説明

空調室内機

【課題】二酸化炭素を冷媒とする冷凍回路を用いた空気調和装置において、室内機側で二酸化炭素冷媒が漏洩した場合、二酸化炭素冷媒は人体に有害であるため、建物内の人員に悪影響を及ぼす危険性がある。
【解決手段】空調室内機Aは、通風路33の吹出し側空間32に配備されたセンサ11と、室外につながる室外流通口と通風路33の吸込み側空間31につながる通風路流通口35とを連通する換気風路20と、換気風路20内に配備され、室外に向けてまたは通風路33の吸込み側空間31に向けて送風する換気扇13と、センサ11により検出された二酸化炭素濃度が室内に居る人に対し直ちに悪影響を及ぼす第1濃度値以上になった場合に、送風機2を停止するとともに換気扇13を運転して吸込み側空間31の空気を換気風路20から室外に吹き出す第1制御手段とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気調和装置の室内機で冷媒が漏洩したときに冷媒を室外へ排出するようにした空調室内機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空気調和装置としては、下記の特許文献1に記載されているように、冷媒回路における冷媒配管の現場での接続箇所を覆うように、安全装置を設けたものが知られている。この安全装置は前記接続箇所から冷媒漏れが発生した場合に、漏洩冷媒を大気に放出させる漏洩冷媒排出手段を備えている。
【0003】
また、下記の特許文献2に記載されているように、可燃性ガスを冷媒とする冷凍回路による車両用の空調システムも知られている。この空調システムによれば、車両の車室内または空気回路内に設けた可燃性ガス検出手段により可燃性ガス濃度を検出し、その検出値が基準値を超えたときに冷媒洩れの警報を発するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−286315号公報
【特許文献2】特開2005−3220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、オゾン層対策として汎用されてきたHFC冷媒(R410A)に代わる冷媒として、二酸化炭素を用いた空気調和装置の開発が進められている。
ところで、従来汎用のR410Aは、室内機での冷媒の漏洩があったときにそのまま建物内へ排出したとしても、人体に対しほとんど無害であるために建物内の人員への影響は軽微である。これに対し、二酸化炭素は人体に対して有害であるため、二酸化炭素冷媒をそのまま建物内へ排出した場合、建物内の人員に悪影響(吐き気、呼吸低下、意識不明)を及ぼすおそれがある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、空気調和装置の室内機で二酸化炭素冷媒が漏洩したときに、室内の人の安全を確保するため、空気調和装置の運転を停止し、空調室内機本体内部で洩れた二酸化炭素冷媒を室外に排出することのできる空調室内機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る空調室内機は、室内の空気を吸い込む空気吸込み口および室内に空気を吹き出す空気吹出し口を有する空調室内機本体と、空調室内機本体内に形成されて空気吸込み口と空気吹出し口とを連通する通風路と、通風路を吸込み側空間と吹出し側空間とに通風自在に仕切る冷媒回路の室内熱交換器と、通風路内に配備された送風機とを備えて成り、冷媒回路の冷媒として二酸化炭素を用いる空調室内機において、通風路の吹出し側空間に配備された第1二酸化炭素濃度検出手段と、空調室内機本体に設けられ、室外につながる室外流通口と通風路の吸込み側空間につながる通風路流通口とを連通する換気風路と、換気風路内に配備され、室外に向けてまたは通風路の吸込み側空間に向けて送風する換気扇と、第1二酸化炭素濃度検出手段により検出された二酸化炭素濃度が室内に居る人に対し直ちに悪影響を及ぼす第1濃度値以上になった場合に、送風機を停止するとともに換気扇を運転して通風路の吸込み側空間の空気を換気風路から室外に吹き出す第1制御手段とを具備して成るものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、通風路の吹出し側空間に配備された第1二酸化炭素濃度検出手段により検出された二酸化炭素濃度が、室内に居る人に対し直ちに悪影響を及ぼす値以上になった場合に、送風機を停止するとともに換気扇を運転して通風路の吸込み側空間の空気を換気風路から室外に吹き出すように構成されているので、室内に設置されている空調室内機で二酸化炭素冷媒が漏洩したとき直ちに、空調室内機内の二酸化炭素冷媒を室外へ排出することができる。