置)
図3および図4は本発明の実施形態1に係る空気清浄装置の荷電部に設置された放電電極の構成を説明するものであって、図3は模式的に表した斜視図、図4は模式的に表した断面図である。
図3および図4に示す荷電部10aにおいて、放電電極1は対向電極2と平行に設置されている。つまり、板状の放電電極1の断面形状は短辺と長辺とを備えた矩形形状で、板状の対向電極2の断面形状も同じく短辺と長辺とを備えた矩形形状で、両電極の短辺同士・長辺同士が平行になるように設置されている。そして、放電電極1と対向電極2の間に数μA/cmの電流を流して、通過する粒子及び粉塵を帯電させ、集塵部10b(図1および図2参照)の接地電極3と高圧電極4の間に、電圧を印加して、集塵フィルタ5と脱臭フィルタ6に30〜90V/m2の電界強度を付与した場合、帯電している粉塵(一過性粉塵、0.3μm粒子)を80%以上捕集(風速1m/sの時)することができる。
【0013】
このとき、荷電部10aで生成されるオゾンは瞬時に空気中の臭気成分と酸化反応して、消臭の役割を果たす。未反応の多くの臭気成分は脱臭フィルタ6に担持されている脱臭剤によって除去される。また、未反応のオゾンはフィルタに添着した脱臭剤に含まれる触媒、活性炭などによって分解されるので、空気清浄装置10の外にオゾンが流出することはない。
なお、放電電極1と対向電極2との間に電流を通電しない場合、及び接地電極3と高圧電極4との間に電界を形成しない場合、集塵フィルタ5と脱臭フィルタ6は0.3μm粒子をほとんど捕集することができない。
【0014】
(集塵フィルタ)
集塵フィルタ5は、脱臭フィルタ6との間の異常電流の発生を防ぐものであるが、ケイ素酸化物あるいはポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、アクリル、アラミド、ポリアミドのうち1種類以上の材料からなり、繊維の表面抵抗率が10〜13Ω/□であることを特徴とし、繊維径が5〜30μm及び目付け量が40〜400g/m2とすることが好ましい。
さらに、集塵フィルタ5の繊維上には、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、フッ素、テフロン(登録商標)、ゼオライトなど、絶縁性及び誘電率の高い材料が添着されてもよい。絶縁性及び誘電率の高い材料を繊維表面に担持することで、繊維上に現れる表面電荷は増大し、通過する帯電した粒子を誘引する力は強くなる。
【0015】
また、集塵部10bの荷電部10a側に配置される接地電極3は、荷電部10aの対向電極2より高い抵抗率を有している。このため、荷電部10aと集塵部10bの距離を縮めても、荷電部10a(放電電極1)からの放電電流が集塵部10b(接地電極3)へ流れることがないため、荷電部10aと集塵部10bとの距離を縮めることができ、空気清浄装置10の小型化が実現される。
集塵部10bで用いる接地電極3および高圧電極4は、金属、ABS、ポリカーボネート、EP、PS、PPのうち少なくとも1つ以上の成分で成型され、上流側(荷電部10a側に同じ)の接地電極3の抵抗率は、下流側の高圧電極4の抵抗率と同等の材料、もしくは、後者より低い材料を用いる。
【0016】
(脱臭フィルタ)
脱臭フィルタ6は、繊維径が3〜30μm、目付け量が40〜400g/m2、及び繊維へ担持される脱臭剤の担持量を100〜900g/m2とした無機材料、あるいは高分子有機材料からなる。このとき、前記無機材料は、ケイ素酸化物、あるいはニッケル、銅、鉄、アルミニウム、コバルトなどの遷移金属、あるいは炭素のうち1種類以上を主成分とし、前記高分子有機材料は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、アクリル、アラミド、ポリアミドのうち1種類以上を主成分としている。
高い脱臭性能を得るためには、目付け量に関わらず脱臭剤担持量を100g/m2、以上とする必要があり、900g/m2、以下でなければ繊維上に脱臭剤を保持する付着強度が弱くなり、経時変化にともなって脱臭剤の繊維からの脱落が起こり、脱臭性能の劣化につながる。
【0017】
また、繊維径が30μm以上では繊維が折れやすくなってしまい、繊維上に担持されている脱臭剤も同時に脱落し、脱臭性能の劣化につながる。さらに繊維径が3μm以下では繊維が軟化するため、フィルタを形成するために使用するバインダ量が多くなってしまい、繊維径も結果として5μm以上となる。
