説明

立体画像生成用の撮像装置

【課題】十分な被写体光を取り入れることが出来、また撮影後の立体画像処理も容易である立体画像生成用の撮像装置を提供する。
【解決手段】偏向光学素子DMが、固体撮像素子CCDの電荷の読み取りタイミングに応じて、第1の導光光学系OS1を通過した被写体光と、第2の導光光学系OS2を通過した被写体光とが、交互に固体撮像素子CCDの受光面RPに入射するように、第1の導光光学系OS1及び第2の導光光学系OS2を通過した被写体光を反射するので、十分な強度の被写体光を固体撮像素子CCDの受光面RPに導くことができる。又、単一の固体撮像素子CCDを用いることで、コストも抑えることが出来、撮影後の立体画像処理も容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの導光光学系を介して入射する被写体光を1つの固体撮像素子に結像させて立体画像を生成する撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被写体画像の右目情報と左目情報の視差に基づく立体画像を生成する立体撮像装置が知られている。このような立体撮像装置としては、例えば一対のデジタルカメラやカムコーダを視差分だけ離して撮影を行い、その後、それぞれのカメラ等からの画像情報を画像処理で合成することにより立体画像や立体映像を得ている。ところが、このような手法で立体画像を生成すると、画像処理に時間がかかるという問題がある。これに対し、特許文献1には、2つの光学系からの光線をビームスプリッタで結合することにより、1つの撮像素子に入射させることができる撮像装置が開示されている。かかる撮像装置によれば、撮像素子が1つであるため、画像処理が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02−226895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の撮像装置では、一方の光学系からの光線はビームスプリッタで反射させ、他方の光学系からの光線はビームスプリッタを透過させるものであるため、最大でも被写体光の半分の光量しか撮像素子に入射させることができず、例えば暗いシーンの撮影を行うのに不便であった。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、十分な被写体光を取り入れることが出来、また撮影後の立体画像処理も容易である立体画像生成用の撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の立体画像生成用の撮像装置は、
所定距離で光軸を離した第1の導光光学系及び第2の導光光学系と、
被写体光を受光する受光面を備えた固体撮像素子と、
前記固体撮像素子の電荷の読み取りタイミングに応じて、前記第1の導光光学系を通過した被写体光と、前記第2の導光光学系を通過した被写体光とが、交互に前記固体撮像素子の受光面に入射するように、前記第1の導光光学系及び前記第2の導光光学系を通過した被写体光のうち少なくとも一方を反射する偏向光学素子と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、前記偏向光学素子が、前記固体撮像素子の電荷の読み取りタイミングに応じて、前記第1の導光光学系を通過した被写体光と、前記第2の導光光学系を通過した被写体光とが、交互に前記固体撮像素子の受光面に入射するように、前記第1の導光光学系及び前記第2の導光光学系を通過した被写体光のうち少なくとも一方を反射するので、十分な強度の被写体光を前記固体撮像素子の受光面に導くことができる。又、単一の固体撮像素子を用いることで、コストも抑えることが出来、撮影後の立体画像処理も容易である。
【0008】
請求項2に記載の立体画像生成用の撮像装置は、請求項1に記載の発明において、前記偏向光学素子は、前記第1の導光光学系を通過した被写体光のみが、前記固体撮像素子の受光面に入射するように、被写体光を反射する第1の位置と、前記第2の導光光学系を通過した被写体光のみが、前記固体撮像素子の受光面に入射するように、被写体光を反射する第2の位置との間で移動可能となっていることを特徴とする。これにより、十分な強度の被写体光を前記固体撮像素子の受光面に導くことができる。このような偏向光学素子としては、例えば特開2008-292951号公報に記載されたMEMSミラーやガルバノミラー等を用いることができる。
【0009】
請求項3に記載の立体画像生成用の撮像装置は、請求項1に記載の発明において、前記偏向光学素子は、前記第1の導光光学系を通過した被写体光のみが、前記固体撮像素子の受光面に入射するように、被写体光を反射する第1の位置と、前記第2の導光光学系を通過した被写体光が、前記固体撮像素子の受光面に入射することを妨げないが、前記第1の導光光学系を通過した被写体光を遮蔽する第2の位置との間で移動可能となっていることを特徴とする。これにより、十分な強度の被写体光を前記固体撮像素子の受光面に導くことができる。このような偏向光学素子としては、特開2008-292951号公報に記載されたMEMSミラーやガルバノミラー等を用いることができる。
