説明

立体画像印刷物、及びその製造方法

【課題】偏光メガネを装着せずに観察できる立体画像印刷物の提供。
【解決手段】透明支持体(12)と、該透明支持体の表面及び裏面に、下記(1)の条件を満たす画像層(16a,16b)、及び下記(2)の条件を満たす一以上の層からなる保護層(18a、18b)が、前記透明支持体側からこの順で配置された第1及び第2の積層体(19a、19b)とをそれぞれ有し;(1)二色性色素が水平配向してなる左眼用画素及び右眼用画素を、所定の配列で含む二色性画像を有する画像層であって、第1及び第2の積層体のそれぞれに含まれる二色性画像の吸収軸が互いに直交している画像層;(2)第1の積層体に含まれる1以上の層からなる保護層の、Reが10nm以下である保護層;第1の積層体の表面上に、所定の条件を満たすパターニングされた位相差層、並びに所定の条件を満たす直線偏光層を有し、該直線偏光層の外側から観察される立体画像印刷物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を立体的に表示する立体画像印刷物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体画像を印刷する方法として、二色性色素を利用した方法であって、平面画像の印刷物を立体的に観察者に表示する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2、並びに非特許文献1)。この方法では、延伸処理等により分子配向されたシートに、二色性色素を含有するインクを用いて、左眼用及び右眼用の偏光画像をそれぞれ形成している。また、他の立体画像印刷物の製造方法として、特許文献3には、左眼用及び右眼用画素を一定の配列で混合して構成するとともに、前記左眼用及び右眼用画素の上面に偏光フィルタを設け、さらに前記偏光フィルムの上に、1/4波長板を積層し、前記偏光フィルムの偏光軸と前記1/4波長板の遅れ軸とを左眼用と右眼用とで互いにそれぞれ±45度をなすことを特徴とする立体画像印刷物製造方法が提案されている。
これらの方法では、観察者は偏光メガネを装着することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11−511702号公報
【特許文献2】特表2001−505323号公報
【特許文献3】特開平5−210182号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JOURNALOF IMAGING SCIENCE AND TECHNOLOGY, “Full-color 3-D Prints and Technology”, vol.42, Number 4, July/August 1998, J.J. Scarpetti, P.M. Dubois, R.M. Friedhoff andV.K. Walworth
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、偏光メガネを装着することなく観察可能な立体画像印刷物、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]透明支持体と、該透明支持体の表面及び裏面に、下記(1)の条件を満たす画像層、及び下記(2)の条件を満たす1以上の層からなる保護層が、前記透明支持体側からこの順で配置された第1及び第2の積層体とをそれぞれ有し;
(1) 少なくとも1種の二色性色素が水平配向してなる左眼用画素及び右眼用画素を、所定の配列で含む二色性画像を有する画像層であって、第1及び第2の積層体のそれぞれに含まれる二色性画像の吸収軸が互いに直交している;
(2) 第1の積層体に含まれる1以上の層からなる保護層の、可視光に対する面内のレターデ−ション値(Re)が10nm以下である;
第1の積層体の表面上に、下記(3)の条件を満たすパターニングされた位相差層、及び下記(4)の条件を満たす直線偏光層を有し、該直線偏光層の外側から観察される立体画像印刷物であって;
(3)面内レターデーションが0の第1のドメイン、及び面内レターデーションが1/2波長の第2のドメインにパターニングされた位相差層であって、第1及び第2のドメインのそれぞれに対応する位置に左眼用画素又は右眼用画素が配置され、第1の積層体及び第2の積層体で、対応関係が逆転しており、且つ、第1の積層体及び第2の積層体に含まれる二色性画像の吸収軸と、第2のドメインの面内遅相軸とが、45°の角度をなしている;
(4)直線偏光層の偏光軸が、第1及び第2の積層体に含まれる二色性画像の吸収軸のいずれか一方と一致している;
想定される左眼観察位置には、左眼用画素のみが入射し、想定される右眼観察位置には、右眼用画素のみが入射するように構成されていることを特徴とする立体画像印刷物。
[2]第1及び第2の積層体のそれぞれに含まれる二色性画像内部では、右眼用画素と左眼用画素が交互に隣接して配置され、且つ第1及び第2の積層体のそれぞれに含まれる二色性画像の互いの対応する位置には、右眼用画素と左眼用画素とが、又は左眼用画素と右眼用画素とが、配置されていることを特徴とする[1]の立体画像印刷物。
[3]前記透明支持体が、可視光に対して面内のレターデ−ション値(Re)が10nm以下であることを特徴とする[1]又は[2]の立体画像印刷物。
[4]前記少なくとも1種の二色性色素が液晶性であり、且つ第1の積層体の画像層と透明支持体との間に第1の配向膜、及び第2の積層体の画像層と透明支持体との間に第2の配向膜を有し、第1及び第2の配向膜の配向軸が互いに直交していることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの立体画像印刷物。
[5]第1及び第2の配向膜がそれぞれ、高分子化合物を主成分とする組成物から形成された膜の表面を互いに直交する方向にラビング処理してなるラビング配向膜であることを特徴とする[4]の立体画像印刷物。
[6]第1及び第2の配向膜がそれぞれ、互いに直交する方向に光照射されてなる光配向膜であることを特徴とする[4]の立体画像印刷物。
[7]前記少なくとも1種の液晶性二色性色素が親油性であり、且つ前記第1及び第2の配向膜が親水性ポリマーを主成分として含有することを特徴とする[4]〜[6]のいずれかの立体画像印刷物。
[8]第1及び/又は第2の積層体に含まれる前記一以上の層からなる保護層が、ポリビニルアルコールを主成分とする組成物から形成された酸素遮断層を含むことを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの立体画像印刷物。
[9]第1及び/又は第2の積層体に含まれる前記一以上の層からなる保護層のいずれかの層が、UV吸収剤を含有してなることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかの立体画像印刷物。
【0007】
[10]前記少なくとも1種の二色性色素が、下記一般式(I)、下記一般式(II)、下記一般式(III)、下記一般式(IV)、又は下記一般式(V)で表わされる液晶性二色性色素であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかの立体画像印刷物。
【化1】

(式中、R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L11は、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し;B11は、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基を表し;nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、R21及びR22はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基を表すが、但し、少なくとも一方は、水素原子以外の基を表し;L22は、アルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO−、−NR−、−NRSO−、又は−SONR−(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)に置換されていてもよく;Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表し;L21はそれぞれ、アゾ基(−N=N−)、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)、イミノ基(−N=CH−)、及びビニレン基(−C=C−)からなる群から選ばれる連結基を表し;Dyeはそれぞれ、下記一般式(IIa)で表されるアゾ色素残基を表し;
【化3】

式(IIa)中、*はL21との結合部を表し;X21は、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、無置換アミノ基、又はモノもしくはジアルキルアミノ基を表し;Ar21は、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し;nは1〜3の整数を表し、nが2以上の時、2つのAr21は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化4】

(式中、R31〜R35はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R36及びR37はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基を表し;L31は2価の連結基を表し;A31は酸素原子又は硫黄原子を表す)
【化5】

(式中、R41及びR42はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Arは、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;R43及びR44はそれぞれ、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を表し、互いに結合して複素環を形成していてもよい。)
【化6】

