説明

窒化ホウ素でコーティングされた締め具及び締め具を固定するための方法[関連する出願についてのクロスリファレンス]本願は、2006年7月17日に出願された米国特許出願60/807528に基づく優先権の利益を主張し、当該出願の内容は援用によりここに組み込まれるものとする。

【課題】締め具のアセンブリへの固定を容易にする焼き付き防止方法の提供。
【解決手段】締め具としては、例えば、ハンマーによって打ち込まれる釘、又は、軸継手、ナット、又はビルディングブロックにねじ込まれるネジ山付き釘又はネジ等が挙げられる。一実施形態では、組成物は、締め具の接触表面に適用されるのに十分な量の窒化ホウ素を含有し、締め具が焼き付き及び/又は摩損を起こすことなく、速やかに固定できるようにする。さらに、効果的な量の窒化ホウ素パウダー組成物を締め具の接触表面、即ち軸部の尖端又はネジ山表面、に塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釘や、例えば、ネジ、溝付きボルト、結合させるための溝を有するパイプジョイントのようなネジ付き固定具を含む締め具を固定する手段に関し、これらは、締め具に窒化ホウ素を含有するコーティング層を残すための潤滑化組成物を有する。
【背景技術】
【0002】
釘又はネジなどの機械的締め具を使用する際、作業を容易にするために焼き付き防止用組成物又は潤滑剤が使用されることがある。焼き付き防止用合成物を塗布せずにトルクレンチでネジを固定するプロセスでは、ネジが数回回転し、その位置で動きが止まることがある。トルクレンチをさらに回しても必ずしもネジの回転には利かず、ネジの進路を外れるように捻じれさせるだけで、壊れてしまうことがある。従って、例えばボルト要素とナット要素などの機械的締め具を嵌合させるネジ止めにおいて、それぞれの締め具部品を互いに螺合させて最終的に連結状態にまでそれらを締め付けるのに先駆けて、焼き付き防止用組成物が使用されることが多い。
【0003】
米国特許第3652414号は、オイルと石鹸を基剤とする組成物に微細に砕いた銅粉を含む製剤を開示している。米国特許第5498351号は、ペーストのような稠度を有し、主として浸漬又はブラッシング手法により塗布される、油懸濁液中にアルミニウムフレークを含む焼き付き防止用潤滑剤組成物を開示している。英国特許出願第GB 2 242 494号は、ネジのドリル先端部への非蝋引きコーティング材で使用中に潤滑剤として作用するものの塗布を開示している。欧州特許公開第480103号は、締め具の締結中に潤滑剤として働く、ドリル先端部での蝋引きコーティング材料の使用を開示している。銅とグラファイトのグリース懸濁液を含む組成物を始めとして、数多くの焼き付き防止用製品が市場にあり、これらは、1800°F(982℃)までの温度で金属部品の錆、腐蝕、摩損、及び焼き付きを防止する。また、釘などのディップコーティング締め具用の熱可塑性コーティング組成物も市販されており、釘を軸部で潤滑化し、打ち込みやすくすると同時にその保持力を増強する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実際には、従来技術のオイル、グリース、熱可塑性、又は石油基剤の焼き付き防止用組成物は、金属の鋳ばり、破片、及び微粒子でその使用中に汚れたり混蔵されたりする。高温環境で締め具を固定するための従来技術の焼き付き防止用組成物には、温度限界があることが多い。さらに、結合作業において、最終的な締め付け又は打ち込み中に、ナットのネジ山に過剰な摩擦や固着が発生することがある。締め付け中に見られる固着は、摩損に起因する場合がある。摩損は、2種の金属成分が比較的低速度で摺動し合う場合に起こる付着摩耗の深刻な形態である。高負荷下で、摩損は、ネジ山付き締め具からの局所的な金属剥離又は転移により特徴付けられる表面損傷を引き起こすことがある。摩損によって引き起こされる損傷は、嵌合面の間が数サイクル動いただけで生じることがある。さらに、ナット締め付けの作業者は、固着を感じると結合が強力であるとの印象をうけてしまう可能性があり、実際の場面では、ナットに加えられるトルクのほとんどが、相互の結合力を強く保つ方でなく、摩擦を凌駕する方に加えられる。
【0005】
木工業界では、2枚以上のボードを釘又はネジ型の締め具で締め付ける場合に、ネジ又は釘の破損という同様の問題が起こる。例として、デッキ又は通路/板張りの足場を作る場合が挙げられる。これは、少し例示すると、Ipe/鉄樹、マホガニー、チーク、ブラジルチェリー、紫檀、ウォルナット、ブラジル黒檀などの堅木を使用する場合、特に共通する問題である。この場合、締め具は木材と結合し、ネジ又は釘に高いトルク負荷を生じさせ、その結果、軸部の捻じれ及び破損が起こる。破損したネジや曲がった釘を取り除くことが生産性の低下を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
