説明

空調装置

【課題】マイクロプラズマを用いた除菌において、より高い効果を発揮でき、メンテナンス性にも優れた空調装置を提供することにある。
【解決手段】送風手段103の働きにより、空調対象空間101内の気体を処理空間104に吸引して空調対象空間101に戻す送風路130を備えた空調装置であって、処理空間104に配設されるマイクロプラズマ発生手段6と、マイクロプラズマ発生手段6に送られる気体を加湿する加湿手段115とを備え、マイクロプラズマ発生手段6に到達する気体を、加湿手段115により加湿して、マイクロプラズマ発生手段6で発生するマイクロプラズマの除菌能を維持できる好適湿度範囲に維持する湿度調整手段116を備えた空調装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風手段の働きにより、空調対象空間内の気体を処理空間に吸引して前記空調対象空間に戻す送風路を備えた空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置の役割として、人の生活環境の質を向上させることがその1つに挙げられる。この目的のためには、温度や湿度の制御による快適性の向上だけでなく、人体に害を及ぼす空気中の菌あるいはウイルスを減少させることが望ましい。また、ホルムアルデヒドに代表される揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds;VOC)や空気中の臭い成分は人に健康被害を及ぼしたり、不快感を与えたりするために問題となっており、空気中のこれら成分の低減も強く要望されている。
【0003】
従来、こうした目的のために、除加湿による菌・ウイルスの繁殖抑制や、フィルタを搭載した空気清浄機による除去が行われてきた。VOCや臭い成分については、薬剤散布によるマスキングや、活性炭などによる臭い吸着が用いられている。
【0004】
これら従来技術に対し、近年、菌やウイルス、VOCや臭い成分などあらゆる汚染物質に対して効果を持つとして注目されている方法に、プラズマによる空気清浄技術がある。これは大きく分けて2タイプあり、一つはプラズマにより発生する活性種を空気中に放散するタイプ(以下、活性種放散タイプと呼ぶ。)、もう一つは浄化対象の空気が直接放電空間を通過するように構成するタイプ(以下、放電空間通過処理タイプと呼ぶ。)である。
【0005】
活性種放散タイプによる殺菌は、装置内で発生したオゾン、イオン等の比較的長寿命の活性種が空気中に放散され、汚染物質に衝突したときに分子構造を変化させ、失活あるいは脱臭に導くというメカニズムである。これら活性種は、大気中でプラズマ放電を起こすことによって発生させることが可能であり、この原理に基づく装置が、特許文献1に提案されている。また放電空間通過処理タイプによる殺菌は、プラズマ放電空間に直接汚染空気を導入し、特に短寿命で強力な活性種による殺菌および電撃殺菌を行うというメカニズムである。この原理に基づく装置が、特許文献2に開示されている。これらの技術は電気と空気中の水分子などを原料とし、薬剤を別途準備する手間を必要とせず、またフィルタも必要としないためにメンテナンス性がよいという利点があり、様々な空調機器に搭載されている。
【0006】
プラズマを形成させるデバイスは、特許文献1及び2に示されるように、誘電体で導電性電極表面の一部を保護してつくられる沿面放電型のデバイスや、対向電極の片側を針状にしてコロナ放電を誘発するデバイスが存在する。
【0007】
その他に、特許文献3に示すように、10〜100μmオーダーのギャップをとった対向平板電極間に電界を印加することでプラズマを発生させるマイクロプラズマ装置がある。このデバイスでは、対向する両平板電極の面積分の大きさだけ放電空間が広がっており、ランダムに生成されるストリーマ放電によって効率よく大気分子が電離や電子移動反応を起こし、オゾン、イオン、ラジカルなどの活性種を大量に発生させる。同時に、放電空間通過処理タイプとして利用する場合には、被処理空気の流量を多くとれる利点がある。またこのデバイスの長所は、平板電極を用いることで電極の局所的な材料劣化が防止されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−095731号公報
【特許文献2】特開2002−336689号公報
【特許文献3】特開2009−78266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示す活性種放散タイプの技術は、プラズマにより発生させた活性種を菌・ウイルス・臭い成分と反応させるとしているが、居住空間で運転する場合、人体に害のない範囲で活性種を放散させなければならないという制約があるため、強力な効果は見込めない。また、特許文献2に示す放電空間通過処理タイプは放電空間に汚染空気を通すことで電撃やラジカルなどの強力な浄化因子に触れさせることを狙っているため、殺菌性は高いと考えられるが、処理空気量が放電範囲に限定されるという問題がある。
【0010】
一方、従来のフィルタや吸着材による汚染物質除去は、フィルタや吸着材は時間が経つと飽和へと向かうため、定期的な交換が必要である。また、薬剤散布は薬剤の補填が不可欠であるという点で手間を要する。そのため、メンテナンス性の高い除菌技術が要望されている。
【0011】
本発明は上記状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイクロプラズマを用いた除菌において、より高い効果を発揮でき、メンテナンス性にも優れた空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る送風手段の働きにより、空調対象空間内の気体を処理空間に吸引して前記空調対象空間に戻す送風路を備えた空調装置の特徴構成は、前記処理空間に配設されるマイクロプラズマ発生手段と、前記マイクロプラズマ発生手段に送られる気体を加湿する加湿手段とを備え、前記マイクロプラズマ発生手段が、前記気体の流れ方向を横断して互いに略平行に配置される一対の電極板と、前記電極板にプラズマ発生用の電圧を印加する電圧印加装置とを備えて構成されるとともに、前記一対の電極板の夫々に、前記気体が通過可能な貫通孔を前記電極板の厚み方向に形成して構成され、前記一対の電極板の対向する表面の少なくとも一方に誘電体層が形成され、前記マイクロプラズマ発生手段に到達する前記気体を、前記加湿手段により加湿して、前記マイクロプラズマ発生手段で発生するマイクロプラズマの除菌能を維持できる好適湿度範囲に維持する湿度調整手段を備えた点にある。
