説明

窒化物結晶の製造方法

【課題】反応容器の変形を抑制しながら、高品質な窒化物結晶を製造すること。
【解決手段】反応容器に原料と第一溶媒とを充填して密閉した後、該反応容器を耐圧性容器内に設置し、さらに該耐圧性容器の内壁と該反応容器の外壁の間の空隙に第二溶媒を充填して前記耐圧性容器を密閉した後、該反応容器中で超臨界および/または超亜臨界状態において結晶成長を行う窒化物結晶の製造方法において、前記反応容器の内部短軸長(ID[C])と、前記耐圧性容器の内部短軸長(ID[A])との比(ID[C]/ID[A])を0.60〜0.98とするか、前記反応容器内の自由容積(IV)と、前記耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙における自由容積(OV)との比(IV/OV)を0.20〜40とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物結晶の製造方法に関する。より詳しくは、耐圧性容器内に密閉した反応容器内でアモノサーマル法により窒化物結晶を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アモノサーマル法は、超臨界状態および/または亜臨界状態にあるアンモニアなどの窒素を含有する溶媒を用いて、原材料の溶解−析出反応を利用して所望の材料を製造する方法である。結晶成長へ適用するときは、アンモニアなどの溶媒への原料溶解度の温度依存性を利用して温度差により過飽和状態を発生させて結晶を析出させる。具体的には、オートクレーブなどの耐圧性容器内に原料やシードを入れて密閉し、ヒーター等で加熱することにより耐圧性容器内に高温域と低温域を形成し、その一方において原料を溶解し、他方において結晶を育成することにより、所望の結晶を製造することができる。
【0003】
しかしながら、このように耐圧性容器内に直接原料やシードを入れて結晶を育成しても、不純物濃度が十分に低くて結晶性が高い結晶を製造することは容易ではない。その原因は、アモノサーマル法において原料の溶解性を上げるために一般に用いられる鉱化剤が、耐圧性容器の内表面を構成している材料に対して腐食性を有することなどが挙げられる。例えばハロゲン化アンモニウムなどの酸性鉱化剤が用いられる場合は、耐圧性容器の内面を構成するニッケル基合金に対する腐食性が高いため、育成される窒化物結晶に耐圧性容器に由来する不純物が混入しやすくなる。また、アルカリアミドなどの塩基性鉱化剤が用いられる場合も、不純物の混入を十分に抑えることは困難である。
【0004】
そこで、耐圧性容器の内面に耐食性材料によるライニングを行ったり、耐食性材料で構成される小型の反応容器(例えばカプセル)を用いたりすることが提案されている。酸性鉱化剤に対して高い耐食性をもつ材料としては、白金族金属、タングステン、タンタル、モリブデン、チタンなどが知られており、これらの材料によりオートクレーブ内面をライニングするかカプセルを用いることによりオートクレーブの腐食を防止して高純度の窒化物結晶を育成できることが知られている。
【0005】
反応容器を用いる方法は、耐圧性容器内に直接原料やシードを入れるのではなく、Ptなどで構成される反応容器内にこれらを入れて密閉し、その反応容器全体をオートクレーブなどの耐圧性容器中に入れて密閉したうえで結晶成長を行うものである(特許文献1参照)。この方法によれば、ライニング法よりも、より不純物濃度を低減させやすい。特許文献1には、耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間の空隙にアンモニアを充填して、反応容器内外の圧力のバランスを調整することが記載されている。また、耐圧性容器内に入れた反応容器中にて結晶を育成すれば、結晶性が良好な窒化物結晶が得られることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−263229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アモノサーマル法においては、結晶成長を行うために反応容器内のアンモニア溶媒が超臨界状態および/または亜臨界状態となるまで昇温・昇圧する。ここで、特許文献1に記載されているように耐圧性容器内に装填した反応容器を使用する場合には、反応容器内と反応容器の外側との間で圧力が略等しくなるように調節する必要がある。これは、反応容器内外での圧力が異なると、反応容器が潰れたり、破裂したりして、破損する危険性が高いからである。特許文献1によると、耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間の空隙にアンモニアを充填して、反応容器内外の圧力のバランスを調整することが提案されているが、反応容器内外の圧力バランスを保つための調整は極めて難しく、実際に運用することは難しかった。このため、反応終了後には、耐圧性容器内に装填した反応容器は変形していることが多く、ときには反応容器が割れたり潰れたりすることもあった。したがって、反応容器の大きな変形があっても良いように、反応容器は耐圧性容器に比べて径や高さがかなり小さなものに限って使用しているのが実情である。
【0008】
このように、耐圧性容器内において直接窒化物結晶を育成する従来法では品質が良好な結晶を得ることが困難であり、また、耐圧性容器内に装填した反応容器内において窒化物結晶を育成する場合は反応容器内外の圧力調整が困難で反応容器が大きく変形してしまうのを防ぐことが困難であるという課題があった。そこで本発明者らは、反応容器の変形を抑えながら高品質な窒化物結晶を効率良く製造する方法を提供することも目的として鋭意検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく反応容器の形状等について鋭意検討した結果、耐圧性容器の内径や内容積に対して従来よりも比較的大きな内径や内容積を有する反応容器を用いれば、意外なことに反応容器の変形を抑えながら高品質な窒化物結晶を生産性よく製造しうることを見出して本発明に到達した。
【0010】
すなわち、上記の課題は、以下の本発明の窒化物結晶の製造方法により解決される。
[1] 反応容器に原料と第一溶媒とを充填して密閉した後、該反応容器を耐圧性容器内に設置し、さらに該耐圧性容器の内壁と該反応容器の外壁の間の空隙に第二溶媒を充填して前記耐圧性容器を密閉した後、該反応容器中で超臨界および/または超亜臨界状態において結晶成長を行う窒化物結晶の製造方法であって、下記の(1)および(2)の少なくとも一つを満たすことを特徴とする窒化物結晶の製造方法。
(1) 前記反応容器の内部短軸長(ID[C])と、前記耐圧性容器の内部短軸長(ID[A])との比(ID[C]/ID[A])が0.60〜0.98である。
(2) 前記反応容器内の自由容積(IV)と、前記耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙における自由容積(OV)との比(IV/OV)が0.20〜40である。