締め具(平滑な釘など)を素早く又は容易に打ち込んだり、特に最終締め付け中に固着を起こすことなく円滑に回転させる(ネジ山付きのネジ又は釘など)ことを可能とする焼き付き防止用組成物が必要とされている。一実施形態において、本発明は、摩損防止性と共に、締め具の軸端をコーティング/潤滑化するための優れた摩擦係数特性を有する組成物に関する。本発明はまた、窒化ホウ素粉を含有するコーティングで締め具軸部のドリル先端部又はネジ山部分を先ずコーティングすることによる、締め具を比較的容易に固定する方法にも関する。
【0007】
本発明の一態様において、締め具の軸部表面をコーティングする際に使用するための、窒化ホウ素を含む焼き付き防止用組成物が開示され、これは締め具がアセンブリにネジ込まれるか又は打ち込まれる際の焼き付きを最小限にするためのものである。窒化ホウ素を含む焼き付き防止用組成物は、塗料/スラリー、ゲル、グリース、オイル、固形スティック若しくは粉末、噴霧剤、又は懸濁液の形態をとる。組成物中の窒化ホウ素の量は、使用される形態に応じ、0.1〜99.9質量%までの範囲である。
【0008】
別の態様において、本発明は、軸部接触表面を有する締め具に関し、その軸部又はネジ山部分の長さの少なくとも20%が、5〜99.9質量%の窒化ホウ素を含む焼き付き防止用組成物でコーティングされ、締め具の接触表面上に窒化ホウ素を含むコーティング層を形成する。一例では、締め具は、焼き付き防止用組成物でコーティングされたネジ山付き表面を有するネジ山付き締め具である。別の例では、締め具は、焼き付き防止用組成物でコーティングされた尖端を有する釘である。
【0009】
最後に、本発明は、締め具の軸部分に、5〜99.9質量%の窒化ホウ素を含む組成物を十分な量塗布することにより、軸部を有する締め具を固定するための方法に関し、このようにして締め具を素早く構築できるようになり、且つ締め具がアセンブリに固定される際の焼き付きを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書で用いる場合、本発明に関連する基本機能に変化をきたすことなく変動しうる定量的表現の何れを修飾するのに、近似表現を適用してもよい。従って、「約」、「実質的に」といった文言によって修飾された単語は、場合によっては、特定された正確な値には制限されない。
【0011】
本明細書で用いる場合、「軸部」は締め具の金属棒状部分を称するが、形成された「頭部」は除き、尖端又は先端は含まれる。
【0012】
本明細書で用いる場合、「頭部」は、締め具のいくつかの実施形態について、広義の頭部又は部分を称し、これは、平坦(ハンマーに対して大きな標的を与える)若しくは皿状(頂部は平坦で底部に向かって僅かにテーパー状に傾斜している)である;頂部が平滑表面を有するか若しくは僅かに「格子模様が施されている」;カップ状か若しくは僅かに丸みを帯びている;又は2つの部分からなる(頭部が2つあり、一方は他方の上にあって、これにより形状構築のような一時的作業での取り外しが容易になる)ことができる。
【0013】
本明細書で用いる場合、単数形又は複数形の何れかで「釘」とは、尖端又は先端(ドリル先端部)を有する締め付け部材を称し、互換的に用いられる。例として、限定されないが、金属棒体又は軸部を有し、一端は尖端であり他端には頭部が形成されている単純な釘;螺旋ネジ山を備えた螺旋軸釘(ネジ山、Screw−Down(登録商標)、又は「打ち込み」釘とも称される)で、これにより、木ネジのように打ち込まれると回転が生じるもの;保持力を高めるために釘に環状(又はリング状)のネジ山を有するリンク軸釘(又はAnchor−Down(登録商標)釘);クラックを最小限にし、優れた保持力をもたらすために、石造物を切り込む水平溝を備えた溝付き軸釘;及び一般に止め釘と称される多尖端締め具が挙げられる。
【0014】
本明細書で用いる場合、単数形又は複数形の何れかで「ネジ山付き締め具」とは、嵌合締め具アセンブリとの係合に適合するように軸部表面に複数のネジ山を有する締め付け部材(雄部材又は雌部材のいずれかでありうる)を称し、互換的に用いられる。例として、限定されないが、ネジ山の切られたネジ、ネジ山の切られたナット、ネジ山の切られた釘などが挙げられる。「ネジ山付き締め具」の用語は、バイク、玩具、電子部品などのネジ山付き継手、強固な密封部分を形成するために他の部品と緊密に接触することが必要とされる、油井掘削に使用されるスチールパイプのネジ山付き継手と称するのにも使用できる。