【0013】
この特徴構成によれば、加湿手段によって、マイクロプラズマ発生手段に送られる気体は、適切に加湿される。このとき湿度調整手段によって、加湿手段はマイクロプラズマの除菌能を維持できる好適な湿度範囲となるように気体を加湿する。よって、マイクロプラズマ発生手段の除菌効率を高めることが出来る。また、マイクロプラズマに送られる気体は複数の貫通孔を通過することで処理されるため、被処理気体の流量を多くとれるとともに、平板に配置される電極を用いるため、電極の局所的な材料劣化が防止される。よって、この特徴構成によれば、マイクロプラズマを用いた除菌において、より高い効果を発揮でき、メンテナンス性にも優れた空調装置を提供することができる。
【0014】
ここで、前記マイクロプラズマ発生手段に送られる気体の温度を調整する温度調整手段を備え、前記湿度調整手段は、前記加湿手段及び前記温度調整手段を働かせて、前記加湿手段により加湿された前記気体が前記マイクロプラズマ発生手段で結露を発生しない温湿度に、前記気体を調整すると好適である。
【0015】
この構成によれば、マイクロプラズマ発生手段に送られる気体の温度と湿度の両方を調整することができるので、結露の発生を抑制してマイクロプラズマを良好に発生しながら、マイクロプラズマを用いた除菌において、より高い効果を発揮できる空調装置を提供することができる。
【0016】
また、前記気体が前記貫通孔を通過後、所定時間の間、前記処理空間内に滞留する滞留空間を備えると好適である。
【0017】
ここで、発明者らは、鋭意研究の結果、マイクロプラズマ発生手段により生成した活性種と浮遊菌との混合気体において、浮遊菌の死滅率は、混合直後よりも混合後所定時間経過させた場合の方が高くなることを見出した。すなわち、発明者らは、マイクロプラズマ発生手段により生成した活性種による除菌効果を高める為には、除菌対象の気体と活性種とが混合された後、活性種の除菌効果が高まる程度の時間、滞留させる必要があるとの結論に到った。この結論は発明者らが初めて見出した新知見である。この点、この構成によれば、マイクロプラズマ発生手段に送られた気体が、貫通孔の通過後、マイクロプラズマ発生手段により生成した活性種と所定時間混在する状態を実現する。よって、マイクロプラズマを用いた除菌において、より高い効果を発揮できる空調装置を提供することができる。
【0018】
また、前記気体の流れ方向で前記マイクロプラズマ発生手段より下流側にオゾン分解除去手段を備えると好適である。
【0019】
この構成によれば、マイクロプラズマ発生手段により生成されたオゾンは、除菌された気体とともにオゾン分解除去手段に導かれ、オゾン分解除去手段により無害な酸素分子に変化する。よって、オゾンが空調装置の外部に流出することを抑制することができる。しかも、オゾンは酸素分子に変化する過程で酸素原子として存在するため、オゾン分解除去手段に導かれた気体は、当該酸素原子によってもさらに除菌される。すなわち、オゾン分解除去手段を設けることで、マイクロプラズマ発生手段を用いて気体の除菌を行う際にオゾンが生成されるという課題を解決できるとともに、気体の除菌効果を高めることが可能となる。よって、マイクロプラズマを用いた除菌において、より一層高い効果を発揮できる空調装置を提供することができる。
【0020】
また、前記加湿手段が、前記送風路にミストを噴霧して前記気体を加湿する、又は前記空調対象空間内にミストを噴霧して前記気体を加湿すると好適である。
【0021】
この構成によれば、マイクロプラズマ発生手段に送られる気体を加湿するために必要な機構としては、ミストを噴霧するだけで良いので、空調装置の製造コストを抑えることが出来る。また、ミストの噴霧場所は送風路又は空調対象空間内のいずれでも構わないので、空調装置の設計の自由度を高めることが出来、メンテナンス性にも優れた空調装置を提供することができる。
【0022】
また、吸引口より前記空調対象空間内の気体を吸引して、吐出口から前記空調対象空間に戻す吸引ファンと、前記吸引口より吸引した気体を加熱する加熱手段と、を備え、前記マイクロプラズマ発生手段が、前記加熱手段の下流側で、前記吐出口との間に設けられ、前記加湿手段が、前記空調対象空間にミストを噴霧して加湿するミスト噴霧手段であり、前記湿度調整手段は、前記加熱手段と前記ミスト噴霧手段とを働かせて、前記マイクロプラズマ発生手段に送られる前記気体を、前記ミスト噴霧手段により加湿して、前記好適湿度範囲に維持すると好適である。
【0023】
この構成によれば、ミスト噴霧手段によりマイクロプラズマ発生手段に好適湿度範囲に調整された気体を送ることができ、マイクロプラズマ発生手段により効果的に活性種を発生させることができるとともに、空調対象空間の湿度を調整し快適な空間とすることができる。
【0024】
また、前記湿度調整手段は、前記気体の湿度を50%RH以上90%RH以下の前記好適湿度範囲に維持すると好適である。
【0025】
ここで、好適湿度範囲としては、より好ましくは、70%RH以上85%以下の範囲とすると良い。この構成によれば、最も効果的にマイクロプラズマ発生手段により活性種を発生させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一実施形態に係る空調装置の模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るマイクロプラズマ発生手段の概略図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る空調装置の模式図である。
