説明

空調装置

【課題】温度センサが加熱用熱交換器の熱的影響を受けずに正確な温度を測定することができ、したがって確実に冷却用熱交換器の凍結を防止することができるとともに、装置全体を小型にすることができる空調装置を提供する。
【解決手段】この空調装置31は、空気流路に、冷却用熱交換器33と加熱用熱交換器35とを互いに離間することなく上流から下流にこの順に直列に配設し、冷却用熱交換器33の温度センサ37を冷却用熱交換器33の上流端と下流端との間の位置に配設している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器とを流路中に有する空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の空調で夏場以外に車室内を除湿したい場合は、まず冷却用熱交換器で吸込み空気を冷却、除湿する。その後、この除湿された空気を加熱用熱交換器で室温と同等の温度にまで昇温して車室内に吹出す。このようにして、乗客には適温でかつ除湿された空気を供給することができる。
【0003】
ところが、夏以外の時期は、熱負荷が低く風量も少ないため、冷却用熱交換器が凍結する場合がある。このため、冷却用熱交換器のフィンに温度センサを設け、冷却用熱交換器のフィンの温度、又はフィンを通過する空気の温度を測定し、熱交換器が凍結しそうになると圧縮機を停止して凍結を防止するようなっている。この温度センサは、熱交換器中最も温度が低くなる空気流れの下流端に設置するのが望ましい。
【0004】
このような空調装置11は、図8に示すようなものであって、ダクト13中の上流側に冷却用熱交換器15が配設されており、この冷却用熱交換器15の下流側に若干距離を置いて加熱用熱交換器17が配置されている。そして、上流から流れてきた空気は、冷却用熱交換器15で冷却除湿された後、加熱用熱交換器17で適温に加熱されて車室内に供給されるようになっている。そして、冷却用熱交換器の凍結防止用の温度センサ19は、最も温度が低くなる冷却用熱交換器15の下流端に設置されている。
【0005】
しかしながら、この温度センサ19は、加熱用熱交換器17に近いと、その熱に影響されて正しい温度を測定できない。このため、冷却用熱交換器の凍結を防止することができないという問題点があった。また、冷却用熱交換器15から加熱用熱交換器17を離して配置すれば温度センサ19に対する影響を少なくすることはできるが、装置全体が大型になってしまうという問題点があった。
【0006】
これに対して、特許文献1や特許文献2には図9に示すような空調装置21が開示されている。この空調装置21は、ダクト13中に冷却用熱交換器15と加熱用熱交換器17が並列に配設されており、冷却用熱交換器15の下流端に温度センサ19が配置されている。このようにすると、加熱用熱交換器17の影響を受けなくなるが、ダクト13の幅が広くなってしまうとともに、冷気と暖気を混合するための空間が必要になり、その分ダクトが長くなってしまう。このため、装置自体が大型になり、小型化しにくくなるという問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特開平7−243666
【特許文献2】特開2001−201281
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決することをその課題とし、温度センサが加熱用熱交換器の熱的影響を受けずに正確な温度を測定することができ、したがって確実に冷却用熱交換器の凍結を防止することができるとともに、装置全体を小型にすることができる空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、空気流路に、冷却用熱交換器(33)と加熱用熱交換器(35)とを上流から下流にこの順に直列に配設した空調装置において、冷却用熱交換器(33)と加熱用熱交換器(35)とを離間することなく配設するとともに、温度センサ(37)を、冷却用熱交換器(33)の上流端と下流端との間の位置に配設した手段を採用することができる。
【0010】
この手段によれば、温度センサ(37)が加熱用熱交換器(35)の熱的影響を受けずに正確な温度を測定することができ、したがって確実に冷却用熱交換器(33)の凍結を防止することができるとともに装置全体を小型にすることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、冷却用熱交換器(33)と加熱用熱交換器(35)は一体化された熱交換器(41)であり、この一体化された熱交換器(41)は、空気流路に沿って複数枚離間して配設されたプレート状フィン(43)と、この複数枚のプレート状フィン(43)のうち空気流路上流側を貫通する冷却用チューブ(45)と、この複数枚のプレート状フィン(43)のうち空気流路下流側を貫通する加熱用チューブ(49)とを有する手段採用することができる。したがって、部品点数を削減し低コストの空調装置を提供することができる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、冷却用熱交換器(63)と加熱用熱交換器(65)は別体になされた熱交換器(61)を構成し、空気流路中に互いに離間することなく配置されている手段を採用することができる。したがって、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器の双方に付き熱交換容量を変更、組み合わせを自由に行うことができ、したがって適用範囲の広い空調装置を提供することができる。