また、繊維の目付け量は少なくとも40g/m2以上なければ、必要な脱臭剤量100g/m2以上を担持することができず、また、繊維の目付け量は400g/m2以下でなければ脱臭剤が繊維上に均一に担持することができなくなり、脱臭フィルタ6の目詰まりが生じる。
【0018】
(触媒及びその担体)
脱臭フィルタ6には触媒及びその担体が担持されている。該触媒及び担体は、例えば、アクリル、メラニン、スチレン化合物、塩化化合物のうち1種類以上を主成分とする有機化合物、またはシリカ、アルミナのうち1種類以上を主成分とする無機化合物からなるバインダにより保持されている。
担持される触媒の主成分は、マンガン、コバルト、セシウム、銅、亜鉛、ニッケルのうち1種類以上を主成分とする金属酸化物からなり、白金、パラジウム、ルテニウム、金、銀のうち1種類以上の貴金属も含まれているとよい。
【0019】
さらに、上記触媒を担持することでアセトアルデヒド、アンモニア、メチルメルカプタン、トリメチルアミンの四大悪臭成分だけでなく、酢酸、二硫化メチル、イソ吉草酸、及び建築溶剤などから揮発するホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの揮発性有機化合物などを有害レベル以下まで低減することができる。
また、同様に担持される担体は5Å〜500Åの細孔径を有するシリカ、活性炭、ゼオライトのうち1種類以上を主成分とする多孔質材料からなることで、吸着除去量および吸着速度を向上させることができる。
【0020】
よって、脱臭フィルタ6は、一般的に広く適用されているハニカム状のフィルタと比較して、フィルタ容積当たりの表面積を広くすることができ、また、網目構造となることによってフィルタ内で乱流が生じるため、粒子との接触確率も増大する。
【0021】
(垂直設置)
図5および図6は本発明の実施形態1に係る空気清浄装置の荷電部に設置された放電電極の構成を説明するものであって、図5は模式的に表した斜視図、図6は模式的に表した断面図である。
図5および図6に示す荷電部10cにおいて、放電電極1cが対向電極2に対して垂直に設置されている。なお、放電電極1cは放電電極1に同じものであって、設置形態が相違するものであるから、空気清浄装置10の荷電部10aにおける放電電極1の設置形態には、対向電極2に対して平行あるいは垂直に設置する2種類があることになる。
【0022】
(放電状況)
図7および図8は本発明の実施形態1に係る空気清浄装置の荷電部における放電状況を模式的に表したものであって、図7は平行設置の場合の断面図、図8は垂直配置の場合の断面図である。
図9および図10は、放電状況を比較するためのものであって、図9の(a)はワイヤ電極の構成を模式的に表した斜視図、図9の(b)はワイヤ電極の場合の放電状況を模式的に表した断面図、図10の(a)は突起電極の構成を模式的に表した斜視図、図10の(b)は突起電極の場合の放電状況を模式的に表した断面図である。
【0023】
図7において、放電電極1を対向電極2と平行に設置した場合、荷電電極である放電電極1を凹凸が少なく平たい扁平形状にしたことで、放電は、図7に示すように、放電電極1の断面からみて矩形状の四角の四箇所から行っている。更に、放電電極の全体は均一に対向電極に向けて放電している。
【0024】
図8において、放電電極1cを対向電極2と垂直に設置した場合、図7に示した放電電極1が平行である時よりも放電領域が狭く、放電領域が重なる部分もある。それによって、より高い電界強度が得られる。
また、空気清浄装置10の用途により、放電電極1cは垂直に設置されるため、圧損が僅かに上昇する。荷電部10cに通過する空気が放電電極1cにぶつかることによって、乱流が発生し、通過する粒子が効率よく荷電されることになる。
【0025】
図9において、比較する荷電部10wには、対向電極2に挟まれて、それぞれ平行にワイヤ電極1wが設置されている。そして、荷電領域はワイヤ電極1wの対向する側面(二箇所)に形成されている。
図10において、比較する荷電部10xには、対向電極2に挟まれて、それぞれ平行に突起電極1xが設置されている。そして、荷電領域は突起電極1xの突起先端に形成されている(基本的に二箇所に形成されている)。
【0026】
ここで、図7および図8と図9の(b)および図10の(b)とを比較すると、放電電極1および放電電極1cの場合に、これらと対向電極2との間に生じる荷電領域は、ワイヤ電極1wまたは突起電極1xと対向電極2との間に生じる荷電領域の何れよりも広いことが分かる。