(式中、A及びAはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、炭化水素環基又は複素環基を表わす。)
【0008】
[11] 前記パターニングされた位相差層が、硬化性液晶性組成物を硬化してなることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかの立体画像印刷物。
[12] 前記パターニングされた位相差層が、硬化性液晶組成物からなる膜をパターン露光することにより、面内レターデーションを発現又は消失させて第1及び第2のドメインを形成してなることを特徴とする[11]の立体画像印刷物。
[13] 観察側の反対面に、非偏光解消性の反射層を有することを特徴とする[1]〜[12]のいずれかの立体画像印刷物。
[14] 透明支持体の表面上及び裏面上に、同時に又は別々に、少なくとも有機溶媒及び該有機溶媒に溶解した少なくとも1種の二色性色素を含有する二色性色素組成物を、左眼用画素及び右眼用画素を所定の配列で含む画像様にそれぞれ塗布すること;並びに
該組成物中の有機溶媒を蒸発させることにより、前記少なくとも一種の二色性色素を自発的に又は追従的に水平配向させること;
を少なくとも含む[1]〜[13]のいずれかの立体画像印刷物の製造方法。
[15] 前記液晶性二色性色素組成物を、インクジェット法により塗布することを特徴とする[14]の方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、偏光メガネを装着することなく観察可能な立体画像印刷物、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の立体画像印刷物の一例の断面模式図である。
【図2】本発明の立体画像印刷物を観察者が観察する際の作用を模式的に示した図である。
【図3】本発明に利用可能なラビング配向膜の一例のラビング処理の方向を示す模式図である。
【図4】本発明に利用可能な光配向膜の一例の光照射の方向を示す模式図である。
【図5】本発明の立体画象印刷物に利用可能なパターニングされた位相差層の形成方法の一例の流れを示す模式図である。
【図6】本発明の立体画像印刷物の製造に利用可能な露光マスクの一例の平面図(a)、及び二色性画像の吸収軸と第2のドメインの面内遅相軸との関係を示した平面(b)である。
【図7】本発明の立体画像印刷物の一例の断面模式図である。
【図8】本発明の立体画像印刷物の一例の断面模式図である。
【図9】本発明の立体画像印刷物の作製に利用可能な印画紙の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
なお、本明細書では、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、及びRth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。また、波長が省略されている場合は、波長550nmの値をいうものとする。また、面内レターデーション(Re(λ))はKOBRA
21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。厚み方向レターデーション(Rth(λ))は、Re(λ)の値、及び斜め方向から入射して測定される複数の値に基づいて算出される値である。
また、本明細書では、「可視光」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0012】
また、本明細書において、「パターニング」とは、フィルム状(層状)の対象物に、光学的異方性によって特徴付けられる方向(遅相軸及び偏光軸を含む意味で用いる)の方向が互いに異なる領域を2つ以上作製すること、または、同領域を2つ以上有することを意味する。
また、本明細書では、「クロストーク」及び「ゴースト像」とは、左右画像の分離が不完全である場合に、二重像として認識されること、及び目的画像以外の像として認識されることをいう。
【0013】
1.立体画像印刷物
本発明の立体画像印刷物の一実施形態の断面図を図1に示す。
図1の立体画像印刷物10は、矢印Pの方向から観察される立体画像印刷物であって、透明支持体12の観察側表面に画像層16aと保護層18aとを積層した第1の積層体19a、及び他方の表面に画像層16bと保護層18bとを積層した第2の積層体19bをそれぞれ有する。画像層16a及び16bは、少なくとも1種の二色性色素が実質的に水平配向してなる右眼用画素及び左眼用画素を、一定の配列で含む二色性画像をそれぞれ有し、第1及び第2の積層体19a及び19bのそれぞれに含まれる二色性画像の吸収軸は互いに直交している。第1の積層体19aの観察側面には、パターニングされた位相差層20及び直線偏光層22が配置されている。
【0014】
画像層16a及び16bと透明支持体12との間には、受像層14a及び14bがそれぞれ配置されている。受像層14a及び14bはそれぞれ、二色性色素をその表面に維持し又は内部に浸透させて、且つ二色性色素を自主的に又は追従的に水平配向させる機能を有する層である。例えば、自主的に配向する液晶性二色性色素を利用する態様では、受像層14a及び14bは、それぞれの配向軸が互いに直交する配向膜であるのが好ましい。また、二色性色素として、自主的には配向せず、他の分子の存在下で追従的に配向する化合物を利用する態様では、受像層14a及び14bは、それぞれ互いに直交する方向に延伸処理された分子配向シートであるのが好ましい。但し、この態様では、二色性色素を受像層14a及び14b中に浸透させる必要があるので、材料の組合せに制約がある。一方、液晶性二色性色素を利用する態様では、受像層14a及び14b中に二色性色素を浸透させる必要はないので、例えば、液晶性二色性色素が疎水性であって、且つ受像層14a及び14bは親水性材料を主成分とする層であっても二色性画像の形成が可能である。また、液晶性二色性色素を利用する態様では、非液晶性の二色性色素を利用して、分子配向されたシートに浸透させ、当該分子配向に沿って二色性色素を追従的に配向させる実施形態と比較して、高い二色比の二色性画像が形成でき、その結果、クロストーク及びゴースト像を軽減することができる。
なお、図1では、画像層16a及び16bを2層構造として示したが、例えば、上記した通り、二色性色素が受像層中に浸透して水平配向する態様では、画像層16a及び16bと、受像層14a及び14bとは、互いに分離されていない一層として表現されるであろう。
【0015】
画像層16a及び16bが有する二色性画像は、例えば、デジタルカメラで撮影された画像のデータ、より具体的には、左右二系統の撮影レンズを備えたデジタルカメラで撮影した画像等のデジタルデータに基づいて合成された、左眼用画素及び右眼用画素を、所定のパターンで配列してなる二色性画像である。所定のパターンとしては、例えば、ストライプ状のパターンが挙げられる。一例では、画像層16a及び16bのそれぞれ内では、右眼用画素と左眼用画素が交互に隣接して配置され、且つ画像層16a及び16bの互いの対応する位置に、右眼用画素と左眼用画素を重ねて配列した二色性画像である。該二色性画像は、インクジェット記録法を用いて形成することが好ましい。
【0016】
第1及び第2の積層体19a及び19bは、それぞれ画像層16a及び16bを保護する保護層18a及び18bを有する。保護層18a及び18bは、例えば、高分子フィルムからなる。第1の積層体19aに含まれる保護層18a、即ち、透明支持体12の観察面側に配置される保護層18aは、可視光に対する面内のレターデ−ション値(Re)が10nm以下である。Reが10nmを超えると、二色性画像の吸収軸を変化させ、クロストーク及びゴースト像の原因になる。よって、保護層18aは、低位相差であるのが好ましく、具体的には、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、0〜10nmであるのが好ましく、5nm以下であるのがより好ましい。また、保護層18aのRthも二色性画像の吸収軸に影響を与え、クロストーク及びゴースト像の原因になるので、保護層18aのRth(550)の絶対値は、20nm以下であるのが好ましく、5nm以下であるのがより好ましい。
【0017】
パターニングされた位相差層20は、面内レターデーションが0の第1のドメイン20x、及び面内レターデーションが1/2波長の第2のドメイン20yを有する。パターニングされた位相差層20のさらに外側には、直線偏光層22が配置され、直線偏光層22の外側、矢印Pの方向から観察される。パターニングされた位相差層20の第1及び第2のドメイン20x及び20yは、それぞれ対応する位置に二色性画像の左眼用画素又は右眼用画素が配置されているが、但し、第1の積層体19aに含まれる二色性画像及び第2の積層体19bに含まれる二色性画像では、その対応関係が逆転している。さらに、第1の積層体19a及び第2の積層体19bに含まれる二色性画像の吸収軸と、第1のドメイン20xの面内遅相軸とが、45°の角度をなしている。また、直線偏光層22の偏光軸は、第1及び第2の積層体19a及び19bに含まれる二色性画像の吸収軸のいずれか一方と一致している。
【0018】
図2に、立体画像印刷物10を、偏光メガネを装着していない観察者が観察した際に左眼及び右眼がそれぞれ観察する画素を、模式的に示した図である。
図2では、観察者の右眼及び左眼各々の位置から見て、第1の積層体19aに含まれる二色性画像の吸収軸方向と、直線偏光層22の偏光軸が一致するように、直線偏光層22が位置合わせして貼り合せられている。また、パターニングされた位相差層20は、第1の積層体12a中の二色性画像に対しては、想定される左眼位置から観察した場合に、左眼用画素に対応する位置に第1のドメイン20xが、及び想定される右眼位置から観察した場合に、右眼用画素に対応する位置に第1のドメイン20xが対応する関係で配置するように;並びに第2の積層体12b中の二色性画像に対しては、想定される左眼位置から観察した場合に、左眼用画素に対応する位置に第2のドメイン20yが、及び想定される右眼位置から観察した場合に、右眼用画素に対応する位置に第2のドメイン20yが対応する関係で配置するように、位置合わせされている。
【0019】
観察者が、立体画像印刷物を観察しようとすると、直線偏光層22及びパターニングされた位相差層20を介して観察することになる。左眼で画像層16aを観察する際は、左眼用画素を、左眼用画素の吸収軸方向と一致した偏光軸方向を有する直線偏光層22及びReが0である第1のドメイン20xを介して観察するように、右眼用画素を、右眼用画素の吸収軸方向と一致した偏光軸方向を有する直線偏光層22及びReが1/2波長である第2のドメイン20yを介して観察するように、位置合わせされ;並びに、左眼で画像層16bを観察する際は、左眼用画素を、左眼用画素の吸収軸方向と直交した偏光軸方向を有する直線偏光層22及びReが1/2波長である第2のドメイン20yを介して観察するように、右眼用画素を、右眼用画素の吸収軸方向と直交した偏光軸方向を有する直線偏光層22及びReが0の第1のドメイン20xを介して観察するように、位置合わせされている。その結果、左眼は、画像層16a及び16bの左眼用画素のみを観察することになる。同様に、右眼で画像層16aを観察する際は、右眼用画素を、右眼用画素の吸収軸方向と一致した偏光軸方向を有する直線偏光層22及びReが0の第1のドメイン20xを介して観察するように、左眼用画素を、左眼用画素の吸収軸方向と一致した直線偏光層22及びReが1/2波長の第2のドメイン20yを介して観察するように、位置合わせされ;並びに、右眼で画像層16bを観察する際は、右眼用画素は、右眼用画素の吸収軸方向と直交した偏光軸方向を有する直線偏光層22及びReが1/2波長の第2のドメイン20yを介して観察するように、左眼用画素を、左眼用画素の吸収軸方向と直交した偏光軸方向を有する直線偏光層22及びReが0の第1のドメイン20xを介して観察するように、位置合わせされている。その結果、右眼は、画像層16a及び16bの右眼用画素のみを観察することになる。
【0020】
観察者から画像層16a及び16bまでの距離、パターニングされた位相差層20から画像層16a及び16bまでの距離、左眼用画素と右眼用画素との中点距離、右眼と左眼の間の平均距離、直線偏光層のパターニング間隔は、幾何学的に所定の関係を満足するので、その関係式に応じて、設計することができる。詳細については、”Theory of Parallax Barries”; July, 1952; Journal of the SMPTE; vol.
59; SAM H. KAPLANの記載を参照することができる。なお、当該公報に記載の従来技術では、パターニングされた直線偏光層は用いられておらず、パララックスバリアを用いている点で、本発明とは相違する。本発明は、パララックスバリアを用いた従来技術と比較して、解像度が低下しない点で優れている。
【0021】
透明支持体12の光学特性は、第2の積層体19bに含まれる二色性画像の吸収軸に影響するので、低位相差であるのが好ましい。具体的には、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、0〜10nmであるのが好ましく、5nm以下であるのがより好ましい。また、Rth(550)の絶対値は、20nm以下であるのが好ましく、5nm以下であるのがより好ましい。
【0022】
以下、本発明の立体画像印刷物に利用可能な種々の部材について説明する。
透明支持体:
本発明の立体画像印刷物が有する支持体は、透明である。具体的には、光透過率が70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのが特に好ましい。背面側の第2の積層体に含まれる二色性画像の偏光性に影響を与えないためには、支持体は上記した通り、低位相差又は等方性であるのが好ましい。低位相差フィルム、又は光学的等方性フィルムの材料となり得るポリマーの具体例及び好ましい態様について、特開2002−22942号公報の段落番号[0013]の記載を適用できる。また、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても国際公開WO00/26705号公報に記載の分子を修飾することで該発現性を低下させたものを用いることもできる。
【0023】
上記透明支持体として、セルロースアシレート系フィルムを用いることもできる。低位相差のセルロースアシレート系フィルムとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを主成分とするフィルムが好ましい。特に酢化度が57.0〜62.0%であることが好ましい。酢化度、及びその範囲、並びにセルロースアセテートの化学構造は、特開2002−196146号公報の段落番号[0021]の記載を適用できる。セルロースアシレートフィルムを、非塩素系溶媒を用いて製造することについて、発明協会公開技報2001−1745号に詳しく記載されており、そこに記載されたセルロースアシレート系フィルムも本発明に好ましく用いることができる。
【0024】
セルロースアシレート系フィルムは、調製されたセルロースアシレート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりを製造することが好ましい。調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて、ドープの2層以上流延によるフィルム化もできる。フィルムの形成は、特開2002−139621号公報の段落番号[0038]〜[0040]の記載を適用できる。溶融製膜法により製造したフィルムを用いることもできる。
【0025】
セルロースアシレート系フィルムには、機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するため、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、特開2002−139621号公報の段落番号[0043]の態様、及び好ましい範囲が本発明に適用できる。
また、セルロースアシレート系フィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開2002−139621号公報の段落番号[0044]の記載を適用できる。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
【0026】
画像層(図1では受像層)との接着性を改善するために、表面処理されたセルロースアシレート系フィルムを透明支持体として用いることもできる。セルロースアシレート系フィルムの表面処理、及び固体の表面エネルギーについては、特開2002−196146号公報の段落番号[0051]〜[0052]の記載を適用できる。
また、第1及び第2の配向膜との接着性を改善するために、透明支持体の表面裏面に、易接着層を形成してもよい。
【0027】
前記透明支持体としては、その他、シクロオレフィン系ポリマーフィルム、アクリル系ポリマーフィルム、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、アミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーを例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0028】
また、本発明の透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂も好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。このように、市販されているポリマーフィルムをそのまま利用することもできる。
【0029】
前記支持体の厚さについては特に制限はないが、通常5〜500μmの範囲であり、さらに20〜250μmの範囲が好ましく、特に30〜180μmの範囲が最も好ましい。なお、光学用途としては30〜110μmの範囲が特に好ましい。
【0030】
画像層:
本発明の立体画像印刷物は、前記透明支持体の裏面及び表面に、二色性画像が形成された画像層を有する。画像層は、例えば、配向膜上に二色性画像が形成されている層であっても、分子配向フィルム中に二色性色素が浸透して二色性画像が形成されている層であってもよい。前者の態様では、二色性色素として液晶性二色性色素を用いるのが、クロストーク及びゴースト像の軽減の観点で好ましい。以下に、受像層として配向膜を利用する態様について詳細に説明する。
【0031】
本明細書では、「配向膜」とは、液晶分子の配向規制能を有する膜を意味する。配向膜にはそれぞれ、液晶分子を配向規制する配向軸があり、当該配向軸に従って、液晶分子は配向する。一例では、液晶分子は、その長軸を当該配向軸に対して平行にして配向し、また他の例では、液晶分子は、その長軸を当該配向軸に対して直交にして配向する。本態様の立体画像印刷物では、液晶性二色性色素が配向膜中に浸透することは必要ではない。液晶性二色性色素は自らの配向能により、配向膜の規制力によって、その配向軸に従って配向する。よって、画像形成に利用する液晶性二色性色素との組合せで、配向膜の材料を決定する必要はなく、本態様では、例えば、配向膜は親水性ポリマーを主成分とする態様であっても、疎水性の液晶性二色性色素により画像を形成することができる。
【0032】
本態様には、いずれの配向規制能を有する配向膜を用いてもよい。また、配向膜は、その上で、二色性色素の分子を所望の配向状態とすることができるのであれば、どのような材料からなっていてもよい。有機化合物(好ましくはポリマー)からなる膜の表面をラビング処理してなるラビング配向膜が代表例として挙げられるが、それ以外にも、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、及びラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、形成することができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向規制力が生じる配向膜も知られている。中でも、本態様では、配向膜のプレチルト角の制御し易さの点からは、ラビング処理により形成するラビング配向膜が好ましく、配向の均一性の点からは光照射により形成する光配向膜が好ましい。
【0033】
・ラビング配向膜
ラビン配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本態様において配向膜の形成に利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましい。特にポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは、種々の鹸化度のものが存在する。本発明では、鹸化度85〜99程度のものを用いるのが好ましい。市販品を用いてもよく、例えば、「PVA103」、「PVA203」(クラレ社製)等は、上記鹸化度のPVAである。ラビング配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行の記載を参照することができる。
ラビング配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがさらに好ましい。
【0034】
ラビング処理は、一般にはポリマーを主成分とする膜の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができる。ラビング処理により形成される配向膜は、ラビング処理方向に平行な配向軸を有する。例えば、図2に示す吸収軸を有する二色性画像を得るための配向膜の一例は、図3に示す通り、−45°及び+45°の方向にラビング処理することで形成されたラビング配向膜である。ラビング処理の一般的な方法については、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行、平成12年10月30日)に記載されている。
ラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
式(A) L=Nl(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
【0035】
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。本態様では、液晶性二色性色素により二色性画像を形成する際に、プレチルト角の小さい、均一な水平配向となるように、ラビング密度が高い条件でラビング処理するのが好ましい。即ち、上記式から算出されるラビング密度Lが、10mm〜1000mmであるのが好ましく、50mm〜500mmであるのがより好ましい。
【0036】
・光配向膜
光照射により形成される配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献等に記載がある。本態様では、例えば、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002−229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルが好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルである。
【0037】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光又は非偏光照射を施し、配向規制力を発現させる。光配向膜は、光照射方向に沿った配向軸を有する。
本明細書において、「直線偏光照射」とは、前記光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。好ましくは、光照射に用いる光のピーク波長が200nm〜700nmであり、より好ましくは光のピーク波長が400nm以下の紫外光である。
【0038】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、カーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー(例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザー)、発光ダイオード、陰極線管などを挙げることができる。
【0039】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例、グラントムソンプリズム)やブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、又は偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタや波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0040】
照射する光は、直線偏光の場合、配向膜に対して上面、又は裏面から配向膜表面に対して垂直、又は斜めから光を照射する方法が採用される。前記光の入射角度は、前記光配向材料によって異なるが、例えば、0〜90°(垂直)、好ましくは40〜90である。例えば、図2に示す関係の二色性画像の形成のための配向膜を、直線偏光を照射した光配向膜から形成する一例では、図4に示す通り、一方の配向膜を形成する際は、配向膜面に対して垂直で且つ配向膜面内−45°方位の第1の入射面と平行な方向から光を照射し、他方の配向膜を形成する際は、配向膜面に対して垂直で且つ配向膜面内+45°方位の第2の入射面と平行な方向から光を照射する。但し、この例に限定されるものではない。
また、非偏光を利用する場合には、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10〜80°、好ましくは20〜60、特に好ましくは30〜50°である。
照射時間は好ましくは1分〜60分、さらに好ましくは1分〜10分である。
【0041】
なお、上記では、画像層が配向膜を含む例については説明したが、本発明は、この例に限定されるものではない。上記した通り、非液晶性の二色性色素を利用する態様では、延伸処理された分子配向フィルムを上記受像層として利用することができる。例えば、−45°及び+45°の方向に延伸したフィルムをそれぞれ用いることで、互いに直交した吸収軸を有する二色性画像を形成することができる。
【0042】
二色性色素:
次に、本発明において画像形成に利用される二色性色素について、詳細に説明する。
本発明では、画像形成に、ネマチック液晶性を有するアゾ系二色性色素の少なくとも一種を含む二色性色素組成物を用いることが好ましい。本発明において、「二色性色素」とは、方向によって吸光度が異なる色素を意味する。また、「二色性」及び「二色比」は、二色性色素組成物を二色性色素層としたときの、偏光軸方向の偏光の吸光度に対する、吸収軸方向の偏光の吸光度の比で計算される。
本発明における二色性色素組成物は、下記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素の少なくとも一種を含有することが特に好ましい。下記一般式(I)〜(IV)で表される二色性色素は、ネマチック液晶性を有するのが好ましい。
【0043】
【化7】

【0044】
式中、R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L11は、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し;B11は、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基を表し;nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0045】
上記一般式(I)において、R11〜R14で表される置換基としては以下の基を挙げることができる。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリール基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,5−ジトリフルオロメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
【0046】
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、オキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜15、特に好ましくは2〜10であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは2〜6であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
【0047】
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基(−CH=N−もしくは−N=CH−)、アゾ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。
これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0048】
11〜R14で表される基としては、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、さらに好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0049】
15及びR16で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−オクチル基などが挙げられる。R15及びR16で表されるアルキル基の置換基としては、前記R11〜R14で表される置換基と同義である。R15又はR16がアルキル基を表す場合、R12又はR14と連結して環構造を形成してもよい。R15及びR16は、好ましくは水素原子、アルキル基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、又はエチル基である。
【0050】
11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
該フェニル基又は該ナフチル基が有していてもよい置換基としては、アゾ化合物の溶解性やネマチック液晶性を高めるために導入される基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基、又は配向を固定化するために導入される重合性基を有する基が好ましく、具体的には、前記R11〜R14で表される置換基と同義である。好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イミノ基、アゾ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、ニトロ基、イミノ基、アゾ基である。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、R11〜R14で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0051】
該フェニル基又は該ナフチル基は、これら置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは1個有していることである。フェニル基についてより好ましくは、Lに対してパラ位に1個置換基を有していることである。
【0052】
芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジル基、キノリル基、チオフェニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、キノロニル基、ナフタルイミドイル基、チエノチアゾリル基などが挙げられる。
【0053】
芳香族複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリ基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基がより好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、又はチエノチアゾリル基がさらに好ましい。
【0054】
11は、特に好ましくは、置換基を有していてもよいフェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、又はチエノチアゾリル基である。
【0055】
11は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、又は2価の芳香族複素環基を表す。nは1〜4を表し、nが2以上のとき、複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0056】
該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましい。該芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、及びシアノ基が挙げられる。該芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子が好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子がより好ましく、メチル基、又はハロゲン原子がさらに好ましい。
【0057】
該芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾチアジアゾール基、フタルイミド基、チエノチアゾール基等が挙げられる。中でも、チエノチアゾール基が特に好ましい。
該芳香族複素環基が有していてもよい置換基としては、メチル基、及びエチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;無置換あるいはメチルアミノ基等のアミノ基;アセチルアミノ基、アシルアミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、R11〜R14で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0058】
前記一般式(I)で表されるアゾ色素の好ましい例には、下記一般式(Ia)及び(Ib)のいずれかで表されるアゾ色素が含まれる。
【0059】
【化8】

【0060】
式中、R17a及びR18aはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し;L11aは、−N=N−、−N=CH−、−O(C=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11aは、下記一般式(Ia−I)又は(Ia−III)で表される基を表し;B11a及びB12aはそれぞれ独立に、下記式(Ia−IV)、(Ia−V)、又は(Ia−VI)で表される基を表す;
【0061】
【化9】

【0062】
式中、R19aは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、又は置換基を有していてもよいアシルオキシ基を表す。
【0063】
【化10】

【0064】
式中、mは0〜2の整数を表す。
【0065】
【化11】

【0066】
式中、R17b及びR18bはそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表し;L11bは、−N=N−又は−(C=O)O−を表し;L12bは、−N=CH−、−(C=O)O−、又は−O(C=O)−を表し;A11bは、下記式(Ib−II)又は(Ib−III)で表される基を表し;mは0〜2の整数を表す;
【化12】

【0067】
式中、R19bは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基を表す。
【0068】
前記一般式(Ia)及び(Ib)中、各基が有する置換基の例には、一般式(I)中のR11〜R14で表される置換基の例と同様である。また、アルキル基等の炭素原子を有する基については、炭素原子数の好ましい範囲は、R11〜R14で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0069】
なお、上記一般式(I)、(Ia)及び(Ib)で表される化合物は置換基として、重合性基を有していてもよい。重合性基を有していると、硬膜性が良化されるので好ましい。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。エチレン性不飽和重合性基の例には、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が含まれる。
重合性基は分子末端に位置するのが好ましく、即ち、式(I)中では、R15及び/又はR16の置換基として、並びにAr11の置換基として、存在するのが好ましい。
【0070】
以下に、式(I)で表されるアゾ色素の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
【化15】

