説明

空間的に限定されたエレクトロポレーション方法およびその装置

本発明は、標的あるいは非標的分子、高分子、および/または細胞からなる集団に存在する一つあるいはそれ以上の生物学的標的に対して、物質の空間的に局部化送達するための中空チップ電極を提供する。本発明は更に、このような一つあるいは複数のチップを受け入れる電極プレートと、一つあるいはそれ以上の電極チップからなる電極プレートからなるチップ電極プレートと、チップ電極プレートと一つあるいはそれ以上の生物学的標的、例えば分子、高分子および/または細胞を含有する容器とからなるシステムとを提供する。本発明は更に、このようなシステムとそれらの構成部品とを利用する方法を提供する。一つの好適な形態において、このシステムは細胞および細胞構造の空間的に限定されたエレクトロポレーションに利用される。本発明は細胞内標的に作用する薬剤(例えば薬物)の高速大量処理スクリーニングを促進させる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2002年12月19日付出願、米国特許出願第10/325,691号の一部継続出願であり、2000年4月25日付出願、米国特許出願第09/557,979号すなわち特許第6,521,430号の継続出願であり、1998年11月6日付出願、国際出願第PCT/SE98/02012号の継続出願であり、1997年11月6日付出願、スウェーデン国特許出願第9704076−0号の優先権を主張するものであり、更に2003年1月15日付出願、米国特許出願第10/345,107号の一部継続出願であり、2002年2月12日付出願、米国仮出願第60/356,377号の優先権を主張するものである。これら全ての出願はここに参照として取り入れる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、生体分子、細胞内顆粒、単細胞、細胞の集団などの空間的に限定された標的に対して1つ又はそれ以上の薬剤の送達方法及びエレクトロポレーション方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ここ20年間にわたり、単一細胞の生化学的および生物物理学的研究を可能にする実験方法にて著しい成長がなされている。この種の方法は、単一イオンチャンネルを介する経膜電流の測定につき使用しうるパッチクランプ記録[Hamill,.et al.,Pfleugers Arch.391:85〜100,1981];単一細胞および単一細胞小器官における生物活性成分を位置決定すべく使用しうるレーザー共焦顕微鏡画像形成技術[Maiti,et al.,Sicence275:530〜532,1997];細胞内部におけるpH測定のための近フィールド光学プローブの使用;および単一カテコール−およびインドール−アミン−含有小胞体の放出を測定するための超微小電極の使用[Chow,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.88:10754〜10758,1991]を包含する。
【0004】
非常に特異的な酵素、基質及び蛋白質プローブは細胞中の特定の構成要素を検出することを可能にするので役に立つ。(Tsien,Annu.Rev.Biochem.1998,67:509−544)。これらのプローブ及び薬物及び細胞内化学の別のエフェクターの利用におけるこれまでの主な難関は、それらを細胞内部へ導入することである。これらの薬物の多くは(例えばナノ粒子、染料、薬物、DNA、RNA、蛋白質、ペプチドおよびアミノ酸など)は極性であり、極性溶質は細胞−非浸透性であり、生体膜を通過することができない。すなわち、細胞原形質膜バリヤが外部溶液に対して物理的境界として作用し、外因性化合物及び粒子が入ることを防止する。現在たとえば細胞培養物における細胞を染料で標識し、或いはこれをその隣接物で標識もしくはトランスフェクトすることなしに遺伝子でトランスフェクトすることは極めて困難である。更に、極性分子をその寸法のため細胞小器官中に導入するのは一層困難であり、多くの場合その寸法は光学顕微鏡の分割限界よりも小さく或いは少なくとも直径数μm未満である。
【0005】
単一細胞および単一核のための微量注入技術も記載されているが[たとえばCapecchi,Cell 22:479〜488,1980参照]、これらは細胞もしくは細胞小器官の寸法が減少するにつれ益々実施困難となる。直径僅か数μmもしくはそれ以下の寸法を有する細胞および細胞小器官につき、微小注入技術は実質的に使用不可能となる。
【0006】
細胞膜はパルス化電場により透過性にしうる[例えば、Zimmermann,Biochim.Biophys Acta,(1982)694:227〜277参照]。この技術はエレクトロポレーション法と呼ばれる。原形質膜を破壊させるために、印加された電場によって、膜電位の臨界値を越えさせる。均一電場、Eにて半径rcの球状細胞に対する膜電位ΔVは次式から計算することができる。
【0007】
ΔV=1.5rEcosα(1−e−t/τ) (1)
ここで、1.5は形態係数であり、およびαは膜の位置と電場の方向との間の角度である。tはパルス幅であり、τは膜に対して膜電位の誘発が達成されるまでの時間であり、次式により示される。
【0008】
τ=r(ρ+0.5ρ) (2)
ここでCは単位面積当たりの特異的膜容量であり、ρ及びρはそれぞれ細胞内液および細胞外液の抵抗率である。
【0009】
このエレクトロポレーション技術は大量の細胞集団(ほぼ10程度)に対して広く使用される。典型的には、均一電場を生じる大型のプレート電極間に細胞を配置する。懸濁液中の少数の細胞(KinoshitaおよびTsong,Biochim.Biophys.Acta554:479−497,1979);Chang,J.Biophys.56:641−652,1989;Marszalek,その他,Biophys.J.73:1160−1168,1997)および基質にて成長する少数の接着細胞(Zheng,Biochim.Biophys.Acta 1088:104−110,1991);TeruelおよびMeyer,Biophys.J.,73:1785−1796,1997)に対してエレクトロポレーション法を使用できる器具が示されてきた。上記のMarszalek,その他、1997年により構築されたエレクトロポレーション装置の設計は長さ6mm×直径80μmの白金線に基づくものであって、単一ガラスミクロピペットに対し100μmの固定距離にて平行配置で接着される。上記のKinoshitaおよびTsong、1979年による設計は2mmの空隙距離で離間された固定黄銅電極を使用する。上記のTeruelおよびMeyer、1997年のミクロポレータ設計は約5mmの空隙距離で離間した2個の白金電極に基づくものであり、Changによるエレクトロポレーションチャンバの設計は0.4mmの距離で離間した長さ約1mmの白金線を使用する。
【0010】
生体外用途に最適化される、これらエレクトロポレーション装置は、典型的には直径10μmである単一細胞の寸法よりも数倍大きい電場を形成し、従って単一細胞もしくは単一細胞小器官のエレクトロポレーションだけに使用することができず、或いは単一細胞内でのエレクトロポレーションにつき使用することができない。この技術は、単一細胞あるいは少数の細胞集団を選択する際に十分な位置および電極の個別制御を実施できない。更に、これらの技術は生体内のエレクトロポレーションとして、あるいは遠隔細胞および組織のエレクトロポレーションとして最適化されていない。
【0011】
医療用および生体内用途としてのエレクトロポレーション装置についても同様に設計されてきた。例として、腫瘍に対する(WO96/39226号)および血液細胞に対する(米国特許第5,501,662号)、および遠隔細胞および組織(米国特許第5,389,069号)に対する薬物および遺伝子のエレクトロポレーション媒介供給の装置が含まれる。同様に、これらは空間的に限定されたエレクトロポレーションに対して高度局在電場を形成すべく使用することができない。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、細胞および細胞構造を含むがこれに限定されないが多様な標的に対して、空間的に局部化された電場を提供するための方法および装置を提供する。特に、ある実施態様において、本発明は細胞内分子、例えば細胞内受容体、細胞膜分子の細胞質ドメイン、細胞小器官受容体、酵素、およびシグナル伝達経路および代謝経路に関与する分子等の活性を調節する薬剤をスクリーニングする方法を提供する。本発明に係る装置は上記薬剤に対してハイスループット・スクリーニングが可能となる。
【0013】
ある態様において、本発明は導電媒質を受け入れる内腔部を画定するケースと;電圧あるいは定電流源に接続する導電性表面とから構成されるチップ電極を提供する。好適には、ケースは内腔部と連通する開口部を備え開口部を介して標的に薬剤を送達するための標的対向端部から構成される。内腔部は追加的あるいは二者択一的に、導電媒質(例えば、液体、ジェルおよびそれと同種)から構成される。
【0014】
典型的な薬剤として、遺伝子;遺伝子アナログ;RNA;RNAアナログ;siRNA;アンチセンス・オリゴヌクレオチド;リボザイム;DNA;DNAアナログ;アプタマー;コロイド粒子;ナノ粒子;受容体;受容体リガンド;受容体アンタゴニスト;受容体アゴニスト;受容体遮断薬;酵素;酵素基質;酵素阻害剤;酵素モジュレータ;蛋白質;蛋白質アナログ;ポリペプチド;ポリペプチドアナログ;アミノ酸;アミノ酸アナログ;ペプチド;ペプチドアナログ;代謝産物;代謝産物アナログ,オリゴヌクレオチド;オリゴヌクレオチドアナログ;抗原;抗原アナログ;ハプテン;ハプテンアナログ;抗体;抗体アナログ;細胞小器官;細胞小器官アナログ;細胞核;細胞分画;細菌;ウィルス;ウィルス粒子;配偶子;無機イオン;有機イオン;金属;細胞の化学反応に影響を与える薬剤;細胞骨格に影響を与える薬剤;ポリマーに影響を与える薬剤;及びこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0015】
ある態様において、ケースは生体膜に対して挿入し易いよう先細形状端部を備える。
【0016】
別の態様において、ケースの内腔部は導電性表面からなる要素を備える。例えば、導電性表面形状である要素はケースの片側あるいは両側におけるケースの壁面を貫通する構造である。例えば、導電性表面はケースの外側でリングプレートに接続されたワイヤである。
【0017】
チップ電極は薬剤送達に使用され更にある態様において、導電媒質は標的への送達用薬剤からなる。
【0018】
ケースは、ガラス、熔融シリカ、プラスチック、セラミック、エラストマー材料、ポリマー、金属、少なくとも部分的に導電性材料で被覆された非導電性材料、および少なくとも部分的に非導電性材料で被覆された導電性材料を含むがこれに限定されない多様な材料から構成される。
【0019】
ある態様において、ケースは標的対向端部から遠位にある受け入れ端部を更に構成し且つ導電媒質を受け入れる開口部を構成する。
【0020】
別の態様において、チップ電極は更に対極として機能する導電性表面からなる。
【0021】
更なる態様において、ケースは均一な内径と均一あるいは多様な外径からなる。ある態様において、チップ電極の長さは約10cm未満である。別の態様において、チップ電極の長さは約500μm未満である。更に別の態様において、チップ電極の長さは約50μm未満である。更に別の態様において、チップ電極の長さは約1μm未満である。
【0022】
ある態様において、チップ電極の標的対向端部の開口部の直径は約5000μm未満かあるいはそれに等しい。好適には、標的対向端部の開口部の直径は約100μm未満である。より好適には、標的対向端部における開口部の直径は約50μm未満、約10μm未満、約1μm未満、約100nm未満あるいは約50nm未満である。
【0023】
本発明は更に、チップ電極を受け入れるための少なくとも一つの取付け部を備える電極プレートを提供する。ある態様において、前記少なくとも一つの取付け部はチップ電極を受け入れる、取付け部からチップ電極が垂直移動可能な可撓性付着部から構成される。好適には、電極プレートは複数の取付け部を備える。例えば、前記プレートは一列の取付け部を構成しチップ電極の直線配列を形成する。あるいは、前記プレートは複数の列の取付け部を構成し、二次元配列のチップ電極を形成する。ある態様において、各取付け部の中心から中心への距離は工業規格のマイクロタイタープレートにおけるウェルの中心から中心への距離に対応する。
【0024】
好適には、電極プレートは電圧あるいは定電流源用の少なくとも一つの接点を備える。更に、好適には、電極プレートは点滴装置と接続する少なくとも一つの接点を備える。
【0025】
ある態様において、電極プレートは導電層と絶縁層とから構成される少なくとも二つの層を構成する。更に、電極プレートの層は対極として機能する。
【0026】
好適には、少なくとも一つの取付け部を構成する電極プレートは更にチップ電極を受領する開口部を備え、更に一態様において本発明は更に少なくとも一つのチップ電極は取付け部において、電極プレートに取付けられる電極プレートを備える。好適には、複数のチップ電極が電極プレートに取付けられる。
【0027】
ある態様において、電極プレートは少なくとも一つの微小流体チャネルを備え、電極プレートに取付けられた少なくとも一つのチップ電極に液体を送達する。
【0028】
本発明は更に、チップ電極プレートを備え、実質的に平らなプレートを構成し、この上に少なくとも一つの非平面要素が加工され、ここでプレートから遠位側にある非平面要素端部は電場に対して標的を暴露させる開口部を備え、更に非平面要素の内壁は導電媒質を収容する内腔部を画定する。ある態様において、内壁は導電性表面からなる。例えば、導電性表面は内腔部の内壁を少なくとも部分的に被覆する導電性塗料からなる。好適には、少なくとも一つの非平面要素の端部は先細になる。
【0029】
ある態様において、チップ電極プレートは複数の貯蔵部からなる第一層と前記プレートより隆起した複数の非平面要素からなる実質平面の第二層とから構成される。好適には、各非平面要素は電場に対して標的を暴露させる標的対向開口部から構成される。この開口部は第一層において各貯蔵部よりも上位に中心があり、非平面要素の内壁は貯蔵部と開口部との両方を連通する内腔部を画定する。
【0030】
前記プレートは対極層を更に構成する。前記貯蔵部は追加的に導電媒質を含有する。好適には、導電媒質は薬剤からなる。
【0031】
ある態様において、対極層は導電媒質に接触する。
【0032】
本発明は更に上述のいずれかのチップ電極と標的を含有する容器とを構成するキットを提供する。適切な容器としては、マイクロタイター皿、マルチ−ウェル細胞培養容器、ペトリ皿、高分子基板、ガラス基板、微小流体チップ、および膜などが含まれるがこれに限定されない。ある態様において、電極プレートおよび/または容器は少なくとも一つの微小流体チャネルを構成する。別の態様において、キットは更に少なくとも一つの対極を構成する。更に別の態様において、キットは少なくとも一つのチップ電極を満たす導電媒質を構成する。更に別の態様において、キットは少なくとも一つの薬剤および/または標的(例えば、細胞、細胞構造、およびその同類)を構成する。
【0033】
本発明は更に、上述のチップ電極のいずれかのような少なくとも一つのチップ電極を構成するシステムを提供する。ある態様において、システムは上述のような電極およびチップ電極と接触する導電性表面を構成する。好適には、ケースは内腔部と連通する開口部を備え、この開口部を介して薬剤を標的に送達するための標的対向端部を構成する。更に、好適には、電極プレートはパルス発生器に対して接続可能であり電圧あるいは電流パルスを導電性表面に送達させる。更に、好適には、システムは標的を含有する容器を構成する。
【0034】
別の態様において、システムは更に、電極プレートと連通して電圧あるいは電流パルスを少なくとも一つのチップを介して送達するためのパルス発生器と標的に近接して前記少なくとも一つのチップ電極を配置する装置を構成する。好適にはシステムは更に少なくとも一つの対極を構成する。
【0035】
更に別の態様において、システムは更に、送達装置を構成し、液体および/または薬剤を少なくとも一つのチップ電極に送達させる。送達装置はチップ電極の内腔部を介して薬剤を電気泳動する機構、電気浸透用機構、ポンピング機構のうちの一つあるいはそれ以上から構成される。
【0036】
ある態様において、システムはそれぞれ電極プレートと電気接触する複数のチップ電極を構成する。このチップ電極は電極プレートから取り外し可能であるか、あるいはそれと一体化される。電極パルスは各チップ電極を介して伝達され更に好適にはシステムプロセッサを介して独自に制御される。複数のチップ電極は配列されている(例えば列状に)。電極プレートおよび/または容器は更に一つ以上の微小流体チャネルを構成する。
【0037】
ある好適な態様において、システムは更に検出器から構成され、チップ電極に近接する標的の光学特性あるいは電気特性の変化および/または標的に対する薬剤および/または液体の送達を検出する。
【0038】
別の態様において、電極プレートは複数の貯蔵部からなる第一層とチップ電極を形成するプレートより隆起する複数の非平面要素からなる実質平面な第二層とから構成される。チップ電極の標的対向開口部は第一層内の各貯蔵部上の中心部に配置され、チップ電極の内腔部は貯蔵部と連通する。ある態様において、少なくとも一つのチップ電極の内腔部は導電媒質からなる。好適には、少なくとも一つのチップ電極のケースは先細端部を構成する。また好適には、少なくとも一つのチップ電極の導電性表面は内腔部を画定するケースの少なくとも部分的に被覆された壁部を構成する。しかしながら、二者択一的に、あるいは追加的に、導電性表面はケースの内腔部中に挿入された導電性表面からなる要素を構成する。例えば、要素はシリンダ、ロッドあるいはワイヤである。ある態様において、導電性表面はケースの片側あるいは両側におけるケースの壁部を貫通する構造である。また別の態様において、ケースの外側においてリングプレートと接続されたワイヤである。導電媒質はまた液体あるいはジェルであり、更にある態様において、導電媒質は標的に送達するための薬剤から構成される。
【0039】
ある好適な態様において、システムは更に、少なくとも一つのチップ電極への液体の送達、少なくとも一つのチップ電極への少なくとも一つの薬剤の送達、導電媒質によるチップ電極の充填、電圧あるいは電流パルスパラメータ(例えば、パルス幅、波形、およびパルス振幅)、標的に対する少なくとも一つのチップ電極からなる電極プレートの走査、一つのチップ電極に対する一つの標的の走査、一つのチップ電極の垂直方向移動、一つのチップ電極を介する電気泳動、一つのチップ電極を介する電気浸透、一つのチップ電極を介する液体のポンプによる排水、システム検出器の関数とからなるグループから選択された一つあるいはそれ以上のパラメータを制御するためのプロセッサを構成する。
【0040】
また、好適には、システムは更にシステムの操作を表示し且つシステムパラメータを変更するグラフィカルインターフェースからなるユーザーの装置を構成する。ある態様において、システムは更に検出器からの出力を表示する読み出し装置を構成する。
【0041】
更に別の態様において、システムは更に少なくとも一つのチップ電極の垂直方向移動を制限する位置決め装置から構成される。好適には、位置決め装置は少なくとも一つのチップ電極の標的対向端部に対して設置される。しかしながら、位置決め装置はまたチップ電極に一体化される。
【0042】
本発明は更に標的と少なくとも一つの非標的要素とからなる試料を集中的な電場に暴露する方法において、集中した電場は選択的に標的の特性を変更させる方法を提供する。ある態様において、標的は選択された生体膜から構成され更に非標的は非選択的生体膜から構成される。標的の例として、細胞集団、単一細胞、細胞内顆粒、小胞、リポソーム、分子、分子群、核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド;酵素;炭素繊維;化学反応体および表面が含まれるがこれに限定されない。
【0043】
ある態様において、標的は少なくとも一つの非標的からなる液体に懸濁される。別の態様において、標的は基板と結合する。更なる態様において、基板は配列を構成する。また更に別の態様において、基板はマイクロタイター皿を構成する。複数の標的は基板上あるいは溶液中に個別に配置され、物的障壁により別の標的から隔離される。
【0044】
ある態様において、電場は上述のいずれかのチップ電極から提供される。
【0045】
別の態様において、本方法は複数の非標的成分からなる試料中の複数の標的それぞれを集中電場に暴露させる。好適には、各集中電場は独立して整調可能である。ある態様において、上述したもののような、複数のチップ電極は集中電場を提供する。複数の標的は複数の集中電場に対して連続しておよび/または同時に暴露される。複数のチップ電極はそれぞれマイクロタイタープレートのウェルの真上に配置されるかあるいは標的が設置される基質上のスポットの真上に配置される。
【0046】
ある態様において、標的は生体膜から構成され暴露されると膜に細孔を形成する。すなわち、本方法は標的を薬剤に暴露させることに利用される。ある態様において、電場に対する暴露および薬剤に対する暴露は調整される。
【0047】
更に別の態様において、本方法は標的が浸される溶液の条件を改質する工程を構成する。例えば、本方法は標的が浸される溶液のpH、温度、イオン強度、浸透圧、および/または粘度の組み合わせを変更する工程を構成する。
【0048】
ある態様において、集中電場はプレートに連結されるチップ電極により提供される。このプレートはチップ電極の内腔部と流通する少なくとも一つのチャネルを構成する。追加して、あるいは二者択一的に、基板は標的と流通する少なくとも一つのチャネルを構成し、このチャネルを通して標的は薬剤に暴露される。ある態様において、基板は標的と流通する複数のチャネルを構成し、更に複数の薬剤および/またはバッファは複数のチャネルから標的に対して連続してあるいは同時に送達される。
【0049】
複数のチャネルはまた少なくとも一つの標的からの少なくとも一つの液体流に標的を暴露させるのに使用される。ある態様において、標的を移動することにより、基板を移動することにより、基板と標的との両方を移動することにより、および/または基板の少なくとも一つのチャネルの圧力を変化させることにより、標的は少なくとも一つの液体流を介して走査される。
【0050】
本発明は更に標的と少なくとも一つの非標的成分からなる試料を集中電場に対して暴露し、集中電場は選択的に標的の特性を改質し且つ改質された特性を検出する方法を提供する。本方法はまた電場の一つあるいはそれ以上のパラメータを監視する工程を構成し、またある態様において、本方法は更に改質された特性の検出に応答して電場のパラメータを変更する工程を構成する。
