穿孔具の刃
【課題】
非円形の透孔を穿設する場合に用いても穿孔刃とタイミングベルトとの分離を防止できるようにした穿孔具の刃を提供する。
【解決手段】
穿孔刃は、無端ベルト状に形成された刃本体と、回転機構に噛み合う無端ベルト状に形成されたタイミングベルトとを備え、
該刃本体は、該刃本体の一端側に形成された複数の刃体と、前記タイミングベルトと連結するため該刃本体の他端側に、その周方向に間隔を開けて設けられると共に該他端から前記タイミングベルトへ向けて突出して形成された複数の連結部を備え、
前記タイミングベルトには前記連結部が挿通される複数の挿通部を備えてなり、
前記挿通部に前記連結部が挿通されて刃本体とタイミングベルトとが連結されてなることを特徴とする。
非円形の透孔を穿設する場合に用いても穿孔刃とタイミングベルトとの分離を防止できるようにした穿孔具の刃を提供する。
【解決手段】
穿孔刃は、無端ベルト状に形成された刃本体と、回転機構に噛み合う無端ベルト状に形成されたタイミングベルトとを備え、
該刃本体は、該刃本体の一端側に形成された複数の刃体と、前記タイミングベルトと連結するため該刃本体の他端側に、その周方向に間隔を開けて設けられると共に該他端から前記タイミングベルトへ向けて突出して形成された複数の連結部を備え、
前記タイミングベルトには前記連結部が挿通される複数の挿通部を備えてなり、
前記挿通部に前記連結部が挿通されて刃本体とタイミングベルトとが連結されてなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材に非円形の透孔を穿孔する穿孔具の刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、壁材の壁面等に非円形の透孔を穿設するための穿孔具が知られている。当該穿孔具は、その前面を壁面に押し付けた状態で駆動源を駆動させ、切削刃を回転させることによって、当該切削刃で壁材に非円形の透孔を穿設する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−103119号公報
【0004】
特許文献1に記載の穿孔具の穿孔刃100は、図13に示すように、円筒状に形成された刃本体101と、該刃本体101の基端側に設けられたタイミングベルト102とから構成されている。該タイミングベルト102の凹凸歯にプーリのプーリ歯が噛合することによって、プーリの回転力が穿孔刃100に伝達されるようになっている。そして、該プーリが、駆動源としての電気ドリルに駆動されて作動することで穿孔刃100が回転し、該穿孔刃100で壁材に非円形状の透孔を穿設するものである。図13は穿孔刃100の一部を破断して示す穿孔刃100の側面図である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の穿孔具の穿孔刃100は、図13に示すように、円筒状の刃本体101の基端側とタイミングベルト102とが接着材103で接着されている。そして、前述のように、穿孔刃100を回転させて、壁材に非円形状の透孔を穿孔する場合には、図14に示すように、該穿孔刃100が、範囲Nおいては円弧状の形態になり、範囲Mにおいては平坦な形態になる。図14は図13に示す穿孔刃100を前面側から観た状態を示す。
【0006】
このため、穿孔刃100の回転中に穿孔刃100が円弧状の形態になったり、平坦な形態になったりと、その形態が頻繁に変化することになる。そして、特に、タイミングベルト102はゴム製であるために、前述のように、穿孔刃100の形態が変化することによって、以下のような問題があった。
【0007】
即ち、該穿孔刃100が穿孔中に、図14に示すように、範囲Mから範囲Nに移行する際において平坦状の形態から円弧状の形態に変化する場合、図15に示すように、タイミングベルト102の外側の層には穿孔刃100の周方向へ向けて引っ張り力F1が作用することで、該タイミングベルト102の外側の層が延びようとする一方、図14に示すように、範囲Nから範囲Mに移行する際において円弧状の形態から平坦状の形態に変化する場合、図16に示すように、タイミングベルト102の外側の層には該タイミングベルト102を縮ませるような押圧力F2が作用することで、該タイミングベルト102が縮まろうとする。
【0008】
以上のように、穿孔刃100の回転中に、タイミングベルト102には引っ張り力F1と押圧力F2とが交互に繰り返されるように作用するために、タイミングベルト102と接着材103とが剥離し易く、当該剥離が生じた場合には、刃本体101とタイミングベルト102とが分離することになって、穿孔具としての機能を果たさないという問題があった。
【0009】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、非円形の透孔を穿設する場合に用いても穿孔刃とタイミングベルトとの分離を防止できるようにした穿孔具の刃を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、無端ベルト状に形成された穿孔刃を回転機構により回転させて壁材に非円形の透孔を穿孔する穿孔具の刃であって、
前記穿孔刃は、無端ベルト状に形成された刃本体と、回転機構に噛み合う無端ベルト状に形成されたタイミングベルトとを備え、
該刃本体は、該刃本体の一端側に形成された複数の刃体と、前記タイミングベルトと連結するため該刃本体の他端側に、その周方向に間隔を開けて設けられると共に該他端から前記タイミングベルトへ向けて突出して形成された複数の連結部を備え、
前記タイミングベルトには前記連結部が挿通される複数の挿通部を備えてなり、