【0074】
【化16】

【0075】
【化17】

【0076】
【化18】

【0077】
【化19】

【0078】
【化20】

【0079】
【化21】

【0080】
【化22】

【0081】
【化23】

【0082】
【化24】

【0083】
【化25】

【0084】
【化26】

【0085】
【化27】

【0086】
【化28】

【0087】
式中、R21及びR22はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基を表すが、但し、少なくとも一方は、水素原子以外の基を表す。L22は、アルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO−、−NR−、−NRSO−、又は−SONR−(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)に置換されていてもよい。Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表す。
【0088】
中でも、R21及びR22の一方が、水素原子又はC〜C程度の短鎖の置換基であり、R21及びR22の他方が、C〜C30程度の長鎖の置換基であると、溶解性がより改善されるので好ましい。一般的に、液晶性の発現に関しては、その分子形状及び分極率の異方性等が大きく影響することがよく知られており、液晶便覧(2000年、丸善(株))等に詳しく記載されている。棒状液晶分子の代表的な骨格は、剛直なメソゲンと分子長軸方向の柔軟な末端鎖から成っており、式(II)中のR21及びR22に相当する分子短軸方向の側方置換基は、分子の回転を阻害しない小さな置換基とするか、又は置換していないのが一般的である。側方置換基に特徴を持たせた例としては、親水性(例えばイオン性)の側方置換基を導入することで、スメクチック相の安定化した例が知られているが、安定なネマチック相を発現する例はほとんど知られていない。特に、ネマチック相を発現する棒状液晶性分子の特定の置換位置に、長鎖の置換基を導入することで、配向秩序度を低下させることなく、溶解性を向上させた例は、全く知られていない。
【0089】
21及びR22がそれぞれ表すアルキル基としては、C〜C30のアルキル基が挙げられる。上記短鎖のアルキル基の例としては、C〜Cが好ましく、C〜Cがより好ましい。一方、上記長鎖のアルキル基としては、C〜C30が好ましく、C10〜C30がより好ましく、C10〜C20がさらに好ましい。
【0090】
21及びR22がそれぞれ表すアルコキシ基としては、C〜C30のアルコキシ基が挙げられる。上記短鎖のアルコキシ基の例としては、C〜Cが好ましく、C〜Cがより好ましい。一方、上記長鎖のアルコキシ基としては、C〜C30が好ましく、C10〜C30がより好ましく、C10〜C20がさらに好ましい。
【0091】
21及びR22がそれぞれ表す−L22−Yで表される置換基のうち、L22が表すアルキレン基は、C〜C30が好ましく、C10〜C30がより好ましく、C10〜C20がさらに好ましい。前記アルキレン基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO−、−NR−、−NRSO−、及び−SONR−(Rは水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)からなる2価基の群から選択された1以上によって置換されていてもよい。勿論、前記2価基の群から選択される2以上の基によって置換されていてもよい。また、L22の末端であって、Yと結合するCHが、上記2価の基のいずれかで置換されていてもよい。また、L22の先端であって、フェニル基と結合するCHが、上記2価の基のいずれかで置換されていてもよい。
【0092】
特に、溶解性向上の観点では、L22がアルキレンオキシ基である、又はアルキレンオキシ基を含んでいるのが好ましく、L22が、−(OCHCH−(但し、pは3以上の数を表し、3〜10であるのが好ましく、3〜6であるのがより好ましい)で表されるポリエチレンオキシ基であるか、又はポリエチレンオキシ基を含んでいるのがさらに好ましい。
以下に、−L22−の例を示すが、以下の例に限定されるものではない。下記式中、qは1以上の数であり、1〜10であるのが好ましく、2〜6であるのがより好ましい。また、rは5〜30であり、好ましくは10〜30であり、より好ましくは10〜20である。
−(OCHCH
−(OCHCH−O−(CH
−(OCHCH−OC(=O)−(CH
−(OCHCH−OC(=O)NH−(CH
−O(CH
−(CH
【0093】
21及びR22がそれぞれ表す−L22−Yで表される置換基のうち、Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(好ましくはC〜C10、より好ましくはC〜Cのアルコキシ基である)、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表す。
22とYとの組合せにより、−L22−Yの末端は、例えばカルボキシル基やアミノ基、アンモニウム基などの分子間相互作用を強める置換基となり得るし、またスルホニルオキシ基、ハロゲン原子等の脱離基にもなり得る。
また、−L22−Yの末端は、架橋性基、重合性基など、他分子と共有結合を形成する置換基であってもよく、例えば、−O−C(=O)CH=CH、及び−O−C(=O)C(CH)=CH等の重合性基であってもよい。
【0094】
硬化膜用の材料として利用する場合は、Yは、重合性基であることが好ましい(但し、前記式(II)の化合物が重合性基を有していなくても、併用される化合物が重合性であれば、当該他の化合物の重合反応を進行させることで、式(II)の化合物の配向を固定することができる)。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。前記式で表される重合性基の例には、下記式(M−1)で表されるアクリレート基、及び下記式(M−2)で表されるメタクリレーと基が含まれる。
【0095】
【化29】

【0096】
また、開環重合性基も好ましく、例えば、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基又はオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が特に好ましい。
【0097】
前記一般式(II)中、L21はそれぞれ、アゾ基(−N=N−)、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)、イミノ基(−N=CH−)、及びビニレン基(−C=C−)からなる群から選ばれる連結基を表す。中でも、ビニレン基が好ましい。
【0098】
前記前記一般式(II)中、Dyeはそれぞれ、下記一般式(IIa)で表されるアゾ色素残基を表す。
【0099】
【化30】

【0100】
式(IIa)中、*はL21との結合部を表し;X21は、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、無置換アミノ基、又はモノもしくはジアルキルアミノ基を表し;Ar21は、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し;nは1〜3の整数を表し、nが2以上の時、複数あるAr21は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0101】
21で表されるアルキル基は、好ましくはC〜C12、より好ましくは、C〜Cのアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が含まれる。アルキル基は置換基を有していてもよく、該置換基の例には、ヒドロキシ基、カルボキシル基、及び重合性基が含まれる。重合性基の好ましい例は、上記Yが表す重合性基の好ましい例と同様である。
【0102】
21で表されるアルコキシは、好ましくはC〜C20、より好ましくはC〜C10、さらに好ましくはC〜Cのアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基、ペンタオキシ基、ヘキサオキシ基、ヘプタオキシ基、オクタオキシ基などが挙げられる。アルコキシ基は置換基を有していてもよく、該置換基の例には、ヒドロキシ基、カルボキシル基、及び重合性基が含まれる。重合性基の好ましい例は、上記Yが表す重合性基の好ましい例と同様である。
【0103】
21で表される置換もしくは無置換のアミノ基は、好ましくはC〜C20、より好ましくはC10、さらに好ましくはC〜Cのアミノ基である。具体的には、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチル・ヘキシルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる。
【0104】
中でも、X21はアルコキシ基であるのが好ましい。
【0105】
前記一般式(II)中、Ar21は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基の例には、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、ピリジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、キノリン環基、チオフェン環基、チアゾール環基、チアジアゾール環基、チエノチアゾール環基などが含まれる。中でも、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、チエノチアゾール環基が好ましく、1,4−フェニレン基が最も好ましい。
【0106】
Ar21が有してもよい置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、シアノ基などが好ましく、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましい。
【0107】
nは、1又は2であるのが好ましく、1がより好ましい。
【0108】
前記一般式(II)で表される化合物の例には、以下の一般式(IIb)で表される化合物が含まれる。式中の各記号の意義は、式(II)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0109】
【化31】

【0110】
式中、X21は互いに同一又は異なり、C1−12のアルコキシ基を表すのが好ましく;R21及びR22は互いに異なっているのが好ましく、R21及びR22の一方が、水素原子又はC〜Cの短鎖の置換基(アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基)であり、R21及びR22の他方が、C〜C30の長鎖の置換基(アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基)であるのが好ましい。あるいは、R21及びR22はそれぞれ、−L22−Yで表される置換基であり、L22がアルキレンオキシ基である、又はアルキレンオキシ基を含んでいるのも好ましい。
【0111】
以下に、前記一般式(II)で表される化合物の具体例を示すが、以下の化合物例に限定されるものではない。
【0112】
【化32】

【0113】
【化33】

【0114】
【化34】

【0115】
【化35】

【0116】
式中、R31〜R35はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R36及びR37はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基を表し;L31は2価の連結基を表し;A31は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0117】
31〜R35で表される置換基の例としては、前記式(I)中のR11〜R14がそれぞれ表す置換基の例と同様である。好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、最も好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0118】
前記一般式(III)において、R36及びR37で表される置換基を有していてもよいアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−オクチル基などが挙げられる。R36及びR37で表されるアルキル基の置換基としては、前記R31〜R35で表される置換基と同義である。R36及びR37がアルキル基を表す場合、互いに連結して環構造を形成してもよい。R36又はR37がアルキル基を表す場合、それぞれR32又はR34と連結して環構造を形成してもよい。
36及びR37で表される基としては、特に好ましくは水素原子又はアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0119】
前記一般式(III)において、Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換基を有していてもよい芳香族複素環基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン環基を表す。
31で表される基が有していてもよい置換基としては、アゾ化合物の溶解性やネマチック液晶性を高めるために導入される基、色素としての色調を調節するために導入される電子供与性や電子吸引性を有する基、又は配向を固定化するために導入される重合性基を有する基が好ましく、具体的には、前記R31〜R35で表される置換基と同義である。好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イミノ基、アゾ基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、ニトロ基、イミノ基、アゾ基である。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、R31〜R35で表される置換基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0120】
該芳香族炭化水素基、該芳香族複素環基又は該シクロヘキサン環基は、これら置換基を1〜5個有していてもよく、好ましくは1個有していることである。Q31がフェニル基である場合は、L31に対してパラ位に1個置換基を有しているのが好ましく、シクロヘキサン環基である場合は、L31に対して4位にトランス配置となるように1個置換基を有しているのが好ましい。
【0121】
31で表される芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジル基、キノリル基、チオフェニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、キノロニル基、ナフタルイミドイル基、チエノチアゾリル基などが挙げられる。
芳香族複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリ基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、チアジアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が特に好ましく、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、又はチエノチアゾリル基が最も好ましい。
【0122】
31で表される基としては、特に好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基、チエノチアゾリル基又はシクロヘキサン環基であり、より好ましくは、フェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾリル基又はシクロヘキサン環基である。
【0123】
前記一般式(III)において、L31で表される連結基としては、単結合、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基などが挙げられる)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、エテニレン基などが挙げられる)、アルキニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、エチニレン基などが挙げられる)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチレンオキシ基などが挙げられる)、アミド基、エーテル基、アシルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−OC(=O)−)、イミノ基(−CH=N−もしくは−N=CH−)、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、アゾ基、アゾキシ基、又はこれらを2つ以上組合せて構成される炭素数0〜60の2価の連結基が挙げられる。
【0124】
31で表される基としては、特に好ましくは単結合、アミド基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、イミノ基、アゾ基又はアゾキシ基であり、よりさらに好ましくはアゾ基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、又はイミノ基である。
【0125】
前記一般式(III)において、A31は酸素原子又は硫黄原子を表し、好ましくは硫黄原子である。
【0126】
前記一般式(III)で表される化合物は、置換基として、重合性基を有していてもよい。重合性基を有していると、硬膜性が良化されるので好ましい。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。エチレン性不飽和重合性基の例には、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が含まれる。
重合性基は分子末端に位置するのが好ましく、即ち、式(III)中では、R36及び/又はR37の置換基として、並びにQの置換基として、存在するのが好ましい。
【0127】
前記一般式(III)で表される化合物のうち、特に好ましいものは、下記一般式(IIIa)で表される化合物である。
【0128】
【化36】

【0129】
式中、R31〜R35については、上記式(III)中のそれぞれと同義であり、好ましい範囲も同様である。B31は窒素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子を表し;L32はアゾ基、アシルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−OC(=O)−)、又はイミノ基を表す。
【0130】
前記一般式(IIIa)において、R35は水素原子又はメチル基を表すのが好ましく、より好ましくは水素原子である。
【0131】
前記一般式(IIIa)において、B31が炭素原子の場合に有していてもよい置換基は、前記一般式(III)においてQ31が有していてもよい置換基と同義であり、好ましい範囲も同一である。
前記一般式(IIIa)において、L32はアゾ基、アシルオキシ基、オキシカルボニル基、又はイミノ基を表し、好ましくはアゾ基又はアシルオキシ基、オキシカルボニル基であり、より好ましくはアゾ基である。
【0132】
以下に、式(III)で表される化合物の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0133】
【化37】

【0134】
【化38】

【0135】
【化39】

【0136】
【化40】

【0137】
【化41】

【0138】
【化42】

【0139】
【化43】

【0140】
【化44】

【0141】
【化45】

【0142】
式中、R41及びR42はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Arは、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;R43及びR44はそれぞれ、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を表し、互いに結合して複素環を形成していてもよい。
【0143】
一般式(IV)において、R41及びR42がそれぞれ表す置換基の例としては、前記一般式(I)中のR11〜R14がそれぞれ表す置換基の例と同様である。R41及びR42としては、好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホ基であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基であり、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、シアノ基であり、よりさらに好ましくは水素原子、メチル基、シアノ基である。
【0144】
41とR42は互いに連結して環を形成することも好ましい。特に芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を形成することが好ましい。芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環などが挙げられる。
41とR42が互いに連結して形成する環状基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環であり、より好ましくはベンゼン環又はピリジン環であり、もっとも好ましくはピリジン環である。
41とR42は互いに連結して形成する環状基は置換基を有していてもよく、その範囲はR、Rで表される基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0145】
前記一般式(IV)で表される化合物の例には、以下の一般式(IV’)で表される化合物が含まれる。
【0146】
【化46】

【0147】
式中、式(IV)中と同一の符号は、それぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。A42は、N又はCHを表し、R47及びR48はそれぞれ、水素原子又は置換基を表す。R47及びR48のいずれか一方は置換基であるのが好ましく、双方が置換基であるのも好ましい。置換基の好ましい例は、R41及びR42が表す置換基の例と同様であり、即ち、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホ基であるのが好ましく、より好ましくは、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基であり、さらに好ましくはアルキル基、シアノ基であり、最も好ましくはメチル基、シアノ基である。例えば、R47及びR48のいずれか一方が炭素原子数1〜4のアルキル基であり、他方がシアノ基である化合物例も好ましい。
【0148】
一般式(IV’)において、Arで表される芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環などが挙げられる。
Arで表される基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環であり、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、チオフェン環であり、もっとも好ましくはベンゼン環である。
Arは置換基を有していてもよく、その範囲は前記R41、R42で表される基と同様である。
Arが有していてもよい置換基は、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基であり、よりさらに好ましくは、メチル基である。Arは無置換であるのも好ましい。
【0149】
Arとアミノ基の結合は、Arとアゾ基の結合と平行であることが、分子の直線性を高め、より大きな分子長及びアスペクト比を得られるため好ましい。例えばArがアゾ基及びアミノ基と結合した6員環を含む場合、アミノ基はアゾ基に対して4位に結合していることが好ましく、アゾ基及びアミノ基と結合した5員環を含む場合、アミノ基はアゾ基に対して3位又は4位に結合していることが好ましい。
【0150】
一般式(IV’)において、R43及びR44で表されるアルキル基の範囲は前記R41、R42で表されるアルキル基と同様である。該アルキル基は置換基を有していてもよく、当該置換基の例は、R41、R42で表される置換基の例と同様である。R43及びR44が置換されていてもよいアルキル基を表す場合、互いに結合して複素環を形成していてもよい。また、可能な場合にはArが有する置換基と結合して環を形成していてもよい。
【0151】
43とR44は互いに連結して環を形成することが好ましい。好ましくは6員環又は5員環であり、より好ましくは6員環である。該環状基は、炭素とともに、炭素以外の原子を構成原子として有していてもよい。炭素以外の構成原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。該環状基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
43とR44からなる環状基として具体的には、3−ピロリン環、ピロリジン環、3−イミダゾリン環、イミダゾリジン環、4−オキサゾリン環、オキサゾリジン環、4−チアゾリン環、チアゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、アゼパン環、アゾカン環などが挙げられる。
43とR44からなる環状基は、好ましくはピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環であり、より好ましくはピペリジン環、ピペラジン環であり、もっとも好ましくはピペラジン環である。
【0152】
43とR44からなる環状基は置換基を有していてもよく、その範囲はR41及びR42で表される基と同様である。該環状基は剛直な直線状の置換基を一つ有し、該環状基と該置換基の結合は、該環状基とArの結合と平行であることが、分子の直線性を高め、より大きな分子長及びアスペクト比を得られるため好ましい。
【0153】
一般式(IV)で表される二色性色素のうち、特に好ましいものは、下記一般式(IVa)で表される二色性色素である。
【0154】
【化47】

