説明

立体映像撮像用シャッタおよび立体映像撮像装置

【課題】クロストークの発生を排除しつつ、光量を確保するとともに、映像における光量の偏りを最小限に抑える。
【解決手段】立体映像撮像用シャッタ200は、円板で形成され、2つの光路のうちの一方を通過した光束を反射させて撮像素子へ導く反射部と、2つの光路のうちの他方を通過した光束を通過させて撮像素子へ導く通過部とを有した光束選択部202と、光束選択部を回転させる第1回転制御部250と、略平行に配された2枚の円板で形成され、光束選択部が反射または通過させた2つの光束を通過させるための開口部を有した1組の回転体206と、光束が通過する部分における2つの開口部の移動方向が互いに逆方向となるように、回転体を同一の回転角速度で回転させる第2回転制御部252とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像を生成するための立体映像撮像用シャッタおよび立体映像撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子シャッタ式眼鏡や偏光眼鏡等を用い、水平視差のある2つの映像のうち一方の映像を左眼に、他方の映像を右眼に視認させることで、ユーザ(観察者)に対して、あたかもオブジェクトが立体的に存在するように知覚させる立体映像の技術が、映画やテレビジョン放送等様々な映像技術に採用されている。
【0003】
このような立体映像を生成するための技術として、左右2系統の光路中にそれぞれ個別に液晶シャッタを配置し、液晶シャッタを通過した光束を1つの三角プリズムで撮像素子の方向に反射させ、1つの撮像素子を通して水平視差のある左右2つの映像を交互に撮像する立体映像撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1)。このような立体映像撮像装置は、2つの液晶シャッタを開状態と閉状態とに時分割で交互に切り換えることで、1つの撮像素子を通して水平視差のある左右2つの映像を撮像することができる。
【0004】
しかし、液晶シャッタは、開状態であってもその透過率は30%程度と低く、映像に必要な光量を十分に確保することが困難であり、撮像映像が暗くなったり、F値が低下したりする等の問題を有していた。また、液晶シャッタは、閉状態であっても完全に遮光することができず、また開状態と閉状態との切り換えに時間を要する(応答速度が遅い)といった問題がある。このため、液晶シャッタを利用して立体映像を生成した場合、一方の光路を通じて取得した映像に他方の光路を通じて取得した映像が混入する、所謂クロストークが生じることがあった。
【0005】
そこで、液晶シャッタに代え、撮像素子に対して三角プリズムの前段に機械式シャッタを設ければ、液晶シャッタに比べて十分な光量を確保しつつ、クロストークの発生を抑制できると考えられる。
【0006】
一方、三角プリズムは、当該三角プリズムに入射した光束の光量を50%に低減してしまう、すなわち三角プリズムが50%開口した絞りとして機能してしまうため、左右2系統の光束をそれぞれ三角プリズムで屈折させると、それぞれの光量が50%になってしまうという問題を有する。したがって、機械式シャッタを採用したとしても、三角プリズムを採用する場合、三角プリズムにおける光量の低減を回避することはできない。
【0007】
そこで、シャッタと三角プリズムに代えて、一方の半円に該当する部分が反射部材で、他方の半円に該当する部分が光透過部材で構成された円板を設け、この円板を回転させ、光束を反射または通過させる技術が開示されている(例えば、特許文献2)。かかる技術は、液晶シャッタと比較してクロストークの度合いは大きいものの、クロストークが発生した期間の映像を利用しなければ、液晶シャッタを用いた場合に比べて十分な光量が確保でき、三角プリズムを用いた場合に比べて光量の低減を回避することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−19663号公報
【特許文献2】特開2003−5312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した特許文献2に記載された技術では、円板が光束を撮像素子に導く状態(以下、導光状態と称する)から円板が光束を撮像素子に導かない状態(以下、遮光状態と称する)に移行するとき、反射部材と光透過部材の直線状の境界(反射部材の端部)で徐々に光束を遮っていくこととなる。光束はある程度の面積を有するため、特許文献2に記載された技術で光束を任意の方向から順次遮光していくと、遮光面の上下や左右で光量に偏りが生じてしまい、その光束を通じて得られた映像においても光量に偏りが生じてしまう。遮光状態から導光状態に移行する場合も同様に映像における光量の偏りが生じてしまう。
【0010】
そこで本発明は、クロストークの発生を排除しつつ、光量を確保するとともに、映像における光量の偏りを最小限に抑えることが可能な、立体映像撮像用シャッタおよび立体映像撮像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の立体映像撮像用シャッタ(200)は、2つの光路を通過した光束を交互に入射する立体映像撮像用シャッタであって、円板で形成され、前記2つの光路のうちの一方を通過した光束を反射させて撮像素子(158)へ導く反射部(202a)と、前記2つの光路のうちの他方を通過した光束を通過させて前記撮像素子へ導く通過部(202b)とを有した光束選択部(202)と、前記光束選択部を回転させる第1回転制御部(250)と、略平行に配された2枚の円板で形成され、前記光束選択部が反射または通過させた2つの光束を通過させるための開口部(300)を有した1組の回転体(206)と、前記光束が通過する部分における2つの前記開口部の移動方向が互いに逆方向となるように、前記回転体を同一の回転角速度で回転させる第2回転制御部(252)とを備えることを特徴とする。