【0015】
本明細書で用いる場合、単数形又は複数形の何れかで「締め具」は、釘又はネジ山付き締め具(雄部材若しくは雌部材)の形態をとる締め付け部材を称し、互換的に用いられる。
【0016】
本明細書で用いる場合、「接触面」の用語は、アセンブリに締め付けられるか又はそれと接触する締め具の表面を称し、図1Bに示すものなど、嵌合締め具アセンブリの表面4との係合に適合するような締め具のネジ山付き表面4であって、例えば、軸継手若しくはナット、又は軸部表面や、さらにはビルディングブロックの形態において嵌合締め具アセンブリに打ち込まれるかネジ込まれる釘の尖端化された表面(ネジ山付き又は平滑)のことである。
【0017】
本明細書で用いる場合、「有効量」の用語は、例えば締め具を受け入れるための木若しくはコンクリートなどのワークピースの表面の穴に、又はドリル先端部を有するネジなどのネジ山付き締め具を受け入れるための雌ネジ形成保持ネジに、打ち込まれるかネジ込まれる締め具を他の締め付け部材に低い抵抗で、強固に固定するのに十分な量の焼き付き防止用組成物の量を意味する。
【0018】
本発明の焼き付き防止用組成物は粉末、固形棒体又はスティック、ゲル、グリース、オイル、ワックス、接着剤、ラッカー又はワニス、エアロゾル又は懸濁液として噴霧されるスプレー塗料/スラリーの形態をとることができ、懸濁媒体は水、有機溶剤、有機ポリマー、無機ポリマーなどである。一実施形態では、組成物はスティック、棒体若しくは塊状物、又は粉末として塗布され、ネジ山付き締め具上に直接コーティング層を形成する。組成物は、本明細書で焼き付き防止の主要成分として記載する窒化ホウ素と干渉しない限り、当業者らによく知られているスプレー塗料など、このタイプの製品に一般的に使用される成分を含む。
【0019】
焼き付き防止活性化成分である窒化ホウ素(BN)は、本発明の焼き付き防止用組成物として使用でき、多くの市販のものを利用できる。その原料に特に制限はないが、例えば、GE Advanced Marerials、Sintec Keramik、Kawasaki Chemicals、及びSt.Gobain CeramicsのBN原料を使用できる。
【0020】
BNは、以下の形態又はそれらの混合物であり得る。アモルファス窒化ホウ素(以下a−BNともいう)、六方晶系の網目状の積層構造を有する六方晶系窒化ホウ素(以下、h−BNともいう)及びランダムに積層された六方晶系の網目状の層を有する乱層構造窒化ホウ素(以下t−BNともいう)。一実施形態においては、BNは、乱層構造形態、六方晶系形態、又はそれらの混合物である。
【0021】
一実施形態においては、BN粒子は、100μm未満の平均粒子サイズを有する。第2の実施形態においては、50μm未満である。第3の実施形態においては、10〜30μmである。第4の実施形態においては、平均一次粒子サイズが20μm未満である。第5の実施形態においては、窒化ホウ素は、0.5〜100μmの平均一次粒子サイズを有する。第6の実施形態においては、窒化ホウ素は、2〜60μmの平均一次粒子サイズを有する。
【0022】
一実施形態では、成分に潤滑特性をさらに付与するために、BNに表面処理(「コーティング」)を施す。表面コーティング材料の例としては、特に制限はないが、イソヘキサデカン、液体パラフィン、非イオン性界面活性剤、トリメチルシロキシユニットで末端が保護されている完全にメチル化された直鎖シロキサンポリマーの混合物であるジメチルポリシロキサン(又はジメチコン)、パーフルオロアルキル基を有するシラザン化合物、ジルコナートカップリング剤、ジルコニウムアルミナートカップリング剤、アルミナートカップリング剤、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0023】
[焼き付き防止用組成物]
BN焼き付き防止用組成物は、様々な形態で適用される。特に制限はないが、例えば、窒化ホウ素含有塗料、窒化ホウ素含有ラッカー、窒化ホウ素含有グリース、窒化ホウ素溶射、窒化ホウ素スティック又は棒体、窒化ホウ素含有クリーム、窒化ホウ素含有油、及び無添加(neat)の窒化ホウ素パウダーの形態で適用される。図2A及び図2Bに示す一実施形態では、締め具10のネジ山部分上に組成物を塗布し、部分的に、軸部又はネジ山部分の長さの少なくとも10%をコーティング部分15でコーティングする。第2の実施形態では、釘(図示せず)などの締め具の軸部分上に組成物を塗布し、部分的に、軸部分又はネジ山部分の表面の少なくとも20%をコーティングする。第3の実施形態では、締め具の表面の少なくとも40%がコーティングされる。第4の実施形態では、軸部又はネジ山部分の表面の少なくとも60%がコーティングされる。