【0155】
式中、R41及びR42はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Arは、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;A41は炭素原子又は窒素原子を表し;L41、L42、R45、及びR46は単結合又は2価の連結基を表し;Q41は、置換されていてもよい、環状炭化水素基又は複素環基を表し;Q42は、置換されていてもよい、2価の環状炭化水素基又は複素環基を表し;nは0〜3の整数を表し、nが2以上の時、複数あるL42及びQ42は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0156】
一般式(IVa)において、R41及びR42で表される基の範囲は、一般式(IVa)におけるR41及びR42と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(IVa)において、Arで表される2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基の範囲は、一般式(IV)におけるArと同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(IVa)において、A41は好ましくは窒素原子である。
【0157】
一般式(IVa)において、L41、L42、R45、及びR46で表される連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基などが挙げられる)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、エテニレン基などが挙げられる)、アルキニレン基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜6であり、例えば、エチニレン基などが挙げられる)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6であり、例えば、メチレンオキシ基などが挙げられる)、アミド基、エーテル基、アシルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−OC(=O)−)、イミノ基(−CH=N−もしくは−N=CH−)、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、カルボニル基、−NR−基(ここで、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、アゾ基、アゾキシ基、又はこれらを2つ以上組合せて構成される炭素数0〜60の2価の連結基が挙げられる。
【0158】
41で表される連結基としては、好ましくは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシ基、オキシカルボニル基、アシル基、カルバモイル基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基であり、さらに好ましくは単結合、エチレン基である。
42で表される連結基としては、好ましくは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、オキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、イミノ基、アゾ基、アゾキシ基であり、より好ましくは単結合、オキシカルボニル基、アシルオキシ基、イミノ基、アゾ基、アゾキシ基であり、さらに好ましくは単結合、オキシカルボニル基、アシルオキシ基である。
【0159】
45、R46で表される連結基としては、好ましくは単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アルキレンオキシ基、アシル基であり、より好ましくは単結合、アルキレン基であり、さらに好ましくは単結合、メチレン基である。
一般式(IVa)中、窒素原子、メチレン基、R45、R46、A41で形成される環の構成原子数は、R45及びR46によって決定し、例えば、R45及びR46がいずれも単結合である場合は、4員環になり得;いずれか一方が単結合であり、他方がメチレン基である場合は、5員環になり得;さらに、R45及びR46いずれもメチレン基である場合は、6員環になり得る。
一般式(IVa)中、窒素原子、メチレン基、R45、R46、A41で形成される環は、好ましくは6員環又は5員環であり、より好ましくは6員環である。
【0160】
一般式(IVa)において、Q41で表される基は、好ましくは芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、芳香族複素環基、シクロヘキサン環基である。
41で表される芳香族複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。芳香族複素環基として具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環などが挙げられる。
41で表される基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノリン環、チエノチアゾール環、シクロヘキサン環であり、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、シクロヘキサン環であり、もっとも好ましくはベンゼン環、ピリジン環、シクロヘキサン環である。
【0161】
41は置換基を有していてもよく、その範囲は前記R41、R42で表される基と同様である。
41が有していてもよい置換基は、好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアシルアミノ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルホニルアミノ基、置換基を有していてもよいスルファモイル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいスルホニル基、置換基を有していてもよいウレイド基、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イミノ基、アゾ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいオキシカルボニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、ニトロ基、イミノ基、アゾ基である。これらの置換基のうち、炭素原子を有するものについては、炭素原子数の好ましい範囲は、前記R41、R42で表される基についての炭素原子数の好ましい範囲と同様である。
【0162】
41は置換基を一つ有し、Q41と該置換基の結合は、Q41とL41又はL42の結合と平行であることが、分子の直線性を高め、より大きな分子長及びアスペクト比を得られるため好ましい。特にn=0の場合は、Q41が前記位置に置換基を有するのが好ましい。
【0163】
一般式(IVa)において、Q42は、置換されていてもよい、2価の環状炭化水素基又は複素環基を表す。
42で表される2価の環状炭化水素基は、芳香族性であっても、非芳香族性であってもよい。2価の環状炭化水素基の好ましい例には、芳香族炭化水素基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10であり、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、及びシクロヘキサン環基が含まれる。
42で表される2価の環状複素環基も、芳香族性であっても非芳香族性であってもよい。複素環基としては、単環又は二環性の複素環由来の基が好ましい。複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。複素環基として具体的には、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環、3−ピロリン環、ピロリジン環、3−イミダゾリン環、イミダゾリジン環、4−オキサゾリン環、オキサゾリジン環、4−チアゾリン環、チアゾリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、チオモルホリン環、アゼパン環、アゾカン環などが挙げられる。
42で表される基は、好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、キノリン環、チオフェン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チアジアゾール環、キノロン環、ナフタルイミド環、チエノチアゾール環、シクロヘキサン環であり、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、チアゾール環、チアジアゾール環、シクロヘキサン環であり、よりさらに好ましくは、ベンゼン環、シクロヘキサン環、ピペラジン環である。
【0164】
42は置換基を有していてもよく、その範囲は前記R41、R42で表される基と同様である。
42が有していてもよい置換基の範囲は、前記Arが有していてもよい置換基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
42とL41及びL42、又は二つのL42との結合は、平行であることが、分子の直線性を高め、より大きな分子長及びアスペクト比を得られるため好ましい。
【0165】
一般式(IVa)中、nは0〜3の整数を表し、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1であり、最も好ましくは1である。
【0166】
一般式(IVa)で表される二色性色素のうち、特に好ましいものは、下記一般式(IVb)で表される二色性色素である。
【0167】
【化48】

【0168】
式中、R41及びR42はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し;A41は炭素原子又は窒素原子を表し;L41及びL42はそれぞれ、単結合又は2価の連結基を表し;Q41は、置換されていてもよい、環状炭化水素基又は複素環基を表し;Q42は、置換されていてもよい、2価の環状炭化水素基又は複素環基を表し;nは0〜3の整数を表し、nが2以上の時、複数あるL42及びQ42は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0169】
一般式(IVb)において、R41、R42、L41、L42、Q41、Q42で表される基の範囲は、一般式(IV)におけるR41、R42、L41、L42、Q41、Q42と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(IVb)において、A41は好ましくは窒素原子である。
【0170】
以下に、式(IV)で表される化合物の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0171】
【化49】

【0172】
【化50】

【0173】
【化51】

【0174】
【化52】

【0175】
【化53】

【0176】
【化54】

【0177】
【化55】

【0178】
【化56】

【0179】
【化57】

【0180】
【化58】

【0181】
【化59】

【0182】
【化60】

【0183】
【化61】

【0184】
前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される化合物(アゾ色素)は、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」(A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)、「総説合成染料」(堀口博著、三共出版、1968年)及びこれらに引用されている文献に記載の方法を参考にして合成することができる。
また、本発明における前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素は、Journal of Materials Chemistry (1999), 9(11), 2755-2763等に記載の方法に準じて容易に合成することができる。
【0185】
前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素は、その分子構造から明らかなように、分子形状が平板で直線性がよく、剛直なコア部分と柔軟な側鎖部分を有しており、且つアゾ色素の分子長軸末端に極性なアミノ基を有するため、それ自身液晶性、特にネマチック液晶性を発現しやすい性質を有しているという特徴を有する。
このようにして、本発明において、上記(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表される二色性色素の少なくとも一種を含有する二色性色素組成物は、液晶性を有するものとなる。
さらに、前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素は、分子の平面性が高いため強い分子間相互作用が働き、分子同士が会合状態を形成しやすい性質も有している。
【0186】
本発明に係る前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素を含有する二色性色素組成物は、会合形成により可視の広い波長領域において高い吸光度を表すということだけでなく、この色素を含有した組成物が、具体的にはネマチック液晶性を有するため、例えば、ラビングしたポリビニルアルコール配向膜表面への塗布などの積層プロセスを経ることによって、高次の分子配向状態を実現できる。したがって、本発明に係る前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素を含有する二色性色素組成物を二色性色素層とし立体画像印刷物を作製すれば、偏光特性が高いため、クロストークやゴースト像のない鮮明な立体画像を提供することができる。
前記二色性色素組成物は、後述する実施例に記載の方法で算出した二色比(D)を15以上に高めることができ、好ましい(D)は18以上である。
【0187】
前記一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素の液晶性については、好ましくは10〜300℃、より好ましくは100〜250℃でネマチック液晶相を示す。
【0188】
本発明における二色性色素組成物は一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素を1種以上含有することが好ましい。アゾ色素の組み合わせについては特に制限はないが、製造される立体画像印刷物が高い偏光度と色相を達成するために、2種以上を混合してもよい。
前記一般式(Ia)で表わされるアゾ色素は、マゼンタのアゾ色素であり、一般式(Ib)及び(II)で表わされるアゾ色素は、イエロー又はマゼンタのアゾ色素であり、一般式(III)及び(IV)で表わされるアゾ色素は、シアンのアゾ色素である。
【0189】
なお、前記二色性色素は、一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素以外の色素であってもよい。一般式(I)、(II)、(III)、又は(IV)で表されるアゾ色素以外の色素も、液晶性を示す化合物から選択されるのが好ましい。このような色素としては、例えば、シアニン系色素、アゾ金属錯体、フタロシアニン系色素、ピリリウム系色素、チオピリリウム系色素、アズレニウム系色素、スクアリリウム系色素、キノン系色素、トリフェニルメタン系色素、及びトリアリルメタン系色素等を挙げることができる。好ましくは、スクアリリウム系色素である。特に、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Display」(A. V. Ivashchenko著、CRC社、1994年)に記載のものも用いることができる。
【0190】
本発明に使用可能なスクアリリウム系色素は、下記一般式(VI)で表されることが特に好ましい。
【0191】
【化62】

【0192】
式中、A及びAはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、炭化水素環基又は複素環基を表わす。
【0193】
炭化水素環基は、5〜20員の単環又は縮合環の基であるのが好ましい。炭化水素環基は、芳香族環であっても、非芳香族環であってもよい。炭化水素環を構成している炭素原子は、水素原子以外の原子で置換されていてもよい。例えば、炭化水素環を構成している1以上の炭素原子は、C=O、C=S又はC=NR(Rは水素原子又はC1−10のアルキル基)であってもよい。また、炭化水素環を構成している1以上の炭素原子は、置換基を有していてもよく、置換基の具体例については、後述する置換基群Gから選択することができる。前記炭化水素環基の例には、以下の基が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0194】
【化63】

【0195】
上記式中、*は、スクアリウム骨格に結合する部位を示し、R〜Rはそれぞれ水素原子又は置換基を表し、可能であれば互いに結合して環構造を形成していてもよい。該置換基は、後述する置換基群Gから選択することができる。
特に、以下の例が好ましい。
式A−1中、Rは−N(Rc1)(Rc2)であり、Rc1及びRc2はそれぞれ、水素原子、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基を表わし、R及びRが水素原子であり、即ち、下記式A−1aで表される基である。
式A−2中、Rがヒドロキシ基であり、即ち、下記式A−2aで表される基である。
式A−3中、Rがヒドロキシ基であり、R及びRが水素原子であり、即ち、下記式A−3aで表される基である。
式A−4中、Rがヒドロキシ基であり、R、R、R及びRが水素原子であり、即ち、下記式A−4aで表される基である。
式A−5中、Rがヒドロキシ基であり、即ち、下記式A−5aで表される基である。
【0196】
【化64】

【0197】
上記式A−1a中、Rc1及びRc2は各々独立に、水素原子又は炭素数1〜10の置換もしくは無置換のアルキル基を表わし;上記式中のその他の記号は、上記式A−1〜A−5中のそれぞれと同義である。アルキル基の置換基の例としては、後述の置換基群Gが挙げられ、好ましい範囲も同様である。Rc1及びRc2が、置換もしくは無置換のアルキル基である場合、互いに連結して、含窒素複素環基を形成してもよい。また、Rc1及びRc2の少なくとも一方が、式A−1a中のベンゼン環の炭素原子と結合して、縮合環を形成していてもよい。例えば、以下の式A−1b及びA−1cであってもよい。
【0198】
【化65】

【0199】
式中、*は、スクアリウム骨格に結合する部位を示し、Rは、水素原子又は置換基を表す。該置換基の例には、後述の置換基群Gが含まれる。Rは、ベンゼン環を1以上含む置換基であるのが好ましい。
【0200】
複素環基は、5〜20員の単環又は縮合環の基であるのが好ましい。複素環基は、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子の少なくとも1つを環構成原子として有する。また、環構成原子として1以上の炭素原子を含んでいてもよく、複素環を構成している、ヘテロ原子又は炭素原子は、水素原子以外の原子で置換されていてもよい。例えば、複素環を構成している1以上の硫黄原子は、例えば、S=O又はS(O)であってもよく、また複素環を構成している1以上の炭素原子は、C=O、C=S又はC=NR(Rは水素原子又はC1−10のアルキル基)であってもよい。また、複素環基は、芳香族環であっても、非芳香族環であってもよい。複素環基を構成している1以上のヘテロ原子及び/又は炭素原子は、置換基を有していてもよく、置換基の具体例については、後述する置換基群Gから選択することができる。前記複素環基の例には、以下の基が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0201】
【化66】

【0202】
【化67】

【0203】
上記式中、*は、スクアリウム骨格に結合する部位を示し、R〜Rはそれぞれ水素原子又は置換基を表し、可能であれば互いに結合して環構造を形成していてもよい。該置換基は、後述する置換基群Gから選択することができる。
A−6〜A−43中、Rcはヒドロキシ基(OH)又はヒドロチオキシ基(SH)であるのが好ましい。
【0204】
好ましい炭化水素環基は、A−1、A−2、及びA−4で表される炭化水素環基である。より好ましくは、A−1a、A−2a及びA−4aである。特に好ましくは、A−1及びA−2で表される炭化水素環基であり、より好ましくはA−1a及びA−2aである。さらに好ましくは、A−1aであり、中でも、R及びRが水素原子又は水酸基を表わすA−1aで表される炭化水素環基である。
【0205】
好ましい複素環基は、A−6、A−7、A−8、A−9、A−10、A−11、A−14、A−24、A−34、A−37及びA−39で示される複素環である。特に好ましくは、A−6、A−7、A−8、A−9、A−11、A−14、A−34及びA−39で示される複素環である。これらの式中、Rcはヒドロキシ基(OH)又はヒドロチオキシ基(SH)であるのがより好ましい。
【0206】
前記式(VI)中、A及びAの少なくとも一方が、A−1(より好ましくはA−1a)であることが特に好ましい。
【0207】
前記炭化水素環基及び複素環基は1以上の置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、下記の置換基群Gが含まれる。
置換基群G:
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、メトキシエチル、エトキシカルボニルエチル、シアノエチル、ジエチルアミノエチル、ヒドロキシエチル、クロロエチル、アセトキシエチル、トリフルオロメチル等);炭素数7〜18(好ましくは炭素数7〜12)の置換もしくは無置換のアラルキル基(例、ベンジル、カルボキシベンジル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルケニル基(例、ビニル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアルキニル基(例、エチニル等);炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜10)の置換もしくは無置換のアリール基(例、フェニル、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3、5−ジカルボキシフェニル等);
【0208】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシル基(例、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、クロロアセチル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルキル又はアリールスルホニル基(例、メタンスルホニル、p−トルエンスルホニル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルスルフィニル基(例、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、オクタンスルフィニル等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)のアルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等);炭素数7〜18(好ましくは炭素数7〜12)のアリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル、4−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェニルカルボニル等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ、メトキシエトキシ等);炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜10)の置換もしくは無置換のアリールオキシ基(例、フェノキシ、4−メトキシフェノキシ等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ等);炭素数6〜10のアリールチオ基(例、フェニルチオ等);
【0209】
炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のアシルオキシ基(例、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルキシ、ベンゾイルオキシ、クロロアセチルオキシ等);炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のスルホニルオキシ基(例、メタンスルホニルオキシ等);炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基(例、メチルカルバモイルオキシ、ジエチルカルバモイルオキシ等);無置換のアミノ基又は炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換アミノ基(例、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ、メトキシフェニルアミノ、クロロフェニルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ピロリジノ、ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、n−ブトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、メチルカルバモイルアミノ、フェニルカルバモイルアミノ、エチルチオカルバモイルアミノ、メチルスルファモイルアミノ、フェニルスルファモイルアミノ、アセチルアミノ、エチルカルボニルアミノ、エチルチオカルボニルアミノ、シクロヘキシルカルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ、クロロアセチルアミノ、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ等);
【0210】
炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換もしくは無置換のカルバモイル基(例、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、モルホリノカルバモイル、ピロリジノカルバモイル等);無置換のスルファモイル基、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換スルファモイル基(例、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル等);ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素等);水酸基;ニトロ基;シアノ基;カルボキシル基;ヘテロ環基(例、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、インドレニン、ピリジン、スルホラン、フラン、チオフェン、ピラゾール、ピロール、クロマン、クマリンなど)。
【0211】
式(VI)で表される二色性スクアリウム色素の例には、以下の例示化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0212】
【化68】