[2] 前記反応容器の外部長軸長(OL[C])と、前記耐圧性容器の内部長軸長(IL[A])との比(OL[C]/IL[A])が0.50〜0.97である、[1]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[3] 前記反応容器の外部短軸長(OD[C])と、前記耐圧性容器の内部短軸長(ID[A])との差(ID[A]−OD[C])が1mm以上である、[1]または[2]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[4] 前記反応容器の内部短軸長(ID[C])と、前記反応容器の内部長軸長(IL[C])との比(IL[C]/ID[C])が5.0〜25である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[5] 前記反応容器の外部長軸長(OL[C])と、前記耐圧性容器の内部長軸長(IL[A])との差(IL[A]−OL[C])が10mm以上である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[6] 前記反応容器の内容積(V[C])と、前記耐圧性容器の内容積(V[A])との比(V[C]/V[A])が0.20〜0.95である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[7] 第二溶媒の対流を抑制する対流抑制部材を、前記耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙に設置する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[8] 前記対流抑制部材は、前記反応容器の長軸に垂直な方向に伸長する部材である、[7]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[9] 前記対流抑制部材は、前記耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙を横断する断面積の50%以上100%未満を遮蔽する、[7]または[8]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[10] 前記対流抑制部材の少なくとも一部が前記反応容器の外壁に接触している、[7]〜[9]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[11] 前記対流抑制部材の少なくとも一部が、前記反応容器を保持する部材に接触しているか、前記反応容器を保持する部材に接続して連続体となっている、[7]〜[10]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[12] 前記対流抑制部材が前記反応容器よりも変形しやすい部材である、[7]〜[11]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[13] 前記対流抑制部材が前記反応容器の長軸方向の異なる位置に2個以上設置されている、[7]〜[12]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[14] 前記反応容器内にバッフル板が設置されており、前記バッフル板の設置位置と前記耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙に設置された対流抑制部材の設置位置との前記反応容器の長軸方向におけるずれが、前記反応容器の外部長軸長の20%以内である、[7]〜[13]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[15] 前記対流抑制部材がカーボンおよびグラファイトの少なくとも一方で構成されている、[7]〜[14]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[16] 前記反応容器の少なくとも一部が平面領域および凹み領域の少なくとも一方を有する[1]〜[15]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、反応容器の変形を従来よりも抑制しながら、高品質な窒化物結晶を製造することが可能である。本発明の製造方法によれば、生産性よく高効率で窒化物結晶を製造することができるうえ、反応容器の再利用率も上げることができる。また、本発明の製造方法により得られる窒化物結晶は、高品質であるために、発光デバイスや電子デバイス用の半導体結晶等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】反応容器の長軸長と短軸長を説明するための上面図(a)および側面図(b)である。
【図2】耐圧性容器の長軸長と短軸長を説明するための上面図(a)および側面図(b)である。
【図3】本発明で用いることができる結晶製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明の窒化物結晶の製造方法、およびそれに用いる結晶製造装置や部材について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
(本発明の製造方法の特徴)
本発明の窒化物結晶の製造方法は、反応容器に原料と第一溶媒を充填して密閉した後、該反応容器を耐圧性容器内に設置し、さらに該耐圧性容器の内壁と該反応容器の外壁の間の空隙に第二溶媒を充填して前記耐圧性容器を密閉した後、該反応容器中で超臨界および/または超亜臨界状態において結晶成長を行う窒化物結晶の製造方法である。その特徴は、下記の(1)および(2)の少なくとも一つを満たす点にある。
(1) 前記反応容器の内部短軸長(ID[C])と前記耐圧性容器の内部短軸長(ID[A])の比(ID[C]/ID[A])が0.60〜0.98である。
(2) 前記反応容器内の自由容積(IV)と前記耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙における自由容積(OV)の比(IV/OV)が0.20〜40である。
【0015】
(軸長の定義)
本発明の製造方法に用いる耐圧性容器と反応容器の形状は特に限定されず、円筒、多角柱状の筒などが挙げられるが、通常は耐圧性容器と反応容器の内部形状(密閉可能な内部空間部の形状)が円筒状であるものが用いられる。後述するように、断面は必ずしも円でなくてもよく、楕円形であっても、膨れや凹みや平坦面があってもよい。反応容器の外部形状(外観)は通常は円柱状であるが、断面は楕円形であっても、膨れや凹みや平坦面があってもよい。以下では、耐圧性容器の内部形状と反応容器の内部形状がいずれも円筒状であり、反応容器の外部形状が円柱状である典型的な態様を例にとって説明を行う。
【0016】
図1は反応容器の上面図(a)および側面図(b)である。図示するように、本発明における反応容器の内部短軸長(ID[C])は内部空間の直径である。また、反応容器の内部長軸長(IL[C])は内部空間の長軸方向の長さである。反応容器の内部空間が厳密な円筒状でなく、部分的な膨らみや凹みがある場合は、最大直径をもって反応容器の内部短軸長(ID[C])とし、軸方向の最大長をもって反応容器の内部長軸長(IL[C])とする。一方、本発明における反応容器の外部短軸長(OD[C])は外部形状における直径である。また、反応容器の外部長軸長(OL[C])は外部形状における長軸方向の長さである。反応容器の外部形状が厳密な円柱状でなく、部分的な膨らみや凹みがある場合は、最大直径をもって反応容器の外部短軸長(OD[C])とし、軸方向の最大長をもって反応容器の外部長軸長(OL[C])とする。
図2は耐圧性容器の上面図(a)および側面図(b)である。図示するように、本発明における耐圧性容器の内部短軸長(ID[A])は内部空間の直径である。また、耐圧性容器の内部長軸長(IL[A])は内部空間の軸方向の長さである。通常は耐圧性容器の内部空間に部分的な膨らみや凹みは存在しないが、仮に存在していた場合は最大直径をもって耐圧性容器の外部短軸長(OD[A])とし、軸方向の最大長をもって耐圧性容器の外部長軸長(OL[A])とする。
【0017】
(条件(1)および条件(2))