【0051】
本方法は更に標的に近接する微小流体チャネル出口から液体流を送達することにより標的を液体流に暴露する工程を含む。ある態様において、液体は薬剤からなり、液体流の送達は電場に対する標的の暴露と連携する。チップ電極を介して薬剤を送達することは電気泳動あるいは電気浸透によって促進される。
【0052】
ある態様において、電場は一つあるいはそれ以上の標的分子に双極子を含む。
【0053】
別の態様において、電場は一つあるいはそれ以上の標的分子を伸縮、移動、結合、反応、および/または変性させる。
【0054】
ある態様において、標的は表面であり更にチップ電極は分子を送達しその表面を複数の分子、高分子、細胞あるいはそれらの組み合わせでパターン形成する。
【0055】
ある態様において、標的は細胞あるいは細胞構造(例えば細胞小器官)であり、更に薬剤は標識化される。別の態様において、標識は細胞内分子あるいは細胞小器官内部分子と接触し検出可能な信号あるいは反応物を生成し、更に本方法は検出可能な信号あるいは反応物を検出する工程を更に含み、これによって分子の有無および/または分子量を決定する手段を提供する。
【0056】
別の態様において、標的はFRET対の半分で予め負荷された細胞あるいは細胞構造であり、更に本方法は標的を電場に対して暴露する間および/またはその後に、FRET対のもう半分に対して暴露する工程から構成される。FRET信号の生成は孔形成を確認する。
【0057】
本方法は更に、溶質を膜により画定された区画(例えば細胞など)の外側にある媒質から膜により画定された区画内部に移動させるのに使用される。あるいは、本方法は、溶質を膜により画定された区画(例えば細胞など)の内側にある媒質から膜の外側の溶液中に移動させるのに使用される。
【0058】
ある態様において、薬剤は細胞内分子、高分子、高分子イオン、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、あるいは核酸と相互作用し検出可能な生成物を生成し、更に本方法は検出可能な生成物を検出する工程を含む。別の態様において、本方法は薬剤の内部化に対する区画の反応を検出する工程を含む。例えば、静電容量、電解電量、電流測定、CARS(干渉性反ストークスラマン散乱)、SERS(表面増強ラマン散乱)、リン光、化学ルミネッセンス、UV−VIS−IR吸収、水晶マイクロバランス、あるいは表面プラスモン共鳴を監視することによって検出が行われる。
【0059】
更なる態様において、標的は選択された型の細胞であり更に非−標的は別の型の細胞である。あるいは、標的は選択された型の細胞小器官である一方非−標的は非−選択型の細胞小器官である。
【0060】
本発明は更に第一細胞内成分と第二細胞内成分との間の相互作用を改質させる薬剤のスクリーニング法を提供する。本方法は第一細胞内成分と第二細胞内成分とからなる細胞を薬剤と接触させ、その細胞に対して細胞に孔を生成させる条件下において、上述したいずれかのチップ電極を使用する集中電場に暴露し、更に干渉における変化を検出する工程を含む。暴露工程は接触工程の前、その間および/またはその後に実施する。
【0061】
ある態様において、第一および/または第二成分は標識化され更に本方法は暴露の後に片方あるいは両方の標識により生成された信号における変化を検出する工程を含む。
【0062】
ある態様において、本方法は第一および第二成分が相互作用する際に生じる反応物の有無、あるいは変化を検出する工程を含む。例えば、第一成分は酵素であり第二成分は基質あるいは補酵素である。第一および第二成分の相互作用は反応物質量の有無あるいは変化を検出することによって監視される。
【0063】
更なる態様において、本方法は第一および第二成分の相互作用と関連した表現型、細胞機能あるいは細胞外機能の有無あるいは変化を検出する工程を含む。
【0064】
更に別の態様において、相互作用は第一および第二成分を結合する工程を含む。
【0065】
典型的な第一および第二成分は細胞内分子、高分子、代謝産物、ポリマー、タンパク質(例えば、受容体、リガンド、酵素、細胞骨格タンパク質、シグナル伝達タンパク質、イオンチャネル、オルガネラ膜タンパク質、あるいは細胞膜タンパク質)、ポリペプチド、ペプチド、核酸、核酸塩基、ヌクレオチド、小胞、細胞膜成分、細胞小器官およびそれらの組み合わせからなるグループから別々に選択される。
【0066】
ある態様において、薬剤は第一あるいは第二成分の作動薬、拮抗薬、あるいは阻害剤である。
【0067】
別の態様において、薬剤はシグナル伝達経路を調節する。
【0068】
ある態様において、薬剤は代謝経路を調節する。
【0069】
更に別の態様において、第一成分は細胞内受容体であり第二成分は細胞内受容体と結合するリガンドである。
【0070】
本発明は更に細胞内成分と結合する薬剤をスクリーニングする方法を提供する。この方法は細胞内成分を含有する細胞を候補接着剤と接触させ、細胞を細胞に孔を形成する条件下で上述のようなチップ電極を使用した集中電場に暴露し、更に成分に対して薬剤の結合を検出する工程を含む。ある態様において、薬剤および/または細胞内成分は標識化され更にその方法は薬剤と細胞内成分との複合体の形成を検出する工程を含む。あるいはまたは追加的に、この方法は結合と関連した表現型を検出する工程を含む。別の態様において、この方法は細胞内成分が薬剤と結合する際生成された反応物質を検出する工程を更に含む。ある態様において、シグナル伝達分子(例えばCa2+、cAMPおよびK+など)のレベルを増加させる反応を構成する。細胞内成分は細胞内受容体、細胞膜分子の細胞質ドメインあるいは酵素を含むがこれに限定されない。
【0071】
本発明の目的及び特徴は以下の詳細な説明及び添付の図面を参照してより一層理解され得る。
【詳細説明】
【0072】
本発明は標的および非標的分子、高分子、および/または細胞からなる集団に存在する一つあるいはそれ以上の生物学的標的に対して物質の局所的輸送用の中空−チップ−電極を提供する。本発明はまた一つあるいはそれ以上のこのようなチップを受け入れる電極プレート、一つあるいはそれ以上の電極チップからなる電極プレートからなるチップ−電極プレート、およびチップ電極と一つあるいはそれ以上の生物学的標的、例えば分子、高分子、および/または細胞などを含有する容器とからなるシステムを提供する。本発明は更にこのシステムおよびその構成要素を使用する方法を提供する。好適な一態様において、このシステムは細胞および細胞構造における空間的に限定されたエレクトロポレーションのために利用される。本発明は更に細胞内標的に作用する薬剤(例えば薬物)のスクリーニングの処理能力を高める。
【0073】
定義
以下の説明に使用される特定の用語に対して以下に定義する。
【0074】
明細書および請求項に記載される、単数形「一つの」および「該」はその内容が明確に他に指示がないかぎりは複数の記載を含む。例えば用語「細胞」は複数の細胞を含み、その混合物も含む。用語「タンパク質」は複数のタンパク質を含む。
【0075】
次の用語「微小チャネル」は二つの壁部、底部、少なくとも一つの入り口および少なくとも一つの出口からなる基板内の溝を示す。一態様において、微小チャネルはまた屋根を備える。用語「微小」は寸法の下限値を意味せず、用語「微小チャネル」は通常「チャネル」と同義的に使用される。好適には、微小チャネルは約0.1μmから約1000μm、より好適には約1μmから約150μmの範囲の寸法である。
【0076】
次の用語、「微小流体基板内の一つあるいはそれ以上のチャネルに対して標的を走査する」ことは基板内の少なくとも一つのチャネルから複数の液体流に対して標的を暴露することである。これはその流れを提供する固定基板内の一つあるいはそれ以上のチャネル出口を通過する標的を移動することにより、あるいは固定標的に対して基板を移動することにより、基板の一つあるいはそれ以上のチャネル出口からの流れに対して標的が暴露されて走査が可能となる。また基板および標的の両方を移動させることでも走査は可能である。単一チャネルから複数の液体流に対する暴露は、単一チャネルから異なる液体流(例えば、異なる薬剤、あるいは同じ薬剤の異なる投与量、あるいはバッファ流および薬剤を含有する液体流の交互な流れ、あるいはそのいずれかの組み合わせ)を提供することにより、および/または標的に近接するチャネルの出口からの液体流を間欠的に停止することにより実施される。標的が固定される態様において、走査は一つあるいはそれ以上のチャネルの圧力を変化させることにより実施される。走査工程中に上記の走査機構を組み合わせることができ、この組合わせの多様性は明らかであり、本発明の範囲内に包含される。
【0077】
次の用語「タンパク質」は限定されない酵素、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原、抗体、成長因子等などを含むいずれかのタンパク質を意味するがこれに限定されない。ここで好適なタンパク質は少なくとも25アミノ酸残基からなり、より好適には少なくとも35アミノ酸残基からなり、更に好適には少なくとも50アミノ酸残基からなるものを含む。「ポリペプチド」および「タンパク質」はここにおいては通常アミノ酸残基のポリマーを意味するための交換可能な用語として使用される。
【0078】
次の用語「ポリペプチド」はペプチド結合される複数のアミノ酸を示す。アミノ酸はD−アミノ酸、L−アミノ酸、及びそれらの組合わせ、更にそれらの変性型が含まれる。次の用語、ポリペプチドは約20アミノ酸よりも多いものを意味する。用語「ポリペプチド」は通常は用語「タンパク質」と交換可能に使用されるが、しかしながら用語、ポリペプチドはまた20アミノ酸以上の不完全なタンパク質(一つのタンパク小片)を意味する。
【0079】
次の用語「受容体」はリガンド分子と特異的に相互作用可能な高分子を意味する。受容体は脂質二分子膜、例えば細胞膜、ゴルジ膜、ミトコンドリア膜など、あるいは核膜と結合されるか、あるいは細胞質内において会合分子としてあるいは自由分子として存在するか、あるいは基質上に固定される。
【0080】
次の用語「と連通して」は別のシステムあるいはシステムの構成部品から入力データを受信し且つ入力データに対応して出力応答を提供するシステムあるいはシステムの構成部品の能力に関する。「出力」とはデータ形式か、あるいはシステムまたはシステムの構成部品による活動形式となる。例えば、「走査機構と連通する」プロセッサは信号形式でプログラム命令を走査機構へ送信し上述のような多様な走査パラメータを制御する。「計測チャンバと連通する検出器」は計測チャンバからの光学的信号(光)を受信するために計測チャンバに充分に光学的に近接した検出器を意味する。「標的と連通する光通信における光源」は標的からシステム検出器に対して光路を形成し標的の光学特性を検出器により検出可能なように標的に対して充分に近接した光源を意味する。
【0081】
以下の用語、「計測可能な応答」は所定の技術に適した制御を利用することで背景技術とは有意に異なる応答を意味する。
【0082】
以下の用語、「電極」は電気信号を送信するかあるいは伝導する装置を意味する。
【0083】
以下の用語、「標的の至近距離にある」あるいは「標的に近接した」チップ電極というのは、チップ電極の出口端部が標的(例えば、細胞あるいは細胞構造)に対して適切な距離で配置され、標的の電気特性を一時的に変化させる(例えば、細胞膜の誘電特性を変化させたり、細胞膜に孔を形成する)ことを意味する。好適には、前記至近距離とは1mm未満である。
【0084】
以下の用語、「電解質溶液」はチップ電極内部の溶液を意味する。この用語は電解質の実際の組成あるいはイオン強度に対して限定されることなく使用可能である。
【0085】
以下の用語、「処理液」は細胞あるいは細胞構造の周囲の溶液あるいは媒体を意味する。
【0086】
以下の用語、「少なくとも一つの標的に対して集束される電場」、あるいは「少なくとも一つの細胞あるいは細胞構造に対して集束される電場」とは、電場が一つあるいはいくつかの標的/細胞/細胞構造上に集束され、これらの電気特性が周囲の標的/細胞/細胞構造に対して何ら影響を与えることなく実質改質されることを意味する。
【0087】
以下の用語、「絶縁破壊および孔形成されるのに充分な強度」とは、エレクトロポレーションに必要とされる実質的で正確な電場を意味する。
【0088】
以下の用語、「高度に集束された」電場は空間的に限定された電場を意味し、この電場はほとんどの場合軸方向寸法あるいは側方向寸法のいずれかにおける強度が不均一である。
【0089】
以下の用語、「調節可能な電場」は極性、位相、周波数、振幅(電圧あるいは電流)あるいは時間に関して変更可能な電場を意味する。
【0090】
以下の用語、「空間的に限定された」エレクトロポレーションは表面上あるいは溶液中の細胞群など選択された領域のエレクトロポレーションであり、ここで同じ溶液中あるいは表面上の別の細胞群は処理されないことを意味する。
【0091】
以下の用語、「生体膜」は生物学的区画を包囲する脂質二重層を意味し、且つ天然細胞膜あるいは人口細胞膜(例えばリポソーム)、膜小胞、あるいはその一部を包む。この用語「生体膜」は細胞全体を包囲する膜(例えば細胞膜)、細胞の一部を包囲する膜、人口細胞を包囲する膜、人口細胞の一部を包囲する膜を包含し、更に細胞小器官の膜を包含する。
【0092】
以下の用語、「ガラス」は材料の膨大な分類のうちのいずれかを意味し、この材料は典型的には酸化ホウ素、酸化アルミニウム、あるいは五酸化リンとケイ酸塩とを溶解して形成されるがこれに限定されない。
【0093】
以下の用語、「標的の電気特性を改質させる非平面状要素からなる実質的に平坦な基板あるいはプレート」とは、要素の表面が基板の表面に対して隆起するかあるいは低下した要素からなる基板を意味し、ここで要素は実質的に平坦な基板の表面に対して、且つ互いに対して異なる平面上に存在する少なくとも二つの先端部からなる。
【0094】
標的化および送達システム
本発明のシステムは少なくとも一つのチップ電極と標的を受け入れる容器とからなり、この容器はチップ電極により生成された電場に対して選択的に暴露されることで標的の特性を改質させる。例えば、本発明のチップ電極はそれに近接した細胞膜あるいは細胞内膜における誘電特性を改質させることができ、それによってその膜に孔を形成することができる。
【0095】
更に、本発明のチップ電極はまた薬剤を送達する、あるいは標的が浸される溶液の条件(例えば、pH、イオン強度など)を変更するための送達装置を提供する。図2A−Cに図示されるように、一態様において、チップ電極はピペットチップおよび電極の両方の特性を有する。これらの特性を組み合わせることにより、チップ電極内部の電極による電場の生成および薬剤送達は電場に対する暴露(例えば細胞膜における孔の形成)および薬剤との相互作用(例えば孔を通過する薬剤の内在化)を最適化する方法で調整される。
【0096】
ある好適な一態様において、システムは更に少なくとも一つのチップ電極を受け入れる電極プレートからなる。この電極プレートは複数のチップ電極と組み合わせて、チップ電極の配列を形成し、電場および/または薬剤に対して同時にあるいは連続して(あるいはこれらを組み合わせて)暴露させる。
【0097】
操作において、装置は電流あるいは電圧を送達する電源に連結され、且つ好適には薬剤の正確な量を送達可能にするポンプに連結される。例えば図1を参照。更に、自動分注ロボット装置および読み出し用プレート読み出しシステムがこの最適化された装置と連結可能である。本発明のシステムの構成部品は以下の詳細に記載される。
【0098】
チップ電極
チップ電極は薬剤を送達するおよび/または標的の溶液環境における条件を変更するための内腔部を画定するケース部材からなる。このケース部材は短いキャピラリ、小さいパイプ、あるいはピペットチップ形状である。適切なケース部材材料として:ガラス、石英ガラス、プラスチック、セラミック、エラストマー、ポリマー、金属、あるいは他の適切なもの、好適には非導電性材料が含まれるがこれに限定されない。一態様において、チップ電極ケース部材は薬剤が送達される開口部を備える標的対向端部からなる。このチップ電極は更にチップ電極の標的対向端部に近接する標的を電場に暴露させる固体導電性表面からなる。
【0099】
好適には、チップ電極の内腔部は非固体導電媒質からなる。この非固体導電媒質は液体、ペースト、ポリマー、およびジェル、樹脂などの半固形培地等が存在する。一態様において、非固形導電媒質は電解質溶液である。別の態様において、媒体は生理的緩衝液からなる。一態様において、媒体は一つあるいはそれ以上の薬剤からなり、チップ電極の標的対向端部の開口部を介して標的に送達される。チップ電極の注入あるいは充填は標準的な技術を利用して実現可能である。例えば、電解質溶液はケース部材の標的対向端部における開口部から、あるいは標的対向端部から遠位にあるケース部材の端部における後方開口部(「受け入れ側」)からチップ内に注入される。重力流、圧力に基づくポンプ機能、あるいは別の手段が使用される。
【0100】
好適には、薬剤の送達は導電性表面から媒質を通過して伝達される電流あるいは電圧の送達と同期化される。
【0101】
導電性表面はケース部材から取り外し可能な要素であるかあるいはケース部材に一体化される構成部品である。図9Dを参照。一態様において、チップ電極の導電性表面はロッド、シリンダー、ワイヤ、あるいはチップ電極の内腔部内に適合可能な別の導電性構造体の形状である。例えば、導電性構造体はケース部材の受け入れ側内に挿入可能であり、且つケース部材の内腔部における導電媒質と接触される。導電性表面は受け入れ側において一つあるいはそれ以上の連結部を介して電源に接続され電圧あるいは電流パルスを導電媒質を介して伝送される。受け入れ側の開口部は更に液体分配装置と連通し、チップ電極による電場の生成とケース部材の標的対向端部からの一つあるいはそれ以上の薬剤の送達が同期化される。しかしながら、導電構造体はチップ電極のケース部材の内腔部の内部におけるどのような場所にも配置可能である。
【0102】
別の態様において、チップの導電部はケース部材の壁部を貫通するワイヤとすることもできる。例えば、導電性構造体はケース部材の外側においてリングプレートに対して接続されるワイヤ(図9A)、あるいはケース部材の壁部の片側(図9B)あるいは両側(図9C)を貫通するロッドである。
【0103】
しかしながら、更なる態様において、チップ電極の導電性表面はそれ自体がケース部材の一部である。例えば、ケース部材の内壁は、少なくとも一部が導電性であり電解質溶液と接触する表面からなる。例えば図9E参照。
【0104】
ケース部材の電極表面は多数の限定されない方法により提供される。例えば、導電材料からなるケース部材は外側を絶縁膜で被覆される。非導電性材料からなるケース部材の内側を金属あるいは導電ポリマーに限定されない、いずれかの導電性材料で被覆することも可能である。ケース部材の内側は導電ポリマーで全体あるいは一部が被覆される。一態様において、ケース部材の標的対向端部は被覆可能である。ケース部材に対する電気的接続はケース部材の導電性表面を介し、且つ集束された電場を標的に送達する電解質溶液を介して伝送される。
【0105】
ケース部材は先細の標的対向端部を構成する外径および/または内径を変更可能に構成される。あるいは、ケース部材は別の円筒形の端部からなる。特定の標的に対して最適な方法でチップ電極により生成される電場を最適化するケース部材の内径および外径における多様化および標的対向端部におけるあらゆる設計が可能である。例えば、チップ端部の設計はチップ電極によりエレクトロポレーションされる細胞の数および大きさに対して変更可能である。
【0106】
図4はチップ電極の標的対向端部の形状についての限定されない多様な変更例を示す。上段の図は均一な内径を有し且つ外径を変化させる、すなわち外径を均一、縮小あるいは拡大させたチップ電極を示す。下段の図は内径を縮小させ、且つ外径を縮小、均一あるいは拡大させたチップ電極を示す。
【0107】
好適には、チップ電極の長さは用途に応じて、約50cm未満、約25cm未満、約10cm未満、約5cm未満、約1cm未満、約500μm未満、約200μm未満、約100μm未満、10μm未満、および約1μm未満である。通常は、チップ電極の標的対向端部の開口部の直径は約1ナノメートルから約数千マイクロメートルであり、例えば50nmから5000μmなどである。少数の細胞のエレクトロポレーションに関して、内径が50〜2000μmであり外径が60〜5000μmであるチップがよく使用され、一方、単一細胞および細胞小器官のエレクトロポレーションに関して、外径が0.03〜50μmであり内径が0.025〜49μmを有するチップが適切である。
【0108】
チップ電極は多様な加工方法を使用して形成される。例えば、チップ電極はフィラメントに備え付けられた標準的な牽引装置を利用して引き伸ばされた出発原料を溶解し更にその材料を引き伸ばして適切な大きさのチップを形成することによって形成される。石英あるいは石英ガラスなど非常に溶融温度が高い材料に関して、炭酸ガスレーザーあるいはタンタルフィラメントを装備した牽引装置が好適に使用される。このような加工方法は少数のナノ電極を製造するのに適する。あるいは、化学エッチングまたはフレームエッチング、化学あるいは非化学気相堆積法、熱成長、電解重合法などの電解重合技術あるいはイオン注入が適切な大きさのチップを微細加工することに利用される。以下に説明される、所定の態様において、チップ電極は電極プレートの内蔵部品として加工される。
【0109】
本発明のチップ電極は一つあるいはそれ以上の膜非透過性剤の細胞内送達に利用可能である。チップ電極を通して送達される電気パルスはチップ電極の末端の外側において小さく、集束した、調節可能な電場を生じさせる。チップ電極が膜、例えば細胞膜あるいは細胞内顆粒の膜などから適切な距離に配置される際、この電場は膜に孔を形成させるのに充分である。
【0110】
電解質充填チップ電極の出口に形成される電場は一定電流密度で絶縁面における円板電極前面に対する溶液中の電位の変化を計算する電気化学的課題に対しての解決手段を利用して査定される(NanisおよびKesselmann,J.Electrochem.Soc.118:454−461,1971)。チップ電極の対称軸に沿って溶液中へ延伸する電場の大きさは、以下の式で示され:
【0111】
【数1】

【0112】
ここでZはチップ電極の出口からの微小距離であり、z/aに関し、zはチップ電極出口からの距離であり、aはチップ電極の半径である。Ψはボルトに印加された電位であり、Lcはチップ電極の長さである。この方程式は以下の式(4)のチップ電極の外側における円柱軸に沿った電位降下を見出すために積分することが可能である。
【0113】
【数2】

【0114】
方程式(3)から得られる電場強度は細胞膜全体の膜電位を計算する方程式(1)に挿入可能である。
【0115】