すなわち、放電電極1および放電電極1cは設置形態にかかわらず、荷電領域が広く、この領域を通過する粒子や大気塵(0.3μm)に対して、効率よく荷電することができる。
【0027】
(実施例)
図11は図1に示された荷電部の実施例の詳細寸法を示す模式図である。
図11に示す荷電部10aは、空気清浄装置10について、最大の集塵、脱臭、防菌の効果を出すため、最適化したものである。
すなわち、対向電極2は、幅A(長辺)が15〜20mm、厚みB(短辺)が0.1〜0.5mmである。放電電極1は、幅C(長辺)が0.5〜1.0mm、厚みD(短辺)が0.05〜0.1mmである。そして、対向電極2が平行に配置され、放電電極1と対向電極2との距離Eは10〜12mmである。このとき、空気清浄装置10の性能は、最も良い状態である。
なお、図6の荷電部10cのように放電電極が垂直に設置されている場合は、放電電極1cと対向電極2との距離は、9〜12mmが良い。
【0028】
(集塵効率)
次に、図2を参照して、空気清浄装置10の集塵効率について説明する。
空気清浄装置10の電源はそれぞれ荷電部と集塵部の二つからなっている。そのため、空気清浄装置10の用途により、荷電する電極をプラス荷電あるいはマイナス荷電に選択することができ、荷電部と集塵部とのプラスマイナス電極の組合せも自由にすることができる。
空気清浄装置10において、荷電部10aの荷電電極極性と集塵部10bの電極極性を一致にした場合、良い集塵効率が得られる。荷電部10aの電源はプラスあるいはマイナスの荷電をすると、荷電部10aを通過する際、空気中の粒子及び大気塵がプラスあるいはマイナスの電荷に帯電され、気流とともに下流の集塵部10bに入る。
【0029】
集塵部10bの電源は荷電部10aと同じプラスあるいはマイナスの電荷を荷電すると、接地電極3に近づけば近づくほど逆の電荷が荷電される。即ち、集塵フィルタ5側は逆の電荷が帯電され、脱臭フィルタ6側は荷電部10aと同じ電荷が帯電される。そのため、粒子及び大気塵は集塵部10bを通過する際、先に逆の電荷が帯電された集塵フィルタ5に捕集される。
集塵フィルタ5を抜けた一部の粒子は、更に集塵部10bの下流側に配置された脱臭フィルタ6に進む。下流側に行けば行くほど、同種の電荷は多くなり、壁のようになっている。そこで同種電荷とぶつかり、クーロンの力によって、空気流の反対側の集塵フィルタ5に押され、再度捕集される。
粒子及び大気塵(粒子径0.3μm)は集塵フィルタ5に捕集される機会が増えることによって、空気清浄装置10の集塵効率が高くなったのである。
【0030】
(電流/電圧特性)
図12および図13は、図1に示された荷電部における印加電圧と電流との関係を示す電気特性図であって、図12はプラス荷電時、図13はマイナス荷電時である。なお、放電電極1の短辺は0.05〜0.1mm、長辺は0.6〜1mmの範囲で、更に、放電電極1は表面加工が有るかないかを組合せてパラメータにしている。たとえば、図中、中抜き菱形である「0.093−0.97」は、短辺が0.093mmで長辺が0.97で表面加工なしを示し、黒丸である「0.057−0.65(Gold)」は、短辺が0.057mmで長辺が0.65mmで表面が金メッキとなっていることを示している。
図12より、空気清浄装置10は、荷電部10aにプラスの荷電を印加する場合の電圧は、6〜9.5kVであることを特徴としている。
図13より、空気清浄装置10は、荷電部10aにマイナスの荷電を印加する場合、その電圧は4〜9kVであることを特徴としている。
【0031】
(集塵率)
図14は、図1に示された空気清浄装置の集積率を説明する集積率特性図である。
図14において、荷電部10aの放電電極を板状にしたことによって、ワイヤ電極1wや突起電極1xの場合に比較して、大幅な集塵率向上が認められる。たとえば、前荷電電流を約160μA付加すると、放電電極では100%に近い集塵率であるのに対し、ワイヤ電極1wや突起電極1xでは約80%程度でしかない。また、前荷電電流を約80μA付加した場合でも、放電電極では90%以上の集塵率であるのに対し、ワイヤ電極1wや突起電極1xでは80%未満でしかない。
よって、空気清浄装置10は、放電電極1の効果によって、集塵率が約20%向上したことが分かる。
【0032】
(オゾン生成)
空気清浄装置10は、荷電部10aに放電電極1を使用することによって、容易にオゾンを発生させることができ、荷電部10aの電源の正負荷電によって、オゾンの発生量を一定範囲に調整することができる。以下、図15に基づいてオゾン生成について説明する。