本発明の製造方法における条件(1)は、反応容器の内部短軸長(ID[C])と耐圧性容器の内部短軸長(ID[A])の比(ID[C]/ID[A])が0.60〜0.98であることを規定するものである。比の下限値は0.65以上であることが好ましく、0.75以上であることがより好ましく、0.80以上であることがさらに好ましい。また、比の上限値は0.95以下であることが好ましく、0.94以下であることがより好ましく、0.93以下であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明の製造方法における条件(2)は、反応容器内の自由容積(IV)と耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙における自由容積(OV)の比(IV/OV)が0.20〜40であることを規定するものである。反応容器内の自由容積(IV)とは、反応容器の内容積から反応容器内に設置した固体の容積を除いた容積を意味する。例えば、反応容器内に設置したバッフル板、シード支持枠、シード吊り下げ用ワイヤーなどの部材や、多結晶原料やシードといった反応容器内の設置物の総容積を除くことにより自由容積を求めることができる。耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙における自由容積(OV)とは、耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙内に設置した固体の容積を除いた容積を意味する。例えば、空隙内に設置した対流抑制部材などの設置物の総容積を除くことにより自由容積を求めることができる。
比(IV/OV)の下限値は0.30以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましく、0.50以上であることがさらに好ましい。また、比の上限値は30以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。
【0019】
通常、反応容器が変形することなどのリスクを考慮して、条件(1)の比の値と条件(2)の比の値を小さくすることが適当であると考えられていた。これに対して、本発明の製造方法にしたがって比の値を大きくすることによって、意外なことに反応容器の変形を小さく抑えることができるようになった。これによって、反応容器の変形により生じうる窒化物結晶へのダメージを回避することができるようになり、また、高品質な窒化物結晶が得られやすくなった。さらに、窒化物結晶の成長速度も速くすることが可能であり、また、反応容器を大きくして一度により多くの窒化物結晶を製造することも可能であることから、製造効率を上げることもできるようになった。また、反応容器の変形が抑えられることにより、使用後の反応容器の再利用が図りやすくなり、連続して窒化物結晶を製造する場合のコストを抑えることが可能になった。いかなる理論にも拘泥するものではないが、条件(1)や条件(2)の比を大きくすることによって反応容器の変形を小さく抑えることができるようになったのは、耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間に存在する空隙を小さくしたことによって反応容器内外の圧力バランスが維持しやすくなったためであると考えられる。また、高品質な窒化物結晶をより速い反応速度で製造できるようになったのは、耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間に存在する空隙を小さくしたことによって、反応容器内の温度制御をより緻密に行うことが可能になったためであると考えられる。
【0020】
条件(1)の比の値と条件(2)の比の値は、過度に大きくすると反応容器内外の圧力差により反応容器が外側に膨らんだときに耐圧性容器の内壁に接触してしまい、反応後に耐圧性容器から反応容器を取り出しにくくなるおそれが生じる。このため、条件(1)の比の値と条件(2)の比の値は、上記の上限値以下にしておくことが好ましい。
本発明では、条件(1)と条件(2)の少なくとも一方を満たすことが必要とされるが、両方とも満たすことが特に好ましい。
【0021】
(その他の好ましいサイズ)
条件(1)および条件(2)以外のサイズに関して、下記の好ましい範囲を採用することが望ましい。
反応容器の外部長軸長(OL[C])と耐圧性容器の内部長軸長(IL[A])の比(OL[C]/IL[A])は0.50以上であることが好ましく、0.60以上であることがより好ましく、0.65以上であることがさらに好ましい。また、比の上限値は0.97以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.93以下であることがさらに好ましい。比の値を好ましい範囲内にさらに設定することによって、本発明の効果を一段と得られやすくすることができる。
【0022】
反応容器の内部短軸長(ID[C])と反応容器の内部長軸長(IL[C])の比(IL[C]/ID[C])は5.0以上であることが好ましく、7.0以上であることがより好ましく、9.0以上であることがさらに好ましい。また、比の上限値は25以下であることが好ましく、23以下であることがより好ましく、21以下であることがさらに好ましい。比の値を好ましい範囲内にさらに設定することによって、原料溶解領域と結晶育成領域を適度に区分けして温度制御しやすくなり、窒化物結晶を一段と効率良く速やかに製造することが可能になる。
反応容器の外部長軸長(OL[C])と耐圧性容器の内部長軸長(IL[A])の差(IL[A]−OL[C])は10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましい。10mm以上にすれば、チューブを溶接などの手法で密封するための必要長さを確保しやすくなるため好ましい。上限値は、例えば300mm以下にすることができ、250mm以下にすることがより好ましく、200mm以下にすることがさらに好ましい。
【0023】
反応容器の内容積(V[C])と耐圧性容器の内容積(V[A])の比(V[C]/V[A])は0.20以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましく、0.50以上であることがさらに好ましい。また、比の上限値は0.95以下であることが好ましく、0.92以下であることがより好ましく、0.90以下であることがさらに好ましい。比の値を好ましい範囲内にさらに設定することによって、本発明の効果を一段と得られやすくすることができる。
【0024】
反応容器の肉厚は0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましい。また、肉厚の上限値は10.0mm以下であることが好ましく、7.0mm以下であることがより好ましく、5.0mm以下であることがさらに好ましい。反応容器の肉厚が0.1mm以上であれば、反応容器内外のわずかな圧力差によって反応容器が破損するのを防ぐことができ、反応容器の肉厚が10.0mm以下であれば反応容器外からの加熱や冷却に伴う熱伝導を速やかに行うことができるうえ、内部空間をより広く確保しやすいという利点がある。
【0025】
(対流抑制部材)