【0012】
前記回転体の前記開口部の円周方向における端部形状は、半径方向の開口長さが漸減するように形成されてもよい。
【0013】
前記回転体の前記開口部の円周方向における端部形状は、略二等辺三角形に形成されてもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の立体映像撮像装置(100)は、2つの光路にそれぞれ配され、前記2つの光路を通過した光束を屈折させる2つの光束屈折部(150)と、前記光束屈折部を通過した光束を受光して映像データを生成する撮像素子(158)と、円板で形成され、前記2つの光路のうちの一方を通過し前記光束屈折部によって屈折した光束を反射させて前記撮像素子へ導く反射部(202a)と、前記2つの光路のうちの他方を通過した光束を通過させて前記撮像素子へ導く通過部(202b)とを有した光束選択部(202)と、前記光束選択部を回転させる第1回転制御部(250)と、略平行に配された2枚の円板で形成され、前記光束選択部が反射または通過させた2つの光束を通過させるための開口部(300)を有した1組の回転体(206)と、前記光束が通過する部分における2つの前記開口部の移動方向が互いに逆方向となるように、前記回転体を同一の回転角速度で回転させる第2回転制御部(252)と、前記撮像素子が生成した映像データのうち、前記光束選択部の反射部が反射させた光束を受光して生成された映像データ、または、前記光束選択部の通過部が通過させた光束を受光して生成された映像データのいずれか一方について、反転処理を行う反転処理部(256)とを備えることを特徴とする。
【0015】
前記開口部は、前記撮像素子が光電変換を行う時間分、遮光状態になるように形成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、クロストークの発生を排除しつつ、光量を確保するとともに、映像における光量の偏りを最小限に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】三角プリズムで反射される光束を説明するための説明図である。
【図2】立体映像撮像装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図3】光束選択部を説明するための説明図である。
【図4】光束選択部の軌跡を説明するための説明図である。
【図5】回転体の具体的な構成を説明するための説明図である。
【図6】回転体の他の設置例を説明するための説明図である。
【図7】回転体の開状態と閉状態とを説明するための説明図である。
【図8】立体映像撮像用シャッタの開閉動作と、撮像素子面の光量の変化を説明するための説明図である。
【図9】グローバルシャッタ方式の撮像素子の処理を説明するための説明図である。
【図10】ローリングシャッタ方式の撮像素子の処理を説明するための説明図である。
【図11】ローリングシャッタ方式の撮像素子の処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、三角プリズム10で反射される光束を説明するための説明図である。図1では、左眼用の撮像系を通過した光束(左光束)を例に挙げて説明する。なお、図1中、左光束をLF1、LF2で示し、撮像素子16の中心をOで示す。図1に示すように、左光束LF1、LF2は、光束屈折部12で屈折され、三角プリズム10で屈折され、さらに後方レンズ系14で集光されて撮像素子16に入射する。実際には、光束屈折部12で反射される光束は、様々な角度から光束屈折部12に入射されるため、光束屈折部12で反射される光束のうち約50%の光量は、三角プリズム10で低減されてしまう。したがって、三角プリズムを利用した光学系では、光束屈折部に入射する光束の光量と比較して、撮像素子に入射する光束の光量が50%になってしまうという問題があった。
【0020】
そこで、本実施形態では、三角プリズムに代えて、反射部材を含んで構成されるシャッタとしての立体映像撮像用シャッタを採用することで、光量の低減を回避することができ、映像における光量の偏りを最小限に抑えることが可能な立体映像撮像装置を提供することを目的とする。
【0021】
(立体映像撮像装置100)
図2は、立体映像撮像装置100の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図2において、撮像部104は、上面から見た図を示し、光束を破線で、データの流れを実線で、制御信号の流れを一点鎖線でそれぞれ示す。図2に示すように、立体映像撮像装置100は、操作部102と、撮像部104と、保持部106と、表示部108と、中央制御部110とを含んで構成される。
【0022】
図2に示す例では、立体映像撮像装置100において、第1光束屈折部150aが配置される経路を通過する光束RLFによって右の光路が形成され、第1光束屈折部150bが配置される経路を通過する光束LLFによって左の光路が形成される。
【0023】
操作部102は、レリーズスイッチを含む操作キー、十字キー、ジョイスティック、後述する表示部108の表示面に重畳されたタッチパネル等を含んで構成され、ユーザの操作入力を受け付ける。
【0024】
撮像部104は、後述する撮像制御部254の制御指令に応じて、映像データを生成し、その映像データを後述する保持部106に出力する。撮像部104の具体的な構成については、後に詳述する。
【0025】