【0213】
【化69】

【0214】
【化70】

【0215】
【化71】

【0216】
本発明における前記一般式(VI)で表され二色性スクアリリウム色素は、Journal of Chemical Society, Perkin Trans. 1 (2000), 599-603、 Synthesis (2002), No.3, 413-417等に記載の方法に準じて容易に合成することができる。
【0217】
本発明に使用する二色性色素は、遷移モーメントと分子長軸のなす角度が0度以上20度以下であることが好ましく、より好ましくは0度以上15度以下であり、さらに好ましくは0度以上10度以下であり、特に好ましくは0度以上5度以下である。ここで分子長軸とは、化合物中で原子間距離が最大となる2つの原子を結ぶ軸を言う。遷移モーメントの方向は分子軌道計算により求めることができ、そこから分子長軸となす角度も計算することができる。
【0218】
本発明に使用する二色性色素は、剛直な直線状の構造であることが好ましい。具体的には、分子長は好ましくは17Å以上であり、より好ましくは20Å以上であり、さらに好ましくは25Å以上である。また、アスペクト比は好ましくは1.7以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは2.5以上である。これによって良好な一軸配向が達成され、偏光性能の高い二色性色素層及び立体画像印刷物を得ることができる。
ここで分子長とは、化合物中で最大の原子間距離に両端の2原子のファンデルワールス半径を加えた値である。アスペクト比とは分子長/分子幅であり、分子幅とは、分子長軸に垂直な面に各原子を投影したときの最大の原子間距離に両端の2原子のファンデルワールス半径を加えた値である。
【0219】
前記二色性色素組成物は、1種以上の前記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、又は(VI)で表される色素を主成分として含有する。具体的には、前記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、又は(VI)で表される色素の含有量は、含有される全色素の合計の含有量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。上限値は100質量%であり、即ち、含有される色素が全て、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、又は(VI)で表される色素であっても勿論よい。
【0220】
また、前記二色性色素組成物に含まれる、溶剤を除く全固形分において、1種以上の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、又は(VI)で表される二色性色素の含有量は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。上限値は特に制限されないが、下記の界面活性剤等、他の添加剤を含有する態様では、それらの効果を得るためには、前記二色性色素組成物に含まれる、溶剤を除く全固形分における、1種以上の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、又は(VI)で表される二色性色素の含有量は、95質量%以下であるのが好ましく、90質量%以下であるのがより好ましい。
【0221】
前記二色性色素組成物の塗布液を配向膜上に適用すると、二色性色素は配向膜との界面では配向膜のチルト角で配向し、空気との界面では空気界面のチルト角で配向する。本発明の二色性色素組成物塗布液を配向膜の表面に塗布後、二色性色素を均一配向(モノドメイン配向)させることで、水平配向を実現することができる。
【0222】
本発明において、チルト角とは、二色性色素の分子の長軸方向と界面(配向膜界面あるいは空気界面)のなす角度を指す。配向膜側のチルト角を有る程度小さくし水平配向させることにより立体画像印刷物として好ましい光学性能がより効果的に得られる。したがって、クロストーク及びゴースト像の抑制の観点から、好ましい配向膜側のチルト角は0°〜10°、さらに好ましくは0°〜5°、特に好ましいのは0°〜2°、最も好ましくは0°〜1°である。また、好ましい空気界面側のチルト角は0°〜10°、さらに好ましくは0〜5°、特に好ましいのは0〜2°である。
【0223】
一般的に、空気界面側の二色性色素のチルト角は、所望により添加される他の化合物(例えば、特開2005−99248号公報、特開2005−134884号公報、特開2006−126768号公報、特開2006−267183号公報記載の水平配向化剤など)を選択することにより調整することができ、本発明の二色性色素層として、好ましい水平配向状態を実現することができる。
また、配向膜側の二色性色素のチルト角は、配向膜チルト角制御剤等により制御することができる。
【0224】
前記二色性色素組成物は、上記二色性色素以外に、1種以上の添加剤を含有していてもよい。前記二色性色素組成物は、ラジカル重合性基を有する非液晶性の多官能モノマー、重合開始剤、風ムラ防止剤、ハジキ防止剤、糖類、防黴、抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤等を含有していてもよい。
【0225】
また、本発明の立体画像印刷物では、前記画像層が、X線回折測定において、配向軸垂直方向の周期構造に由来する回折ピークを示し、該回折ピークの少なくとも一つが表す周期が3.0〜15.0Åであり、且、該回折ピークの強度が、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で極大値を示さないことも好ましい態様である。
【0226】
ここで配向軸とは、二色性色素の画像層が直線偏光に対して最も大きな吸光度を示す方向を意味し、通常、配向処理を行なった方向と一致する。例えば、二色性色素組成物の水平配向を固定した膜では、配向軸は、膜面内の軸であって、配向処理方向(本発明でラビング配向膜を利用した場合、そのラビング方向と一致し、光配向膜を利用した場合、光配向膜への光照射により発現する複屈折率の最も大きい方向と一致する)と一致する。
【0227】
一般に、画像層を形成する二色性色素(特にアゾ系二色性色素)は、アスペクト比(=分子長軸長/分子短軸長)の大きな棒状分子であり、分子長軸方向とほぼ一致する方向に、可視光を吸収する遷移モーメントが存在する(非特許文献 Dichroic Dyes for Liquid Crystal Displays)。そのため、二色性色素の分子長軸と配向軸のなす角度が平均して小さく、ばらつきが小さいほど、二色性色素から形成される画像層は、高い二色比を示す。
【0228】
前記画像層は、配向軸垂直方向の周期に由来する回折ピークを示すことが好ましい。該周期は、例えば、分子長軸を配向軸方向にそろえて配向した二色性色素の、分子短軸方向の分子間距離に対応し、本発明では、その範囲は3.0〜15.0Åが好ましく、より好ましくは3.0〜10.0Åであり、さらに好ましくは3.0〜6.0Åであり、特に好ましくは3.3〜5.5Åである。
【0229】
前記二色性色素の画像層は、上記回折ピークについて、配向軸に垂直な面内の膜法線方向±70°の範囲で強度分布を測定したとき、極大値を示さないことも好ましい。該測定において回折ピークの強度が極大値を示した場合、それは配向軸垂直方向、即ち、分子短軸方向のパッキングに異方性があることを示している。このような集合状態として具体的には、結晶、ヘキサチック相、クリスタル相などが挙げられる。パッキングに異方性があると、不連続なパッキングによってドメインと粒界を生じ、ヘイズの発生やドメインごとの配向乱れ、偏光解消を招く恐れがあり好ましくない。本発明に係わる画像層は、配向軸垂直方向のパッキングに異方性がないため、ドメインと粒界を生じることなく、均一な膜を形成する。このような集合状態として、具体的には、ネマチック相、スメクチックA相、これらの相の過冷却状態などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、複数の集合状態が混在して、全体として、上記回折ピークの特徴を示す態様であってもよい。
【0230】
前記二色性色素から形成される画像層は、一般に膜に垂直又は垂直に近い角度で入射する光に対して用いられるため、面内方向に高い二色比を有することが好ましい。そのため、二色性色素の画像層は面内方向に周期構造を有し、該周期構造に由来する回折ピークを示すことが好ましい。
【0231】
二色性色素の画像層は、配向軸平行方向の周期に由来する回折ピークを示すことが好ましい。特に、配向軸垂直方向に隣接した分子が層を形成し、該層が配向軸平行方向に積層していることが好ましい。このような集合状態は、ネマチック相より高秩序なスメクチック相に類似のものであり、高い二色比が得られる。該周期は例えば、分子長又はその2倍に対応する場合を含み、その範囲は3.0〜50.0Åであり、好ましくは10.0〜45.0Åであり、より好ましくは15.0〜40.0Åであり、さらに好ましくは25.0〜35.0Åである。
【0232】
二色性色素の画像層が示す回折ピークは、半値幅が1.0Å以下であることが好ましい。
ここで半値幅とは、X線回折測定の一つの回折ピーク内において、ベースラインを基準としたピーク頂点の強度を求め、ピーク頂点の左右に一つずつある、該強度の半分の強度を示す2点をとり、2点のそれぞれが示す周期の値の差をとった値のことである。
【0233】
X線回折測定において回折ピークを示し、その半値幅が1.0Å以下である画像層は、以下の理由により高い二色比を示すと推測される。
二色性色素の分子長軸と配向軸のなす角度のばらつきが大きいと、分子間距離のばらつきも大きくなる。すると、周期構造がある場合、その周期の値もばらつき、X線回折測定で得られる回折ピークはブロードになって大きな半値幅を示すことになる。
これに対し、回折ピークの半値幅が一定値以下であるシャープなピークであるということは分子間距離のばらつきが小さく、二色性色素の分子長軸と配向軸のなす角度が平均して小さいこと、すなわち高秩序に配向していることを意味し、高い二色比を発現すると推測される。
【0234】
本発明では、前記回折ピークの半値幅は、1.0Å以下であり、好ましくは0.90Å以下、より好ましくは0.70Å以下、さらに好ましくは0.50Å以下であり、好ましくは0.05Å以上である。半値幅が上限を上回ると、色素の分子間距離のばらつきが大きくなり、高秩序な配向が阻害され好ましくない。またこれが下限を下回ると、配向ひずみを生じやすくなってドメインと粒界を生じ、ヘイズの発生やドメインごとの配向乱れ、偏光解消を招く恐れがあり好ましくない。
【0235】
二色性色素の画像層の回折ピークの周期及び半値幅は、薄膜評価用X線回折装置(リガク社製、商品名:「ATX−G」インプレーン光学系)、又はこれと同等の装置で測定されるX線プロファイルから得られる
【0236】
本発明に係る画像層のX線回折測定は、例えば次の手順により行われる。
まず、画像層について、15°刻みで全方向のインプレーン測定を実施する。ピークが観測された角度を固定したまま、サンプルを基板に平行な面内で回転して測定する所謂φスキャンにより、ピーク強度が大きい基板平面内における向きを決定する。得られた向きにおけるインプレーン測定のピークを用いて、周期、半値幅を求めることができる。
【0237】
保護層:
保護層は、画像層が有する二色性画像を保護する機能を有する。高分子フィルム等を用いることができる。保護層として利用可能な高分子フィルムとしては、上記透明支持体に利用可能な高分子フィルムと同様である。保護層は、UV吸収剤を含有しているのが好ましい。保護層がUV吸収剤を含有することで、立体画像印刷物の耐久性を改善することができる。使用可能なUV吸収剤については、特に制限はない。具体的には、前記特開平7−11056号等の公報に記載のUV吸収剤を利用することができる。
なお、保護層は、2層以上の積層構造であってもよい。また塗布によって形成される塗膜や硬化膜であってもよい。この態様については、後述する。なお、保護層が2以上の層からなる態様では、UV吸収剤は、少なくとも一層に含有されていればよい。
【0238】
パターニングされた位相差層:
本発明の立体画像印刷物が有する位相差層は、Reが0nmである第1のドメイン、及びReが1/2波長である第2のドメインにパターニングされ、第2のドメインの面内遅相軸が、第1の積層体及び第2の積層体に含まれる二色性画像の吸収軸と45°の角度をなす位相差層である。前記特性を満足する位相差層は、硬化性液晶性組成物を所望の配向状態とし、硬化反応を進行させてその状態を固定して形成するのが好ましく、さらに前記硬化性液晶組成物からなる膜をパターン露光することにより、面内レターデーションを発現又は消失させて第1及び第2のドメインを形成してなる位相差層が好ましい。以下、本態様の位相差層について詳細に説明する。
【0239】
本態様の位相差層は、液晶化合物、特に少なくとも1つの反応性基を有する液晶化合物を含む硬化性組成物から形成することができる。少なくとも1つの反応性基を有する液晶化合物を含む硬化性組成物から前記位相差を形成することによって、後述のパターン露光による遅相軸方向の制御、及び面内レターデーションの発現または消失が容易になる。
【0240】
一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井
正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物または円盤状液晶化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶化合物、2種以上の円盤状液晶化合物、又は棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶化合物または円盤状液晶化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。液晶化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0241】
液晶化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む位相差層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせがよい。前記ラジカル性の反応性基がアクリル基及び/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基及び/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
【0242】
棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。上記高分子液晶化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶化合物である。
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3及びL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1及びA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
【0243】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0244】
【化72】

【0245】
【化73】

【0246】
【化74】

【0247】
【化75】

【0248】
【化76】

【0249】
【化77】

【0250】
本発明の他の態様として、前記位相差層にディスコティック液晶を使用した態様がある。前記位相差層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物の層または重合性の液晶性ディスコティック化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であるのが好ましい。前記ディスコティック(円盤状)化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0251】
本発明では、下記一般式(III)で表わされるディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。
一般式(III): D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
前記式(III)中、円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられ、同公報に記載される円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)に関する内容をここに好ましく適用することができる。
上記ディスコティック化合物の好ましい例を下記に示す。
【0252】
【化78】