図15は図1に示す空気清浄装置における荷電電流とオゾン濃度の関係を表すオゾン生成量特性図であって、横軸は正負荷電時の荷電電流、縦軸はオゾン濃度である。
図15において、同じ電流時の単位時間オゾン生成量はマイナス荷電(図中、黒丸)の方が、プラス荷電(図中、黒三角)より多いことが分かる。
【0033】
オゾン(03)は酸素原子3個からなる酸素の同素体であり、極めて不安定な物質で、強い酸化力を持っている。空気清浄において、容易に酸化される化合物から生じた臭気の抑制に多く応用されている。空気清浄装置10はこのオゾンの酸化、分解能力を利用し、空気中の臭気成分を除去する。
空気清浄装置10の設置場所、用途により、大量なオゾンが必要な場合、荷電部電源8と集塵部電源9を共にマイナス荷電をするとよい。
【0034】
(フィルタの再生メカニズム)
空気清浄装置10の荷電部10aから発生したオゾンは荷電部10aを通過する空気中の臭い成分を酸化、分解するだけでなく、空気清浄装置10の下流側に設置している脱臭フィルタ6に吸着された臭気成分の分解に効果もある。次に、図16に基づいて脱臭フィルタ6の再生メカニズムについて説明する。
図16は、図1に示された空気清浄装置における脱臭フィルタの再生メカニズムを説明する、(a)はフロー図、(b)は模式図である。図16において、脱臭フィルタ6は脱臭の役割を果たしていたが、臭気成分の吸着は、時間とともに吸着能力が弱くなっていく。脱臭フィルタ6の劣化が進むと、フィルタの吸着できるスペースは無くなり、脱臭効果がなくなる結果になってしまう。
【0035】
しかし、空気清浄装置10では、これを通過する空気の上流に配置された荷電部10aから来たオゾンが、空気流と共に集塵部10bに入り、脱臭フィルタ6と接触する。そうすると、脱臭フィルタ6に蓄積された臭気成分とぶつかり、これらの化合物を酸化、分解することができる。したがって、脱臭フィルタ6に溜まった臭気成分が酸化、分解され、フィルタの吸着スペースが空けられ、フィルタ本来の吸着能力に戻し、初期の脱臭効果を長く維持することができる。
【0036】
(オゾン再生効果)
図17は、図1に示された空気清浄装置の脱臭フィルタのオゾン再生効果を説明するオゾン再生特性図であって、確認に用いたガスであるアセトアルデヒドの濃度の経時変化を見ている。
図17において、荷電部10aにオゾンの発生が無い場合(図中、×にて示す)、脱臭フィルタ6の除去能力は徐々に弱くなってきたのに対し、荷電部10aにおいてオゾンが発生した場合(図中、黒丸にて示す)、初期の除去能力が大きいだけでなく、高い除去能力は長く続けられる。
5回測定したところ、オゾン発生無しの場合は初期の能力に対し、約半分まで落ちていた。これに対し、オゾン発生の場合、約10%しか落ちていなかった。
【0037】
プラスの荷電ではオゾン発生の問題は容易に解決することができるから、安全面から見ると適切な荷電方法である。また、脱臭フィルタ6は酸化マンガン系触媒を添着することで、過剰のオゾンの空気清浄装置10外への漏れを抑制することができる。
【0038】
(経年劣化判断プログラム)
図18および図19は、図1に示された空気清浄装置に組み込まれた経年劣化判断プログラムを説明する制御システムフローチャートであって、図18は電流値に基づいて判断するもの、図19は電圧値に基づいて判断するものである。
【0039】
(電流値に基づく判断プログラム)
図18において、経年劣化判断プログラムPcは、経年劣化の条件を判断するために、累計稼働時間及び放電電流の変化を取り上げている。空気清浄装置10(以下「装置10」と略称する場合がある)の使用期間は10年とし、その累計稼働時間は6000hと想定して判断を行う。
すなわち、運転開始すると、まず、装置10の累計稼働時間は6000hに達したかどうかで判断する。6000h以下なら使用期間以内で、荷電部10aの放電電極1の電流値が初期の半分になるかどうかを確認する。初期電流が半分以上なら正常運転で、以下なら放電電極1の点検ランプが点灯し、メンテナンスを呼びかける。
一方、最初の判断で6000h以上になると、経年劣化が既に進んで、その上、当時の電流値は初期電流の半分以下となると、装置10は停止する。電流値は初期電流の半分以上であると、経年劣化を表示しユーザーに知らせ、早急に措置を取るように促す。
【0040】
(電圧値に基づく判断プログラム)
図19において、経年劣化判断プログラムPvは、経年劣化の条件を判断するために、累計稼働時間及び印加電圧の変化を取り上げている。本発明の空気清浄装置の使用期間は10年とし、その累計稼働時間は6000hと想定して判断を行う。