前記挿通部に前記連結部が挿通されて刃本体とタイミングベルトとが連結されてなることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記刃本体の他端と、タイミングベルトとの間には、切粉が排出される間隔が開けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、刃本体の周方向へ間隔を開けて設けられた複数の連結部とタイミングベルトの挿通部とが連結しているが、当該連結部及び挿通部は周方向へ所定間隔毎に部分的に設けられているものであって、当該連結部及び挿通部が設けられていない部位では、刃本体とタイミングベルトは連結されていないために互いに自在に変形することができる。このために、穿孔刃の回転中に、刃本体及びタイミングベルトが円弧状の形態と平坦な形態とを繰り返しても刃本体とタイミングベルトとを分離させる力は作用しない。又、穿孔刃の連結部がタイミングベルトの挿通部に挿入されることで刃本体とタイミングベルトとが連結されるために、回転駆動源からタイミングベルトに伝達された回転力がタイミングベルトから刃本体へ的確に伝達されることができる。
【0013】
つまり、請求項1に記載の発明によれば、刃本体とタイミングベルトとがしっかりと連結されて駆動源から伝達されたタイミングベルトの回転力が刃本体にしっかりと伝達される上に、刃本体とタイミングベルトは、互いに面で接着されていないために、互いに円弧状の形態になったり、平らな形態になったりと自在に変形することができて、当該変形の際において刃本体とタイミングベルトとが分離することがない。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、透孔を穿孔する際に生じた切粉は刃本体とタイミングベルトとの間の間隔から穿孔刃の外部へ排出されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、穿孔具の斜視図である。
【図2】図2は、穿孔具の縦断面図である。
【図3】図3は、穿孔刃の斜視図である。
【図4】図4は、穿孔刃の底面図である。
【図5】図5は、二つのプーリに架けた状態の穿孔刃をタイミングベルト側から観た状態を示す図である。
【図6】図6は、二つのプーリを互いに離間させた状態の図である。
【図7】図7は、二つのプーリを互いに接近させた状態の図である。
【図8】図8は、プーリの斜視図である。
【図9】図9は、図8のY―Y線矢示方向断面図である。
【図10】図10は、カバー体を取り付ける途中の状態を示す図である。
【図11】図11は、図10を矢示R方向から観た状態の図である。
【図12】図12は、図11の状態からカバー体の分割体を閉じた状態の図である。
【図13】図13は、背景技術の穿孔刃の一部を破断して示す側面図である。
【図14】図14は、穿孔時における背景技術の穿孔刃の形態を示す図である。
【図15】図15は、図13のC―C線矢示方向断面図であって、穿孔刃が半円弧状になった状態を示す。
【図16】図16は、図13のC―C線矢示方向断面図であって、穿孔刃が平坦状になった状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本実施形態の穿孔具1は壁材Hに非円形の透孔Tを穿設する穿孔具である。図2に示すように、該穿孔具1は、穿孔刃2を回転駆動する回転機構3を備え、該穿孔刃2が駆動源としての電気ドリルDの駆動力で回転駆動されることによって、穿孔刃2で壁材Hに非円形の透孔Tを穿設する構成になっている。ここで、非円形とは、図1に示すように、直線部4と半円弧部5とからなる、長円形の形状等が該当する。
【0017】
図3に示すように、前記穿孔刃2は、刃本体6と、該刃本体6の基端側に設けられたタイミングベルト7とから無端ベルト状に構成され、刃本体6とタイミングベルト7との間には間隔8が設けられている。該間隔8は、刃本体6の内側の切粉を穿孔刃本体の外側へ排出するためのものである。
【0018】
前記刃本体6は、図3に示すように、自然の状態では円筒形をし、一端側には周方向へ複数の刃体9が設けられ、他端側には、連結部10が設けられている。刃本体6は、例えば、ばね性を有するステンレスを素材として成形することができる。
【0019】
前記連結部10は刃本体6の他端側に取り付けられると共に、前記タイミングベルト7へ向けて突出するように設けられている。図3に示すように、該連結部10は、刃本体6の軸心Lに平行に設けられることができる。該連結部10は、刃本体6の周方向へ向けて間隔を開けて複数個設けられている。該連結部10は、例えば、板状や、棒状に形成され、その基端側は前記刃本体6の側面にリベットやスポット溶接等の手段で固定され、その先端側は前記タイミングベルト7側へ向けて突出している。
【0020】
前記タイミングベルト7は、図3,図4、図5に示すように、無端ベルト状に形成され、その内周面には後述するプーリ11のプーリ歯に噛合する凹凸歯12が設けられ、その端面13には、複数の挿通部14が設けられている。該挿通部14は前記刃本体6の軸心Lと平行に形成される。該挿通部14は、タイミングベルト7の幅方向へ向けて設けられると共に、該タイミングベルト7の周方向へ向けて所定間隔を開けて複数穿設されている。前記挿通部14には前記連結部10が挿通するものであって、該連結部10は挿通部14に挿通されて該挿通部14から抜け出ることがないために、前記刃本体6とタイミングベルト7とがしっかりと連結されるものである。尚、該挿通部14内に接着剤を入れた状態で該挿通部14内へ連結部10を挿通させることで、挿通部14と連結部10との連結を接着剤によって補強するようにしてもよい。図3は穿孔刃2の斜視図を示し、図4は穿孔刃2をタイミングベルト7側から観た状態を示し、図5は後述のように、穿孔刃2を二つのプーリ11に架けた状態であって、プーリ11を省略した状態を示す。同図5に示すように、穿孔刃2は範囲Xにおいて平坦な形態になり、範囲Zにおいて半円弧状の形態になる。
