説明

立体的回路基板の製造装置及び製造方法

【課題】円筒形状のフィルム回路基板実装体の外周面に均一に絶縁性樹脂を塗布する立体的回路基板の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】円筒形状又は円柱形状の部材の曲面上にフィルム回路基板を実装したフィルム回路基板実装体50の表面に、絶縁性樹脂60を塗布して絶縁樹脂層を形成する立体的回路基板70の製造装置であって、前記フィルム回路基板と同径の円筒形状を有し、前記フィルム回路基板実装体の両端を上下から挟むように固定し、前記フィルム回路基板実装体を上下に立てた状態で保持する実装体保持部と、該実装体保持部及び前記フィルム回路基板実装体を内嵌可能なリング状スキージ100と、該リング状スキージを、前記フィルム回路基板実装体の軸方向に移動可能に外側から覆うように保持するスキージ保持部と、該スキージ保持部の直上に設けられた絶縁性樹脂溜め102と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的回路基板の製造装置及び製造方法に関し、特に、円筒形状又は円柱形状の部材の曲面上にフィルム回路基板を実装したフィルム回路基板実装体の表面に、絶縁性樹脂を塗布して絶縁樹脂層を形成する立体的回路基板の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機や携帯電話などの電子機器の小型化、多機能化、および低コスト化に伴い、筐体の内面や外面に、回路基板をコンパクトに収納することが要求されている。また、このような回路基板として、平面的ではなく固体形状に合わせて立体的形状をとることができる回路基板が必要とされる場合がある。
【0003】
このような立体的回路基板としては、例えば、ローラなどの円筒状部材の表面全周にフィルム回路基板を形成したものがある。このような立体的回路基板は、特に複写機の分野において、現像用ローラ、帯電ローラ、転写ローラに適用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、立体的回路基板の製造方法として、本発明者らは、円筒状の部材を、中心軸が水平となる状態で回転可能に保持し、絶縁性フィルム上に配線が形成されているフィルム回路基板を、絶縁性フィルムを下向きにして水平に搬送し、円筒状の部材を回転させつつ、貼着時に、円筒状の部材又は絶縁性フィルム上に形成された接着剤層の接着力を発揮させ、フィルム回路基板を円筒状の部材の表面に貼着することを提案している(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
その後、配線を保護するとともに絶縁性を確保するため、フィルム回路基板の貼着後に、絶縁性の樹脂を配線表面の全体に亘って塗布する。かかる製造方法により、円筒状の部材の表面に配線が形成されたフィルム回路基板が貼着実装され、フィルム回路基板の表面に絶縁性樹脂が塗布された立体的回路基板を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−59568号公報
【特許文献2】特開2009−147081号公報
【特許文献3】特開2009−170578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の立体回路基板の製造方法によりフィルム回路基板を貼着した場合、フィルム回路基板を精度良く切断しても、切断に起因してフィルム回路基板に形状や大きさのバラツキが存在し、かつ、円筒状の部材自体にも仕上がり径のバラツキが存在するため、フィルム回路基板の貼着後において、フィルム回路基板の端部間にさまざまな幅の間隙が生じてしまう。そして、間隙が生じた部分では、フィルム回路基板の厚さにより生じる円筒状の部材の表面との段差により、立体的回路基板の外周表面が平坦でなくなるという問題があった。
【0008】
かかる間隙には、次の工程において絶縁性樹脂をフィルム回路基板の表面に塗布する際、絶縁性樹脂が埋め込まれ、立体的回路基板の表面の段差を減少させることができる。よって、円筒状の部材にフィルム回路基板を貼着して実装した後、フィルム回路基板実装体の表面に絶縁性樹脂を周囲に均一に塗布できれば、立体的回路基板の表面の段差を低減することができる。
【0009】
しかしながら、円筒形状を有するフィルム回路基板実装体の表面に絶縁性樹脂を均一に層状に塗布するのは困難であるという問題があった。例えば、スプレーによる塗布では、絶縁性樹脂を均一に塗布することができるが、間隙の段差を充填するほどの厚さで塗布を行うことは困難であるという問題があった。また、フィルム回路基板実装体を回転させ、軸方向に延在する平板状スキージをフィルム回路基板実装体の表面と所定間隔を保って絶縁性樹脂を供給して塗布する方法があるが、円筒形状部材の真円度、平板状スキージの直進性等、極めて高い加工精度が要求される。また、平板状スキージを離間する際に、絶縁性樹脂にステージ痕が発生し易いという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、円筒形状又は円柱形状を有するフィルム回路基板実装体の外周面に高い均一性で絶縁性樹脂を塗布することができ、表面の凹凸を低減できる立体的回路基板の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る立体的回路基板の製造装置は、円筒形状又は円柱形状の部材の曲面上にフィルム回路基板を実装したフィルム回路基板実装体の表面に、絶縁性樹脂を塗布して絶縁樹脂層を形成する立体的回路基板の製造装置であって、
前記フィルム回路基板と同径の円筒形状を有し、前記フィルム回路基板実装体の両端を上下から挟むように固定し、前記フィルム回路基板実装体を上下に立てた状態で保持する実装体保持部と、
該実装体保持部及び前記フィルム回路基板実装体を内嵌可能なリング状スキージと、
該リング状スキージを、前記フィルム回路基板実装体の軸方向に移動可能に外側から覆うように保持するスキージ保持部と、
該スキージ保持部の直上に設けられた絶縁性樹脂溜めと、を有し、
該絶縁性樹脂溜めに絶縁性樹脂を溜めた状態で、前記フィルム回路基板実装体の表面に前記絶縁性樹脂を供給しながら前記スキージ保持部を前記フィルム回路基板実装体の下方から上方に移動させることにより、前記リング状スキージにより前記フィルム回路基板実装体の表面に前記絶縁性樹脂を塗布することを特徴とする。