保持部106は、RAM、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体で構成され、中央制御部110の制御指令に応じて、撮像部104が生成した映像データを保持する。
【0026】
表示部108は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成され、中央制御部110の制御指令に応じて、保持部106に保持された映像データに基づく映像や、撮像中の映像等を表示する。
【0027】
中央制御部110は、中央処理装置(CPU)、中央制御部110を動作するためのプログラム等を格納したROM、一時的なデータ保存およびワークエリアとして利用されるRAM等を含む半導体集積回路で構成され、保持部106や他の電子回路と協働して立体映像撮像装置100全体を管理および制御する。また、中央制御部110は、第1回転制御部250、第2回転制御部252、撮像制御部254、反転処理部256としても機能する。
【0028】
第1回転制御部250は、後述する立体映像撮像用シャッタ200の構成要素の1つであり、後述する第1モータ204を制御して光束選択部202を回転させる。第2回転制御部252は、立体映像撮像用シャッタ200の構成要素の1つであり、後述する第2モータ208(図2中、208a、208bで示す)を制御して1組の回転体206(各回転体は206a、206bで示す)を回転させる。撮像制御部254は、操作部102の操作入力に応じて撮像部104を制御する。反転処理部256は、撮像素子158が生成した映像データについて反転処理を行う。第1回転制御部250、第2回転制御部252、撮像制御部254、反転処理部256の具体的な処理については、後に詳述する。
【0029】
ここで、上述した撮像部104の構成を具体的に説明すると、図2に示すように撮像部104は、第1光束屈折部150(図2中、右第1光束屈折部150a、左第1光束屈折部150bで示す)と、集光レンズ152(図2中、右集光レンズ152a、左集光レンズ152bで示す)と、第2光束屈折部154と、後方レンズ系156と、撮像素子158と、駆動回路160と、立体映像撮像用シャッタ200とを含んで構成される。
【0030】
第1光束屈折部150は、ミラー、プリズム等で構成され、右第1光束屈折部150aは右の光路に、左第1光束屈折部150bは左の光路にそれぞれ配される。右第1光束屈折部150aは、右の光路を通過した光束RLF(以下、単に右光束RLFと称する)を右集光レンズ152aの方向に屈折させ、左第1光束屈折部150bは、左の光路を通過した光束LLF(以下、単に左光束LLFと称する)を左集光レンズ152bの方向に屈折させる。なお、本実施形態の立体映像撮像装置100における、右の撮像系(視野)と左の撮像系(視野)とは、人間の右の眼と左の眼との幅に略等しい間隔で略平行の関係となるようにしているが、装置の設計条件によって、右の撮像系と左の撮像系との間隔は、人間の右の眼と左の眼との幅よりも広くても狭くてもよい。
【0031】
集光レンズ152は、負の屈折力を有する、例えば凹レンズで構成され、右集光レンズ152aは、右第1光束屈折部150aによって屈折した右光束RLFを集光し、左集光レンズ152bは、左第1光束屈折部150bによって屈折した左光束LLFを集光する。
【0032】
第2光束屈折部154は、右集光レンズ152aで集光された右光束RLFの中心(光軸)と、左集光レンズ152bで集光された左光束LLFの中心(光軸)とが一致するように、後方レンズ系156の方向に屈折させる。
【0033】
後方レンズ系156は、焦点調整に用いられるフォーカスレンズ、露光調整に用いられる絞り(アイリス)、撮像対象の拡大および縮小に用いられるズームレンズ等を含んで構成され、第2光束屈折部154から入射された光束を撮像素子158に結像させる。
【0034】
撮像素子158は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等で構成され、後方レンズ系156から入射された光束を受光し、光電変換(A/D変換)して映像データを生成する。本実施形態において撮像素子158は、立体映像撮像用シャッタ200を通過した右光束RLFと左光束LLFとを時分割で交互に、映像信号に光電変換する。したがって、映像データは、水平視差のある右左2つの映像データが交互に配されたものとなる。
【0035】
駆動回路160は、撮像制御部254の制御指令に応じて、後方レンズ系156を構成する各レンズを駆動させる。
【0036】
(立体映像撮像用シャッタ200)
図2に示すように、立体映像撮像用シャッタ200は、光束選択部202と、1組の回転体206と、第1回転制御部250と、第2回転制御部252とを含んで構成される。
【0037】
光束選択部202は、集光レンズ152と第2光束屈折部154との間に配され、第1回転制御部250の制御指令に応じて、一方の集光レンズ152から第2光束屈折部154への光束の反射と、他方の集光レンズ152から第2光束屈折部154への光束の通過を時分割で交互に切り換える。本実施形態では、光束選択部202が右光束RLFを第2光束屈折部154の方向に反射し、左光束LLFを第2光束屈折部154の方向に通過させる構成を例に挙げて説明するが、左右の関係を逆とし光束選択部202が左光束LLFを第2光束屈折部154の方向に反射し、右光束RLFを第2光束屈折部154の方向に通過させる構成を採用してもよい。
【0038】
以下、光束選択部202が第2光束屈折部154へ光束を反射または通過させる状態を導光状態とし、第2光束屈折部154への光束の反射または通過を遮断する状態を遮光状態とする。
【0039】