【0024】
別の実施形態では、図2A−2Bのネジ又は溝付き釘などの締め具のドリル先端部22の上にのみ組成物を塗布する。さらに別の実施形態では、締め具の形成された頭部を除く表面全体にコーティングする。第5の実施形態では、組成物は軸部分表面又はネジ山部分に2〜500μmの厚さの窒化ホウ素パウダーのコーティングを残すように適用される。さらに別の実施形態では、軸部分表面又はネジ山部分上で窒化ホウ素を含有するコーティング層は、10〜100μmの厚さである。
【0025】
塗料、ラッカー、グリース、クリーム等といった実施形態では、窒化ホウ素焼き付き防止材料は、例えば、水溶性結合剤、有機溶解性結合剤、水性乳剤、パラフィン、液体シリコン、油のような結合剤又は担体材料と混合されている。焼き付き防止用組成物に使用できる結合剤材料は、BN凝集体/パウダーの焼き付き防止能と干渉せず、また凝集体/パウダーにとって必要な特性及び結合能を保持する限り特に制限はない。結合剤材料の例としては、特に制限はないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。一実施形態では、焼き付き防止成分としての窒化ホウ素の結合剤に対する割合は、窒化ホウ素の結合剤に対する質量比で0.3〜0.9の範囲内である。第2の実施形態では、前記割合は、0.5〜8.0の範囲内である。第3の実施形態では、前記割合は、1.0〜7.0の範囲内である。結合剤の組合せ及び割合は、重要ではない。しかし、その量及び組合せは、上述したように、窒化ホウ素の焼き付き防止能と干渉するほど多くなるべきではない。
【0026】
一実施形態では、例えば、溶射の形態では、焼き付き防止用組成物は、さらに、Ni、Co、Cu、Fe、Alの群から選択されたマトリクス形成金属合金、それらの組合せ及びそれらの合金のような添加物を含む。その割合は、窒化ホウ素の金属合金に対する質量が1対6から9対1の範囲内である。
【0027】
完成した焼き付き防止用製剤中の窒化ホウ素の総量は、広範なパラメータ内で変動してよいが、組成物が、締め具の軸部又はネジ山上に窒化ホウ素を含むコーティング層を形成するのに十分でなければならず、これにより、締め具を、焼き付きや閉塞や少しの抵抗もなく、容易に表面に打ち込んだり、嵌合部品(ネジ若しくはナット)又は保持プラットフォーム(例えば、木、セメント、金属表面)にネジ込んだりすることができるようになる。これが焼き付き防止量である。一般的に、一実施形態において、窒化ホウ素の焼き付き防止有効量は、焼き付き防止製剤のトータル質量に基づき、0.1〜99.9質量%の範囲内である。他の実施形態では、1〜95質量%である。第2の実施形態では、その量は、2〜75質量パーセントの範囲内である。第3の実施形態では、その量は5〜50質量%の範囲内である。第4の実施形態では、その量は、15質量%未満である。第5の実施形態では、その量は、5〜30質量%の範囲内である。
【0028】
焼き付き防止の主成分としての窒化ホウ素成分、及び任意成分としての、塗布形態(グリース、ラッカーなど)に応じた少なくとも1の結合剤/担体成分に加えて、組成物は当該技術分野で知られている様々な添加物も含むことができ、当該添加物としては、限定されないが、攪拌剤、染料、着色剤、保存剤、MoS2などの他の潤滑補助剤、グラファイト又はPTFE、腐蝕防止剤などが挙げられる。
【0029】
締め具としての釘の場合の使用に対する、すなわち、平滑な釘又は溝付き軸釘を打ち込むための一実施形態では、組成物はさらに、50%までの立方晶窒化ホウ素(cBN)を、釘の打ち込みをさらに容易にする(hBNによる焼き付き防止効果)ばかりでなく、保持力及び強度の高い(cBNによる)組成とするために含む。第2の実施形態では、cBNの量は、トータルBN組成物に対して2〜40質量%の範囲内である。第3の実施形態では、cBNの量は、トータルBN組成物に対して5〜30質量%の範囲内である。第4の実施形態では、cBNに加えて又はcBNに代えて、焼き付き防止用組成物は、さらにタルク、グラスファイバー、及び粉状のガラスのうちの少なくとも一つの成分を含む。その量は、トータル焼き付き防止用組成物に対して2〜50質量%である。第5の実施形態では、焼き付き防止用組成物は、タルク、グラスファイバー、及び粉状のガラスのうちの少なくとも一つの成分を含む。その量は、トータル焼き付き防止用組成物に対して5〜10質量%である。