【0012】
また、前記絶縁性樹脂溜めは、前記スキージ保持部と一体的に構成され、
前記スキージ保持部は、前記フィルム回路基板実装体を下から保持する下部実装体保持部から、前記フィルム回路基板実装体を上から保持する上部実装体保持部まで含めて移動可能であることが好ましい。
【0013】
また、前記下部実装体保持部は、前記フィルム回路基板実装体を保持していないときに取り外し可能であることが好ましい。
【0014】
また、前記上部実装体保持部は、前記フィルム回路基板実装体を保持していないときには、前記下部実装体保持部の位置に移動可能であることが好ましい。
【0015】
また、前記上部実装体保持部及び前記下部実装体保持部は、固定された針状部に着脱可能に嵌合した筒状部材から構成されることが好ましい。
【0016】
また、前記下部実装体保持部は、取り外し後は、前記上部実装体保持部として装着利用可能であることが好ましい。
【0017】
また、前記部材は、軸方向に突出する突起部を両端部に有し、
該突起部は、前記筒状部材に挿入されて前記上部実装体保持部及び前記下部実装体保持部に固定されることが好ましい。
【0018】
また、前記スキージ保持部は、複数の前記リング状スキージが保持可能であることが好ましい。
【0019】
また、前記リング状スキージは、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム又はこれらの混合材料からなり、内径が、前記フィルム回路基板実装体の外径よりも0〜1mm小さいことが好ましい。
【0020】
また、前記リング状スキージは、セラミック材料からなり、内径が、前記フィルム回路基板実装体の外径よりも前記絶縁樹脂層の厚さ分大きいことが好ましい。
【0021】
ここで、前記リング状スキージより下方に所定間隔を有して設けられ、前記実装体保持部及び前記フィルム回路基板実装体を内嵌可能な第2のリング状スキージと、
該第2のリング状スキージを、前記フィルム回路基板実装体の軸方向に移動可能に保持する第2のスキージ保持部と、を更に有する構成としてもよい。
【0022】
また、前記第2のスキージ保持部は、上面に前記フィルム回路基板実装体の周面に沿ったリング状の溝を有し、
該溝上に前記第2のリング状スキージを保持することが好ましい。
【0023】
また、前記第2のスキージ保持部の上面は、前記溝よりも外側はテーパー形状を含む構成としてもよい。
【0024】
また、前記第2のスキージ保持部は、前記絶縁性樹脂溜め又は前記スキージ保持部と連結されていることが好ましい。
【0025】
なお、前記第2のリング状スキージは、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム又はこれらの混合材料からなり、内径が、前記フィルム回路基板実装体の外径よりも0〜1mm小さい構成としてもよい。
【0026】
また一方で、前記リング状スキージは、セラミック材料からなり、内径が、前記フィルム回路基板実装体の外径よりも前記絶縁樹脂層の厚さ分大きい構成としてもよい。
【0027】
なお、前記所定間隔は、5mm以上の間隔であることが好ましい。
【0028】
本発明の他の態様に係る立体的回路基板の製造方法は、円筒形状又は円柱形状の部材の曲面上にフィルム回路基板を実装したフィルム回路基板実装体の表面に、絶縁性樹脂を塗布して絶縁樹脂層を形成する立体的回路基板の製造方法であって、
前記フィルム回路基板と同径の円筒形状を有する上部実装体保持部及び下部実装体保持部で、前記フィルム回路基板実装体の両端を上下から挟むように固定し、前記フィルム回路基板実装体を上下に立てた状態で保持する工程と、
前記下部実装体保持部を内嵌したリング状スキージの上方に前記絶縁性樹脂を溜めた状態で、前記絶縁性樹脂を前記フィルム回路基板の表面に供給しながら前記リング状スキージを上方に移動させ、前記フィルム回路基板の表面に前記絶縁性樹脂を層状に塗布する工程と、を有することを特徴とする。
【0029】
また、前記リング状スキージは、外側からスキージ保持部に覆われて支持され、
該スキージ保持部の直上には、前記絶縁性樹脂を溜める絶縁性樹脂溜めが一体的に構成され、該スキージ保持部の移動により前記リング状スキージを移動させることが好ましい。
【0030】
また、前記リング状スキージより所定間隔下方に、前記実装体保持部及び前記フィルム回路基板実装体を内嵌可能な第2のリング状スキージが設けられ、
該第2のリング状スキージは、前記リング状スキージの上方への移動に伴って移動し、前記フィルム回路基板の表面に層状に塗布された前記絶縁性樹脂を均すこととしてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、立体的回路基板の表面の凹凸を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態1に係る立体的回路基板製造装置の加工対象となるフィルム回路基板実装体の一例を示した図である。
【図2】実施形態1に係る立体的回路基板製造装置の一例を示した構成図である。図2(a)は、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置の概略正面図である。図2(b)は、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置の概略側面図である。
【図3】実施形態1に係るホルダ103の一例をより詳細に示した断面構成図である。
【図4】実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の一例の一連の工程を示した図である。図4(a)は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法のフィルム回路基板実装体設置工程を示した図である。図4(b)は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の塗布工程を示した図である。図4(c)は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の塗布工程の終了段階を示した図である。図4(d)は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の立体的回路基板取り外し工程を示した図である。図4(e)は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の実装体保持部材交換工程の一例を示した図である。図4(f)は、実施形態1に係る立体的基板の製造方法のフィルム回路基板実装体設置工程の一例を示した図である。
