説明

空気調和機

【課題】運転負荷の変化に応じたリアクトルの選択を適切に行うことで、ノイズ低減が行なえ、かつ消費電力も低減できる空気調和機を提案する。
【解決手段】使用者により指定された運転モードおよび設定温度と、検出した室内温度や外気温度から運転負荷を予測し、これに応じた室外機1の動作状態を予測することで、運転負荷の変動に先回りして使用するリアクトルを選択することができる。これにより、力率改善を行いつつ、より適切にノイズ低減と消費電力の低減を行うことができる。また、第1リアクトル16と第2リアクトル18とを直列接続する/しないを切り換えることによってインダクタンス値を変化させるので、2つのリアクトルは同じインダクタンス値のものとしてもよい。これにより、リアクトルの購入単価を下げることができるので、上述した効果をより安価に実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関わり、より詳細には、室外機の電源装置において適切にノイズ低減と消費電力低減が行なえる空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の室外機に備えられている電源装置には、力率改善やノイズの低減を行なうために、リアクトル等のインダクタ素子が設けられている。例えば、特許文献1には、空気調和機等に備えられる電源装置に、インダクタンス値の異なる2種類のリアクトルとスイッチング素子とからなる昇圧チョッパ回路を設け、運転負荷の大きさに応じていずれか一方のリアクトルを選択して使用できるようにすることで、力率を改善しつつ昇圧チョッパ回路での高周波スイッチング等による回路損失を低減できることが提案されている。
【0003】
上記のような空気調和機では、室内温度や外気温度の変動等に起因して運転負荷の大きさが変動するため、これに応じて圧縮機に加える電圧も変動し電源装置を流れる電流も変化する。運転負荷の大きさが所定値以上、つまり、電源装置を流れる電流が所定値以上となった場合はインダクタンス値の大きいリアクトルを使用するように、運転負荷の大きさが所定値より小さく、つまり、電源装置を流れる電流が所定値より小さくなった場合はインダクタンス値の小さいリアクトルを使用するように、電源装置のリアクトル接続を切り換える。これにより、上述した力率の改善と回路損失の低減が行えるようになっている。
【0004】
このようなリアクトルの切り換えは、定期的に運転負荷を把握しこれに基づいて行われる。これは、リアルタイムで運転負荷を把握してその度にリアクトルの接続を切り換える制御を行うと、電源装置の動作が不安定となり、ひいては空気調和機の動作が不安定となることを防止するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−135254号公報(第6〜9頁、第1〜3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記説明した空気調和機では、定期的に運転負荷を把握しているため、次の運転負荷の検出タイミングまでの間に運転負荷が変動してもこれを認識することができない。このような場合、例えば、運転負荷が小さく電源装置に低い電流が流れている状態(以下、低電流動作と記載する)から運転負荷が大きくなって高い電流を流す状態(以下、高電流動作と記載する)に変化しても、インダクタンス値の小さいリアクトルを使用する状態のままであるため、電源回路で発生するノイズを十分に低減することができないという問題があった。また、高電流動作から低電流動作に変化しても、インダクタンス値の大きいリアクトルを使用する状態のままであるため、リアクトルでの消費電力が大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明は以上述べた問題点を解決し、運転負荷の変動に応じたリアクトルの選択を適切に行うことで、過不足なくノイズ低減が行なえ、かつ消費電力も低減できる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の空気調和機では、室外機に備えられた電源装置の整流回路に第1リアクトルと第2リアクトルとが直列に接続されて設けられているとともに、第1リアクトルと電源装置との間を接続あるいは開放できる切換手段を備えている。さらには、冷房/暖房運転といった運転モードと室内温度と外気温度とに対応させて空気調和機の運転負荷に応じた室外機の動作状態を設定温度毎に定めた動作状態予測テーブルを予め記憶している。