【図4】マイクロプラズマを用いた実験の装置構成を示す図である。
【図5】マイクロプラズマによる浮遊菌の除菌効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
人が生活する建造物の空調システムは、大きく分類して個別空調システムと全館空調システムとがある。個別空調システムは、一室ごとに空調機器を設置し空調するものであり、全館空調システムは、複数の部屋を一つの空調機器で一斉に空調するものである。全館空調システムの最も一般的な手法としては、建造物内の各部屋に繋がるダクトを設け、そのダクトで連結された部屋を大型空調機で一斉に空調するものがある。このような手法は、集合住宅やビルなどの部屋数の多い建造物でよく導入されている。全館空調システムで用いられるダクトは天井、壁の内側、床下などの居住スペース外に配置されるという特徴がある。
【0028】
以下では、まず、第一実施形態として、全館空調システムに用いられるダクト内にマイクロプラズマ発生装置を始めとする各種装置を取り付け、本発明に係る空調装置として構成した実施形態を説明する。
【0029】
次に、第二実施形態として、個別空調システムの一例である浴室暖房乾燥機にマイクロプラズマ発生装置を始めとする各種装置を取り付け、本発明に係る空調装置として構成した実施形態を説明する。
【0030】
〔第一実施形態〕
1.空調装置の概略構成
本実施形態における空調装置102は、図1に示すように、例えばビルなどの建造物内において、室内101の換気を行うために天井に設けられたダクト130を装置の筐体として備えるとともに、ダクト130内部に設置されたマイクロプラズマ発生装置6、換気ファン103、及び後述する各種機器で構成されている。ダクト130は、換気ファン103の働きにより室内101の空気を吸引するための吸引口121と、吸引された空気を室内101に戻すための吐出口122とにより、室内101と連通している。よって、ダクト130は、本発明における『送風路』としての役割をも果たす。
【0031】
本実施形態では、室内101が本発明における『空調対象空間』に相当し、マイクロプラズマ発生装置6が本発明における『マイクロプラズマ発生手段』に相当し、換気ファン103が本発明における『送風手段』に相当し、室内101の空気が本発明における『気体』に相当する。また、ダクト130内部の吸引口121から吐出口122へと流れる空気の流通方向に基づき、以下では、吸引口121側を「上流側」、吐出口122側を「下流側」と呼ぶ。
【0032】
換気ファン103は、マイクロプラズマ発生装置6より上流側に設けられている。換気ファン103は、マイクロプラズマ発生装置6に室内101の空気を送るとともに、マイクロプラズマ発生装置6で発生するイオンやラジカルなどの活性種をダクト130内部の一定範囲(マイクロプラズマ発生装置6の下流側)に拡散させる。このようなにして、マイクロプラズマ発生装置6で発生する活性種を空気と混合、反応させることで、空調装置102はダクト130内部を流れる空気の浄化を行う。ここで、マイクロプラズマ発生装置6で発生する活性種と空気とが相互作用し、空気の浄化処理が行われる空間を処理空間104と呼ぶ。具体的には、処理空間104は、ダクト130内部において、マイクロプラズマ発生装置6の近傍、及びマイクロプラズマ発生装置6から吐出口122に至るまでの空間である。すなわち、マイクロプラズマ発生装置6は処理空間104内に配設されている。
【0033】
ここで、後述する実験結果に示すように、マイクロプラズマ発生装置6において効率的に活性種を発生させるためには、マイクロプラズマ発生装置6に送られる空気は適度に加湿されていることが望ましいことが分かっている。また、活性種によって、より高い除菌効果を得るためには、活性種と空気とが長時間混在された状態にあることが望ましい。加えて、マイクロプラズマ発生装置6は放電電圧を上昇させることにより、放電空間での電離が促進され、活性種が大量に発生することが知られている。
【0034】
そこで、本実施形態における空調装置102は、マイクロプラズマ発生装置6に送られる空気の湿度を調整するため、当該空気を加湿するためのミストノズル115と、当該空気の温度を調整するための熱交換器107とを備える。さらに、ミストノズル115及び熱交換器107を制御するための制御手段116を備えている。また、マイクロプラズマ発生装置6で発生した活性種と空気とが長時間混在する状態におかれるように、マイクロプラズマ発生装置6はダクト130内において上流側寄りに配置されており、マイクロプラズマ発生装置6の下流側には、空気と活性種とが混在する状態で所定時間の間、処理空間104内に滞留するように滞留空間117が形成されている。また、マイクロプラズマ発生装置6の放電電圧を上昇させた場合、オゾンの発生量も増加するため、マイクロプラズマ発生装置6の下流側には、オゾン分解除去触媒フィルタ13が設けられている。以下では、これら装置類の構成について上流側から順に説明する。
【0035】
なお、本実施形態では、ミストノズル115が本発明における『加湿手段』に相当し、熱交換器107が本発明における『温度調整手段』に相当し、制御手段116が本発明における『湿度調整手段』に相当し、オゾン分解除去触媒フィルタ13が本発明における『オゾン分解除去手段』に相当する。
【0036】
2.各機器類の構成
2−1.ミストノズル
空調装置102には、ダクト130内を流れる空気を加湿するために、ダクト130内にミストを散布するミストノズル115が設けられている。ミストノズル115は、図示しない熱源機と接続されており、当該熱源機から供給される温水又は水をミスト状にしてダクト130内に散布するように構成されている。ミストノズル115は、ダクト130内において最上流側に設けられている。具体的には、マイクロプラズマ発生装置6及び換気ファン103よりも上流側に設けられている。
【0037】
上記熱源機は、室外に設置され、空調装置102に対して温水を循環供給するように構成されている。また、詳述しないが、温水を循環供給する機能に加え、ミストノズル115及び室内101の一般給湯栓などに対する給湯機能も有している。
