説明

穿孔機における粉塵防止システム

【課題】他の作動源を不要にでき、かつ最小の水量で粉塵防止が図れるとともに、小型軽量化により機動性に富み、更にオペレーターの作業負担の軽減を図った穿孔機における粉塵防止システムを提供する。
【解決手段】コンプレッサー2から穿孔機1への圧縮空気の給気ライン7に分岐部3を設けるとともに、その下流側に給気ライン7に供給された水を管内で霧にする霧化器4を設け、空圧式往復動ポンプを備え、タンク6内の水を圧送可能とした粉塵防止装置5を設備し、前記空圧式往復動ポンプの給気口21と前記分岐部3とを接続するとともに、前記空圧式往復動ポンプの吐出口と前記霧化器4の水供給口とを接続し、前記空圧式往復動ポンプは前記コンプレッサー2からの圧縮空気のみを作動源として駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔機によるドリリング時に発生する粉塵を防止するための粉塵防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、斜面安定工事や法面保護工事等においては、自然地山や切土斜面を補強するために、斜面から地山に向けて穿孔機により削孔を行い、この削孔内にロックボルトや鉄筋などの棒鋼部材を挿入し、周囲にグラウト材を充填することによって地山との一体化を図り、土圧の軽減、斜面の安定、支持力を向上させる地山補強土工法や、コンクリート製重圧板または法枠等の構造体を斜面にアンカーによって固定する斜面安定工法や、さらにはクリンプ金網を法面に沿って組み立てるか、あるいは工場生産で予め組み立てたユニットを現場に搬入し、法面上に設置して型枠を構築した後、前記クリンプ金網型枠を埋め殺しとしながら型枠内にモルタル類を吹付けることにより法枠を構築し、この法枠をロックボルトまたはグランドアンカーによって地山に固定するアンカー併用法枠工法などが盛んに行われている。
【0003】
前記穿孔機では、孔壁を自立させるために、水を使用せず、圧縮空気を使用してくり粉を排出したり、岩盤に穿孔するダウンザホールハンマーを用いる等のためにコンプレッサーを設備し、圧縮空気をドリルロッドに送り込みながら穿孔することがある。しかし、この場合は、圧縮空気の排出により粉塵が舞い、作業環境を著しく悪化させるなどの問題が発生していた。
【0004】
そこで、前記圧縮空気に水を噴霧状態で混入させてドリルロッドに送り込み、粉塵を噴霧水によって吸着することにより粉塵の発生を抑える粉塵防止方法が採用されることがある。
【0005】
例えば、下記特許文献1では、作業機に吊下支持されたオーガーと、下端に設けた削孔ヘッドにピストンハンマーによって打撃力を与えるようにしたダウンザホールハンマーを備えるとともに、コンプレッサー装置から供給される圧縮空気と流体供給装置から供給される流体を合流させて供給ホースにより上記ダウンザホールハンマー側へ供給し、上記ハンマーヘッドにより穿孔掘削を行なう掘削装置であって、上記コンプレッサー装置からの圧縮空気と上記流体供給装置からの噴霧水を合流させる合流部に、上記圧縮空気の供給管路を開閉する第1電動開閉弁と上記噴霧水の供給管路を開閉する第2電動開閉弁が備えられるとともに、上記第1電動開閉弁と第2電動開閉弁が共に遠隔操作される構成である掘削装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−231806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のような粉塵防止装置の場合は、水を圧縮空気ラインに供給するために、流体供給装置を配置する必要があるが、この流体供給装置を作動させるための作動源を別途用意する必要があった。また、上記先行技術では、圧縮空気の供給管路を開閉する第1電動開閉弁と上記噴霧水の供給管路を開閉する第2電動開閉弁が備えられ、上記第1電動開閉弁と第2電動開閉弁とが共に遠隔操作されることで、従来よりもオペレーターの作業が省力化されるようになるが、オペレーターが前記流体供給装置の作動制御、前記第1電動開閉弁と第2電動開閉弁との作動制御を行う点に変わりはなく、更にオペレーターの作業省力化と共に、構成機器を最小、最軽量にして地すべり防止工事などのように斜面でかつ足場の悪いところであっても容易に持ち運びができるように小型・軽量化することが強く望まれていた。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、他の作動源を不要にでき、かつ最小の水量で粉塵防止が図れるとともに、小型軽量化により機動性に富み、更にオペレーターの作業負担の軽減を図った穿孔機における粉塵防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、コンプレッサーから穿孔機への圧縮空気の給気ラインに分岐部を設けるとともに、その下流側に給気ラインに供給された水を管内で霧にする霧化器を設け、