従って、空調室内機からの二酸化炭素冷媒が室内に流出して人に悪影響を及ぼすことを防ぐ効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1における空気調和装置の空調室内機の前板を外して見た正面構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における空調室内機の片側の側板を外して見た側面構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1における空調室内機を建物内に設置した配置を示す概略構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1における空調室内機の制御装置およびその周辺機器の概略構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1における空調室内機の通常運転時の風の流れを示す概略構成図である。
【図6】この発明の実施の形態1における空調室内機の動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1における空調室内機の二酸化炭素冷媒漏洩検知時の風の流れを示す概略構成図である。
【図8】この発明の実施の形態1における空調室内機の建物内換気時の風の流れを示す概略構成図である。
【図9】この発明の実施の形態2における空調室内機の動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態3における空調室内機の通常運転時の風の流れを示す概略構成図である。
【図11】この発明の実施の形態3における空調室内機の動作を示すフローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態3における空調室内機の二酸化炭素冷媒漏洩検知時の風の流れを示す概略構成図である。
【図13】この発明の実施の形態3における空調室内機の建物内換気時の風の流れを示す概略構成図である。
【図14】この発明の実施の形態4における空調室内機の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の一実施形態に係る空調室内機の前板を取り外した状態を示す正面構成図、図2は前記空調室内機の図1に向かって左側の側板を取り外した状態を示す側面構成図である。
各図において、この実施形態に係る空調用室内機Aは、左右の側板22,23と、左右の側板22,23上に支持される天板24と、背板25と、前板26と、底板27とから箱状に形成された空調室内機本体28を備えている。空調室内機本体28内は、前板26下部の空気吸込み口29と天板24の空気吹出し口30とを連通する通風路33になっている。この通風路33内には、汎用の冷媒回路R(図4参照)の一構成部品である室内熱交換器1が、前側を高くした傾斜配置で設置されている。この室内熱交換器1により、空調室内機本体28内の通風路33が空気吸込み側空間31と空気吹出し側空間32とに通風自在に仕切られている。
【0011】