本発明の製造方法では、耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間の空隙に部材を設置することができる。その部材として、耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間に導入される第二溶媒の対流を抑制する対流抑制部材を設置することが特に好ましい。ここでいう対流抑制部材とは、本発明の製造方法にて行う加熱、冷却(放冷を含む)、温度維持の際に、耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間の空隙における第二溶媒の対流を阻害する機能を有する部材を意味する。典型的な対流抑制部材は、第二溶媒の対流経路の遮るように設置する部材である。例えば、1つ以上の貫通孔を有する板状体や網目構造を有する網状体を挙げることができる。また、糸状、帯状、シート状の部材を反応容器の外壁に巻きつけることにより、対流抑制部材としてもよい。本発明で用いる対流抑制部材は、反応容器の長軸方向における上下を仕切るように反応容器の長軸に垂直な方向に伸長する部材であってもよい。対流抑制部材の少なくとも一部は反応容器の外壁に接触していてもよいし、耐圧性容器の内壁に接触していてもよい。また、対流抑制部材の少なくとも一部は反応容器を保持する部材に接触しているか、前記反応容器を保持する部材に接続して連続体となっていてもよい。反応容器を保持する部材としては、反応容器全体を収容することができる管状や編目状のカゴを挙げることができ、例えばその外周に糸状、帯状、シート状の部材を巻きつけることにより対流抑制部材としてもよい。対流抑制部材は、耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間の空隙を横断する断面積の50%以上を遮蔽することが好ましく、60%以上を遮蔽することがより好ましく、70%以上を遮蔽することがさらに好ましい。上限値は、100%未満であり、98%以下を遮蔽することがより好ましく、96%以下を遮蔽することがさらに好ましい。
【0026】
本発明の製造方法では、反応容器内において主として原料を溶解する原料溶解領域の外側に存在する原料溶解外側領域と、主として窒化物結晶を育成する結晶育成領域の外側に存在する結晶育成外側領域との間の第二溶媒の対流を阻害するように対流抑制部材を設置することが好ましい。通常、反応容器内にはバッフル板を設置して内部空間を2つに区分けし、一方を原料溶解領域とし、他方を結晶育成領域とする。例えば図3に示す製造装置では、反応容器2内に設置されたバッフル板6により、バッフル板より下方の原料溶解領域とバッフル板より上方の結晶育成領域に区分される。原料溶解領域には原料5が装填され、結晶育成領域にはシード(種結晶)4が吊り下げられている。本発明における対流抑制部材を、反応容器内に設置されているバッフル板と同じ高さか近い高さに設置することにより、原料溶解外側領域と結晶育成外側領域との間の第二溶媒の対流を適度に阻害することができるようになる。
【0027】
このようにすることによって、反応容器内の原料溶解領域と結晶育成領域の温度制御をより精密に行うことができるようになる。反応容器内の温度制御は、通常は反応容器を入れた耐圧性容器の外側から側面をヒーター等の加熱手段により加熱することにより行う。このため、加熱手段の熱は耐圧性容器の側壁から空隙内の第二溶媒へ伝わり、さらに反応容器の側壁へ伝わって、反応容器内の内部空間へ伝わる。反応容器内の原料溶解領域と結晶育成領域の温度を違う温度に制御するためには、耐圧性容器の外側にも各領域に対応する位置に加熱手段をそれぞれ用意しておき、違う温度に加熱することが必要とされる。例えば、図3に示す反応装置を用いる場合は、原料域ヒーター12の温度を成長域ヒーター11の温度よりも高くして、反応容器内の原料溶解領域の温度を結晶育成領域の温度よりも高く制御することが行われる。このとき、空隙内に遮る部材が無ければ第二溶媒は温度差を解消する方向へ対流するため、空隙内で十分な温度差を確保できずに、反応容器内の原料溶解領域と結晶育成領域との間に所望の温度差をつけることが困難になる。本発明の対流抑制部材を適切な位置に設置すれば、第二溶媒の対流を適度に抑制することができるため、原料溶解外側領域の第二溶媒と結晶育成外側領域の第二溶媒を適度な温度差に維持し、それによって反応容器内の原料溶解領域と結晶育成領域との間に所望の温度差をつけることが容易になる。
【0028】
対流阻害部材の設置位置は、反応容器内のバッフル板の設置位置と同じ高さであってもよいし、上下に移動させた位置であってもよい。上下に移動させた位置に設置する場合は、対流阻害部材の設置位置と反応容器内のバッフル板の設置位置の高さの差が反応容器の外部長軸長の20%以内であることが好ましく、15%以内であることがより好ましく、10%以内であることがさらに好ましい。下方のヒーターを上方のヒーターよりも高温にしている場合は、対流抑制部材をバッフル板よりも上方に設置すれば、反応容器内のバッフル板近傍の温度を高めに制御することができる。逆に対流抑制部材をバッフル板よりも下方に設置すれば、反応容器内のバッフル板近傍の温度を低めに制御することができる。このように、対流抑制部材の設置位置により、反応容器内の温度分布をより緻密に制御して、育成される窒化物結晶の品質を向上させることが可能である。内部温度分布をより精密に制御することにより、成長速度のばらつきをより精密に制御することが可能である。これにより成長速度の分布、結晶寸法の分布を小さく抑えることができる。対流抑制部材は、2つ以上設置することも可能であり、例えば高さが異なる位置に設置することが可能である。具体的には、反応容器内のバッフル板よりも上方と下方にそれぞれ1つずつ設置する態様を挙げることができる。
【0029】
対流抑制部材を構成する材料は、第二溶媒に容易に溶解、腐食されない材料であれば特に限定されない。例えば、カーボン、グラファイト、ニッケル基合金、タンタル、タングステン、銀、チタン、ニオブ、アルミニウムを挙げることができる。本発明では、反応容器の取り扱いを容易にするために、反応容器よりも柔らかくて変形しやすい材料を採用することが好ましい。対流抑制部材を金属などの硬度が高くて変形し難い材料で形成した場合、対流抑制部材が耐圧性容器の内壁に接触して反応容器の出し入れが困難になる場合がある。また、運転中に反応容器が変形することがあると、対流抑制部材により反応容器が損傷を受ける可能性があると同時に対流抑制部材が耐圧性容器の内壁に強固に接触すれば反応容器の取出しが極めて困難となる。このため、対流抑制部材を構成する材料としては、カーボンやグラファイトなどの柔らかくて摩擦が小さい材料を採用することが好ましい。なお、比較的硬い材料であっても、薄く成形することによって変形しやすくしたうえで採用することが可能である。
【0030】
(反応容器)
上記のように、反応容器の断面形状は真円である必要はなく、一部に凹みあるいは平坦面があっても良い。通常反応容器内外での圧力バランスが崩れた場合、反応容器の変形により圧力バランスを取ることになる。反応容器内圧力が高い場合、反応容器が真円であると反応容器膨張は材料の伸びのみによるが、反応容器が真円からずれている場合、つまり楕円、一部平面、一部に凹みがあると、その部分が真円に戻る方向に変形すれば材料の伸びを伴わずに、反応容器体積を膨張させることができる。一方、反応容器内圧力が外部よりも低い場合、反応容器が潰れてバランスを取ることになるが、真円の場合はどこが潰れるか予想が困難である。真円からずれている場合、潰れる位置、方向を制御することが可能である。つまり、楕円であれば短辺方向がさらに潰れ、平面部分、凹み部分があればその部分が優先的に潰れる。従って、あらかじめ反応容器の一部あるいは全体を真円ではない形状に形成しておくことにより圧力バランスをより容易に取ることができると同時に、反応容器が潰れる方向に変形する場合、潰れる位置を制御することが可能となる。例えば、結晶育成領域が大きく潰れると内部の結晶を破損することがあるため、あらかじめ原料溶解領域に平坦部や凹み部を設けておくことにより、結晶成長部分の変形を抑制し結晶の損傷を防ぐことが可能となる。