【0030】
[第1実施形態−焼き付き防止用パウダー]
一実施形態では、焼き付き防止用組成物は、窒化ホウ素粒子を含む。hBN粒子の凝集体を含有するBNパウダーを含む実施例では、約10〜約125μmの凝集体のサイズ分布である。他の実施形態では、主にhBN粒子からなる焼き付き防止用組成物は、約10〜約300のアスペクト比を有する。第3の実施形態では、主にhBN粒子からなる焼き付き防止用パウダー組成物は、0.2〜2.5質量%の酸素含量である。第4の実施形態では、主にhBN粒子からなる焼き付き防止用パウダー組成物は、7未満の黒鉛化指数を有する。
【0031】
[第2実施形態−焼き付き防止用液体]
一実施形態では、焼き付き防止用組成物は、例えば、締め具のネジ山表面への高い付着性と同様に高い滑らかさを有するBN塗料のような窒化ホウ素液体の形態であり、窒化ホウ素を含有する乾燥組成物を残留させる。一実施形態では、窒化ホウ素焼き付き防止用組成物は、50〜100質量部のBN、25〜75質量部のビニルアクリルのようなアクリル、及び100〜200質量部のアルコールのような揮発性液体を含有するBN塗料の形態である。
【0032】
一実施形態では、焼きつき防止用化合物は、例えばニトロラッカーなどの膜形成物質の結合剤、アミルアセテート中のニトロセルロース溶剤中のBNラッカーの形態をとる。第2の実施形態では、焼き付き防止用ラッカーは結合剤として、例えばゾルゲル材のオルガノシラン化合物を含み、これは通常、Si−OH基を形成するシランの加水分解によって製造され、これらの基は硬化の際に結合してSi−O−Si結合を形成する。第3の実施形態では、焼き付き防止用ラッカー組成物は、変性ポリエステルなどの水溶性樹脂、及び水混和性のヒドロキシウレタンを含む水性結合剤混合物中にBN粉末を含む。第4の実施形態では、焼き付き防止用ラッカー組成物は、分散剤メチルメタクリルポリマー及びグラフト共重合体の結合剤中に窒化ホウ素を含んでいる。
【0033】
BN焼き付き防止用組成物は、エアロゾル缶、噴霧器等を用いる、洗浄、ブラッシング、噴霧などの従来の液体塗布技術を使用して軸部又はネジ山付き表面に直接、液体で塗布できる。さらに別の実施形態では、BNを含有するコーティングを施すために、ネジ、直線釘、又は溝付き釘などの締め具を、ネジ山付き表面を覆うように窒化ホウ素塗料又はラッカーの槽に充分な時間浸漬させる。締め具を浸漬槽から取り出し、焼き付き防止コーティングを形成するようにBN組成物を乾燥させる。
【0034】
BN塗料と同様の形態の焼き付き防止用組成物は、GE Advanced Materials of Strongsville、OHを始めとする、多くの供給元から購入することができる。
【0035】
[第3実施形態−焼き付き防止BN]
ブロック:一実施形態では、焼き付き防止用組成物は棒状、スティック、又はブロックの形態をとっている。塗布に際し、ブロックを締め具の軸部又はネジ山付き表面に擦りつけ(又は逆に、ネジ山の切られたネジをブロックに擦りつけ)、実質的に窒化ホウ素から成る残留コーティングを残す。
【0036】
一実施形態では、固体ブロックは、5〜99質量%の窒化ホウ素、0〜50質量%の二硫化モリブデンを含む任意の潤滑剤、5〜50質量%の炭酸カルシウム、0〜30質量%のマイカ、セリサイト及びタルクを含む任意の無機物を含む。
【0037】
別の実施形態では、焼き付き防止用組成物は、主要な固体構成成分としてBNを使用する。そして、焼き付き防止用組成物のブロックは0〜99.9質量%のh−BN、0〜99質量%のt−BNを含有する。一実施形態では、ブロックは以下の工程を用いて形成する:高酸素濃度のt−BN及び任意成分としてのカーボン添加剤の混合物を、一軸加圧形成、フィルタ加圧形成、又は静水圧形成などの既知の方法によって、まず冷間加圧形成し、次に1500〜2300°Cで1〜40時間加熱して、0.20〜1.50g/cmの範囲の密度を有する焼結BNのブロックを形成する。
【0038】
別の実施形態では、焼き付き防止用ブロックは、合成ワックス、パラフィン、又はトリフェニルリン酸のような有機リン酸塩を担体として使用する。BN焼き付き防止用構成成分は、溶融液体担体に加えられ、次いでこのように形成された混合物は、型に注入される。そして、混合物は冷却され、担体は固化する。型は、棒状又は他の所望の形状に製造できる。さらに、溶融混合物は型に注入され、250〜1500psigの間の圧力で圧縮されることができる。
【0039】
