説明

空調構造

【課題】空調構造に関し、特に、ヒートポンプ式の冷暖房装置によりハウス内の空調を行う場合に、室内機にダクトを直接接続することを不要としつつ、ダクトによってハウス内へ冷気または暖気を配風することができる空調構造を提供すること。
【解決手段】ハウス10とチャンバ室20とを区画し、チャンバ室20と親ダクト4とを接続部材40を介して接続する。ハウス10の内気を冷暖房装置30が吸気し、冷却または加温した後、冷気または暖気としてチャンバ室20へ吹き出す。これにより、チャンバ室20の内気が接続部材40を介して親ダクト4内へ流入され、子ダクト5からハウス10内に配風される。よって、冷暖房装置30の室内機に親ダクト4を直接接続することを不要としつつ、親ダクト4及び子ダクト5によりハウス10内へ冷気または暖気を配風できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調構造に関し、特に、ヒートポンプ式の冷暖房装置によりハウス内の空調を行う場合に、室内機にダクトを直接接続することを不要としつつ、ダクトによってハウス内へ冷気または暖気を配風することができる空調構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、園芸用のハウスでは、ハウス内の冷暖房に、重油や灯油を燃料とする冷暖房装置が使用されていた。しかし、近年では、燃料価格の上昇による生産コストの増加が問題となっていた。また、地球温暖化防止策としての二酸化炭素の排出量の削減も重要な課題となっていた。
【0003】
そこで、低コストで且つ二酸化炭素を排出しない冷暖房装置として、ヒートポンプ式の冷暖房装置を園芸用のハウスに適用する技術が開発されている(特許文献1)。この技術によれば、温室(ハウス)の外部に配置された室外機の蒸発器から、温室内に配置された室内機の凝縮器へ熱媒体が流動されることで、室内機の吹出口から冷気または暖気を吹き出して、温室内の冷暖房を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−178721号公報(図1〜図3、段落[0014]など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の冷暖房装置では、吹出口からハウス内へ冷気または暖気を単に吹き出すだけであるので、吹出口近傍の作物に冷気または暖気が直接吹き付けられ、作物が黄化して枯れるという問題点があった。また、ハウス内の温度にムラが生じるという問題点があった。
【0006】
一方で、これらの問題点は、冷暖房装置に親ダクトを接続し、その親ダクトから複数の子ダクトを分岐させると共に、それら子ダクトをハウス内の畝に沿って配設し、子ダクトの長手方向に沿って多数開口された孔から冷気または暖気をそれぞれ吐出させることによって解消できる。即ち、冷気または暖気が作物に直接吹き付けられ難くして、作物への影響を抑えられる。また、ハウス内へ冷気または暖気を均等に配風して、ハウス内の温度を均一にし易くできる。しかしながら、ヒートポンプ式の冷暖房装置の場合、室内機にダクトを接続することが困難であるという問題点があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ヒートポンプ式の冷暖房装置によりハウス内の空調を行う場合に、室内機にダクトを直接接続することを不要としつつ、ダクトによってハウス内へ冷気または暖気を配風することができる空調構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
請求項1記載の空調構造によれば、ハウスと区画される内部空間を有するチャンバ室を備え、そのチャンバ室の内部空間に冷暖房装置の室内機が設置されるので、冷暖房装置の室内機から吹き出される冷気または暖気をチャンバ室に貯留することができる。この場合、チャンバ室およびハウスを区画する区画壁には、冷暖房装置の室内機の吸気口をハウスの内部空間に連通させる導入穴と、チャンバ室の内部空間をダクトに連通させる導出穴とが形成される。
【0009】
これにより、ハウスの内気を冷暖房装置の室内機が導入穴を介して吸気口から吸気すると共に、冷暖房装置の室内機が吹出口から冷気または暖気をチャンバ室へ吹き出すことで、チャンバ室の内気を、導出穴を介してダクト内へ導出しハウス内に配風することができる。即ち、ヒートポンプ式の冷暖房装置によりハウス内の空調を行う場合であっても、冷暖房装置の室内機にダクトを直接接続することを不要としつつ、ダクトによってハウス内へ冷気または暖気を配風できるという効果がある。その結果、冷気または暖気が作物に直接吹き付けられ難くして、作物への影響を抑えることができる。また、ハウス内へ冷気または暖気を均等に配風して、ハウス内の温度を均一にし易くできる。