【0009】
空気調和機は、運転モードと設定温度と検出した室内温度および外気温度を元に、設定温度毎に定めた動作状態予測テーブルを参照することによって、室外機の動作状態を予測する。そして、予測した動作状態に応じて切換手段を制御し第2リアクトルのみ使用する状態とする、あるいは、第1リアクトルと第2リアクトルとが直列接続となるようにして両方のリアクトルを使用する状態とする。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した空気調和機では、使用者により指定された運転モードおよび設定温度と、検出した室内温度や外気温度から運転負荷を予測し、これに応じた室外機の動作状態を予測することで、運転負荷の変動に先回りして使用するリアクトルを選択することができる。これにより、力率改善を行いつつ、より適切にノイズ低減と消費電力の低減を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例である空気調和機の要部ブロック図である。
【図2】本発明の実施例における動作状態予測テーブルである。
【図3】本発明の実施例における、室外機制御手段での処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施例としては、室外機と室内機とを有する空気調和機を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【実施例】
【0013】
図1に示すように、本発明の空気調和機は、室外機1と室内機3とで構成されている。室外機1は、整流回路11と、インバータ12と、圧縮機13と、切換手段14と、サージ吸収手段15と、第1リアクトル16と、平滑コンデンサ17と、第2リアクトル18と、通電ライン19と、外気温度センサ6と、室外機制御手段20とを備えている。尚、室外機1には、上記以外に熱交換器、アキュムレータ、四方弁や膨張弁等の弁類、排気ファン、冷媒配管、各種センサ等、室外機1の動作に必要な各種装置や部品が備えられているが、本発明に直接関係がないため詳細な説明は省略する。また、上述した構成のうち、圧縮機13と外気温度センサ6と室外機制御手段20とを除いたもので、室外機1の電源装置が構成される。
【0014】
整流回路11は、交流電源2から供給される交流電力を整流して直流電力として出力する回路であり、ブリッジダイオード等で構成されている。整流回路11の出力側には、平滑コンデンサ17が並列に接続されている。整流回路11で整流された直流電力は、平滑コンデンサ17で平滑化される。
【0015】
整流回路11の入力側の一方には、切換手段14、サージ吸収手段15、第1リアクトル16および通電ライン19を介して第1ライン4が、入力側の他方には、第2リアクトル18を介して第2ライン5が、それぞれ接続されている。尚、第1ライン4および第2ライン5は、後述する室内機3において交流電源2と接続されている。
【0016】
図1に示すように、サージ吸収手段15、第1リアクトル16および通電ライン19は、各々の一端が整流回路11の入力側に、他端が切換手段14に、それぞれ接続されている。また、第2リアクトル18は一端が整流回路11の入力側に、他端は第2ライン5に、それぞれ接続されている。
【0017】
サージ吸収手段15は、例えば抵抗素子で構成されており、室外機1に電源が投入された際の突入電流を抑制するとともに、切換手段14で第1リアクトル16の接続を切り換える際に発生したサージ電流を吸収する。
【0018】
第1リアクトル16および第2リアクトル18は、例えばEI型のコアに励磁コイルを所定回数巻回してなるものであり、そのインダクタンス値は、室外機1で要求される力率改善やノイズ低減の量に応じて決定される。尚、第1リアクトル16および第2リアクトル18のインダンクタンス値は同じ値でもよく、また、異なる値であってもよい。
【0019】