【0253】
【化79】

【0254】
【化80】

【0255】
【化81】

【0256】
【化82】

【0257】
【化83】

【0258】
前記位相差層は、液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であることが好ましい。
液晶性化合物として反応性基を有する棒状液晶性化合物を用いる場合は、水平配向させるのが好ましい。液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、垂直配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と透明支持体の水平面が平行であることをいう。また、「垂直配向」とは、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と層面が垂直であることをいうが、厳密に平行及び垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、10度未満の誤差があってもよく、誤差は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
なお、前記組成物中には、液晶の水平配向を促進する添加剤を添加してもよく、該添加剤の例には、特開2009−223001号公報の[0055]〜[0063]に記載の化合物が含まれる。
【0259】
前記位相差層は、液晶化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であることが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0260】
次に、配向させた液晶化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0261】
液晶化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0262】
前記位相差層は、偏光照射による光配向で面内のレターデーションが発現あるいは増加した層であってもよい。この偏光照射は上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねてもよいし、先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行ってもよいし、非偏光照射で先に固定化してから偏光照射によって光配向を行ってもよいが、偏光照射のみを行うか先に偏光照射を行ってから非偏光照射でさらに固定化を行うことが望ましい。偏光照射が上記配向固定化における光重合プロセスを兼ねる場合であってかつ重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合、偏光照射は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。偏光照射によって硬化する液晶性化合物の種類については特に制限はないが、反応性基としてエチレン不飽和基を有する液晶性化合物が好ましい。照射波長としては300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0263】
前記位相差層は、最初の偏光照射(光配向のための照射)の後に、偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射してもよい。最初の偏光照射の後に偏光もしくは非偏光紫外線をさらに照射することで反応性基の反応率を高め(後硬化)、密着性等を改良し、大きな搬送速度で生産できるようになる。後硬化は偏光でも非偏光でも構わないが、偏光であることが好ましい。また、2回以上の後硬化をすることが好ましく、偏光のみでも、非偏光のみでも、偏光と非偏光を組み合わせてもよいが、組み合わせる場合は非偏光より先に偏光を照射することが好ましい。紫外線照射は不活性ガス置換してもしなくてもよいが、特に重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いる場合は酸素濃度0.5%以下の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は20〜1000mW/cm2であることが好ましく、50〜500mW/cm2であることがより好ましく、100〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては偏光照射の場合は300〜450nmにピークを有することが好ましく、350〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。非偏光照射の場合は200〜450nmにピークを有することが好ましく、250〜400nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0264】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む位相差層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0265】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0266】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギー及び/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0267】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0268】
前記位相差層の形成には、配向層を利用するのが好ましい。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能するため、配向膜の機能をパターニングすることによって、パターニング位相差層を容易に得ることができる。配向層は、一般に後述の支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けることができる。配向層は、位相差層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよいが、典型的な例としては光配向層及びラビング配向層が挙げられる。
【0269】
ラビング配向膜は、ポリビニルアルコール又はポリイミドを主原料とする膜にラビング処理を施すことにより形成することができる。
【0270】
光照射により形成される光配向膜に用いられる光配向材料としては、多数の文献等に記載がある。本発明の配向膜では、例えば、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002−229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミド及び/又はアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルが好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、又はエステルである。
【0271】
上記材料から形成した光配向膜に、直線偏光又は非偏光照射を施し、光配向膜を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」とは、前記光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。好ましくは、光照射に用いる光のピーク波長が200nm〜700nmであり、より好ましくは光のピーク波長が400nm以下の紫外光である。
【0272】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプ、カーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー(例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、YAGレーザー)、発光ダイオード、陰極線管などを挙げることができる。
【0273】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例、ヨウ素偏光板、二色色素偏光板、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例、グラントムソンプリズム)やブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、又は偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタや波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0274】
照射時間は好ましくは1分〜60分、さらに好ましくは1分〜10分である。
【0275】
パターニングされた光配向層を得るために、光配向材料からなる膜をパターン露光する。パターン露光には、遮光部と光透過部とを有する露光マスクを用いるのが好ましい。例えば、図5に示す通りの露光マスクA及びBを用いて露光を行うことができる。また、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。
【0276】
本発明に利用可能なパターニングされた位相差層の形成方法の一例の流れを、図5に模式的に示す。
まず、ポリイミドフィルム等の支持体27を準備する(図5(a))。その上に、配向膜用材料を塗布して、配向膜28を形成する(図5(b))。配向膜28はラビング配向膜であっても、光配向膜であってもよい。また、剥離性を高めるために、支持体27と配向膜28との間に、剥離層を形成してもよい。配向膜28に、所望により配向規制力の発現の処理(例えば、ラビング処理又は直線偏光照射)を施した後、2つの異なる反応性基(例えば、オキセタニル基及び重合性エチレン性不飽和基)を有する液晶化合物を含有する硬化性液晶性組成物の塗布液を塗布して、塗膜20’を形成する(図5(c))。塗膜20’から溶媒を除去し、所定の配向状態になった後に、紫外線を照射して一方の反応性基の反応のみを進行させて、その状態を固定化してプレ位相差層20”を形成する(図5(d))。
【0277】
次に、他方の反応性基の重合を開始させることが可能な重合開始剤を含有する組成物をプレ位相差層20”の表面に塗布し、重合開始剤供給層29を形成する(図5(e))。重合開始剤供給層29中の重合開始剤は、その下に配置されているプレ位相差層20”に移動可能なように構成されている。次に、例えば、図6に示す通りの、第1のドメイン20xに相当する部分が遮光部、及び第2のドメイン20yに相当する部分が光透過部となっている露光マスクを介して、紫外線を照射すると、光透過部のみが露光される。重合開始剤供給層29から浸透した重合開始剤の存在下で、露光されることにより、露光部中の液晶化合物の他方の反応性基の反応が進行し、光透過部の配向状態が強固に固定化される。当該露光部は、液晶化合物が所定の配向状態に固定され、面内レターデーションが1/2波長である第2のドメイン20yとなる。一方、露光されていない遮光部の液晶化合物は、最初の露光により一方の反応性基の反応が進行しているものの、他方の反応性基は未反応のままとなっている。よって、等方相温度を超え、他方の反応性基の反応が進行可能な温度まで加熱すると、当該遮光部は、等方相状態に固定され、即ち、面内レターデーションが0nmの第1のドメインが形成される。この様にして、パターニングされた位相差層20が形成される(図5(f))。
【0278】
この様にして形成されたパターニングされた位相差層を含む積層体は、該積層体に含まれる重合開始剤供給層の表面を、接着剤層を介して、第1の積層体に含まれる保護層の表面に貼合して組み込むことができる。その後、可能であれば、支持体27を除去してもよい。又は、後述する直線偏光層もしくはその保護層に、重合開始剤供給層の表面を、接着剤層を介して、貼合することもできる。その後、支持体27の裏面と、第1の積層体に含まれる保護層の表面とを貼合して、組み込むことができる。図6(b)に示す様に、貼合する際は、第1の積層体に含まれる二色性画像の吸収軸a、及び第2の積層体に含まれる二色性画像の吸収軸bのそれぞれと、位相差層の第2のドメインの面内遅相軸yを、45°で交差させて貼合する。
【0279】
直線偏光層:
本発明の立体画像印刷物は、前記パターニングされた位相差層の観察者側表面に、直線偏光層を有する。直線偏光層としては、自然光などの任意の方向に振動する光を直線偏光とする層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。偏光層の単層透過率は、30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上が特に好ましい。偏光層の単層透過率が、30%未満であると、光の利用効率が大幅に低下してしまう。また、偏光層のオーダーパラメーターは、0.7以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.9以上が特に好ましい。偏光層のオーダーパラメーターが、0.7未満であると、光の利用効率が大幅に低下してしまう。偏光層の吸収軸の光学濃度は、1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2以上が特に好ましい。偏光層の吸収軸の光学濃度は、1未満であると、偏光度が大幅に低下し、クロストークやゴースト像が見えてしまう。偏光層の波長帯域は、可視光を偏光変換するという観点で、400nmから800nmをカバーすることが好ましい。偏光層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、光学特性を発揮する点、視差を発生させない点、製造の容易さの点で、0.01〜2μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
【0280】
前記直線偏光層については、その材料及びその作製方法については、なんら制限はない。例えば、ヨウ素系偏光板、二色性染料を用いる染料系偏光板、ポリエン系偏光板などが好適に挙げられる。これらのうち、ヨウ素系偏光板及び染料系偏光板は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを延伸し、これにヨウ素又は二色性染料を吸着することによって製造できる。この場合、偏光層の透過軸は、フィルムの延伸方向に垂直な方向となる。
これら延伸タイプの偏光板以外にも、偏光度が比較的高い観点から、以下の直線偏光膜も、本発明において直線偏光層として、好適に用いられる。例えば、特開2000−352611号公報に記載の重合性コレステリック液晶を用いた直線偏光板、特開平11−101964号公報、特開2006−161051号公報、特開2007−199237号公報、特表2002−527786号公報、特表2006−525382号公報、特表2007−536415号公報、特表2008−547062号公報、特許第3335173号に記載の二色性色素を含有し一軸配向した液晶を用いたゲスト−ホスト型直線偏光板、特開昭55−95981号公報に記載のアルミニウムなどの金属グリッドを用いたワイヤーグリッド偏光板、特開2002−365427号公報に記載のカーボンナノチューブを分散・配列させた高分子化合物又は液晶化合物からなる偏光板、特開2006−184624号公報に記載の金属微粒子を分散・配列させた高分子化合物からなる偏光板、特開平11−248937号公報、特表平10−508123号公報、特表2005−522726号公報、特表2005−522727号公報、特表2006−522365号公報に記載のポリビニレン型直線偏光板、特開平7−261024号公報、特開平8−286029号公報、特開2002−180052号公報、特開2002−90526号公報、特開2002−357720号公報、特開2005−154746号公報、特開2006−47966号公報、特開2006−48078号公報、特開2006−98927号公報、特開2006−193722号公報、特開2006−206878号公報、特開2006−215396号公報、特開2006−225671号公報、特開2006−328157号公報、特開2007−126628号公報、特開2007−133184号公報、特開2007−145995号公報、特開2007−186428号公報、特開2007−199333号公報、特開2007−291246号公報、特開2007−302807号公報、特開2008−9417号公報、特表2002−515075号公報、特表2006−518871号公報、特表2006−508034号公報、特表2006−531636号公報、特表2006−526013号公報、特表2007−512236号公報に記載の(クロモゲン)(SOM)等で表されるリオトロピック液晶性色素からなる偏光板、特開平8−278409号公報、特開平11−305036号公報に記載の二色性色素からなる偏光板が好ましい例として挙げられる。コレステリック液晶は通常円偏光分離機能があるが、1/4波長層との組み合わせによって直線偏光板にすることができる。この場合の1/4波長層は、少なくとも一種の液晶化合物を含有する組成物から形成されていることが好ましく、また、重合性基を有する少なくとも一種の液晶化合物を含有する組成物を、液晶相とした後、熱を供給及び/又は紫外線を照射することで硬化させて形成された層であることが好ましい。偏光度の観点から、ヨウ素系偏光板、二色性染料を用いる染料系偏光板、リオトロピック液晶性色素からなる偏光板、二色性色素からなる偏光板が好ましい。
【0281】
中でも、本発明において、前記直線偏光層としては、二色性色素を含む液晶性組成物を塗布することにより形成された塗布型の直線偏光層が、薄膜化できる点で好ましい。塗布型直線偏光層の形成には、二色性色素を含有する液晶性組成物から形成するのが好ましく、好ましい二色性色素の例は、上記二色性画像の形成に利用される二色性色素の例と同様である。
【0282】
直線偏光層を貼合する際は、第1の積層体に含まれる二色性画像の吸収軸、及び第2の積層体に含まれる二色性画像の吸収軸のいずれか一方と一致させて貼合する。
【0283】
前記直線偏光層は、その両面にセルロースアセテートフィルム等の高分子フィルムからなる保護層を有していてもよい。当該保護層に利用可能な高分子フィルムは、低位相差又は光学的に等方性であるのが好ましく、好ましい光学特性の範囲は、第1及び第2の積層体に含まれる保護層の光学特性と同様であり、また好ましい高分子フィルムの例も同様である。
【0284】
図7に、本発明の立体画像印刷物の他の実施形態の断面模式図を示す。図1と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図7に示す立体画像印刷物10’は、第1及び第2の積層体19a’及び19b’に含まれる保護層18a’及び18b’が、塗布によって形成された、酸素遮断層23a及び23b、並びに透明樹脂硬化層24a及び24bからそれぞれなる。酸素遮断層23a及び23bは、酸素が画像層16a及び16bに侵入して、二色性色素等を劣化、退色させるのを防止する、酸素遮断能を有する層である。また、透明樹脂硬化層24a及び24bは、立体画像印刷物に物理的強度及び耐久性の改善のために、又は、光学特性を付与するために配置される。また、酸素遮断層23a及び23bは、塗布時及び塗布後の保存時における、層間の成分の混合を防止するのに寄与する中間層としても利用してもよい。該中間層については、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されていて、参照することができる。
【0285】
前記酸素遮断層は、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液に分散又は溶解するものが好ましく、公知のものの中から適宜選択することができる。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールを主成分とする成分から形成される膜である。中でも、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを含有する組成物から形成される膜が好ましい。
酸素遮断層の層厚は0.1〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.5〜5μmであることが特に好ましい。
【0286】
透明樹脂硬化層:
透明樹脂硬化層の層厚は1〜30μmの範囲にあることが好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。
透明樹脂硬化層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。本発明における透明樹脂硬化層は、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む組成物を二色性色素層又は酸素遮断層等の表面に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、無機微粒子を含有することもできる。
【0287】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等を挙げることができる。
【0288】
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0289】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
【0290】
前記組成物の硬化反応には、重合開始剤を用いるのが好ましく、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド及びチオキサントン類等が挙げられる。
【0291】
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のカヤキュア(DETX−S,BP−100,BDMK,CTX,BMS,2−EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど、いずれも商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,127,500,907,369,1173,2959,4265,4263など、いずれも商品名)、サートマー社製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT、いずれも商品名)等が挙げられる。
【0292】
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)に記載されている。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,127,907、いずれも商品名)等が挙げられる。
【0293】
光重合開始剤は、硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトン及びチオキサントンを挙げることができる。
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DMBI,EPA、いずれも商品名)などが挙げられる。
光重合反応は、透明樹脂硬化層の塗布及び乾燥後、紫外線照射により硬化反応させることが好ましい。
【0294】
透明樹脂硬化層は、脆性の付与のために質量平均分子量が500以上のオリゴマー又はポリマー、あるいは両者を添加してもよい。
オリゴマー、ポリマーとしては、(メタ)アクリレート系、セルロース系、スチレン系の重合体や、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。好ましくは、側鎖に官能基を有するポリ(グリシジル(メタ)アクリレート)やポリ(アリル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
【0295】
透明樹脂硬化層中のオリゴマー及びポリマーの合計量は、樹脂層の全質量に対し5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは35〜65質量%である。
【0296】
透明樹脂硬化層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K7204に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
透明樹脂硬化層の形成において、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度や耐久性に優れた透明樹脂硬化層を形成することができ、好ましい。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
【0297】
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
透明樹脂硬化層は、二色性色素層の表面に、透明樹脂硬化層形成用の塗布組成物を塗布することで構築することが好ましい。
【0298】
なお、図7に示す通り、保護層は、酸素遮断層、及び透明樹脂硬化層等の2以上の機能層を含んでいてもよいが、観察者側の第1の積層体19a’に含まれる保護層18a’は全体として、可視光に対する面内のレターデ−ション値(Re)が10nm以下である必要があり、0〜5nmであることが好ましく、0〜3nmであることが特に好ましい。後述する図8の態様においても同様である。
【0299】
本発明の立体画像印刷物の他の例の断面模式図を図8に示す。
図8に示す立体画像印刷物は、図7に示す立体画像印刷物の裏面の第2の積層体19b’の裏面に、非偏光解消性の反射層26を配置した態様である。この態様では、外光の反射光により立体像を観察することができる。
【0300】
反射層:
本態様に利用可能な非偏光解消性の反射層としては、例えば金属薄膜が被覆された紙、金属薄膜製鏡、金属箔、又はプラスチックに浮遊させた金属薄片が好ましい。
【0301】
2.立体画像印刷物の製造方法
本発明は、本発明の立体画像印刷物の製造方法にも関する。
本発明の立体画像印刷物の製造方法は、
透明支持体の表面上及び裏面上に、同時に又は別々に、少なくとも有機溶媒及び該有機溶媒に溶解した少なくとも1種の二色性色素を含有する二色性色素組成物を、左眼用画素及び右眼用画素を所定の配列で含む二色性画像様にそれぞれ塗布すること(工程a);並びに
該組成物中の有機溶媒を蒸発させることにより、前記少なくとも一種の二色性色素を自発的に又は追従的に水平配向させること(工程b);
を少なくとも含む本発明の立体画像印刷物の製造方法である。以下、各工程について
【0302】
まず、透明支持体の双方の表面に受像層(例えば配向膜)を有する印画紙を準備する。印画紙の一例の断面模式図を図9に示す。印画紙は、透明支持体12、及びその両面に受像層14a及び14bをそれぞれ有する。透明支持体、及び受像層の好ましい態様についてはそれぞれ、上記した通りである。
【0303】
工程a:
本発明の方法では、画像の形成に、少なくとも有機溶媒及び該有機溶媒に溶解した少なくとも1種の二色性色素を含有する二色性色素組成物を用いる。該組成物を、左眼用画素及び右眼用画素を所定の配列で含む画像様に、透明支持体の裏面及び表面に配置された受像層に、それぞれ塗布することで二色性画像をそれぞれ形成する。塗布はいかなる方法で行ってもよいが、デジタル化された画像データに基づいて、印画紙に画像様に塗布する態様では、インクジェット法が適する。インクジェット法を利用した一例は、以下の通りである、
【0304】
まず、画像データ処理装置によって、画像データが、視差のある左眼用画像データ及び右眼用画像データとしてデジタル化される。デジタル化された画像データの例には、デジタルカメラで撮影された画像のデータ、より具体的には、左右二系統の撮影レンズを備えたデジタルカメラで撮影した画像等のデジタルデータが含まれる。画像データ処理装置では、左眼用画像データ及び右眼用画像データが、所定のパターン(例えばストライプ状のパターン)にそれぞれ分解され、左眼用画素と右眼用画素が所定のパターンで混合配列してなる画像データが生成される。この画像データ処理装置に接続されたインクジェット装置には、前記二色性色素組成物がインクディスペンサーに格納されていて、画像データ処理装置から送信されるデジタル信号に応じて、インクジェットヘッドから前記組成物が吐出するように制御されている。インクジェットヘッドから吐出した前記組成物は、位置決めされて支持された前記印画紙の受像層の所定の位置に着地して、二色性画像を形成する。
なお、受像層上への画像の形成は、同時に行っても、それぞれ別々に行ってもよく、それぞれの態様に適するように、インクジェット装置の機構が調整されるであろう。
【0305】
前記二色性組成物の塗布時の温度は、好ましくは0℃以上、80℃以下、湿度は好ましくは10%RH以上、80%RH以下程度である。この範囲であると、塗布液が配向膜表面への着弾前に溶剤の乾燥が起こらず均一な塗布が可能になるので好ましい。
【0306】
また、前記二色性色素を受像層(例えば、配向膜)にそれぞれ画像様に塗布するときには、印画紙を加温してもよいし冷却してもよい。このときの印画紙の受像層が配向膜である態様では、配向膜の温度は、好ましくは10℃以上60℃以下である。上限を上回ると、配向が乱れて乾燥する恐れがあり、下限を下回ると基材表面に水滴が付き塗布の障害になる恐れがある。
【0307】
前記二色性色素組成物は、少なくとも有機溶媒及び該有機溶媒に溶解した少なくとも1種の性二色性色素を含有する。二色性色素は液晶性であるのが好ましい。二色性色素の好ましい例は、上記した通りである。前記二色性色素組成物は、インクジェット法による塗布が可能なように、液状組成物として調製するのが好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
前記二色性色素組成物の粘度は、0.5cP以上が好ましく、1cP以上がより好ましく、5cP以上がさらに好ましく、10cP以上が特に好ましい。前記組成物の表面張力は、20dyn/cm以上が好ましく、25dyn/cm以上がより好ましく、30dyn/cm以上がさらに好ましい。
【0308】
また、前記二色性色素組成物における全固形分の含有量は、1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
【0309】
工程b:
次に、受像層(例えば配向膜)にインクジェット塗布等により塗布された前記組成物から、有機溶を蒸発させることにより、前記少なくとも1種の二色性色素を、自発的に又は追従的に水平配向させることで、二色性画像を形成する。例えば、受像層が配向膜である態様では、配向膜の表面で当該配向膜の配向軸に従って、二色性色素を自発的に水平配向させることで、又は受像層が分子配向フィルムである態様では、分子配向フィルムに二色性色素を浸透させて、フィルムの分子配向に沿って二色性色素分子を追従的に水平配向させることで、二色性画像を形成する。乾燥時には、色素分子の配向状態を乱さない(熱緩和等を避ける)ようにすることが好ましく、その観点では、乾燥温度は、好ましくは室温であり、即ち自然乾燥することが好ましい。一方、乾燥の際は、二色性色素の分子の配向を促進させるために、印画紙を加温してもよい。このときの印画紙の温度は、好ましくは50℃〜200℃であり、特に好ましくは70℃〜180℃である。この配向温度を低下させるために、組成物に可塑剤等の添加剤を添加してもよい。
【0310】
この工程では、二色性色素の分子が、水平配向する。例えば、受像層が配向膜である態様では、配向軸が、例えば、それぞれ−45°及び+45°の方向にあり、90°の角度をなしている配向膜を用いることができ、例えば、受像層が分子配向フィルムである態様では、例えば、それぞれ−45°及び+45°の方向に延伸され、分子配向方向が互いに90°の角度をなしている分子配向フィルムを用いることができる。前記二色性色素の分子が長軸方向に吸収軸を有し、長軸を配向膜の配向軸又は分子配向フィルムの分子配向方向に平行にして配向する態様では、一方の受像層には、−45°の方向に吸収軸のある二色性画像が形成され、他方の受像層には、+45°の方向に吸収軸のある二色性画像が形成される。
【0311】
前記工程bでは、二色性色素の分子は、受像層の層面に対して水平配向しているのが好ましい。配向状態の液晶相は、ネマチック相、スメクチック相、及びそれらの中間のいずれであってもよい。
【0312】
前記工程bの後に、二色性画像のそれぞれの上に、保護層を形成する工程を実施することができる。保護層は塗布により形成してもよいし、高分子フィルムを貼合してもよい。さらに、前記工程の後、観察者側の保護層の表面には、パターニングされた位相差層及び直線偏光層を配置する工程を実施することができる。パターニングされた位相差層の形成方法、並びに該位相差層及び直線偏光層を貼合する方法については、上記した通りである。
【実施例】
【0313】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0314】
1.実施例1
[立体画像用印画紙の作製]
(透明支持体の作製)
下記セルロースアセテート溶液組成の各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製しドープとした。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
【0315】
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、150℃の条件で、自由端一軸延伸で15%の延伸倍率で横延伸して、セルロースアセテートフィルム(厚さ:92μm)を製造した。
作製したセルロースアセテートフィルムについて、550nmにおけるRe値を、KOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)製)において550nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。Re値は7nmであった。
【0316】
(ラビング配向膜の作製)
上記セルロースアセテートフィルムの表面裏面、各々に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水溶液を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた。その後に、400rpmで3往復、表面裏面で直交するように、図3に示す方向(±45°)にそれぞれラビング処理を行い、立体画像用印画紙を作製した。作製した配向膜上では、液晶性分子はその長軸をラビング軸と一致させて水平配向する。
【0317】
この様にして、図9に示す構成の印画紙を作製した。即ち、セルロースアセテートフィルムからなる透明支持体12と、その両面に、配向膜14a及び14bを有する印画紙を作製した。
【0318】
[立体画像用インクの作製]
(二色性色素組成物の調製)
下記組成を攪拌して溶解し、立体画像用インクとした。イエローインク、マゼンタインク、及びシアンインクの粘度は0.6cPであり、表面張力は30dyn/cmであった。
(立体画像用イエローインク)
下記構造のイエローアゾ色素A2−3(一般式(II)の化合物) 1質量部
クロロホルム(溶媒) 99質量部
(立体画像用マゼンタインク)
下記構造のマゼンタアゾ色素C−9(一般式(I)の化合物) 1質量部
クロロホルム(溶媒) 99質量部
(立体画像用シアンインク)
下記構造のシアンアゾ色素A3−1(一般式(III)の化合物) 0.87質量部
下記構造のシアンスクアリリウム色素VI−5 0.13質量部
クロロホルム(溶媒) 99質量部
【0319】
【化84】