図3は、光束選択部202を説明するための説明図であり、図3(a)に、光束選択部202を右集光レンズ152a側から見た図を、図3(b)に、光束選択部202を左集光レンズ152b側から見た図を、図3(c)、(d)に、光束の動きを説明するための説明図を、図3(e)に、光束選択部202が左光束LLFを遮光するときの様子を説明するための説明図を示す。ここで、図3(e)は、光束選択部202が左光束LLFを遮光状態にする場合を例に挙げて説明している。なお、図3中、右光束RLFを破線で、左光束LLFを一点鎖線で示す。
【0040】
図3(a)、(b)に示すように、光束選択部202は、円板で形成され、一方の半円に該当する部分に右光束RLFを反射させて第2光束屈折部154へ導く反射部202a(図3(a)中、グレーの塗りつぶしで示す)を有し、他方の半円に該当する部分に左光束LLFを通過させて第2光束屈折部154へ導く通過部202bを有している。また、図3(b)に示すように、反射部202aの裏面には、光束を透過させないような処理を施した遮断部202cが配されている。光束選択部202は、光束選択部202に接続された第1モータ204の駆動によって回転する。
【0041】
したがって、光束選択部202が回転して、図3(c)に示すように、右光束RLFと左光束LLFとが交差する箇所Qに反射部202aが移動すると、右光束RLFは反射部202aによって反射して第2光束屈折部154に到達する。一方、左光束LLFは反射部202aの裏面に配された遮断部202cによって遮断され、第2光束屈折部154には到達しない。
【0042】
また、光束選択部202が回転して、図3(d)に示すように、右光束RLFと左光束LLFとが交差する箇所Qに通過部202bが移動すると、右光束RLFは通過部202bを通過して、反射部202aが配される面を基準として第2光束屈折部154と対向する方向に到達するため第2光束屈折部154には到達しない。一方、左光束LLFは通過部202bを通過して第2光束屈折部154に到達する。このように、光束選択部202は、反射させることで一方の光束を第2光束屈折部154に到達させ、通過させることで他方の光束を第2光束屈折部154に到達させるので、右光束RLFと左光束LLFとで、光束選択部202から後方レンズ系156までの光学的な距離を等しくすることができる。
【0043】
つまり、右光束RLFと左光束LLFとが交差する箇所Qに反射部202aが位置している状態(通過部202bが位置していない状態)が、右光束RLFに関して導光状態であり、左光束LLFに関して遮光状態であり、右光束RLFと左光束LLFとが交差する箇所Qに通過部202bが位置している状態(反射部202aが位置していない状態)が、右光束RLFに関して遮光状態であり、左光束LLFに関して導光状態である。
【0044】
したがって、光束選択部202を回転させることで、右光束RLFと左光束LLFとで導光状態と遮光状態との位相が逆になり、右光束RLFと左光束LLFとが時分割で交互に第2光束屈折部154に到達することになる。
【0045】
光束選択部202が反射部202aを備える構成により、光束を約100%反射させることができ、三角プリズムを利用して屈折させる場合(光量が約50%に低下する)と比較して、映像の全体的な光量の低下を防止することが可能となる。また、光束選択部202が通過部202bを備える構成により、光束を遮るものが存在しないため、光束を約100%通過させることができ、三角プリズムを利用して屈折させる場合(光量が約50%に低下する)と比較して、映像の全体的な光量の低下を防止することが可能となる。
【0046】
第1回転制御部250は、撮像制御部254による撮像素子158の撮像タイミングを同期信号として扱い、第1モータ204を制御して、光束選択部202の回転制御を行う。例えば、立体映像撮像装置100を利用してフィールドシーケンシャル方式やフレームシーケンシャル方式の映像データを生成する場合、第1回転制御部250は、1/30秒ごと、または、1/60秒ごとに後方レンズ系156に右光束RLFおよび左光束LLFを交互に導くように、30回転/秒または60回転/秒で光束選択部202を回転させる。こうして、右光束RLFと左光束LLFとで導光状態と遮光状態との位相が逆になる。
【0047】
また、図3(e)に示すように、左光束LLFに関して導光状態から遮光状態に移行するとき、光束選択部202の遮断部202cを構成する直線状の端部202d(通過部202bを構成する直線状の端部でもある)で左光束LLFを徐々に遮る。したがって、光束選択部202の導光状態から遮光状態(光束の反射する状態から反射させない状態、または、光束の通過状態から遮光状態)への移行期間において光束は、直線状の端部202dで徐々に遮られ、遮光状態から導光状態(光束を反射させない状態から反射させる状態、または、光束の遮光状態から通過状態)への移行期間において、直線状の端部202dで徐々に光束の通過面積が増加することになる。
【0048】
図4は、光束選択部202の軌跡を説明するための説明図である。図4中、端部202dは、R1〜R5の順で光束を遮光するものとし、端部202dがR1の位置にあるときは導光状態であり、R5の位置にあるときは遮光状態である。図4(a)に示すように、直線状の端部202dが、回転軸Pを回転中心としてR1からR2の位置に移動して光束を遮ると、図4(b)に示すように、光束の上部が遮光される(図4中、遮光部分を黒い塗りつぶしで示す)ことになる。このとき、撮像素子158に到達する光束は、上部が欠けた状態となり、上下および左右で光量に偏りが生じてしまう。
【0049】
また、直線状の端部202dが、R2からR3の位置に移動して光束を遮ると、図4(c)に示すように、光束の上半分が遮光されることになる。このとき、撮像素子158に到達する光束は、上半分が欠けた状態となり、左右で光量の偏りは生じないものの、上半分は、光量がほとんど得られないことになってしまう。