天板4の下面には、シロッコファンなどの送風機2と、送風機2を駆動するモータ3が固設されている。モータ3の動力は、ファンプーリ4、モータプーリ5、およびベルト6を介して送風機2に伝達されるようになっている。空調室内機本体28内で室内熱交換器1の下方位置には、室内熱交換器1からのドレン水を収受するドレンパン7が配備されている。空調室内機本体28内でドレンパン7の下方空間は仕切り板17により2つの空間として仕切られている。その一方の空間には、モータ3などを駆動するための制御装置16と、警報を発する警報器15が配備されている。他方の空間は換気風路20となっている。ドレンパン7には、換気風路20と吸込み側空間31とを連通する通風路流通口35が形成されている。ドレンパン7下方には排気管14が背板25を貫通して取付けられている。これにより、室外につながる排気管14の室外流通口43と換気風路20とが連通する。すなわち、通風路33内の室内熱交換器1の下方位置に配備されたドレンパン7により、通風路33と換気風路20とが仕切られている。
【0012】
そして、膨張弁8、ディストリビュータ9、およびヘッダ10の下方位置にあるドレンパン7の通風路流通口35に、換気扇13が設けられている。これは、配管のロウ付け箇所で冷媒漏洩が起こりやすいことを想定したものである。換気扇13は正逆転可能に構成されていて風の向きを逆にできるようになっている。このような正逆転可能な換気扇13としては、例えば桐生株式会社製のソーラー換気扇(型式:SOLAR VENT 24AE)を用いることができる。
【0013】
空調室内機本体28の空気吹出し口30には、センサ11(第1二酸化炭素濃度検出手段)が設けられている。このセンサ11は空調室内機Aから建物内36に吹き出される空気中の二酸化炭素を検出して制御装置16に出力する。制御装置16は、検出された二酸化炭素濃度が人体に二酸化炭素単独で有害な第1濃度値(例えば3%:東京消防庁基準値)以上であるかどうかを判断する。また、制御装置16は、検出された二酸化炭素濃度が、人体にすぐ影響を及ぼすほどではないが二酸化炭素冷媒漏洩と判断出来る第2濃度値(例えば0.5%:長期安全限界濃度(TLV))以上かどうかを判断する。このとき、0.5%以上且つ3%未満であった場合、制御装置16は二酸化炭素濃度異常(スローリーク)であると判定する。
【0014】
そして、空調室内機A内の空気が正常に戻ったかを判断するため、換気風路20の排気管14近傍に、センサ12(第2二酸化炭素濃度検出手段)が設けられている。このセンサ12は換気風路20の空気中の二酸化炭素濃度が第2濃度値(例えば0.5%)未満であるかどうかを判断する。0.5%未満の場合、制御装置16は空調室内機A内の空気状態が正常になったと判定する。
【0015】
前記の空調室内機Aは、図3に示すように、例えばビルなどの建物内36に設置されている。建物内36では、空調室内機Aの空気吹出し口30に主ダクト37が連結され、主ダクト37から分岐した複数の枝ダクト38,38,・・・・より空気が吹き出されるようになっている。建物内36の二酸化炭素濃度が正常な値であるかどうかを判断するため、建物内36の空調室内機Aから極力離れた位置(例えば空調室内機Aが図3のように建物内の左側の壁際に設置されている場合、建物の右端位置など)に、二酸化炭素濃度を検出し制御装置16に出力するセンサ19が配備されている。制御装置16は、検出された二酸化炭素濃度が0.5%未満かどうかを判断する。0.5%以下の場合、制御装置16は建物内36の空気状態が正常となったと判定する。
【0016】
以下に、センサ11,12,19の動作を対比した表を示す。
【0017】
【表1】

【0018】
前記の制御装置16は、図4に示すように、演算処理ユニット(以下CPUと略記する)およびメモリMを中心として構成され、CPUおよびメモリMと接続されたデータバスDBの入力部に、センサ11,12,19、および外部入力器42が接続されている。データバスDBの出力部には、送風機2、換気扇13、警報器57、および通信装置58が接続されている。通信装置58は通信回線を介して管理会社59の警報装置と接続されている。そして、CPUは、冷媒回路Rの冷媒運転または暖房運転を行なう通常運転手段45の機能を備えている。更に、CPUは、後でそれぞれ詳述する、第1濃度判定手段46、第2濃度判定手段47、送風機停止手段48、ケーシング内空気排出手段49、室内空気換気手段50、室内空気判定手段51、警報出力手段52、通報出力手段53、第1制御手段54、第2制御手段55、および第3制御手段56の各機能を備えている。前記した各手段46〜56の各機能を実行するプログラムデータは予めメモリMに格納されている。また、後出する二酸化炭素濃度に関する、第1濃度値、第2濃度値、および実施の形態2,4で用いる値についても、予め外部入力器42などから設定入力されてメモリMに格納されている。冷媒回路Rは、圧縮機39、室外熱交換器40、膨張弁8、室内熱交換器1がそれぞれ冷媒配管41を介し環状に連結されて構成されている。冷媒回路Rの冷媒としては二酸化炭素が使用されている。
