説明

空調装置

【課題】車両用空調装置において、空気を加熱する能力を向上する。
【解決手段】室内コンデンサ5の熱交換用コア部51には、圧縮機7から吐出された高温高圧冷媒が流通する複数本の扁平チューブ56と、通電により発熱して空気を加熱する複数枚のヒータプレート14とを備える。このため、電子制御装置100は外気温が低いときに複数枚のヒータプレート14に通電するので、外気温が低いときに空気を加熱する能力を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱用熱交換器を備える空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置では、例えば特許文献1、2に示すように、エンジン冷却水により空気を加熱する加熱用熱交換器としてのヒータコアに、空気を加熱する電気発熱体を組み込んで、ヒータコアによる空気の加熱を電気発熱体により補うようにしたものがある。
【0003】
また、空調装置では、例えば特許文献3に示すように、圧縮機と、圧縮機から吐出される冷媒により空気を加熱する加熱用熱交換器としての室内熱交換器と、室内熱交換器からの冷媒を減圧する減圧器と、外気から吸熱して減圧器の下流側冷媒を蒸発する室外熱交換器とを備えるものがある。
【特許文献1】特開平5−69732号公報
【特許文献2】特開平10−288493号公報
【特許文献3】特開2004−106799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1、2に示す車両用空調装置では、加熱用熱交換器に流れるエンジン冷却水の温度が低いときには、電気発熱体から発生する熱がエンジン冷却水に奪われるため、空気を十分に加熱することができない。
【0005】
また、上述の特許文献3に示す空調装置では、外気温が極めて低い場合には室外熱交換器に霜が発生して室外熱交換器で吸熱を十分に行うことができなくなる場合がある。この場合、加熱用熱交換器により空気を十分に加熱することができない。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、加熱用熱交換器が空気を加熱する能力を向上するようにした空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空気が流れる空調ケーシング(1)と、前記空調ケーシング(1)内に配置され、かつ前記空気を加熱する熱交換コア(51)を有する加熱用熱交換器(5)とを備える空調装置であって、
前記熱交換コア(51)は、
圧縮機(7)から吐出された冷媒が流通し、この流通した冷媒により前記空気を加熱する複数本のチューブ(56)と、
通電により発熱して前記空気を加熱する電気発熱体(14)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、圧縮機からチューブに流れる冷媒により空気を加熱するので、エンジン冷却水の温度に関係なく、空気を加熱することができる。これに加えて、外気温が低くても、電気発熱体(14)により空気を加熱することができる。以上により、加熱用熱交換器が空気を加熱する能力を向上することができる。
【0009】
請求項2に係る発明では、前記複数本のチューブ(56)は、それぞれ、前記空気の流れ方向に交差する方向に延びるように形成されており、
前記電気発熱体(14)と前記複数本のチューブ(56)とが積層されて前記熱交換コア(51)を構成していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、前記熱交換コア(51)には、前記複数本のチューブ(56)の外表面に配置され、かつ前記冷媒が前記空気に放熱することを促進する熱交換フィン(57)が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、外気温を検出する温度センサ(91)と、
前記温度センサの検出温度が所定温度以下であるときに、前記電気発熱体(14)に通電して前記電気発熱体(14)を発熱させる通電制御手段(S100、S130)と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明では、前記圧縮機(7)と前記加熱用熱交換器との間を開閉する弁(12b)と、
前記弁(12b)が前記圧縮機の冷媒吐出口と前記加熱用熱交換器の冷媒入口との間を閉じているときに、前記電気発熱体(14)に通電して前記電気発熱体(14)を発熱させる通電制御手段(S110、S130)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1に本発明に係る車両用空調装置の第1実施形態の全体構成を示す。