【0021】
次ぎに、前記回転機構3について説明する。図2に示すように、回転軸15は、穿孔具本体16の中央を前後方向へ貫通するように設けられている。回転軸15は、その軸心方向へ前後移動可能に設けられている。回転軸15が前方(矢示A方向)へ移動する状態を前進とし、後方(矢示B方向)へ移動する状態を後退というものとする。
【0022】
前記穿孔具本体16は、先端側にカバー体取付部17が設けられてカバー体18が着脱自在に取り付けられる。又、穿孔具本体16の内部にはバネ室19が設けられ、該バネ室19を前後方向へ貫通するように軸貫通孔20が設けられている。該軸貫通孔20には軸受21が設けられ、該軸受21が前記回転軸15を回転自在であって且つ軸心方向の前後へ移動可能に支持している。又、前記回転軸15の前後方向への移動量を調節するための機構(図示せず)が別途設けられている。
【0023】
前記バネ室19内には、コイル状の圧縮バネ22が設けられている。バネ室19の一側はバネ座23となり、又、前記回転軸15にはバネ受けが設けられている。圧縮バネ22は、バネ座23とバネ受けとの間に設けられて、回転軸155を常時後退方向へ向けて付勢している。
【0024】
前記回転軸15の先端側には、駆動ギヤ24が取り付けられている。該駆動ギヤ24の軸方向横側に隣接して伝導ギヤ25が設けられ、又、該駆動ギヤ24の軸方向横側には可動部26が設けられている。駆動ギヤ24と伝導ギヤ25とが噛合している。
【0025】
前記伝導ギヤ25の前面に対面するように前記プーリ11が設けられ、又、前記可動部26の前面に対面するように前記プーリ11が設けられている。
【0026】
前記伝導ギヤ25の中央を貫通するようにしてチャック部27の基端側が該伝導ギヤ25に固定され、又、該チャック部27の先端側は前記プーリ11の中央を貫通するように固定されている。そして、該チャック部27の先端側にはドリル28の基端が固定されている。
【0027】
前記可動部26の中央を貫通するようにしてチャック部29の基端側が該可動部26に固定され、該チャック部29の先端側が前記プーリ11の中央を貫通するようにして該プーリ11に固定されている。そして、該チャック部29の先端側にはドリル30の基端が固定されている。前記ドリル28、30は、穿孔に先だって壁材に削り込むことで、穿孔具1の位置決めをするものである。
【0028】
前記可動部26はネジ31で締め付けたり、緩めたりすることで、前記回転軸15に対して横方向から近づいたり、離れたりするように移動可能に構成されている。図6は可動部26が回転軸15から離れた状態を示す。図6及び図7は、図2中、E−E線断面図を示すものであって、図7は、図2に示す可動部26が回転軸15に近づいた状態を示す。
【0029】
ここで、図7に示すように、可動部26が回転軸15に近づいた状態は、プーリ11、11に穿孔刃2が脱着可能なように両プーリ11、11と穿孔刃2との間に間隔Pが設けられ、又、図6に示すように、可動部26が回転軸15から離れた状態は、プーリ11,11に穿孔刃2が取り付けられた後の状態であって、穿孔具1の作動可能状態を示す。
【0030】
図2に示すように、前記駆動ギヤ24、伝導ギヤ25、可動部26は、ギヤ収容部内に収容されている。
【0031】
図8、図9に示すように、前記プーリ11,11は、合成樹脂で成型されると共に複数のプーリ歯31が外周に設けられて前記タイミングベルト7の凹凸歯12が噛合するようになっている。図8はプーリ11の斜視図、図9は図8のY―Y線矢示方向断面図である。
【0032】
前記プーリ11の軸方向の前側には合成樹脂製のフランジ32が設けられ、後側には金属製のフランジ33が設けられている。ここで、前側とは、図2に示すように、穿孔刃2の設けられている側である。前側のフランジ32及び後側のフランジ33は、前記プーリ11,11から前記タイミングベルト7がずれて外れる現象を防止するものである。又、後側のフランジ33は、後述のように、前記穿孔刃2のタイミングベルト7を前方へ向けて押した際にタイミングベルト7の反力に抗して撓まないように金属製に形成され、ネジ等によってプーリ6に取り付けられている。
【0033】
図8、図9に示すように、隣り合うプーリ歯31同士の間は、タイミングベルト7の凹凸歯12が噛合する噛合部34になっている。
【0034】
そして、図9に示すように、本実施形態のプーリ11には、前記噛合部34に連通して切粉排出溝35が該プーリ11,11の中心方向へ向けて穿設されている。又、図9に示すように、該切粉排出溝35は、後側(フランジ33側)が閉塞している。該切粉排出溝35は、プーリ11の後側よりも前側(穿孔刃2側)がプーリ11の中心方向へ向けて深く形成されることによって、該切粉排出溝35の溝底35Aがプーリ11の後側から前側へ向けて傾斜すると共に、プーリ11の前面には該切粉排出溝35に連通する切粉排出孔36が設けられて、プーリ歯31同士の間に入り込んだ切粉Kを、切粉排出溝35及び切粉排出孔36を経てプーリ11の外部へ排出できる通路が形成されている。該切粉排出孔36は、略長方形状、正方形状のような様々な形状に形成されることができる。
【0035】
又、図2に示すように、前記穿孔具本体16のカバー体取付部17には二本の支持棒37が立設され、該支持棒37,37の先端には位置合わせ保持部38が固定されている。
【0036】
図2に示すように、前記位置合わせ保持部38には、位置合わせ部39が前後方向へ移動可能に設けられている。該位置合わせ部39は圧縮バネ40によって常時前方へ突出するように付勢されている。又、該位置合わせ保持部38からは前記ドリル28,30が突出するようになっている。該位置合わせ部39は穿孔作業に先立って、穿孔具1の位置合わせをするものである。