【0010】
また、請求項1によれば、ハウスとは別にチャンバ室を設け、そのチャンバ室内に冷暖房装置の室内機を配置するので、ハウス内に冷暖房装置の室内機を配設するためのスペースを確保する必要がない。よって、その分、ハウス内の作物を栽培するためのスペースを増加させることができるという効果がある。
【0011】
更に、請求項1によれば、ハウスとは別にチャンバ室を設け、これらの間を区画する区画壁に導入穴および導出穴を設ければ良いので、既存のハウスに対しても容易に本空調構造を適用することができるという効果がある。
【0012】
請求項2記載の空調構造によれば、請求項1記載の空調構造の奏する効果に加え、室内機の吹出口および区画壁の導出穴は、水平方向に並設されると共にチャンバ室の側壁に対面配置され、そのチャンバ室の側壁は、水平断面が外方へ凸の円弧状に湾曲されるので、冷暖房装置の室内機の吐出口から吹き出された冷気または暖気を、円弧状に湾曲したチャンバ室の側壁に沿って案内して、導出穴へ流入させ易くすることができるという効果がある。その結果、チャンバ室の内気を導出穴からダクト内へ効率的に導出することができるので、請求項2における空調構造のエネルギー消費効率(COP)を高めることができる。
【0013】
また、請求項2によれば、チャンバ室の側壁は、水平断面が外方へ凸の円弧状に湾曲されるので、チャンバ室の容積を小さくして、熱損失を抑制しつつ、チャンバ室内に作業スペースを効率的に確保することができるという効果がある。その結果、かかる作業スペースを利用することで、室内機などのメンテナンス作業時の作業性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項3記載の空調構造によれば、請求項1又は2に記載の空調構造の奏する効果に加え、冷暖房装置の室内機は、一面側に吸気口が形成されると共に、一面側の反対側となる他面側に吹出口が形成され、一面側の外周縁が導入穴に嵌め込まれるので、ハウスの内気を室内機の吸気口に直接吸気させ、吸気効率を高めることができるという効果がある。その結果、請求項3における空調構造のエネルギー消費効率(COP)を高めることができる。
【0015】
また、冷暖房装置の室内機の外周縁が導入穴に嵌め込まれる構造とすることで、吸気口からの吸気効率を高めると共に、ハウスとチャンバ室との間を簡素な構造で確実に区画することができるという効果がある。その結果、チャンバ室の密閉度を高めて、エネルギー消費効率(COP)を高めつつ、構造の簡素化により、製品コストの削減を図ることができる。
【0016】
さらに、冷暖房装置の室内機の外周縁が導入穴に嵌め込まれる構造とすることで、チャンバ室の容積を小さくして、熱損失を抑制することができるので、その分、エネルギー消費効率(COP)を高めることができる。
【0017】
請求項4記載の空調構造によれば、請求項1から3のいずれかに記載の空調構造の奏する効果に加え、導出穴とダクトとの間に介在される筒状の本体筒を接続部材が備えるので、導出穴とダクトとを確実に接続できると共に、それらの接続を簡素な構造で行うことができるという効果がある。よって、導出口からダクトまでの間での冷気または暖気の漏出を抑制して、請求項4における空調構造のエネルギー消費効率(COP)を高めつつ、構造の簡素化により、製品コストの削減を図ることができる。
【0018】
さらに、請求項4によれば、本体筒の外周面から分岐し導入穴まで延設されると共に本体筒よりも断面積の小さな筒状の分岐筒を接続部材が備えるので、チャンバ室の内気(即ち、冷暖房装置の室内機からチャンバ室内に吹き出された冷気または暖気)を、導出穴から接続部材を介してダクト内へ導出させる際に、その冷気または暖気を、冷暖房装置の室内機における吸気口に導いて吸気させることができる。これにより、冷暖房装置の能力を補助して、エネルギー消費効率(COP)を高めることができる。
【0019】