【0019】
次に動作について説明する。
図5に正常運転時における空調室内機A内の風の流れを矢印で示す。正常運転の場合、空調室内機Aは送風機2の駆動により前板26の空気吸込み口29から建物内36の空気を吸い込み、室内熱交換器1を通過させたのち、空気吹出し口30から建物内36へ空気を吹き出すようになっている。
【0020】
続いて、二酸化炭素冷媒漏洩検知時における実施の形態1の処理手順を図6のフローチャートで示し、図7にそのときの空調室内機A内の風の流れを矢印で示す。
まず、室内熱交換器1から二酸化炭素冷媒が漏洩し、空調室内機Aの空気吹出し口30のセンサ11が検出した二酸化炭素濃度を出力すると(ステップS1)、CPUにおいて、第1濃度判定手段46の機能は、前記検出値が建物内36に居る人に対し直ちに悪影響を及ぼす第1濃度値(例えば東京消防庁基準の3%)以上であるか否かを判断する。検出値が3%以上であった場合(ステップS2のYes)、建物内36に二酸化炭素冷媒が充満することを抑制するために、送風機停止手段48の機能がモータ3への電源供給を停止して送風機2を停止させ(ステップS3)、建物内36への冷・温風の供給を停止する。また、ケーシング内空気排出手段49の機能は、換気扇13を運転させる(ステップS4)。これにより、通風路33の吸込み側空間31に溜まった二酸化炭素冷媒は、図7の矢印のように、ドレンパン7下方の換気風路20を通り排気管14から機外に排出される。すなわち、第1濃度判定手段46、送風機停止手段48、およびケーシング内空気排出手段49の各機能から、第1制御手段54の機能が構成される。一方で、警報出力手段52の機能は警報器15に指令信号を出力してブザーを鳴動させ、建物内36の人に対し避難を促す。更に、通報出力手段53の機能は、通信装置58に指令信号を出力して管理会社59に通報させる(ステップS5)。
【0021】
建物内換気時の風の流れを図8に示す。
上記のように、空調室内機A内の二酸化炭素が排気管14から機外に排出されたのち、センサ12が換気風路20の二酸化炭素濃度を検出し制御装置16に出力する(ステップS6)。そして、CPUの第2濃度判定手段47の機能は、センサ12により検出された二酸化炭素濃度が冷媒漏洩ではあるが建物内36に居る人に対し直ちに悪影響を及ぼすことのない0.5%(第2濃度値)未満になったか否かを判定する(ステップS7)。第2濃度判定手段47により0.5%未満になったと判定された場合に、室内空気換気手段50の機能が換気扇13を逆転駆動して室外の空気を換気風路20および通風路33の吸込み側空間31を経て空気吸込み口29から通常とは逆向きに建物内36に吹き出す(ステップS8)。すなわち、第2濃度判定手段47および室内空気換気手段50の各機能から、第2制御手段55の機能が構成される。
【0022】
このとき、排気管14と建物外をつなぐパイプ内(図示省略)に二酸化炭素冷媒が溜まっている場合があるため、第2濃度値未満と判定されてからしばらく経過した後に換気を行うことが望ましい。第2濃度値未満に到達させ得る期間としては、配管長や配管径、風量により異なるが、1分程度であれば、十分に排気管14およびパイプ内の二酸化炭素冷媒を排出できる。そうして、センサ19が建物内36の二酸化炭素濃度を検出し(ステップS9)、CPUの第2濃度判定手段47の機能が、センサ19の検出値が0.5%未満であると判定した場合(ステップS10のYes)、室内空気判定手段51の機能は、建物内36の二酸化炭素濃度が正常な値まで低下したと判断し、換気扇13を停止させるのである(ステップS11)。