【0010】
請求項4に記載の立体画像生成用の撮像装置は、請求項2又は3に記載の発明において、前記偏向光学素子が前記第1の位置及び/又は前記第2の位置にあることを検出するセンサを有することを特徴とする。前記偏向光学素子の動作を前記センサで検出することで、前記固体撮像素子の信号読み取りタイミングに同期させることができる。
【0011】
請求項5に記載の立体画像生成用の撮像装置は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記第1の導光光学系及び前記第2の導光光学系は、同じ構成要素を有することを特徴とする。これにより、2つの導光光学系の収差量などの光学特性を同じにすることができ、立体画像生成時の違和感を減少させることができる。
【0012】
請求項6に記載の立体画像生成用の撮像装置は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記偏向光学素子の近傍に絞りを設けたことを特徴とする。前記絞りを、前記偏向光学素子の近傍に設けることで、撮像装置の大型化を抑制できる。また、前記偏向光学素子自体が絞りとして機能しても良い。
【0013】
請求項7に記載の立体画像生成用の撮像装置は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記偏向光学素子に入射する被写体光の入射角は30度以内であることを特徴とする。前記偏向光学素子への入射角を抑えることで、前記偏向光学素子の大型化を抑制できる。また、入射角度を小さくすることで、より高速に被写体像を切り換えることができるので、高速シャッタとして機能させることもできる。なお、ここで言う30度とは、適切に一方の被写体光が前記固体撮像素子の受光面に到達している状態において、前記偏向光学素子に入射する前記被写体光の結像高0の主光線の入射角(前記偏向光学素子の法線からの角度)のことを言う。偏向光学素子への主光線入射角を大きくすれば(≦45度)、最も物体側のレンズから固体撮像素子受光面までの距離を短くすることが出来る反面、偏向光学素子の最大ふれ角も大きくなり偏向光学素子が大型化してしまう。
【0014】
請求項8に記載の立体画像生成用の撮像装置は、請求項1〜7のいずれかに記載の発明において、迷光を抑制する遮光部材を設けたことを特徴とする。これにより、不要な迷光が固体撮像素子の受光面に到達して画質を低下させることを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、十分な被写体光を取り入れることが出来、また撮影後の立体画像処理も容易である立体画像生成用の撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態にかかる撮像装置の概略構成図である。
【図2】本実施の形態の撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施の形態にかかる撮像装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる立体画像生成用の撮像装置の概略構成図である。図1において、撮像装置は、視差分だけ入射光軸を平行に離した第1の導光光学系OS1及び第2の導光光学系OS2と、偏向光学素子DMと、共通光学系COSと、固体撮像素子CCDとを有する。
【0018】
第1の導光光学系OS1は、物体側から順に、凸レンズL11と、ミラーM1と、凹レンズL12と、絞りS1とを有する。第2の導光光学系OS2は、物体側から順に、凸レンズL21と、ミラーM2と、凹レンズL22と、絞りS2とを有する。図1から明らかなように、第1の導光光学系OS1と第2の導光光学系OS2とは同じ構成要素を有しており、これらを共通光学系COSの光軸を挟んで対称な位置に配置している。
【0019】
絞りS1,S2の間であって、その近傍に偏向光学素子DMが配置されている。偏向光学素子DMは、例えばMEMSミラーであって不図示の駆動部からの信号により、図1に示す第1の位置Aと第2の位置Bとの間で中央の軸回りに回動可能な構成となっている。第1の位置Aでは、第1の導光光学系OS1を通過した被写体光が、偏向光学素子DMで反射され、凸レンズL3を通過して固体撮像素子CCDの受光面RPに入射するようになっているが、第2の導光光学系OS2を通過した被写体光は、凸レンズL3に入射しない。一方、第2の位置Bでは、第2の導光光学系OS2を通過した被写体光が、偏向光学素子DMで反射され、凸レンズL3を通過して固体撮像素子CCDの受光面RPに入射するようになっているが、第1の導光光学系OS1を通過した被写体光は、凸レンズL3に入射しない。