【0031】
反応容器はアンモニア等の第一溶媒や鉱化剤などに対する耐食性に優れた材料からなることが必要であり、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Ta、TiおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属、または該金属を主成分とする合金からなることが好ましい。ここでいう該金属を主成分とする合金とは、合金におけるRh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Ta、TiおよびWの合計含有量が合金の全重量の50%以上であることを意味し、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上である。反応容器は、上記金属群のうち、少なくともIr,PtまたはTaを含むことが好ましく、少なくともIrまたはPtを含むことがより好ましい。中でも優れた耐食性を有するPtやPt−Ir合金を用いることが好ましい。Pt−Ir合金を用いる場合、Ir含有率は3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、また、30重量%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
【0032】
(耐圧性容器)
耐圧性容器は高温環境での強度に優れた材料からなることが必要であり、その内壁がNi又はCrを含む金属からなることが好ましい。
本発明で用いる耐圧性容器は、耐圧性と耐食性を有する材料で構成されているものが好ましく、特にアンモニア等の溶媒に対する耐食性に優れたNi系の合金、ステライト(デロロ・ステライト・カンパニー・インコーポレーテッドの登録商標)等のCo系合金を用いることが好ましい。より好ましくはNi系の合金であり、具体的には、Inconel625(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標、以下同じ)、Nimonic90(Nimonicはスペシャル メタルズ ウィギン リミテッドの登録商標、以下同じ)、RENE41(Teledyne Allvac, Incの登録商標)、Inconel718(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標)、ハステロイ(Haynes International, Incの登録商標)、ワスパロイ(United Technologies, Inc.の登録商標)が挙げられる。これらの合金の組成比率は、系内の溶媒の温度や圧力条件、および系内に含まれる鉱化剤およびそれらの反応物との反応性および/または酸化力・還元力、pHの条件に従い、適宜選択すればよい。反応容器と同等に耐圧性容器の耐食性をより向上させるために、優れた耐食性を有する貴金属を耐圧性容器の内表面にライニングまたはコーティングしてもよい。また、耐圧性容器の材質を貴金属とすることもできる。ここでいう貴金属としては、Pt、Au、Ir、Ru、Rh、Pd、Ag、およびこれらの貴金属を主成分とする合金が挙げられ、中でも優れた耐食性を有するPtやPt−Ir合金を用いることが好ましい。Pt−Ir合金を用いる場合、Ir含有率は3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、また、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0033】
本発明に用いる耐圧性容器は、反応容器の外側と内側の圧力差が小さくなるように調整するために、少なくとも1つ以上のバルブを有していてもよい。バルブの数は特に限定されないが、圧力調整を安全で効果的に実施するために2つ以上のバルブを有することが好ましい。また、バルブが配置される位置は特に限定されず、複数のバルブが直列に配置されてもよいし、並列に配置されていてもよい。圧力調整を安全で効果的に実施できることから、少なくとも2つのバルブが直列に配置されていることが好ましい。
【0034】
(第一溶媒)
反応容器内に入れる第一溶媒としては、アモノサーマル法に用いられる窒素を含有する溶媒を用いる。窒素を含有する溶媒としては、成長させる窒化物単結晶の安定性を損なうことのない溶媒が挙げられる。前記溶媒としては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、尿素、アミン類(例えば、メチルアミンのような第1級アミン、ジメチルアミンのような第二級アミン、トリメチルアミンのような第三級アミン、エチレンジアミンのようなジアミン)、メラミン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
溶媒に含まれる水や酸素の量はできるだけ少ないことが望ましく、これらの含有量は1000ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、0.1ppm以下であることがさらに好ましい。アンモニアを溶媒として用いる場合、その純度は通常99.9%以上であり、好ましくは99.99%以上であり、さらに好ましくは99.999%以上であり、特に好ましくは99.9999%以上である。
【0035】
(第二溶媒)
本発明で、耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間の空隙に充填される第二溶媒は、反応容器の内側と外側をほぼ等しい圧力にすることが可能な溶媒であればその種類は限定されない。そのような第二溶媒としては、例えば、アンモニア、水、アルコール、二酸化炭素などを用いることができる。反応容器の内側と外側の圧力差を小さくするためには、第二溶媒は、反応容器内の溶媒として用いられる第一溶媒と性質の近い(つまり内容積一定条件において充填率と温度−圧力の関係が第一溶媒の温度−圧力変化に近い)溶媒であることが好ましく、第一溶媒と同じ溶媒を用いることが好ましい。その理由は、性質の近い溶媒を用いると、原料の溶解析出によって結晶成長反応を行うために温度を上げたとき、特に昇温過程において、反応容器の内側と外側の圧力をほぼ同じに保つことが容易になるからである。特に好ましいのは、第一溶媒も第二溶媒もアンモニアである態様である。通常、反応容器の内側と外側には同質の溶媒を用い、空隙に対する充填率をそれぞれほぼ同じにすることが好ましい。より厳密には加熱炉のデザイン、耐圧性容器内の反応容器の配置などにより、反応容器内と反応容器外のアンモニアの温度が異なることがあるため、それぞれの温度に合わせて充填率を変化させ反応容器内と反応容器外との圧力がほぼ同じになるようにすることがより好ましい。
【0036】
耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間の空隙に充填される第二溶媒がアンモニアである場合、該アンモニアは原料等と直接触れることはないので、不純物等の物性に関しては特に問題とならないが、反応容器内のアンモニアと耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間の空隙に充填されるアンモニアの物理的な物性をほぼ等しくするためには、アンモニアに含まれる水や酸素の量をできるだけ少なくすることが望ましい。水と酸素の合計含有量は、好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下である。水や酸素量をできるだけ少なくすることは、耐圧性容器の腐食を抑制する観点からも有効である。
【0037】
(鉱化剤)