【0038】
また、ミストノズル115の近接位置には湿度センサ124(湿度取得手段)が備えられており、ミストノズル115により加湿される空気の湿度を検出可能に構成されている。本実施形態では、湿度センサ124は、ミストノズル115の上流側近傍で、ミストノズル115によって散布されるミストがかからない位置に設けられている。ミストノズル115と湿度センサ124とは、後述するように、制御手段116によってダクト130内に吸引された空気を適切に加湿するように制御される。
【0039】
2−2.熱交換器
マイクロプラズマ発生装置6に、湿度の高い空気を送る場合、当該空気により電極板8表面で結露が起きると、結露水により一対の電極板8間が導通し、マイクロプラズマを発生できなくなる怖れがある。そのため、空調装置102は、マイクロプラズマ発生装置6へと供給される空気がマイクロプラズマ発生装置6において結露を起こさない程度の温湿度となるように、ミストノズル115に加え、空気を加熱するための熱交換器107を備えている。熱交換器107は、ダクト130において、空気の流れ方向に対して、マイクロプラズマ発生装置6の上流側に位置するように設けられている。すなわち、換気ファン103の働きにより、ダクト130内に吸引された空気が、熱交換器107を通過した後に、マイクロプラズマ発生装置6内の処理空間4を通過するように構成されている。熱交換器7は、熱源機から供給される温水と、ダクト130内に吸引された空気と、を熱交換するように構成されている。
【0040】
また、熱交換器107の近接位置には温度センサ127(温度取得手段)が備えられており、熱交換器107により加熱される空気の温度を検出可能に構成されている。本実施形態では、温度センサ127は熱交換器107の上流側で、換気ファン103よりも下流側の位置に設けられている。熱交換器107と温度センサ127とは、後述するように、制御手段116によってダクト130内に吸引された空気を適切に加熱するように制御される。
【0041】
2−3.制御手段
空調装置102は、マイクロプラズマ発生装置6に送られる空気を、ミストノズル115により加湿するとともに、熱交換器107で加熱することで、マイクロプラズマ発生装置6で発生するマイクロプラズマの除菌能を好適に維持できる好適湿度範囲に維持するための制御手段116を備えている。制御手段116は、湿度センサ124、ミストノズル115、換気ファン103、熱交換器107、及び温度センサ127と電気的に接続されている。本実施形態においては、制御手段116が本発明における『湿度調整手段』に相当する。
【0042】
制御手段116は、換気ファン103が動作している場合に、湿度センサ124及び温度センサ127の出力情報に基づいて、ミストノズル115及び熱交換器107を働かせ、ミストノズル115で加湿された空気が、マイクロプラズマ発生装置6において結露を発生させないように空気の温湿度を調整する。湿度の調整にあたっては、ダクト130に吸引された空気が乾燥状態にあり、マイクロプラズマ発生装置6において結露する心配がない場合には、熱交換器107を働かせないなど、ミストノズル115と熱交換器107とは適宜制御すると良い。マイクロプラズマ発生装置6に送る空気の湿度は、50%RH以上90%RH以下の範囲、より好ましくは70%RH以上85%RH以下であると良い。この範囲(好適湿度範囲)に維持すると、マイクロプラズマ発生装置6において最も活性種を大量に発生させることが出来、好適である。
【0043】
2−4.マイクロプラズマ発生手段
マイクロプラズマ発生装置6は、図2に示すように、一対の電極板8及び高周波電源9により構成されている。マイクロプラズマ発生装置6を構成する一対の電極板8は、ハウジング60、61により固定支持されている。具体的には、ハウジング60、61は、一対の電極板8を挟持した状態で、ボルト62及びナット63より成る締結機構により互いに締結固定されている。除菌対象の流体である空気は、ハウジング60、61の内部に形成された空間を、図2に破線矢印で示す方向に流れる。
【0044】
ここで、マイクロプラズマ発生装置6は、図1に示すように、ダクト130内における空気の流通方向と、マイクロプラズマ発生装置6内部を流れる空気の流通方向が一致するようにダクト130内に固定されている。また、本実施形態においては、ダクト130内を流れる空気が全量、マイクロプラズマ発生装置6内に導かれるように、ハウジング60、61の外周面とダクト130の内周面とが一致するように構成されている。マイクロプラズマ発生装置6は、ダクト130内において熱交換器107と吐出口122との間に設けられている。
【0045】
ところで、マイクロプラズマ発生装置6が設けられるダクト130内部は、基本的に人が侵入することはないため、マイクロプラズマ発生装置6により高濃度かつ強力な活性種を発生させることができる。すなわち、本実施形態においては、電極板8に印加する電圧を高くして、電極板8間の間に形成される空間である放電空間での電離を促し、マイクロプラズマによる活性種を大量に発生させて構わない。
【0046】
マイクロプラズマ発生装置6は、図2に示すように、ダクト130内における空気の流通方向を横断して互いに略平行に配置される一対の電極板8と、電極板8にプラズマ発生用の電圧を印加する高周波電源9とを備えて構成されるとともに、一対の電極板8の夫々に、除菌対象の流体である空気が通過可能な貫通孔10を電極板8の厚み方向に形成して構成されている。本実施形態では、高周波電源9が本発明における『電圧印加装置』に相当する。また、詳細は後述するが、一対の電極板8の対向する表面には誘電体膜(図示せず)が形成されている。高周波電源9と一対の電極板8のそれぞれとは電気配線により電気的に接続されている。そして、一対の電極板8間に高周波電源9から交流電圧を印加することで、一対の電極板8間にストリーマ形式の誘電体バリア放電を生起させ、マイクロプラズマを生成することができる。このマイクロプラズマにより生成された活性種(OHラジカルやO原子と考えられる)が、一対の電極板8に形成された貫通孔10を通過する空気の流れにより、ダクト130内を所定時間滞留するように滞留空間117に散布される。