【0050】
さらに直線状の端部202dが、R3からR4の位置に移動して光束を遮ると、図4(d)に示すように、光束の下部のみが通過することになる。このとき、撮像素子158に到達する光束は、下部のみの状態となり、上下および左右で光量に偏りが生じてしまう。このような、光量に偏りが生じる現象は、光束選択部202の遮光状態から導光状態への移行期間でも発生する。
【0051】
このように、光束を任意の方向から直線状の端部202dで順次遮光していくと、遮光面の上下や左右で光量に偏りが生じてしまい、撮像素子158を構成する各画素が、同時に露光が開始できず、生成される映像データに露光ムラが発生する。また、撮像素子158に均一な像が結像できなくなってしまうという問題もある。したがって、光束選択部202が完全に導光状態になっている間しか映像データを生成することができず、映像の全体的な光量が低下する原因となっていた。
【0052】
また、直線状の端部202dが光束を跨いでいる期間は、右光束RLFと左光束LLFとが混在して第2光束屈折部154に導光するため、この期間の光束を撮像素子158で結像させるとクロストークが生じてしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、光束選択部202の後段に、1組の回転体206を配することで、光量の偏りを最小限に抑え、クロストークを排除する。
【0054】
図5は、回転体206の具体的な構成を説明するための説明図である。図5に示すように、1組の回転体206は、略平行に配された2枚の円板で形成され、光束選択部202が反射または通過させ、第2光束屈折部154が屈折させた2つの光束(右光束RLF、左光束LLF)を通過させるための開口部300(図5中、300a、300bで示す)を有している。
【0055】
また、1組の回転体206を構成する回転体206aの開口部300aの端部と、1組の回転体206を構成する回転体206bの開口部300bの端部とが光束の中心を通るように、回転体206a、206bを第2モータ208に固定する(図2参照)。
【0056】
図5に示すように、回転体206aおよび回転体206bは、遮光性を有する樹脂等で構成された本体302(図5中、302a、302bで示す)と、開口部300とを含んで構成され、第2モータ208の駆動によって、回転軸Pを中心に、同一の回転角速度で逆方向に回転する。図5に示すように、開口部300は、略矩形形状であり、その長手方向が回転体206a、206bの回転方向に配されている。図2に示す例では、第2モータ208a、208bが回転体206aと回転体206bとを逆方向に回転させる。
【0057】
図6は、1組の回転体206の他の設置例を説明するための説明図である。図6に示す例では、第2回転制御部252の制御指令に応じて、第2モータ208aは回転体206aを、第2モータ208bは円板204bを、同一の回転角速度で同一方向に回転させる。
【0058】
また、回転体206aの開口部300aと回転体206bの開口部300bとは、所定の時点で対向する位置に配されるように設置される。
【0059】
したがって、本実施形態にかかる回転体206は、光束選択部202が反射または通過させ、第2光束屈折部154が屈折させた光束に、回転体206aの開口部300aと回転体206bの開口部300bとが重畳したときが開状態となり、開口部300同士が重畳していないときは閉状態となる。なお、光束選択部202の直線状の端部202dが光束を跨ぐ期間は、光束を後方レンズ系156に到達させないように、すなわち閉状態となるように、回転体206a、206bの開口部300a、300bの円周方向の長さMを設定する。円周方向の長さMの設定については、後に詳述する。
【0060】
第2回転制御部252は、第2モータ208を制御し、光束が通過する部分における2つの開口部300の移動方向が互いに逆方向となるように、回転体206aと回転体206bを同一の回転角速度で回転させる。
【0061】
図7は、回転体206の閉状態から開状態への移行期間における開口部300a、300bの変化態様、または開状態から閉状態への移行期間における開口部300a、300bの変化態様を説明するための説明図である。図7では、開口部300同士の重畳部分を通過した光束をハッチングで示す。なお、閉状態から開状態への移行期間は、図7(a)から図7(d)の順で進行し、開状態から閉状態への移行期間は、図7(d)から図7(a)の順で進行する。ここでは、回転体206の閉状態から開状態への移行期間を例に挙げて説明する。また、回転体206aは図7における反時計回りに、回転体206bは図7における時計回りに回転するものとする。
【0062】
図7(a)に示す状態において、回転体206aの開口部300aと、回転体206bの開口部300bとがそれぞれ光束を跨いでいるものの、開口部300同士が重畳していないため光束は後方レンズ系156に到達しない。
【0063】
図7(a)に示す状態から徐々に、開口部300同士が重畳し始め、図7(b)に示す状態になると、開口部300aと開口部300bとが重畳し始め、重畳部分で光束が通過する。
【0064】
本実施形態にかかる回転体206の円周方向における開口部300の端部形状は、半径方向の開口長さが漸減するように形成されている。ここでは、開口部300の円周方向の端部形状は、略二等辺三角形に形成されている。また、図7(a)に示すように開口部300aの端部310aと開口部300bの端部310bとが光束の中心Rを通るように、回転体206a、206bを第2モータ208a、208bに固定する。
【0065】