切換手段14は、一端が第1ライン4に、他端が上述したようにサージ吸収手段15、第1リアクトル16および通電ライン19のそれぞれの一端に接続されている。切換手段14は、複数のリレーで構成され、サージ吸収手段15、第1リアクトル16、通電ライン19のそれぞれの他端と、第1ライン4との接続/開放を、個別に行えるものであり、例えば、図1に示すように、サージ吸収手段15と通電ライン19とを同時に第1ライン4に接続し第1リアクトル16は開放とする、というように、3つの素子の接続/開放を組み合せて選択できるものである。
【0020】
インバータ12は、整流回路11の出力側に接続されており、入力された直流電力を交流電力に変換して圧縮機13(能力可変型圧縮機)の図示しないモータ(ブラシレスDCモータ等)を駆動する。インバータ12は、複数のパワートランジスタ等のスイッチング素子とスイッチング素子を保護するための複数のフライバックダイオードとを備えて構成される。外気温度センサ6は、例えばサーミスタで構成されており、室外機1の図示しない筐体に備えられた吸込口付近に設置されている。
【0021】
室外機制御手段20は、室外機1の図示しない制御基板に設けられている。図1に示すように、室外機制御手段20は、マイコン21と、記憶部22と、通信部23と、センサ入力部24とを備えている。マイコン21は、室外機1の各センサからの検出信号をセンサ入力部24を介して入力するとともに、室内機3から送信される制御信号を通信部23を介して入力し、これらに基づいて圧縮機13や切換手段14の制御を行う。
【0022】
記憶部22は、ROMやRAMで構成されており、室外機1の制御プログラムや各センサからの検出信号に対応した検出値、現在の室外機1の設定情報等を記憶する。通信部23は、室内機3との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部24は、各センサでの検出信号を入力する。
【0023】
室内機3は、室内機制御手段30と、室内温度センサ40と、スイッチ50とを備えて構成される。尚、室内機3には、上記以外に熱交換器、送風ファン、膨張弁等の各種弁類、冷媒配管、各種センサ等、室内機3の動作に必要な各種装置や部品が備えられているが、本発明に直接関係がないため詳細な説明は省略する。
【0024】
室内機制御手段30は、室内機3の図示しない制御基板に設けられている。図1に示すように、室内機制御手段30は、マイコン31と、記憶部32と、通信部33と、センサ入力部34と、リモコン受信部35とを備えている。マイコン35は、室内機3の各センサからの検出信号をセンサ入力部34を介して入力するとともに、図示しないリモコンから送信される空調運転に関する各種設定信号をリモコン受信部35を介して入力し、また、室外機1から送信される制御信号を通信部33を介して入力し、これらに基づいた室内機3の運転制御を行う。
【0025】
記憶部32は、ROMやRAMで構成されており、室内機3の制御プログラムや各センサからの検出信号に対応した検出値、現在の室内機3の設定情報等を記憶する。通信部33は室外機1との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部34は各センサでの検出信号を入力する。リモコン受信部35は上述したようにリモコンからの各種設定信号を受信する。
【0026】
室内温度センサ40は、例えばサーミスタで構成されており、室内機3の図示しない筐体に備えられた吸込口付近に設置されている。スイッチ50は、例えばリレーで構成されており、交流電源2から第1ライン4および第2ライン5を介して、室外機1へ交流電圧を供給あるいは遮断するよう切り換える。尚、スイッチ50は室内機制御手段30によってその動作が制御される。
【0027】
次に、図1および図2を用いて、本実施例による空気調和機において、空気調和機の運転負荷に対応した室外機1の動作状態を予測し、これに基づいて使用するリアクトルを選択する動作およびその効果について説明する。
【0028】
図2には、空気調和機の運転モードと、室内温度センサ40で検出した室内温度xと、外気温度センサ6で検出した外気温度yとに対応させて、室外機1の動作状態を予測するための動作状態予測テーブル60の一例を示している。動作状態予測テーブル60は、空調運転を行う際の目標温度となる設定温度毎に設定されており、室外機1の室外機制御手段20に備えられた記憶部22に予め試験等により求めて記憶されている。尚、本実施例における設定温度の範囲は、冷房運転時あるいは暖房運転時ともに16℃から30℃の間であるとして説明する。