別の実施形態では、焼き付き防止用ブロックで、合成又は天然ワックス、パラフィン、又はトリフェニルリン酸などの有機リン酸塩を担体として用いている。BN焼き付き防止成分は、vブレンダを用いて担体成分と乾燥混合させ、その乾燥混合物は金型に入れて、250°Fまで加熱すると共に250〜1500psigまでの圧力で加圧して、室温まで冷却し、棒状又は他の所望の形状に成形する。
【0040】
[第4実施形態−焼き付き防止用グリース又はオイル]
一実施形態では、焼き付き防止用組成物は、グリース(又はオイル)の形態をとり、これは、浸漬、ブラッシングなどによって締め具の軸部又はネジ山付き表面上に塗布できる。
【0041】
一実施形態では、焼き付き防止用組成物は、グリースの形態であり、鉱油又は合成油の担体中に1〜30質量%の窒化ホウ素主成分を含有する。一実施形態におけるグリース組成物は、アセチレンブラック、タルク、クレイ、又はシリカのような鉱物の増粘剤、又はリチウム石鹸、アルミニウム石鹸、他の錯塩石鹸、又はポリウレアのうちの少なくとも一つを2〜30質量%の量でさらに含有する。
【0042】
BN含有焼き付き防止用潤滑剤は、公知の方法で作ることができる。例えば、室温で混合された混合物が挙げられる。一実施形態においては、使用された結合剤に応じて、混合物は、さらに200〜500℃で5分〜24時間硬化処理が施される。
【0043】
[第5実施形態−焼き付き防止用溶射]
一実施形態では、特に、油性掘削等のためのパイプ継手など、大型ネジ込み継手への塗布用に、組成物は溶射の形態をとる。
【0044】
焼き付き防止用溶射の一例において、噴霧剤は、NiCrAlのマトリクス形成金属合金に50質量%のBNを含む。溶射は、粉末形態の組成物を溶融させる熱をネジ山付き部品に発生させるため、燃焼、プラズマ、又は電気アークを用いて、締め具のネジ山表面上に対して行う。その焼き付き防止特性に加えて、当該組成物はさらに、ネジ山付き部品に対して、少なくとも815℃の作業温度に耐える構造的強度をもたらす。
【実施例】
【0045】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【0046】
[実施例1−BN焼き付き防止用ブロック]
酸素含量0.3質量%のh−BN粉末(GE Advanced Materials、AC6004等級)29.4質量%と、酸素含量15質量%のt−BN68.6質量%と、2質量%のカーボンブラック(Cancarb、N991等級)とを含む混合物を、均一にブレンドする。配合物を、一軸加圧機で加圧してビレットを形成させる。ビレットを、複数のブロックに切断する。次に、ブロックを1700〜2300℃で10〜30時間焼結し、0.20〜1.5g/cmの範囲の密度を有する低密度BNブロックを形成する。その燃焼O濃度は1.0質量%未満である。
【0047】
[実施例2−鋼鉄パイプ用ネジ込み継手への塗布]
本実施例では、図1A及び1Bに示す鋼鉄パイプ用ネジ込み継手を例証する。パイプの外径は7インチ(178mm)、肉厚は0.408インチ(10.4mm)である。GE Advanced Materialsにより(BN Spray IIとして)市販されているエアロゾルBN塗料を、パイプのネジ山付き表面3に噴霧する。パイプの雄ネジ部分1を、雌軸継手2にネジ込む。10rpmの締め付け速度で試験を行う。締め付け及び緩めの繰り返し試験(外界温度で5回)において、締め付け及び緩めの間に焼き付き又は摩損は発生しない。
【0048】
本発明の焼き付き防止用組成物でコーティングしていないネジ山付きパイプを用いる比較例では、ネジ込みの途中で焼き付きが発生する。
【0049】
[実施例3−ネジ山付きネジへの塗布]
本実施例では、図2Aに示すネジ山付きネジ10を試験に使用する。ネジ山部分13の表面のほぼ半分、及びドリル先端部の全表面をBN塗料15の層でコーティングする。エアロゾルBN塗料は、BN Spray IIとして、GE Advanced Materialsから市販されている。電動ドライバを使用して木製ベンチにネジ10をネジ込む。ネジは焼き付き及び/又は破損を起こすことなく最後までネジ込まれる。
【0050】
焼き付き防止コーティングを全く施さない同様のネジの比較例では、焼き付き発生時に電動ドライバがネジ頭11から滑り落ち、ネジは途中で止まったままでさらに進めることはできない。コーティングされていないネジは、捻じれ2つに破断してしまう場合もある。
【0051】
[実施例4−BNコーティングの塗布]