請求項5記載の空調構造によれば、請求項1から4のいずれかに記載の空調構造の奏する効果に加え、導出穴に配設され、チャンバ室の内気を吸引してダクトへ向けて送風する送風機を備えるので、チャンバ室の内気(即ち、冷暖房装置の室内機からチャンバ室内に吹き出された冷気または暖気)をチャンバ室から導出口を介してダクト内へ効率的に導出させることができる。即ち、チャンバ室内の冷気または暖気をダクトの末端まで押し出すための風圧を確保することができるという効果がある。その結果、請求項5における空調構造におけるエネルギー消費効率(COP)を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態における空調構造が適用されるハウスの側面図であり、(b)は、図1のIb−Ib線におけるハウスの断面図である。
【図2】チャンバ室の水平断面図である。
【図3】図2の矢印III方向から視たチャンバ室の背面図である。
【図4】(a)は、接続部材の上面図であり、(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における接続部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は、本発明の一実施の形態における空調構造が適用されるハウス10の側面図であり、図1(b)は、図1のIb−Ib線におけるハウス10の断面図である。なお、本実施の形態では、ハウス10がメロンを栽培するメロン温室として構成される場合を例に説明する。また、図1では、土台や側柱、屋根柱などの図示が省略され、ハウス10が模式的に図示される。
【0022】
まず、本発明の空調構造が適用されるハウス10の全体構成について説明する。図1(a)及び図1(b)に示すように、ハウス10は、地面に設けられたコンクリート製の土台と、その土台から立設される複数のアルミ製の側柱と、それら複数の側柱の上方に組み付けられる複数のアルミ製の屋根柱と、それら複数の屋根柱の間に張設され切妻型の屋根を形成するガラス製の屋根材1と、複数の側柱の間に張設され側壁を形成するガラス製の壁材2とを主に備え、所定の窓や通路が閉じられた状態では、内部空間の内気が外気と遮断されるように構成される。
【0023】
ハウス10の内部には、複数(本実施の形態では、6本)のベッド3が所定間隔を隔てつつ並設される。ベッド3は、断面U字状のアルミ製の枠であり、メロンの床土は、このベッド3に盛られることで、地面と隔絶される。なお、ハウス10の床は、段差が設けられており、北側(図1(b)右側)のベッド3ほど高い位置に配設される。
【0024】
また、ハウス10の内部には、親ダクト4と、その親ダクト4から分岐する複数(本実施の形態では4本)の子ダクト5とが配設される。親ダクト4は、後述するチャンバ室20から導出された冷気または暖気を流通させると共に子ダクト5へ分配するためのダクトであり、一端側(図1(b)右側)がチャンバ室20に接続される。なお、親ダクト4は、ベッド3の段差に伴って、他端側(図1(b)左側)へ下降傾斜した状態で配設されている。
【0025】
子ダクト5は、親ダクト4から分配された冷気または暖気をハウス10内に配風するためのビニール製のダクトであり、ベッド3に沿って配設される。子ダクト5には、その長手方向に沿って孔が多数開口され、それら各孔から冷気または暖気が吐出される。これにより、冷気または暖気が作物に直接吹き付けられ難くして、作物への影響を抑えることができる。また、ハウス10内へ冷気または暖気を均等に配風して、ハウス10内の温度を均一にし易くできる。
【0026】
次いで、このように構成されたハウス10を空調する空調構造について説明する。本発明の空調構造は、チャンバ室20と、ヒートポンプ式の冷暖房装置30とを主に備える。チャンバ室20は、ハウス10と区画される内部空間を有し、ハウス10の北側(図1(a)及び図1(b)右側)の側面に形成されると共に、後述する導入穴25及び導出穴26を介して(図2及び図3参照)、ハウス10の内部空間と連通される。ここで、チャンバ室20の詳細構成について、図2及び図3を参照して説明する。
【0027】
図2は、チャンバ室20の水平断面図であり、図1(b)の部分拡大図に対応する。また、図3は、図2の矢印III方向から視たチャンバ室20の背面図である。なお、図2では、側柱や屋根柱などの図示や各構成30,40,50等の断面視が省略されると共に、チャンバ室20が模式的に図示される。また、図3では、冷暖房装置30の室内機31及び送風機50が二点鎖線を用いて模式的に図示されている。
【0028】
図2及び図3に示すように、チャンバ室20は、架台29から立設される複数のアルミ製の側柱と、それら複数のアルミ製の側柱の上方に組み付けられる複数のアルミ製の屋根柱と、それら複数の屋根柱の間に張設され屋根を形成する屋根材21(図1(a)参照)と、複数の側柱の間に張設され側壁を形成する壁材22と、床面を形成する床材23とを主に備え、図2に示す冷暖房装置30や接続部材40が設置された状態では、内部空間の内気が外気と遮断されるように構成される。