【0015】
車両用空調装置は、図1に示すように、空調ユニット1を備える。空調ユニット1は、車室内前方側の計器盤下側に配置されている。空調ユニット1は、空調ケーシング2を備える。空調ケーシング2は、送風機(図示省略)から室内に吹き出す空気の通路を形成するダクト手段である。
【0016】
空調ケーシング2内には、室内熱交換器3、ヒータ4、および室内コンデンサ5が配置されている。室内熱交換器3は、室内コンデンサ5とともに蒸気圧縮式冷凍機20を構成するものであって、冷媒と送風機からの送風空気との間で熱交換する熱交換器である。
【0017】
ヒータ4は、走行用エンジンの廃熱を回収したエンジン冷却水を熱源として空気を加熱する熱交換器である。室内コンデンサ5は冷媒により送風機からの送風空気を加熱する熱交換器である。室内コンデンサ5には、後述するように電気発熱体としてのヒータプレートが内蔵されている。
【0018】
熱交換器3、4、5は、空調ケーシング2内の空気流れ上流側から空気流れ下流側に亘って、室内熱交換器3、ヒータ4、室内コンデンサ5の順に並べられている。
【0019】
空調ケーシング2のうちヒータ4と室内コンデンサ5との側方には、バイパス通路1aが設けられている。バイパス通路1aは、室内熱交換器3を通過した空気をヒータ4と室内コンデンサ5とを迂回して流す通路である。
【0020】
ヒータ4の空気流れ上流側には、回転自在に支持されているエアミックスドア6が設けられている。エアミックスドア6は、その開度の調整により、ヒータ4と室内コンデンサ5とを通過する空気量と、ヒータ4と室内コンデンサ5とを迂回する空気量との比を調整して車室内に吹き出す空気温度を調整する。エアミックスドア6は、サーボモータにより駆動される。
【0021】
蒸気圧縮式冷凍機20は、圧縮機7、室外熱交換器8、減圧器9a、9b、気液分離器10、および内部熱交換器11、四方弁12a、および電磁弁12b、12cを備える。
【0022】
圧縮機7は、冷媒を吸入し圧縮して吐出する。本実施形態では、圧縮機7として冷媒を圧縮する圧縮機構を電動モータにより駆動する電動圧縮機が用いられる。
【0023】
室外熱交換器8は、室外空気と冷媒との間で熱交換して冷媒を冷却する熱交換器である。減圧器9a、9bは、室外熱交換器8により冷却された冷媒を等エンタルピ的に減圧膨張させる減圧手段である。
【0024】
気液分離器10は、冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液相冷媒を余剰冷媒として蓄えるものであって、気相冷媒を圧縮機7の吸入側に供給する。
【0025】
内部熱交換器11は、室外熱交換器8の出口側冷媒が通過する第1冷媒通路11aと気液分離器10の出口側冷媒が通過する第2冷媒通路11bとを備える。 内部熱交換器11は、第1冷媒通路11aを通過する冷媒と第2冷媒通路11bを通過する冷媒との間で熱交換して減圧器9a、9bに流入する冷媒のエンタルピを低下させる。
【0026】
四方弁12aは、冷媒入口100、冷媒出入口101、102、および冷媒出口103を有するもので、入口100を出入口101、102のうち一方の出入口に接続し、一方の出入口以外の他の出入口に出口103を接続する電磁弁である。
【0027】
ここで、冷媒入口100は圧縮機7の冷媒吐出口側に接続されている。冷媒出入口101は、室内コンデンサ5側に接続されている。冷媒出入口102は室外熱交換器8側に接続されている。冷媒出口103は気液分離器10側に接続されている。
【0028】
電磁弁12bは、減圧器9bと室内コンデンサ5との間の冷媒通路を開閉する弁である。電磁弁12cは、減圧器9bと室内熱交換器3との間の冷媒通路を開閉する弁である。
【0029】
次に、本実施形態の室内コンデンサ5の構造について図2、図3を参照して説明する。
【0030】
図2は室内コンデンサ5を空気流れ上流側から視た斜視図であり、図3は室内コンデンサ5を空気流れ上流側から視た正面図である。図2中矢印Kは風流れ方向を示している。
【0031】
室内コンデンサ5は、図2、図3に示すように、熱交換用コア部51、ヘッダタンク52、53、およびモジュレータタンク54から構成されている。熱交換用コア部51は、複数本の扁平チューブ56、およびコルゲートフィン57を備えている。
【0032】
複数本の扁平チューブ56は、風流れ方向に直交する水平方向に延びるように形成されている。複数本の扁平チューブ56は、後述する複数本のヒータプレート14とともに上下方向に積層されている。複数本の扁平チューブ56は、それぞれ、冷媒を流通させて冷媒から空気に対して放熱させる。
【0033】