【0013】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図1ないし図7を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態である空調装置31を示す。この空調装置31は、外気から空気を取り入れ車室に空調空気を供給するダクト11を有している。このダクト11には、冷却用熱交換器33が配設されている。また、この冷却用熱交換器33の下流側には、加熱用熱交換器35が冷却用熱交換器33と間隔をあけずに配設されている。そして、冷却用熱交換器33の下流端と上流端との間で下流端から所定距離はなれた位置に温度センサ37が配置されている。ここで、温度センサ37の位置については、加熱用熱交換器35の熱的影響が出ない範囲でなるべく空気流れの下流側が望ましい。
【0016】
図2は、空気流れ方向における熱交換器の温度分布を示すものである。ここで、Tfは冷却用熱交換器の凍結温度、Trは室温(吸込温度)、T1は冷却用熱交換器の凍結防止のため圧縮機をOFFにする制御温度を示す。従来のように、加熱用熱交換器が冷却用熱交換器から離れて配置され、温度センサが冷却用熱交換器の空気流れの下流端に設置されている場合は、一般的にT1=Tfとされる。しかし、本実施の形態のように温度センサが冷却用熱交換器の上流端と下流端の間に設置される場合は、T1は温度センサの位置が上流側にずれている分Tfよりα℃高い温度で決定される。また、冷却用熱交換器の凍結防止のため圧縮機をOFFにした後、再度圧縮機をONにする制御温度T2は、T2>T1となるよう任意に決定される。すなわち、
T1=Tf+α(℃)
T2>T1
となる。
【0017】
図3(a)は、冷却用熱交換器の凍結防止の制御フローを示すものである。この図において、Taは温度センサの検知温度を示す。
【0018】
まず、温度センサにて温度Taを検知する。
【0019】
次に、圧縮機が既にOFFになっているか否かを判断する。
【0020】
圧縮機がONの場合、Ta≦T1であるかを判断する。
【0021】
Ta>T1ならば熱交換器に凍結の可能性はないとしてSTARTへもどる。Ta≦T1ならば凍結の可能性ありとして圧縮機をOFFにする。
【0022】
圧縮機がOFFの場合は、Ta≧T2であるか判断する。
【0023】
Ta<T2ならそのままSTARTへ戻る。
【0024】
Ta≧T2なら熱交換器の温度が上がりすぎとして圧縮機をONにする。
【0025】
このように圧縮機のON、OFFを繰り返すことによって、図3(b)に示すように、Taの値をT1とT2との間にあるようにすることができる。
【0026】
図4及び図5は、本実施の形態の具体的例である熱交換器ユニット41を示す斜視図であり、図5は図4中V−V線に沿う断面図である。この熱交換器ユニット41は、冷却用熱交換器と加熱用熱交換器とが一体になったもので、複数枚平行に配設されたフィン43を有している。このフィン43のうち空気流れの上流側が冷却用領域43aとして使用され、下流側が加熱用領域43bとして使用される。冷却用領域43aには、冷却用熱媒体が流通する冷却用チューブ45が多数貫通して配設され、冷却用熱交換器47を構成し、加熱領域43bには、加熱用熱媒体が流通する加熱用チューブ49が多数貫通して配設され、加熱用熱交換器51を構成している。そして、冷却用熱交換器47のうち、その下流側端から所定距離上流側に温度センサ53が埋め込まれている。このように構成することによって、加熱用熱交換器51の熱的影響を受けることなく冷却用熱交換器のフィン等の温度を測定することができる。
【0027】
図6は、本実施の形態の他の具体的例である熱交換器ユニット61を示す断面図である。この熱交換器ユニット61は、別体に構成された冷却用熱交換器63と加熱用熱交換器65とを空気流れに直列に隣接して配設したものである。冷却用熱交換器63は、複数枚平行して配設されたフィン63aとこれを貫通する複数本のチューブ63bを有しており、加熱用熱交換器65は、複数枚平行して配設されたフィン65aとこれを貫通する複数本のチューブ65bを有している。冷却用熱交換器63のうち、その下流側端から所定距離上流側に温度センサ53が埋め込まれている。このようにすることによって、加熱用熱交換器65の熱的影響を受けることなく冷却用熱交換器63の温度を測定することができる。
【0028】
図7は、上記熱交換器ユニット41を有する車両用空調装置70を模式的に示したものである。この図において、符号71は車室壁を示し、この車室壁71の外側にはダクトカバー73が設けられている。車室壁71の中央には、吸気口75が設けられおり、この吸気口75の両側には、一対の熱交換器ユニット41が配設されている。この熱交換器ユニット41は、その冷却用熱交換器47を内側に加熱用熱交換器51を外側にして配設されており、冷却用熱交換器47の下流端から所定の位置には温度センサ53が装着されている。さらに、この熱交換器ユニット41の外側にはブロワ77が設けられており、このブロワ77には、車室内に突出する吹出ダクト79が接続されている。
【0029】