これにより、図7(b)〜(d)に示すように、1組の回転体206が回転することで、2つの開口部300同士の重畳部分が、光束の中心から外側に向かって拡大されるように形成されることになる。したがって、1組の回転体206を通過し、撮像素子158に到達する光束は、上下方向にも左右方向にもほとんど偏りが生じず、光量が略均一な映像データを得ることができる。
【0066】
また、開状態から閉状態への移行期間も、閉状態から開状態への移行期間と同様に、1組の回転体206が回転することにより、2つの開口部300同士の重畳部分が、外側から光束中心に向かって縮小されるように形成されることになる。
【0067】
上述したように、1組の回転体206の本体302は、遮光性を有する樹脂等で形成されているため、閉状態において、光束選択部202の直線状の端部202dが光束を跨ぐ期間に光束選択部202が反射または通過させた光束を完全に遮光することができる。
【0068】
また、半径方向の開口長さが漸減するように開口部300の端部形状が形成されているため、回転体206の開口部300を通過した光束には、上下や左右で光量に偏りが生じない。したがって、光量の偏りがほとんど無く、クロストークの発生を確実に排除することが可能となる。
【0069】
本実施形態では、開口部300の円周方向の端部形状は、略二等辺三角形に形成されている例について説明したが、これに限定されず、開口部300の円周方向と半径方向とが直交する直線状に形成されてもよい。この場合であっても、1組の回転体206が回転することにより、1組の開口部300同士の重畳部分が、光束中心から外側に向かって拡大されるように形成されることになるため、回転体206を通過し、撮像素子158に到達する光束における上下方向または左右方向の偏りを大幅に低減することができる。
【0070】
図8は、光束選択部202の導光遮光動作と、回転体206の開閉動作とを説明するための説明図であり、横軸に時間を縦軸に光量または回転部206の開閉状態を示す。図8中、光束選択部202の直線状の端部202dが光束を跨ぐ期間をAで、回転体206の開状態から閉状態への移行期間をBで、閉状態から開状態への移行期間をCで、回転体206が閉状態である期間をDで示す。また、開状態は、図7(c)、(d)で示す、光束がすべて回転体206を通過する状態を指す。
【0071】
図8に示すように、光束選択部202の直線状の端部202dが光束を跨ぐ期間A、すなわち右光束RLFと左光束LLFとが混在する期間は、回転体206が閉状態の期間Dであるため、右光束RLFおよび左光束LLFが両方とも撮像素子158に到達している期間は皆無となり、クロストークの発生がないことが分かる。
【0072】
また、光束選択部202が導光状態である期間に、回転体206の移行期間B、Cを含むが、本実施形態にかかる回転体206は、開口部300同士の重畳部分が、光束中心から外側に向かって拡大されるように形成されるため、撮像素子158面の光量の偏りがない。したがって、移行期間B、Cに生成した映像データも、光量の偏りによって生じる露光ムラがないため、映像データとして利用することができる。
【0073】
図1に戻って、中央制御部110の構成について説明すると、撮像制御部254は、撮像部104を制御する。例えば、撮像制御部254は、適切な映像データが得られるように、撮像素子158および駆動回路160を駆動する。また、撮像制御部254は、撮像素子158から映像データを読み出し、保持部106に保持させる。さらに、撮像制御部254は、撮像タイミング(撮像開始タイミングおよび撮像終了タイミング)を第1回転制御部250に伝達する。
【0074】
図8を参照して、撮像制御部254の制御処理について説明する。なお、ここでは、撮像素子158を構成する全画素を一度に読み出すことができるグローバルシャッタ方式を例に挙げて説明する。図8に示す、時刻t1の時点から、撮像素子158において、左光束LLFの露光が開始される。本実施形態の立体映像撮像用シャッタ200を利用すれば、図8に示す移行期間Cにおいても、撮像素子158面の光量に偏りがないため、時刻t1から所定の露光時間経過後に、撮像制御部254は、撮像素子158から全画素を同時に読み出すことができる。例えば、光量が十分である明るい被写体を撮像する場合であって、露光時間を短くする場合は、時刻t1から時刻t2の間の任意の時点で、撮像制御部254は、撮像素子158の全画素を同時に読み出す。撮像対象(被写体)が暗い場合や、後方レンズ系156の絞りを絞って被写界深度を深くする場合等、露光時間の最大限の利用が望まれる場合は、時刻t2の時点で、撮像制御部254は、撮像素子158の全画素を同時に読み出す。この場合の読み出しタイミングは、時刻t2以降であって閉状態の期間Dの終了前であれば、任意の時刻でもよい。
【0075】
一方、図8に示す、時刻t3の時点から、撮像素子158において、右光束RLFの露光が開始される。時刻t3の直前までは、左光束LLFが撮像素子158面に結像しているため、クロストークを排除するため、撮像制御部254は、時刻t2から時刻t3の間(閉状態の期間D)に、一旦撮像素子158から全画素を読み出し、映像データを破棄する。これにより、撮像素子158における、新たな右光束RLFに関する電荷の蓄積が開始され、左光束LLFの映像の混入を防ぐことができる。
【0076】
図9は、グローバルシャッタ方式の撮像素子158の処理を説明するための説明図である。図9では、nライン(図9中、L1〜Lnで示す)のCMOSで構成された撮像素子158を例に挙げ、図9(a)は、露光時間および読み出し時間が1/240秒の例を、図9(b)は、露光時間が3/480秒、読み出し時間が1/480秒の例をそれぞれ示す。
【0077】