コルゲートフィン57は、波状に形成されて、扁平チューブ56の表面に配設されている放熱フィンである。コルゲートフィン57には、周知のごとく空気流れに対して所定角度で斜めに多数のルーバ(図示せず)が切り起こし成形されている。ルーバは、冷媒から空気への放熱を促進する。
【0034】
ヘッダタンク52は、各扁平チューブ56の右側に配置されている。ヘッダタンク52には、複数のチューブ孔(図示省略)が設けられている。ヘッダタンク52の各チューブ孔には、各扁平チューブ56の右側端部が嵌合されている。これにより、ヘッダタンク52と各扁平チューブ56とが連通することになる。
【0035】
ヘッダタンク52内には、セパレータ60が設けられている。セパレータ60は、ヘッダタンク52の内部空間を上側の空間60aと下側の空間60bとに分ける。
【0036】
ヘッダタンク52の下部にはコネクタ61が配置されており、コネクタ61はヘッダタンク52に冷媒配管を接続するために用いられる。この冷媒配管は電磁弁12bに接続されるものである。
【0037】
ヘッダタンク53は、各扁平チューブ56の左側に配置されている。ヘッダタンク53には、複数のチューブ孔(図示省略)が設けられている。ヘッダタンク53の各チューブ孔には、各扁平チューブ56の左側端部が嵌合されている。これにより、ヘッダタンク53と各扁平チューブ56とが連通することになる。
【0038】
ヘッダタンク53内には、セパレータ62a、62bが設けられている。セパレータ62a、62bは、ヘッダタンク52の内部で上下方向に並べられている。これにより、セパレータ62a、62bがヘッダタンク52の内部空間を3つのタンク室63a、63b、63cに分けることになる。
【0039】
ヘッダタンク53の上側には、コネクタ64が配置されている。コネクタ64はヘッダタンク53に冷媒配管を接続するために用いられる。この冷媒配管は四方弁12a側に接続されるものである。
【0040】
モジュレータタンク54は、ヘッダタンク53の左側に配置されている。モジュレータタンク54とタンク室63bとの間には貫通孔70が設けられている。
【0041】
モジュレータタンク54とタンク室63cとの間には貫通孔71が設けられている。モジュレータタンク54は、タンク室63bから貫通孔70を通して流入した冷媒を気液分離するとともに、気相冷媒を貫通孔71を通してタンク室63cに供給する。
【0042】
なお、熱交換用コア部51、ヘッダタンク52、53、およびモジュレータタンク54は、アルミニウム合金からなるのもので、ろう付けにより接合されている。
【0043】
次に、本実施形態のヒータプレート14の構造について説明する。
【0044】
複数本のヒータプレート14は、熱交換用コア部51を構成するもので、扁平チューブ56の長手方向に延びる長板状に形成されている。複数本のヒータプレート14は、ヘッダタンク52、53の間に配置され、ヘッダタンク52、53にろう付けにより接合されている。
【0045】
複数本のヒータプレート14は、複数本のヒータプレート14は、後述するように通電により発熱して空気を加熱する電気ヒータを構成する。本実施形態では、4枚のヒータプレート14が用いられており、4枚のヒータプレート14はほぼ等間隔で上下方向に配置されている。
【0046】
図4に図2中A部分の拡大図斜視図を示す。
【0047】
ヒータプレート14は、2枚の保持板15、16の間に配置されている。保持板15、16は、金属材料から形成され、扁平チューブ56の長手方向に延びるように形成されている。保持板15、16は、上下方向に間隔(図4中L)を開けて配置され、上下方向からヒータプレート14を狭持する。保持板15、16の外表面にはコルゲートフィン57が接合されている。
【0048】
ヒータプレート14の具体的な構造を図5に示す。図5(a)はヒータプレート14の一部破断斜視図、図5(b)はヒータプレート14の横断面図、図5(c)はヒータプレート14の縦断面図、図5(d)はヒータプレート14の平面図である。
【0049】
ヒータプレート14は、複数枚の発熱体素子14a、電極板14b、14c、および被覆部材14dから構成されている。
【0050】
複数枚の発熱体素子14aは、PTCヒータ素子であって、板状に形成されている。複数枚の発熱体素子14aは、電極板14b、14cの間に配置され、電極板14b、14cの長手方向に並べられている。
【0051】
複数枚の発熱体素子14aは、所定の設定温度(例えば、90℃付近)Toにて電気抵抗が急増する正の抵抗温度特性を有する抵抗体材料(例えば、チタン酸バリウム)からなる電気ヒータである。
【0052】
本実施形態では、4枚の発熱体素子14aが用いられている。発熱体素子14aの板厚方向の寸法は、1.0〜2.0mm程度である。
【0053】