【0047】
電極板8は、大気圧中でマイクロプラズマを発生させるための電極として用いるため、高温での耐酸化性を有する各種のステンレス鋼で形成されたものを用いるのが好ましい。このようなステンレス鋼としては、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼(martensitic stainless steels)、フェライト系ステンレス鋼(ferritic stainless steels)、オーステナイト系ステンレス鋼(austenitic stainless steels)、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼(austenitic-ferritic stainless steels)、析出硬化系ステンレス鋼(precipitation hardening stainless steels)等がある。なお、ステンレス鋼以外の金属を用いて電極板8を形成しても良い。ここで、電極板8の板厚(図2における空気の流通方向の厚み)は、1mm以上とするのが好ましい。
【0048】
電極板8には空気が通過可能な貫通孔10が厚み方向に複数形成されている。本実施形態では、貫通孔10は、断面形状が円形であり、平面視で六方格子(三角格子、60度千鳥)状に配置されている。複数の貫通孔10は同一の孔径φを有しており、貫通孔10間に位置する電極板部分に関し、隣接して配置される貫通孔10間の最小離間長さsは、貫通孔10によらず一定の値となっている。電極板8に形成される貫通孔10の孔径φは、1.5mm以上3mm以下とするのが好ましい。従って、この構造のマイクロプラズマ発生装置6は流路抵抗が低い。
【0049】
本実施形態に係るマイクロプラズマ発生装置6は、一対の電極板8間に誘電体バリア放電を生起させマイクロプラズマを発生させる。そのため、一対の電極板8の互いに対向する面のうち少なくとも一方の面には誘電体膜(図示せず)を形成することになる。そこで、電極板8に隣接して配設される貫通孔10間に位置する電極板部分に関し、隣接して配設される貫通孔10間の最小離間長さsは、少なくとも1mmとするのが好ましい。
【0050】
先にも述べたように、電極板8の表面には誘電体膜が形成されている。本実施形態では、上記のように、一対の電極板8間に誘電体バリア放電を生起させるため、一対の電極板8の互いに対向する面のうち少なくとも一方の面或いは双方の面には誘電体膜を形成することとなる。また、これらの面に加え、貫通孔10の内周面にも誘電体膜を形成する構成としてもよい。このように誘電体膜を形成することで、一対の電極板8間に安定してマイクロプラズマを発生させることができる。誘電体膜の膜厚は、例えば、50μm以上500μm以下とすることが好ましい。また、誘電体膜は、例えば、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、Y23、PbZrO3−PbTiO3、BaTiO3、TiO2、ZnO等や、これらの複合酸化物により構成することができる。
【0051】
本実施形態では、一対の電極板8は、電極板8の周縁部に沿う形状の円環状のスペーサ(図示せず)を間に挟持した状態で互いに固定されている。このスペーサは一様の厚みを有しており、一対の電極板8は互いに略平行になるように配置される。よって、一対の電極板8間に形成される空隙の板面に直交する方向の長さdは、このスペーサの厚みにより厳密に定められる。一対の電極板8をこのように配設することで、一対の電極板8間に形成される空隙を板面に沿う方向において略均一にすることができ、誘電体バリア放電を均一に安定して発生させることが可能となっている。スペーサの厚みは、例えば、5〜500μm以下の値から選択することができる。この時、上記の長さdも少なくとも500μm以下となり、一対の電極板8間に印加する交流電圧の波高値を1000V程度と比較的低い値としても、マイクロプラズマを発生させることができる。この場合、一対の電極板間に波高値が1000V以上の交流電圧が印加される構成とすると好適である。このようなスペーサは、例えば、ポリエチレン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂等の合成樹脂やセラミックス等の絶縁材料により形成することができる。
【0052】
なお、一対の電極板8の互いに対向する面の双方に誘電体膜が形成され、当該誘電体膜が電極板8の板面に直交する方向(厚み方向)に凹凸(例えば、5μm以上50μm以下の高低差を有する凹凸)を有する場合には、上記のスペーサを介さずに一対の電極板8を積層するように互いに固定する構成としても好適である。この場合、上記の凹凸により形成される間隙において誘電体バリア放電が生じるため、一対の電極板8間にマイクロプラズマを発生させることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、一対の電極板8は同じ構成のものであり、一対の電極板8は、板面に直交する方向からみて、双方の電極板8に形成された貫通孔10同士が全体として互いに重なり合うように円周方向に位置決めされ、互いに固定されている。そのため、図2に示すように、除菌対象の空気は貫通孔10の間を通過することができ、除菌対象の空気の流れを大きく阻害することなく一対の電極板8を厚さ方向に近接して配置することができる。その結果、マイクロプラズマを発生させるために一対の電極板8間に印加することが必要となる電圧の大きさを低く抑えることができ、少ない消費電力で効率的にマイクロプラズマ発生装置6にマイクロプラズマを発生させることが可能な構成となっている。
【0054】
2−5.滞留空間