【0037】
又、図2に示すように、前記穿孔具本体16のカバー体取付部17には前記カバー体18が取り付けられている。該カバー体18は、前記回転機構3、及び穿孔刃2の横側外周を囲むように設けられている。図10、図11に示すように、該カバー体18は、基端側のカバー本体41と、該カバー本体41の先端側に設けられた分割体42,42とから構成されている。該分割体42,42は、カバー体18の先端側を回転軸15に対して横方向へ開くように分割されて形成されている。図11は図10を矢示R方向から観た状態を示す。又、図2に示すように、前記カバー本体18には切粉受けWが設けられて、切粉Kを集めることができるようになっている。
【0038】
図10、図11に示すように、前記カバー本体41には、前記カバー体取付部17に設けられた引掛部43に引っ掛けられる引掛受部44が設けられている。
【0039】
尚、図中、45水準器で、穿孔具1の姿勢を適正な姿勢に調節する際に用いられる。
【0040】
次ぎに、穿孔刃2をプーリ11に取り付ける場合について説明する。先ず、図2の状態において、可動部26を回転軸15に接近させることによって、図7に示すように、二つのプーリ11,11を互いに接近させる。
【0041】
この状態において、穿孔刃2のタイミングベルト7を二つのプーリ11,11に架けた後に、図2に示すように、可動部26を回転軸15から離間させることによって、タイミングベルト7の凹凸歯12をプーリ11のプーリ歯31に噛合させると共に穿孔刃2を緊張させる。
【0042】
この状態において、図11に示すように、タイミングベルト7がプーリ11,11に噛合していない範囲Xにおいては、刃本体6は横方向へ膨らむ形態をしている。
【0043】
次ぎに、図12に示すように、二つの分割体42,42を互いに接近させることによって、刃本体6の横方向へ膨らんだ部分は二つの分割体42,42で両側から押さえられるようにして同図12に示すように平坦な形態に矯正される。
【0044】
次ぎに、作用について説明する。図1に示す状態において、電気ドリルDを駆動すると回転軸15が回転し、該回転軸15の回転力は図2に示す駆動ギヤ24、伝導ギヤ25、及びプーリ11、11を経て穿孔刃2に伝達される。そして、該穿孔刃2を壁材Hに押し当てることで、図1に示すように、壁材Hに非円形の透孔Tを穿設することができる。
【0045】
図5は、穿孔刃2で非円形の透孔を穿設している状態において、該穿孔刃2をタイミングベルト7側から観た状態を示す。同図5に示すように、穿孔刃2は、範囲Xにおいて平坦な形態になり、範囲Zにおいて半円弧状の形態になる。そして、刃本体6の連結部10が、タイミングベルト7の挿通部14に挿通することで、穿孔刃2の刃本体6とタイミングベルト7とが部分的に連結されるものであって、背景技術のように、穿孔刃2の刃本体6とタイミングベルト7とが面で接着する構成ではないために、当該連結部10及び挿通部14が設けられていない部位では、刃本体6とタイミングベルト7は連結されていないために互いに自在に変形することができる。このために、穿孔刃2の回転中に、刃本体6及びタイミングベルト7が円弧状の形態と平坦な形態とを繰り返しても刃本体6とタイミングベルト7とを分離させる力は作用しない。その結果、図5に示すように、穿孔刃2が、平坦な形態と、半円弧状の形態とに変異しても穿孔刃2の刃本体6とタイミングベルト7とが分離することなく、プーリ11から伝達された回転力はタイミングベルト7から刃本体6へしっかりと伝達されることができる。又、タイミングベルト7の挿通部14は、プーリ11の回転方向とは直交する方向へ設けられているために、穿孔作業の途中において、刃本体6の連結部10は該挿通部14から抜けることなく、プーリ11の回転力は穿孔刃2にしっかりと伝達されることができる。
【0046】
又、穿孔作業の途中において、切粉Kが穿孔刃2の内側に入り込む場合がある。当該穿孔刃2内に入り込んだ切粉Kは、図3に示す該穿孔刃2の間隔8から穿孔刃2の外部へ排出されて、図2に示す切粉受けWに集められる。一方、穿孔刃2の間隔8から穿孔刃2の外部へ排出されずに該穿孔刃2内に滞留している切粉Kは、図9に示すように、プーリ11の噛合部34に入り込む場合がある。当該噛合部34に入り込んだ切粉Kは、切粉排出溝35を通って切粉排出溝35の溝底35Aに達する。該溝底35Aは、切粉排出孔36側へ向けて傾斜しているために、切粉Kは、当該溝底35Aと、タイミングベルト7の凹凸歯12の先端とで押されるようにして、切粉排出孔36から外部へ容易に排出されて、穿孔刃2の内側に落下する。そして、穿孔刃2の内側に落下した切粉Kは、穿孔刃2とタイミングベルト7の間の間隔8からカバー体18内へ落下した後、切粉受けWに収集される。このために、プーリ歯31と、タイミングベルト7の凹凸歯12との間に切粉Kが挟まって詰まる現象が回避されることができ、プーリ11からタイミングベルト7が外れる事態を防止することができて、穿孔作業を長期間、安定して行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 穿孔具
2 穿孔刃
3 回転機構
6 刃本体
8 間隔
7 タイミングベルト
10 連結部
11 プーリ
14 挿通部
15 回転軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材に非円形の透孔を穿孔する穿孔具の刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、壁材の壁面等に非円形の透孔を穿設するための穿孔具が知られている。当該穿孔具は、その前面を壁面に押し付けた状態で駆動源を駆動させ、切削刃を回転させることによって、当該切削刃で壁材に非円形の透孔を穿設する構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−103119号公報