【0320】
[立体画像印刷物の作製]
(二色性色素層の作製)
左右二系統の撮影レンズを備えたデジタルカメラで撮影した、右眼用データ及び左眼用データを、各々、デジタルデータに変換した後、上記で得られた立体画像用インクをピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いて、前記ラビング配向膜上に打滴した。右眼用画素と左眼用画素を同じ一定のストライプ状に分割し、表裏各々の印刷面内で右眼用画素と左眼用画素が交互に隣接するように、且、表裏の対応する位置には、右眼用画素と左眼用画素を重ねて配列して画像を構成した。室温で溶媒乾燥することで配向状態を固定化し二色性画像をそれぞれ形成した。画像データに対応する階調はインクの打滴量及び密度を制御することによって制御した。表面及び裏面の二色性画像の配向方向は直交しており、いずれも±1°の範囲で水平配向していた。なお、表面及び裏面の二色性色素層の厚さは1μmであった。
【0321】
(二色性色素層の二色比測定)
前記と同様なインクを用いて同様な条件で固定化した二色性色素層を別途形成して、二色比を測定した。
二色比は、ヨウ素系偏光素子を入射光学系に配した分光光度計で二色性色素層の吸光度を測定した後、次式により計算した。
二色比(D)=Az/Ay
Az:光吸収異方性膜の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay:光吸収異方性膜の偏光軸方向の偏光に対する吸光度
測定結果を表1に示した。
【0322】
(酸素遮断層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して酸素遮断層用塗布液とした。
ポリビニルアルコール(PVA205(商品名、クラレ(株)製)3.2質量部、ポリビニルピロリドン(PVP K−30(商品名、日本触媒(株)製)1.5質量部、メタノール44質量部、水56質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して酸素遮断層用塗布液を調製した。
(酸素遮断層の作製)
前記記載の、表面及び裏面、各々の二色性色素層の上層に、前記酸素遮断層用塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥し酸素遮断層を作製した。酸素遮断層の厚さは1μmであった。
【0323】
(透明樹脂硬化層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して透明樹脂硬化層塗布液とした。
トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295(商品名、大阪有機化学(株)製)7.5質量部に、質量平均分子量15000のポリ(グリシジルメタクリレート)2.7質量部、メチルエチルケトン7.3質量部、シクロヘキサノン5.0質量部及び光重合開始剤(イルガキュア184(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.5質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して透明樹脂硬化層用の塗布液を調製した。
【0324】
(透明樹脂硬化層の作製)
前記記載の、表面及び裏面、各々の酸素遮断層の上層に、前記記載の透明樹脂硬化層用塗布液を塗布し、100℃で2分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)5Jの紫外線を照射して重合し、二色性色素層(層厚1.0μm)の表面に、層厚1μmの酸素遮断層、層厚2μmの透明樹脂硬化層が順次積層された立体画像印刷物を作製した。透明樹脂硬化層の波長550nmにおけるRe=0nmであった。また、JIS K5400に従い鉛筆硬度測定を実施したところHであった。
【0325】
(保護層の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
【0326】
<セルロースアシレート溶液A組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
【0327】
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液Bを調製した。
【0328】
<添加剤溶液B組成>
下記化合物B1(Re低下剤) 40質量部
下記化合物B2(波長分散制御剤) 4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 80質量部
メタノール(第2溶媒) 20質量部
【0329】
【化85】

【0330】
<セルロースアセテート保護フィルムの作製>
セルロースアシレート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液Bの40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み60μmのセルロースアセテート保護フィルムを作製した。保護フィルムの正面Reは2.0nmであった。
【0331】
(直線偏光層の作製)
セルロースアセテート保護フィルムを、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、セルロースアシレート保護フィルムの表面をケン化した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して直線偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリけん化処理したセルロースアシレート保護フィルムを2枚用意して直線偏光膜を間にして貼り合わせ、両面がセルロースアシレート保護フィルムによって保護された直線偏光層を得た。この際両側のセルロースアシレートフィルム保護フィルムの遅相軸が直線偏光膜の透過軸と平行になるように貼り付けた。
【0332】
(パターニングされた位相差層の作製)
<配向層用塗布液AL−1の調製>
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────――
配向層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────――
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────────――
【0333】
<位相差層用塗布液LC−1の調製>
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、位相差層用塗布液LC−1として用いた。
I−22は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタニル基である。
【0334】
──────────────────────────────────―――――
位相差層用塗布液組成(%)
──────────────────────────────────―――――
棒状液晶(I−22) 32.59
水平配向剤(LC−1−2) 0.02
カチオン系光重合開始剤(CPI100−P、サンアプロ株式会社製) 0.66
重合制御剤(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
──────────────────────────────────―――――
【0335】
【化86】

【0336】
(ラジカル重合開始剤供給層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、ラジカル重合開始剤供給層用塗布液AD−1として用いた。
B−3はベンジルメタクリレート、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルの共重合体で共重合組成比(モル比)=35.9/22.4/41.7、重量平均分子量=3.8万である。
RPI−1としては2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)1,3,4−オキサジアゾールを用いた。
【0337】
──────────────────────────────────――
ラジカル重合開始剤供給層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────――
バインダー(B−3) 8.05
KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(RPI−1) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
メガファックF−176PF(大日本インキ化学工業(株)製) 0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
──────────────────────────────────――
【0338】
<パターニングされた位相差層の作製>
正面Reが0nmで、厚さ100μmのポリイミドフィルム支持体の上に、ワイヤーバーを用いて、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いて位相差層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度90℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ3.2μmの位相差層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm、照射量はUV−A領域において80mJ/cmであった。さらに、位相差層上にラジカル重合開始剤供給層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.2μmのラジカル重合開始剤供給層を形成した後、ミカサ社製M−3L露光装置とフォトマスクIを用いて露光量50mJ/cmでパターン露光を行った。その後230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行うことにより未露光部分を等方相で熱固定化し、パターニングされた1/2波長層を作製した。該パターニングされた1/2波長層の、測定波長550nmにおける露光部の面内レターデーションは275nm(1/2波長)であり、未露光部の面内レターデーションは0nmであった。
【0339】
(立体画像印刷物の作製)
<パターニングされた位相差層と直線偏光層の積層>
前記パターニングされた位相差層の開始剤層側に粘着シートをつけ、前記直線偏光層に貼り合せた。この際、位相差層の第2のドメインの面内遅相軸が直線偏光層の透過軸と45°の角度をなすように貼り付けた。
【0340】
<立体画像印刷物>
前記パターニングされた位相差層のポリイミドフィルム側に粘着シートをつけ、前記透明樹脂硬化層に貼り合せた。この際、図4に示すように、1/2波長層の遅相軸が表面の二色性色素層の吸収軸と45°の角度をなし、直線偏光層の偏光軸が二色性色素層の吸収軸と一致するように貼り付けた。
【0341】
この様にして図7に示す構造(但し、図7中、直線偏光層の表面裏面に配置された保護層、パターニングされた位相差層を形成した際に利用した、ポリイミドフィルム、配向膜及び重合開始剤供給層、並びに貼合時に利用した粘着剤層は省略した)の立体画像印刷物、即ち、透明支持体12の表面に、ラビング配向膜からなる14aと、右眼用画素及び左眼用画素を一定のストライプ状の配列で混合して画像を構成した二色性画像を有する画像層16a、並びに酸素遮断層23aと、透明樹脂硬化層24aとからなる保護層18a’が積層された第1の積層体19a’;透明支持体12の裏面に、ラビング配向膜からなる14bと、右眼用画素及び左眼用画素を一定のストライプ状の配列で混合して画像を構成した二色性画像を有する画像層16b、並びに酸素遮断層23bと、透明樹脂硬化層24bとからなる保護層18b’が積層された第2の積層体19b’;第1の積層体19a’の観察者側表面に、パターニングされた位相差層20、及び直線偏光層22が積層された、立体画像印刷物を作製した。
パターニングされた位相差層20と直線偏光層22を貼合する際は、図2に示すように、観察者の右眼及び左眼各々の位置から見て、立体画像印刷物の右眼用画素及び左眼用画素の各々を形成する二色性色素の吸収軸方向、パターニングされた位相差層の第2のドメインの面内遅相軸の方向、直線偏光層の偏光軸方向とが所定の関係になるように、位置合わせして貼り合せた。
【0342】
[立体画像の観察]
観察者が、偏光メガネを装着せずに、上記で作製した立体画像印刷物を、想定された観察位置から観察したところ、クロストークやゴースト像のない鮮明な立体画像を観察することができた。また、従来のパララックスバリアを用いた場合、解像度が1/2に低下するのに対して、実施例の立体画像印刷物では、解像度の低下はなかった。
【0343】
2.実施例2
[立体画像印刷物の作製]
実施例1で作製した立体画像印刷物の裏面にアルミ反射層を積層した。即ち、図8に示す構造(但し、図8中、直線偏光層の表面裏面に配置された保護層、パターニングされた位相差層を形成した際に利用した、ポリイミドフィルム、配向膜及び重合開始剤供給層、並びに貼合時に利用した粘着剤層は省略した)の立体画像印刷物、即ち、透明支持体12の表面に、ラビング配向膜からなる14aと、右眼用画素及び左眼用画素を一定のストライプ状の配列で混合して画像を構成した二色性画像を有する画像層16a、並びに酸素遮断層23aと、透明樹脂硬化層24aとからなる保護層18a’が積層された第1の積層体19a’;透明支持体12の裏面に、ラビング配向膜からなる14bと、右眼用画素及び左眼用画素を一定のストライプ状の配列で混合して画像を構成した二色性画像を有する画像層16b、並びに酸素遮断層23bと、透明樹脂硬化層24bとからなる保護層18b’が積層された第2の積層体19b’;第1の積層体19a’の観察者側表面に、パターニングされた位相差層20、及び直線偏光層22;第2の積層体19b’の背面に反射層26;が積層された、立体画像印刷物を作製した。
【0344】
[立体画像の観察]
観察者が、偏光メガネを装着せずに、上記で作製した立体画像印刷物を、想定された観察位置から観察したところ、クロストークやゴースト像のない鮮明な立体画像を観察することができた。また、従来のパララックスバリアを用いた場合、解像度が1/2に低下するのに対して、実施例の立体画像印刷物では、解像度の低下はなかった。
【0345】
3.実施例3
[立体画像用印画紙の作製]
ラビング配向膜を下記光配向膜に変更した以外は、実施例1と同様に立体画像印刷物を作製した。
【0346】
(光配向膜の作製)
前記セルロースアセテートフィルムの表面裏面、各々に、下記構造の光配向材料E−1 1%水溶液をスピンコート塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、偏光紫外線露光装置を用いて直線偏光紫外線(照度140mW、照射時間35秒、照射量5J/cm)を照射し、立体画像用印画紙を作製した。照射は、表面裏面、各々に対して実施し、その照射方向は、図4に示す通り、面に対して垂直方向から、表面裏面で直交するように光照射した。
【0347】
【化87】