チップ電極の大きさ、あるいは電場パラメータを変更することにより、電場影響領域が変更され、従って細胞の塗布の際に、電場に対して暴露された、あるいは標的化された細胞の数およびチップ電極内への液体の送達(従ってチップ電極内の薬剤)が制御可能となる。すなわち、単一細胞、複数の細胞、あるいは大量の数百万の細胞が標的化される。このチップはまた標的対向端部に近接するチップの部分に穴を備えることにより、電場を三次元に拡散し懸濁細胞のエレクトロポレーションを可能にすることもできる。例えば図9F参照。
【0116】
好適な一態様において、チップ電極は一つあるいはそれ以上の対極と電気通信される。対極はチップ電極に対して、例えば二次元あるいは三次元で移動可能である。別の態様において、チップ電極は対極に対して移動可能である。また別の態様において、チップ電極および対極の片方あるいは両方が標的に対して移動可能である。更に別の態様において、対極はチップ電極に対して固定した位置関係にある。
【0117】
図9Bは対極の形状について限定されない変更例を示す。単一のあるいは複数のワイヤあるいはロッドとして、チップ電極が中央に配置される円柱として、中央にチップ電極を有するリング状ワイヤとして、あるいは小さいプレート電極として形成される。図9Cは本発明の別の態様の対極を示し、エレクトロポレーション/薬剤送達のための標的を含有する容器内に設置されている。この対極は容器内に個別素子としてあるいは細胞のような標的を含有するプレートの被覆導電膜として提供される。
【0118】
電極プレートおよびチップ配列
本発明は一つあるいはそれ以上のチップ電極を受け入れる電極プレートを更に提供する。チップ電極は電極プレートから取り外し可能か、あるいは電極プレートの一部として一体化される。電極プレートはチップ電極が電源装置、点滴装置、ポンプなどの大規模装置と相互作用する手段を提供する。一態様において、電極プレートはチップ電極とパルス発生器との接点を構成可能である。電極プレートはシステムにおける全てのチップ電極に対して同一の電流/電位を伝導することができ、あるいは個別に各チップ電極に対応することもできる。
【0119】
一態様において、電極プレートは複数のチップ電極を構成し複数の標的を同時に標的化するおよび/または単一の標的を連続して標的化する(例えば電極プレートを移動することにより標的が複数のチップ電極に対して次々と暴露される)。
【0120】
好適な一態様において、複数のチップ電極は直線配列として単列に配置される。別の態様において、複数のチップ電極は二次元マトリクスを形成する複数の配列で配置される。通常、チップ電極は一つあるいはそれ以上の標的を電場および/または薬剤に対して空間的に限定され且つ高度に集束された方法において暴露することを促進させる方法で電極プレートに配置される。一態様において、チップは標的が局在化するスポットに電場が集束されるよう配置される。例えば、チップはチップの中心間の距離が工業規格マイクロタイター皿の中心間の距離に対応するよう電極プレート上に配置される。標的容器、例えばペトリ皿、マルチウェルコンテナ、およびその類の構造に基づき別の適切な配置が設定される。
【0121】
チップ電極の標的対向端部間の距離は非常に短く、ほんの数マイクロメートルであるため、異なる標的に対する高度な空間分解能が可能である。
【0122】
図2Bは標的容器内の複数のウェル/スポットにおいて、細胞などの、標的の並列エレクトロポレーション用に整列されたチップ電極の直線配列が示される。図2Cは細胞の複数のウェルあるいはスポットに含有する複数の細胞をエレクトロポレーションするための二次元マトリクス配列を示す。図A、B、Cに記載される数字はチップ電極及び電極プレートのモジュール形式が示され、これらの構成部品は互いに取り外し可能である。すなわち、ピペットチップ(1);導電性構造体(チップ電極の電極部品);および複数のチップ電極用取付けラックを受け入れるための取付けラックあるいはプレート(3)が組み立てられることによりチップ電極の異なる型は異なる電極プレートに使用可能である。異なる電極プレートには一つあるいはそれ以上の異なる型のチップが利用され、更に電極構造の異なる配置が一つのチップ電極に対する単一の型のケース部材で使用可能である。
【0123】
取り外し可能なチップ電極を使用する際、電極−プレートは標的含有表面よりも上方向の特定の高さに対してチップ電極の垂直配置を形成する。この電極プレートは一つあるいはいくつかの対極をも包含する。電極プレートの形状はチップ電極の数および適用に従って変更可能である。取り外し可能なチップ−電極に対して電極プレートは図5A〜Cに示されるように、導電あるいは絶縁材料の異なる層で形成される。
【0124】
図5A〜Cは図2に示されるチップ電極を受け入れる電極プレートを示し、取り外し可能なチップ電極が例示される。図5Aは単一チップ電極を受け入れる開口部を備える電極プレートを示す。図5Bは一列のチップ電極用の開口部を備える電極プレートを示し、図5Cは二次元マトリクス配列のチップ電極用のものを示す。電極プレートは所望の数の開口部を備え且つ中心から中心への距離が所望の距離で設計され、例えばマイクロタイタープレートに多様な数のウェルで装着させる。電極プレートの二種類の層(導電および絶縁)および対極は、それぞれの基礎的な特徴、すなわちそれぞれ絶縁膜および導電膜を備える条件が満足される限りどのような種類の材料でも加工される。対極の数は用途に応じて変更される。その数は通常は電場に暴露される(例えばエレクトロポレーションされる)ウェル/標的の数と相関し、チップ電極の数とは相関しない。個別のウェル中の細胞あるいは細胞構造の並列エレクトロポレーションに関して、各チップ電極は好適には一つの対極に提供される。一つの細胞含有貯蔵部における表面の2つあるいはそれ以上のスポットをエレクトロポレーションに関して、数個のチップ電極が接地される一つのあるいは数個の対極に対して操作される。結果として、提供されるべき必要な対極の数は適用に応じて決定される。
【0125】
電極プレートは2つのねじで図示される、電流あるいは電圧発生器と連結するための導電層との接触点を含む。
【0126】
プレートの導電層に使用される異なる基板材料の限定されない例として、結晶性半導体材料(例えば、シリコン、窒化ケイ素、Ge、GaAs)、金属(例えば、Al、Ni)、ガラス、石英、結晶性あるいは非晶質絶縁体、セラミック、プラスチック、その他の重合体(例えば、テフロン(登録商標)などのフッ素重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリカプロラクトン、ポリエステルカルボネート、ポリイミド、ポリケトン、ポリフェニルスルホン、ポリフタルアミド、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシポリマー、サーモプラスチック等)、その他の有機及び無機材料及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0127】
微細加工技術は非常に膨大な配列の電極装置を製造するのに適する。例えば、チップ電極からなる電極装置は導電性半導体材料の直接加工により製造可能である。適切な半導体材料は、炭素材、インジウムスズ酸化物、酸化イリジウム、ニッケル、白金、銀あるいは金、別の金属あるいは合金、固体導電性ポリマーあるいは金属化炭素繊維に、更に適切な電気的および機械的特性を備える別の半導体材料を追加して挙げられるがこれに限定されない。一態様において、電極装置は基礎的平面炭素、熱分解黒鉛(BPG)、ガラス状炭素などの導電性炭素材料からなる。
【0128】
一態様において、ナノスケール装置を形成する際、配列はSTMあるいはAFMプローブ走査を利用するナノリソグラフィーによりドープされた半導体基板上で構築される。例えば、金属クラスターは溶液から、あるいはこのような基板上の走査トンネル顕微鏡/原子間力顕微鏡(STM/AFM)チップから電解蒸発により溶着される。この半導体表面は酸化されるため、ほぼ表面全体が細胞と接触する表面から突出したチップを除いて絶縁され、従って電極ノイズが最小限となる。
【0129】
チップ電極を構成する電極プレートはまた化学あるいはフレームエッチング、蒸着加工、リソグラフィーなどにより加工される。
【0130】
本発明の別の態様において、基板は非導電性材料からなり、その中に例えばレーザー光、放電あるいは電子ビームリソグラフィーなどのリソグラフィーに基づくナノファブリケーション技術、あるいは穴あけ、あるいは爆破により、穴あるいは開口部が形成される。この開口部は導電性媒体、好適には炭素繊維、あるいは導電性ポリマーあるいは金属等の半導体材料で充填される。一態様において、基板は導電性材料(例えば金属コーティング)で被覆され、更に開口部の周縁部は隆起され細胞膜内に挿入される先細チップが形成される。別の態様において、開口部の隆起した周縁部のみが導電性である。また別の態様において、開口部の細胞接触表面のみが導電性である。
【0131】
電極プレートに挿入される取り外し可能なチップ電極は単一、一列、二次元マトリクスのチップ電極として図6A〜Cに図示される。図6A〜Cは単一(A)、数個(B)、および複数(C)のチップ電極用の電極プレートに取り付けられるチップ電極を示す。図6Bおよび6Cは各チップ電極に対して個別のウェルにおけるエレクトロポレーションを示す。
【0132】
図3A〜Cにおいて異なる態様が図示される。図に示されるように、所望の量の並列チップ電極が単一ユニットとして製造され、このユニットは実質平面状プレートとその上に組み立てられた非平面要素とからなりこの非平面要素はチップ電極を形成する。このプレートは図に示されるように、異なる層に対して分離可能である。
【0133】
一態様において、プレートの最上層は標的に送達されるための薬剤の貯蔵部を備える。好適には、貯蔵部は導電性表面あるいは構造からなる。貯蔵部の内壁は導電性材料で製造されるため貯蔵部全体が電極として作用し、あるいは電極がワイヤ、ロッドあるいは別の導電性構造体を構成し各ウェルにおいて露出される。第二の層は、好適には一定の間隔であけられ、第一層における各貯蔵部上方の中心に開口部を有する突起部、あるいはチップを形成することによりプレートの他の部位よりも隆起される領域を構成する。これらの隆起した領域は貯蔵部に連通する内腔部を画定する内壁部を構成する。好適には、内腔部は導電媒質からなり電極および薬剤含有貯蔵部から電圧あるいは電流を伝送する。より好適には、プレートから遠位にある非平面要素端部は先細に形成され貯蔵部から送達される薬剤の局部化を促進させる。
【0134】
図3A〜Cに示されるように、第三層が追加され対極を構成する。一態様において、チップ電極を形成する各非平面要素は対極層を含む。このような配置は例えば、チップが電場をマイクロタイター皿の各ウェルに提供し、例えばエレクトロポレーションを実施する際に適する。あるいは、一つあるいは数個の対極が、例えばある融合性細胞培養における数個のスポットあるいは場所のエレクトロポレーション用に提供される。この態様において、対極は一つあるいはそれ以上の標的要素(例えば、標的細胞)と共に多様な非標的要素(例えば非標的細胞)が含まれる標的容器の底面に設置される。例えば、対極は培養皿あるいは別の基板の底面に設置される。チップ電極および単一あるいは複数の対極は単一あるいは数個の電流あるいは電圧発生器に連結され電場を伝送する。一つあるいは数個の対極は例えば一つの融合性細胞培養における数個のスポットあるいは場所のエレクトロポレーションに対して提供される。この態様において、対極は一つあるいはそれ以上の標的要素(例えば、標的細胞)と共に多様な非標的要素(例えば非標的細胞)が含まれる標的容器の底面に設置される。例えば、対極は培養皿あるいは別の基板の底面に設置される。チップ電極および単一あるいは複数の対極は単一あるいは数個の電流あるいは電圧発生器に連結され電場を伝送する。
【0135】
図3A〜Cはチップ電極が一つのプレートに並列に配置される実施例を示す。このプレートは3つの層を構成し、(1)層は電極および電解液貯蔵部の両方として作用し且つ少なくとも一部が導電材料からなるウェルを含み、(2)層は(1)層のウェルに対応する並列チップを備える非導電層であり、(3)層は対極層であり、ここで各チップ電極に対するそれぞれ別個の環状対極が図示される。図3Aはこの形式で加工された一つのチップ電極の拡大図を示し、図3Bは二次元マトリクスの並列チップ電極を備えたプレートを示す。層の数および電極の形状は大きいあるいは小さい電極領域のどちらが適切かにより変更可能である。例えば、フィラメントはプレート内に成形されあるいは埋め込まれる一方、チップ電極全てにおいて同じ電極領域が露出される。
【0136】
更に、微小流体チャネルシステムはチップ電極の最上層に備えられる。このようなチャネルはより有利な送達方法が可能となり、例えば薬剤のプラグの送達法、緩衝液から分離させた送達法、あるいはいくつかの異なる薬剤の連続送達法等が可能となる。
【0137】
標的容器
上述したように、本発明のシステムはチップ電極あるいはチップ電極プレートにより提供される条件あるいは薬剤および電場に暴露させる一つあるいはそれ以上の標的を含有する標的容器からなる。「容器」と記載したものの、標的容器は壁部を構成する必要はなく実質平面状の基板、例えばスライドガラス、微小流体チップ、あるいは膜など、標的が比較的局部化され、例えば電場および/または薬剤の送達に対して標的化され暴露されるのに充分な一定期間、基板上の位置に安定して設置されるよう提供される。一態様において、標的は複数の非標的要素により包囲され、例えば、標的は懸濁液中の、培養皿の底部に接着された、あるいは組織切片あるいは組織移植片における、細胞集団中の一つあるいはそれ以上の細胞である。細胞は初代細胞培養あるいは株化細胞培養由来、あるいは切開組織由来である。一態様において、標的容器はマイクロタイタープレートである。
【0138】
多様なウェルの数および寸法のプレートの例を図7A〜Dに示す。これらの図は、単一スポットがエレクトロポレーションされ(図7A)、あるいは数個のスポットがエレクトロポレーションされ(図7B〜D)、且つ別個のウェルが使用され(図7BおよびC)、あるいは大規模な融合培養(図7D)が使用されたかどうかに基づきエレクトロポレーション前および/または後の細胞を培養した異なるプレートを例示する。
【0139】
好適には、商用自動ワークステーションに適したプレート、例えば、ロボット操作分注装置あるいはプレートリーダーが使用される。細胞は融合性培養として、あるいは細胞プレートの界面化学または地表地形あるいはその両方により画定された設計パターンで成長可能である。エレクトロポレーション実験の最適な読み出しに関して、細胞培養プレートは好適には光学的透過性材料で製造される。更に微小流体チャネルが一体化された細胞培養プレートを設計し、液体送達をより促進させ、例えば、エレクトロポレーションされた細胞を緩衝液で洗浄あるいは表面還流させるかあるいは制御された様式で細胞に対して薬物を供給することも可能である。微小流体液は以下に更に詳細に説明される。
【0140】
微小流体チャネル
標的化/送達システムにおけるいくつかの部位に対し液体送達用の微小流体チャネルを構成し、たとえば取り外し可能なチップ電極が使用される場合には細胞培養プレート、電極プレート、またはチップ電極プレートが挙げられる。液体送達用および/または液分配用の微小流体チャネルと導電性電極とのネットワークは電極プレートの一部として加工されたあるいは取り付けられた選択された数のチップ電極に対してパターン化され直接接続される。あるいはまたは追加して、微小流体チャネルは標的容器/細胞培養プレートに一体化される。これは図11A〜Cに図式的に図示される。
【0141】
例えば、微小流体チャネルは図11Aに図示されるように、チップ電極プレートに一体化され、あるいは図11Bに図示されるように電極プレートに一体化され、薬剤のプラグの投与あるいはチップ電極を介して一つあるいはいくつかの薬剤を連続して送達する。微小流体チャネルはまた図11Cに示されるように細胞培養プレートに一体化され、細胞周囲溶液を迅速に交換するかあるいは細胞培養中の溶液を連続的に洗浄/かん流させる。
【0142】
標的含有溶液、例えば細胞液、あるいはチップ電極プレートまたは電極プレート中の溶液貯蔵部などに対しての溶液の微小流体送達は基板中に一つあるいはそれ以上の微小チャネルを加工することにより実施され、このチャネル出口は溶液を含有する標的容器のそれぞれ対応する部分(「標的貯蔵部」)あるいは電極プレートの貯蔵部(「電極プレート貯蔵部」)、(総称して「貯蔵部」)と交差するかあるいはその中に注がれる。基板は以下に詳細に記載される二次元構造体として構成可能である。基板は通常、一つあるいは数個の貯蔵部と交差する出口部を備える複数の微小チャネルを構成する。
【0143】
一態様において、各微小チャネルは少なくとも一つの注入口(例えば試料あるいは緩衝液の受け入れ用)を構成する。好適には、注入口は基板上の配置および形状を工業規格マイクロタイタープレートにおけるウェルの配置および形状に一致させた容器からの溶液を受け入れる。微小チャネルはこの分野においてルーチンな方法、例えば高度反応性イオンエッチング、ソフトリソグラフィーなどを使用して製造される。チャネル幅は以下に詳細に記載されるように用途に基づいて変更可能であり、通常は約0.1μm〜約10mmの範囲、好適には約1μm〜約150μmの範囲であり、一方で貯蔵部の寸法は貯蔵部内に供給されるチャネル出口の配置に基づき変更可能である。
【0144】
好適には、微小チャネルおよび貯蔵部内に含有される溶液は迅速に且つ効率的に置換され且つ交換される。迅速な溶液の交換は多様に異なる微小チャネルネットワーク配置を利用して達成される。一態様において、複数の微小チャネルは貯蔵部内に集中しあるいは供給され、一方別の態様において、複数の微小チャネルは単一チャネル内に集中しその単一チャネル自体が貯蔵部に集中する。この複数の微小チャネルは薬物および緩衝液送達用のチャネルがそれぞれかみ合うよう構成される。
【0145】
微小チャネルは試薬、薬物、細胞内在化剤等を細胞から送達し且つ回収するのに使用される。貯蔵部からの送達および回収は、適切に設計されると、極度に速い、例えばマイクロ秒以下で実施される。更に、微小流動ネットワークは基板の微小チャネル中の薬物の勾配を形成するよう特定の方法で設計可能である(例えば、Chiu 他、JACS)。典型的な構造を以下に記載する。
【0146】
平面的放射状スポーク−車輪型
この構造において、多量の(例えば96〜1024)の微小チャネルが放射状スポークとして配置され約10μm〜約10mmの範囲の寸法を有する貯蔵部内に集中する。使用される微小チャネルの数は工業規格マイクロタイタープレートにおける試料ウェルの数、例えば96〜1024のウェルに適合するよう選択される。ウェルプレートから投入された数に適合する数の微小チャネルに加えて、好適には少なくとも2つの追加した微小チャネルがあり、一方は緩衝液送達用であり他方は廃棄物除去用である。
【0147】
チャネルから液体を取り込むことにより貯蔵部に含まれる液体を効率的に交換するために、投入チャネル及び廃棄チャネルの間の角度は最適化される。液体混合および置換はこの角度が約180°である時に最適化され、またこの角度が0°に向かって減少するに従って徐々に悪化する。流速が高くなるにつれて(cm/s〜m/s)、この角度の効果は徐々に重要となり、一方流速が低くなるにつれて、投入チャネルおよび廃棄チャネルの間の角度は重要でなくなる。
【0148】
高い流速で液体の置換の効率を最大にするために、全ての投入チャネルが共通の廃棄チャネルを共有するよりも、放射状チャネルの数を増加させることによって各投入チャネルがそれに対応する廃棄チャネルをそれぞれ有するようにする。この形式において、投入チャネルと出口チャネルとの間の角度は全て約180°であり、最適な液体置換を確実にする。分岐したチャネル形状を使用することを含む別の方法について以下に更に記載する。
【0149】
分岐加入形式
この形式において、好適には2つのチャネルのみが貯蔵部に直接連結され、一方は化合物送達用であり、もう一方は廃棄物用である。全ての投入チャネルを分離し且つ各投入チャネルの出口が貯蔵部に供給されるよう集中する代わりに、チャネルは分岐形状で配置される。96−1024ウェルプレートと連動して、単一送達チャネルが多数の投入微小チャネルと連結し、各投入チャネルは96−1024ウェルプレートの異なるウェルからの投入を受け入れる。貯蔵部内へ多量な化合物の迅速な吸引における送達は、化合物を含有する液体が制御され多重化されることにより、単一チャネル内に送達され貯蔵部に直接供給されることで実現される。
【0150】
この形式の好適な一態様において、「魚の骨」構造が形成され、薬物送達微小チャネルに相当する各「骨」がバッファ容器に接続される主要な「脊椎」チャネルと交差する。貯蔵部に対して迅速で連続した薬物およびバッファの送達は、最初に薬物送達微小チャネルの一つに正圧を印加した後にその微小チャネルからバッファを含有する主要微小チャネルに対してサンプルのプラグを導入することで実施される。このプラグはバッファ容器に対して正圧を印加することで貯蔵部に導入され、このバッファ容器はプラグを貯蔵部に運搬した後にバッファ溶液で洗浄される。このサンプルとバッファの送達サイクルは異なる微小チャネルに含まれる異なるサンプルで繰り返される。(サンプル送達用およびバッファ送達用)微小チャネルの寸法(幅および厚さ)は非常に多様化され、典型的な寸法は約1〜100μmであり、好適には10〜90μmである。流速もまた変化可能であり、好ましくはμm/sからcm/sの範囲である。
【0151】
圧力は等方性であるため、正圧あるいは陰圧を印加すると、いずれか特定の方向を優先することなく圧力降下に従って液体は流れる。従って、好適には受動逆止弁が薬物送達微小チャネルと主要バッファチャネルとの間の接合部に一体化される。これらの一体型逆止弁はバッファ容器に対して正圧が印加される際、主要バッファチャネルから各薬物送達微小チャネルに対する流れを遮る一方、サンプルを各薬物送達微小チャネルに提供する容器に対して正圧が印加される際にはこれら各薬物送達微小チャネルから主要バッファチャネルに対して流れるようにする。微小流体バルブと同様にポンプ機構に関し多数の適切な設計が存在する。
【0152】
簡便に実施できるおかげで圧力により流れを制御することについて以下に強調するが、液体を微小チャネルに運搬するために多くの適切な手段が可能であり、圧力制御流、電気浸透流、表面張力制御流、移動壁制御流、熱勾配制御流、超音波流、およびせん断制御流が含まれるがこれに限定されない。これらの技術は公知である。
【0153】
バルビングおよびポンピング
個別の微小チャネルに対する隔壁の使用