【0004】
特許文献1に記載の穿孔具の穿孔刃100は、図13に示すように、円筒状に形成された刃本体101と、該刃本体101の基端側に設けられたタイミングベルト102とから構成されている。該タイミングベルト102の凹凸歯にプーリのプーリ歯が噛合することによって、プーリの回転力が穿孔刃100に伝達されるようになっている。そして、該プーリが、駆動源としての電気ドリルに駆動されて作動することで穿孔刃100が回転し、該穿孔刃100で壁材に非円形状の透孔を穿設するものである。図13は穿孔刃100の一部を破断して示す穿孔刃100の側面図である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の穿孔具の穿孔刃100は、図13に示すように、円筒状の刃本体101の基端側とタイミングベルト102とが接着材103で接着されている。そして、前述のように、穿孔刃100を回転させて、壁材に非円形状の透孔を穿孔する場合には、図14に示すように、該穿孔刃100が、範囲Nおいては円弧状の形態になり、範囲Mにおいては平坦な形態になる。図14は図13に示す穿孔刃100を前面側から観た状態を示す。
【0006】
このため、穿孔刃100の回転中に穿孔刃100が円弧状の形態になったり、平坦な形態になったりと、その形態が頻繁に変化することになる。そして、特に、タイミングベルト102はゴム製であるために、前述のように、穿孔刃100の形態が変化することによって、以下のような問題があった。
【0007】
即ち、該穿孔刃100が穿孔中に、図14に示すように、範囲Mから範囲Nに移行する際において平坦状の形態から円弧状の形態に変化する場合、図15に示すように、タイミングベルト102の外側の層には穿孔刃100の周方向へ向けて引っ張り力F1が作用することで、該タイミングベルト102の外側の層が延びようとする一方、図14に示すように、範囲Nから範囲Mに移行する際において円弧状の形態から平坦状の形態に変化する場合、図16に示すように、タイミングベルト102の外側の層には該タイミングベルト102を縮ませるような押圧力F2が作用することで、該タイミングベルト102が縮まろうとする。
【0008】
以上のように、穿孔刃100の回転中に、タイミングベルト102には引っ張り力F1と押圧力F2とが交互に繰り返されるように作用するために、タイミングベルト102と接着材103とが剥離し易く、当該剥離が生じた場合には、刃本体101とタイミングベルト102とが分離することになって、穿孔具としての機能を果たさないという問題があった。
【0009】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、非円形の透孔を穿設する場合に用いても穿孔刃とタイミングベルトとの分離を防止できるようにした穿孔具の刃を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、無端ベルト状に形成された穿孔刃を回転機構により回転させて壁材に非円形の透孔を穿孔する穿孔具の刃であって、
前記穿孔刃は、無端ベルト状に形成された刃本体と、回転機構に噛み合う無端ベルト状に形成されたタイミングベルトとを備え、
該刃本体は、該刃本体の一端側に形成された複数の刃体と、前記タイミングベルトと連結するため該刃本体の他端側に、その周方向に間隔を開けて設けられると共に該他端から前記タイミングベルトへ向けて突出して形成された複数の連結部を備え、
前記タイミングベルトには前記連結部が挿通される複数の挿通部を備えてなり、
前記挿通部に前記連結部が挿通されて刃本体とタイミングベルトとが連結されてなることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記刃本体の他端と、タイミングベルトとの間には、切粉が排出される間隔が開けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、刃本体の周方向へ間隔を開けて設けられた複数の連結部とタイミングベルトの挿通部とが連結しているが、当該連結部及び挿通部は周方向へ所定間隔毎に部分的に設けられているものであって、当該連結部及び挿通部が設けられていない部位では、刃本体とタイミングベルトは連結されていないために互いに自在に変形することができる。このために、穿孔刃の回転中に、刃本体及びタイミングベルトが円弧状の形態と平坦な形態とを繰り返しても刃本体とタイミングベルトとを分離させる力は作用しない。又、穿孔刃の連結部がタイミングベルトの挿通部に挿入されることで刃本体とタイミングベルトとが連結されるために、回転駆動源からタイミングベルトに伝達された回転力がタイミングベルトから刃本体へ的確に伝達されることができる。
【0013】
つまり、請求項1に記載の発明によれば、刃本体とタイミングベルトとがしっかりと連結されて駆動源から伝達されたタイミングベルトの回転力が刃本体にしっかりと伝達される上に、刃本体とタイミングベルトは、互いに面で接着されていないために、互いに円弧状の形態になったり、平らな形態になったりと自在に変形することができて、当該変形の際において刃本体とタイミングベルトとが分離することがない。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、透孔を穿孔する際に生じた切粉は刃本体とタイミングベルトとの間の間隔から穿孔刃の外部へ排出されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、穿孔具の斜視図である。