【0348】
[立体画像印刷物の作製]
(二色性色素層の作製)
左右二系統の撮影レンズを備えたデジタルカメラで撮影した、右眼用データ及び左眼用データを、各々、デジタルデータに変換したのち、実施例1で得られた立体画像用インクをピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いて、前記光配向膜上に打滴した。右眼用画素と左眼用画素を同じ一定のストライプ状に分割し、表裏各々の印刷面内で右眼用画素と左眼用画素が交互に隣接するように、且、表裏の対応する位置には、右眼用画素と左眼用画素を重ねて配列して画像を構成した。室温で溶媒乾燥することで配向状態を固定化し二色性色素層を作製した。画像データに対応する階調はインクの打滴量及び密度を制御することによって制御した。表面及び裏面の二色性色素層の配向方向は直交しており、いずれも±1°の範囲で水平配向していた。なお、表面及び裏面の二色性色素層の厚さは1μmであった。
【0349】
(二色性色素層の二色比測定)
前記と同様なインクを用いて同様な条件で固定化した二色性色素層を別途形成して、二色比を測定した。
測定結果を表1に示した。
【0350】
(立体画像印刷物)
実施例1と同様の操作にて、立体画像印刷物を作製した。
【0351】
[立体画像の観察]
観察者が、偏光メガネを装着せずに、上記で作製した立体画像印刷物を、想定された観察位置から観察したところ、クロストークやゴースト像のない鮮明な立体画像を観察することができた。また、従来のパララックスバリアを用いた場合、解像度が1/2に低下するのに対して、実施例の立体画像印刷物では、解像度の低下はなかった。
【0352】
【表1】

【0353】
4.実施例4及び5
[立体画像用印画物の作製]
立体画像用マゼンタインクをA1−16又はA1−46に変更した以外は、実施例1と同様に立体画像用印画物を作製した。
【0354】
【化88】

【0355】
(二色性色素層の二色比測定)
前記と同様なマゼンタインクを用いて同様な条件で固定化した二色性色素層を別途形成して、二色比を測定した。
測定結果を下記表に示した。
(二色性色素層の周期構造測定)
前記マゼンタインクを用いて別途形成した二色性色素層の周期及び半値幅は、薄膜評価用X線回折装置(リガク社製、商品名:「ATX−G」インプレーン光学系)を用いたインプレーン測定プロファイルとφスキャンプロファイルにより求めた。両測定ともに、CuKαを用いて、入射角0.18°で実施した。
回折角と距離との関係は、
d=λ/(2*sinθ)
(d;距離、λ;入射X線波長(CuKα;1.54Å)
により換算した。
測定結果を下記表に示した。
【0356】
【表2】

【0357】
[立体画像の観察]
観察者が前記立体画像印刷物を観察したところ、マゼンタインクとして二色性色素C−9及びA1−16をそれぞれ用いた実施例1及び実施例4では、配向軸垂直方向及び配向軸平行方向の回折ピーク半値幅は0.5Å以下とシャープなピークであり、分子間距離のばらつきも小さいため、大きな二色比が得られており、クロストークやゴースト像のない鮮明な奥行きのある立体画像を観察できるが、一報、マゼンタインクとしてA1−46を用いた実施例5では、配向軸垂直方向の回折ピーク半値幅が0.89Åとブロードなピークであるため、分子間距離も若干のばらつきがあり、二色比も21と若干低かった。そのため、立体画像の観察でも、若干のゴースト像が認められた。
【0358】
5.実施例6
[立体画像用印画物の作製]
立体画像用マゼンタインクを下記の組成のインクに変更した以外は、実施例1と同様に立体画像用印画物を作製した。
(立体画像用マゼンタインクの調製)
下記の組成物を攪拌して溶解し、立体画像用マゼンタインクを調製した。
下記構造の棒状液晶(B) 20質量部
下記構造のマゼンタアゾ色素A1−16 1質量部
クロロホルム(溶媒) 79質量部
【0359】
【化89】

【0360】
(二色性色素層の二色比測定)
前記と同様なマゼンタインクを用いて同様な条件で固定化した二色性色素層を別途形成して、二色比を測定した。
測定結果を下記表に示した。
(二色性色素層の周期構造測定)
実施例4及び5と同様な条件で前記マゼンタインクを用いて別途形成した二色性色素層の周期及び半値幅を測定した。
測定結果を下記表に示した。
【0361】
【表3】

【0362】
[立体画像の観察]
観察者が前記立体画像印刷物を観察したところ、ゲストホスト型のマゼンタインクを用いた実施例6では、配向軸垂直方向の回折ピーク半値幅が1.46Åとブロードなピークであるため分子間距離のばらつきが大きく二色比も12と低かった。そのため、立体画像は観察可能であったが、ゴースト像が認められた。
【0363】
6.実施例7
[立体画像用印画物の作製]
立体画像用インクを下記の組成にそれぞれ変更し、且つ、配向膜を下記構造の光配向材料E−2に変更した以外は、実施例3と同様に立体画像用印画物を作製した。
[立体画像用インクの作製]
(二色性色素組成物の調製)
下記組成を80℃で24時間攪拌して溶解し、立体画像用インクとした。これらの二色性色素は水に溶解して液晶性を示すリオトロピック液晶であることを偏光顕微鏡観察で確認した。
(立体画像赤色インク)
シー・アイ・ダイレクトレッド81 5質量部
界面活性剤エマール20C(花王製) 0.2質量部
水(溶媒) 94.8質量部
(立体画像用緑色インク)
シー・アイ・ダイレクトグリーン59 5質量部
界面活性剤エマール20C(花王製) 0.2質量部
水(溶媒) 94.8質量部
(立体画像用青色インク)
シー・アイ・ダイレクトブルー67 5質量部
界面活性剤エマール20C(花王製) 0.2質量部
水(溶媒) 94.8質量部
【0364】
【化90】

【0365】
(二色性色素層の二色比測定)
前記と同様なインクを用いて同様な条件で固定化した二色性色素層を別途形成して、二色比を測定した。
測定結果を下記表に示した。
【0366】
【表4】

【0367】
[立体画像の観察]
観察者が前記立体画像印刷物を観察したところ、親水性のリオトロピック液晶をインク用の二色性色素として用いた実施例7では、二色性色素同志が強い分子間相互作用により層状構造をとっており分子の自由運動が強く妨げられているため、配向膜の弱い配向規制力では十分に配向制御できず二色比が低かった。そのため、立体画像は観察可能であったが、ゴースト像が認められた。
【0368】
7.実施例8
[立体画像用印画物の作製]
透明支持体作製時の添加剤溶液から添加剤B1(Re低下剤)及び添加剤B2(波長分散制御剤)を除いた以外は、実施例1と同様に立体画像用印画物を作製した。このときの透明支持体(セルロースアセテートフィルム)の厚みは200μmであり、550nmにおけるRe値は15nmであった。
[立体画像の観察]
観察者が前記立体画像印刷物を観察したところ立体画像は観察可能であったが、該透明支持体において、観察側と反対側の画像が支持体のReによりゴースト像として認識されてしまった。
【符号の説明】
【0369】
立体画像印刷物 10、10’、10”
透明支持体 12
受像層 14a、14b
画像層 16a、16b
保護層 18a、18b
第1の積層体 19a、19a’
第2の積層体 19b、19b’
パターニングされた位相差層 20
パターニングされた位相差層の第1のドメイン 20x
パターニングされた位相差層の第2のドメイン 20y
直線偏光層 22
酸素遮断層 23a、23b
透明樹脂硬化層 24a、24b
反射層 26


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体と、該透明支持体の表面及び裏面に、下記(1)の条件を満たす画像層、及び下記(2)の条件を満たす1以上の層からなる保護層が、前記透明支持体側からこの順で配置された第1及び第2の積層体とをそれぞれ有し;
(1) 少なくとも1種の二色性色素が水平配向してなる左眼用画素及び右眼用画素を、所定の配列で含む二色性画像を有する画像層であって、第1及び第2の積層体のそれぞれに含まれる二色性画像の吸収軸が互いに直交している;
(2) 第1の積層体に含まれる1以上の層からなる保護層の、可視光に対する面内のレターデ−ション値(Re)が10nm以下である;
第1の積層体の表面上に、下記(3)の条件を満たすパターニングされた位相差層、及び下記(4)の条件を満たす直線偏光層を有し、該直線偏光層の外側から観察される立体画像印刷物であって;
(3)面内レターデーションが0の第1のドメイン、及び面内レターデーションが1/2波長の第2のドメインにパターニングされた位相差層であって、第1及び第2のドメインのそれぞれに対応する位置に左眼用画素又は右眼用画素が配置され、第1の積層体及び第2の積層体で、対応関係が逆転しており、且つ、第1の積層体及び第2の積層体に含まれる二色性画像の吸収軸と、第2のドメインの面内遅相軸とが、45°の角度をなしている;
(4)直線偏光層の偏光軸が、第1及び第2の積層体に含まれる二色性画像の吸収軸のいずれか一方と一致している;
想定される左眼観察位置には、左眼用画素のみが入射し、想定される右眼観察位置には、右眼用画素のみが入射するように構成されていることを特徴とする立体画像印刷物。
【請求項2】
第1及び第2の積層体のそれぞれに含まれる二色性画像内部では、右眼用画素と左眼用画素が交互に隣接して配置され、且つ第1及び第2の積層体のそれぞれに含まれる二色性画像の互いの対応する位置には、右眼用画素と左眼用画素とが、又は左眼用画素と右眼用画素とが、配置されていることを特徴とする請求項1に記載の立体画像印刷物。
【請求項3】
前記透明支持体が、可視光に対して面内のレターデ−ション値(Re)が10nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体画像印刷物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の二色性色素が液晶性であり、且つ第1の積層体の画像層と透明支持体との間に第1の配向膜、及び第2の積層体の画像層と透明支持体との間に第2の配向膜を有し、第1及び第2の配向膜の配向軸が互いに直交していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体画像印刷物。
【請求項5】
第1及び第2の配向膜がそれぞれ、高分子化合物を主成分とする組成物から形成された膜の表面を互いに直交する方向にラビング処理してなるラビング配向膜であることを特徴とする請求項4に記載の立体画像印刷物。
【請求項6】
第1及び第2の配向膜がそれぞれ、互いに直交する方向に光照射されてなる光配向膜であることを特徴とする請求項4に記載の立体画像印刷物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の液晶性二色性色素が親油性であり、且つ前記第1及び第2の配向膜が親水性ポリマーを主成分として含有することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の立体画像印刷物。
【請求項8】
第1及び/又は第2の積層体に含まれる前記一以上の層からなる保護層が、ポリビニルアルコールを主成分とする組成物から形成された酸素遮断層を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体画像印刷物。
【請求項9】
第1及び/又は第2の積層体に含まれる前記一以上の層からなる保護層のいずれかの層が、UV吸収剤を含有してなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の立体画像印刷物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の二色性色素が、下記一般式(I)、下記一般式(II)、下記一般式(III)、下記一般式(IV)、又は下記一般式(V)で表わされる液晶性二色性色素であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の立体画像印刷物。
【化1】

(式中、R11〜R14はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;L11は、−N=N−、−CH=N−、−N=CH−、−C(=O)O−、−OC(=O)−、又は−CH=CH−を表し;A11は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し;B11は、置換基を有していてもよい、2価の芳香族炭化水素基又は2価の芳香族複素環基を表し;nは1〜5の整数を表し、nが2以上のとき複数のB11は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(式中、R21及びR22はそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は−L22−Yで表される置換基を表すが、但し、少なくとも一方は、水素原子以外の基を表し;L22は、アルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個のCH基又は隣接していない2個以上のCH基はそれぞれ−O−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−NRCOO−、−OCONR−、−CO−、−S−、−SO−、−NR−、−NRSO−、又は−SONR−(Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)に置換されていてもよく;Yは、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ハロゲン原子、又は重合性基を表し;L21はそれぞれ、アゾ基(−N=N−)、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、オキシカルボニル基(−O−C(=O)−)、イミノ基(−N=CH−)、及びビニレン基(−C=C−)からなる群から選ばれる連結基を表し;Dyeはそれぞれ、下記一般式(IIa)で表されるアゾ色素残基を表し;
【化3】

式(IIa)中、*はL21との結合部を表し;X21は、ヒドロキシ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、無置換アミノ基、又はモノもしくはジアルキルアミノ基を表し;Ar21は、それぞれ置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表し;nは1〜3の整数を表し、nが2以上の時、2つのAr21は互いに同一でも異なっていてもよい。)
【化4】

(式中、R31〜R35はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し;R36及びR37はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表し;Q31は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、芳香族複素環基又はシクロヘキサン環基を表し;L31は2価の連結基を表し;A31は酸素原子又は硫黄原子を表す)
【化5】

(式中、R41及びR42はそれぞれ、水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよく;Arは、置換されていてもよい2価の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表し;R43及びR44はそれぞれ、水素原子、又は置換されていてもよいアルキル基を表し、互いに結合して複素環を形成していてもよい。)
【化6】

(式中、A及びAはそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の、炭化水素環基又は複素環基を表わす。)
【請求項11】
前記パターニングされた位相差層が、硬化性液晶性組成物を硬化してなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の立体画像印刷物。
【請求項12】
前記パターニングされた位相差層が、硬化性液晶組成物からなる膜をパターン露光することにより、面内レターデーションを発現又は消失させて第1及び第2のドメインを形成してなることを特徴とする請求項11に記載の立体画像印刷物。
【請求項13】
観察側の反対面に、非偏光解消性の反射層を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の立体画像印刷物。
【請求項14】
透明支持体の表面上及び裏面上に、同時に又は別々に、少なくとも有機溶媒及び該有機溶媒に溶解した少なくとも1種の二色性色素を含有する二色性色素組成物を、左眼用画素及び右眼用画素を所定の配列で含む画像様にそれぞれ塗布すること;並びに
該組成物中の有機溶媒を蒸発させることにより、前記少なくとも一種の二色性色素を自発的に又は追従的に水平配向させること;
を少なくとも含む請求項1〜13のいずれか1項に記載の立体画像印刷物の製造方法。
【請求項15】
前記液晶性二色性色素組成物を、インクジェット法により塗布することを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−3121(P2012−3121A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139316(P2010−139316)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】