説明

空調設備を利用した発電装置

【課題】 空調設備を利用した発電装置の提供。
【解決手段】 吸込口と吹出口を有するケーシング内に送風ファンを回転可能に支承して、送風ファンの回転軸を回転させることにより、送風ファンの回転を得て、吹出口から空調対象室へ送風する空調設備において、送風ファンの回転軸4aの外周面に複数の永久磁石13を一定の間隔をおいて固定すると共に、回転軸の永久磁石の外周上に嵌装される外周カバー15の内側に各永久磁石と互いに向き合う複数のコイル巻線17を固定する一方、各永久磁石を変形可能な板バネ12を介して回転軸側に固定して、送風ファンの回転が停止している時は、各永久磁石が板バネの力で回転軸側に引き寄せられて対応するコイル巻線との距離Xを拡げ、送風ファンが起動している時は、各永久磁石が板バネの変形でコイル巻線側へ移動して対応するコイル巻線との距離Yを狭めることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高層ビル・事務所ビル・工場などで使用されている空調設備を利用して、その下で、独特の自家発電システムを採用することにより、所望の電力を発生させる発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現今は、世界各国のエネルギー需要が経済発展に伴い飛躍的に伸びる一方、経済活動の活性化がエネルギー需要に拍車をかけているが、エネルギー使用量過多による地球温暖化の問題や自動車の排ガスが引き起こす大気汚染などの問題は、人類がエネルギー使用や経済発展と環境保護や生態保護の間で取捨を迫られる難題となっている。エネルギー節減の重要性に鑑み、エネルギー使用の減少またはエネルギー使用効率の向上に加えて、エネルギー汚染の減少などは、全てが省エネルギーに当たっての優先政策であって、人類が重視すべき課題である。特に、現代は電化の時代であって、人類にとっては、電気エネルギーは不可欠な必需品となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明に係る発電装置は、現在、高層ビル・事務所ビルや工場などの空調設備では、空調対象室内への換気(冷暖房)のため、空調機や送風機を1日約8時間〜24時間駆動させながら運転管理をしていることに鑑み、この運転管理状況をそのまま利用して、独特の自家発電システムで電気エネルギーを得ようとすると共に、余った電気エネルギーを電力会社へ販売して、経費の削減と利益の向上を図らんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、空調設備を利用した発電装置として開発されたもので、請求項1記載の発明は、吸込口と吹出口を有するケーシング内に送風ファンを回転可能に支承して、該送風ファンの回転軸を回転させることにより、送風ファンの回転を得て、上記吹出口から空調対象室へ送風する空調設備において、上記送風ファンの回転軸の外周面に複数の永久磁石を一定の間隔をおいて固定すると共に、該回転軸の永久磁石の外周上に嵌装される外周カバーの内側に上記各永久磁石と互いに向き合う複数のコイル巻線を固定する一方、上記各永久磁石を変形可能な板バネを介して回転軸側に固定して、送風ファンの回転が停止している時は、各永久磁石が板バネの力で回転軸側に引き寄せられて対応するコイル巻線との距離を拡げ、送風ファンが起動している時は、各永久磁石が板バネの変形でコイル巻線側へ移動して対応するコイル巻線との距離を狭めるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
依って、請求項1記載の発明にあっては、高層ビル・事務所ビルや工場などで使用される既存の空調設備を利用することにより、電力を簡単に発生させることが可能となるので、極めて簡素化された構造の下で、電力の再利用と余った電力の販売を行えると共に、現今問題となっている二酸化炭素の削減にも貢献できる。
【0006】
又、通常だと、送風ファンが停止している時は、永久磁石とコイル巻線とは、磁力により、同じ位置に停止することとなるが、この状態で、送風ファンを回転させると、永久磁石とコイル巻線とが引き付け合って、送風ファンの回転にブレーキが掛かるので、このままだと、回転用のモーターの始動トルクが増大して、焼き付きや制御盤内の計器類の焼損を起こす恐れがあるが、請求項1記載の発明にあっては、永久磁石を変形可能な板バネを介して送風ファンの回転軸側に固定した関係で、送風ファンの回転が停止している時は、永久磁石が板バネの力で回転軸側に引き寄せられて対応するコイル巻線との距離を拡げて、永久磁石とコイル巻線との磁力圏内が解除されるので、回転用モーターの始動トルクを効果的に軽減でき、逆に、送風ファンが起動している時に、回転数が上がると、永久磁石に遠心力が働いて、板バネの変形を得てコイル巻線側に移動して、対応するコイル巻線との距離を狭めて、両者が磁力圏内に入るので、これにより、安定した電力が発生する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例に係る空調設備を利用した発電装置を示す概略図である。