このスキームにおいて、薬剤源を提供するために各微小チャネルに接続された容器は隔壁により密閉される。この隔壁は気密シールを形成するため、隔壁を通して挿入される針あるいはチューブを介して正圧を(例えば空気あるいは窒素と共に)印加すると液体は微小チャネルを経て貯蔵部中に(例えば放射状微小チャネルが集中するスポーク−車輪の中心に)注がれる。隔壁を通して挿入される針あるいはチューブを介してわずかな吸引を伴って陰圧を印加すると液体は反対の方向に回収される。
【0154】
この針−隔壁の一連の配列により各容器は個別に処理可能となり、従って各微小チャネルに対して処理可能となる。このスキームを利用すると各微小チャネル内に含有する液体を同時に且つ連続的にポンピングおよびバルビングすることが可能となる。微小チャネルそれぞれに対して印加される正圧および陰圧を正確に制御することにより、各貯蔵部内への液体の流れおよび化合物の送達を制御することができる。微小チャネルに対して個別に処理する必要のない設計により、単一あるいは数個の圧力制御装置を備える単一あるいは数個の隔壁だけで充分となる。
【0155】
チャネルの寸法の変化による液体抵抗の制御
個別の隔壁を使用する上記設計は、良好なフレキシビリティおよび制御性を提供するが、一連の化合物送達および液体流が予め規定される所定の利用に対して、より簡素化された設計によってより簡素化され容易に実施することができる。このスキームにおいて、均一な正圧が全ての容器に対して印加され、これは例えば単一の隔壁を介して全ての容器に対して均一に印加された圧搾空気を使用して、あるいは貯蔵部の入口と出口の間の高さの差異により生じる重力流を利用して、実施される。各微小チャネルから貯蔵部内への迅速で連続した化合物の送達は各微小チャネルの液体抵抗を変化させて実現され、この液体抵抗の変化は各微小チャネルの幅および長さを変更することで容易に実施される。
【0156】
液体抵抗は環状キャピラリーの直径の4乗に対して且つキャピラリーの長さに対して直線的に増加する。各微小チャネルの寸法を徐々におよび体系的に変化させることにより、センサ室内の一つあるいはそれ以上のセンサに対して化合物が送達される際の微小チャネル間の時間遅延は制御可能である。
【0157】
外部バルブによる液体流の制御
この構成において、配列ウェルプレートの各ウェルからの化合物が対応する微小チャネルに接続された外部チュービングあるいはキャピラリーを通して導入される。これらの外部のチュービングあるいはキャピラリーに取付けられた外部バルブは液体流を制御するのに利用される。多数の適切な外部バルブが存在し、手動、機械的、電気的、空気圧、磁気的、流体的、あるいは化学的手段(例えばヒドロゲル)により作動するものが含まれる。
【0158】
内部バルブによる液体流の制御
外部バルブによる液体流の制御と比較して、より多くのマイクロチップ付きバルブが利用される。これらのチップ付きバルブは外部バルブに対して使用される原理とある程度同じものに基づき、あるいは、ボールバルブ、バブルバルブ、界面動電バルブ、ダイアフラムバルブおよびワンショットバルブなど完全に異なるものが存在する。チップ付きバルブを利用する利点として、微小流動システムに一体化させるのに生来適していることである。特に適するものとして、受動的逆止弁が挙げられ、これは上述のいくつかの設計を実施するのに好適である(例えば分岐加入形式など)。
【0159】
エレクトロポレーションシステム
一態様において、電場に対して標的を選択的に暴露し且つ一つあるいはそれ以上の薬剤を送達する標的化および送達システムは細胞および/または細胞内顆粒および/または膜画分のエレクトロポレーションに適合する。このシステムは高度に空間分解された電場を提供し膜に囲まれた構造体の膜障壁を物理的に破壊することにより、薬剤の拡散経路を形成し、この膜に囲まれた構造体の中に導入され、単細胞および細胞小器官などの生化学的物質を改質する。
【0160】
一態様において、この高度に集束された電場は数ナノメートルから数マイクロメートルの範囲における外径を有する少なくとも一つのチップ電極を利用して得られる。これは単細胞および細胞内構造体までもエレクトロポレーションすることが可能である。また、この方法は表面上の単一巨大分子など特定の場所に対して少量の薬剤の配置を制御することが可能である。このチップ電極は細かく目盛り付けされたミクロポジショナで個別に制御されることにより、浸透化された構造体に対して正確な電極の位置合わせが可能となる。有効な穴あけ時間の間、細胞外媒体あるいは細胞小器官外媒体に添加される細胞非透過性溶液が拡散により細胞あるいは細胞小器官の内部に導入される。
【0161】
別の態様において、少なくとも二つのチップ電極からなるエレクトロポレーションシステムが提供される。電極間の距離が非常に短い二つの電極により形成された高度に集束された電場が使用されるため、ナノメートルからマイクロメートルの範囲内に離れて存在する標的へのエレクトロポレーションおよび薬物送達が可能となる。当然、より遠く離れた距離、例えばミリメートルあるいはセンチメートルまで離れて配置される標的に対しても可能である。例えば、このシステムは多数の標的を並列形式でエレクトロポレーションが可能である。電場および薬剤送達のパラメータは個別に各チップ電極に対して制御可能である。一態様において、チップ電極は三次元空間で移動可能であり、一方別の態様において、少なくとも二つのチップ電極が互いにx軸方向およびy軸方向に対して固定される。
【0162】
図1は本発明の一態様のチップ電極を使用したエレクトロポレーションシステムを示す概略図である。このシステムは、電極プレート(3)に電気的に接続された固体導電材料あるいは表面(2)を備える電解液充填チップ電極(1)からなる。この電極プレートはパルス発生器(4)に接続されチップ電極および接地を介して電流あるいは電圧パルスを対極(5)へ送達する。チップ電極は細胞液(6)内に設置され、チップ内に含有する溶液は細胞液内の溶液と接触する。チップ電極に含有する溶液は細胞内に導入される対象としての一つあるいはそれ以上の薬剤を補充するのに適した導電媒質である。好適には細胞液は薬剤以外は同一の溶液かあるいは類似の適切な媒質を含有する。
【0163】
図1に示される実施例において、チップ電極はチップ電極の外側において導電リングプレートに接続される内蔵型白金線電極を有するピペットチップから構成される。この導電リングプレートは電極プレートにおける導電層と接触するよう設置される。この電極プレートは4層からなる。絶縁層は第2の導電層を暴露する小さい領域を有しチップ電極と接続できるようにする。第3の層は電気パルスを対極、例えば接地から分離するよう絶縁処理されており、第4層は内蔵型対極、例えば細胞液と接触される例えば接地などの対極を内在化させた導電層である。チップ電極の設計は上述のように多くの様式で変更可能であり、同様に対極の設計も変更可能である。
【0164】
一つあるいはそれ以上の細胞−ローディング剤を含有する液体はなんらかのポンピング様式により細胞あるいは細胞構造に対して送達可能である。例えば、圧力制御ポンピング、重力流に基づくポンピング、電気浸透、電気泳動、あるいはそれらの組合わせが利用可能である。多様な大規模装置は電極プレートと相互接続され、各チップ電極に対して薬剤および溶液を送達することができる。
【0165】
組立ては電極プレートから取り外し可能に取付けられるチップ電極を備えた別個の部材あるいは構成部分として製造することができ、あるいは電極プレートに固定されたチップを備えた内蔵型システムとして製造することができる。液体処理および溶液流機能はシステムに内蔵されてチップと電極プレートとの組合わせおよび/または細胞プレート内に微小液体を含有させる。例えば、上述した微小流体チャネルは薬物、染料、遺伝子、バッファ等を細胞に供給する前、間、後にエレクトロポレーション処理を実施するように構成されるか、あるいはより伝統的な微小分注技術が利用可能である。
【0166】
好適には、システムは更に:パルス発生器の操作、チップ電極プレートおよび/またはそれらが備える微小流体チャネルに対して流体および薬剤を送達、微小チャネルを介して液体流を流すようにするバルブおよびスイッチの操作;システムの構成要素の移動(例えば、チップ電極、チップ電極プレート、対極(これらは個別に移動可能である)、細胞プレートなどを走査する)、検出器による操作およびデータ分析のうちの一つあるいはそれ以上を制御するシステムプロセッサを構成する。好適には、システムはまたシステムの操作を表示し且つシステムパラメータを変更するグラフィカルインターフェースを構成するシステムプロセッサと連通するユーザーディバイスを構成する。
【0167】
例えば、多くの異なるスキームが構想可能であり、パルス発生器はプログラムされ、あるいは手動で制御され異なる型の細胞−ローディング剤および細胞に対して最適なローディング条件を提供する。すなわち、パルス幅、極性、波形、パルス振幅、および別の関連するパラメーターの両方はチップ電極を使用する細胞ローディングの進行の間変化可能である。好適には、プログラム可能なパルス発生器はこれらのパラメータを制御するのに使用される。
【0168】
一態様において、エレクトロポレーションを実施する完全なシステムはターゲッティング/送達装置(チップ電極、電極プレート、および細胞培養プレートが備わる)からなり、これはコンピュータソフトウェアにより制御される液体ポンピング装置と電場発生器とに連結され、更にエレクトロポレーション処理の検出、データの収集および分析のための適切な読み出しシステムに連結される。これは図12に例示される。
【0169】
本発明の別の態様において、エレクトロポレーションシステムはモジュラーであり、更に一つあるいはそれ以上のシステム構成部品はシステムから取外し可能であり、更に別の構成部品と交換可能である。例えば、単一チップを受け入れる電極プレートは多数のチップ電極を受け入れる電極プレートにより交換可能である。同様に、システムは例えば図7に図示されるように多様な交換可能な細胞プレートを構成する。あるいは、または追加して、構成部品の所定の組合わせが内蔵され、例えば、チップ電極が電極プレートの内蔵部品であり更に電極プレートから取外すことができない。
【0170】
図8は本発明のチップ、チッププレートおよび細胞容器の異なる組合わせが図示される。
【0171】
図12は追加装備を組み合わせたエレクトロポレーションのセットアップが示される。パルス発生器と液体分注システムは好適にはソフトウェアプログラムにより制御され、電場パラメータ、パルスの数、パルスの長さ、および排出する溶液の量が正確に計算される。図に示される実施例において、検出器が備えられ、エレクトロポレーションおよび/または細胞内への薬剤の導入が検出される。一態様において、検出器は蛍光標識された分子を検出可能にする。例えば、検出器は励振源を提供するレーザー、CCDカメラ、データを収集および分析するコンピュータから構成される。本発明のエレクトロポレーションシステムは顕微鏡台に容易に取り付けられ、あるいはロボット分注装置および/またはプレートリーダーシステムを内蔵部品として製造可能である。
【0172】
エレクトロポレーションシステムの操作
ポジショニング
チップ電極はエレクトロポレーションされる標的に近接して配置される必要がある。z軸方向へのチップ電極の移動は自動あるいはロボット式制御マイクロポジショナを利用して、あるいは何らかの物理的障害、例えば垂直あるいは水平方向案内物体などを利用して装置を所定の位置に追い込むよう制御される。所定の実施態様において、チップ電極は回転可能である。非融合性培地が標的化されると、チップ電極も標的に対してx軸あるいはy軸方向に位置決めする必要がある。これはまた従来のマイクロポジショニング技術により実施可能であり、細胞培養の固定化を維持する間装置を移動するよりも、電動式移送台あるいは類似の装置を使用してチップ電極を固定した位置に保持する間細胞培養を移動することが可能である。
【0173】
一態様において、簡易な機械的方法として多数の標的の上方に同時に配置される多数のチップ電極を使用することである。電極プレートはチップ電極に対して適切な多くの数の取付け部を備えるよう設計される。例えば、プレートは工業規格の96−ウェルマイクロタイタープレートの中心間距離に対応する96の取付け部から構成される。各取付け部は好適にはプレートを貫通する穴とピペットを接続するのに適切な部分とから構成される。
【0174】
ポジショニング(位置決め)は、下向きにチップ−電極を構成する電極プレートを押圧し、電極プレートにポジショニング装置を備え付けることにより実施される。次の用語の「ポジショニング装置」は、チップ−電極と細胞プレートなどの標的容器との間の正確な距離を保持するような機構あるいは部品である。好適には各チップ−電極に対して一つのポジショニング装置が各チップ電極を各表面から所定の距離で個別に停止させるようにする。
【0175】
一態様において、チップ電極に対して制限された垂直的移動が可能な可撓性取付け部が備えられる。懸垂伸縮性は多くの限定されない方法で達成可能である。例えば、図13Aに図示されるように、電極プレートにおける取付け部に最も近接した部品はスプリングあるいは材料特性と組み合わせて取付け部を移動可能にするバネ効果をもたらす「ベローズ状」の同心円形の「サークル」を備えた部分から構成される。別の態様において、図13Bに示されるように、チップ−電極のケースは可撓性をもたらす可撓性ベローズを構成する。この図の例において、取付け部はプレートに固定される。更に別の態様において、図13Cに示されるように、水平方向の可撓性バーが提供され、これは電極プレートに固定される一端側において取付け部を備え、取付け部を移動可能にする。
【0176】
ポジショニング装置はチップ電極に対してその移動が固定されるよう提供される。ポジショニング装置は表面を備え、これはチップ−電極の移動を表面から所定の距離まで限定する。しかしながら、好適には、この表面はチップと表面との間の接触を最小限にするよう構成される。一態様において、ポジショニング装置は図13Cに示されるように垂直バーを構成し、これは移動する取付け部に付着される。バーの下方のチップはポジショニング装置の表面と接触する際、チップ電極の更なる移動を妨げる。別の態様において、図13E、F、およびGにおいて、ポジショニング装置はチップに対して取付けられるか、あるいは図13Dに示されるように、チップ−電極と一体化した部品とする。
【0177】
これらの図に示される態様において、この機構は2つあるいはそれ以上の「翼」であり、これは小さい先端部とチップ電極の少なくとも一部分と密着するよう構成される内腔部とで翼の端部が形成される。このチップ電極とポジショニング装置は、チップ電極がその動作が妨げられる手前まで標的に対して非常に近接して配置される(図13F)か、あるいは別の経路からポジショニング装置の内腔部を通過するのを妨げる(図13G)よう設計される。後者の場合、表面からチップ電極の距離はポジショニング装置の形状にのみ依存する。図13Gに示されたこの実施例において、ポジショニング装置の一部はそれ自体が標的対向端部として作用すると共に追加的に集中させる薬剤の送達および/または電場に対して作用するチップに対して先細になる。
【0178】
別の態様において、一つあるいはそれ以上のチップ電極、電極プレート、細胞容器/細胞プレートはx軸、y軸、および/またはz軸方向に移動可能である。例えば、チップ電極、チップ電極プレートおよび/または細胞プレートを移動し、電場および/または異なる薬剤および/または電解質バッファに対して連続して暴露させることにより、電極プレートにおける単一チップ電極あるいは複数のチップ電極は、細胞プレート内の標的に対して走査される。
【0179】
電場の制御
エレクトロポレーションを生じさせるのに必要な電場の大きさおよび分配は処理細胞構造の型および寸法に従って大きく変化する。細胞構造に対する薬物送達の経時変化の間、チップ電極全体の電位、極性および波形も変更可能であり、すなわち、送達およびエレクトロポレーションは一定の電場強度で実施されない。電源、例えばパルス発生器などに接続されるシステムプロセッサにより電場パラメータをプログラミングすることは数個の化合物が連続して細胞構造に導入される際に特に好適である。
【0180】
パルスの持続時間は処理される細胞構造の型および寸法に依存し、且つ細胞ローディング剤の性質に依存して数マイクロ秒から数分まで変化可能である。パルス発生器は電流あるいは電圧パルスを膜の誘電特性を一時的に変化させるのに充分な強度でチップ電極を介して伝達することにより、他の膜非透過性分子を導入するのに適した穴を膜内に形成させる。
【0181】
好適には、パルス発生器は電圧あるいは電流としてのパルス列あるいは電気パルスを発生し、エレクトロポレーションされる細胞構造の表面において約0.1kV/cmから10kV/cmの範囲、より好適にはこれらの表面において約0.5kV/cmから1.5kV/cmの範囲の電界強度を生じさせる。電場は単一パルスとして、あるいは数個のパルスからなるパルス列として送達可能である。好適には、パルスは約0.1μsから数分、例えば約1〜10分までの範囲である。更に好適には、パルスは約1μsから5sの範囲であり、最適には100ms未満である。パルスの数は好適には約1と約1000の間であり、更に好適には約1から約50の間である。一つ以上のパルスが使用される際には、パルス間の間隔は好適には約0.1μsから数分の範囲であり、更に好適には約1μsと5sとの間である。
【0182】
電場パルスを印加する間、細胞構造は孔形成により膜透過化されることにより、細胞外培地中に存在する極性および荷電溶質および、生体二分子膜を通過することができないそれ以外のものを、拡散あるいは流体力学的移動により細胞構造の内部に導入することができる。本発明のシステムにより可能となる空間的分解能は例えばチップ電極の内径および外径、印加される電解強度、およびチップ電極とエレクトロポレーション標的の間の隙間の間隔により決定される。この隙間間隔はエレクトロポレーションされる細胞構造の寸法に主に依存しており従って数ナノメートルから数百マイクロメートルの間で変化可能である。バッファの成分に従って、その条件は電極において変化する。電極における電気化学的反応、例えば、水分の減少および塩化物の酸化などは電圧がいくらか損失し且つ実効電圧は毎回一定の電極材およびバッファシステムに対して計算され技術的に公知のエレクトロポレーションを最適化できる。
【0183】
電気的に絶縁チップを使用する際に、細胞構造のエレクトロポレーションに必要な電場はチップ電極の内腔部中の溶液に含まれる電解液によりもたらされる。チップ電極の電極部品が導電性表面であり、これは内腔部に挿入されるワイヤあるいはシリンダおよびロッド形状であり、この表面はパルス発生器により供給された電流あるいは電圧を電解質溶液に供給する。上述のように、このような表面電極のポジショニングはチップ電極の後端部に限定されず、ロッド/ワイヤ/シリンダなどはチップ電極の内側のどの場所にも設置可能である。導電表面がケースの壁部の少なくとも一部分(例えば内腔部を画定する壁部など)を導電材料で被覆する際、パルス発生器から供給される電流あるは電圧はこの被覆部に伝送され、更に、チップ電極のケースの壁部を通過して挿入された電極を介して、あるいはケースの受け入れ側を介して、あるいはパルス発生器と接続するチップ電極の外側に対向する連続した被覆部を介して挿入された電極を介して電解質溶液中に伝送される。
【0184】
薬剤送達
上述したように、一つあるいはそれ以上の細胞ローディング剤を含む液体は、圧力制御ポンピング、重力流、電気浸透、電気泳動、あるいはその組合わせを含むがこれに限定されない多数の手段により細胞あるいは細胞構造体に送達される。電気浸透流を発生するには、チップ電極が適切な内径および長さを有し、更に荷電された内側表面積を有する必要がある。例えば、1パルスの間に500μmの内径のチップ電極の外側に形成されたフロープロファイルを図10に図示する。
【0185】
電気浸透あるいは電気泳動をポンピングに使用しない場合、このフローを形成する適切な装置、例えば蠕動ポンプ、微量注入器/微量ポンプ、あるいは別の流動装置をエレクトロポレーションの前、間、あるいは後にチップ電極の差込口/受け入れ端部と接続させる。
【0186】
ある態様において、ポンピング法を使用して細胞へ薬剤を送達し、更に定期的にエレクトロポレーション用の電気パルスを印加させることは好適である。例えば、ポンピングは電場の印加と同期し、すなわち、チップ電極の内腔部に含まれる多量の電解液は細胞表面にくみ上げられ、更に選択された時間間隔の後に、エレクトロポレーションに適する電圧がチップ電極の導電性表面に印加される。電圧が止められ更に追加される量の溶液/薬剤が送達される。蠕動、シリンジ、あるいは別の型のポンプを使用して溶液/薬剤のパルス送達を実施する一方電圧あるいは電流パルスが電極チップに連通するパルス発生器により提供される。
【0187】
細胞中に内在化した薬剤の荷電に応じて(これはたいていpH依存性である)、極性のパルスを使用することが好ましく、これは電解質溶液の流れを標的に向かって押し出し、且つ細胞容器内の溶液の流れをチップ電極内に引き戻さない。しかしながら、例えば、電気パルスがエレクトロミグレーションを通して送達効果がない時、圧力は上述のように付加されてチップ電極内に含まれる薬剤を細胞含有溶液に流し込む。
【0188】
図10A〜Cは50msパルスを印加する間における電気浸透および電気泳動によるチップ電極からの溶液の排出を示す。このチップ電極はpH9で中和された電解液中に100μMフルオレセインを含有した。図10Aは0msにおける排出を示す。図10Bは25msにおける排出を示す。図10Cは50msにおける排出を示す。バルク溶液はpH4で中和されフルオレセインを消失させた。このフローは電場でのフルオレセインの電気浸透/電気泳動の結果であり;追加の圧力は付加されない。
【0189】
標的をエレクトロポレーションした後、必要であれば、細胞プレートを洗浄することにより過剰の薬剤を除去することができる。このバッファは次に薬剤欠乏バッファ(洗浄バッファ)により置換され、次に細胞培養増殖媒体あるいは別の選択された媒体などの培養バッファに交換される。一態様において、洗浄バッファは薬剤が送達された同じチップ電極を通して送達され、これはバッファラインと薬剤ラインが両方ともチップ電極中に供給される点滴装置を使用し、好適にはシステムプロセッサによるプログラマブル制御下にて操作される適切なバルブあるいはスイッチング機構を使用する。あるいは、異なる溶液が電極チップの先端部に吸引されるかまたは電極チップに再充填されるか、あるいは上述のような液体チャネルにより提供される。
【0190】
処理方法
本発明のチップ電極および電極システムは、高度な空間制御を提供し、標的間の距離が小さいにもかかわらず、異なる薬剤および異なるパルスプロトコールにより標的を処理することができる。
【0191】
特に、本発明はスクリーニング、同定、改質、機能的特性、およびリン脂質二分子膜の透過化、すなわちエレクトロポレーションに基づく細胞内標的の検出が迅速にできる。この方法は拡張可能であり、たった一つの細胞、複数の細胞、あるいは多量な数百万の細胞集団が標的化される。すなわち、本発明のシステムは薬物のスクリーニング、細胞内薬物標的の同定および査定、および細胞内化学に影響する薬物様物質のスクリーニングを自動化された同じ方法で迅速に実施できる。