【図5】製造された立体的回路基板70の一例の断面構成を示した図である。
【図6】実施形態1に係る立体的基板の製造方法の研磨工程の一例を示した図である。
【図7】本発明の実施形態2に係る立体的回路基板製造装置の一例を示した構成図である。図7(a)は、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置の概略正面図である。図7(b)は、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置の概略側面図である。
【図8】実施形態2に係る立体的回路基板製造装置の第1及び第2のリング状スキージの一例を拡大して示した図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法の一例を示した図である。図9(a)は、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法のフィルム回路基板実装体設置工程を示した図である。図9(b)は、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法の塗布工程を示した図である。図9(c)は、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法の塗布工程の終了段階を示した図である。図9(d)は、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法の立体的回路基板取り外し工程を示した図である。図9(e)は、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法の実装体保持部材交換工程の一例を示した図である。図9(f)は、実施形態2に係る立体的基板の製造方法のフィルム回路基板実装体設置工程の一例を示した図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る立体的回路基板製造装置の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0034】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る立体的回路基板製造装置の加工対象となるフィルム回路基板実装体の一例を示した図である。図1において、フィルム回路基板実装体50は、円筒形状又は円柱形状を有する部材10と、フィルム回路基板20と、接着剤層30とを備える。また、フィルム回路基板20の両端の間には、間隙40が形成されている。
【0035】
部材10は、円筒形状又は円柱形状に形成されている。部材10は、用途に応じて種々の材料から構成されてよいが、例えば、金属から構成されてもよい。
【0036】
フィルム回路基板20は、フィルム状の回路基板であり、絶縁性フィルム21と、回路配線22とを備える。絶縁性フィルム21は、種々の形状を採り得る柔軟性を有するフィルム状の種々の材料から構成されてよいが、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)等から構成されてもよい。回路配線22は、絶縁性フィルム21の片面に形成された導電配線である。回路配線22は、例えば、絶縁性フィルム21の片面に、銅層で所定のパターンで形成されてもよい。絶縁性フィルム21と回路配線22の厚さは、用途などに応じて適宜選択されてよいが、例えば、複写機で用いられる電子部品の場合には、絶縁性フィルム21の厚さは12〜50μm程度であってもよい。また、後の工程で絶縁性フィルム21を研磨する場合には、これよりも厚い25〜75μm程度の厚さとし、配線の厚さは1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0037】
なお、基材となる円筒状の部材10の大きさも、用途等に応じて適宜選択されてよいが、例えば、複写機で用いられる電子部品の場合、外径φ8〜32mm、長さ20〜40cm程度の大きさとすることが好ましい。
【0038】
フィルム回路基板20は、円筒状の部材10の大きさに応じて、切断により、大型フィルムから適切なサイズのフィルムに切断され、接着剤層30を介して、回路配線22が表面側となるように、円筒状の部材10の表面上に貼着される。この場合、接着剤層30は、フィルム回路基板20の絶縁性フィルム21上に形成してもよく、部材10の表面上に形成してもよい。
【0039】
これにより、円筒状の部材10の曲面の表面に、接着剤層30を介してフィルム回路基板20が貼着されて実装されたフィルム回路基板実装体50が得られる。フィルム回路基板実装体50は、表面に絶縁性樹脂層が形成される前の立体的回路基板の状態であり、この状態のフィルム回路基板実装体50は、表面に回路配線22が露出しており、フィルム回路基板20の端部間に周方向の隙間40が生じている。隙間40においては、接着剤層30が露出している場合は、絶縁性フィルム21の厚さ分、フィルム回路基板20の表面と段差が生じ、円筒状の部材10が露出している場合は、接着剤30と絶縁性フィルム21の厚さ分、フィルム回路基板20の表面と段差が生じており、いずれの場合も、凹みが生じた状態となっている。かかる隙間40の凹み形状が残ったまま立体的回路基板が完成すると、表面に段差が存在する立体的回路基板となってしまう。例えば、立体的回路基板が、複写機の分野において、現像用ローラ、帯電ローラ、転写ローラに用いられた場合には、現像ムラ、帯電ムラ、転写ムラを生じる要因となってしまう。
【0040】
そこで、本実施形態に係る立体的回路基板の製造装置及び製造方法においては、円筒状又は円柱状のフィルム回路基板実装体50の外周表面に、生産性良く、絶縁性樹脂を凹凸なく均一に塗布することを可能とする。以下、その内容について具体的に説明する。
【0041】
図2は、本発明の実施形態1に係る立体的回路基板製造装置の一例を示した構成図である。図2(a)は、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置の概略正面図であり、図2(b)は、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置の概略側面図である。
