説明

空調・給排湯システム

【課題】室内機、室外機及び給排湯設備を全体として統合した制御を行うシステムを提供すること。これにより、浴槽からの排水の熱を利用し、熱を効率的に利用し、電力を節約すること。
【解決手段】パイプ内を循環する冷媒を利用し、冷媒との間で熱交換を行う熱交換器を、室内空気、室外空気及び水のそれぞれについて設ける。冷媒の循環路を変更するための四方弁によってそれぞれの熱交換器の熱の移動を制御し、全体として統合した制御を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器を用いて家庭における空調と給排湯とを行うシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭においては、空調のために室内の空気と室外の空気との間の熱交換が行われている。室内の冷房に当たっては室内の空気から室外の空気に熱を送るように熱交換が行われ、暖房に当たっては室外の空気から室内の空気に熱を送るように熱交換が行われる。この熱交換は、空調設備の室内機に設けられた熱交換器により室内の空気と冷媒との間の熱交換を行い、パイプを介して冷媒を空調設備の室外機に送り、室外機に設けられた熱交換器により冷媒と室外の空気との熱交換を行うものである。
【0003】
ところで、家庭内に空調設備以外にも放熱及び吸熱を行う箇所がある。浴室、給湯設備等である。パイプを介して冷媒を送っているのであれば、冷媒を空調設備室内機又は室外機以外の箇所に送ることも可能であり、浴室、給湯設備等において冷媒との間の熱交換を行うこともできる。
特許文献1には、冷媒を給湯設備に送り、室外機と室内機との間の熱交換と、室外機と給湯設備との間の熱交換を選択的に切り替える空調・給湯システムが開示されている。かかるシステムによれば、冷暖房の需要の少ない季節にも、室外機を活用して給湯を行うことができ、また、給湯の熱効率がヒーターを用いる場合よりも高いことが開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1の空調・給湯システムは、以下の点で不十分なものであった。(1)給湯のみを考慮し、排湯を考慮していない。例えば浴槽の水を排出する時には、温水のままで下水に流さずに、その温水から熱を冷媒に移すことで温水から放熱させて、室内の暖房に用いることができる。このような排水中の熱の活用は考慮されていない。(2)熱交換を行う対象の一方が室外空気に固定されている。室内空気と水(給湯)との間での直接の熱交換は考慮されていない。室外空気に放熱又は吸熱させることは、室外空気の温度を変えることとなるが、温度を変えた後の室外空気が再利用されるものではない。室内空気と水との間での直接の熱交換が行われ、室外空気との熱交換を行わないならば、熱が効率的に利用される。また、室外機を運転する電力の節約にもなる。このような、室内空気と水との間での直接の熱交換は考慮されていない。
【0005】
上記の点は、室内機、室外機及び給排湯設備を全体として統合した制御を行うことによって解決する。しかし、このようなシステムは開示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−235252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、室内機、室外機及び給排湯設備を全体として統合した制御を行うシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空調・給排湯システムは、
パイプ内を循環する冷媒と、
前記冷媒と室内空気との間で熱交換を行うための室内空気用熱交換器と、
前記冷媒と室外空気との間で熱交換を行うための室外空気用熱交換器と、
前記冷媒と水との間で熱交換を行うための水用熱交換器と、
前記パイプに付設され、前記冷媒の循環路を変更して、前記室内空気用熱交換器、前記室外空気用熱交換器及び前記水用熱交換器における前記冷媒と室内空気、室外空気及び水との間の熱移動方向を変更する2つ以上の冷媒切替弁と、
前記冷媒切替弁の設定を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、室内空気から冷媒に熱を移動しかつ冷媒から水に熱を移動する第一の状態と、水から冷媒に熱を移動しかつ冷媒から室内空気に熱を移動する第二の状態とを少なくとも実現することができることを特徴とする。