【0192】
薬剤
本発明のシステムを使用する際、本質的にあらゆる種類の物質、薬剤、あるいは細胞ローディング剤をエレクトロポレーションされた細胞構造内に導入することが可能である。以下に記載される「細胞ローディング剤」は典型的には極性であり且つ典型的には自発的に生体膜を貫通することができない薬剤を意味する。このような物質あるいは細胞ローディング剤の例として、以下の薬剤:遺伝子;遺伝子アナログ;RNA;RNAアナログ;siRNA;アンチセンス・オリゴヌクレオチド;リボザイム;DNA;DNAアナログ;アプタマー;コロイド粒子;ナノ粒子;受容体;受容体リガンド;受容体アンタゴニスト;受容体アゴニスト;受容体遮断薬;酵素;酵素基質;酵素阻害剤;アロステリック酵素モジュレータを含む、酵素モジュレータ;蛋白質;蛋白質アナログ;ポリペプチド;ポリペプチドアナログ;アミノ酸;アミノ酸アナログ;ペプチド;ペプチドアナログ;代謝産物;代謝産物アナログ,オリゴヌクレオチド;オリゴヌクレオチドアナログ;抗原;抗原アナログ;ハプテン;ハプテンアナログ;抗体;抗体アナログ;細胞小器官;細胞小器官アナログ;細胞核;細胞分画;細菌;ウィルス;ウィルス粒子;配偶子;無機イオン;有機イオン;金属イオン;金属クラスタ;細胞の化学反応に作用する薬剤;細胞物理学に作用する薬剤(例えば、細胞の運動性、有糸分裂、エンドサイトーシス、エクソサイトーシス、空胞形成、アクチン、ミオシン、チューブリン、およびほかの構造タンパク質の機能等);ポリマーに作用する薬剤(DNA複製およびタンパク質翻訳、チューブリンアセンブリ等に作用する薬剤);及びこれらの薬剤の2つあるいはそれ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
以下に記載される「薬剤」は、しかしながら、またより一般的にチップ電極を通して流動するなんらかの溶液特性を示し、標的の周辺の溶液環境を改質することに使用可能であり、例えば、チップ電極を通して導入される薬剤として、pH、温度、イオン強度、浸透圧、粘度等、標的の周辺の溶液環境を改質させる。
【0194】
標的
電場への暴露およびチップ電極からの薬剤送達は、「空間的に限定されており」、この内部において、非標的を暴露することなく、あるいは別の標的に異なる型の電場および別のチップ電極による薬剤を暴露する間、標的に対応する小さなスポットに限定して実施することができる。
【0195】
一態様において、チップ電極は小さい細胞集団の細胞質に対する薬剤送達を促進させるのに使用される。これらの標的細胞は別の細胞(「非標的細胞」)を含む懸濁液中に、あるいは表面上の別々の場所(すなわち、空間的に限定された場所)に、あるいは標的細胞が別の細胞により包囲されるかされない容器中に存在する。例えば、標的はマイクロタイタープレートなどのマルチウェル培養皿の一つのウェル中に配置されるか、あるいは一つあるいはマトリックスタンパク質、接着分子、界面化学、物理学的トポグラフィーおよびその類似物との結合を通してその表面と安定的に結合された表面上のスポットに配置される。
【0196】
チップ電極はまた単細胞および細胞内区画に対しても送達を促進させるのに使用される。
【0197】
一態様において、本発明のチップ電極およびシステムは膜非透過性細胞ローディング剤を細胞構造に対しておよび/または細胞構造内部に送達するのに使用される。エレクトロポレーションに対して少数の細胞(原核細胞あるいは真核細胞)を標的化することが好適であり、例えば約1から少なくとも100,000 000の細胞が好適であり、約5から1,000 000細胞がより好適である。これらの細胞は一部あるいは全ての細胞が培地(懸濁したあるいは付着した状態で)、組織片、組織、あるいは器官中に存在するか、あるいは表面がパターン化された細胞である。使用される細胞構造は細胞内構造、細胞小器官(生細胞あるいは死細胞に含まれるか単離される)、膜小胞、細菌あるいはナノ細菌である。
【0198】
リポソーム、エマルジョン滴などの合成膜構造が形成された細胞構造に対して本発明の方法を使用することも可能である。このような細胞構造は一つあるいは数個の細胞あるいは一つあるいは数個の細胞構造である。更に別の細胞構造として:ミトコンドリア、滑面あるいは粗面小胞体、ゴルジ体、リソソーム、ペルオキシソーム、細胞核、核小体、輸送小胞、シナプス小胞、葉緑体、および小胞が含まれるがこれに限定されない。
【0199】
更に標的として、分子、高分子、および表面を含み、これらと薬剤が相互作用して集束し且つ調節可能な電場への暴露を経て改質される。例えば、標的はこれに限定されないが:核酸、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチド;酵素;炭素繊維;化学反応体;等が含まれ更に集束された電場に暴露されてハイブリダイゼーション、重合、触媒、化学合成、および別の処理が促進される。ある態様において、電場に対する感受性はこれら分子に結合される標識(例えば金属粒子など)を介して促進される。この集束した電場は一定のあるいは誘導性双極子である分子を配向させ、更に熱励起エネルギーを反応物質に提供するのに使用される。従って、本発明におけるシステムは限定された領域および界面システムの化学を制御することに使用される。
【0200】
エレクトロポレーション
一態様において、本発明は溶液中に含まれる第一の極性、および親水性物質を細胞の細胞質に送達する方法を提供する。すなわち、本方法は細胞膜障壁を破壊し、透過した細胞の付近に特定の集束電場を形成することにより実施される。この方法は単一のあるいは数個の細胞に適用され、更に複数の単細胞あるいは複数の細胞集団に対して均一な表面上かあるいは隔離された多くのウェル中のいずれかにて同じ方法で実施される。
【0201】
本方法はまた、例えば表面を分子でパターン化するかあるいは集束した電場を生成するための目的で、細胞を含まない表面に電場および物質を送達することができる。
【0202】
単細胞エレクトロポレーションは本発明のチップ電極を使用して、付着細胞培養、組織片、組織移植片、(例えばマトリクス分子、付着タンパク質、基板の界面化学、他の細胞、物理学的トポグラフィーなどを介して)基板に安定的に結合される細胞列中の標的細胞に対してチップ電極を高解像度でポジショニングできる。
【0203】
本発明に係る方法は、電極プレート間の間隔が小さく典型的には20μmかそれ未満であるため、小さい振幅電圧パルスで高い電界強度を生じることから原則として電池式で実施される。この技術は単細胞および細胞より小さい寸法のものへの高度に集束された電場を使用して生物学的構造に対して選択的溶質移動を最初に実証する。
【0204】
本発明に係る方法はバイオセンサー応用に使用され、細胞あるいは細胞様構造は透過性DCあるいはAC電場に配置される間、目的とする薬物あるいは別の化合物が補充される。特殊な応用として、エレクトロポレーションと微小化学的分離法とを組合わせる方法があり、ここでは石英ガラスあるいは類似の材料で製造された中空の液体電極が使用される。
【0205】
一態様において、本方法は少なくとも一つのチップ電極を構成し、このチップ電極はパルス発生器などの電源と連結され、同様に電源と接続される少なくとも一つの対極を備え、チップ電極を細胞構造体に近接して配置し、少なくとも一つのチップ電極と少なくとも一つの対極との間にエレクトロポレーションを得るのに充分高度な集束された電界強度を印加する工程から構成される。
【0206】
一態様において、チップ電極と対極は高度に目盛付けされた顕微操作で別々に制御される。別の態様において、チップ電極と対極はz方向においてのみ互いに独立して移動する。更に別の態様において、チップ電極および対極は電極プレートに一体化された構成部品であり、互いに独立して移動しない。
【0207】
一態様において、本方法はエレクトロポレーションをチップ電極を通過する物質の送達と同期させる。
【0208】
細胞集団、細胞構造体、単細胞あるいは単細胞構造体は前処理した後にエレクトロポレーション実験を行う。例えば、標的はフルオロ−3−AMエステルなどの染料を取り込み細胞質中のカルシウムイオン濃度上昇の結果を検出し、あるいは標識化レポーター遺伝子あるいは蛍光分子コード化遺伝子(例えば、発光酵素、GFP、EGFP等)、FRET対の片方によりトランスフェクトされ、ここでエレクトロポレーションが成功し別の分子(例えばレポーター遺伝子誘導因子あるいはFRETペアのもう片方など)が導入されると信号を発生する。これら細胞はまた細胞容器/細胞プレート中にて別の化学的あるいは物理的方法で処理可能である。例えば、目的の薬物を細胞液中に追加する前、間あるいは後にエレクトロポレーションが実施される。このような薬剤の送達はシステムに追加した別のキャピラリあるいはピペットにより媒介されるか、あるいは細胞培養プレート内に一体化された微小流動チャネルを介して、バルク様式(全ての細胞あるいは細胞構造に対して、あるいは大部分の細胞あるいは細胞構造に対して送達する)で、あるいは局所的(電場の影響を受ける細胞あるいは細胞構造にのみ送達する)に媒介される。
【0209】
チップ電極と連通するパルス発生器からの電気パルスはチップ電極に含有した電解液に電気泳動および電気浸透(表面荷電に依存して)フローを誘発する。チップ電極が細胞ローディング剤で充填されると、このフローはこれらの薬剤を孔形成部に送達する。特定量の薬剤が必要であれば、あるいは細胞に対して薬剤の送達がエレクトロポレーションパルスの前後が好適であれば、細胞表面に対して薬剤の送達のための電気泳動流に補充するため外圧を印加する。電気パルスに基づく、孔形成および細胞表面に対する薬剤送達の組合わせは細胞質内部、あるいは細胞の細胞小器官中への材料の充填を可能にする。
【0210】
すなわち、本発明は特定の且つ空間分解された方法で、細胞に対して集束した電場および物質の共送達のための方法を提供する。
【0211】
本発明は溶質を細胞外培地から透過化細胞構造中に運搬する、あるいは細胞構造内に封入された溶質を外側の細胞外培地に運搬することに使用される。本発明の方法は細胞小器官が細胞の内部に配置される場合においても物質を細胞小器官内あるいは外側に運搬することにも使用される。
【0212】
本方法は細胞移動、増殖、成長、および分化並びに多数の生物化学的および生物物理学的事象の研究に適切である。ナノ粒子、薬物、遺伝子および異なる生化学的マーカー、例えば染料を単細胞に対する、あるいは単離したまたはそのままの状態の細胞小器官に対する高度な空間分解分配の新たな可能性を導く。本方法は薬物および遺伝子を患者に投与するための賦形剤として臨床応用に使用可能である。
【0213】
別の限定されない態様において、本発明は細胞小器官あるいは細胞を別の細胞の細胞質あるいは組織に運搬することに使用可能である。
【0214】
本発明は細胞および細胞構造の化学的含有量に対して同時なおよび/または連続的変化、高生産性に利用可能である。細胞および/または細胞構造は分離したウェル中複数のスポット中に、あるいは一つのより大きいサイズの容器中あるいは基板上(例えば、ガラススライド、プラスチックあるいはポリマー表面、膜、微小流体チップなど)に配置される。
【0215】
一態様において、本方法は少なくとも一つのチップ電極を提供し、好適には少なくとも一つの接地電極を共に備える。この少なくとも一つのチップ電極は電解質からなるジェルあるいは液体などの導電性媒体で充填され、更に電流あるいは電圧発生器に電気的に接続される。
【0216】
一態様において、電気パルスは電流あるいは電圧発生器を利用して少なくとも一つのチップ電極と対極あるいは接地電極との間に印加され、周囲の細胞あるいは細胞構造に影響を与えずに、少なくとも一つの細胞あるいは細胞構造に集束された電場を発生する。
【0217】
電場は少なくとも一つの細胞あるいは細胞構造の膜に孔形成および絶縁破壊を発生させるのに充分な強度を有する。好適には、チップ電極に連通するパルス発生器は、電流あるいは電圧のいずれかの電気パルスあるいはパルス列を発生し、エレクトロポレーションされる細胞構造の表面において約0.1kV/cmから10kV/cmの範囲、より好適には表面において約0.5kV/cmから約1.5kV/cmの範囲の電界強度を発生する。電場は単一パルスとしてあるいは数個のパルスのパルス列として送達可能である。好適には1パルスは約0.1μsから数分(例えば約1〜10分)の範囲である。より好適には、1パルスは約1μsから5sまでの範囲であり、最適には約100ms未満である。パルスの数は好適には約1と約1000の間であり、より好適には約1と50の間である。1パルス以上が使用される際には、パルス間の間隔は好適には0.1μsから数分の範囲であり、更により好適には約1μsから5sの間である。
【0218】
一態様において、導電媒体は媒体からチップ電極の標的対向開口部を通して標的細胞/細胞構造の表面に対して送達される薬剤(例えば膜透過分子)を構成する。薬剤は開口部を介して送達され更にチップ電極により生成された電場に暴露されることによって形成された細胞膜中の孔を介して伝送される。薬剤送達は電場に暴露される前、同時あるいはその後に生じる。電場に対して更に暴露すると細胞構造内部に更に薬剤を伝送するか、あるいは同一のあるいは異なる型の薬剤を追加して細胞構造内に導入可能にしおよび/または細胞構造の表面に残留する残留薬物を導入可能にする。
【0219】
2つあるいはそれ以上のチップ電極を使用する場合、チップ電極は好適には同じ高さに対して垂直配向される。所定の態様において、一つあるいはそれ以上のチップ電極はたがいに別々に、例えば制御された微小ポジショナを使用して、三次元空間で移動可能である。別の態様において、2つあるいはそれ以上のチップ電極はz−方向において別々に移動可能であるが(例えば上述の電極プレート上に設けられたポジショニング装置を介して)、しかしながらその他ではx−方向およびy−方向において固定され、電極プレートが移動するに従ってチップ電極も移動する。
【0220】
本発明の方法は複数の溶質、薬剤、および粒子を透過細胞構造内に伝送しこれらの導入の効果を決定するのに使用される。
【0221】
薬剤の細胞内送達方法
本発明の方法は、高生産性、細胞内薬物作用、あるいは細胞内薬物標的の同時スクリーニングに使用可能であり、例えばトランスフェクション技術、あるいは細胞内タンパク質およびシグナル伝達経路の同定に対して使用される。このようなタンパク質の例として、酵素、受容体、担体、あるいは構造タンパク質が存在する。これらの例において、エレクトロポレーション技術は、例えば一つのあるいは数個のタンパク質プローブ(例えば、蛍光性リガンドあるいは基板など)を細胞内に導入するために使用される。これらのプローブは単独であるいは薬物、基質あるいはリガンド、阻害剤、アゴニスト、アンタゴニスト、およびほかの分子との組合わせにより導入され、同じシグナル伝達経路にて一つあるいは複数の標的タンパク質と直接相互作用する。すなわち、多様なタンパク質の存在とそれらの機能との両方は単細胞レベルであるいは細胞集団のレベルで決定可能である。
【0222】
タンパク質などの細胞内生体分子の相互作用、あるいは生細胞の内部での薬物作用のプロファイリング、スクリーニング、改質およびプロービングを行うのに本発明を利用する際、これらの相互作用に関する事象は検出可能である必要がある。これは、例えば、選択的蛍光タンパク質マーカーを蛍光顕微鏡検査法あるいは蛍光プレートリーディング装置と組み合わせて実施できる。一例として、細胞内に所定の酵素の存在を評価するために、非蛍光性の極性細胞膜非透過性基質が使用され、酵素作用後に蛍光生成物に変換されることを利用する。蛍光性の増加は酵素の存在を反映し、酵素活性を測定するのに利用される。同様にこの方法は、タンパク質どうしの相互作用、タンパク質と核酸との相互作用および核酸と別の核酸との相互作用をFRETベース分析するのに利用される。しかしながら、多くの電気的および光学的方法は、薬剤の内在化後の細胞応答を検出するのに使用され、これは電気容量、ボルタンメトリー、電流測定、CARS(コヒーレントアンチ−ストロークラマン散乱)、SERS(表面増強ラマン散乱)、りん光、化学発光、UV−VIS−IR吸収、水晶マイクロバランス、および表面プラズモン共鳴が含まれるがこれに限定されない。
【0223】
この方法において、単一のあるいは多数の細胞ローディング剤は細胞集団、細胞構造、単細胞、あるいは単細胞構造(標的)に対して単一モードあるいは同時または連続モードで運搬可能である。より好適には、本方法は電場発生器に連結された単一のあるいは複数のチップ電極を使用して標的をエレクトロポレーションし、単一のあるいは複数のチップ電極を標的に近接してポジショニングするのに利用される。少なくとも一つの電流あるいは電圧パルスはチップ電極を通して伝送され電場を発生し、これにより標的の膜において孔を形成させる。
【0224】
単一のあるいは複数のチップ電極に含まれる単一のあるいは複数の細胞ローディング剤は孔形成部位に送達され、これは単一のあるいは複数のチップ電極内に形成された電気泳動および/または電気浸透流により実施されるか、あるいは例えば流体力学的ポンピングを介して形成された流れにより実施され、これによって単一のあるいは複数の細胞ローディング剤が膜に転位し、孔を通して標的の内側に導入可能となる。
【0225】
細胞ローディング剤は好適にはチップ電極内の電解質含有溶液に添加される。更に、チップ電極は薬物、あるいは薬剤が追加され、細胞プラズマ膜内に配置される標的と相互作用を行う。このような標的はプラズマ膜結合受容体及び酵素が含まれる。
【0226】
本発明のシステムは細胞内スクリーニング法(以下に詳細に記載される)に使用される際、好適には、複数の異なる細胞ローディング剤が一つあるいは複数の細胞の細胞質および/または細胞構造に、制御された方法で導入される。スクリーニングは好適にはローディング剤を細胞標的に同時にあるいは連続して送達することにより実施し、更に例えば、以下の実施形態の内の一つにより達成される。
【0227】
第一実施例のうち、多数の細胞ローディング剤の同時且つ連続した送達はチップ電極の配列を使用して達成される。チップ電極の配列は一次元配列(線形)、あるいは二次元配列が可能である。好適には、2〜100,000のチップ電極の配列が使用され、更に最適には標準マイクロタイタープレート形式に適合するように、8,96あるいは384のチップ電極配列が使用される。
【0228】
同時送達は複数のチップ電極を利用して複数の細胞群あるいは単細胞内部にエレクトロポレーションにより薬剤を導入することを意味する。同時送達は個別の容器における細胞標的の上方にチップ電極配列を配置させて実施することにより、各チップ電極はエレクトロポレーションを発生し更にその後に細胞標的に対して一つの型のローディング剤あるいは数個のローディング剤の混合物を送達する。同時処理の後に、新規な型のローディング剤あるいは数個のローディング剤の混合物による別の同時処理が細胞標的に対して実施される。一つの大きな容器の中の細胞標的の上方にチップ電極配列を配置させることも可能であり、ここで細胞標的は例えば融合性細胞培養かあるいは所望のパターンで培養した細胞である。
【0229】
チップ電極配列を使用するこの実施態様においてローディング剤の連続送達を実施するには、各チップ電極は一つあるいは異なる型の細胞ローディング剤あるいは数個の細胞ローディング剤の混合物を含有する。連続送達は単一細胞標的の上方を順次チップ電極配列が移動することにより実施され、各チップ電極はエレクトロポレーションを発生し、その後各型の細胞ローディング剤あるいは数個の細胞ローディング剤混合物を送達させる。
【0230】
チップ電極配列を移動する代わりに、空間的に固定されたチップ電極に関連して細胞構造を移動することも可能である。同じような設備を使用することも可能であり、ここで各チップ電極は一つあるいは異なる型の細胞ローディング剤、あるいは数個のローディング剤からなる一つの混合物を含有し、しかしながら、同一の細胞標的に対して連続送達を実施する代わりに、細胞ローディング剤は別々の細胞標的に対して送達されることにより、内在化された個別の細胞ローディング剤を有する細胞標的を形成する。
【0231】
一態様において、細胞に充填される薬剤はロボット装置あるいは別の分配装置に一体化された市販の分注技術を使用してチップ電極内部に吸引される(フロントローディング方式)。別の態様において、チップは装置に一体化され、薬剤は上述のように吸引され、あるいは装置内にチャネルがあり、このチャネルが少なくとも一つの外付けバイアルに接続される場合には、薬剤は上部のチップ差込口を通して充填される(バックローディング方式)。孔形成およびチップ電極内に電解質溶液を補充する薬剤送達の組合わせにより、材料を細胞小集団あるいは単細胞の細胞質内に充填することが可能となる。
【0232】
チップ電極は毛管力あるいは吸引/吸い上げ力を利用してチップ端部/底部の排出口から充填することも好適である。この手順は複数のチップ電極を同時に充填する際に利用される。このチップ電極は細胞ローディング剤を含有する個別のバイアル内に配置され、且つ少量の試料が上述のいずれかの方法を利用してこのチップ電極に導入される。
【0233】
このように本発明における、本方法はエレクトロポレーションと組み合わせて同時薬剤送達が可能である。上述の細胞ローディング剤の連続送達様のチップ電極配列はマルチウェルプレートにおける多数のウェルに含有される細胞あるいは表面がパターン化して成長した細胞のエレクトロポレーションに対して理想的に適しているため、本発明は同時細胞内スクリーニング利用のためのツールを提供する。細胞ローディング技術の同時送達において、チップ電極配列における各単一チップ排出口は表面上あるいはウェル構造内の細胞集団あるいは単細胞を標的化する。すなわち、個別の細胞あるいは細胞小集団は同時に細胞質内に内在化される同一のあるいは別の化合物で標的化される。すなわち、上述のように、連続薬剤送達に関する実施態様のいずれかは、多細胞構造のエレクトロポレーション用に使用される。
【0234】
本発明はエレクトロポレーションを使用して薬剤を細胞内に内在化させるのに利用され、これは以下の限定されない方法のいずれかから構成され:
1.一つの細胞型の単細胞あるいは細胞集団に対して膜非透過性剤の細胞内輸送
2.同一の細胞型の単細胞あるいは細胞集団内で物理的に分離された細胞に膜非透過性剤の細胞内輸送
3.異なる細胞型の単細胞あるいは細胞集団内で物理的に分離された細胞に膜非透過性剤の細胞内輸送
4.一つの細胞型の単細胞あるいは細胞集団に対して膜非透過性剤の連続細胞内輸送
5.同一細胞型の単細胞あるいは細胞集団内で物理的に分離された細胞に膜非透過性剤の連続細胞内輸送
6.異なる細胞型の単細胞あるいは細胞集団内で物理的に分離された細胞に膜非透過性剤の連続細胞内輸送
7.一つの細胞型の単細胞あるいは細胞集団に数個のチップ電極を使用して膜非透過性剤の同時細胞内輸送