【0042】
図2(a)、(b)において、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置は、実装体保持部80と、針状部90と、ホルダ103と、下部実装体保持部支持軸110と、下部実装体保持部移動機構111と、ホルダ支持軸120と、ホルダ移動機構121と、上部実装体保持部固定手段130とを有する。ホルダ103は、スキージ保持部101と、絶縁性樹脂溜め102とを有する。また、実装体保持部80は、上部実装体保持部81及び下部実装体保持部82を有し、針状部90も、上部針状部91及び下部針状部92を有する。更に、ホルダ103の絶縁性樹脂溜め102の中には、絶縁性樹脂60が収容されている。
【0043】
図2(a)、(b)において、実装体保持部80は、フィルム回路基板実装体50を上下から挟み、フィルム回路基板実装体50を上下に立てた状態で保持するための手段である。よって、実装体保持部80は、上側に配置された上部実装体保持部81と、下側に配置された下部実装体保持部82とを有する。上部実装体保持部81と下部実装体保持部82は、取り外して交換可能なように、同一形状及び同一サイズの部品として構成されることが好ましい。実装体保持部80は、針状部90を内嵌するように筒状部材として構成され、針状部90を内嵌することにより固定される。
【0044】
針状部90は、実装体保持部80に挿入されることにより、実装体保持部80を固定するための手段である。針状部90も、上部実装体保持部81及び下部実装体保持部82に対応して上下に各々設けられ、上部針状部91及び下部針状部92を有する。上部針状部91は、立体的回路基板製造装置の本体に固定され、下部針状部92は、下部実装体保持部移動機構111に固定されて設けられる。
【0045】
図2(b)において、下部実装体保持部支持軸110は、下部実装体保持部移動機構111を介して下部実装体保持部82を支持するための軸である。下部実装体保持部移動機構111は、下部実装体保持部82を支持して上下に移動させるための手段である。下部実装体保持部移動機構111は、一方の端部で下部実装体保持部支持軸110を内嵌し、下部実装体保持部支持軸110から水平に延びて他方の端部で下部実装体保持部82を下方から支持している。なお、下部実装体保持部移動機構111は、直接的には下部針状部92を下方から固定支持しており、下部針状部92を内嵌する下部実装体保持部82も併せて下方から支持している。よって、下部実装体保持部82は、下部実装体保持部移動機構111から取り外し可能であるが、下部針状部92は、下部実装体保持部移動機構111に固定されて支持される。また、下部実装体保持部82の移動は、フィルム回路基板実装体50の着脱に必要な範囲のみでよいので、下部実装体保持部支持軸110は、移動に必要な範囲をカバーするように下部にのみ短く設けられている。
【0046】
また、下部実装体保持部移動機構111は、下部実装体保持部支持軸110に鉛直方向に移動可能に支持される。下部実装体保持部移動機構111は、種々の移動機構により下部実装体保持部82を移動させてよいが、例えば、下部実装体保持部支持軸110の表面及び下部実装体保持部移動機構111の内周面に互いに嵌合するねじ山を形成し、下部実装体保持部支持軸110を回転させることにより、下部実装体保持部移動機構111を上下に移動させるように構成してもよい。これにより、嵌合ねじと下部実装体支持軸110を回転させるモータ等の簡素な構成により、下部実装体保持部82を上下に移動させることができる。
【0047】
なお、図2においては、フィルム回路基板実装体50の着脱を行うために、下部実装体保持部82を上下に移動させる構成としているが、上部実装体保持部81を上下に移動させてフィルム回路基板実装体50を着脱する構成としてもよい。この場合には、図2における下部実装体支持軸110、下部実装体保持部移動機構111のような機構、例えば、上部実装体支持軸、上部実装体保持部移動機構(図示せず)のような機構を、上部実装体保持部81側に設ければよい。このように、フィルム回路基板実装体50の着脱は、下部実装体82側で行ってもよいし、上部実装体支持部81側で行ってもよい。
【0048】
図2(a)において、ホルダ支持軸120は、ホルダ移動機構121を介してホルダ103を支持するための軸である。ホルダ移動機構121は、ホルダ103を支持して上下方向に移動させるための手段である。ホルダ103は、フィルム回路基板実装体60の外周面の延在方向全体に絶縁性樹脂60を塗布する必要があるため、下部実装体保持部82の位置から、上部実装体保持部81の位置まで移動可能に構成される必要がある。よって、ホルダ支持軸120は、ホルダ103が下部実装体保持部82と上部実装体保持部81の間を移動できるように、上下の移動範囲をカバーできる長さを有して設けられている。また、ホルダ移動機構121は、端部でホルダ支持軸120を内嵌し、ホルダ支持軸101からホルダ103の存在方向に水平に延びてホルダ103を外側から支持している。ホルダ103の支持位置は、スキージ保持部101であってもよいし、絶縁性樹脂溜め102であってもよい。
【0049】
ホルダ移動機構121は、上下に必要な範囲を移動可能であれば、種々の機構を利用してよいが、例えば、ホルダ支持軸120の外周面とホルダ移動機構121のホルダ支持軸120を内嵌している内周面に互いに嵌合するねじ山を設け、ねじ機構によりホルダ移動機構121の上下動を行ってもよい。例えば、ホルダ支持軸120をモータ等で回転させることにより、ホルダ移動機構121を上下に移動させ、支持しているホルダ103を鉛直方向に移動させることができる。
【0050】
上部実装体保持部固定手段130は、上部実装体保持部81が重力により落下しないように固定する手段である。上部実装体保持部81は、下向きの針状部91を内嵌することにより、水平方向には固定されるが、鉛直方向は固定されていないフリーな状態である。よって、上部実装体保持部固定手段130は、上部実装体保持部81に押圧力を付与し、上部実装体保持部81を支持する。
【0051】
上部実装体保持部固定手段130は、上部実装体保持部81が落下しないように固定できれば、種々の手段を用いることができるが、例えば、エアーを用いて水平方向から押圧力を付与して上部実装体保持部81を固定支持してもよい。
【0052】