【0029】
なお、上述したように、ハウス10は、床に段差が設けられ、北側(図1(b)右側)のベッド3ほど高い位置に配設されるので、これに対応させるために、チャンバ室20は、最上段のベッド3に対応する高さまで、鉄鋼製の架台29により持ち上げられる(図1(a)参照)。
【0030】
また、屋根材21、壁材22および床材23は、ガルバリウム鋼材により構成されており、その内壁には、ウレタン樹脂製の断熱材が裏打ちされている。これにより、チャンバ室20の断熱性能が確保され、内部空間から外部への熱の逃げである総熱損失量の低減が図られている。
【0031】
ここで、説明の便宜上、以下においては、チャンバ室20の側壁22の内、ハウス10側に位置しハウス10の内部空間とチャンバ室20の内部空間とを区画する側壁22を区画壁22aと称すると共に、ハウス10とは反対側に位置し区画壁22aに対向する側壁22を対向壁22bと称す。
【0032】
チャンバ室20の内部空間には、冷暖房装置30の室内機31が配置される。なお、冷暖房装置30の室外機(図示せず)は、ハウス10及びチャンバ室20の室外に配置され、冷媒配管および制御用電線(いずれも図示せず)を通じて室内機31に接続される。
【0033】
チャンバ室20は、区画壁22aにより、ハウス10と区画されており、その区画壁22aには、導入穴25と、導出穴26とが開口される。導入穴25は、室内機31の吸気口31bをハウス10の内部空間に連通させる開口であり、図3に示すように、室内機31の外形に対応した矩形状に形成される。また、導出穴26には、接続部材40が接続される。導出穴26は、接続部材40を介して、ハウス10内に設置された親ダクト4とチャンバ室20の内部空間とを連通させる開口であり、接続部材40に対応した円形に形成される。
【0034】
このように構成された空調構造によれば、冷暖房装置30が駆動されると、ハウス10の内気が、室内機31の吸気口31bから吸気され、室内機31内で冷却または加温された後、室内機31の吹出口31aから冷気または暖気としてチャンバ室20へ吹き出される。チャンバ室20へ冷気または暖気が吹き出されると、その吹き出された冷気または暖気は、導出穴26に接続された接続部材40を介して、親ダクト4内へ導出されると共に、各子ダクト5へ分配され、ハウス10内に配風される。
【0035】
よって、ヒートポンプ式の冷暖房装置30によりハウス10内の空調を行う場合に、冷暖房装置30の室内機31に親ダクト4を直接接続しなくても、親ダクト4及び子ダクト5によってハウス10内へ冷気または暖気を配風できる。また、チャンバ室20内に冷暖房装置30の室内機31を配置できるので、ハウス10内に冷暖房装置30の室内機31を配設するためのスペースを確保する必要がない。よって、その分、ハウス10内の作物を栽培するためのスペースを増加させることができる。更に、ハウス10とは別にチャンバ室20を設け、これらの間を区画する区画壁22aに導入穴25及び導出穴26を設ければ良いので、既存のハウスに対しても容易にこの空調構造を適用することができる。
【0036】
区画壁22aに開口される導入穴25及び導出穴26は、図3に示すように、水平方向(図3左右方向)に並設されると共に、冷暖房装置30の室内機31がチャンバ室20の内部空間に設置されると、その室内機31の吸気口31bは、図3の背面視において、導入穴25に重なる(導入穴25の外形内に収まる)。
【0037】
また、冷暖房装置30の室内機31の吹出口31aは、吸気口31bの配設位置と反対側となる面(図2右側面)に配設されており、よって、区画壁22aの導出穴26は、室内機31の吹出口31aに対しても、水平方向(図3左右方向)に並設される。ここで、これら室内機31の吹出口31a及び導出穴26に対面配置される対向壁22bは、図2に示す水平断面(重力方向に直交する仮想平面で切断した断面)が外方(即ち、区画壁22aから離間する方向、図2右方向)へ凸の円弧状に湾曲される。
【0038】
これにより、冷暖房装置30の室内機31が吐出口31aから冷気または暖気を吹き出すと、その吹き出した冷気または暖気を、円弧状に湾曲した対向壁22bに沿って流動させ、導出穴26へ流入させ易くすることができる。その結果、チャンバ室20の内気を導出穴26から親ダクト4内へ効率的に導出することができるので、本空調構造におけるエネルギー消費効率(COP)を高めることができる。