【図2】図2は、穿孔具の縦断面図である。
【図3】図3は、穿孔刃の斜視図である。
【図4】図4は、穿孔刃の底面図である。
【図5】図5は、二つのプーリに架けた状態の穿孔刃をタイミングベルト側から観た状態を示す図である。
【図6】図6は、二つのプーリを互いに離間させた状態の図である。
【図7】図7は、二つのプーリを互いに接近させた状態の図である。
【図8】図8は、プーリの斜視図である。
【図9】図9は、図8のY―Y線矢示方向断面図である。
【図10】図10は、カバー体を取り付ける途中の状態を示す図である。
【図11】図11は、図10を矢示R方向から観た状態の図である。
【図12】図12は、図11の状態からカバー体の分割体を閉じた状態の図である。
【図13】図13は、背景技術の穿孔刃の一部を破断して示す側面図である。
【図14】図14は、穿孔時における背景技術の穿孔刃の形態を示す図である。
【図15】図15は、図13のC―C線矢示方向断面図であって、穿孔刃が半円弧状になった状態を示す。
【図16】図16は、図13のC―C線矢示方向断面図であって、穿孔刃が平坦状になった状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本実施形態の穿孔具1は壁材Hに非円形の透孔Tを穿設する穿孔具である。図2に示すように、該穿孔具1は、穿孔刃2を回転駆動する回転機構3を備え、該穿孔刃2が駆動源としての電気ドリルDの駆動力で回転駆動されることによって、穿孔刃2で壁材Hに非円形の透孔Tを穿設する構成になっている。ここで、非円形とは、図1に示すように、直線部4と半円弧部5とからなる、長円形の形状等が該当する。
【0017】
図3に示すように、前記穿孔刃2は、刃本体6と、該刃本体6の基端側に設けられたタイミングベルト7とから無端ベルト状に構成され、刃本体6とタイミングベルト7との間には間隔8が設けられている。該間隔8は、刃本体6の内側の切粉を穿孔刃本体の外側へ排出するためのものである。
【0018】
前記刃本体6は、図3に示すように、自然の状態では円筒形をし、一端側には周方向へ複数の刃体9が設けられ、他端側には、連結部10が設けられている。刃本体6は、例えば、ばね性を有するステンレスを素材として成形することができる。
【0019】
前記連結部10は刃本体6の他端側に取り付けられると共に、前記タイミングベルト7へ向けて突出するように設けられている。図3に示すように、該連結部10は、刃本体6の軸心Lに平行に設けられることができる。該連結部10は、刃本体6の周方向へ向けて間隔を開けて複数個設けられている。該連結部10は、例えば、板状や、棒状に形成され、その基端側は前記刃本体6の側面にリベットやスポット溶接等の手段で固定され、その先端側は前記タイミングベルト7側へ向けて突出している。
【0020】
前記タイミングベルト7は、図3,図4、図5に示すように、無端ベルト状に形成され、その内周面には後述するプーリ11のプーリ歯に噛合する凹凸歯12が設けられ、その端面13には、複数の挿通部14が設けられている。該挿通部14は前記刃本体6の軸心Lと平行に形成される。該挿通部14は、タイミングベルト7の幅方向へ向けて設けられると共に、該タイミングベルト7の周方向へ向けて所定間隔を開けて複数穿設されている。前記挿通部14には前記連結部10が挿通するものであって、該連結部10は挿通部14に挿通されて該挿通部14から抜け出ることがないために、前記刃本体6とタイミングベルト7とがしっかりと連結されるものである。尚、該挿通部14内に接着剤を入れた状態で該挿通部14内へ連結部10を挿通させることで、挿通部14と連結部10との連結を接着剤によって補強するようにしてもよい。図3は穿孔刃2の斜視図を示し、図4は穿孔刃2をタイミングベルト7側から観た状態を示し、図5は後述のように、穿孔刃2を二つのプーリ11に架けた状態であって、プーリ11を省略した状態を示す。同図5に示すように、穿孔刃2は範囲Xにおいて平坦な形態になり、範囲Zにおいて半円弧状の形態になる。
【0021】
次ぎに、前記回転機構3について説明する。図2に示すように、回転軸15は、穿孔具本体16の中央を前後方向へ貫通するように設けられている。回転軸15は、その軸心方向へ前後移動可能に設けられている。回転軸15が前方(矢示A方向)へ移動する状態を前進とし、後方(矢示B方向)へ移動する状態を後退というものとする。
【0022】
前記穿孔具本体16は、先端側にカバー体取付部17が設けられてカバー体18が着脱自在に取り付けられる。又、穿孔具本体16の内部にはバネ室19が設けられ、該バネ室19を前後方向へ貫通するように軸貫通孔20が設けられている。該軸貫通孔20には軸受21が設けられ、該軸受21が前記回転軸15を回転自在であって且つ軸心方向の前後へ移動可能に支持している。又、前記回転軸15の前後方向への移動量を調節するための機構(図示せず)が別途設けられている。
【0023】
前記バネ室19内には、コイル状の圧縮バネ22が設けられている。バネ室19の一側はバネ座23となり、又、前記回転軸15にはバネ受けが設けられている。圧縮バネ22は、バネ座23とバネ受けとの間に設けられて、回転軸155を常時後退方向へ向けて付勢している。
【0024】
前記回転軸15の先端側には、駆動ギヤ24が取り付けられている。該駆動ギヤ24の軸方向横側に隣接して伝導ギヤ25が設けられ、又、該駆動ギヤ24の軸方向横側には可動部26が設けられている。駆動ギヤ24と伝導ギヤ25とが噛合している。
【0025】
前記伝導ギヤ25の前面に対面するように前記プーリ11が設けられ、又、前記可動部26の前面に対面するように前記プーリ11が設けられている。
【0026】
前記伝導ギヤ25の中央を貫通するようにしてチャック部27の基端側が該伝導ギヤ25に固定され、又、該チャック部27の先端側は前記プーリ11の中央を貫通するように固定されている。そして、該チャック部27の先端側にはドリル28の基端が固定されている。