図2(a)において、上部実装体保持部固定手段130は、エアー供給管131とピン132とを備えている。ピン132は、エアー供給管131の先端に設けられ、エアーにより押し出されて上部実装体保持部81に押し付けられ、押圧力を付与する構成となっている。なお、上部実装体保持部81を、針状部91から取り外すときには、エアーの供給を停止させればよい。
【0053】
以上説明したように、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置は、種々の構成要素を備えるが、大別すると、フィルム回路基板実装体50を保持するための保持機能部と、フィルム回路基板実装体50に絶縁性樹脂を均一に塗布するための塗布機能部から構成される。
【0054】
保持機能部は、中心軸が同軸となるように上部実装体保持部81と下部実装体保持部82を有し、下部実装体保持部82は、下部実装体保持部支持軸101及び下部実装体保持部移動機構111からなる昇降機構により、昇降可能に構成されている。塗布部は、絶縁性樹脂60を溜める絶縁性樹脂溜め102とスキージ保持部101からなるホルダ103を有し、ホルダ103は、ホルダ支持軸120及びホルダ移動機構121からなる昇降機構により、昇降可能に構成されている。
【0055】
図3は、本発明の実施形態1に係るホルダ103の一例をより詳細に示した断面構成図である。図3において、実施形態1に係るホルダ103は、リング状スキージ100と、スキージ保持部101と、絶縁性樹脂溜め102とを備える。リング状スキージ100は、スキージ保持部101の内部に収容されて保持されている。スキージ保持部101は、リング状スキージ100を外側から覆うようにしてリング状スキージ100を保持している。スキージ保持部101の直上には、絶縁性樹脂溜め102が設けられ、絶縁性樹脂溜め102に収容された絶縁性樹脂60がフィルム回路基板実装体50の表面に供給されると、直下のリング状スキージ100ですぐ均すことが可能な構成になっている。
【0056】
リング状スキージ100は、環状(リング状)又は中央に開口を有する円形に形成されたスキージである。リング状スキージ100の中央開口は、フィルム回路基板実装体50及び実施体保持部80を内嵌可能に構成される。スキージを環状又は開口を有する円形に構成することにより、円筒形状又は円柱形状を有するフィルム回路基板実装体50の外周表面に対して均等にスキージを配置することができ、絶縁性樹脂60を均一な層状に塗布することができる。
【0057】
リング状スキージ100の形状は、例えば、断面円形状のものでもよいし、断面矩形状のもの(角スキージ)等も採用できる。なお、リング状スキージ100の材質は、用途に応じて種々の材料を利用してよいが、例えば、弾性を有するゴムを用いてもよく、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム又はこれらの混合材料から構成されてもよい。また、例えば、セラミック材料から構成してもよい。
【0058】
スキージ保持部101は、リング状スキージ100のフィルム回路基板実装体50又は実装体保持部80と接触する内周面以外の表面を総て外側から覆うように設けられ、リング状スキージ100を収容保持する。よって、スキージ保持部101も環状又は円筒状に構成される。
【0059】
スキージ保持部101は、リング状スキージ100とともにフィルム回路基板実装体50及び実装体保持部80を内嵌することができ、それらの軸方向に移動可能である。スキージ保持部101は、複数のリング状スキージ100を保持できるように構成されてもよい。複数のリング状スキージ100を保持することにより、絶縁性樹脂の塗布をより均一に行うことができる。
【0060】
絶縁性樹脂溜め102は、内側に絶縁性樹脂60を溜めて保持するとともに、保持した絶縁性樹脂60をフィルム回路基板実装体50の外周表面に供給するための手段である。絶縁性樹脂溜め102は、図3に示すように、フィルム回路基板実装体50を内嵌可能に中央に円形の開口を有するとともに、カップ状の側面を有し、内側に絶縁性樹脂60の液体又は流動体を収容可能に構成される。絶縁性樹脂溜め102の下端面は、スキージ保持部101の上端面と一致するように、一体的に設けられる。つまり、絶縁性樹脂溜め102は、スキージ保持部101の直上に配置される。かかる構成により、収容保持した絶縁性樹脂60に、内嵌するフィルム回路基板実装体50が浸漬して接触供給され、ホルダ103が一体的に上方に移動する際に、フィルム回路基板実装体50の表面に供給されて重力により下降する絶縁性樹脂60が、下方にあるリング状スキージ100の上昇移動により均される構成となっている。
【0061】
なお、図3においては、絶縁性樹脂溜め102の下端面と、スキージ保持部101の上端面が接合する形状となっているが、図2に示したように、スキージ保持部101の上面が絶縁性樹脂溜め102の底面を構成するような形状であってもよい。絶縁性樹脂溜め102及びスキージ保持部101は、絶縁性樹脂溜め102がスキージ保持部101の直上に一体的に設けられ、絶縁性樹脂溜め102からフィルム回路基板実装体50に供給された絶縁性樹脂60がリング状スキージ10で均すことができる構成となっていれば、種々の形状とすることができる。
【0062】
このように、ホルダ103は、リング状スキージ100、スキージ保持部101及び絶縁性樹脂溜め102が一体的に構成され、絶縁性樹脂60の供給と均しが同時に自動的に行われる構成となっている。
【0063】
次に、図4を用いて、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置を用いた本発明の実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法を説明する。
【0064】
図4は、本発明の実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の一例の一連の工程を示した図である。なお、今まで説明したのと同様の構成要素には、今までと同様の参照符号を付し、その説明を省略するものとする。また、図4においては、製造工程の説明に必要な構成要素のみを図示し、その他の構成要素は省略する。
【0065】