ネジの頭部がBNでコーティングされないように、ネジを固定治具に挿入する。ネジのネジ山部分を、塗料スプレーに入れた水性のBN塗料を使用してコーティングする。塗料は9.4%のh−BN、5.1%の酸化アルミニウム、及び1.6%のベントナイト粘土を含有し、組成物の残分は水である。固定治具は、ネジ山付き表面全体に均一にコーティングが塗布されるように回転される。コーティングは、1〜2mmの厚みで塗布される。その後、電動ドライバを使用して木製ベンチにネジをネジ込む。ネジは焼き付き/破損を起こすことなく最後までネジ込まれる。
【0052】
[実施例5−BNコーティングの塗布]
平滑な釘を、釘の頭部がBNでコーティングされないように固定治具に挿入する。釘の軸部は、BNエアロゾルスプレー塗料を使用してコーティングされる。乾燥した状態で、塗料は58%のh−BN及び42%の有機粘土結合剤を含む。ハンマーを使用し、木製ベンチに釘を手動式に打ち込む。ハンマーで同じ力を加えた場合、この釘はBNコーティングを施していない釘よりも10%速く、最後まで打ち込まれる。
【0053】
[実施例7−静電コーティングによる塗布]
本実施例では、ネジはネジに印加される電位を有しており、この電位はBN粉末ディスペンサのものとは充分に異なっているので、BN粉末のネジ表面への誘引が引き起こされる。分配される組成物も、0.5〜20質量%のレベルで結合剤を含有している。随意に、ネジ上に組成物が固定されるように、この組成物を熱処理に付してもよい。
【0054】
[実施例8−フローコーティング又はディップコーティングによる塗布]
溝付き軸部の釘を、溶解ポリマーを含有する揮発性溶媒系中のBN粉末の懸濁液に浸漬させる。質量比40:60のアセトン/低分子量結晶ポリスチレンの混合物中に、40〜50質量%の供給量でBN粉末の攪拌懸濁液を調製する。釘をこの混合液に浸漬するか、又は固定治具に入れて溝付き軸部領域全体にこの混合液をフローコーティングする。
【0055】
[実施例9−無添加(neat)BN粉末を用いた塗布]
BN粉末の一部をバッグ又は箱などの好適な容器に入れ、そこへ複数の螺旋軸釘を入れる。その後、BN粉末が釘の螺旋ネジ山部分に落ち込むように、装置全体を激しく振動させる。その後、電動ドライバを使用して木製ベンチにその螺旋軸釘を打ち込む。釘は焼き付き/破損を起こすことなく最後まで打ち込まれる。
【0056】
ここに書かれた記述は、本発明を開示するための実施例を使用し、最良の形態を含む。また、いかなる当業者も本発明を実施することができる実施例を使用する。本発明の特許され得る範囲は、請求項によって定義され、当業者に生じる他の実施例を含有する。他の実施例が、請求項の正確な言語と相違しない構成要素を有する場合、または、それらが請求項の正確な言語との実質的な違いを有さない均等な構成要素を含む場合、他の実施例は請求項の範囲内であることを意味する。
【0057】
ここで参照するすべての引用文献は、はっきりと本明細書に引用したものとする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】ネジ山付き締め具(ネジ山付き継手を有するスチールパイプ)の一実施形態にかかるアセンブリを示す図である。
【図1B】雄コネクタのネジ山表面に適用される本発明の焼き付き防止用組成物のコーティングを有する、スチールパイプのネジ山付き継手における連結部を示す図である。
【図2A】ネジ山部が部分的に本発明の焼き付き防止用組成物でコーティングされた、ネジの形態でのネジ山付き締め具を示す側面図である。
【図2B】焼き付き防止用組成物で部分的にコーティングされたネジ山付きネジの他の実施形態を示す側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合アセンブリとの係合に適合するような接触表面を有する軸部、又はネジ山部を備えた締め具であって、
前記締め具は、前記軸部又は前記ネジ山部における接触表面の少なくとも10%が、0.1〜99.9質量%の窒化ホウ素を含有する焼き付き防止用組成物によりコーティングされており、
前記焼き付き防止用組成物は、コーティングされた前記接触表面に窒化ホウ素含有コーティング層を残すことを特徴とする締め具。
【請求項2】
前記軸部又は前記ネジ山部における前記表面の少なくとも20%が、前記焼き付き防止用組成物によりコーティングされている請求項1記載の締め具。
【請求項3】
前記軸部又は前記ネジ山部における前記表面の少なくとも40%が、前記焼き付き防止用組成物によりコーティングされている請求項1記載の締め具。
【請求項4】
前記軸部又は前記ネジ山部における前記表面の少なくとも60%が、前記焼き付き防止用組成物によりコーティングされている請求項1記載の締め具。
【請求項5】