8.同一細胞型の単細胞あるいは細胞集団内で物理的に分離された細胞に数個のチップ電極を使用して膜非透過性剤の同時細胞内輸送
9.異なる細胞型の単細胞あるいは細胞集団内で物理的に分離された細胞に数個のチップ電極を使用して膜非透過性剤の同時細胞内輸送
10.一つの細胞型の単細胞あるいは細胞集団に対して数個のチップ電極を使用して膜非透過性剤の同時および連続細胞内輸送の組み合わせ
11.同一の細胞型の単細胞あるいは細胞集団内で物理的に分離された細胞に数個のチップ電極を使用して膜非透過性剤の同時および連続細胞内輸送の組み合わせ
12.異なる細胞型の単細胞あるいは細胞集団内で物理的に分離された細胞に対して数個のチップ電極を使用して膜非透過性剤の同時および連続細胞内輸送の組み合わせ
13.組合わせに利用される上述(1−12)の膜非透過性剤の細胞内輸送のいずれかの形態。
【0235】
応用
本発明の方法の重要な利用に関し、薬物スクリーニング、タンパク分析、および治療薬を細胞に充填する用途が含まれる。特に、細胞あるいは細胞構造の上方から膜透過用電場を印加することにより、特定のプローブ(マーカー)、基質あるいはリガンドが細胞質内部に導入され細胞小器官上の受容体および細胞質内酵素などの細胞内化学を選別できる。より具体的には、これは細胞内薬物作用のスクリーニング並びに酵素、受容体、あるいは構造タンパク質などの細胞内タンパク質のアッセイを促進させる。本発明の方法を使用することにより、これらのマーカーは同一のシグナル伝達経路における一つあるいは複数の標的タンパク質と直接相互作用する薬物あるいはリガンドと組み合わせて導入される。すなわち、本発明に関し、多様なタンパク質の存在及びそれらの機能の両方を、単細胞レベルまで特徴づけることが可能である。特定のリガンド、アンタゴニスト、阻害剤あるいはモジュレーターにより特定の経路を遮断することにより細胞過程を制御でき、且つ新規なシステムの手がかりとなる。このような化合物は、例えば目的の一つあるいは数個のリガンドを含有するチップ電極を利用してそれらと共エレクトロポレーションを行うことにより細胞内に導入される。あるいは、別の手段、例えば細胞透過剤を使用することにより細胞構造内に内在化される。この方法は細胞中に存在するDNAおよびRNAのような核酸を検出および/または改質すること、並びにDNA、RNA、iRNA、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドなどの核酸で細胞をトランスフェクトすることにも非常に適している。
【0236】
一般論として、本発明の方法は、限定されないが、以下の応用分野、プロテオミクス、ゲノミクス、表現型プロファイリング(フェノミクス)、薬品分析およびスクリーニング、薬物動態、体外受精、トランスジェニック、核移植、細胞小器官移植および診断に利用される。より具体的には、限定されないが、本方法が利用される適用例として、遺伝子導入、遺伝子同定、酵素同定、タンパク質同定、受容体同定、結合分析、酵素分析、競合酵素分析、非競合的酵素分析、モジュレータでの酵素分析、等比体積阻害剤による酵素分析、受容体測定、アンタゴニストによる受容体測定、モジュレータによる受容体測定、ウイルス分析、細菌分析、薬品分析、動態検査、代謝経路の変更、シグナル伝達経路の変更がある。
【0237】
具体的に、本発明の方法は細胞内受容体および受容体リガンドの同定に非常に適する。Ca2+、cAMP、Kなどのシグナル伝達分子を解離させる細胞内受容体およびイオンチャネルは、細胞内に好適には選択的受容体拮抗薬と組み合わせてエレクトロポレーションされたリガンドライブラリーを利用して同定され且つ研究される。例えば、細胞内受容体の活性化に基づき細胞内貯蔵から放出されたCa2+はマグ−フラ−2あるいはフルオロ−3などの蛍光性キレート試薬を利用して検出可能である。
【0238】
更に、受容体を同定するために、あるいは受容体−リガンド相互作用を明らかにするために、選択的受容体拮抗薬が利用され更に細胞内にエレクトロポレーションされることによりリガンドの作用を選択的に遮断する。蛍光性プローブに加えて、電波リガンド、ブロット法あるいは電気生理学的方法、および蛍光発生基質が利用される。蛍光発生マーカーは度々細胞浸透性エステル類を使用し、これは細胞溶液媒体に添加可能であり、且つ細胞内にエレクトロポレーションされる必要がない。すなわち、このようなエステル類を利用して、細胞は染料とともに充填され、その後エレクトロポレーションを実施する。特定の受容体活性化に対するマーカーに加えて、受容体アゴニストの両方を導入する能力を備えるため、例えば、アゴニストのライブラリーから最も強力な受容体アゴニストかあるいはアンタゴニストのライブラリーから最も強力なアンタゴニストを同定することが可能である。
【0239】
更に、例えば用量反応曲線を得る実験を設計することも可能である。例えば、本発明の方法において、受容体アゴニスト及び受容体アンタゴニストの両方を細胞質内に導入する際特定の受容体活性用マーカーを添加して各化合物が異なる濃度で導入することが可能である。また、受容体アゴニスト及び受容体アンタゴニストの両方を細胞質内に導入する際、各化合物が異なる濃度で導入され、全面的な目的が受容体アゴニストと受容体アンタゴニストの結合特性、すなわち競合的か非競合的かどうかなどを決定するために導入される。受容体の同定に加えて、更にリガンドもまた、いわゆる「リガンドフィッシング」あるいは「ジ−オーファニング」について同様な方法で実施可能である。公知の一組の受容体を備える細胞は検出用として使用され、更にリガンドの潜在的サンプルのライブラリーは細胞質内に導入されこれらのリガンドの作用を選別するのに利用される。
【0240】
更に本発明は細胞内酵素及び酵素基質の同定に適する。蛍光生成物を生じる高度に特異的な酵素基質は本発明の技術を利用する個別の細胞内システムの例えばプロテオミクスおよび表現型プロファイリングにおけるタンパク質/酵素の同定に使用可能である。合成基質はおそらく薬物、阻害剤、あるいはモジュレータと組み合わせて、本発明のエレクトロポレーションを使用して細胞内に導入される。基質生成物変換工程において照明スイッチとして利用可能な市販の多様な基質が存在する。このような基質はエステラーゼ、スルファターゼ、ホスファターゼ、等の基質を含む。基質は蛍光性であり且つ生成物は非蛍光性であるか、あるいはその逆である。
【0241】
細胞内の共役反応システムに関し、例えばNADを−NADHに変換させるアルコール脱水素酵素によるアルコールの分解など、すなわち蛍光性における転換を生じ、標的分子は検出可能な分子を生成する反応と共役される限りは蛍光性である必要はない。細胞におけるこのような天然蛍光化合物の別の例として、NADPHおよびフラビンがある。
【0242】
酵素による化学増幅はシステムの感度を増加させることにも利用される(Blaedel,他、H.U.Bergmeyer(ed)、Methods of Enzymatic Analysis,verlag Chemie/Academic Press,New York 1974 vol 1,p131)。この方法の原理は酵素を利用し基質を生成物に変換することにより、基質を高濃度に変化させ、これは測定が困難であるが、生成物に変換することにより容易に測定可能となる。
【0243】
蛍光発生基質の一例として、フルオレセイン二リン酸(FDP)があり、ホスファターゼの検出に利用される。この基質はアルカリ性ホスファターゼにより加水分解され、蛍光生成物フルオレセインを発生する。別のシステムとしてカゼイン−BODIPY FLがあり、これは金属性プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、酸性プロテアーゼおよびスルフヒドリルプロテアーゼのための基質であり、カテプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、パパイン、ペプシン、サーモリシン、およびトリプシンが含まれる。別のシステムの例として、β−ガラクトシダーゼがあり、これは基質がジ−β−D−ガラクトピラノシド(FDGP)であり、これは順次β−ガラクトシダーゼにより加水分解され、最初にフルオレセインモノガラクトシド(FMG)になり、次に高度蛍光性フルオレセインとなる。
【0244】
図14A−Eはフルオレセイン二リン酸(FDP)を利用して細胞内酵素アルカリ性ホスファターゼを標的化した実験結果を示し、これは基質のリン酸エステル−結合を触媒的に加水分解することにより高度に蛍光性の生成物フルオレセインが細胞質中に形成される。この基質のフルオレセイン二リン酸(FDP)はチップ電極中の電解質に添加され更にエレクトロポレーションの間細胞内に伝送される。この基質は非蛍光性であり生成物は蛍光性である。図14BおよびEにおいて細胞中に得られた蛍光性は生成物の存在を示し、更に酵素の存在を示唆する。
【0245】
タンパク質間相互作用は複雑であり多くの工程を含む。特異的リガンドによる特定の経路を遮断することにより細胞過程を制御可能にし新規なシステムの手がかりとなる(Zutshi,他、Curr.Opin.Chem.Biol.2:62−66,1998)。例えば、細胞内プロテアーゼ活性はタンパク質、カゼインを、酵素基質として緑色蛍光分子BODIPY FLと共に多量に充填されることにより研究された。溶液中に、カゼイン−BODIPY FLが折りたたまれることにより、分子中の四次配置が蛍光性を消失させる。ペプチド結合が開裂する際、細胞質プロテアーゼの作用により、BODIPY FLで標識化された遊離ペプチドの断片は蛍光を発光し始める。
【0246】
本発明はまた細胞プラズマ膜上に配置される受容体に作用する薬物及び薬剤の添加と組み合わせて利用される。すなわち、一つあるいは数個の薬物の細胞内(細胞質)の相互作用と表面受容体の両方は同時に精査可能であり、例えば更にシグナル伝達経路を特徴づける方法として使用される。
【0247】
個々の細胞小器官のエレクトロポレーションはまた本発明に関するチップ電極を利用して実施可能である。標的化された細胞小器官類で空間的に特定された細胞内領域でさえ本発明の局在的電場を実施でき、極性溶質を細胞小器官中に伝送することができる。細胞小器官に対してエレクトロポレーションを実施することはミトコンドリアゲノムを改質することになる。ミトコンドリアゲノムにおける変異は多数の病気を生じさせ、且つ遺伝子治療は主として重要となる可能性を導くことは周知である。これまでのところ、しかしながら、ミトコンドリアは細胞から単離した後に新規の遺伝子フラグメントをミトコンドリアに導入する必要がある。その後ミトコンドリアは細胞内に再挿入する必要がある。本発明に係る技術においては、遺伝子が細胞内に含まれる場合、遺伝子をミトコンドリアに直接導入することが可能である。これはミトコンドリアのトランスフェクションに関する従来のスキームから飛躍的に進歩させる。
【0248】
細胞小器官は単細胞内部に含有可能であり、あるいは単細胞または細胞集団から単離可能である。この応用において、チップ電極と連通するパルス発生器により発生するパルスの強度はエレクトロポレーションされる構造体に依存し且つ電極間の距離に依存する。小胞体、及びミトコンドリアのような、小さい細胞小器官構造は膜内に孔を形成するのに高い電圧が必要となる。パルス幅はまた、膜構造だけではなく、組み込まれる化合物の構造にも依存して、および数マイクロ秒から数分の範囲で変化可能である。低拡散速度の巨大分子は細胞内に移動するのにより長い期間が必要である。細胞内部の細胞小器官のエレクトロポレーションに関し、好適にはチップ電極は電気的に絶縁された軸部を有することにより、細胞膜と接触する電極部分は電気的に誘発される孔形成を引き起こさない。細胞小器官のエレクトロポレーション用の細胞内電極の物理的な大きさは、直径が数ナノメートルから数マイクロメートルである。
【0249】
好適には、チップ電極は透過化される細胞小器官が電極の間に設置されその間充分な強度の電場が印加されるよう配置される。細胞小器官非透過性分子は一つあるいは両方のチップ電極の内腔部を通して細胞小器官内に導入される。この工程は所望の数の細胞小器官が透過化されるまで繰り返される。過剰な分子は分解経路を利用して、あるいは別の手段により細胞質から除去し、更に、分子は透過化細胞小器官集団の内部にのみ配置される。
【0250】
本発明の更なる利用として、バイオセンサ技術への利用である。特に、単細胞の上方に透過化するための電場を印加することにより、細胞内化学および細胞小器官はバイオセンシングの目的で利用される。一例として、イノシトール三リン酸があり、これは小胞体の受容体を活性化させるが、このようなスキームを利用するためにアッセイされる。この化合物は透過化細胞を包囲するバッファに単純に添加され更に細胞内部に放散され更に小胞体上の受容体に結合される。イノシトール三リン酸が受容体に結合すると、小胞体はカルシウムイオンを放出する。細胞は次に例えばフルオロ−3などの蛍光性カルシウムキレート染料が追加されると、受容体活性化は蛍光性の増加により測定される。
【0251】
本発明に関し、チップ電極が利用されると、非固形導電性媒体に添加された細胞非透過分子はかん流システム、例えばマイクロシリンジポンプあるいは蠕動ポンプを利用して細胞に投与される。別のスキームに関して、電解液中に含まれる細胞非透過分子は電気泳動あるいは電気浸透を利用して細胞中に伝送される。印加された電場は上述のように孔を形成させる。電極の電解液内部の成分はそれらの電荷に対する摩擦抵抗の割合に基づき分離されるため、電気泳動により分画された種に対して細胞小器官センサに基づく検出が実施できるようになる。
【0252】
本発明に関する方法が生体外で実施される場合細胞構造を観察するために外科用顕微鏡を使用できる。更にチップ電極のポジショニングのために、定位固定装置を使用できる。本方法が生体内で実施される場合には、当然バッファを含む何かしらの容器に細胞構造を配置することは不可能である。代わりに、細胞構造内に組み込まれる化合物がカテーテルを通して離れて、あるいは中空糸電極を通して直接的に生理学的バッファ内に投与される。チップ電極が使用されると、チップ電極の標的対向端部の開口部を通して化合物が細胞構造に投与される。チップ電極の受け入れ端部は正確な量を投与できるマイクロインジェクションポンプあるいはマイクロメーターねじにより制御されるシリンジなどの点滴装置と連結する。
【0253】
この技術はエレクトロポレーションが生じると同時に、あるいは少し遅れて化合物を添加できることにより非常に有用となる。選択された細胞において、局所的に非常に高濃度となり、細胞内への拡散は濃度勾配が増加するに従ってより迅速に進む。別の利点として、化合物の浪費が少なく洗浄過程よる問題が最小化されることである。何度も限局性投与すること、すなわち、機能不全の細胞群、薬物あるいは遺伝子に対する直接的投与は腹腔内投与、経口投与、脳質内投与、あるいは別の種類の通常使用される薬物の投与技術よりもはるかに優れたものである。
【0254】
生体内における細胞内の薬物結合遺伝子投与は本発明の方法により実施可能である。低電圧の印加に組み合わせて非常に小さい寸法の電極であるため、組織損傷がほとんどない。更に、電極のポジショニングと遺伝子あるいは薬物の連続送達は非常に正確である。微小透析プローブは本発明に使用される電極のおよそ100倍もの大きさであるが、組織損傷がほとんどなく、且つ局所的代謝の阻害を引き起こすことが明らかになる。
【0255】
遺伝子治療と組み合わせて利用される本発明の方法に関し、「再プログラム」細胞に対して利用可能であり、機能不全細胞を正しく働かせるかあるいは細胞に新規な機能を提供する。
【0256】
すなわち、本発明の方法は、パーキンソン病と脳腫瘍などの、単細胞または小さい細胞集団の機能不全による異なる状態および病気の処置あるいは治療に利用でき、以下に更に説明される。
【0257】
遺伝的に獲得したものであろうとなかろうと多くの病気は代謝的崩壊が生じる。例えば黒質線条体路におけるニューロンの変性により生じるパーキンソン病は単離された細胞集団におけるドーパミンの生成に関する生化学的機構の機能不全の結果生じる。これは言い換えると運動/行動障害を引き起こす。パーキンソン病の標準的な治療はL−DOPA、ドーパミンの前駆体の経口投与である。あるいは、ドーパミンを生成する神経細胞を移植した組織は患者の脳内に移植される。適切な脳構造内に対する細胞内薬物あるいは遺伝子生体内投与は、上述の2つの実施例に記載されたものと同様なエレクトロポレーションの手順を使用して実施され、更に治療方針として利用可能である。
【0258】
遺伝子導入用として遺伝的に改変されたウイルスを利用する脳腫瘍の実験的な治療は成功事例報告で利用されている。導入システムとしてウィルスの使用はウィルスが突然変異するかもしれない潜在的危険性をもたらす可能性における制限がある。以下の実施例に記載されるものと同様の、サイトカインデアミナーゼあるいはチミジンキナーゼ用の例えば「自殺遺伝子」など、遺伝子導入用のエレクトロポレーション方法を使用することにより、がん治療におけるウイルス導入システムを利用する必要を排除する。
【0259】
チップ電極のポジショニングはデカルト座標系に示される図における、定位固定アトラス、および定位固定ミクロポジショナを使用して実施される。かん流はシリンジを使用した図に示されるように、あるいは別の適切な手段により実施される。電極のポジショニングと印加された電場を変化させると所望の数の細胞がエレクトロポレーションされる。
【0260】
細胞内にエレクトロポレーションされる薬剤は次に一つのあるいは複数の電極の中心にある細いチャネルを介して、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、あるいは電気泳動を含む別の型の溶液ポンプ装置手段による流動を用いて単純に投与される。
【0261】
特に興味深い可能性として、細胞内に対して溶質を連続投与するために生物耐性材料内における電池式かん流/エレクトロポレーションインプラントの利用である。これは低電位が要求されるため、数ボルトから約20ボルトの範囲の電圧を供給する電池が使用される。これらの電池式エレクトロポレーション機器は小型化され、わずかに数平方ミリメートルのサイズのチップに搭載可能である。このようなシステムは溶質含有溶液貯蔵部と、エレクトロポレーション用の2つの電極と、時限送達用およびエレクトロポレーションパラメータ、すなわちパルスプロファイル、パルス幅、繰り返し、および電源と同時の振幅の制御用の電子回路と、貯蔵部補充用注入口とから構成される。
【0262】
本発明に関する方法は、封入された溶質を細胞構造の外側に運搬すること、いわゆる反転エレクトロポレーションに利用される場合、利用されるものの一つに単細胞あるいは小細胞集団への薬物送達がある。これは、例えば細胞あるいは細胞様構造、リポソームなどを透過化するために使用され、細胞非透過性溶質をその内部から細胞外媒体に伝送するために利用される。次に溶質の濃度勾配を反対方向にし、すなわち細胞構造内部の溶質濃度を高く、細胞構造外部の溶質濃度を低くする。特に、薬物を封入されたリポソームは、上述と同様な方法で配置された炭素繊維チップ電極を介して標的細胞の膜の上方にDC電圧パルスを単純に印加することにより、標的細胞に近接する制御された方法において、空にされる。エレクトロポレーションにより誘発されるこのリポソームに基づく薬物送達は、基礎研究ならびに医薬産業、例えば遅延放出を備える合成物に利用可能である。
【実施例】
【0263】
本発明は更に以下に詳細に説明されるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0264】
実施例1.融合性培地における細胞の唯一のスポットのエレクトロポレーション
PC−12細胞を従来のペトリ皿において標準的手順で培養した。この細胞培養の媒体は除去しHepes塩バッファ、pH7.4で置換し、更に細胞培地は倒立顕微鏡(Leica,x−y並進試料台付きmodel DMIRB)の試料台に移した。チップの内側に水平に挿入される白金線を備えた従来型のピペットチップでできたチップ電極を500μMのフルオレセイン二リン酸(FDP)を添加したHepes−塩バッファで充填した。チップ電極はパルス発生器(AM−systems isolated pulse stimulator,model 2100)にパルス監視用のオシロスコープを介して接続した。細胞液中の対極は接地に接続し且つチップ電極の電位の標示を負にした。チップ電極の排出口を細胞培地の上方へ50μmの距離に設置した。細胞は100msの暴露時間、3mA振幅のパルス間で100msの遅延を伴い5×10パルスで暴露した。FDPは、電気浸透力によりチップ電極から放出させ、ここではシステムに対して追加的な圧力あるいはポンピングを行わなかった。非特異的ホスファターゼにより細胞の細胞質中のフルオレセインに対してFDPのスプライシングを行った後に、デジタルCCDカメラで制御され且つ蛍光画像ソフトウェアがストアされた顕微鏡の蛍光発光システムにより、フルオレセインFDPの内在化を検出した。この結果を図13Aに示す。この図からわかるように、チップ電極壁の下に設置された細胞はエレクトロポレーションが成功し、明るい蛍光を暴露した。このことは、接地された細胞液とチップ電極内部の均一な電場との間の接点において生成された電界強度が高いことに基づく。この実験において、およそ500の細胞が標的化され且つエレクトロポレーションが成功した。
【0265】
実施例2.融合性細胞培養における複数のスポットの同時エレクトロポレーション
PC−12細胞を従来のペトリ皿において標準的手順で培養した。この細胞培養の媒体を除去しHepes−塩バッファ、pH7.4で置換し、更に細胞培養を倒立顕微鏡の試料台に移した。2つのチップを通して挿入された単一ロッドを介してパルス発生器に接続した2つのチップ電極を500μMのフルオレセイン二リン酸(FDP)を添加したHepes−塩バッファで充填した。一つの対極を細胞液中に配置し接地に接続した。2つのチップ電極の排出口を細胞培地から上方へ100μmの距離に設置した。2つのチップ電極の下方の、細胞の2つのスポットは100msの暴露時間、4mA振幅のパルス間で100msの遅延を伴い4×10パルスで暴露した。FDPは、電気浸透力によりチップ電極から放出させ、ここではシステムに対して追加的な圧力あるいはポンピングを行わなかった。検出および画像化は実施例1と同様に実施した。この結果は図14C−Eに示した。チップ電極の真下に設置された2つの領域はエレクトロポレーションが成功し、FDPが細胞内に内在化した。2つのチップ電極間の距離はおよそ2mmであり、図からわかるように、この距離は実質的に減少可能である。
【0266】
ここに記載されるものの変更、修正および別の実施例は本発明の範囲から逸脱することなく当業者に対して可能である。
【0267】