室内空気用熱交換器、室外空気用熱交換器及び水用熱交換器のすべてが冷媒との間で熱交換を行う。制御回路によって、室内空気、室外空気及び水の間の熱交換を制御することで、課題を解決している。制御は、冷媒切替弁の設定を介して冷媒の循環路を変更することによって実現される。熱交換器は冷媒の流れる方向によって熱の移動方向が制御される。
室外空気を用いずに室内空気と水との間の熱交換を行う2つの状態(第一の状態及び第二の状態)を実現して特許文献1に開示されたシステムの不十分な点を解消している。
ここで「冷媒切替弁」はパイプの接続を変更する弁であり、四方弁は冷媒切替弁である。四方弁の他に2つの三方弁、4つの二方弁によっても冷媒切替弁を構成することができる。
【0009】
本発明の空調・給排湯システムは、
前記制御回路によって動作を制御されて前記室外空気用熱交換器から室外に空気を送出する室外送風装置を備え、
前記制御回路は、前記第一の状態及び前記第二の状態において、前記室外送風装置を停止させることができることを特徴とする。
室外送風装置は室外機の一部である。室外空気を用いずに室内空気と水との間の熱交換を行う2つの状態においては、室外に空気を送出する必要がないので、室外送風機を停止させて電力の節約が可能である。
【0010】
本発明の空調・給排湯システムは、
前記室内空気用熱交換器から室内に空気を送出する室外送風装置を備え、
前記第一の状態において室内に冷風を送出し、前記第二の状態において室内に温風を送出することを特徴とする。
室内送風装置は室内機の一部である。第一の状態においては室内を冷房しつつ水を温め、第二の状態においては温水の熱を利用して室内を暖房する。
【0011】
本発明の空調・給排湯システムは、
前記水用熱交換器と浴槽との間で水を送受するポンプを備え、
前記第一の状態において前記水用熱交換器から前記浴槽に温水を送り、前記第二の状態で前記浴槽から前記水用熱交換器に温水を送ることを特徴とする。
室内を冷房しつつ浴槽の水を温め、また、室内の暖房のために浴槽排水前の熱を利用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の空調・給排湯システムは、室内機、室外機及び給排湯設備を全体として統合した制御を行うものであり以下の効果を有する。(1)浴槽からの排水の熱を利用することができる。(2)室外空気との熱交換が最小化され、熱が効率的に利用される。また、室外機を運転する電力を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、空調・給排湯システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、空調・給排湯システムの構成例を示す図である。
【図3】図3は、四方弁の設定と放熱・吸熱関係の関係を示す図である。
【図4】図4は、状態と制御の関係の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0015】
図1及び図2は、空調・給排湯システムの構成例を示す図である。冷凍圧縮機1から、冷媒が、パイプ2に送出されて循環する。図において、パイプ2を太線で示し、冷媒の流れる方向を矢印で示してある。パイプ2に沿って室内空気用熱交換器3、室外空気用熱交換器4及び水用熱交換器5が設けられている。室内空気用熱交換器3は冷媒と空気との熱交換を行い、熱交換後の空気が室内送風装置31によって室内に送出される。室外空気用熱交換器4は冷媒と空気との熱交換を行い、熱交換後の空気が室内送風装置41によって室外に送出される。水用熱交換器5は冷媒と水との熱交換を行い、ポンプ51によって浴槽と水用熱交換器5との間で水が送受される。
【0016】
冷媒の循環経路には、パイプ2に付設して四方弁61及び62が設けられている。四方弁61及び62の設定を切替えることで、冷媒の循環方向が替わり、室内空気用熱交換器3、室外空気用熱交換器4及び水用熱交換器5への冷媒の流入方向が替わり、冷媒と空気及び水との放熱・吸熱関係(熱の移動方向)が替わる。図3は、四方弁の設定と放熱・吸熱の関係を示す図である。なお、図1には室内空気から冷媒に熱を移動しかつ冷媒から水に熱を移動する場合の四方弁の設定と冷媒の循環経路が示されている。また、図2には四方弁の設定を切り替えて水から冷媒に熱を移動しかつ冷媒から室内空気に熱を移動する場合が示されている。図2において、矢印で示される冷媒の循環方向は図1に対して切り替わり、熱交換器における放熱・吸熱の関係が図1とは異なる。このように四方弁の設定を変更して、冷房/暖房及び湯沸し/冷却排水を切り替えることが可能である。
【0017】