このような構成において、ブロワ77を作動させると、車室内の空気は、吸気口75からダクトカバー73内に吸引され、熱交換器ユニット41を通過する。ここで、通過空気は、冷却用熱交換器47で冷却除湿され、その後加熱用熱交換器51で適温に加温される。そして、この除湿加温された空気は、ブロワ77から吹出口79を経て車室内に供給される。このような空調装置70にあっても、温度センサ53を冷却用熱交換器47の下流端から所定の位置に設置しているから、加熱用熱交換器の熱的影響を受けることなく、冷却用熱交換器の温度を測定することができ、したがって、確実に冷却用熱交換器の凍結を防止することができる。なお、上記実施の形態では、車両量空調装置70は一体型の熱交換器ユニット41を有しているが、これに限る必要はなく、別体型の熱交換器ユニット61を採用してもよい。
【0030】
以上説明したように、この空調装置31にあっては、空気流路に、冷却用熱交換器33と加熱用熱交換器35とを互いに離間することなく上流から下流にこの順に直列に配設し、冷却用熱交換器33の温度センサ37を冷却用熱交換器33の上流端と下流端との間の位置に配設しているから、温度センサ37が加熱用熱交換器35の熱的影響を受けずに正確な温度を測定することができ、したがって確実に冷却用熱交換器33の凍結を防止することができるとともに装置全体を小型にすることができる。
【0031】
また、一体型の熱交換器ユニット41を有する空調装置31にあっては、空気流路に沿って複数枚離間して配設されたプレート状フィン43と、この複数枚のプレート状フィン43を貫通する複数のチューブとを有し、この複数のチューブのうち空気流路上流側のチューブ45を冷却用熱交換器として使用し、空気流路下流側のチューブ49を加熱用熱交換器として使用しているから、部品点数を削減し低コストの空調装置を提供することができる。
【0032】
さらに、別体型の熱交換器ユニット61を有する空調装置31にあっては、別体に形成された冷却用熱交換器63と加熱用熱交換器65とを空気流路中に互いに離間することなく配置しているから、冷却用熱交換器63、加熱用熱交換器65の双方に付き熱交換容量を変更、組み合わせを自由に行うことができ、したがって適用範囲の広い空調装置を提供することができる。
【0033】
また、上記熱交換器ユニット41,61は、全体としてコンパクトに構成されているから、車室壁71外にダクトカバー73を設けて熱交換器等を収納するような空調装置70に対しても最適であり、空調装置全体を小型にすることができる。
【0034】
なお、上記熱交換器ユニット41、61において、いずれもプレート状フィンとチューブの組み合わせによる熱交換器を例に説明してるが、これに限る必要はなく、扁平管とフィンの組み合わせでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態である空調装置の概略構成を示す断面図。
【図2】空気流れ方向における冷却用熱交換器内の温度分布と、温度センサの位置を示す図。
【図3】冷却用熱交換器の凍結防止のための制御を示す図であって、(a)はその制御フローを示す図、(b)は温度センサによる検知温度と圧縮機の作動のサイクルを示す図。
【図4】一体型の熱交換ユニットを示す斜視図。
【図5】図4中V−V線に沿う断面を示す図。
【図6】別体型の熱交換ユニットを示す断面図。
【図7】熱交換ユニットを使用した車両用空調装置の概略を示す断面図。
【図8】冷却用熱交換器と加熱用熱交換器を有する従来の空調装置の概略構成を示す断面図。
【図9】冷却用熱交換器と加熱用熱交換器を有する従来の他の空調装置の概略構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0036】
31 空調装置
33 冷却用熱交換器
35 加熱用熱交換器
37 温度センサ
41 熱交換器ユニット
43 フィン
45 冷却用チューブ
49 加熱用チューブ
53 温度センサ
61 熱交換器ユニット
63 冷却用熱交換器
65 加熱用熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流路に、冷却用熱交換器(33)と加熱用熱交換器(35)とを上流から下流にこの順に直列に配設した空調装置において、
前記冷却用熱交換器(33)と前記加熱用熱交換器(35)とを離間することなく配設するとともに、温度センサ(37)を、前記冷却用熱交換器(33)の上流端と下流端との間の位置に配設したことを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記冷却用熱交換器(33)と前記加熱用熱交換器(35)は一体化された熱交換器(41)であり、この一体化された熱交換器(41)は、空気流路に沿って複数枚離間して配設されたプレート状フィン(43)と、この複数枚のプレート状フィン(43)のうち空気流路上流側を貫通する冷却用チューブ(45)と、この複数枚のプレート状フィン(43)のうち空気流路下流側を貫通する加熱用チューブ(49)とを有することを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記冷却用熱交換器(63)と前記加熱用熱交換器(65)は別体になされた熱交換器(61)を構成し、前記空気流路中に互いに離間することなく配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−55947(P2008−55947A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232337(P2006−232337)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】