ここに記載される全ての文献、特許、特許出願、特許公報および国際出願は全てここに組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】図1は本発明の一態様のチップ電極からなる電極システムの説明図である。このシステムは電解質充填チップ電極(1)からなり、電極プレート(3)と電気接触する内部電極(2)を備える。電極プレート(3)はパルス発生器(4)と接続し電圧あるいは電流パルスをチップ電極およびアース端子を介して対極(5)に伝送する。チップ電極は細胞槽(6)内に設置されチップ中に含有する電解質溶液を細胞槽内の溶液と接触させる。
【図2】図2Aは本発明の一態様においてペトリ皿などの細胞培養容器における「スポット」あるいは離れた場所において、あるいはマイクロタイタープレートの一ウェル中の細胞における薬剤の内在化および局部エレクトロポレーション用の単一チップ電極を示す。図2Bは多数のウェルあるいはスポット内の細胞の同時エレクトロポレーション用に整列させた直線配列のチップ電極を示す。図2Cは複数のウェルあるいはスポットに含有する複数の細胞のエレクトロポレーション用の二次元配列されたチップ電極を示す。
【図3】図3Aおよび3Bはチップ電極の変更設計例を示し、複数のチップ電極は一つのプレート内に並列に成形される。一態様において、プレートは異なる三層からなり、層(1)は電極と電解質貯蔵部の両方を兼ね備えたウェルを備え更に少なくとも一部分が導電材料で形成されており;層(2)は前記層(1)内のウェルに対応する並列チップを備えた非導電層からなり、層(3)は対極層であり、ここには各チップ電極に対応する個々の環状の対極が図示される。図3Aはこの様式における単一のチップ電極の拡大図であり、図3Bは二次元配列された並列チップ電極を備えたプレートを示す。
【図4】図4Aおよび4Bは細胞に近接されたチップ電極の端部の形状の多様な変更例を示すがこれに限定されない。図4Aは同一の内径で且つ外径を変更させた、すなわち外径を均一、先細あるいは拡大させたチップ電極を示す。図4Bは先細にした内径および先細、均一、あるいは拡大した外径を備えたチップ電極を示す。
【図5】図5A〜Cは図2に示されるようにチップ電極を受け入れる電極プレートを示す。図示された態様において、チップ電極はプレートから取り外すことができる。図5Aは単一のチップ電極を受け入れる開口部を備えた電極プレートを示し、図5Bは直線配列のチップ電極の開口部を備えた電極プレートを示す。図5Cは二次元配列されたチップ電極に接着する電極プレートを示す。
【図6】図6A〜Cは単一のチップ電極(図6A)、数個のチップ電極(図6B)、複数のチップ電極(図6C)に関する本発明の一態様の電極プレートに取り付けられたチップ電極を図示する。図6Bおよび6Cは本発明の更なる一実施態様を図示し、ここでチップ電極の中心と中心との距離を工業規格のマイクロタイタープレートの中心から中心への距離に対応させることによりマイクロタイタープレートの各ウェルにおける並列エレクトロポレーションを促進させるようチップ電極間を離して配置させる。
【図7】図7A〜Dは本発明の異なる態様における細胞培養プレートあるいは異なる細胞容器を例示する。図7Aは細胞の単一スポットをエレクトロポレーションするための適切なプレートを示す。図7B〜Dは複数のスポットがエレクトロポレーションされる場合の適切なプレートを示す。図7BおよびCはまたマイクロタイター皿などの細胞容器における各ウェルを選択的にエレクトロポレーションするための適切なプレートを示す。図7Dはまた融合培養などの多量の細胞集団をエレクトロポレーションするのに適切な細胞容器を示す。
【図8】図8A〜Eはチップ電極の数および細胞容器中、例えばマイクロタイタープレートのウェルの数を変化させた本発明の異なるエレクトロポレーションシステムを示す。
【図9】図9A〜Hは本発明のエレクトロポレーションシステムの異なる成分に対して形状あるいは機能を変更する方法を図示する。図9Aはチップ電極の変更方法を示すがこれに限定されない。チップの導電部分はチップを画定するケースの壁部を貫通するワイヤとして(図9A)、片側のチップ壁部を貫通するロッドとして(図9B)、両側のチップ壁部を貫通するロッドとして(図9C)、頂部からチップ内部に下向きに突き刺すワイヤあるいはロッドとして(図9D)設計され且つリングプレートの外側に接続され、あるいは導電部分はチップの内部および一部外部において被覆される(図9E)。このチップは更に出口領域に孔を備えるため電場が三次元方向に拡散されることにより細胞浮遊液に対するエレクトロポレーションが可能となる。図9Gは対極の設計における変更例を示す。これは単一あるいは複数のワイヤあるいはロッドとして、チップ電極が中央に設置されるシリンダとして、中央におけるチップ電極に備わるリング形状のワイヤとしてあるいは小さいプレート電極として形成される。図9Hは対極が電極プレートの代わりに、電極としてかあるいは細胞プレート上に被覆された導電層として細胞プレートに設置される。
【図10】図10A〜Cは50msパルスを印加中の電気浸透および電気泳動により生じたチップ電極の溶液排出を示す。チップ電極は0ms(図10A)、25ms(図10B)、および50ms(図10C)の時点でpH9の緩衝液中100μMのフルオレセインを含有させた。チップが浸されるバルク溶液をpH4で中和し蛍光消光させた。流動は電場におけるフルオレセインの電気浸透/電気泳動の結果生じ;圧力は付加されない。
【図11】図11A〜Cは微小流体チャネルが溶液の分配および交換のために本発明のエレクトロポレーションシステムの別の部分に一体化される方法が示される。例えば、微小流体チャネルはチップ電極プレート(図11A)、あるいは電極プレート(図11B)に一体化され薬剤を孔に投与するか、あるいはチップ電極を介して一つあるいはそれ以上の薬剤を連続送達する。微小流体チャネルは図示されるように(図11C)細胞培養プレートに一体化され細胞周囲液を迅速に交換するか、あるいは細胞培養の溶液を連続洗浄/かん流する。
【図12】図12は本発明の一態様のエレクトロポレーションシステムにおいて、チップ電極プレートおよび細胞プレートに対して、パルス発生器、液体分配装置、および検出器を追加させたものを示す。
【図13】図13A〜Gは電極の標的対向端部と標的との間の距離を制御する異なった位置決め装置を示す。図13Aは剛性のチップ電極が電極プレートの可撓性部分に接続あるいは一体化される本発明の一態様を示す。図13Bはチップ電極が可撓性であり電極プレートに接続あるいは一体化される本発明の一態様を示す。図13Cは位置決め装置(例えば縦棒)が設けられ、これは更に導電性表面を提供する本発明の一態様を示す。図13Dはチップ電極がそのチップに一体化された位置決め要素からなる本発明の一態様を示す。図13Eはチップ電極がチップにおいて取外し可能な位置決め要素からなる本発明の一態様を示す。図13Fは本発明に関する別の典型的な位置決め要素を示す。図13Gは位置決め要素がチップを形成する先細の端部からなる本発明の一態様を示す。
【図14】図14A〜Eはチップ電極から50μm下に配置されたPC12細胞内に対してフルオレセイン二リン酸塩(FDP)の内在化およびエレクトロポレーションを示す。FDPはホスファターゼによりフルオレセインに対して細胞質が裂かれるまで蛍光を発しない。チップ電極は500μM FDPを含むHepes−塩バッファ(pH7.4)で充填された。細胞は5×10パルス、3mAで、100msの期間に対しパルス間の100msの遅延時間を加えてエレクトロポレーションされた。図14Aは細胞培養の明視野像であり、図14Bはエレクトロポレーション後のフルオレセイン中の同じ培養を示す。図14C〜Eは同一の細胞培養中の細胞中2つのスポットにおける同時並行のエレクトロポレーションを示す。PC−12細胞はHepes−塩バッファ(pH7.4)中500μMのFDPにより、パルス間の100msの遅延時間と100msの期間において4mAのパルス列の20パルスでエレクトロポレーションされた。2つのチップ電極と細胞培養との間の距離はおよそ100μmだった。図14Cは細胞培養の明視野像であり;図14Dはエレクトロポレーション前のチップ電極の標的対向端部と培養の蛍光画像である。図14Eはエレクトロポレーション後の同一の培養の蛍光を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性媒質を受け入れる内腔部を画定するケースと;および電圧あるいは定電流源に接続する導電性表面とを構成するチップ電極。
【請求項2】
前記ケースは、内腔部と連通する開口部を備え該開口部を介して標的に薬剤を送達するための標的対向端部を構成する請求項1記載のチップ電極。
【請求項3】
前記内腔部は導電性媒質を含有する請求項1記載のチップ電極。
【請求項4】
前記ケースは先細端部を構成する請求項1記載のチップ電極。
【請求項5】
前記導電性表面は前記内腔部を画定するケースの壁部を少なくとも部分的に被覆する被覆部を構成する請求項1記載のチップ電極。
【請求項6】
前記チップ電極は導電性表面からなるケースの内腔部に挿入される要素を構成する請求項1記載のチップ電極。
【請求項7】
前記要素はシリンダ、ロッド、フィラメントあるいはワイヤである請求項6記載のチップ電極。
【請求項8】
前記導電性表面は前記ケースの片側あるいは両側においてケースの壁部を貫通する構造である請求項6または7記載のチップ電極。
【請求項9】
前記導電性表面は前記ケースの外側においてリングプレートと接続されたワイヤである請求項1記載のチップ電極。
【請求項10】
前記導電性媒質は液体である請求項1記載のチップ電極。
【請求項11】
導電性媒質はジェルである請求項1記載のチップ電極。
【請求項12】
導電性媒質は標的に送達する薬剤からなる請求項1記載のチップ電極。
【請求項13】
前記ケースはガラス、石英ガラス、プラスチック、セラミック、エラストマー材料、ポリマー、金属、導電性材料で少なくとも部分的に被覆された非導電性材料、および非導電性材料で少なくとも部分的に被覆された導電性材料を構成するグループから選択される材料からなる請求項1記載のチップ電極。
【請求項14】
前記ケースは更に前記標的対向端部から遠位にある受け入れ端部を構成し、且つ前記導電性媒質を受け入れる開口部を構成する請求項2記載のチップ電極。
【請求項15】
前記チップ電極は対極として機能する導電性表面を更に構成する請求項1記載のチップ電極。
【請求項16】
前記ケースは均一な内径と均一あるいは可変な外径を構成する請求項1記載のチップ電極。
【請求項17】
前記ケースは均一な外径と均一なあるいは可変な内径を構成する請求項1記載のチップ電極。
【請求項18】
前記チップ電極の長さは約10cm未満である請求項1記載のチップ電極。
【請求項19】
前記チップ電極の長さは約500μm未満である請求項1記載のチップ電極。
【請求項20】
前記チップ電極の長さは約50μm未満である請求項1記載のチップ電極。
【請求項21】
前記チップ電極の長さは約1μm未満である請求項1記載のチップ電極。
【請求項22】
前記標的対向端部における開口部の直径は約5000μm未満かそれに等しい請求項2記載のチップ電極。
【請求項23】
前記標的対向端部における開口部の直径は約100μm未満である請求項2記載のチップ電極。
【請求項24】
前記標的対向端部における開口部の直径は約50μm未満である請求項2記載のチップ電極。
【請求項25】
前記標的対向端部における開口部の直径は約10μm未満である請求項2記載のチップ電極。
【請求項26】
前記標的対向端部における開口部の直径は約1μm未満である請求項2記載のチップ電極。
【請求項27】
前記標的対向端部における開口部の直径は約100nm未満である請求項2記載のチップ電極。
【請求項28】
前記標的対向端部における開口部の直径は約50nm未満である請求項2記載のチップ電極。
【請求項29】
チップ電極を受け入れるための少なくとも一つの取付け部を構成する電極プレート。
【請求項30】
前記少なくとも一つの取付け部はチップ電極を受け入れる可撓性付着部からなり、チップ電極を該取付け部から垂直移動可能に構成される請求項29記載の電極プレート。
【請求項31】
複数の取付け部からなる請求項29記載の電極プレート。
【請求項32】
前記電極プレートは一列の取付け部を構成しチップ電極の直線配列を形成する請求項31記載の電極プレート。
【請求項33】
前記電極プレートは複数の列の取付け部を構成し、二次元配列のチップ電極を形成する請求項31記載の電極プレート。
【請求項34】
前記各取付け部の中心から中心への距離は、工業規格のマイクロタイタープレートにおけるウェルの中心から中心への距離に対応する請求項31記載の電極プレート。
【請求項35】
前記電極プレートは電圧あるいは定電流源に対して少なくとも一つの接点を構成する請求項29記載の電極プレート。
【請求項36】
前記電極プレートは点滴装置と接続する少なくとも一つの接点を構成する請求項29記載の電極プレート。
【請求項37】
電極プレートは導電層と絶縁層とからなる少なくとも二つの層を構成する請求項29記載の電極プレート。
【請求項38】
対極として機能する一つの層を構成する請求項29または37記載の電極プレート。
【請求項39】
前記少なくとも一つの取付け部は前記チップ電極を受け入れる開口部を備える請求項29記載の電極プレート。
【請求項40】
前記少なくとも一つのチップ電極は前記取付け部において電極プレートに取り付けられる請求項29記載の電極プレート。
【請求項41】
複数のチップ電極が電極プレートに取付けられる請求項31乃至33のいずれか一つに記載の電極プレート。
【請求項42】
前記電極プレートは少なくとも一つの微小流体チャネルを備え、電極プレートに取付けられた少なくとも一つのチップ電極に液体を送達する請求項29記載の電極プレート。
【請求項43】
上面に少なくとも一つの非平面要素が形成される実質的に平らなプレートを構成するチップ電極プレートであって、前記プレートから遠位側にある該非平面要素の端部は電場に対して標的を暴露させる開口部を備え、且つ該非平面要素の内壁部は内腔部を画定するチップ電極プレート。
【請求項44】
前記内壁部は導電性表面からなり、および/または前記内腔部は導電性媒質からなる請求項43記載のチップ電極プレート。
【請求項45】
前記導電性表面は貯蔵部の内壁部を部分的に被覆する導電性塗料からなる請求項43記載のチップ電極プレート。
【請求項46】
前記構造体は内腔部の底部においてあるいは前記非平面要素の一方あるいは両方の壁部を貫通するワイヤ、ロッド、あるいはフィラメントから構成される請求項43記載のチップ電極プレート。
【請求項47】
前記少なくとも一つの非平面要素の端部は先細形状である請求項43記載のチップ電極プレート。
【請求項48】
前記電極プレートは複数の貯蔵部からなる第一層と該プレートより隆起した複数の非平面要素からなる実質平面の第二層とから構成され、各非平面要素は電場に対して標的を暴露させるために該第一層よりも各貯蔵部よりも上位に中心がある標的対向開口部からなり、非極性要素の内壁は貯蔵部と開口部との両方を連通する内腔部を画定する請求項43記載のチップ電極プレート。
【請求項49】
前記電極プレートは更に対極層を構成する請求項48記載のチップ電極プレート。
【請求項50】
貯蔵部は導電媒質を含む請求項43または48記載のチップ電極プレート。
【請求項51】
導電媒質は薬剤からなる請求項50記載のチップ電極プレート。
【請求項52】
前記対極層は導電媒質に接触する請求項49記載のチップ電極プレート。
【請求項53】
前記貯蔵部は薬剤を含有する請求項43または48記載のチップ電極プレート。
【請求項54】
請求項1記載のチップ電極と標的を含有する容器とからなるキット。
【請求項55】
請求項29記載の電極プレートと該電極プレートに取り付けられる少なくとも一つのチップ電極とからなるキット。
【請求項56】
標的を含有する容器を更に構成する請求項55記載のキット。
【請求項57】
前記電極プレートは少なくとも一つの微小流体チャネルを構成する請求項55記載のキット。
【請求項58】
前記電極プレートおよび/または容器は少なくとも一つの微小流体チャネルを構成する請求項56記載のキット。
【請求項59】
前記標的を含有する容器はマイクロタイター皿、マルチ−ウェル細胞培養容器、ペトリ皿、高分子基板、ガラス基板、微小流体チップ、および膜からなるグループから選択される請求項56記載のキット。
【請求項60】
前記キットは更に少なくとも一つの対極を構成する請求項55記載のキット。
【請求項61】
前記キットは更に少なくとも一つのチップ電極を満たす導電媒質を更に構成する請求項55記載のキット。
【請求項62】
前記キットは少なくとも一つの薬剤からなる請求項55記載のキット。
【請求項63】
前記キットは少なくとも一つの細胞を構成する請求項55記載のキット。
【請求項64】
前記キットは更に標的を含有する容器を構成する請求項55記載のチップ電極プレートからなるキット。
【請求項65】
前記チップ電極プレートおよび/または容器は更に少なくとも一つの微小流体チャネルを構成する請求項64記載のキット。
【請求項66】
前記標的を含有する容器はマイクロタイター皿、マルチ−ウェル細胞培養容器、ペトリ皿、高分子基板、ガラス基板、微小流体チップ、および膜からなるグループから選択される請求項65記載のキット。
【請求項67】
前記キットは更に少なくとも一つの貯蔵部を満たす導電媒質を構成する請求項65記載のキット。
【請求項68】
前記キットは少なくとも一つの薬剤を構成する請求項65記載のキット。
【請求項69】
前記キットは少なくとも一つの細胞を構成する請求項65記載のキット。
【請求項70】
少なくとも一つのチップ電極を構成するシステムにおいて、該チップ電極は、電極プレートと接触する導電性表面と導電性媒質を受け入れる内腔部を画定するケースとからなり、該ケースは該内腔部と連通する開口部を備え、該開口部を介して薬剤を標的に送達するための標的対向端部を構成し、該電極プレートはパルス発生器に対して接続可能であり電圧あるいは電流パルスを導電性表面に送達させるシステム。
【請求項71】
標的を含有する容器を更に構成する請求項70記載のシステム。
【請求項72】
前記システムは標的に近接して前記少なくとも一つのチップ電極を位置決めする装置を構成する請求項70記載のシステム。
【請求項73】
前記システムは前記電極プレートと連通するパルス発生器を構成し電圧あるいは電流パルスを前記少なくとも一つのチップ電極を介して送達する請求項70記載のシステム。
【請求項74】
少なくとも一つの対極を更に構成する請求項70記載のシステム。
【請求項75】
前記少なくとも一つのチップ電極の内腔部は導電性媒質からなる請求項70記載のシステム。
【請求項76】
前記導電性媒質は薬剤からなる請求項75記載のシステム。
【請求項77】
前記システムは更に送達装置を構成し、液体および/または薬剤を少なくとも一つのチップ電極に送達する請求項75記載のシステム。
【請求項78】
前記送達装置はチップ電極の内腔部を介して薬剤を電気泳動する機構、電気浸透用機構、ポンピング機構のうちの一つあるいはそれ以上から構成される請求項77記載のシステム。
【請求項79】
前記システムは複数のチップ電極を構成し、それぞれ電極プレートと電気接触する請求項70記載のシステム。
【請求項80】
各チップ電極を介して伝達された電極パルスはシステムプロセッサを介して独自に制御される請求項79記載のシステム。
【請求項81】
前記複数のチップ電極は列状に配列される請求項79記載のシステム。
【請求項82】
前記複数のチップ電極は複数の列で配列される請求項79記載のシステム。
【請求項83】
前記電極プレートおよび/または容器は一つあるいはそれ以上の微小流体チャネルを構成する請求項71または79記載のシステム。
【請求項84】
前記システムは更に検出器を構成し、チップ電極に近接する標的の光学特性あるいは電気特性の変化および/または標的に対する薬剤および/または液体の送達を検出する請求項70記載のシステム。
【請求項85】
前記少なくとも一つのチップ電極は前記電極プレートから取り外し可能である請求項70記載のシステム。
【請求項86】
前記少なくとも一つのチップ電極は前記電極プレートと一体化される請求項70記載のシステム。
【請求項87】
前記電極プレートは複数の貯蔵部からなる第一層とチップ電極を形成する前記プレートより隆起する複数の非平面要素からなる実質平面な第二層とから構成され、前記チップ電極の前記標的対向開口部は前記第一層内の各貯蔵部上の中心部に配置され、前記チップ電極の内腔部は前記貯蔵部と連通する請求項86記載のシステム。
【請求項88】
前記少なくとも一つのチップ電極の内腔部は導電媒質からなる請求項70記載のシステム。
【請求項89】
前記少なくとも一つのチップ電極のケースは先細端部を構成する請求項70記載のシステム。
【請求項90】
前記少なくとも一つのチップ電極の導電性表面は内腔部を画定するケースの壁部を少なくとも部分的に被覆する被覆部を構成する請求項70記載のシステム。
【請求項91】
前記導電性表面は前記ケースの内腔部中に挿入された導電性表面からなる要素を構成する請求項70記載のシステム。
【請求項92】
前記要素はシリンダ、ロッドあるいはワイヤである請求項70記載のシステム。
【請求項93】
前記導電性表面は前記ケースの片側あるいは両側におけるケースの壁部を貫通する構造である請求項70記載のシステム。
【請求項94】
前記導電性表面は前記ケースの外側においてリングプレートと接続されたワイヤである請求項70記載のシステム。
【請求項95】
前記導電媒質は液体である請求項70記載のシステム。
【請求項96】
前記導電媒質はジェルである請求項70記載のシステム。
【請求項97】
前記導電媒質は標的に送達するための薬剤からなる請求項70記載のシステム。
【請求項98】
前記ケースは、ガラス、石英ガラス、プラスチック、セラミック、エラストマー材料、ポリマー、金属、導電性材料で少なくとも部分的に被覆された非導電性材料、および非導電性材料で少なくとも部分的に被覆された導電性材料からなるグループから選択される材料からなる請求項70記載のシステム。
【請求項99】
前記少なくとも一つのチップ電極の前記ケースは更に前記標的対向端部から遠位にある受け入れ端部を構成し、且つ前記導電性媒質を受け入れる開口部を構成する請求項70記載のシステム。
【請求項100】
前記少なくとも一つのチップ電極および/または電極プレートは対極として機能する導電性表面を更に構成する請求項70記載のシステム。
【請求項101】
前記少なくとも一つのチップ電極の前記ケースは均一な内径と均一あるいは可変な外径を構成する請求項70記載のシステム。
【請求項102】
前記少なくとも一つのチップ電極の前記ケースは均一な外径と均一なあるいは可変な内径を構成する請求項70記載のシステム。
【請求項103】
前記少なくとも一つのチップ電極の長さは約10cm未満である請求項70記載のシステム。
【請求項104】
前記少なくとも一つのチップ電極の長さは約500μm未満である請求項70記載のシステム。
【請求項105】
前記少なくとも一つのチップ電極の長さは約50μm未満である請求項70記載のシステム。