本発明では、一般にアモノサーマル法において用いられる鉱化剤を適宜選択して用いることができる。用いる鉱化剤は、塩基性鉱化剤であっても、酸性鉱化剤であってもよい。塩基性鉱化剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属と窒素原子を含む化合物で、アルカリ土類金属アミド、希土類アミド、窒化アルカリ金属、窒化アルカリ土類金属、アジド化合物、その他ヒドラジン類の塩が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属アミドで、具体例としてはナトリウムアミド(NaNH2)、カリウムアミド(KNH2)、リチウムアミド(LiNH2)が挙げられる。また、酸性鉱化剤としては、ハロゲン原子を含む化合物で、ハロゲン化アンモニウム等が挙げられる、例えば塩化アンモニウム(NH4Cl)、ヨウ化アンモニウム(NH4I)、臭化アンモニウム(NH4Br)、フッ化アンモニウム(NH4F)である。本発明では、ハロゲン化アンモニウムを含む酸性鉱化剤を用いることが好ましい。また、鉱化剤は1種を単独で用いてもよいし、複数種を適宜混合して用いてもよい。
【0038】
なお、前記結晶成長を行う際には、反応容器にハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化リン、ハロゲン化シリコン、ハロゲン化ゲルマニウム、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化ヒ素、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化ビスマスなどを存在させておいてもよい。
鉱化剤に含まれるハロゲン元素のアンモニアに対するモル濃度は0.1mol%以上とすることが好ましく、0.3mol%以上とすることがより好ましく、0.5mol%以上とすることがさらに好ましい。また、鉱化剤に含まれるハロゲン元素のアンモニアに対するモル濃度は30mol%以下とすることが好ましく、20mol%以下とすることがより好ましく、10mol%以下とすることがさらに好ましい。濃度が低すぎる場合、溶解度が低下し成長速度が低下する傾向がある。一方濃度が濃すぎる場合、溶解度が高くなりすぎて自発核発生が増加したり、過飽和度が大きくなりすぎたりするため制御が困難になるなどの傾向がある。
【0039】
(原料)
本発明の製造方法においては、成長させようとしている窒化物結晶を構成する元素を含む原料を用いる。例えばIII族窒化物結晶を製造する場合は、III族窒化物の多結晶原料及び/又はガリウムであり、より好ましくは窒化ガリウム及び/又はガリウムである。多結晶原料は、完全な窒化物である必要はなく、条件によってはIII族元素がメタルの状態(ゼロ価)である金属成分を含有してもよく、例えば、結晶が窒化ガリウムである場合には、窒化ガリウムと金属ガリウムの混合物が挙げられる。
【0040】
前記多結晶原料の製造方法は、特に制限されない。例えば、アンモニアガスを流通させた反応容器内で、金属又はその酸化物もしくは水酸化物をアンモニアと反応させることにより生成した窒化物多結晶を用いることができる。また、より反応性の高い金属化合物原料として、ハロゲン化物、アミド化合物、イミド化合物、ガラザンなどの共有結合性M−N結合を有する化合物などを用いることができる。さらに、Gaなどの金属を高温高圧で窒素と反応させて作製した窒化物多結晶を用いることもできる。
【0041】
本発明において原料として用いる多結晶原料に含まれる水や酸素の量は、少ないことが好ましい。多結晶原料中の酸素含有量は、通常10000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは1ppm以下である。多結晶原料への酸素の混入のしやすさは、水分との反応性又は吸収能と関係がある。多結晶原料の結晶性が悪いほど表面にNH基などの活性基が多く存在し、それが水と反応して一部酸化物や水酸化物が生成する可能性がある。このため、多結晶原料としては、通常、できるだけ結晶性が高い物を使用することが好ましい。結晶性は粉末X線回折の半値幅で見積もることができ、(100)の回折線(ヘキサゴナル型窒化ガリウムでは2θ=約32.5°)の半値幅が、通常0.25°以下、好ましくは0.20°以下、さらに好ましくは0.17°以下である。
【0042】
(育成手順)
アモノサーマル法による窒化物結晶の育成手順について説明する。まず、反応容器内に、シード、窒素を含有する溶媒、原料、及び鉱化剤を入れて封止する。これらを反応容器内に導入するのに先だって、反応容器内は脱気しておいてもよい。また、材料の導入時には、窒素ガスなどの不活性ガスを流通させてもよい。反応容器内へのシードの装填は、通常は、原料及び鉱化剤を充填する際に同時又は充填後に装填する。シードは、反応容器内表面を構成する貴金属と同様の貴金属製の治具に固定することが好ましい。装填後には、必要に応じて加熱脱気をしてもよい。
図3に示す製造装置を用いる場合は、反応容器(カプセル)2内にシード、窒素を含有する溶媒、原料、及び鉱化剤を入れて封止した後に、反応容器2を耐圧性容器(オートクレーブ)1内に装填し、好ましくは耐圧性容器の内壁と反応容器の外壁の間の空隙に第二溶媒を充填して耐圧性容器を密閉する。
【0043】
その後、全体を加熱して反応容器内を超臨界状態および/または亜臨界状態とする。超臨界状態では一般的には、粘度が低く、液体よりも容易に拡散されるが、液体と同様の溶媒和力を有する。亜臨界状態とは、臨界温度近傍で臨界密度とほぼ等しい密度を有する液体の状態を意味する。例えば、原料溶解領域では、超臨界状態として原料を溶解し、結晶育成領域では亜臨界状態となるように温度を変化させて超臨界状態と亜臨界状態の原料の溶解度差を利用した結晶成長も可能である。
超臨界状態にする場合、反応混合物は、一般に溶媒の臨界点よりも高い温度に保持する。アンモニアを溶媒として用いた場合、臨界点は臨界温度132℃、臨界圧力11.35MPaであるが、反応容器の容積に対する充填率が高ければ、臨界温度以下の温度でも圧力は臨界圧力を遥かに越える。本発明において「超臨界状態」とは、このような臨界圧力を越えた状態を含む。反応混合物は、一定の容積の反応容器内に封入されているので、温度上昇は流体の圧力を増大させる。一般に、T>Tc(1つの溶媒の臨界温度)及びP>Pc(1つの溶媒の臨界圧力)であれば、流体は超臨界状態にある。
【0044】
超臨界条件では、窒化物結晶の十分な成長速度が得られる。反応時間は、特に鉱化剤の反応性及び熱力学的パラメータ、すなわち温度及び圧力の数値に依存する。窒化物結晶の合成中あるいは成長中、反応容器内の圧力は120MPa以上にすることが好ましく、150MPa以上にすることがより好ましく、180MPa以上にすることがさらに好ましい。また、反応容器内の圧力は700MPa以下にすることが好ましく、500MPa以下にすることがより好ましく、350MPa以下にすることがさらに好ましく、300MPa以下にすることが特に好ましい。圧力は、温度及び反応容器の容積に対する溶媒体積の充填率によって適宜決定される。本来、反応容器内の圧力は、温度と充填率によって一義的に決まるものではあるが、実際には、原料、鉱化剤などの添加物、反応容器内の温度の不均一性、及び自由容積の存在によって多少異なる。
【0045】