図4(a)は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法のフィルム回路基板実装体設置工程を示した図である。フィルム回路基板実装体設置工程においては、上部実装体保持部81と、ホルダ103が外囲された下部実装体保持部82との間に、フィルム回路基板実装体50を設置する。なお、フィルム回路基板実装体50の部材10の両端部には突起部11が設けられ、円筒状の実装体保持部80に嵌合して固定保持されるように構成されている。また、ホルダ103には、予めリング状スキージ100が固定されており、絶縁性樹脂溜め102には絶縁性樹脂60が溜まった状態で保持される。
【0066】
図4(b)は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の塗布工程を示した図である。塗布工程においては、ホルダ103をホルダ移動機構121により、上昇させ、フィルム回路基板実装体50の表面に絶縁性樹脂60を塗布する。
【0067】
図4(c)は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の塗布工程の終了段階を示した図である。塗布工程の終了段階においては、ホルダ103は最終的に上部実装体保持部81の位置まで上昇し、フィルム回路基板実装体50の全面に絶縁性樹脂60が塗布され、立体的回路基板70が作製される。重力を利用した絶縁性樹脂60の供給、リング状スキージ100による均しにより、所定の厚さを有する均一な絶縁樹脂層を形成することが可能となる。
【0068】
図4(d)は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の立体的回路基板取り外し工程を示した図である。立体的回路基板取り外し工程においては、下部実装体保持部82が下部実装体保持部移動機構111により下降し、部材10の突起部11と上部実装体保持部81及び下部実装体保持部82との嵌合が解除され、絶縁性樹脂104の塗布が終了した立体的回路基板70が取り外される。取り外された立体的回路基板70は、絶縁性樹脂60を乾燥固化させるため、乾燥炉に一定時間保持される。
【0069】
なお、図2において説明したように、立体的回路基板取り外し工程は、上部実装体保持部81を上昇させて立体的回路基板70を取り外すようにしてもよい。立体的回路基板70を適切に取り外すことができれば、上部実装体保持部81又は下部実装体保持部82のいずれを上下移動させてもよい。
【0070】
図4(e)は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の実装体保持部材交換工程の一例を示した図である。実装体保持部材交換工程においては、下部実装体保持部82が取り外されるとともに、上部実装体保持部81が下部実装体保持部82の位置に移動し、上部実装体保持部81の位置には、新たな上部実装体保持部83が設置される。
【0071】
図4(e)において、下部実装体保持部82が取り外され、ホルダ103に挿入された上部実装体保持部81が下降して下部実装体保持部82の位置に向かって移動している状態が示されている。1本目のフィルム回路基板実装体50に絶縁性樹脂60を塗布し、2本目のフィルム回路基板実装体51を設置する場合には、図4(a)と同じ状態となるように、ホルダ103を保持した上部実装体保持部81を、ホルダ103を保持したまま下部実装体保持部82の位置に移動させる必要がある。そのため、まず、ホルダ103を保持していない下部実装体保持部82を取り外し、下部針状部92を露出させる。また、ホルダ103を保持した上部実装体保持部81については、ホルダ移動機構121を用いて、ホルダ103を下降させる。ホルダ103のリング状スキージ100及びスキージ保持部101は、上部実装体保持部81を保持した状態となっているので、ホルダ103の下降により、保持された上部実装体保持部81もホルダ103とともに下降する。また、上部実装体保持部81の下降により、上部針状部91が露出したフリーの状態となるので、上部針状部91には新たな上部実装体保持部材83を設置する。その際、上部実装体保持部固定手段130を用いて上部実装保持部材83を固定設置するようにしてよい。
【0072】
図4(f)は、実施形態1に係る立体的基板の製造方法のフィルム回路基板実装体設置工程の一例を示した図である。図4(f)において、ホルダ103が、元々の下部実装体保持部82の位置に移動した実装体保持部81に設けられており、元々の上部実装態保持部81の位置には、新たな上部実装体保持部83が設けられている。よって、この状態で、新たなフィルム回路基板実装体51を設置することにより、図4(a)の状態となり、一連の工程を経て立体的回路基板70を製造することができる。
【0073】
図5は、製造された立体的回路基板70の一例の断面構成を示した図である。図5に示すように、円筒形状又は円柱形状の部材10の表面に接着剤層30により貼着実装されたフィルム回路基板20の表面上に、絶縁樹脂層61が形成されている。フィルム回路基板20の隙間40により生じた段差は、絶縁樹脂層61により充填され、立体的回路基板70の表面は凹凸の少ない平坦度の高い面となっている。
【0074】
ここで、図4(b)、(c)に示した塗布工程において、絶縁性樹脂60としては、円筒状のフィルム回路基板実装体50に付着させることから、その状態で、流れたり垂れ落ちたりしない程度の粘度が必要である。具体的には、室温状態での付着時に、100dPa・s程度の粘度が必要である。また、粘度が高過ぎると、絶縁性樹脂60が隙間40に入り込まなくなるので、粘度は最大で1500dPa・s程度までとすることが好ましい。
【0075】
なお、リング状スキージ100の硬度、開口の直径、リング状スキージ100を移動させる速度、塗布する絶縁性樹脂60の粘度は、それぞれの組合せで条件を決定する必要はあるが、従来の平板状スキージと円筒形の立体的回路基板との関係のように、立体的回路基板の幅方向にわたって、スキージの形状(直進性)を精緻に構築する必要はなくなる。例えば、ゴム等の伸縮性のある軟質材料で円形の開口形状のリング状スキージ100を形成すれば、フィルム回路基板実装体50の円筒形状に追随して、均一に絶縁性樹脂層61を形成することが可能となる。セラミックス等の硬質材料製のリング状スキージ100を用いる場合も、円形の開口形状をフィルム回路基板実装体50の断面形状に合わせて形成するだけでよいという利点がある。
【0076】