空圧式往復動ポンプを備え、タンク内の水を圧送可能とした粉塵防止装置を設備し、前記空圧式往復動ポンプの給気口と前記分岐部とを接続するとともに、前記空圧式往復動ポンプの吐出口と前記霧化器の水供給口とを接続し、前記空圧式往復動ポンプは前記コンプレッサーからの圧縮空気のみを作動源として駆動することを特徴とする穿孔機における粉塵防止システムが提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明においては、コンプレッサーから穿孔機への圧縮空気の給気ラインに分岐部を設けるとともに、その下流側に給気ラインに供給された水を管内で霧にする霧化器を設ける。また、空圧式往復動ポンプを備え、タンク内の水を圧送可能とした粉塵防止装置を設備し、前記空圧式往復動ポンプの給気口と前記分岐部とを接続するとともに、前記空圧式往復動ポンプの吐出口と前記霧化器の水供給口とを接続するようにしたものである。
【0011】
従って、前記空圧式往復動ポンプは前記コンプレッサーからの圧縮空気のみを作動源として駆動するようになっているため、他の作動源が不要になり、かつ最小の水量で粉塵防止が図れるとともに、小型軽量化により機動性に富み現場での取扱い性が良好となる。また、前記粉塵防止装置は穿孔機への給気ラインから分岐させた圧縮空気により駆動するため、ドリリングを中止すると、自動的に粉塵防止装置も停止するため、オペレーターの作業負担が著しく軽減できるようになる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記空圧式往復動ポンプのピストンの連続往復運動をシリンダーのヘッド側ポート及びロッド側ポートに設けた圧力検出型のストロークエンドセンサによって検知し、流路切換弁の制御によって前記ピストンを往復運動させる請求項1記載の穿孔機における粉塵防止システムが提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明は、ピストンの位置検出をシリンダーのヘッド側ポート及びロッド側ポートに設けた圧力検出型のストロークエンドセンサによって検知するようにしたものである。従来よりピストンの位置検出センサとしては、リミットスイッチ、近接スイッチ、光電スイッチ、シリンダスイッチなどを用いる方法が存在する。前記シリンダスイッチは、ピストンの近接による磁気の変化を検出するもので、非磁性体のピストンに永久磁石を組み込むか、ピストンそのものを永久磁石で構成し、シリンダの外周に設けたスイッチを永久磁石の近接により作動させるものであり、必ず電源を必要としていた。
【0014】
これらに対して、本発明では、シリンダーのヘッド側ポート及びロッド側ポートに設けた圧力検出型のストロークエンドセンサによって検知するため、空圧式往復動ポンプへの細工無しに、回路中(ヘッド側ポート及びロッド側ポート)に前記ストロークエンドセンサを配置するだけで良いため、必要部品が最小で済み製作が容易となる。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記空圧式往復動ポンプの吐出量の調整は、シリンダーのロッド側ポートに設けた空気流量調整弁により行う請求項1,2いずれかに記載の穿孔機における粉塵防止システムが提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、岩質の違いによって粉塵発生量が異なるため、圧縮空気中の霧量(水分量)を調整可能とするため、吐出量の可変機能を設けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
以上詳説のとおり本発明によれば、他の作動源を不要にでき、かつ最小の水量で粉塵防止が図れるとともに、小型軽量化により機動性に富み、更にオペレーターの作業負担の軽減を図った穿孔機における粉塵防止システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】穿孔機1における粉塵防止システムの全体図である。
【図2】霧化器4の拡大側面図である。
【図3】粉塵防止装置5を示す、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図4】粉塵防止装置5の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0020】
本発明に係る穿孔機における粉塵防止システムは、コンプレッサー2から穿孔機1への圧縮空気の給気ライン7に分岐部3を設けるとともに、その下流側に給気ライン7に供給された水を管内で霧にする霧化器4を設け、
空圧式往復動ポンプ15を備え、タンク6内の水を圧送可能とした粉塵防止装置5を設備し、前記空圧式往復動ポンプ15の給気口20と前記分岐部3とを流体ホース8により接続するとともに、前記空圧式往復動ポンプ15の吐出口26と前記霧化器4の水供給口4cとを流体ホース9により接続し、前記空圧式往復動ポンプ15は前記コンプレッサー2からの圧縮空気のみを作動源として駆動するものである。
【0021】
以下、更に具体的に詳述する。
【0022】
図1に示されるように、前記穿孔機1は、架台10によって支持されたガイドセル11を備え、このガイドセル11上に前後進自在にドリフタドリル12を搭載したものである。前記ガイドセル11は、架台10に設けられたジャッキ13により伏仰方向に傾動自在とされ、かつジャッキ14により軸芯方向に前後進自在となっている。
【0023】
かかる穿孔機1においては、圧縮空気を使用してくり粉を排出したり、岩盤を穿孔するためにダウンザホールハンマーを用いる場合は、コンプレッサー2を設備し、圧縮空気をドリルロッドに送り込みながら穿孔を行うようになっている。