【0029】
以下、図2に示す動作状態予測テーブル60について、運転モード毎に具体的に説明する。尚、以下の説明では、冷房運転時の設定温度が27℃である場合と、暖房運転時の設定温度が20℃である場合の動作状態予測テーブル60を例に挙げて説明する。動作状態予測テーブル60は、室内温度は0℃から40℃の範囲において、また、外気温度は−20℃から40℃の範囲において、予測する室外機1の動作状態を規定している。
【0030】
まず、運転モードが冷房、つまり、使用者のリモコン操作等による指示によって空気調和機が冷房運転を行っている場合について説明する。室内温度xが18℃未満である場合は、外気温度yに関わらず室外機1の動作状態は「停止」となっている。ここで、「停止」とは、室外機1の圧縮機13が運転を停止している状態、つまり、空気調和機の冷凍サイクルが停止している状態を指す。
【0031】
室内温度xが18℃以上27℃未満である場合は、外気温度yに関わらず室外機1の状態は「低電流動作」となっている。また、室内温度xが27℃以上40℃以下かつ外気温度yが−20℃以上35℃未満である場合も、室外機1の状態は「低電流動作」となっている。ここで、「低電流動作」とは、室外機1の電源装置に流れる電流値が低い状態、つまり、冷房運転時の運転負荷が低い状態を指す。
【0032】
上記以外の場合、つまり、室内温度xが27℃以上40℃以下かつ外気温度yが35℃以上40℃以下である場合については、図2に示すように数式によって室外機1の動作状態が異なっている。すなわち、y<(−5/13)x+655/13、を満たす室内温度xおよび外気温度yである場合は「低電流動作」、y≧(−5/13)x+655/13、を満たす室内温度xおよび外気温度yである場合は「高電流動作」となっている。ここで、「高電流動作」とは、室外機1の電源装置に流れる電流値が高い状態、つまり、冷房運転時の運転負荷が高い状態を指す。
【0033】
尚、上記数式は、冷房運転時に高電流動作が必要となる室内温度xや外気温度yを予め試験等で求めておき、これを用いて求める。例えば、設定温度が27℃である場合の冷房運転時の数式は、室外機1が、室内温度xが27℃で外気温度yが40℃である場合と、室内温度xが40℃で外気温度yが35℃である場合に高電流動作となることを予め試験等で求め、これらの数値が示す2点を結ぶ直線を表す数式:y=(−5/13)x+655/13 を求める。これを上述したように不等式にして「低電流動作」と「高電流動作」とを振り分けている。
【0034】
次に、運転モードが暖房、つまり、使用者のリモコン操作等による指示によって空気調和機が暖房運転を行っている場合について説明する。室内温度xが30℃以上である場合は、外気温度yに関わらず室外機1の動作状態は「停止」となっている。室内温度xが20℃以上30℃未満である場合は、外気温度yに関わらず、室外機1の状態は「低電流動作」となっている。また、室内温度xが0℃以上20℃未満かつ外気温度yが7℃以上40℃以下である場合は、室外機1の状態は「低電流動作」となっている。
【0035】
上記以外の場合、つまり、室内温度xが0℃以上20℃未満かつ外気温度yが−20℃以上7℃未満である場合については、図2に示すように数式によって室外機1の動作状態が異なっている。すなわち、y>(−27/20)x+7、を満たす室内温度xおよび外気温度yである場合は「低電流動作」、y≦(−27/20)x+7、を満たす室内温度xおよび外気温度yである場合は「高電流動作」となっている。
【0036】
尚、上記数式は、暖房運転時に高電流動作が必要となる室内温度xや外気温度yを予め試験等で求めておき、これを用いて求める。例えば、設定温度が20℃である場合の暖房運転時の数式は、室外機1が、室内温度xが20℃で外気温度yが−20℃である場合と、室内温度xが0℃で外気温度yが7℃である場合に高電流動作となることが予め試験等で求められており、これらの数値が示す2点を結ぶ直線を表す数式:y=(−27/20)x+7を求める。これを上述したように不等式にして「低電流動作」と「高電流動作」とを振り分けている。