前記焼き付き防止用組成物は、1〜95質量%の窒化ホウ素を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の締め具。
【請求項6】
前記焼き付き防止用組成物は、1〜75質量%の窒化ホウ素を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の締め具。
【請求項7】
前記焼き付き防止用組成物は、2〜75質量%の窒化ホウ素を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の締め具。
【請求項8】
前記焼き付き防止用組成物は、5〜50質量%の窒化ホウ素を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の締め具。
【請求項9】
前記焼き付き防止用組成物は、平均一次粒子サイズが0.5〜125μmの範囲内である窒化ホウ素を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の締め具。
【請求項10】
前記焼き付き防止用組成物は、平均一次粒子サイズが2〜60μmの範囲内である窒化ホウ素を5〜50質量%含有する請求項1〜9のいずれかに記載の締め具。
【請求項11】
ネジ、釘、止め釘、ナット、軸継手、又はネジ山付き継手の形態である請求項1〜10のいずれかに記載の締め具。
【請求項12】
溝付き軸釘、螺旋軸釘、又はリンク軸釘の形態である請求項1〜11のいずれかに記載の締め具。
【請求項13】
前記軸部又はネジ山部は尖端を有し、
前記尖端は、前記焼き付き防止用組成物によりコーティングされている請求項1〜12のいずれかに記載の締め具。
【請求項14】
前記焼き付き防止用組成物は、コーティングされた前記接触表面に2〜500μmの厚さを有するコーティング層を残す請求項1〜14のいずれかに記載の締め具。
【請求項15】
前記焼き付き防止用組成物は、コーティングされた前記接触表面に10〜100μmの厚さを有するコーティング層を残す請求項1〜14のいずれかに記載の締め具。
【請求項16】
前記焼き付き防止用組成物は、ゲル、グリース、油、粉末、固体スティック、溶射、有機若しくは水溶性の懸濁液又は分散液、及び塗料のうちの一つである請求項1〜15のいずれかに記載の締め具。
【請求項17】
前記焼き付き防止用組成物は、50〜100質量部のホウ素、25〜75質量部のアクリル、及び100〜200質量部の揮発性液体を含む塗料である請求項1〜16のいずれかに記載の締め具。
【請求項18】
前記焼き付き防止用組成物は、鉱油又は合成油の担体に1〜30質量%の窒化ホウ素を含有するグリースである請求項1〜17のいずれかに記載の締め具。
【請求項19】
締め具を嵌合アセンブリに固定するための方法であって、
前記締め具は、前記嵌合アセンブリとの係合に適合するような接触表面を有する軸部、又はネジ山部を備え、
前記接触表面の少なくとも一部を、十分な量の窒化ホウ素を0.1〜99.9質量%含有する組成物でコーティングするステップを具備し、
前記組成物は、前記締め具が前記アセンブリに固定されるときに該締め具が焼き付くのを防ぐための窒化ホウ素含有層をコーティングされた接触表面に形成するものである方法。
【請求項20】
前記締め具は、ネジ、釘、止め釘、ナット、軸継手、及びネジ山付き継手の形態である請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記焼き付き防止用組成物は、ゲル、グリース、油、粉体、固体スティック、溶射、有機若しくは水溶性の懸濁液又は分散液、及び塗料のうちの一つである請求項19又は20記載の方法。
【請求項22】
前記焼き付き防止用組成物は、50〜100質量部のホウ素、25〜75質量部のアクリル、及び100〜200質量部の揮発性液体を含む塗料である請求項19〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記接触表面の少なくとも一部をコーティングする方法は、5〜50質量%の窒化ホウ素を含有する組成物で締め具のネジ山部分をコーティングすることを含む請求項19〜22のいずれかに記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2008−57771(P2008−57771A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−181187(P2007−181187)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】