【0024】
本粉塵防止システムでは、前記コンプレッサー2から穿孔機1への圧縮空気の給気ライン7に分岐部3を設けるとともに、その下流側に給気ライン7に供給された水を管内で霧にする霧化器4を設けるようにする。前記分岐部3としてはT型継手を用いることができる。前記霧化器4は、図2に示されるように、T型継手の直線方向の継手部4a、4bは給気ライン7とし、中央の水供給口4cに管路の略中央に吐出口を有するインジェクションパイプ(注入管)16を有する接続具を設けた構成となっている。前記インジェクションパイプ16から吐出された水は、管路中を流れる圧縮空気によって瞬間的に霧化され、圧縮空気に乗って搬送される。
【0025】
前記粉塵防止装置5は、空圧式往復動ポンプ15を備え、隣接して設置されたタンク6内の水を前記給気ライン7に送り込むための装置である。詳細には図3に示されるように、フレーム枠19内部に、空圧式往復動ポンプ15を備えるとともに、作動用エアの給気口20と、水の流入口25及び吐出口26とを備える。
【0026】
前記空圧式往復動ポンプ15の給気口20と前記分岐部3とが流体ホース8により接続されるとともに、前記空圧式往復動ポンプ15の吐出口26と前記霧化器4の水供給口4cとが流体ホース9により接続される。これら流体ホース8,9としては、一般的な耐圧性のゴムホースなどを好適に用いることができる。
【0027】
前記空圧式往復動ポンプ15は、前記コンプレッサー2からの圧縮空気のみを作動源として駆動するものであり、図4に示されるように、シリンダー21A内にピストン27を備え、かつピストンロッド28が第2シリンダー21Bに収容されている。前記水の流入口25及び吐出口26は、前記第2シリンダー21Bの先端側に形成されている。これら流入口25及び吐出口26部分には夫々逆止弁30が設けられている。
【0028】
前記空圧式往復動ポンプ15のピストン27の連続往復運動をシリンダー21Aのヘッド側ポート及びロッド側ポートに夫々設けた圧力検出型のストロークエンドセンサ22,23によって検知し、流路切換弁24による圧縮空気の流路制御によって前記ピストン27を往復運動させるようになっている。また、シリンダー21Aのロッド側ポートに空気流量調整弁29を設けることによりピストン27の速度調整を行い、前記空圧式往復動ポンプ15の水吐出量の調整が行えるようになっている。
【0029】
前記空圧式往復動ポンプ15の水吐出量は、岩質の違いによる粉塵発生量の応じて圧縮空気1Nm3/min当たり概ね100〜300ccの範囲で調整すればよい。この程度の水量の場合は、圧縮空気に触れても水滴を感じることはなく、最小の水量で粉塵を防止することができる。また、ドリリング中に粘性土に遭遇し、スライムの排出が悪くなり、ドリリングに支障を来すようになった場合に、水吐出量を上げてスライムの排出を促すようにすればよい。なお、図4中、符合33は圧縮空気の入切弁であり、符合34はラインオイラーである。ラインオイラー34はダウンザホールハンマーを用いる際に使用される。
【符号の説明】
【0030】
1…穿孔機、2…コンプレッサ−、3…分岐部、4…霧化器、5…粉塵防止装置、6…水タンク、7…給気ライン、8・9…流体ホース、10…架台、11…ガイドセル、12…ドリフタドリル、15…空圧式往復動ポンプ15、19…フレーム枠、20…給気口(圧縮空気)、25…流入口(水)、26…吐出口(水)、22・23…ストロークエンドセンサ、24…流路切換弁、29…空気流量調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサーから穿孔機への圧縮空気の給気ラインに分岐部を設けるとともに、その下流側に給気ラインに供給された水を管内で霧にする霧化器を設け、
空圧式往復動ポンプを備え、タンク内の水を圧送可能とした粉塵防止装置を設備し、前記空圧式往復動ポンプの給気口と前記分岐部とを接続するとともに、前記空圧式往復動ポンプの吐出口と前記霧化器の水供給口とを接続し、前記空圧式往復動ポンプは前記コンプレッサーからの圧縮空気のみを作動源として駆動することを特徴とする穿孔機における粉塵防止システム。
【請求項2】
前記空圧式往復動ポンプのピストンの連続往復運動をシリンダーのヘッド側ポート及びロッド側ポートに設けた圧力検出型のストロークエンドセンサによって検知し、流路切換弁の制御によって前記ピストンを往復運動させる請求項1記載の穿孔機における粉塵防止システム。
【請求項3】
前記空圧式往復動ポンプの吐出量の調整は、シリンダーのロッド側ポートに設けた空気流量調整弁により行う請求項1,2いずれかに記載の穿孔機における粉塵防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−21264(P2012−21264A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157619(P2010−157619)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(391027000)株式会社オーミック (1)
【出願人】(504356487)
【Fターム(参考)】