【0023】
以上のように、二酸化炭素冷媒の漏洩時に、送風機2の運転を停止するとともに換気扇13を運転させることにより、空調室内機A内の二酸化炭素冷媒を排気管14から屋外へ排出することができる。空調室内機A内の二酸化炭素濃度が予め設定された第2濃度値未満になった場合、換気扇13を逆回転させて排気管14から外気を導入し、建物内36の換気を行うことができる。これにより、建物内36の二酸化炭素濃度を速やかに低下させ、建物内36の人員の安全確保を行うことができる。
そして、冷媒漏洩時に、警報器15がブザーを鳴動させることで建物内36の人員に注意や避難を促すことができる。また、管理会社59に通報することにより、空調室内機Aの漏れ箇所の補修、冷媒の追加充填を迅速に行なわせることができるから、空気調和装置の停止時間を抑えることができる。
そして、二酸化炭素センサ19を建物内36に設置したことで、建物内36の二酸化炭素濃度が正常な値まで低下したかどうか判断することができる。また、建物内36の二酸化炭素濃度が正常な値であると判断した場合、換気を終了させることもできる。また、空調室内機Aで冷媒が漏洩するも、建物内36の人員の安全が脅かされるほどの冷媒漏洩量でない場合に、空調室内機Aの早期復旧のために、空気調和装置の運転を停止し、管理会社59に通報することができる。
【0024】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2を図9のフローチャートを用いて説明する。空調室内機Aおよび冷媒回路Rの構成は実施の形態1と同じである。
空調室内機Aで二酸化炭素冷媒が漏洩した場合、空気吹出し口30のセンサ11が二酸化炭素を検出する(ステップS1)。すると、CPUの第2濃度判定手段47の機能は、センサ11の検出値が、実施の形態1のように建物内36に居る人員に有害となる量(3%)ではないが徐々に二酸化炭素冷媒が漏洩している(以下、スローリークと称する)と判断できる値(例えば0.5%)以上になったか否かを判断する。このとき、0.5%以上であったと判断されると(ステップS14のYes)、送風機停止手段48の機能が、送風機2の運転を停止させ(ステップS15)、CPUのケーシング内空気排出手段49の機能が換気扇13を運転させて二酸化炭素冷媒を機外に排出する(ステップS16)。同時に、CPUの通報出力手段53の機能が通信装置58を作動して管理会社59に二酸化炭素冷媒漏洩を通報させるのである。
【0025】
以上のように、空気吹出し口30のセンサ11が二酸化炭素冷媒のスローリークを検知した場合、送風機2の運転を停止させ、換気扇13により空調室内機A内の二酸化炭素冷媒を排出するので、結果として建物内36の二酸化炭素濃度を低下させることができる。また、CPUおよび通信装置58が管理会社59に二酸化炭素冷媒漏洩を通報するようにしているので、配管の補修、冷媒の追加充填を速やかに行うことができ、空気調和装置の停止時間を抑えることができる。
【0026】
実施の形態3.
上記の実施の形態1、2では建物内36の空気を取り込んで再び建物内36に吹き出す空調室内機Aについて示したが、次に、外気を取り込んで建物内36に吹き出す外気取り入れ方式となる実施の形態3に係る空調室内機A1を図10に示す。
空調室内機A1は前板26の下部に空気吸込み口29がなく背板25の下部に空気流通口34が形成された空調室内機本体28Aを備えている。それら以外の空調室内機本体28Aの構成は、既述した空調室内機本体28と同じである。前記した背板25の空気流通口34にダクト18が連結されている。ダクト18の先端は、室外空気を取り入れるための外気吸込み口44となっている。この空調室内機A1はいわゆるオールフレッシュ方式の室内機であり、常に外気をダクト18から吸い込んで空調後の空気を空気吹出し口30から建物内36に吹き出すようになっている。排気管14は図10のように建物内36と屋外をつなぐダクト18内に通して設けることが望ましい。排気管14の室外流通口43は屋外に開口させる。こうすることで建物内外をつなぐ配管を設置するための配管工事を削減することができる。すなわち、オールフレッシュ方式用のダクト18を利用する態様となる。