図9(a)、(b)に示すように、グローバルシャッタ方式の撮像素子158を採用する場合、読み出しを行っている最中に露光するとクロストークが発生してしまうので、開状態から閉状態への移行期間Bが終了してから全画素の読み出しを行う必要がある。そこで、開状態から閉状態への移行期間Bの終了後に全画素を読み出すための読み出し時間を確保するために、かかる読み出し時間以上の閉状態の期間Dが必要となる。つまり、図9(a)に示す例では、閉状態の期間Dは少なくとも1/240秒必要であり、図9(b)に示す例では、閉状態の期間Dは少なくとも1/480秒必要である。
【0078】
したがって、まず読み出し時間(撮像素子158が光電変換を行う時間)を算出し、算出した読み出し時間以上の閉状態の期間Dをとれるように、開口部300の円周方向の長さM(Mは角度(例えば、0度〜320度等)で表すこともできる)を決定する(図5参照)。このようにして、閉状態の期間Dを読み出し時間として利用することができる。
【0079】
一方、撮像素子158から全画素を同時に読み出せない、ローリングシャッタ方式の場合、グローバルシャッタ方式と比較して、全画素の読み出しに時間を要する。
【0080】
図10、11は、ローリングシャッタ方式の撮像素子158の処理を説明するための説明図である。図10、11では、nライン(図10中、L1〜Lnで示す)のCMOSで構成された撮像素子158を例に挙げて説明し、図10(a)は、2D映像を撮像する場合のローリングシャッタ方式の撮像素子158の処理を、図10(b)は、閉状態の期間Dを設けず、露光時間および読み出し時間が1/120秒の例を、図11(a)は、閉状態の期間Dを設けず、露光時間および読み出し時間が1/240秒の例を、図11(b)は、閉状態の期間Dを設け、露光時間が1/240秒、読み出し時間が1/480秒の例をそれぞれ説明する。
【0081】
図10(a)に示すように、2D映像を撮像する場合、撮像素子158に結像する光束は常に同一(図10(a)中、白抜きで示す)であるため、撮像素子158は常時露光させておき、一定間隔で読み出しを開始し、各画素において読み出しから次の読み出しまでの時間が同じになるようにすれば、読み出し後の各画素の露光時間を、全画素で均一にすることができる。
【0082】
しかし、立体映像撮像装置100でこのような読み出しタイミングで読み出しを行うと、読み出した映像データには、図10(b)に示すように、左光束LLF(図10(b)中、白抜きで示す)に、右光束RLF(図10(b)中、グレーで示す)が、右光束RLFに左光束LLFが混入してしまい、クロストークが生じてしまう。
【0083】
図11(a)に示すように、光束が回転体206を通過している期間の前半分(図11(a)の例では、1/240秒)を露光時間とし、後半分を読み出し時間とすることで、映像データにおけるクロストークの発生を排除することができる。しかし、この場合、読み出しと露光の切り換わりが遅いと、多少なりともクロストークが生じてしまうおそれがある。
【0084】
そこで、図11(b)に示すように、読み出し時間の完了時点が多少遅延したとしても閉状態の期間Dで吸収することができ、ローリングシャッタ方式であっても確実にクロストークを排除することが可能となる。
【0085】
図8を参照して説明すると、ローリングシャッタ方式の撮像素子158を利用する場合、時刻t1の時点から左光束LLFの露光が開始される。その前の閉状態の期間Dに、すでに全画素を読み出しておけば、右光束RLFの影響を受けることはない。また、時刻t1で全画素の露光結果のリセットを行ってもよい。
【0086】
また、後方レンズ系156の絞りを適切な状態にして、時刻t1から時刻t2までの左光束LLFを露光可能な時間全体で撮像素子158を露光させてもよいが、撮像対象が明るすぎる場合、または絞りを開いて被写界深度を浅くしたい場合、露光期間を短くする必要がある。この場合、開状態の期間の任意の時刻で露光結果のリセットを行うことで、露光の開始時点を遅らせ、露光期間を、そのリセットした時刻から時刻t2までの時間にすることができる。
【0087】
したがって、本実施形態の立体映像撮像用シャッタ200を利用すれば、図8に示す移行期間Bにおいても、撮像素子158面の光量に偏りがないため、リセットした時刻から時刻t2の間を露光時間として撮像素子158から各画素を順次読み出すことができる。そして時刻t3から右光束RLFの露光を開始する。
【0088】
なお、ここでは、左右片側の映像を毎秒60コマで撮像するフレームシーケンシャル方式を例に挙げて説明したが、撮像素子158からの読み出しをより高速に行える場合、光束選択部202の回転数を上げることで撮像コマ数を増加させることが可能である。また撮像時は、コマ数が4倍や8倍となるような速度で撮像し、それを通常速度で再生することで、1/4や1/8のスローモーションで再生することもできる。従来の液晶シャッタを用いた立体映像撮像装置では、液晶シャッタの応答速度が遅いため、このような処理が実現不可能であったり、コスト的に困難であったりする。しかし、立体映像撮像装置100の立体映像撮像用シャッタ200によれば、単位時間あたりの光束選択部202の回転数を上げるだけで、右光束RLFと左光束LLFの切り換え速度を上げることができる。
【0089】
反転処理部256は、撮像素子158が生成した映像データのうち、光束選択部202の反射部202aが反射させた光束(ここでは、右光束RLF)を受光して生成された映像データ、または、光束選択部202の通過部2020bが通過させた光束(ここでは、左光束LLF)を受光して生成された映像データについての追加の反転処理を行う。
【0090】