【図2】同発電装置の要部断面図である。
【図3】同発電装置を別の方向から見た要部断面図である。
【図4】(A)は送風ファンの停止時における永久磁石とコイル巻線の関係を示す要部断面図、(B)は送風ファンの起動時における永久磁石とコイル巻線の関係を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、吸込口と吹出口を有するケーシング内に送風ファンを回転可能に支承して、該送風ファンの回転軸を回転させることにより、送風ファンの回転を得て、上記吹出口から空調対象室へ送風する空調設備を前提として、上記送風ファンの回転軸の外周面に複数の永久磁石を一定の間隔をおいて固定すると共に、該回転軸の永久磁石の外周上に嵌装される外周カバーの内側に上記各永久磁石と互いに向き合う複数のコイル巻線を固定する一方、上記各永久磁石を変形可能な板バネを介して回転軸側に個々に固定して、送風ファンの回転が停止している時は、各永久磁石が板バネの力で回転軸側に引き寄せられて対応するコイル巻線との距離を拡げ、送風ファンが起動している時は、各永久磁石が板バネの変形でコイル巻線側に移動して対応するコイル巻線との距離を狭める構成の発電装置を提供せんとするものである。
【実施例】
【0009】
以下、本発明を図示する好適な実施例に基づいて詳述すれば、該実施例に係る発電装置は、高層ビルや事務所ビルや工場などで使用されている既存の空調設備を対象として開発されたもので、当該空調設備に自家発電システムを組み込むことにより、電力の再利用と余った電力を電力会社へ販売して、経費の削減と利益の向上を図らんとするものである。
【0010】
そこで、まず、前提となる空調設備側から説明すると、その空調機1のケーシング2は、吸込口(図示せず)と吹出口3を有して、内部に送風ファン4と熱交換器(図示せず)とを備え、送風ファン4の回転により上記吸込口からケーシング2内に吸い込まれた空気は、上記熱交換器で熱交換された後、送風ファン4の作用によって、吹出口3から空調対象室内へ吹き出される構成となっている。尚、この場合、回転用のモーター5の回転力は、モーター側プーリー6、周回ベルト7、ファン側プーリー8を経て、送風ファン4の回転軸4aに伝達されて、送風ファン4が回転するようになっている。
【0011】
そして、本実施例にあっては、斯かる構成の空調設備を前提として、上記送風ファン4の回転軸4a側に自家発電を行う発電装置9を組み込んで、送風ファン4の回転軸4aの回転力を電気エネルギーに変換することを特徴としている。
【0012】
これを詳しく説明すると、本実施例の発電装置9は、図2・図3に示す如く、送風ファン4の回転軸4aの外周面に対の関係にある複数の固定碍子11を絶縁樹脂シート10を介して一定の間隔をおいて固定して、該対の各固定碍子11に変形可能な直線状を呈する板バネ12をその両端部12aを介して架設して、該各板バネ12の中央部に永久磁石13をネジ14を介して固定する一方、該各永久磁石13の外周上に円筒状を呈する外周カバー15を嵌装して、該外周カバー15の内側に上記各永久磁石13と互いに向き合う同数のコイル巻線17をブラケット16を介して固定する構成となっている。この為、各永久磁石13は送風ファン4の回転軸4aと一体に回転し、各コイル巻線17は回転せずに発電装置としての固定電極部を構成することとなる。
【0013】
尚、図中、18は回転軸4aの回転を許容する軸受、19は絶縁Oリング、20は軸受固定リング、21はオイルシールであり、特に、このオイルシール21は、空調機1のケーシング2内が加湿用の蒸気や水の噴霧などにより多湿状態をもって運転されているので、この多量の湿気が水滴となって発電装置9内に侵入するのを防止するものである。
【0014】
依って、斯かる構成の空調設備を稼働させると、まず、回転用のモーター5が駆動して、モーター側プーリー6・周回ベルト7・ファン側プーリー8を経て、送風ファン4が回転することとなるので、この送風ファン4の回転により、吸込口からケーシング2内に吸い込まれた空気は、熱交換器で熱交換された後、送風ファン4の作用によって、吹出口3から空調対象室内へ吹き出されることとなるが、この時には、送風ファン4の回転軸4aも同方向へ回転して、発電を行うこととなる。
【0015】