【0039】
また、このように、室内機31の吐出口31aと導出穴26とを水平方向に並設し、チャンバ室20の対向壁22bを水平断面が外方へ凸の円弧状に湾曲させることで、チャンバ室20の容積を小さくして、熱損失を抑制しつつ、チャンバ室20内に作業スペースを効率的に確保することができる。その結果、かかる作業スペース(即ち、室内機31と対向壁22bとの間の空間、及び、送風機50と対向壁22bとの間の空間)を利用することで、室内機31や送風機50などのメンテナンス作業時の作業性の向上を図ることができる。
【0040】
対向壁22bは、図2に示す水平断面における形状が円の一部を切り取った形状、即ち、一定の曲率半径(本実施の形態では、半径r=3000mm)を有する形状に形成される。また、この曲率半径は、床材23から屋根材21(図1(a)参照)までの範囲で一定である。よって、複数の曲率半径を複合する場合と比較して、対向壁22bの形状を簡素として、その製造を容易とすることができるので、その分、チャンバ室20の製品コストを低減することができる。
【0041】
一方で、本実施の形態では、このように対向壁22bの形状を簡素化した場合であっても、次の構成により、冷気または暖気を導出穴26へ効率的に流入させることができる。即ち、対向壁22bは、区画壁22aとの間の対向間隔(図2左右方向間隔)が、室内機31側における対向間隔よりも、導出穴26(送風機50)側における対向間隔の方が大きくされている。これにより、室内機31から導出穴26(送風機50)へ向かう流れ(即ち、室内機31の吹出口31aから吹き出された冷気または暖気が対向壁22bに沿って図2の下方へ向かう流れを形成し易くできる。その結果、冷気または暖気を導出穴26へ効率的に流入させることができる。
【0042】
また、対向壁22bは、区画壁22aとの間の対向間隔(図2左右方向間隔)が、図2に範囲Aで示すように、室内機31側(図2上側)から導出穴26(送風機50)側(図2下側)へ向かうに従って、漸次増加する一方で、導出穴26(送風機50)の端部(図2上側の端部)に達すると、図2に範囲Bで示すように、室内機31から離れる方向(図2下側)へ向かうに従って、漸次減少するように形成されている。これにより、室内機31の吹出口31aから吹き出され対向壁22bに沿って図2の下方へ向けて流れてきた冷気または暖気を、次いで、導出穴26(送風機50)へ向けて方向転換させ易くすることができる。その結果、冷気または暖気を導出穴26へ効率的に流入させることができる。
【0043】
ここで、冷暖房装置30の室内機31は、直方体に形成され、その一面側(図2左側)に吸気口31bが形成されると共に、一面側の反対側となる他面側(図2右側)に吹出口31aが形成され、吸気口31bが形成される一面側の外周縁が、区画壁22aに開口された導入穴25に嵌め込まれる。
【0044】
これにより、室内機31の吸気口31bをハウス10内に対面させることができるので、ハウス10の内気を、ダクトなどを利用することなく、室内機31の吸気口31bに直接吸気させることができ、その分、吸気効率を高めることができる。その結果、本空調構造におけるエネルギー消費効率(COP)を高めることができる。
【0045】
また、このように、冷暖房装置30の室内機31の外周縁が導入穴25に嵌め込まれる構造とすることで、吸気口31bからの吸気効率を高めると共に、ハウス10とチャンバ室20との間を簡素な構造(即ち、板状の区画壁22aのみ)で確実に区画することができる。その結果、チャンバ室20の密閉度を高めて、エネルギー消費効率(COP)を高めつつ、構造の簡素化により、製品コストの低減を図ることができる。さらに、冷暖房装置30の室内機31の外周縁が導入穴25に嵌め込まれることで、チャンバ室20の容積を小さくして、熱損失を抑制することができるので、その分、エネルギー消費効率(COP)を高めることができる。
【0046】
上述したように、導出穴26には、接続部材40が接続され、この接続部材40を介して、チャンバ室20の内気が親ダクト4へ導出される。ここで、図4を参照して、接続部材40の詳細構成について説明する。
【0047】
図4(a)は、接続部材40の上面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における接続部材40の断面図である。なお、図4では、分岐筒43の一部が省略して図示されている。接続部材40は、断面円形の筒状に形成される本体筒41と、その本体筒41の一端側から径方向外方へ張り出す正面視矩形状のフランジ部42と、本体筒41の外周面から分岐され断面矩形の筒状に形成される分岐筒43とを備え、鉄鋼材料から構成される。