【請求項106】
前記少なくとも一つのチップ電極の長さは約1μm未満である請求項70記載のシステム。
【請求項107】
前記少なくとも一つのチップ電極の前記標的対向端部における開口部の直径は約5000μm未満かそれに等しい請求項70記載のシステム。
【請求項108】
前記少なくとも一つのチップ電極の前記標的対向端部における開口部の直径は約100μm未満である請求項70記載のシステム。
【請求項109】
前記少なくとも一つのチップ電極の前記標的対向端部における開口部の直径は約50μm未満である請求項70記載のシステム。
【請求項110】
前記少なくとも一つのチップ電極の前記標的対向端部における開口部の直径は約10μm未満である請求項70記載のシステム。
【請求項111】
前記少なくとも一つのチップ電極の前記標的対向端部における開口部の直径は約1μm未満である請求項70記載のシステム。
【請求項112】
前記少なくとも一つのチップ電極の前記標的対向端部における開口部の直径は約100nm未満である請求項70記載のシステム。
【請求項113】
前記少なくとも一つのチップ電極の前記標的対向端部における開口部の直径は約50nm未満である請求項70記載のシステム。
【請求項114】
前記電極プレートはチップ電極を受け入れるための少なくとも一つの取付け部を構成し、且つ前記少なくとも一つの取付け部は前記チップ電極を受け入れる可撓性付着部からなり、チップ電極を該取付け部から垂直移動可能に構成される請求項70記載のシステム。
【請求項115】
前記電極プレートは複数の取付け部からなる請求項114記載のシステム。
【請求項116】
前記電極プレートは一列の取付け部を構成しチップ電極の直線配列を形成する請求項114記載のシステム。
【請求項117】
前記電極プレートは複数の列の取付け部を構成し、二次元配列のチップ電極を形成する請求項114記載のシステム。
【請求項118】
前記各取付け部の中心から中心への距離は、工業規格のマイクロタイタープレートにおけるウェルの中心から中心への距離に対応する請求項114記載のシステム。
【請求項119】
前記電極プレートは電圧あるいは定電流源に対して少なくとも一つの接点を構成する請求項114記載のシステム。
【請求項120】
前記電極プレートは点滴装置と接続する少なくとも一つの接点を構成する請求項114記載のシステム。
【請求項121】
前記電極プレートは導電層と絶縁層とからなる少なくとも二つの層を構成する請求項114記載のシステム。
【請求項122】
前記電極プレートは対極として機能する一つの層を構成する請求項114または121記載のシステム。
【請求項123】
前記少なくとも一つの取付け部は前記チップ電極を受け入れる開口部を備える請求項114記載のシステム。
【請求項124】
前記電極プレートおよび/または対極は少なくとも一つの微小流体チャネルを備える請求項71記載のシステム。
【請求項125】
少なくとも一つのチップ電極への液体の送達、少なくとも一つのチップ電極への少なくとも一つの薬剤の送達、導電媒質によるチップ電極の充填、電圧あるいは電流パルスパラメータ、標的に対する少なくとも一つのチップ電極からなる電極プレートの走査、一つのチップ電極に対する標的の走査、一つのチップ電極の垂直方向移動、一つのチップ電極を介する電気泳動、一つのチップ電極を介する電気浸透、一つのチップ電極を介する液体のポンプによる排水、システム検出器の関数:とからなるグループから選択された一つあるいはそれ以上のパラメータを制御するためのプロセッサを更に構成する請求項70記載のシステム。
【請求項126】
前記電圧あるいは電流パルスパラメータはパルス幅、波形、およびパルス振幅からなるグループから選択される請求項125記載のシステム。
【請求項127】
前記システムは更にシステムの操作を表示しおよび/またはシステムパラメータを変更するグラフィカルインターフェースからなるユーザーの装置を構成する請求項125または126記載のシステム。
【請求項128】
前記システムは更に前記検出器からの出力を表示する読み出し装置を構成する請求項84記載のシステム。
【請求項129】
前記チップ電極が可撓性部を構成する請求項1記載のチップ電極。
【請求項130】
前記少なくとも一つのチップ電極が可撓性部を構成する請求項70記載のシステム。
【請求項131】
前記システムは更に少なくとも一つのチップ電極の垂直方向移動を制限する位置決め装置を構成する請求項70記載のシステム。
【請求項132】
前記位置決め装置は少なくとも一つのチップ電極の標的対向端部に対して取り付けられる請求項131記載のシステム。
【請求項133】
前記位置決め装置は前記チップ電極に一体化される請求項131記載のシステム。
【請求項134】
前記チップは標的対向端部に近接するチップの端部に孔を有する請求項2記載のチップ電極。
【請求項135】
前記少なくとも一つのチップ電極は標的対向端部に近接するチップの端部に孔を有する請求項41記載の電極プレート。
【請求項136】
標的と少なくとも一つの非標的要素とからなる試料を集束された電場に暴露する方法において、集束電場により選択的に標的の特性を変更する方法。
【請求項137】
前記標的は生体膜から構成される請求項136記載の方法。
【請求項138】
前記標的は:細胞集団、単一細胞、細胞内顆粒、小胞、リポソーム、分子、分子群、核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド;酵素;炭素繊維;化学反応体および表面からなるグループから選択される請求項137記載の方法。
【請求項139】
前記標的は少なくとも一つの非標的からなる液体に懸濁される請求項136記載の方法。
【請求項140】
前記標的は基板と結合する請求項136記載の方法。
【請求項141】
前記基板は配列を構成する請求項140記載の方法。
【請求項142】
前記基板はマイクロタイター皿からなる請求項140記載の方法。
【請求項143】
前記電場は請求項1記載のチップ電極により提供される請求項136記載の方法。
【請求項144】
前記方法は複数の非標的成分からなる試料中の複数の標的それぞれを集束電場に暴露させる工程からなる請求項136記載の方法。
【請求項145】
前記各集中電場は独立して整調可能である請求項144記載の方法。
【請求項146】
請求項1の複数のチップ電極は集束電場を提供する請求項144記載の方法。
【請求項147】
前記複数の標的は複数の集束電場に対して連続しておよび/または同時に暴露される請求項146記載の方法。
【請求項148】
前記複数のチップ電極は電極プレート上で配列する請求項146記載の方法。
【請求項149】
前記複数のチップ電極のそれぞれはマイクロタイタープレートのウェルの真上に配置される148記載の方法。
【請求項150】
前記複数のチップ電極のそれぞれは標的が設置される基板上のスポットの真上に配置される請求項148記載の方法。
【請求項151】
前記標的は生体膜から構成され暴露されると膜に孔を形成する請求項136記載の方法。
【請求項152】
前記方法は更に標的を薬剤に暴露する工程を構成する請求項136または151記載の方法。
【請求項153】
前記方法は更に標的を薬剤に暴露し、且つ薬剤を前記膜により画定された区画内部に導入する工程を構成する請求項137記載の方法。
【請求項154】
前記電場に対する暴露および前記薬剤に対する暴露は調整される請求項152記載の方法。
【請求項155】
前記標的は融合性細胞培養中の単細胞からなる請求項136記載の方法。
【請求項156】
前記標的は融合性細胞培養中の細胞全体数より少ない細胞数からなる請求項136記載の方法。
【請求項157】
前記標的は融合性細胞培養における細胞数が約500未満である請求項136記載の方法。
【請求項158】
前記方法は更に前記標的が浸される溶液の条件を改質する工程を含む請求項136記載の方法。
【請求項159】
前記電場は請求項1のチップ電極により形成され、前記標的は前記チップ電極により送達された薬剤に更に暴露される請求項151記載の方法。
【請求項160】
前記チップ電極はチップ電極の前記内腔部と流通する少なくとも一つのチャネルを構成するプレートに連結される請求項143または151記載の方法。
【請求項161】
前記基板は前記標的と流通する少なくとも一つのチャネルを構成する請求項140記載の方法。
【請求項162】
前記標的は少なくとも一つのチャネル内の液体中の薬剤に暴露される請求項161記載の方法。
【請求項163】
前記基板は前記標的と流通する複数のチャネルを構成する請求項161記載の方法。
【請求項164】
複数の薬剤および/またはバッファは複数のチャネルから前記標的に対して連続してあるいは同時に送達される請求項161記載の方法。
【請求項165】
前記標的は少なくとも一つのチャネルからの少なくとも一つの液体流に暴露される請求項161記載の方法。
【請求項166】
前記標的は、前記標的を移動、前記基板を移動、前記基板と標的との両方を移動することにより、および/または前記基板の少なくとも一つのチャネルの圧力を変化させることにより、前記少なくとも一つの液体流を介して走査される請求項161記載の方法。
【請求項167】
前記方法は改質された特性を検出する工程を更に含む請求項136記載の方法。
【請求項168】
前記電場の一つあるいはそれ以上のパラメータを監視する工程を更に含む請求項136記載の方法。
【請求項169】
前記電場の一つあるいはそれ以上のパラメータを監視する工程を更に含む請求項168記載の方法。
【請求項170】
前記改質された特性の検出に応答して前記電場のパラメータを変更する工程を更に含む請求項168記載の方法。
【請求項171】
前記標的は前記標的に近接するチャネル出口からの液体流を送達することにより液体流に暴露される工程を含む請求項161記載の方法。
【請求項172】
前記液体は薬剤からなる請求項171記載の方法。
【請求項173】
前記液体流の送達は前記電場に対する前記標的の暴露と連携する請求項172記載の方法。
【請求項174】
前記薬剤は、遺伝子;遺伝子アナログ;RNA;RNAアナログ;siRNA;アンチセンス・オリゴヌクレオチド;リボザイム;DNA;DNAアナログ;アプタマー;コロイド粒子;ナノ粒子;受容体;受容体リガンド;受容体アンタゴニスト;受容体アゴニスト;受容体遮断薬;酵素;酵素基質;酵素阻害剤;酵素モジュレータ;蛋白質;蛋白質アナログ;ポリペプチド;ポリペプチドアナログ;アミノ酸;アミノ酸アナログ;ペプチド;ペプチドアナログ;代謝産物;代謝産物アナログ,オリゴヌクレオチド;オリゴヌクレオチドアナログ;抗原;抗原アナログ;ハプテン;ハプテンアナログ;抗体;抗体アナログ;細胞小器官;細胞小器官アナログ;細胞核;細胞分画;細菌;ウィルス;ウィルス粒子;配偶子;無機イオン;有機イオン;金属;細胞の化学反応に影響を与える薬剤;細胞骨格に影響を与える薬剤;ポリマーに影響を与える薬剤;及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項152記載の方法。
【請求項175】
前記薬剤は、遺伝子;遺伝子アナログ;RNA;RNAアナログ;siRNA;アンチセンス・オリゴヌクレオチド;リボザイム;DNA;DNAアナログ;アプタマー;コロイド粒子;ナノ粒子;受容体;受容体リガンド;受容体アンタゴニスト;受容体アゴニスト;受容体遮断薬;酵素;酵素基質;酵素阻害剤;酵素モジュレータ;蛋白質;蛋白質アナログ;ポリペプチド;ポリペプチドアナログ;アミノ酸;アミノ酸アナログ;ペプチド;ペプチドアナログ;代謝産物;代謝産物アナログ,オリゴヌクレオチド;オリゴヌクレオチドアナログ;抗原;抗原アナログ;ハプテン;ハプテンアナログ;抗体;抗体アナログ;細胞小器官;細胞小器官アナログ;細胞核;細胞分画;細菌;ウィルス;ウィルス粒子;配偶子;無機イオン;有機イオン;金属;細胞の化学反応に影響を与える薬剤;細胞骨格に影響を与える薬剤;ポリマーに影響を与える薬剤;及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項159および172記載の方法。
【請求項176】
前記薬剤は前記標的が浸される溶液の条件を改質させる請求項152記載の方法。
【請求項177】
前記薬剤は前記標的が浸される溶液の条件を改質させる請求項159および172記載の方法。
【請求項178】
前記条件はpH、温度、イオン強度、浸透圧、粘度およびそれらの組み合わせである請求項172記載の方法。
【請求項179】
前記条件はpH、温度、イオン強度、浸透圧、粘度およびそれらの組み合わせである請求項177記載の方法。
【請求項180】
前記電場は一つあるいはそれ以上の標的分子に双極子を含む請求項136記載の方法。
【請求項181】
前記電場は一つあるいはそれ以上の標的分子を伸縮、移動、結合、反応、および/または変性させる請求項136記載の方法。
【請求項182】
前記標的は表面であり更にチップは分子を送達し電場の存在下においてその表面を複数の分子、高分子、細胞あるいはそれらの組み合わせでパターン形成する請求項136記載の方法。
【請求項183】
前記生体膜は電場に暴露する前、間および/または後に前記薬剤に暴露される請求項151記載の方法。
【請求項184】
前記薬剤は標識である請求項151記載の方法。
【請求項185】
前記標識は細胞内分子あるいは細胞小器官内部分子と接触し検出可能な信号あるいは反応物を生成し、且つ本方法は検出可能な信号あるいは反応物を検出する工程を更に含む請求項151記載の方法。
【請求項186】
前記チップの内腔部中の分子、イオンおよび/またはポリマーを分離および/または濃縮する工程を更に含む請求項151記載の方法。
【請求項187】
前記ポリマーは核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物およびそれらの組合わせからなるグループから選択される請求項186記載の方法。
【請求項188】
前記標的は、FRET対の半分で予め負荷され、且つ本方法は更に前記電場に対して暴露する間および/または後に、前記FRET対のもう半分に対して前記標的を暴露する工程を更に構成し、ここで信号の生成は孔形成が確認されたことを示す請求項151記載の方法。
【請求項189】
溶質を前記膜により画定された区画の外側にある媒質から前記膜により画定された前記区画内部に移動する工程を更に構成する請求項151記載の方法。
【請求項190】
溶質を前記膜により画定された区画の内側にある媒質から前記膜の外側の溶液中に移動する工程を更に構成する請求項151記載の方法。
【請求項191】
前記生体膜は細胞膜である請求項189または190記載の方法。
【請求項192】
前記生体膜は細胞内顆粒の膜である請求項189または190記載の方法。
【請求項193】
前記薬剤は細胞内分子、高分子、高分子イオン、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、あるいは核酸と相互作用し検出可能な生成物を生成し、且つ本方法は検出可能な生成物を検出する工程を更に構成する請求項152記載の方法。
【請求項194】
前記薬剤は細胞内分子、高分子、高分子イオン、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、あるいは核酸と相互作用し検出可能な生成物を生成し、且つ本方法は検出可能な生成物を検出する工程を更に構成する請求項159および172記載の方法。
【請求項195】
前記薬剤の内部化に対する前記区画の反応を検出する工程を更に含む請求項189記載の方法。
【請求項196】
検出は静電容量、電解電量、電流測定、CARS(干渉性反ストークスラマン散乱)、SERS(表面増強ラマン散乱)、リン光、化学ルミネッセンス、UV−VIS−IR吸収、水晶マイクロバランス、および表面プラスモン共鳴を監視することによって実施される請求項189記載の方法。
【請求項197】
前記複数の標的は基板上あるいは溶液中に個別に配置され、物的障壁により別の標的から隔離される請求項144記載の方法。
【請求項198】
前記標的は選択された型の細胞であり且つ非標的は異なる型の細胞である請求項136記載の方法。
【請求項199】
前記標的は選択された型の細胞小器官であり且つ非標的は異なる型の細胞である請求項136記載の方法。
【請求項200】
第一細胞内成分と第二細胞内成分との間の相互作用を改質させる薬剤のスクリーニング法において、
前記第一細胞内成分と前記第二細胞内成分とからなる細胞を前記薬剤と接触させ;
前記細胞を細胞に孔を生成させる条件下において、請求項1のチップ電極を使用する集束電場に暴露し、および
前記相互作用における変化を検出する工程から構成される方法。
【請求項201】
前記暴露工程は前記接触工程の前、間および/または後に実施する請求項200記載の方法。
【請求項202】
前記第一および/または前記第二成分は標識化され且つ本方法は暴露の後に前記標識により生成された信号の変化を検出する工程を含む請求項199記載の方法。
【請求項203】
前記方法は、前記第一および前記第二成分が相互作用する際に生じる反応物の有無、あるいは変化を検出する工程を含む請求項200記載の方法。
【請求項204】
前記方法は、第一および第二成分の相互作用と関連した表現型あるいは細胞機能あるいは細胞外機能の有無あるいは変化を検出する工程を含む請求項200記載の方法。
【請求項205】
前記相互作用は前記第一および前記第二成分を結合する工程を含む請求項200記載の方法。
【請求項206】
前記第一および前記第二成分は細胞内分子、高分子、代謝産物、ポリマー、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、核酸塩基、ヌクレオチド、小胞、細胞膜成分、細胞小器官およびそれらの組み合わせからなるグループから別々に選択される請求項200記載の方法。
【請求項207】
前記タンパク質は受容体、リガンド、酵素、細胞骨格タンパク質、シグナル伝達タンパク質、イオンチャネル、オルガネラ膜タンパク質、あるいは細胞膜タンパク質からなる請求項206記載の方法。
【請求項208】
前記薬剤は、遺伝子;遺伝子アナログ;RNA;RNAアナログ;siRNA;アンチセンス・オリゴヌクレオチド;リボザイム;DNA;DNAアナログ;アプタマー;コロイド粒子;ナノ粒子;受容体;受容体リガンド;受容体アンタゴニスト;受容体アゴニスト;受容体遮断薬;酵素;酵素基質;酵素阻害剤;酵素モジュレータ;蛋白質;蛋白質アナログ;ポリペプチド;ポリペプチドアナログ;アミノ酸;アミノ酸アナログ;ペプチド;ペプチドアナログ;代謝産物;代謝産物アナログ,オリゴヌクレオチド;オリゴヌクレオチドアナログ;抗原;抗原アナログ;ハプテン;ハプテンアナログ;抗体;抗体アナログ;細胞小器官;細胞小器官アナログ;細胞核;細胞分画;細菌;ウィルス;ウィルス粒子;配偶子;無機イオン;有機イオン;金属;細胞の化学反応に影響を与える薬剤;細胞骨格に影響を与える薬剤;ポリマーに影響を与える薬剤;及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項200記載の方法。
【請求項209】
前記薬剤は前記第一あるいは前記第二成分の作動薬、拮抗薬、あるいは阻害剤である請求項200乃至208のいずれか一つに記載の方法。
【請求項210】
前記薬剤はシグナル伝達経路を調節する請求項200乃至208のいずれか一つに記載の方法。
【請求項211】
前記薬剤は代謝経路を調節する請求項200乃至208のいずれか一つに記載の方法。
【請求項212】
前記第一成分は細胞内受容体であり前記第二成分は前記細胞内受容体と結合するリガンドである請求項200乃至208のいずれか一つに記載の方法。
【請求項213】
前記第一および/または第二成分は前記暴露工程の前、その間および/またはその後に細胞内に導入される請求項200記載の方法。
【請求項214】
細胞内成分と結合する薬剤をスクリーニングする方法において、
細胞内成分を含有する細胞を候補接着剤と接触させ、
前記細胞を前記細胞に孔を形成する条件下で請求項1のチップ電極を使用した集束電場に暴露し、および
前記成分に対して前記薬剤の結合を検出する工程を構成する方法。
【請求項215】
前記薬剤および/または細胞内成分は標識化され且つ前記方法は前記薬剤と前記細胞内成分との複合体の形成を検出する工程を構成する請求項214記載の方法。
【請求項216】
前記方法は前記結合に関連した表現型を検出する工程を更に構成する請求項214記載の方法。
【請求項217】
前記方法は細胞内成分が薬剤と結合する際生成された反応物を検出する工程を更に構成する請求項214記載の方法。
【請求項218】
前記反応物はシグナル伝達分子のレベルを増加させる請求項217記載の方法。
【請求項219】
前記シグナル伝達分子はCa2+、cAMPおよびK+からなるグループから選択される請求項218記載の方法。
【請求項220】
前記細胞内成分は細胞内受容体、細胞膜分子の細胞質ドメインあるいは酵素からなる請求項214記載の方法。
【請求項221】
前記薬剤は、遺伝子;遺伝子アナログ;RNA;RNAアナログ;siRNA;アンチセンス・オリゴヌクレオチド;リボザイム;DNA;DNAアナログ;アプタマー;コロイド粒子;ナノ粒子;受容体;受容体リガンド;受容体アンタゴニスト;受容体アゴニスト;受容体遮断薬;酵素;酵素基質;酵素阻害剤;酵素モジュレータ;蛋白質;蛋白質アナログ;ポリペプチド;ポリペプチドアナログ;アミノ酸;アミノ酸アナログ;ペプチド;ペプチドアナログ;代謝産物;代謝産物アナログ,オリゴヌクレオチド;オリゴヌクレオチドアナログ;抗原;抗原アナログ;ハプテン;ハプテンアナログ;抗体;抗体アナログ;細胞小器官;細胞小器官アナログ;細胞核;細胞分画;細菌;ウィルス;ウィルス粒子;配偶子;無機イオン;有機イオン;金属;細胞の化学反応に影響を与える薬剤;細胞骨格に影響を与える薬剤;ポリマーに影響を与える薬剤;及びこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項214記載の方法。
【請求項222】
前記薬剤は電気泳動法あるいは電気浸透法を利用して前記細胞に送達される請求項214記載の方法。

【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【公表番号】特表2008−509709(P2008−509709A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538525(P2007−538525)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/IB2004/004477
【国際公開番号】WO2007/039783
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(503147354)セレクトリコン アーベー (1)
【Fターム(参考)】