【0037】
以上説明した動作状態予測テーブル60を使用して、室外機1の動作状態を予測しこれに基づいてリアクトルを選択する手順を説明する。使用者のリモコン操作等によって空気調和機が運転を開始すると、室内機制御手段30のマイコン31は、スイッチ50を閉じて室外機1に給電を開始する。
【0038】
マイコン31は、使用者がリモコンを操作して設定した運転モードや設定温度等の制御情報をリモコン受信部35を介して入力し、記憶部32に記憶する。また、マイコン31は、室内温度センサ40で室内温度を定期的に検出し、これをセンサ入力部34を介して入力して記憶部32に記憶する。
【0039】
マイコン31は、記憶部32から運転モードと設定温度と室内温度を読み込み、これらに対応する信号を生成し通信部33を介して室外機1へ送信する。室外機制御手段20のマイコン21は、この信号を通信部23を介して入力し、信号に含まれる運転モードと設定温度と室内温度とを記憶部22に記憶する。また、マイコン21は、外気温度センサ6で外気温度を定期的に検出し、これをセンサ入力部24を介して入力して記憶部22に記憶する。
【0040】
マイコン21は、記憶部22に記憶している運転モードと設定温度と室内温度と外気温度とを読み出し、同じく記憶部22に記憶している設定温度に対応する動作状態予測テーブル60を参照して、室外機1の動作状態を予測する。例えば、運転モードが冷房で設定温度が27℃であり室内温度が26℃である場合、マイコン21は設定温度:27℃に対応した動作状態予測テーブル60を参照して室外機1の動作状態が「低電流動作」であると予測する。また、室内温度が36℃で外気温度が38℃である場合は、マイコン21は、設定温度:27℃に対応した動作状態予測テーブル60を参照し、数式y=(−5/13)x+655/13、のxに室内温度:36℃を代入して外気温度yを算出する。この場合、外気温度y≒36.5℃となり、実際の外気温度:38℃の方が高いので、マイコン21は室外機1の動作状態が「高電流動作」であると予測する。
【0041】
また、例えば、運転モードが暖房で設定温度が20℃であり室内温度が21℃である場合、マイコン21は設定温度:20℃に対応した動作状態予測テーブル60を参照して室外機1の動作状態が「低電流動作」であると予測する。また、室内温度が15℃で外気温度が5℃である場合は、マイコン21は、設定温度:20℃に対応した動作状態予測テーブル60を参照し、数式y=(−27/20)x+7、のxに室内温度:15℃を代入して外気温度yを算出する。この場合、外気温度y≒13.3℃となり、実際の外気温度:5℃の方が低いので、マイコン21は室外機1の動作状態が「高電流動作」であると予測する。尚、運転モードが冷房で室内温度が18℃未満である場合や、運転モードが暖房で室内温度が30℃以上である場合は、マイコン21は圧縮機13への給電を停止して室外機1の動作を停止する。
【0042】
以上のような方法で予測した室外機1の動作状態に基づいて、マイコン21は切換手段14を制御して第1リアクトル16および第2リアクトル18の使用を決定する。尚、室外機1の運転開始時はサージ吸収手段15のみ接続された状態となっている。これは、前回の室外機1の運転停止時に、マイコン21が切換手段14を制御してサージ吸収手段15のみ接続された状態としているためであり、これにより、室外機1へ電源を投入した際の突入電流を抑制している。
【0043】
マイコン21は、予測した室外機1の動作状態が「低電流動作」である場合は、切換手段14を制御して、サージ吸収手段15は接続のままとするとともに、室外機1の運転開始から一定時間経過後に通電ライン19を接続とする。これにより、電源装置には第2リアクトル18のみが接続された状態となる。従って、第1リアクトル16には電流が流れずに第2リアクトル18のみに電流が流れるので、消費電力を低減しつつ第2リアクトル18で電源装置の力率改善およびノイズ低減を適切に行える。
【0044】