電極板14b、14cは、扁平チューブ56の長手方向に延びるように形成されている。電極板14bは、複数枚の発熱体素子14aの上側に配置されており、
電極板14cは、複数枚の発熱体素子14aの下側に配置されている。
【0054】
すなわち、複数枚の発熱体素子14aおよび電極板14b、14cは、複数枚の発熱体素子14aを電極板14b、14cの間に挟む3層のサンドウィッチ構造になっている。
【0055】
ここで、電極板14bは正極側電極板であり、電極板14bには電気接続用端子部14eが一体成形されている。電極板14cは負極側電極板であり、電極板14cには電気接続用端子部14fが一体成形されている。電気接続用端子部14e、14fは、それぞれ、電子制御装置等の駆動回路に対する接続に用いられる。被覆部材14dは、電気的絶縁材料からなるもので、電極板14b、14cの周囲を全周に亘って被覆している。
【0056】
次に、車両用空調装置の電気的構成について図6を参照して説明する。
【0057】
車両用空調装置は、電子制御装置100を備えており、電子制御装置100は、マイクロコンピュータ、メモリ等から構成されている。電子制御装置100は、センサ90、91の出力信号と操作スイッチ92の出力信号とに基づいて、四方弁12a、電磁弁12b、12c、エアミックスドア6のサーボモータ25、および複数枚のヒータプレート14を制御する。
【0058】
センサ90は室内温度Trを検出する温度センサである。センサ91は外気温Tamを検出する温度センサである。操作スイッチ92は、車室内の設定温度Testと、空調モードとを設定するスイッチである。空調モードは暖房モードおよび冷房モードのうちいずれか一方が選択される。
【0059】
次に、本実施形態の作動として暖房モード、および冷房モードについて別々に説明する。
【0060】
(暖房モード)
電子制御装置100は、四方弁12aを制御して、冷媒入口100と冷媒出入口101とを接続し、かつ冷媒出入口102と冷媒出口103とを接続する。加えて、電子制御装置100は、電磁弁12bを開弁し、かつ電磁弁12cを閉弁する。
【0061】
これにより、圧縮機7から吐出された高温高圧冷媒が四方弁12a(冷媒入口100→冷媒出入口101)を経て、室内コンデンサ5に流入する。この室内コンデンサ5では、冷媒は空気により冷却される。
【0062】
その後、冷媒は電磁弁12bを通過すると、減圧器9bにより減圧される。その後、冷媒は内部熱交換器11の第1冷媒通路15aを通過して室外熱交換器8に流入する。
【0063】
室外熱交換器8では、冷媒は外気から吸熱して蒸発する。その後、冷媒は四方弁12a(冷媒出入口102→冷媒出口103)を通過して気液分離器10に流れる。この冷媒は、気液分離器10で気液分離され、気相冷媒が内部熱交換器11の第2冷媒通路15bを通過して圧縮機7の冷媒吸入口に吸入される。
【0064】
一方、送風機からの空気は室内熱交換器3を通過すると、エアミックスドア6により、ヒータ4側とバイパス通路1a側とに分流される。ヒータ4側に流入した送風は、ヒータ4においてエンジン冷却水により加熱され、この加熱された空気は室内コンデンサ5を通過する際に加熱される。室内コンデンサ5の具体的な作動については後述する。
【0065】
その後、室内コンデンサ5から吹き出される温風とバイパス通路1aを通過した送風とが混合されて車室内に吹き出される。
【0066】
次に、室内コンデンサ5の作動について説明する。
【0067】
室内コンデンサ5では、ヘッダタンク53の空間63a内に四方弁12a側からの高温高圧冷媒が流入すると、空間63aから各扁平チューブ56のうちセパレータ62aの上側の各扁平チューブ(以下、各上側扁平チューブという)56に冷媒を分流する。すると、冷媒が各上側扁平チューブ56のそれぞれに流れ、冷媒が放熱することになる。
【0068】
その後、各上側扁平チューブ56を流れた冷媒はヘッダタンク7の空間60aa内に回収される。空間60aから各扁平チューブ56のうちセパレータ62a、62bの間の各扁平チューブ(以下、各中間扁平チューブという)56に分流する。すると、冷媒が各中間扁平チューブ56のそれぞれに流れ、この流れる冷媒が放熱することになる。
【0069】
次に、各中間扁平チューブ56を流れた冷媒はヘッダタンク52の空間60bに回収される。そして、ヘッダタンク53の空間63bから貫通孔70を通して、モジュレータタンク54内に流入される。このモジュレータタンク54内では冷媒が気相冷媒と液相冷媒とに分離される。液相冷媒は貫通孔71を通してタンク室63c内に流入する。
【0070】
次に、空間63cから各扁平チューブ56のうちセパレータ62bの下側の各扁平チューブ(以下、各下側扁平チューブという)56に液相冷媒を分流する。すると、液相冷媒が各下側扁平チューブ56のそれぞれに流れ、液相冷媒が放熱する。