なお、リング状スキージ100を軟質材料で構成する場合、開口の直径は、フィルム回路基板実装体50の外周面の外径と実質的に同じとするか、好ましくは、わずかに小さくする。例えば、締め代が0.1mm〜1mm程度、好ましくは0.3mm以下、即ち、フィルム回路基板20の貼着前の円筒状の部材10の外径と同じ程度又はこれよりも小さくなるようにする。いずれにせよ、軟質材料製の場合、リング状スキージ100又はリング状スキージ100の先端が拡張ないしは変形することによって、適度な転写力により、絶縁性樹脂60の塗布が可能となる。
【0077】
一方、上述の通り、リング状スキージ100が硬質材料の場合には、回路配線22への影響を排除するため、回路配線22を含むフィルム回路基板実装体50の外周面の外径に絶縁性樹脂層61の厚さの2倍を追加した内径とする必要がある。ただし、後の工程で研磨を行う場合には、この絶縁性樹脂層61の厚みをある程度持たせることができるので、フィルム回路基板実装体50とリング状スキージ100の相対移動の精緻さにある程度の余裕を持たせることは可能となる。
【0078】
このような塗布方法により、本実施形態に係る立体的回路基板の製造装置及び製造方法では、絶縁性樹脂60の塗布完了後の立体的回路基板70の表面、すなわち、絶縁性樹脂層61の表面における凹凸は、最大で±5μm以下となり、最大高さRyは10μm以下であるが、好ましくは、最大高さRyを1μm以下とする。これらは、用いるリング状スキージ100の材質や、ホルダ移動機構121の直進性の精度等により異なってくるものであり、調整可能な範囲内にある。
【0079】
また、本実施形態に係る立体的回路基板70の製造包装及び製造方法では、リング状スキージ10の移動方向が、立体的回路基板70の周方向ではなく軸方向であることから、移動がエンドレスになることはなく、少なくとも立体的回路基板70の中央部においてスキージ痕が問題となることはない。
【0080】
更に、本実施形態に係る立体的基板の製造装置及び製造方法では、リング状スキージ100を用いて、フィルム回路基板実装体60の軸方向の一端から他端まで移動させることで、図5に示すように、付着した絶縁性樹脂60の一部をフィルム回路基板20の端部間に生じている隙間40の中に押し込むと共に、立体的回路基板70の全周に亘ってほぼ均一な厚さの絶縁性樹脂層61を形成することができる。
【0081】
絶縁性樹脂層61を形成した後、絶縁性樹脂60の種類に応じた条件により、この絶縁性樹脂層61を硬化させることで、絶縁性樹脂層61が形成された最終的な立体的回路基板70が完成する。
【0082】
図6は、実施形態1に係る立体的基板の製造方法における研磨工程の一例を示した図である。研磨工程においては、曲面表面に絶縁樹脂層61が形成された立体的回路基板70の表面を研磨し、立体的回路基板70の表面の平坦度を向上させる。図6において、研磨工程を行うための円筒研削盤140が示されている。円筒研削盤140は、テーブル141と砥石142、143とを備える。研磨工程は、必須ではなく、必要に応じて設けられてよい。
【0083】
しかしながら、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法では、絶縁樹脂層形成後に、図6に示すような円筒研削盤140を用いて、立体的回路基板70の全周に形成された絶縁性樹脂層61を研磨することにより、表面の凹凸を減少させると共に、その真円度も向上させることが好ましい。このような研磨は、公知のセンタレス円筒研削盤を用いて、容易に加工することができる。これにより、塗布工程のみでは、立体的回路基板70の凹凸を、最大で±0.5μm、すなわち最大高さRyを1μm以下とできない場合でも、研磨工程の実行により、最大高さRyを1μm以下とする表面粗さまで加工することが可能となる。
【0084】
このように、実施形態1に係る立体的回路基板の製造装置及び製造方法によれば、回路配線22にダメージを与えることなく、貼着されたフィルム回路基板20の端部間の隙間40に起因する、つなぎ目の段差部分(凹部)の存在にも拘わらず、凹部への絶縁性樹脂60の充填により、表面に全周にわたって所定厚さでかつ均一な絶縁性樹脂層61を有する立体的回路基板70が生産性良く作製することができる。
【0085】
[実施例1]
以下、実施形態1に係る立体的回路基板の製造装置及び製造方法を実施した実施例1について説明する。なお、理解の容易のため、今まで説明した構成要素に対応する構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0086】
厚さ25μmのポリイミドフィルム21の片面に、厚さ8μmの銅層を所定のパターンとした回路配線22が形成されたフィルム回路基板20と、円筒状の部材10として、直径16mm、長さ300mmのアルミパイプ10を、それぞれ複数準備した。
【0087】
次に、アルミパイプ10の表面に接着剤層30を形成するため、溶液タイプの変性エポキシ系接着剤(東亞合成株式会社製、アロンマイティAS−60)をトルエンで2倍希釈した溶液にディップコートを行い、熱風乾燥炉100℃×2分で乾燥した。
【0088】
その上から、約50mm×280mmの大きさに切断したフィルム回路基板20を、ポリイミドフィルム21が接着剤層30と接合するように貼着して、表面に絶縁性樹脂層61が形成されていないフィルム回路基板実装体50を得た。
【0089】
得られた複数のフィルム回路基板実装体50において、フィルム回路基板20の貼着時に生じた、その端部間の周方向の隙間40の幅は、0.055mm〜0.480mmの範囲であった。
【0090】
次に、得られたそれぞれのフィルム回路基板実装体50の表面の軸方向の一端部に、手動によりヘラを用いて、全周にわたってエポキシ樹脂60(コニシ株式会社製、Eセット)を付着させた。エポキシ樹脂60の付着後の立体的回路基板70を固定治具(寿貿易株式会社・株式会社メカニクス製、ミニ卓上旋盤FL−350E)に固定した。
【0091】
リング状スキージ100として、ニトリルゴムとシリコンゴム製で、内径15.8mmのリング状の円形スキージを用意した。このリング状スキージ100をホルダに装着した。
【0092】
ホルダ103を下部実装体保持部82から、移動速度を10mm/secとして、上部実装体保持部81方向へ上昇させ、リング状スキージ100を基板の軸方向に一端から他端まで移動させることで、塗布したエポキシ樹脂60をフィルム回路基板20に生じているつなぎ目に押し込むと共に、フィルム回路基板実装体50の全周にほぼ均一な厚さのエポキシ樹脂層61を形成した。なお、エポキシ樹脂層61の厚さは、18.8μmであった。
【0093】