【0027】
前記可動部26の中央を貫通するようにしてチャック部29の基端側が該可動部26に固定され、該チャック部29の先端側が前記プーリ11の中央を貫通するようにして該プーリ11に固定されている。そして、該チャック部29の先端側にはドリル30の基端が固定されている。前記ドリル28、30は、穿孔に先だって壁材に削り込むことで、穿孔具1の位置決めをするものである。
【0028】
前記可動部26はネジ31で締め付けたり、緩めたりすることで、前記回転軸15に対して横方向から近づいたり、離れたりするように移動可能に構成されている。図6は可動部26が回転軸15から離れた状態を示す。図6及び図7は、図2中、E−E線断面図を示すものであって、図7は、図2に示す可動部26が回転軸15に近づいた状態を示す。
【0029】
ここで、図7に示すように、可動部26が回転軸15に近づいた状態は、プーリ11、11に穿孔刃2が脱着可能なように両プーリ11、11と穿孔刃2との間に間隔Pが設けられ、又、図6に示すように、可動部26が回転軸15から離れた状態は、プーリ11,11に穿孔刃2が取り付けられた後の状態であって、穿孔具1の作動可能状態を示す。
【0030】
図2に示すように、前記駆動ギヤ24、伝導ギヤ25、可動部26は、ギヤ収容部内に収容されている。
【0031】
図8、図9に示すように、前記プーリ11,11は、合成樹脂で成型されると共に複数のプーリ歯31が外周に設けられて前記タイミングベルト7の凹凸歯12が噛合するようになっている。図8はプーリ11の斜視図、図9は図8のY―Y線矢示方向断面図である。
【0032】
前記プーリ11の軸方向の前側には合成樹脂製のフランジ32が設けられ、後側には金属製のフランジ33が設けられている。ここで、前側とは、図2に示すように、穿孔刃2の設けられている側である。前側のフランジ32及び後側のフランジ33は、前記プーリ11,11から前記タイミングベルト7がずれて外れる現象を防止するものである。又、後側のフランジ33は、後述のように、前記穿孔刃2のタイミングベルト7を前方へ向けて押した際にタイミングベルト7の反力に抗して撓まないように金属製に形成され、ネジ等によってプーリ6に取り付けられている。
【0033】
図8、図9に示すように、隣り合うプーリ歯31同士の間は、タイミングベルト7の凹凸歯12が噛合する噛合部34になっている。
【0034】
そして、図9に示すように、本実施形態のプーリ11には、前記噛合部34に連通して切粉排出溝35が該プーリ11,11の中心方向へ向けて穿設されている。又、図9に示すように、該切粉排出溝35は、後側(フランジ33側)が閉塞している。該切粉排出溝35は、プーリ11の後側よりも前側(穿孔刃2側)がプーリ11の中心方向へ向けて深く形成されることによって、該切粉排出溝35の溝底35Aがプーリ11の後側から前側へ向けて傾斜すると共に、プーリ11の前面には該切粉排出溝35に連通する切粉排出孔36が設けられて、プーリ歯31同士の間に入り込んだ切粉Kを、切粉排出溝35及び切粉排出孔36を経てプーリ11の外部へ排出できる通路が形成されている。該切粉排出孔36は、略長方形状、正方形状のような様々な形状に形成されることができる。
【0035】
又、図2に示すように、前記穿孔具本体16のカバー体取付部17には二本の支持棒37が立設され、該支持棒37,37の先端には位置合わせ保持部38が固定されている。
【0036】
図2に示すように、前記位置合わせ保持部38には、位置合わせ部39が前後方向へ移動可能に設けられている。該位置合わせ部39は圧縮バネ40によって常時前方へ突出するように付勢されている。又、該位置合わせ保持部38からは前記ドリル28,30が突出するようになっている。該位置合わせ部39は穿孔作業に先立って、穿孔具1の位置合わせをするものである。
【0037】
又、図2に示すように、前記穿孔具本体16のカバー体取付部17には前記カバー体18が取り付けられている。該カバー体18は、前記回転機構3、及び穿孔刃2の横側外周を囲むように設けられている。図10、図11に示すように、該カバー体18は、基端側のカバー本体41と、該カバー本体41の先端側に設けられた分割体42,42とから構成されている。該分割体42,42は、カバー体18の先端側を回転軸15に対して横方向へ開くように分割されて形成されている。図11は図10を矢示R方向から観た状態を示す。又、図2に示すように、前記カバー本体18には切粉受けWが設けられて、切粉Kを集めることができるようになっている。
【0038】
図10、図11に示すように、前記カバー本体41には、前記カバー体取付部17に設けられた引掛部43に引っ掛けられる引掛受部44が設けられている。
【0039】
尚、図中、45水準器で、穿孔具1の姿勢を適正な姿勢に調節する際に用いられる。
【0040】
次ぎに、穿孔刃2をプーリ11に取り付ける場合について説明する。先ず、図2の状態において、可動部26を回転軸15に接近させることによって、図7に示すように、二つのプーリ11,11を互いに接近させる。
【0041】
この状態において、穿孔刃2のタイミングベルト7を二つのプーリ11,11に架けた後に、図2に示すように、可動部26を回転軸15から離間させることによって、タイミングベルト7の凹凸歯12をプーリ11のプーリ歯31に噛合させると共に穿孔刃2を緊張させる。
【0042】
この状態において、図11に示すように、タイミングベルト7がプーリ11,11に噛合していない範囲Xにおいては、刃本体6は横方向へ膨らむ形態をしている。
【0043】