空調装置102は、マイクロプラズマ発生装置6をダクト130において上流側寄りに配置している。すなわち、マイクロプラズマ発生装置6はダクト130内において吐出口122より吸引口121に近い位置に設けられている。より具体的には、ダクト130に吸引された空気がマイクロプラズマ発生装置6の電極板8に設けられた貫通孔10を通過後、電極板8から吐出口122(又は後述するオゾン分解除去触媒フィルタ13)までの間の活性種が存在し得る空間に所定時間の間、滞留できるように、マイクロプラズマ発生装置6の位置が決められる。図示する例では、ダクト径Dに対して同一径のダクトを、その流路長でダクト径Dの7倍程度(6.5〜7.5倍)とっている。ここで、電極板8に供給される気体の線速は約2.5m/sとしている。なお、この値は、一般的な空気清浄機における線速と略一致する。このように、意図的にマイクロプラズマ発生装置6から吐出口122までの距離を長くとることで、空気が所定時間滞留するように空調装置102を構成している。ここで、マイクロプラズマ発生装置6の電極板8から吐出口122までの間の空間を『滞留空間117』と呼ぶ。
【0055】
空調装置102に、滞留空間117が形成されることにより、マイクロプラズマ発生装置6で発生した活性種は、滞留空間117が存在しない場合に比べ比較的長時間、空気と混在する状態におかれる。後述の実験結果に示すように、滞留空間117における空気の滞留時間を稼ぐことは、活性種による空気の浄化性能を高めることに寄与する。例えば、マイクロプラズマ発生装置6に好適湿度範囲の空気を送ることが出来る場合、滞留時間が5分程度となるように滞留空間117を形成すると良い。この点、本実施形態においては、空調装置102はダクト130で構成されているため、ダクト130を長くし、建造物内において壁内や天井裏などを迂回させることで、居住空間に影響を与えることなく、容易に滞留時間を稼ぐことができる。
【0056】
2−6.オゾン分解除去手段
マイクロプラズマ発生装置6において、一対の電極板8間に印加する放電電圧を上昇させると、一対の電極板8間に発生するマイクロプラズマにより環境上の観点から無視できない程度の濃度のオゾンが生成される。オゾンが室内101に放出されるのは好ましくないため、空調装置102は、マイクロプラズマ発生装置6より下流側にはオゾン分解除去触媒フィルタ13を備えている。オゾン分解除去触媒フィルタ13は、ダクト130において最下流側、すなわち吐出口122近傍において、吐出口122から吐出される空気が確実に通過するようにダクト130内における空気の流通方向を横断して設けられている。オゾン分解除去触媒フィルタ13は、例えば、二酸化マンガン、酸化ニッケル、四三酸化鉄、酸化銅、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、及び炭酸銅の何れか一種又は複数種の組み合わせからなるオゾン分解触媒と、ハニカム状に構成された触媒担持用の構造体とから構成される。なお、このようなオゾン分解触媒フィルタの構成は公知であるため、ここでは詳細な説明は省く。
【0057】
3.空調装置による空気の浄化
最後に、空調装置102による空気の浄化について説明を行う。空調装置102は、室内101の空気を吸引し、室内101に戻すように構成されたダクト130内部に、上流側から順に、湿度センサ124、ミストノズル115、換気ファン103、温度センサ127、熱交換器107、マイクロプラズマ発生装置6、滞留空間117、及びオゾン分解除去触媒フィルタ13が設けられている。
【0058】
そして、換気ファン103の働きにより、室内101からダクト130内に空気が吸引され、湿度センサ124による湿度情報に基づいて、ミストノズル115により吸引された空気が加湿される。また、温度センサ127による温度情報に基づいて、必要であれば熱交換器107により空気を加熱する。このようにして、好適湿度範囲となった空気がマイクロプラズマ発生装置6に送られ、電極板8に設けられた貫通孔10を通過する過程で、マイクロプラズマにより直接浄化されるとともに、マイクロプラズマ発生装置6により発生した活性種と混合され反応がおきる。活性種と混合された空気は、滞留空間117において滞留する間に好適に除菌される。最後に、オゾン分解除去触媒フィルタ13を通過することで空気中に含まれるオゾンが取り除かれ、浄化された空気のみが室内101に戻される。以上のようにして、空調装置102によって、室内101の空気は浄化される。
【0059】
〔第二実施形態〕
上記第一実施形態では本発明を全館空調システムに適用した場合の例を説明したのに対し、第二実施形態では、本発明を個別空調システムに適用した場合の例を説明する。この第二実施形態においては、個別空調システムの一例として浴室暖房乾燥機2を用いる。なお、第一実施形態との主な違いは、本発明における『加湿手段』及び『マイクロプラズマ発生手段』の構成及び配置のみであり、その他の構成については、上記第一実施形態と略同様である。よって、以下では、第一実施形態と略同様の構成については概略の説明にとどめ、差異点についてのみ詳細に説明する。
1.装置の概略構成
第二実施形態に係る浴室暖房乾燥機2は、浴室1の天井に設置され、浴室1内の空気を吸引口21より吸引して加温し、吐出口22より浴室1に戻す暖房乾燥機能に加え、浴室暖房乾燥機の下面にとりつけられたミストノズル15により浴室1内にミストを散布するミストサウナ機能を備えたミストサウナ機能付き浴室暖房乾燥機に、マイクロプラズマ発生装置6を始めとする各種装置類を取り付け、本発明に係る空調装置としたものである。
【0060】
第二実施形態において、浴室1が本発明の『空調対象空間』に相当し、浴室暖房乾燥機2が本発明の『空調装置』に相当する。
【0061】
図3に示すように、浴室暖房乾燥機2は、略直方体の筐体31を備え、内部を仕切板32により、2つの空間に分けられている。一方の空間には、電動ファン3とマイクロプラズマ発生装置6と熱交換器7とが備えられ、これらの機器は浴室1内の空気を除菌する働きを担っている。以下では、当該空間を『処理空間4』と呼ぶ。他方の空間には、排出用電動ファン12が備えられ、浴室1内の空気を浴室1外に排出する働きを担っている。
【0062】