反応容器内の温度範囲は、下限値が500℃以上であることが好ましく、515℃以上であることがより好ましく、530℃以上であることがさらに好ましい。上限値は、700℃以下であることが好ましく、650℃以下であることがより好ましく、630℃以下であることがさらに好ましい。本発明の窒化物結晶の製造方法では、反応容器内における原料溶解領域の温度が、結晶育成領域の温度よりも高いことが好ましい。温度差(|ΔT|)は、結晶品質の維持と自発核発生結晶の制御の観点から、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、60℃以下が特に好ましい。反応容器内の最適な温度や圧力は、結晶成長の際に用いる鉱化剤や添加剤の種類や使用量等によって、適宜決定することができる。
【0046】
前記の反応容器内の温度範囲、圧力範囲を達成するための反応容器への溶媒の注入割合、すなわち充填率は、反応容器内の自由容積、すなわち、反応容器に多結晶原料、及びシードを用いる場合には、シードとそれを設置する構造物の体積を反応容器の容積から差し引いて残存する容積、またバッフル板を設置する場合には、さらにそのバッフル板の体積を反応容器の容積から差し引いて残存する容積の溶媒の沸点における液体密度を基準として、通常20〜95%、好ましくは30〜80%、さらに好ましくは40〜70%とする。
反応容器内での窒化物結晶の成長は、熱電対を有する電気炉などを用いて反応容器を加熱昇温することにより、反応容器内をアンモニア等の溶媒の亜臨界状態および/または超臨界状態に保持することにより行われる。加熱の方法、所定の反応温度への昇温速度については特に限定されないが、通常、数時間から数日かけて行われる。必要に応じて、多段の昇温を行ったり、温度域において昇温スピードを変えたりすることもできる。また、部分的に冷却しながら加熱したりすることもできる。
【0047】
なお、前記の「反応温度」は、反応容器の外面に接するように設けられた熱電対、及び/又は外表面から一定の深さの穴に差し込まれた熱電対によって測定され、反応容器の内部温度へ換算して推定することができる。これら熱電対で測定された温度の平均値をもって平均温度とする。通常は、原料溶解領域の温度と結晶育成領域の温度の平均値を平均温度とする。
所定の温度に達した後の反応時間については、窒化物結晶の種類、用いる原料、鉱化剤の種類、製造する結晶の大きさや量によっても異なるが、通常、数時間から数百日とすることができる。反応中、反応温度は一定にしてもよいし、徐々に昇温又は降温させることもできる。所望の結晶を生成させるための反応時間を経た後、降温させる。降温方法は特に限定されないが、ヒーターの加熱を停止してそのまま炉内に反応容器を設置したまま放冷してもかまわないし、反応容器を電気炉から取り外して空冷してもかまわない。必要であれば、冷媒を用いて急冷することも好適に用いられる。
【0048】
反応容器外面の温度、あるいは推定される反応容器内部の温度が所定温度以下になった後、反応容器を開栓する。このときの所定温度は特に限定はなく、通常、−80℃〜200℃、好ましくは−33℃〜100℃である。ここで、反応容器に付属したバルブの配管接続口に配管を接続し、水などを満たした容器に通じておき、バルブを開けてもよい。さらに必要に応じて、真空状態にするなどして反応容器内のアンモニア溶媒を十分に除去した後、乾燥し、反応容器の蓋等を開けて生成した窒化物結晶及び未反応の原料や鉱化剤等の添加物を取り出すことができる。
なお、本発明の窒化物結晶の製造方法にしたがって窒化ガリウムを製造する場合、前記以外の材料、製造条件、製造装置、工程の詳細については特開2009−263229号公報を好ましく参照することができる。該公開公報の開示全体を本明細書に引用して援用する。
【0049】
(窒化物結晶)
本発明の結晶製造方法で製造する結晶は窒化物結晶であれば特に限定されないが、例えばIII族窒化物結晶が好ましく、中でも窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムやこれらの混晶などがより好ましい。本明細書においては、窒化ガリウム(GaN)を例として説明するが、本発明の製造方法はこれに限られるものではない。
本発明の製造方法によれば、不純物濃度が低くて、結晶性が高い窒化物結晶を製造することが可能である。また、このような高品質な窒化物結晶を速い反応速度で効率良く製造することが可能である。
【実施例】
【0050】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0051】
<実施例1>
図3に示す結晶製造装置を用いてアモノサーマル法にてGaN結晶の製造を行った。ここでは、内寸が直径30mm(内部短軸長ID[A])、長さが450mm(内部長軸長IL[A])の円柱状内部空間を有するRENE41製オートレーブ1を耐圧性容器として使用し、内寸が直径25mm(内部短軸長ID[C])、長さが350mm(内部長軸長IL[C])、肉厚が0.5mmのPt−Ir合金製の筒状容器を反応容器2として使用した。
十分に乾燥した窒素雰囲気グローブボックス内にて多結晶GaN粒子140gを秤量し、反応容器の下部領域(原料溶解領域)内に原料5として設置した。さらに下部の原料溶解領域と上部の結晶育成領域の間に白金製のバッフル板6を設置した。シード4としてHVPE法により成長した六方晶系GaN単結晶(10mmx20mmx0.3mm)3枚を用いた。これらシード4を直径0.2mmの白金ワイヤーにより白金製シード支持枠に吊るし、反応容器上部の結晶育成領域に設置した。真空ポンプを用いて反応容器内を真空脱気して、反応容器内を窒素ガスにて5回パージした後、鉱化剤としてヨウ化アンモニウムをアンモニアに対する濃度が1mol%になるように充填した。また、フッ化ガリウムをアンモニアに対する濃度が1mol%になるように充填した。次にNH3を反応容器の有効容積の約55%に相当する液体としてドライアイスエタノールで冷却しながら充填(−33℃のNH3密度で換算)した後、反応容器を密封した。密封した状態の反応容器全体の外径は26mm(外部短軸長OD[C])、長さは351mm(外部長軸長OL[C])であった。なお、ここでいう反応容器の長さは、反応容器に取り付けられている溶媒充填用チューブを除く長さである。
【0052】
その後、反応容器2をオートクレーブ1内に挿入した。このとき、直径29.5mm、厚み25mmの円盤状部材の中央部に、反応容器の外部短軸長(OD[C])と同じ直径を有する円形貫通孔を有するグラファイト製対流抑制部材を用意し、その中央部の円形貫通孔に反応容器2を挿通した状態でオートクレーブ1内に設置した。反応容器2の外表面に接している対流抑制部材7の設置位置は、反応容器2内のバッフル板6の設置位置よりも反応容器の長軸方向(上下方向)に12mm下方(バッフル位置と対流制御部材の中央部との距離)となるようにした。対流抑制部材7によって、オートクレーブの内壁と反応容器の外壁の間の空隙を横断する断面積の86%が遮蔽された。オートクレーブ1内に、反応容器2と対流抑制部材7を設置した後に、オートクレーブ蓋3をした。
オートクレーブ内を真空脱気して窒素ガスパージを複数回行った後、第二溶媒としてNH3をオートクレーブ内に充填した。このとき、NH3をオートクレーブの内壁と反応容器の外壁の間の空隙の56.5%に相当する液体としてドライアイスエタノールで冷却しながら充填(−33℃のNH3密度で換算)した。
【0053】
続いてオートクレーブ1を上下に2分割されたヒーター11,12で構成された電気炉内に収納した。熱電対16および熱電対17でオートクレーブ外表面温度を測定し原料溶解領域温度が結晶成長領域温度よりも高くなるように設定し、平均温度が615℃まで昇温した。設定温度に達した後、その温度にて11日間保持した。オートクレーブ内の圧力は210MPaであった。
その後室温まで自然冷却した。オートクレーブ内のアンモニアを放出した後に、オートクレーブの蓋を開けて反応容器を取り出した。その結果、反応容器の変形はほとんど認められず、再利用に問題がない状態であった。反応容器の変形率としては、結晶成長前の反応容器の体積(内容積)よりも0.7%収縮していた。