【0027】
図10に外気取り入れ方式で正常運転時における空調室内機A内の風の流れを矢印で示す。空調室内機A1は、正常運転の場合、送風機2の駆動によりダクト18の外気吸込み口44から吸込み側空間31に外気を吸い込み、室内熱交換器1を通過させたのち、空気吹き出し口30から建物内36へと吹き出すようになっている。
【0028】
続いて、二酸化炭素冷媒漏洩検知時における実施の形態3の処理手順を図11のフローチャートで示し、図12にそのときの空調室内機A1内の風の流れを矢印で示す。尚、図11のフローチャートにおいて、ステップS1からステップS8までの処理は、実施の形態1の場合と同じである。
すなわち、室内熱交換器1から二酸化炭素冷媒が漏洩し、空調室内機A1の空気吹出し口30のセンサ11が検出した二酸化炭素濃度を出力すると(ステップS1)、制御装置16のCPUは、前記検出値が建物内36に居る人に対し直ちに悪影響を及ぼす第1濃度値(例えば3%)以上であるか否かを判断する。検出値が3%以上であった場合(ステップS2のYes)、建物内36に二酸化炭素冷媒が充満することを抑制するために、モータ3への電源供給を停止して送風機2を停止させ(ステップS3)、建物内36への冷・温風の供給を停止する。一方で、換気扇13を運転させることにより(ステップS4)、外気がダクト18から吸込み側空間31に吸い込まれ、吸込み側空間31に溜まっていた二酸化炭素冷媒は、ドレンパン7下方の換気風路20を通り排気管14から機外に排出される。他方で、CPUは、警報器15に指令信号を出力してブザーを鳴動させ、建物内36の人に対し避難を促すとともに、通信装置58に指令信号を出力して管理会社59に通報させる(ステップS5)。
【0029】
次に、建物内換気時の風の流れを図13に示す。
上記のように、空調室内機A内の二酸化炭素が排気管14から機外に排出されたのち、センサ12が換気風路20の二酸化炭素濃度を検出しCPUに出力する(ステップS6)。そして、CPUは、センサ12により検出された二酸化炭素濃度が冷媒漏洩ではあるが建物内36に居る人に対し直ちに悪影響を及ぼすことのない0.5%(第2濃度値)未満になったか否かを判定する(ステップS7)。CPUは0.5%未満になったと判定した場合、換気扇13を逆転駆動して室外の空気を排気管14および換気風路20から吸込み側空間31に導入する(ステップS8)。同時に、送風機2も運転して外気をダクト18から吸込み側空間31に導入する(ステップS8A)。このように導入された排気管14からの外気とダクト18からの外気は吸込み側空間31で合流して室内熱交換器1を通過したのち、空気吹出し口30から建物内36に吹き出されて建物内36の換気に供される。そうして、センサ19が建物内36の二酸化炭素濃度を検出し(ステップS9)、CPUは、センサ19の検出値が0.5%未満であれば(ステップS10のYes)、建物内36の二酸化炭素濃度が正常な値まで低下したと判断し、換気扇13と送風機2を停止させる(ステップS11,S12)。
【0030】
以上のように、二酸化炭素冷媒の漏洩時に、送風機2の運転を停止するとともに換気扇13を運転させることによりダクト18から外気を吸い込んで、空調室内機A1内の二酸化炭素冷媒を排気管14から屋外へ排出することができる。一方、空調室内機A1内の二酸化炭素濃度が予め設定された第2濃度値未満になった場合、換気扇13を逆回転させて排気管14から外気を導入するとともに、送風機2の駆動によりダクト18からも大量の外気を導入して建物内36の換気を素早く行うことができる。これにより、建物内36の二酸化炭素濃度を極めて迅速に低下させ、建物内36の人員の安全確保を行うことができる。すなわち、CPUの室内空気換気手段50の機能は、送風機2を運転するとともに換気扇13を逆転駆動して室外の空気を換気風路20およびダクト18の外気吸込み口44から通風路33に吸い込んで空気吹き出し口30から建物内36に吹き出す。このときの室内空気換気手段50の機能が第3制御手段56の機能である。同時に、警報器15がブザーを鳴動させることで建物内36の人員に注意や避難を促すことができる。また、管理会社59に通報することにより、空調室内機Aの漏れ箇所の補修、冷媒の追加充填を迅速に行なわせることができるから、空気調和装置の停止時間を抑えることができる。そして、二酸化炭素センサ19を建物内36に設置したことで、建物内36の二酸化炭素濃度が正常な値まで低下したかどうか判断することができる。また、二酸化炭素濃度が正常な値であると判断した場合、換気を終了させることもできる。