すなわち、運転開始すると、まず、装置10の累計稼働時間は6000hに達したかどうかで判断する。6000h以下なら使用期間以内で、荷電部10aの放電電極1の電圧値が初期電圧の1.5倍になるかどうかを確認する。初期電圧値の1.5倍以下なら正常運転で、以上なら放電電極1の点検ランプが点灯し、メンテナンスを呼びかける。
一方、最初の判断で6000h以上になると、経年劣化が既に進んで、その上、当時の電圧値は初期電圧の1.5倍以上となると、装置10は停止する。電圧値は初期電圧の1.5倍以下であると、経年劣化を表示しユーザーに知らせ、早急に措置を取るように促す。
【0041】
以上の説明より、本発明の実施形態1に係る空気清浄装置は、放電電極が対向電極に対して平行または垂直に配置される2態様と、経年劣化を電流値または電圧値に基づいて判断する2態様と、があるから、両者を組み合わせた合計4態様があることになる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上より、本発明の空気清浄装置は、従来の電気集塵式空気清浄装置より高い集塵効率および脱臭性能が得られると共に、装置を小型にすることができ、集塵、脱臭、除菌の三位一体の事業用あるいは家庭用の空気清浄装置として、広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態1に係る空気清浄装置の構成を模式的に表した構成図。
【図2】図1に示す空気清浄装置の断面図。
【図3】図1に示す空気清浄装置の放電電極の構成を模式的に表した構成図。
【図4】図3に示す放電電極の断面図。
【図5】図1に示す空気清浄装置の放電電極の垂直配置を模式的に表した構成図。
【図6】図5に示す垂直放電電極の断面図。
【図7】図1に示す空気清浄装置の放電電極の平行配置時の放電状態を模式的に表した断面図。
【図8】図1に示す空気清浄装置の放電電極の垂直配置時の放電状態を模式的に表した断面図。
【図9】比較するためのワイヤ電極を表した斜視図及びワイヤ電極の放電状態を模式的に表した断面図。
【図10】比較するための突起電極を表した斜視図及び突起電極の放電状態を模式的に表した断面図。
【図11】図1に示された荷電部の実施例の詳細寸法を示す模式図。
【図12】図1に示された荷電部におけるプラス荷電時の電気特性図。
【図13】図1に示された荷電部におけるマイナス荷電時の電気特性図。
【図14】図1に示された空気清浄装置の集塵率を説明する集塵特性図。
【図15】図1に示す空気清浄装置におけるオゾン生成量特性図。
【図16】図1に示された空気清浄装置における脱臭フィルタの再生メカニズムを説明するフロー図および模式図。
【図17】図11に示すメカニズムによる脱臭フィルタの再生特性図。
【図18】図1に示された空気清浄装置に組み込まれた経年劣化判断プログラムを説明する制御システムフローチャート。
【図19】図1に示された空気清浄装置に組み込まれた経年劣化判断プログラムを説明する制御システムフローチャート。
【符号の説明】
【0044】
1:放電電極(平行状態)、1c:放電電極(垂直状態)、1w:ワイヤ電極、1x:突起電極、2:対向電極、3:接地電極、4:高圧電極、5:集塵フィルタ、6:脱臭フィルタ、8:荷電部用電源、9:集塵部用電源、10:空気清浄装置、10a:荷電部、10b:集塵部、10c:荷電部(垂直状態)、10w:荷電部(ワイヤ電極)、10x:荷電部(突起電極)、A:対向電極幅、B:対向電極厚さ、C:放電電極幅、D:放電電極厚み、E:放電電極と対向電極の距離、Pc:経年劣化判断プログラム(電流値判断)、Pv:経年劣化判断プログラム(電圧値判断)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極に対峙する対向電極との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電する荷電部と、該荷電部において帯電された塵埃を集塵する集塵部とを備え、
前記放電電極は、板状で、前記対向電極の間に間隔を設けて配置され、該間隔の距離に応じて電圧が印加されることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項2】
前記放電電極は、タングステン、銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、鉄などの金属または該金属を主成分とする合金、もしくは該金属または該合金に、銀、金、白金などの貴金属を表面にメッキしたものによって形成され、