得られたGaN結晶の状態を確認したところ、成長速度のばらつきは6%であることが確認された。ここでいう成長速度のばらつきとは、各結晶の厚みノギスにて計測し一日あたりの成長速度を求め最大値と最小値の差することにより求めたものである。また、得られたGaN結晶はクラック等のマクロな欠陥が見られず、(10−10)面のX線ロッキングカーブが50秒以下であり、高品質であった。
【0054】
<実施例4、9>
表1に記載されるように条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして結晶成長を行った。その結果、実施例1と同様に反応容器の変形はほとんど認められず、高品質なGaN結晶が得られた。
【0055】
<実施例2、3、5〜8および比較例1、2>
表1に記載されるように条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして結晶成長を行う。その結果、実施例2、3および8では、比較例1〜5よりも高品質なGaN結晶が得られる。比較例1〜2では反応容器の変形が大きかったが、実施例3の変形は明らかに小さく、また実施例2、5〜7の変形は上記実施例1、4および9と同様にほとんど認められない。
【0056】
なお、表1における結晶成長速度低下率は、実施例1の結晶成長速度に比べた低下率を示す。また、表1における窒化物結晶製造後の反応容器変形の評価基準は以下のとおりである。
◎: ほとんど変形なし
○: 若干の変形が認められる
△: 明らかな変形が認められるが破損はしていない
×: 破損している
【0057】
【表1】


【符号の説明】
【0058】
1 耐圧性容器(オートクレーブ)
2 反応容器
3 オートクレーブ蓋
4 シード
5 原料
6 バッフル板
7 対流抑制部材
8 圧力センサー
9a 第一バルブ
9b 第二バルブ
10 保温材
11 結晶育成領域(成長域)ヒーター
12 原料溶解領域(原料域)ヒーター
13 導管
14 排気管
15 マスフローメーター
16 熱電対1
17 熱電対2
18 破裂板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に原料と第一溶媒とを充填して密閉した後、該反応容器を耐圧性容器内に設置し、さらに該耐圧性容器の内壁と該反応容器の外壁の間の空隙に第二溶媒を充填して前記耐圧性容器を密閉した後、該反応容器中で超臨界および/または超亜臨界状態において結晶成長を行う窒化物結晶の製造方法であって、下記の(1)および(2)の少なくとも一つを満たすことを特徴とする窒化物結晶の製造方法。
(1) 前記反応容器の内部短軸長(ID[C])と、前記耐圧性容器の内部短軸長(ID[A])との比(ID[C]/ID[A])が0.60〜0.98である。
(2) 前記反応容器内の自由容積(IV)と、前記耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙における自由容積(OV)との比(IV/OV)が0.20〜40である。
【請求項2】
前記反応容器の外部長軸長(OL[C])と、前記耐圧性容器の内部長軸長(IL[A])との比(OL[C]/IL[A])が0.50〜0.97である、請求項1に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項3】
前記反応容器の外部短軸長(OD[C])と、前記耐圧性容器の内部短軸長(ID[A])との差(ID[A]−OD[C])が1mm以上である、請求項1または2に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項4】
前記反応容器の内部短軸長(ID[C])と、前記反応容器の内部長軸長(IL[C])との比(IL[C]/ID[C])が5.0〜25である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項5】
前記反応容器の外部長軸長(OL[C])と、前記耐圧性容器の内部長軸長(IL[A])との差(IL[A]−OL[C])が10mm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項6】
前記反応容器の内容積(V[C])と、前記耐圧性容器の内容積(V[A])との比(V[C]/V[A])が0.20〜0.95である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項7】
第二溶媒の対流を抑制する対流抑制部材を、前記耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙に設置する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項8】
前記対流抑制部材は、前記反応容器の長軸に垂直な方向に伸長する部材である、請求項7に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項9】
前記対流抑制部材は、前記耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙を横断する断面積の50%以上100%未満を遮蔽する、請求項7または8に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項10】
前記対流抑制部材の少なくとも一部が前記反応容器の外壁に接触している、請求項7〜9のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項11】
前記対流抑制部材の少なくとも一部が、前記反応容器を保持する部材に接触しているか、前記反応容器を保持する部材に接続して連続体となっている、請求項7〜10のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項12】
前記対流抑制部材が前記反応容器よりも変形しやすい部材である、請求項7〜11のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項13】
前記対流抑制部材が前記反応容器の長軸方向の異なる位置に2個以上設置されている、請求項7〜12のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項14】
前記反応容器内にバッフル板が設置されており、前記バッフル板の設置位置と前記耐圧性容器の内壁と前記反応容器の外壁の間の空隙に設置された対流抑制部材の設置位置との前記反応容器の長軸方向におけるずれが、前記反応容器の外部長軸長の20%以内である、請求項7〜13のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項15】
前記対流抑制部材がカーボンおよびグラファイトの少なくとも一方で構成されている、請求項7〜14のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項16】
前記反応容器の少なくとも一部が平面領域および凹み領域の少なくとも一方を有する請求項1〜15のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−60360(P2013−60360A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−195149(P2012−195149)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】