【0031】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4を図14のフローチャートを用いて説明する。空調室内機A1および冷媒回路Rの構成は実施の形態3と同じである。
空調室内機A1で二酸化炭素冷媒が漏洩した場合、空気吹出し口30のセンサ11が二酸化炭素を検出する(ステップS1)。すると、CPUは、センサ11の検出値が、実施の形態3のように建物内36に居る人員に有害となる量(3%)ではないが徐々に二酸化炭素冷媒が漏洩しているスローリークと判断できる値(例えば0.5%)以上になったか否かを判断する。このとき、0.5%以上であったと判断すると(ステップS14のYes)、送風機2を運転させるとともに(ステップS15A)、換気扇13を運転させる(ステップS16)。これにより、吸い込み側空間31の一部の空気は換気風路20から排気管14を経て建物外に排出される。同時に、CPUは通信装置58を作動して管理会社59に二酸化炭素冷媒漏洩を通報させる。この際、空気調和装置の運転は継続させる。これにより、スローリークの間も冷・温風を供給することができる。
【0032】
以上のように、外気取り入れ方式の空調室内機A1について、空気吹出し口30のセンサ11が二酸化炭素のスローリークを検知した場合、送風機2および換気扇13を運転させ、換気扇13により吸込み側空間31の二酸化炭素冷媒を排出するので、建物内36の換気を行い二酸化炭素冷媒が建物内36に溜まらないようにできる。その際、空調室内機A1は運転を継続することができ、冷・温風を建物内36に供給することができる。また、CPUおよび通信装置58が管理会社59に二酸化炭素冷媒漏洩を通報するようにしているので、配管の補修、冷媒の追加充填を速やかに行うことができ、空気調和装置の停止時間を抑えることができる。
【0033】
尚、上記の各実施形態で述べたように、ドレンパン7の下方空間はデッドスペースになっている場合が多いので、ドレンパン7の下方空間を換気風路20として有効に利用することができる。また、制御装置16もドレンパン7の下に設置されることが多く、換気扇13と制御装置16を接続する配線長を短くできるというメリットもある。
【0034】
また、上記の各実施形態では、センサ11,12,19はいずれも二酸化炭素濃度値を単に検出してCPUに出力し、CPU側でこれらの検出値と、第1濃度値、第2濃度値などとの関連を判断するようにしたが、例えばセンサ11,12,19側で「第1濃度値以上となったときに出力する」ようにしたり、「第2濃度値未満となったときに出力する」ようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 室内熱交換器、2 送風機、3 モータ、7 ドレンパン、8 膨張弁、11 センサ(第1二酸化炭素濃度検出手段)、12 センサ(第2二酸化炭素濃度検出手段)、13 換気扇、14 排気管、15 警報器、16 制御装置、18 ダクト、19 センサ、20 換気風路、28 空調室内機本体、28A 空調室内機本体、29 空気吸込み口、30 空気吹出し口、31 吸込み側空間、32 吹出し側空間、33 通風路、34 空気流通口、35 通風路流通口、36 建物内、43 室外流通口、44 外気吸込み口、46 第1濃度判定手段、47 第2濃度判定手段、48 送風機停止手段、49 ケーシング内空気排出手段、50 室内空気換気手段、51 室内空気判定手段、54 第1制御手段、55 第2制御手段、56 第3制御手段、A 空調室内機、A1 空調室内機、CPU 演算処理ユニット、R 冷媒回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の空気を吸い込む空気吸込み口および室内に空気を吹き出す空気吹出し口を有する空調室内機本体と、前記空調室内機本体内に形成されて前記空気吸込み口と前記空気吹出し口とを連通する通風路と、前記通風路を吸込み側空間と吹出し側空間とに通風自在に仕切る冷媒回路の室内熱交換器と、前記通風路内に配備された送風機とを備えて成り、前記冷媒回路の冷媒として二酸化炭素を用いる空調室内機において、