制御回路7は、空調機(室内)及び給排湯設備(浴槽)の状態に対応させて、四方弁61並びに62の設定、及び、室内送風装置31、室外送風装置41並びにポンプ51の運転/停止を制御する。図4は、状態と制御の関係の例を示す図である。図に示す制御によって冷房、暖房、給湯及び冷却しての排湯が行われる。
【0018】
図4において、番号1の状態は、室内空気から冷媒に熱を移動しかつ冷媒から水に熱を移動する第一の状態であり、室外機(室外送風装置)を運転せずに電力を節約して熱を効率的に利用している。
番号2の状態も第一の状態である、番号2の状態においては給湯に必要な吸熱よりも冷房に必要な放熱が大きいことを「冷房中(強)」として示している。この状態では、室外機を運転して、室内空気の放熱のうち給湯設備が吸熱しきれない分だけを室外空気に吸熱させる。
番号6及び番号7の第二の状態においても、上記第一の状態と同様に、必要な場合にのみ室外機を運転する。
【0019】
(実施例の拡張)
本発明の実施には、上記実施例以外の形態も考えられる。
実施例では、室内機、室外機及び給排湯設備をそれぞれ1つとしたが、2つ以上であってもよい。例えば、2つ以上の部屋に室内機を設置すること、浴室と台所とに給排湯設備を設置することが可能である。また、室内機及び給排湯設備において必要とされる熱交換を保証するために2台以上の室外機を設置することもできる。
空調機及び給排湯設備の状態は、図3に示したものに限定されない。実施例の構成では実現されない状態についても、その状態を実現するような循環経路を可能とするように冷媒切替弁を設けることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
室内機、室外機及び給排湯設備を全体として統合した制御を行う空調・給排湯システムであり、多くの家庭における利用が期待できる。
【符号の説明】
【0021】
1 冷媒圧縮機
2 パイプ
3 室内空気用熱交換器
31 室内送風装置
4 室外空気用熱交換器
41 室外送風装置
5 水用熱交換器
51 ポンプ
61 四方弁
62 四方弁
7 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ内を循環する冷媒と、
前記冷媒と室内空気との間で熱交換を行うための室内空気用熱交換器と、
前記冷媒と室外空気との間で熱交換を行うための室外空気用熱交換器と、
前記冷媒と水との間で熱交換を行うための水用熱交換器と、
前記パイプに付設され、前記冷媒の循環路を変更して、前記室内空気用熱交換器、前記室外空気用熱交換器及び前記水用熱交換器における前記冷媒と室内空気、室外空気及び水との間の熱移動方向を変更する2つ以上の冷媒切替弁と、
前記冷媒切替弁の設定を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、室内空気から冷媒に熱を移動しかつ冷媒から水に熱を移動する第一の状態と、水から冷媒に熱を移動しかつ冷媒から室内空気に熱を移動する第二の状態とを少なくとも実現することができることを特徴とする、空調・給排湯システム。
【請求項2】
前記制御回路によって動作を制御されて前記室外空気用熱交換器から室外に空気を送出する室外送風装置を備え、
前記制御回路は、前記第一の状態及び前記第二の状態において、前記室外送風装置を停止させることができることを特徴とする、請求項1に記載の空調・給排湯システム。
【請求項3】
前記室内空気用熱交換器から室内に空気を送出する室内送風装置を備え、
前記第一の状態において室内に冷風を送出し、前記第二の状態において室内に温風を送出することを特徴とする、請求項1又は2に記載の空調・給排湯システム。
【請求項4】
前記水用熱交換器と浴槽との間で水を送受するポンプを備え、
前記第一の状態において前記水用熱交換器から前記浴槽に温水を送り、前記第二の状態で前記浴槽から前記水用熱交換器に温水を送ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空調・給排湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−108687(P2013−108687A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254650(P2011−254650)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(509199579)MDI株式会社 (6)
【Fターム(参考)】