次ぎに、図12に示すように、二つの分割体42,42を互いに接近させることによって、刃本体6の横方向へ膨らんだ部分は二つの分割体42,42で両側から押さえられるようにして同図12に示すように平坦な形態に矯正される。
【0044】
次ぎに、作用について説明する。図1に示す状態において、電気ドリルDを駆動すると回転軸15が回転し、該回転軸15の回転力は図2に示す駆動ギヤ24、伝導ギヤ25、及びプーリ11、11を経て穿孔刃2に伝達される。そして、該穿孔刃2を壁材Hに押し当てることで、図1に示すように、壁材Hに非円形の透孔Tを穿設することができる。
【0045】
図5は、穿孔刃2で非円形の透孔を穿設している状態において、該穿孔刃2をタイミングベルト7側から観た状態を示す。同図5に示すように、穿孔刃2は、範囲Xにおいて平坦な形態になり、範囲Zにおいて半円弧状の形態になる。そして、刃本体6の連結部10が、タイミングベルト7の挿通部14に挿通することで、穿孔刃2の刃本体6とタイミングベルト7とが部分的に連結されるものであって、背景技術のように、穿孔刃2の刃本体6とタイミングベルト7とが面で接着する構成ではないために、当該連結部10及び挿通部14が設けられていない部位では、刃本体6とタイミングベルト7は連結されていないために互いに自在に変形することができる。このために、穿孔刃2の回転中に、刃本体6及びタイミングベルト7が円弧状の形態と平坦な形態とを繰り返しても刃本体6とタイミングベルト7とを分離させる力は作用しない。その結果、図5に示すように、穿孔刃2が、平坦な形態と、半円弧状の形態とに変異しても穿孔刃2の刃本体6とタイミングベルト7とが分離することなく、プーリ11から伝達された回転力はタイミングベルト7から刃本体6へしっかりと伝達されることができる。又、タイミングベルト7の挿通部14は、プーリ11の回転方向とは直交する方向へ設けられているために、穿孔作業の途中において、刃本体6の連結部10は該挿通部14から抜けることなく、プーリ11の回転力は穿孔刃2にしっかりと伝達されることができる。
【0046】
又、穿孔作業の途中において、切粉Kが穿孔刃2の内側に入り込む場合がある。当該穿孔刃2内に入り込んだ切粉Kは、図3に示す該穿孔刃2の間隔8から穿孔刃2の外部へ排出されて、図2に示す切粉受けWに集められる。一方、穿孔刃2の間隔8から穿孔刃2の外部へ排出されずに該穿孔刃2内に滞留している切粉Kは、図9に示すように、プーリ11の噛合部34に入り込む場合がある。当該噛合部34に入り込んだ切粉Kは、切粉排出溝35を通って切粉排出溝35の溝底35Aに達する。該溝底35Aは、切粉排出孔36側へ向けて傾斜しているために、切粉Kは、当該溝底35Aと、タイミングベルト7の凹凸歯12の先端とで押されるようにして、切粉排出孔36から外部へ容易に排出されて、穿孔刃2の内側に落下する。そして、穿孔刃2の内側に落下した切粉Kは、穿孔刃2とタイミングベルト7の間の間隔8からカバー体18内へ落下した後、切粉受けWに収集される。このために、プーリ歯31と、タイミングベルト7の凹凸歯12との間に切粉Kが挟まって詰まる現象が回避されることができ、プーリ11からタイミングベルト7が外れる事態を防止することができて、穿孔作業を長期間、安定して行うことができる。
【符号の説明】
【0047】
1 穿孔具
2 穿孔刃
3 回転機構
6 刃本体
8 間隔
7 タイミングベルト
10 連結部
11 プーリ
14 挿通部
15 回転軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルト状に形成された穿孔刃を回転機構により回転させて壁材に非円形の透孔を穿孔する穿孔具の刃であって、
前記穿孔刃は、無端ベルト状に形成された刃本体と、回転機構に噛み合う無端ベルト状に形成されたタイミングベルトとを備え、
該刃本体は、該刃本体の一端側に形成された複数の刃体と、前記タイミングベルトと連結するため該刃本体の他端側に、その周方向に間隔を開けて設けられると共に該他端から前記タイミングベルトへ向けて突出して形成された複数の連結部を備え、
前記タイミングベルトには前記連結部が挿通される複数の挿通部を備えてなり、
前記挿通部に前記連結部が挿通されて刃本体とタイミングベルトとが連結されてなる穿孔具の刃。
【請求項2】
前記刃本体の他端と、タイミングベルトとの間には、切粉が排出される間隔が開けられていることを特徴とする請求項1に記載の穿孔具の刃。
【請求項1】
無端ベルト状に形成された穿孔刃を回転機構により回転させて壁材に非円形の透孔を穿孔する穿孔具の刃であって、
前記穿孔刃は、無端ベルト状に形成された刃本体と、回転機構に噛み合う無端ベルト状に形成されたタイミングベルトとを備え、
該刃本体は、該刃本体の一端側に形成された複数の刃体と、前記タイミングベルトと連結するため該刃本体の他端側に、その周方向に間隔を開けて設けられると共に該他端から前記タイミングベルトへ向けて突出して形成された複数の連結部を備え、
前記タイミングベルトには前記連結部が挿通される複数の挿通部を備えてなり、
前記挿通部に前記連結部が挿通されて刃本体とタイミングベルトとが連結されてなる穿孔具の刃。
【請求項2】
前記刃本体の他端と、タイミングベルトとの間には、切粉が排出される間隔が開けられていることを特徴とする請求項1に記載の穿孔具の刃。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−269386(P2010−269386A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121972(P2009−121972)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
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