【0020】
偏向光学素子DMの枠周囲には、遮光部材として黒色塗料が形成されている。共通光学系COSは、フォーカシング用の凸レンズL3を有している。尚、これ以外にズーム用のレンズを光学系内のどこかに設けても良い。更に共通光学系COSの鏡筒などに、迷光を抑制する遮光部材を設けても良い。固体撮像素子CCDは、受光面RPを有する。
【0021】
偏向光学素子DMの近傍に、センサSSが配置されている。センサSSは、例えばフォトディテクタであって、検出光を偏向光学素子DMの背面に投射し、その反射光を検出することで、偏向光学素子DMが第1の位置Aにあるか第2の位置Bにあるかを検出できるものである。
【0022】
図2は、本実施の形態の撮像装置の動作を示すフローチャートである。不図示のシャッタボタンを操作することで、撮像が開始されると、まずステップS101で、不図示の駆動部が偏向光学素子DMを第1の位置Aに向かって回動させる。更にステップS102で、センサSSが、偏向光学素子DMが第1の位置Aに到達したことを検出したときは、第1導光光学系OS1に入射した被写体光が、凸レンズL11を通過し、ミラーM1で反射され、凹レンズL12と絞りS1とを通過した後、偏向光学素子DMで反射されて凸レンズL3に向かうようになるので、ステップS103で、受光面RPに入射した被写体光を画像信号に変換し固体撮像素子CCDの撮像を行う。これを用いて右目用の画像が形成されることとなる。
【0023】
その後、ステップS104で画像データの読み出しを行い、不図示のメモリに記憶するが、これと並行して、ステップS105で偏向光学素子DMを第2の位置Bに向かって回動させる。回動中の偏向光学素子DMは、第1の位置でも第2の位置でもない中間位置をとりうるが、このとき固体撮像素子CCDは撮像を中止して(シャッタを閉じて)画像データの読み出しを行っているため、不要光を取り込むことはない。
【0024】
更にステップS106で、センサSSが、偏向光学素子DMが第2の位置Bに到達したことを検出したときは、第2導光光学系OS2に入射した被写体光が、凸レンズL21を通過し、ミラーM2で反射され、凹レンズL22と絞りS2とを通過した後、偏向光学素子DMで反射されて凸レンズL3に向かうようになるので、ステップS107で、受光面RPに入射した被写体光を画像信号に変換し固体撮像素子CCDの撮像を行う。これを用いて左目用の画像が形成されることとなる。
【0025】
その後、ステップS108で画像データの読み出しを行い、不図示のメモリに記憶するが、ステップS109で撮像の終了の操作が行われず、連続して撮像を行う場合には、これと並行して、再びステップS101で偏向光学素子DMを第1の位置Aに向かって回動させる。以下、同様に動作が実行される。一方、ステップS109で撮像の終了の操作が行われたときは、撮像を終了する。
【0026】
本実施の形態によれば、偏向光学素子DMが、固体撮像素子CCDの電荷の読み取りタイミングに応じて、第1の導光光学系OS1を通過した被写体光と、第2の導光光学系OS2を通過した被写体光とが、交互に固体撮像素子CCDの受光面RPに入射するように、第1の導光光学系OS1及び第2の導光光学系OS2を通過した被写体光を反射するので、十分な強度の被写体光を固体撮像素子CCDの受光面RPに導くことができる。又、単一の固体撮像素子CCDを用いることで、コストも抑えることが出来、撮影後の立体画像処理も容易である。
【0027】
図3は、第2の実施の形態にかかる撮像装置の概略構成図である。図3において、撮像装置は、視差分だけ入射光軸を平行に離した第1の導光光学系OS1及び第2の導光光学系OS2と、偏向光学素子DMと、共通光学系COSと、固体撮像素子CCDとを有する。
【0028】
第1の導光光学系OS1は、物体側から順に、レンズL11と、ミラーM1と、レンズL2とを有する。第2の導光光学系OS2は、物体側から順に、レンズL21と、レンズL22とを有する。
【0029】
レンズL12からの光路とレンズL22からの光路の交差部に、偏向光学素子DMが配置されている。偏向光学素子DMは、例えばMEMSミラーであって不図示の駆動部からの信号により、図1に示す第1の位置Aと第2の位置Bとの間で端部軸回りに回動可能な構成となっている。第1の位置Aでは、第1の導光光学系OS1を通過した被写体光が、偏向光学素子DMで反射され、凸レンズL3を通過して固体撮像素子CCDの受光面RPに入射するようになっているが、第2の導光光学系OS2を通過した被写体光は、偏向光学素子DMの背面に遮蔽されて凸レンズL3に入射しない。一方、第2の位置Bでは、第2の導光光学系OS2を通過した被写体光が、凸レンズL3を通過して固体撮像素子CCDの受光面RPに入射するように、偏向光学素子DMが退避した位置となるが、第1の導光光学系OS1を通過した被写体光は、偏向光学素子DMの反射面により入射方向に反射されて凸レンズL3に入射しない。