【0071】
その後、各下側扁平チューブ56を流れた液相冷媒はヘッダタンク52の空間60bに回収される。そして、この回収された液相冷媒は室内コンデンサ5から排出される。
【0072】
以上により、複数本の扁平チューブ56に流れる冷媒がヒータ4を通過した空気に放熱するので、ヒータ4を通過した空気を加熱することができる。
【0073】
(冷房モード)
電子制御装置100は、四方弁12aを制御して、冷媒入口100と冷媒出入口102とを接続し、かつ冷媒出入口101と冷媒出口103とを接続する。加えて、電子制御装置100は、電磁弁12bを閉弁し、かつ電磁弁12cを開弁する。
【0074】
これにより、圧縮機7から吐出された高温高圧冷媒が四方弁12a(冷媒入口100→冷媒出入口102)を経て、室外熱交換器8に流入する。この室外熱交換器8では、冷媒は空気により冷却される。その後、冷媒は内部熱交換器11の第1冷媒通路15aを通過して減圧器9aに流入する。
【0075】
この冷媒は減圧器9aにより減圧され、その後、冷媒は室内熱交換器3に流れる。室内熱交換器3では、冷媒が送風機からの送風空気を冷却する。室内熱交換器3を通過した冷媒は、四方弁12a(冷媒入口101→冷媒出口103)を経て気液分離器10に流入する。この冷媒は気液分離器10で気液分離された後、気相冷媒は、気相冷媒が内部熱交換器11の第2冷媒通路15bを通過して圧縮機7の冷媒吸入口に吸入される。
【0076】
ここで、第2冷媒通路11bを通過する冷媒は、第1冷媒通路11aを通過する冷媒との間で熱交換されて加熱される。これにより、室内熱交換器3における冷媒入口側と出口側との間の冷媒のエンタルピ差(冷凍能力)を増大させることができる。
【0077】
一方、室内熱交換器3で冷却された送風空気は、エアミックスドア6により、ヒータ4側とバイパス通路1a側とに分流される。ヒータ4側に流入した送風は、ヒータ4においてエンジン冷却水により加熱され、この加熱された空気は室内コンデンサ5を通過する。その後、室内コンデンサ5から吹き出される温風とバイパス通路1aを通過した送風とが混合されて車室内に吹き出される。
【0078】
以上のように作動する暖房モードおよび冷房モードにおいて、電子制御装置100は、次のように、ヒータプレート14の通電制御を実行する。以下、ヒータプレート14の通電制御について図7を参照して説明する。
【0079】
電子制御装置100は、図7のフローチャートにしたがって、通電制御を実行する。通電制御は繰り返し実行される。
【0080】
まず、ステップS100において、外気温が所定温度以下であるか否かを判定する。所定温度は−5℃〜0℃に設定されている。
【0081】
センサ91の検出外気温Tamが所定温度以下であるときにはステップS100でYESと判定して、ステップS130に移行する。
【0082】
センサ91の検出外気温Tamが所定温度未満であるときにはステップS100でNOと判定して、ステップS110において、電磁弁12bが閉弁しているか否かを判定する。
【0083】
電磁弁12bが閉弁されて室内コンデンサ5に冷媒が流れていないときにはステップS110においてNOと判定してステップS130に移行する。
【0084】
このようなステップS130では、4枚のヒータプレート14をそれぞれオンする。
【0085】
具体的には、4枚のヒータプレート14の電極板14b、14cの間に電圧を印加する。すると、電極板14b、14cの間の複数枚の発熱体素子14aに電流が流れる。これに伴い、複数枚の発熱体素子14aは発熱して空気に放熱する。
【0086】
ここで、複数枚の発熱体素子14aは、設定温度Toになると電気抵抗が急増して複数枚の発熱体素子14aに電流が流れ難くなる。このため、複数枚の発熱体素子14aから発生する熱量が減る。
【0087】
その後、複数枚の発熱体素子14aの温度は設定温度Toより低くなると、複数枚の発熱体素子14aの電気抵抗値が低くなり、複数枚の発熱体素子14aに流れる電流値が増加する。これに伴い、複数枚の発熱体素子14aから発生する熱量が増える。
【0088】
このように、発熱体素子14aの電気抵抗値の変化に伴って、複数枚の発熱体素子14aから発生する熱量が増減する。これにより、発熱体素子14aの温度を設定温度To付近に維持することができる。
【0089】
一方、電磁弁12bが開弁されて室内コンデンサ5に冷媒が流れているときにはステップS110においてYESと判定してステップS120に移行する。このとき4枚のヒータプレート14に対する電圧の印加を停止する。
【0090】