また、マイコン21は、予測した室外機1の動作状態が「高電流動作」である場合は、切換手段14を制御して、サージ吸収手段15は接続の状態で第1リアクトル16を接続し、室外機1の運転開始から一定時間経過後にサージ吸収手段15を開放とする。これにより、電源装置には第1リアクトル16と第2リアクトル18とが直列接続された状態となり、第2リアクトル18のみ使用していた場合に比べてインダクタンス値が増加する。従って、適切に電源装置の力率改善およびノイズ低減を行える。尚、予測した室外機1の動作状態が「停止」である場合は、マイコン21は、切換手段14を制御してサージ吸収手段15のみ接続された状態とする。
【0045】
以上説明したように、本実施例における空気調和機は、検出した室内温度や外気温度から設定温度に応じた運転負荷の大きさを予測しこれに対応した室外機1の動作状態を予測して使用するリアクトルを選択する。室外機1の動作状態を予測しこれに先立って使用するリアクトルを選択するので、実際の室外機1の動作状態の変化に対応する最適な使用するリアクトルの選択が行える。従って、運転負荷に応じた適切な力率改善やノイズ低減が行なえるとともに、消費電力の低減を行うことができる。
【0046】
また、第1リアクトルと第2リアクトルとを直列接続する/しないを切り換えることによってインダクタンス値を変化させるので、2つのリアクトルは同じインダクタンス値のものとしてもよい。これにより、リアクトルの購入単価を下げることができるので、上述した効果をより安価に実現できる。
【0047】
尚、以上説明した実施例では、動作状態予測テーブル60は予め試験等で求めて記憶部22に記憶している場合について説明したが、空気調和機の設置時に、空気調和機が設置される場所の環境に合わせて動作状態予測テーブル60を作成してもよい。また、初期状態(空気調和機の工場出荷時等)で設定されている動作状態予測テーブル60を、空気調和機の設置場所に合わせて補正できるようにしてもよい。
【0048】
次に、図3に示すフローチャートを用いて、本発明における空気調和機での処理の流れについて説明する。図3に示すフローチャートは、室外機1のマイコン21での処理の流れを説明するものであり、STはステップを表しこれに続く数字はステップの番号を表している。尚、図3では本発明に関わる処理を中心に説明しており、四方弁の切り替えや使用者の指示した設定温度に対応した圧縮機13の回転数や各膨張弁の開度調整等といった、その他の処理の説明は省略している。また、室内機3から室外機1へは、運転モードや室内温度センサ40で検出した室内温度に対応したデータが定期的に送信されている。
【0049】
使用者からの運転開始指示等によって空気調和機が運転を開始し、室外機1に電源が投入される。電源が投入されて起動したマイコン21は、室内機3からデータを受信したか否かを判断する(ST1)。データを受信していれば(ST1−Yes)、マイコン21は、受信したデータが運転モードと室内温度と設定温度とに対応したデータであるか否かを判断する(ST2)。
【0050】
受信したデータが運転モードと室内温度と設定温度とに対応したデータであれば(ST2−Yes)、マイコン21は、データに含まれる運転モードと室内温度と設定温度とを記憶部22に記憶し(ST13)、ST1に処理を戻す。受信したデータが運転モードと室内温度と設定温度とに対応したデータでなければ(ST2−No)、マイコン21は、受信したデータが室外機3の運転停止指示に対応したデータであるか否かを判断する(ST3)。
【0051】
受信したデータが室外機3の運転停止指示に対応したデータであれば(ST3−Yes)、マイコン21は、圧縮機13の回転を停止してから切換手段14を制御してサージ吸収装置15のみ接続した状態とした後、圧縮機13への給電を遮断して室外機1の運転を停止する(ST14)。
【0052】
受信したデータが室外機3の運転停止指示に対応したデータでなければ(ST3−No)、受信したデータは運転開始指示であるため、マイコン21は、外気温度センサ6で検出した外気温度をセンサ入力部24を介して入力し、記憶部22に記憶する(ST4)。次にマイコン21は、記憶部22に記憶した運転モードと室内温度と設定温度と外気温度とを読み出し、設定温度に対応した動作状態予測テーブル60を参照して室外機1の動作状態を予測する(ST5)。
【0053】
次にマイコン21は、予測した動作状態に基づいて、切換手段14を制御する(ST6)。マイコン21は、切換手段14を制御することで、室外機1の動作状態に応じて第2リアクトル18のみ使用するか、あるいは、第1リアクトル16と第2リアクトル18とを直列接続して使用するかを選択する。