前記対向電極は、前記金属または前記合金、あるいはカーボン、金属フィラーを練り込んだ導電性樹脂によって形成されてなることを特徴とする請求項1記載の空気清浄装置。
【請求項3】
前記放電電極および対向電極は、その断面形状が長辺と短辺とを備えた矩形状とし、前記放電電極の短辺と前記対向電極の短辺を平行または垂直に設置し、
前記放電電極と前記対向電極との距離を、前記放電電極と対向電極の短辺同士を平行に設置した時は10〜12mmに、前記放電電極と対向電極の短辺同士を垂直に設置した時は9〜12mmにしたことを特徴とする請求項1または2記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記荷電部に印加する電圧は、プラス6〜9.5kV、またはマイナス4〜9kVであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記対向電極の長辺を15〜20mm、短辺を0.1〜0.5mmとし、
前記放電電極の短辺を0.05〜0.1mm、長辺を0.6〜1.0mmとしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の空気清浄装置。
【請求項6】
放電電極に対峙する対向電極との間でコロナ放電を生じさせて空気中でオゾンの活性種を生成し、前記放電電極と前記対向電極によって空気が通過自在に構成される荷電部を備え、その下流側に、空気が自在に通過できる接地電極と、前記接地電極の下流側に配置され、帯電された粒子を捕集する誘電率の高い集塵フィルタと、前記集塵フィルタの下流側に配置される脱臭剤を担持し、脱臭機能をもつ脱臭フィルタと、前記脱臭フィルタの下流側に配置され、前記空気が自在に通過できる高圧電極とから構成される集塵部とを配置し、
前記放電電極と前記対向電極との間に電圧を印加する荷電部用電源と、前記接地電極と前記高圧電極との間に電圧を印加する集塵部用電源とを別個に設け、
前記放電電極は、板状で、前記対向電極の間に間隔を設けて配置され、前記間隔の距離に応じて電圧が印加され、
前記集塵部に付着した臭気ガス成分を分解することで前記空気中の臭気ガス成分を浄化し、
前記対向電極と前記接地電極とが絶縁または短絡してなることを特徴とする空気清浄装置。
【請求項7】
前記集塵フィルタは、脱臭剤が担持されていない、無機繊維、有機繊維または多孔質体の何れかによって形成され、
前記脱臭フィルタは、触媒、吸着剤または化学添着剤のうち1種類以上の脱臭剤が担持されている、無機繊維、有機繊維または多孔質体の何れかによって形成され、
前記集塵フィルタが、前記接地電極よりも空気流れの下流側に配置され、
前記脱臭フィルタが、前記高圧電極よりも空気流れの上流側に配置されてなることを特徴とする請求項6記載の空気清浄装置。
【請求項8】
放電電極と該放電電極に対峙する対向電極との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電する荷電部と、該荷電部において帯電された塵埃を集塵する集塵部とを備え、
前記放電電極と前記対向電極間に一定の電圧を供給する定電圧電源が接続され、
前記放電電極と対向電極間に発生するコロナ放電の放電累計時間が6000時間を越え、かつ、放電電流の値が初期の放電電流の値の半分以下となった場合、電極の劣化を報知する報知手段を備えたことを特徴とする空気清浄装置。
【請求項9】
放電電極と該放電電極に対峙する対向電極との間でコロナ放電を生じさせて空気中の塵埃を帯電する荷電部と、該荷電部で帯電された塵埃を集塵する集塵部とを備え、
前記放電電極と前記対向電極間に一定の電流を供給する定電流電源が接続され、
前記放電電極と対向電極間に発生するコロナ放電の放電累計時間が6000時間を越え、かつ、印加電圧の値が初期の印加電圧の値の1.5倍以上となった場合、電極の劣化を報知する報知手段を備えたことを特徴とする空気清浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−22998(P2010−22998A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190703(P2008−190703)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】