浴室暖房乾燥機2は、電動ファン3の働きにより、浴室暖房乾燥機2の処理空間4に浴室1内の空気を吸引するための吸引口21と、吸引した空気を浴室1内に吐出する吐出口22を備えている。具体的には、吸引口21及び吐出口22は、浴室暖房乾燥機2下部で、浴室1内の空間に接する位置に形成されている。また、浴室暖房乾燥機2は内部に、吸引口21より吸引した空気を加熱する熱交換器7と、マイクロプラズマ発生装置6とを備えるとともに、浴室1内の空間に接する位置に、浴室1内にミストを散布するミストノズル15を備えている。加えて、吐出口22には、オゾン分解除去触媒フィルタ13が備えられている。
【0063】
第二実施形態においては、電動ファン3が本発明の『送風手段』に相当し、熱交換器7が本発明の『加熱手段』に相当し、ミストノズル15が本発明の『加湿手段』及び『ミスト噴霧手段』に相当する。
【0064】
また、マイクロプラズマ発生装置6の上流側近傍で、熱交換器7より下流側には、湿度センサ24(湿度取得手段)を備えられており、マイクロプラズマ発生装置6に送られる空気の湿度を取得可能に構成されている。熱交換器7と吸引口21との間には、温度センサ27が備えられており、マイクロプラズマ発生装置6に送られる空気の温度を取得可能に構成されている。湿度センサ24と温度センサ27とに加え、ミストノズル15と熱交換器7とが、筐体31外に設けられた制御手段116に電気的に接続されている。そして、制御手段116は、湿度センサ24及び温度センサ27の出力情報に基づいて、ミストノズル15及び熱交換器7を働かせ、ミストノズル15で加湿された空気を好適湿度範囲に維持する。制御手段116による制御の詳細については、上記第一実施形態と同様であるので説明を省略する。第二実施形態においても、制御手段116は本発明における『湿度調整手段』に相当する。
【0065】
2.各機器類の説明
2−1.マイクロプラズマ発生装置、及び滞留空間
マイクロプラズマ発生装置6は、熱交換器7と吐出口22との間に設けられている。第二実施形態においては、マイクロプラズマ発生装置6は、熱交換器7の下流側で電動ファン3よりも上流側の位置に設けられている。このような配置とすることで、マイクロプラズマ発生装置6と吐出口22との間をできる限り広げることができ、マイクロプラズマ発生装置6で発生する活性種が処理空間4内に滞留するための滞留空間17を最大限形成することが出来る。
【0066】
2−2.ミストノズル
ミストノズル15は、浴室暖房乾燥機2下部で、浴室1内の空間に接する位置に設けられている。よって、第二実施形態においては、浴室暖房乾燥機2下部には、吸引口21と吐出口22とミストノズル15とがそれぞれ異なる位置に設けられている。このような構成とすることで、ミストノズル15は、浴室1内にミストを散布して浴室1内の空気を加湿するだけでなく、マイクロプラズマ発生装置6に送られる空気の湿度をも同時に調整することが可能となっている。また、ミストノズル15が筐体31外に設けられることで、限られた筐体31内の空間を滞留空間17として有効利用可能となっている。
【0067】
以上のような構成により、第二実施形態においても、第一実施形態と同様、空調対象空間の空気を浄化することが可能となっている。
【0068】
〔実験結果〕
最後に、マイクロプラズマにより発生する活性種の除菌効果の湿度依存性及び、時間依存性についての実験内容及び実験結果について説明する。
【0069】
(実験方法)
図4に実験装置の模式図を示す。1m3のボックス86内で超音波加湿器84を用いて湿度を35%RH、50%RH、70%RHに調整した。各試験区において、ボックス86内に設置したマイクロプラズマ発生装置6に1kVの電圧を印加し、30分間放電させた。放電により発生する活性種を軸流ファン81により、風量0.5m3/分でボックス86内に放出させた。
【0070】
放電終了後、ペトリ皿上のPDA寒天培地で培養したカビ胞子(カビ培養シャーレ82)を、ペトリ皿に対して垂直上方に設置した軸流ファン81からの気流によって飛散させた。このとき軸流ファン81の気流を2分間当てた。カビ噴霧後、吸引ポンプに接続したインピンジャ87(10ml滅菌水入り)で、ボックス86内の浮遊カビをサンプリングした。このとき、2L/分で3分間、計6L分を吸引した。このサンプリング開始時を0分後とし5、10、15、20、30分後に同様にサンプリングを行った。比較試験として、湿度35%RHにて放電を行わず同様の実験を実施した。
【0071】
(実験結果)
図5に実験結果を示す。低湿度の35%RHの条件下で、マイクロプラズマ発生装置6を放電させた場合、放電しない場合と比較して、活性種による除菌効果がわずかに認められた。湿度を50%RHに上げた場合、明らかな除菌効果の改善が見られた。更に70%RHに上げると、約15分で浮遊菌の死滅が認められた。また、以上の結果より湿度を上げた場合、時間経過とともに浮遊菌が減少することが認められた。
【0072】
(総括)
以上の結果から、湿度を70%RH〜85%RH程度の高湿度環境下においては、マイクロプラズマ発生装置6により発生する活性種と浮遊菌とを長時間混在する状態におく方が、より高い除菌効果が得られることが分かった。
【0073】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態においては、空調装置が、温度調整手段を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、第一実施形態における空調装置102が温度調整手段として熱交換器107を備えない構成とすることも発明の好適な実施形態の一つである。
【0074】
(2)上記の実施形態においては、空調装置内に、滞在空間が形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、第一実施形態においてマイクロプラズマ発生装置6がダクト130の吐出口122近くに設けられ、マイクロプラズマ発生装置6の下流に滞留空間117が存在しない構成とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。