そして、マイコン21は、室内機3から受信した設定温度等の制御情報に基づいて空調運転を開始し(ST7)、処理をST1に戻す。
【0054】
尚、ST1において、室内機3からデータを受信していなければ(ST1−No)、マイコン21は、現在室外機1が運転中であるか否かを判断する(ST8)。運転中でなければ(ST8−No)、マイコン21はST1に処理を戻す。運転中であれば(ST8−Yes)、マイコン21は、記憶部22に記憶している直近の運転モードと室内温度と設定温度と外気温度とを読み出し、現在の設定温度に対応した動作状態予測テーブル60を参照して室外機1の動作状態を予測する(ST9)。
【0055】
次に、マイコン21は、現在の室外機1の動作状態と新たに予測した動作状態とを比較し、動作状態の切換が必要か否かを判断する(ST10)。切換が必要な場合は(ST10−Yes)、マイコン21は圧縮機13の回転を停止させた後、圧縮機13への給電を遮断して圧縮機13を停止し(ST11)、ST6へ処理を進める。切換が不要な場合は(ST10−No)、マイコン21は、室外機1を現在の運転状態で継続して運転し(ST12)、ST1へ処理を戻す。
【0056】
以上説明したように、本発明の空気調和機では、使用者により指定された運転モードおよび設定温度と、検出した室内温度や外気温度から運転負荷を予測し、これに応じた室外機の動作状態を予測することで、運転負荷の変動に先回りして使用するリアクトルを選択することができる。これにより、力率改善を行いつつ、より適切にノイズ低減と消費電力の低減を行うことができる。
【0057】
1 室外機
2 交流電源
3 室内機
4 第1ライン
5 第2ライン
6 外気温度センサ
8 端子
9 ハウジング
11 整流回路
12 インバータ
13 圧縮機
14 切換手段
15 サージ吸収手段
16 第1リアクトル
17 平滑コンデンサ
18 第2リアクトル
19 通電ライン
20 室外機制御手段
21 マイコン
22 記憶部
23 通信部
24 センサ入力部
30 室内機制御手段
31 マイコン
32 記憶部
33 通信部
34 センサ入力部
35 リモコン受信部
40 室内温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流電力を直流電力に整流する整流回路と同整流回路の入力側に直列に接続された第1リアクトルおよび第2リアクトルと前記整流回路が整流した前記直流電力を平滑化する平滑コンデンサと平滑化された前記直流電力を交流電力に変換するインバータと圧縮機とを有する駆動装置と、外気温度を検出する外気温度センサと、室外機制御手段とを備えた室外機と、
室内温度を検出する室内温度センサを備えた室内機と、を備えた空気調和機であって、
前記室外機は、前記第1リアクトルと前記第2リアクトルとを直列接続するか、あるいは、いずれか一方のみ接続をするかを切り換える切換手段を備え、
前記室外機制御手段は、運転モードと前記室内温度と前記外気温度とに対応させて、前記室外機の予測される動作状態を空調運転の目標温度となる設定温度毎に定めた少なくとも1つの動作状態予測テーブルを予め記憶した記憶部を備え、前記設定温度と前記運転モードとに応じた前記動作状態予測テーブルを参照し、前記外気温度センサで検出した前記外気温度と前記室内温度センサで検出した前記室内温度とに基づいて、予測される前記動作状態を前記動作状態予測テーブルから抽出し、抽出した前記動作状態に対応して前記切換手段を制御することを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記第1リアクトルと前記第2リアクトルのインダクタンス値が同じであることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−120291(P2012−120291A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266597(P2010−266597)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】