ここでは、反転処理部256が、右光束RLFを受光して生成された映像データについて左右の反転処理を行う。本実施形態において、通過部202bが第2光束屈折部154の方向へ通過させた光束(ここでは、左光束LLF)に基づいて生成された映像データは、何らの処理を行う必要はないが、反射部202aで反射された右光束RLFは、左右が反転して第2光束屈折部154に到達するため右光束RLFに基づく映像データは左右が反転した状態になっている。
【0091】
そこで、反転処理部256が、反射部202aが反射させた光束を受光して生成された映像データについて左右の反転処理を行うことで、反転された映像データを正しい状態の映像データに補正することができる。
【0092】
また、立体映像撮像装置100において、2D映像を撮像する場合、第1回転制御部250は、右光束RLFまたは左光束LLFのいずれか一方が導光状態となる位置で光束選択部202の回転を停止し、第2回転制御部252は、開状態となる位置で回転体206を固定すればよい。
【0093】
以上説明したように、本実施形態にかかる立体映像撮像用シャッタ200によれば、液晶シャッタと三角プリズムを利用する構成と比較して光量の減衰がない。また、閉状態では光束の透過率は0%であるためクロストークの発生を回避することが可能となる。
【0094】
さらに、光束選択部202の直線状の端部202dが光束を跨ぐ期間は、右光束RLFと左光束LLFとが混在した光束が第2光束屈折部154に到達するが、第2光束屈折部154の後段に回転体206を設けることで、右光束RLFと左光束LLFとが混在した光束を確実に排除することができる。また、回転体206の開口部300同士の重畳部分が、光束中心から外側に向かって拡大されるように形成されることになるため、第2光束屈折部154から回転体206を通過し、撮像素子158に到達する光束は、上下方向にも左右方向にもほとんど偏りが生じず、光量が略均一な映像データを得ることができる。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、立体映像を生成するための立体映像撮像用シャッタおよび立体映像撮像装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0097】
100 …立体映像撮像装置
150 …第1光束屈折部
152 …集光レンズ
154 …第2光束屈折部
156 …後方レンズ系
158 …撮像素子
200 …立体映像撮像用シャッタ
202 …光束選択部
202a …反射部
202b …通過部
206 …回転体
206a …円板
206b …円板
250 …第1回転制御部
252 …第2回転制御部
254 …撮像制御部
256 …反転処理部
300 …開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの光路を通過した光束を交互に入射する立体映像撮像用シャッタであって、
円板で形成され、前記2つの光路のうちの一方を通過した光束を反射させて撮像素子へ導く反射部と、前記2つの光路のうちの他方を通過した光束を通過させて前記撮像素子へ導く通過部とを有した光束選択部と、
前記光束選択部を回転させる第1回転制御部と、
略平行に配された2枚の円板で形成され、前記光束選択部が反射または通過させた2つの光束を通過させるための開口部を有した1組の回転体と、
前記光束が通過する部分における2つの前記開口部の移動方向が互いに逆方向となるように、前記回転体を同一の回転角速度で回転させる第2回転制御部と、
を備えることを特徴とする立体映像撮像用シャッタ。
【請求項2】
前記回転体の前記開口部の円周方向における端部形状は、半径方向の開口長さが漸減するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の立体映像撮像用シャッタ。
【請求項3】
前記回転体の前記開口部の円周方向における端部形状は、略二等辺三角形に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の立体映像撮像用シャッタ。
【請求項4】
2つの光路にそれぞれ配され、前記2つの光路を通過した光束を屈折させる2つの光束屈折部と、
前記光束屈折部を通過した光束を受光して映像データを生成する撮像素子と、
円板で形成され、前記2つの光路のうちの一方を通過し前記光束屈折部によって屈折した光束を反射させて前記撮像素子へ導く反射部と、前記2つの光路のうちの他方を通過した光束を通過させて前記撮像素子へ導く通過部とを有した光束選択部と、
前記光束選択部を回転させる第1回転制御部と、
略平行に配された2枚の円板で形成され、前記光束選択部が反射または通過させた2つの光束を通過させるための開口部を有した1組の回転体と、
前記光束が通過する部分における2つの前記開口部の移動方向が互いに逆方向となるように、前記回転体を同一の回転角速度で回転させる第2回転制御部と、
前記撮像素子が生成した映像データのうち、前記光束選択部の反射部が反射させた光束を受光して生成された映像データ、または、前記光束選択部の通過部が通過させた光束を受光して生成された映像データのいずれか一方について、反転処理を行う反転処理部と、
を備えることを特徴とする立体映像撮像装置。
【請求項5】
前記開口部は、前記撮像素子が光電変換を行う時間分、遮光状態になるように形成されることを特徴とする請求項4に記載の立体映像撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−168278(P2012−168278A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27581(P2011−27581)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】