以上説明した本実施形態によれば、室内コンデンサ5の熱交換用コア部51には、圧縮機7から吐出された高温高圧冷媒が流通し、この流通した冷媒により空気を加熱する複数本の扁平チューブ56と、通電により発熱して空気を加熱する複数枚のヒータプレート14とを備える。このため、電子制御装置100は外気温が低いときに複数枚のヒータプレート14に通電するので、外気温が低いときに空気を加熱する能力を向上することができる。
【0091】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、空調ユニット1にヒータ4を用いた例を示したが、図9、図10に示すように、ヒータを除いて空調ユニット1を構成してもよい。
【0092】
図9は暖房モード時の状態を示し、図10は冷房モードの状態を示している。
【0093】
図9において図1と同一符号は同一のものを示しその説明を省略する。図10において図1と同一符号は同一のものを示しその説明を省略する。
【0094】
(他の実施形態)
上述の第1、第2の実施形態では、空調装置を車両用空調装置に適用した例を示したが、これに代えて、空調装置を設置型空調装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の構成を示す図である。
【図2】図1の室内コンデンサの斜視図である。
【図3】図1の室内コンデンサの正面図である。
【図4】図2中A部分の拡大図斜視図である。
【図5】図2中のヒータプレートの詳細構造を示す図である。
【図6】車両用空調装置の電気的構成を示す図である。
【図7】第1実施形態における車両用空調装置の構成を示す図である。
【図8】図6の電子制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態における車両用空調装置の構成を示す図である。
【図10】第2実施形態における車両用空調装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1 空調ユニット
2 空調ケーシング
3 室内熱交換器
4 ヒータ
5 室内コンデンサ
6 エアミックスドア
7 圧縮機
8 室外熱交換器
9a 減圧器
9b 減圧器
10 気液分離器
11 内部熱交換器
12b 電磁弁
12c 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流れる空調ケーシング(1)と、前記空調ケーシング(1)内に配置され、かつ前記空気を加熱する熱交換コア(51)を有する加熱用熱交換器(5)とを備える空調装置であって、
前記熱交換コア(51)は、
圧縮機(7)から吐出された冷媒が流通し、この流通した冷媒により前記空気を加熱する複数本のチューブ(56)と、
通電により発熱して前記空気を加熱する電気発熱体(14)と、
を備えることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記複数本のチューブ(56)は、それぞれ、前記空気の流れ方向に交差する方向に延びるように形成されており、
前記電気発熱体(14)と前記複数本のチューブ(56)とが積層されて前記熱交換コア(51)を構成していることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記熱交換コア(51)には、前記複数本のチューブ(56)の外表面に配置され、かつ前記冷媒が前記空気に放熱することを促進する熱交換フィン(57)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の空調装置。
【請求項4】
外気温を検出する温度センサ(91)と、
前記温度センサ(91)の検出温度が所定温度以下であるときに、前記電気発熱体(14)に通電して前記電気発熱体(14)を発熱させる通電制御手段(S100、S130)と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項5】
前記圧縮機(7)と前記加熱用熱交換器(5)との間を開閉する弁(12b)と、
前記弁(12b)が前記圧縮機(7)の冷媒吐出口と前記加熱用熱交換器(5)の冷媒入口との間を閉じているときに、前記電気発熱体(14)に通電して前記電気発熱体(14)を発熱させる通電制御手段(S110、S130)と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−904(P2010−904A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161419(P2008−161419)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】