【0075】
(3)上記の実施形態においては、空調装置が、オゾン分解除去手段を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、第一実施形態において空調装置102が吐出口122近くにオゾン分解除去触媒フィルタ13を備えない構成としても構わない。この場合、マイクロプラズマ発生装置6によって発生するオゾンの量を減らすために、電極板8に印加する電圧を下げたり、空調装置から空調対象空間に放出されるオゾンの量を減らすために、滞留空間117における空気の滞留時間をより長くするなどすると良い。
【0076】
(4)上記の実施形態においては、空調装置が温度調整手段と加湿手段とを備え、加湿手段が加熱手段の上流側に設けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、第一実施形態においてダクト130の吸引口121近くに熱交換器107が設けられ、熱交換器107とマイクロプラズマ発生装置6との間にミストノズル115が設けられる構成とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。
【0077】
(5)上記の実施形態においては、導電性の金属板の片面に誘電体膜を形成し、プラズマ発生に使用する電極とする例を示したが、例えが、酸化チタン等の誘電体粉末を成形・焼結して誘電体板状体を得、この誘電体板状体の片面全面に導電体からなる電極膜を形成し、プラズマ発生用の電極としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0078】
送風手段の働きにより、空調対象空間内の気体を処理空間に吸引して前記空調対象空間に戻す送風路を備えた空調装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 :浴室(空調対象空間)
2 :浴室暖房乾燥機(空調装置)
3 :電動ファン(送風手段)
4 :処理空間
6 :マイクロプラズマ発生装置(マイクロプラズマ発生手段)
7 :熱交換器(加熱手段)
8 :電極板
9 :高周波電源
10 :貫通孔
13 :オゾン分解除去触媒フィルタ(オゾン分解除去手段)
15 :ミストノズル(加湿手段)
17 :滞留空間
21 :吸引口
22 :吐出口
101 :室内(空調対象空間)
102 :空調装置(空調装置)
103 :換気ファン(送風手段)
104 :処理空間
107 :熱交換器(温度調整手段)
115 :ミストノズル(加湿手段)
116 :制御手段(湿度調整手段)
117 :滞留空間
130 :ダクト(送風路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風手段の働きにより、空調対象空間内の気体を処理空間に吸引して前記空調対象空間に戻す送風路を備えた空調装置であって、
前記処理空間に配設されるマイクロプラズマ発生手段と、
前記マイクロプラズマ発生手段に送られる気体を加湿する加湿手段とを備え、
前記マイクロプラズマ発生手段が、前記気体の流れ方向を横断して互いに略平行に配置される一対の電極板と、前記電極板にプラズマ発生用の電圧を印加する電圧印加装置とを備えて構成されるとともに、前記一対の電極板の夫々に、前記気体が通過可能な貫通孔を前記電極板の厚み方向に形成して構成され、前記一対の電極板の対向する表面の少なくとも一方に誘電体層が形成され、
前記マイクロプラズマ発生手段に到達する前記気体を、前記加湿手段により加湿して、
前記マイクロプラズマ発生手段で発生するマイクロプラズマの除菌能を維持できる好適湿度範囲に維持する湿度調整手段を備えた空調装置。
【請求項2】
前記マイクロプラズマ発生手段に送られる気体の温度を調整する温度調整手段を備え、
前記湿度調整手段は、
前記加湿手段及び前記温度調整手段を働かせて、
前記加湿手段により加湿された前記気体が前記マイクロプラズマ発生手段で結露を発生しない温湿度に、前記気体を調整する請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記気体が前記貫通孔を通過後、所定時間の間、前記処理空間内に滞留する滞留空間を備えた請求項1又は2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記気体の流れ方向で前記マイクロプラズマ発生手段より下流側にオゾン分解除去手段を備える請求項1〜3の何れか一項に記載の空調装置。
【請求項5】
前記加湿手段が、前記送風路にミストを噴霧して前記気体を加湿する、又は前記空調対象空間内にミストを噴霧して前記気体を加湿する請求項1〜4の何れか一項に記載の空調装置。
【請求項6】
吸引口より前記空調対象空間内の気体を吸引して、吐出口から前記空調対象空間に戻す吸引ファンと、
前記吸引口より吸引した気体を加熱する加熱手段と、を備え、
前記マイクロプラズマ発生手段が、前記加熱手段の下流側で、前記吐出口との間に設けられ、
前記加湿手段が、前記空調対象空間にミストを噴霧して加湿するミスト噴霧手段であり、
前記湿度調整手段は、
前記加熱手段と前記ミスト噴霧手段とを働かせて、
前記マイクロプラズマ発生手段に送られる前記気体を、前記ミスト噴霧手段により加湿して、前記好適湿度範囲に維持する請求項1に記載の空調装置。
【請求項7】
前記湿度調整手段は、前記気体の湿度を50%RH以上90%RH以下の前記好適湿度範囲に維持する請求項1〜6の何れか一項に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202637(P2012−202637A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68894(P2011−68894)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(390018474)新日本空調株式会社 (88)
【出願人】(507302737)
【Fターム(参考)】