【0048】
本体筒41は、チャンバ室20から親ダクト4までの冷気または暖気の流通経路を形成するための部位であり、導出穴26の内径と同等の内径を有すると共に、親ダクト4(図2参照)が接続可能な外径を有する筒状に形成される。なお、本体筒41の外周面には、周方向に延設される突条状の抜け止めリング(図示せず)が突出されており、接続された親ダクト4(図2参照)の抜けが防止される。
【0049】
フランジ部42は、区画壁22aに図示しない当て板を介してねじにより締結固定される板状の部位であり(図2参照)、各角部にねじを挿通するための貫通孔が穿設される。分岐筒43は、本体筒41内を流通する冷気または暖気の一部を分岐させ、ハウス10内へ流出させる流通経路を形成するための部位であり、基端側(図4(b)下側)が本体筒41に連通されると共に、図示しない先端側(図4(b)上側)に開口が形成され、分岐された冷気または暖気を先端側の開口から吹き出す。
【0050】
図2及び図3に戻って説明する。接続部材40は、上述したように、フランジ部42が区画壁22aに締結固定されることで、本体筒41が導出穴26に連通する位置に配設され、これにより、チャンバ室20の内部空間と親ダクト4とが導出穴26及び接続部材40の本体筒41を介して連通される。
【0051】
このように、本実施の形態では、導出穴26と親ダクト4との間に介在される接続部材40を備えるので、導出穴26と親ダクト4とを確実に接続できると共に、それらの接続を簡素な構造で行うことができる。よって、導出口26から親ダクト4までの間での冷気または暖気の漏出を抑制して、本空調構造のエネルギー消費効率(COP)を高めつつ、構造の簡素化により、製品コストの削減を図ることができる。
【0052】
ここで、接続部材40は、分岐筒43が水平方向に延設される向き(即ち、図2に示すように、室内機31側へ向けて延設される向き)で区画壁22bに締結固定される。この場合、分岐筒43の長さ寸法は、先端側の開口が導入穴25に達する位置(より具体的には、室内機31の吸気口31bに達する位置)まで延設される長さ寸法に設定されている。
【0053】
これにより、チャンバ室20の内気(即ち、冷暖房装置30の室内機31からチャンバ室20内に吹き出された冷気または暖気)を、導出穴26から接続部材40(本体筒41)を介して親ダクト4内へ導出させる際には、その冷気または暖気を、冷暖房装置30の室内機31における吸気口31bへ分岐筒43により導いて吸気させることができる。その結果、冷暖房装置30の能力を補助して、エネルギー消費効率(COP)を高めることができる。
【0054】
なお、接続部材40は、分岐筒43の有効断面積が、本体筒41の有効断面積の5%から15%の範囲内にあることが好ましい。5%よりも小さいと、本体筒41から分岐される冷気または暖気の量が不足して、室内機31の吸気口31bへ十分な量の冷気または暖気を吸気させることができず、室内機31の能力補助効果が得られない一方、15%よりも大きいと、本体筒41から分岐される冷気または暖気の量が過大となり、子ダクト5からハウス10内へ十分な量の冷気または暖気を配風することができず、ハウス10内の空調機能を確保できないからである。
【0055】
また、分岐筒43は、図3に示す背面視において、その先端側が、室内機31の吸気口31bの導出穴26側(図3右側)の端部と、吸気口31bの幅方向(図3左右方向)中央との間の範囲内に位置することが好ましい。この範囲内であれば、分岐筒43の先端側の開口から吹き出される際の流動を利用して、分岐筒43から吹き出される冷気または暖気を吸気口31bへ効率的に吸気させることができるからである。
【0056】
導出穴26には、送風機50が配設される。送風機50は、チャンバ室20の内気を吸引して、導出穴26及び接続部材40を介して、親ダクト4へ向けて送風するための有圧換気扇であり、導出穴26を接続部材40と挟む位置において、区画壁22aに締結固定される。
【0057】
これにより、チャンバ室20の内気(即ち、冷暖房装置30の室内機31からチャンバ室20内に吹き出された冷気または暖気)をチャンバ室20から導出口26及び接続部材40を介して親ダクト4内へ効率的に導出させ、各子ダクト5の末端まで押し出すための風圧を確保することができる。その結果、本空調構造におけるエネルギー消費効率(COP)を高めることができる。