【0030】
偏向光学素子DMの背面には、遮光部材として黒色塗料が形成されている。共通光学系COSは、フォーカシング用の凸レンズL3を有している。尚、これ以外にズーム用のレンズを光学系内のどこかに設けても良い。固体撮像素子CCDは、受光面RPを有する。
【0031】
偏向光学素子DMの近傍に、センサSSが配置されている。センサSSは、例えばフォトディテクタであって、検出光を偏向光学素子DMに投射し、その反射光を検出することで、偏向光学素子DMが第1の位置Aにあるか第2の位置Bにあるかを検出できるものである。
【0032】
本実施の形態においても、偏向光学素子DMが、固体撮像素子CCDの電荷の読み取りタイミングに応じて、第1の導光光学系OS1を通過した被写体光と、第2の導光光学系OS2を通過した被写体光とが、交互に固体撮像素子CCDの受光面RPに入射するように、第1の導光光学系OS1と第2の導光光学系OS2を通過した被写体光の一方を通過させ、他方を遮蔽するので、十分な強度の被写体光を固体撮像素子CCDの受光面RPに導くことができる。又、単一の固体撮像素子CCDを用いることで、コストも抑えることが出来、撮影後の立体画像処理も容易である。
【符号の説明】
【0033】
CCD 固体撮像素子
COS 共通光学系
DM 偏向光学素子
L11 レンズ
L12 レンズ
L21 レンズ
L22 レンズ
L3 凸レンズ
M1 ミラー
M2 ミラー
OS1 第1の導光光学系
OS2 第2の導光光学系
RP 受光面
S1,S2 絞り
SS センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定距離で光軸を離した第1の導光光学系及び第2の導光光学系と、
被写体光を受光する受光面を備えた固体撮像素子と、
前記固体撮像素子の電荷の読み取りタイミングに応じて、前記第1の導光光学系を通過した被写体光と、前記第2の導光光学系を通過した被写体光とが、交互に前記固体撮像素子の受光面に入射するように、前記第1の導光光学系及び前記第2の導光光学系を通過した被写体光のうち少なくとも一方を反射する偏向光学素子と、を有することを特徴とする立体画像生成用の撮像装置。
【請求項2】
前記偏向光学素子は、前記第1の導光光学系を通過した被写体光のみが、前記固体撮像素子の受光面に入射するように、被写体光を反射する第1の位置と、前記第2の導光光学系を通過した被写体光のみが、前記固体撮像素子の受光面に入射するように、被写体光を反射する第2の位置との間で移動可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の立体画像生成用の撮像装置。
【請求項3】
前記偏向光学素子は、前記第1の導光光学系を通過した被写体光のみが、前記固体撮像素子の受光面に入射するように、被写体光を反射する第1の位置と、前記第2の導光光学系を通過した被写体光が、前記固体撮像素子の受光面に入射することを妨げないが、前記第1の導光光学系を通過した被写体光を遮蔽する第2の位置との間で移動可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の立体画像生成用の撮像装置。
【請求項4】
前記偏向光学素子が前記第1の位置及び/又は前記第2の位置にあることを検出するセンサを有することを特徴とする請求項2又は3に記載の立体画像生成用の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の導光光学系及び前記第2の導光光学系は、同じ構成要素を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の立体画像生成用の撮像装置。
【請求項6】
前記偏向光学素子の近傍に絞りを設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の立体画像生成用の撮像装置。
【請求項7】
前記偏向光学素子に入射する被写体光の入射角は30度以内であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の立体画像生成用の撮像装置。
【請求項8】
迷光を抑制する遮光部材を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の立体画像生成用の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−159769(P2012−159769A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20562(P2011−20562)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】