これを順に説明すると、モーター5が駆動せずに、送風ファン4の回転が停止している時は、図4Aにも示す如く、上記した板バネ12の直線形状から得られる弾力で、各永久磁石13は、送風ファン4の回転軸4a側に引き寄せられて、対応するコイル巻線17との間隔Xを拡げるので、これにより、対応するコイル巻線17との磁力圏内が解除されて、電力を発生しない。
【0016】
従って、本実施例とは異なり、板バネ12を使用しない場合には、送風ファン4が回転を停止していると、永久磁石13とコイル巻線17が互いに引き付け合っているので、送風ファン4の回転にブレーキが掛かり、回転用のモーター5の始動トルクが増大して、焼き付きや制御盤内の計器類の焼損を起こす恐れがあるが、本実施例のように、板バネ12を使用する場合には、送風ファン4を回転させようとすると、永久磁石13とコイル巻線17との距離Xを拡げて、永久磁石13が回転軸4a側に引き寄せられ、対応するコイル巻線17との引き付け合いを解除するので、この結果、始動時における回転用モーター5のトルクを有効に軽減でき、焼き付きや制御盤内の計器類の焼損を起こす心配がなくなる訳である。
【0017】
そして、送風ファン4が回転して回転数が上がると、今度は、図4Bに示す如く、各永久磁石13に遠心力が働いて、当該各永久磁石13が外側に引っ張られるので、これに伴い、板バネ12が略台形形状に弾性変形して、各永久磁石13を対応するコイル巻線17側に自動的に移動させ、対応するコイル巻線17との距離Yを狭めて、両者13・17を磁力圏内に入り込ませるので、これにより、電力を安定して発生させられる。従って、板バネ12の変形力は、送風ファン4が回転して駆動頂点で磁力圏内に移動するように設定することが好ましい。
【0018】
これにより、各コイル巻線17の両端部の間に直流の起電力が生じることとなるので、これを電気ケーブル22を介して制御装置23に導きながら、昇圧トランス24で交流電流に変換すれば、後は、系統連携盤25からそのまま又はバッテリーを介して、室内照明やOA機器などの建物設備で再利用することが可能となるので、節電対策となり、且つ、余った電力は、系統連携盤25を経て、電力会社へ販売すれば良いので、経費の削減と利益の向上が大いに図られることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係る発電装置は、簡易な自家発電システムを採用するだけで、電力の再利用と余った電力を電力会社に販売できるので、これを高層ビル・事務所ビル・工場などで使用されている空調設備に応用すれば、頗る好都合なものとなる。
【符号の説明】
【0020】
1 空調機
2 ケーシング
3 吹出口
4 送風ファン
4a 回転軸
5 モーター
6 モーター側プーリー
7 周回ベルト
8 ファン側プーリー
9 発電装置
10 絶縁樹脂シート
11 固定碍子
12 板バネ
12a 板バネの端部
13 永久磁石
14 ネジ
15 外周カバー
16 ブラケット
17 コイル巻線
18 軸受
19 絶縁Oリング
20 軸受固定リング
21 オイルシール
22 電気ケーブル
23 制御装置
24 昇圧トランス
25 系統連携盤
X 停止時の永久磁石とコイル巻線との距離
Y 起動時の永久磁石とコイル巻線との距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と吹出口を有するケーシング内に送風ファンを回転可能に支承して、該送風ファンの回転軸を回転させることにより、送風ファンの回転を得て、上記吹出口から空調対象室へ送風する空調設備において、上記送風ファンの回転軸の外周面に複数の永久磁石を一定の間隔をおいて固定すると共に、該回転軸の永久磁石の外周上に嵌装される外周カバーの内側に上記各永久磁石と互いに向き合う複数のコイル巻線を固定する一方、上記各永久磁石を変形可能な板バネを介して回転軸側に固定して、送風ファンの回転が停止している時は、各永久磁石が板バネの力で回転軸側に引き寄せられて対応するコイル巻線との距離を拡げ、送風ファンが起動している時は、各永久磁石が板バネの変形でコイル巻線側へ移動して対応するコイル巻線との距離を狭めるように構成したことを特徴とする空調設備を利用した発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−61916(P2011−61916A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−206604(P2009−206604)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(509252405)株式会社ミネサービス (3)
【Fターム(参考)】