【0058】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0059】
上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、上記実施の形態で挙げた材質は一例であり、他の材質を採用することは当然可能である。
【0060】
上記実施の形態では、冷暖房装置30の室内機31が区画壁22aの導入穴25に嵌め込まれる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、区画壁22aの導入穴25にダクトを嵌め込み、そのダクトの一端側をハウス10内に開口させると共に他端側を室内機31の吸気口31bに接続するようにしても良い。この場合、吸気口31bは、室内機31の背面側(図2左側)に設けられていても良いし、室内機31の前面側(吹出口31aと同じ側)に設けられていても良く、側面に設けられていても良い。
【0061】
上記実施の形態では、ハウス10がメロンを栽培するメロン温室として構成される場合を説明したが、他の植物を対象とするものであっても良い。また、本発明の空調構造の適用対象は園芸用のハウス10に限られず、他の用途(例えば、畜舎や倉庫など)に使用されるものであっても良い。本発明の空調構造を適用することで、各ダクト4,5を使用することで、例えば、埃の飛散を抑制しつつ、空調できる。
【符号の説明】
【0062】
4 親ダクト(ダクト)
5 子ダクト(ダクト)
10 ハウス
20 チャンバ室
22a 区画壁
22b 対向壁(吹出口および導出穴が対面配置される側壁)
25 導入穴
26 導出穴
30 冷暖房装置
31 室内機
31b 吸気口
40 接続部材
41 本体筒
43 分岐筒
50 送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ式の冷暖房装置を備え、その冷暖房装置により園芸用のハウスの内部空間を空調する空調構造において、
前記ハウスと区画される内部空間を有し、その内部空間に前記冷暖房装置の室内機が設置されるチャンバ室と、
そのチャンバ室および前記ハウスを区画する区画壁に開口され前記冷暖房装置の室内機の吸気口を前記ハウスの内部空間に連通させる導入穴と、
前記区画壁に開口され、前記ハウス内に設置されたダクトをチャンバ室の内部空間に連通させる導出穴と、を備え、
前記ハウスの内気が前記導入穴を介して前記室内機の吸気口から吸気され、前記室内機の吹出口から冷気または暖気が前記チャンバ室に吹き出されることで、前記チャンバ室の内気が、前記導出穴を介して前記ダクト内へ導出され、前記ダクトによって前記ハウス内に配風されることを特徴とする空調構造。
【請求項2】
前記室内機の吹出口および前記区画壁の導出穴は、水平方向に並設されると共に前記チャンバ室の側壁に対面配置され、そのチャンバ室の側壁は、水平断面が外方へ凸の円弧状に湾曲されることを特徴とする請求項1記載の空調構造。
【請求項3】
前記室内機は、一面側に前記吸気口が形成されると共に、前記一面側の反対側となる他面側に前記吹出口が形成され、前記一面側の外周縁が前記導入穴に嵌め込まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の空調構造。
【請求項4】
前記導出穴と前記ダクトとの間に介在される筒状の本体筒と、その本体筒の外周面から分岐し前記導入穴まで延設されると共に本体筒よりも断面積の小さな筒状の分岐筒と、を有する接続部材を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の空調構造。
【請求項5】
前記導出穴に配設され、前記チャンバ室の内気を吸引して前記ダクトへ向けて送風する送風機を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の空調構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−47433(P2012−47433A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192900(P2010−192900)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(510234102)株式会社バイオリンク (1)
【Fターム(参考)】