前記通風路の吹出し側空間に配備された第1二酸化炭素濃度検出手段と、
前記空調室内機本体に設けられ、室外につながる室外流通口と前記通風路の吸込み側空間につながる通風路流通口とを連通する換気風路と、
前記換気風路内に配備され、室外に向けてまたは前記通風路の吸込み側空間に向けて送風する換気扇と、
前記第1二酸化炭素濃度検出手段により検出された二酸化炭素濃度が第1濃度値以上になった場合に、前記送風機を停止するとともに前記換気扇を運転して前記通風路の吸込み側空間の空気を前記換気風路から室外に吹き出す第1制御手段とを具備して成ることを特徴とする空調室内機。
【請求項2】
換気風路に配備された第2二酸化炭素濃度検出手段と、
第1制御手段が送風機を停止するとともに換気扇を運転して通風路の吸込み側空間の空気を前記換気風路から室外に吹き出したのち、前記第2二酸化炭素濃度検出手段により検出された二酸化炭素濃度が第2濃度値未満になった場合に、前記換気扇を逆転駆動して室外の空気を前記換気風路および前記通風路の空気吸込み口から室内に吹き出す第2制御手段とを具備して成ることを特徴とする請求項1に記載の空調室内機。
【請求項3】
室外の空気を吸い込む外気吸込み口および室内に空気を吹き出す空気吹出し口を有する空調室内機本体と、前記空調室内機本体内に形成されて前記外気吸込み口と前記空気吹出し口とを連通する通風路と、前記通風路を吸込み側空間と吹出し側空間とに通風自在に仕切る冷媒回路の室内熱交換器と、前記通風路内に配備された送風機とを備えて成り、前記冷媒回路の冷媒として二酸化炭素を用いる空調室内機において、
前記通風路の吹出し側空間に配備された第1二酸化炭素濃度検出手段と、
前記空調室内機本体に設けられ、室外につながる室外流通口と前記通風路の吸込み側空間につながる通風路流通口とを連通する換気風路と、
前記換気風路内に配備され、室外に向けてまたは前記通風路の吸込み側空間に向けて送風する換気扇と、
前記第1二酸化炭素濃度検出手段により検出された二酸化炭素濃度が第1濃度値以上になった場合に、前記送風機を停止するとともに前記換気扇を運転して前記通風路の吸込み側空間の空気を前記換気風路から室外に吹き出す第1制御手段とを具備して成ることを特徴とする空調室内機。
【請求項4】
換気風路に配備された第2二酸化炭素濃度検出手段と、
第1制御手段が送風機を停止するとともに換気扇を運転して通風路の吸込み側空間の空気を前記換気風路から室外に吹き出したのち、前記第2二酸化炭素濃度検出手段により検出された二酸化炭素濃度が第2濃度値未満になった場合に、前記送風機を運転するとともに前記換気扇を逆転駆動して室外の空気を前記換気風路および外気吸込み口から前記通風路に吸い込んで室内に吹き出す第3制御手段とを具備して成ることを特徴とする請求項3に記載の空調室内機。
【請求項5】
通風路内の室内熱交換器の下方位置に配備されたドレンパンで前記通風路と換気風路とを仕切るとともに、前記ドレンパンに前記換気風路の通風路流通口を形成したことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の空調室内機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−106697(P2011−106697A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259852(P2009−259852)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】