なお、使用したエポキシ樹脂60は、2液混合タイプのものであり、混合後の放置時間によって粘度が変化するため、放置時間を20分と40分の条件とした。それぞれの放置時間後の粘度は、20分で約50Pa・s、40分で約62Pa・sであった。
【0094】
その後、150℃で60分間加熱して、エポキシ樹脂60を硬化させた。
【0095】
このようにして得られた立体的回路基板70の表面の凹凸は、最大で±2.7μmであり、5.4μmの段差が生じていた(最大高さRy=5.4μm)。
【0096】
更に、センタレス円筒研削盤140(ミクロン精密製)を用いて、立体的回路基板70の全周に形成されたエポキシ樹脂層61を研磨して、その厚さを10.2μmとした。なお、砥石142、143には粒度1500番のものを使用した。その結果、表面の凹凸は、最大で±0.25μmとなり、0.5μmの段差にまで減少させることができた(最大高さRy=0.5μm)。
【0097】
[実施形態2]
図7は、本発明の実施形態2に係る立体的回路基板製造装置の一例を示した構成図である。図7(a)は、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置の概略正面図であり、図7(b)は、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置の概略側面図である。なお、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置において、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置と同様の構成要素については同一の参照符号を付し、その説明を簡略化又は省略する。
【0098】
図7(a)、(b)において、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置は、実装体保持部80と、針状部90と、ホルダ103と、下部実装体保持部支持軸110と、下部実装体保持部移動機構111と、ホルダ支持軸120と、ホルダ移動機構122と、上部実装体保持部固定手段130とを有し、ホルダ103が、スキージ保持部101と、絶縁性樹脂溜め102とを有する点で、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置と共通する。また、実装体保持部80が上部実装体保持部81及び下部実装体保持部82を有し、針状部90が上部針状部91及び下部針状部92を有し、ホルダ103の絶縁性樹脂溜め102の中に絶縁性樹脂60が収容されている点においても、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置と共通する。
【0099】
実施形態2に係る立体的回路基板製造装置は、リング状スキージ100(図7においては図示せず)を保持しているスキージ保持部101よりも下方に、第2のリング状スキージ105と、第2のスキージ保持部106とを有する点で、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置と異なっている。また、ホルダ移動機構122が、ホルダ103と第2のスキージ保持部106とを連結する形状を有しており、ホルダ103と第2のスキージ保持部106とを一体的に移動させる構成となっている点で、実施形態1に係る立体的回路基板製造装置と異なっている。
【0100】
なお、以下の説明において、リング状スキージ100及びスキージ保持部101を、第2のリング状スキージ105及び第2のスキージ保持部106と明確に区別するため、第1のリング状スキージ100及び第1のスキージ保持部101と呼ぶこととする。
【0101】
第2のリング状スキージ105は、フィルム回路基板実装体50(図7においては図示せず)の表面に第1のリング状スキージ100により塗布された絶縁性樹脂60を平滑に均すための手段である。つまり、実施形態1及び実施例1において説明したように、第1のリング状スキージ100は、フィルム回路基板実装体50の表面に、絶縁性樹脂60を円形スキージでしごくようにして塗布するが、気泡や異物があると、塗布面に例えば縦状の凹凸が発生することがある。また、何度も塗布を繰り返していると、フィルム回路基板実装体50の表面状態によっては、絶縁性樹脂60が十分に薄く均一に塗布されずに、やや厚くフィルム回路基板実装体50の表面に溜まった状態になる場合がある。かかる場合であっても、第2のリング状スキージ105を、第1のリング状スキージ100より下方に所定間隔を有して設けることにより、フィルム回路基板実装体50の塗布面に溜まった絶縁性樹脂60を再度薄く延ばし、表面を平滑に均すことができる。
【0102】
また、第2のリング状スキージ105は、第1のリング状スキージ100よりも所定間隔下方に設置されるが、その間隔は、5mm以上50mm以下であることが好ましく、5mm以上30mm以下であることがより好ましい。これは、第1のリング状スキージ100と第2のリング状スキージとの距離が狭いと、連続で塗布を続けたときに、徐々に第2のリング状スキージ105に絶縁性樹脂60が溜まり、第1のリング状スキージ100と接したときに気泡が巻き込まれてしまい、平滑に均す能力が低下するためである。また、第1のリング状スキージ100と第2のリング状スキージとの距離が大きすぎると、上部実装体保持部81の長さによっては、第1のリング状スキージ100を最上部まで上昇させても、第2のリング状スキージ105がフィルム回路基板実装体50の上端まで到達せず、平滑化を行わない箇所が発生するおそれがある。よって、第1のリング状スキージ100と第2のリング状スキージとの間隔は、5〜50mmの範囲内であることが好ましく、5〜30mmの範囲内であることがより好ましい。
【0103】
なお、第2のリング状スキージ105は、第1のリング状スキージ100で利用可能なものを総て利用することができ、第1のリング状スキージ100と同一のものを用いることができる。第1のリング状スキージ100の材質、形状、構造等は、そのまま第2のリング状スキージ105に適用することができ、その詳細については実施形態1において述べているので、その説明を省略する。
【0104】
また、ホルダ移動機構122は、ホルダ103と第2のスキージ保持部106とを連結するように構成されているので、ホルダ103が上方に移動すると、これに伴って第2のスキージ保持部106も上方に移動する。よって、第1のリング状スキージ100と第2のリング状スキージ105との間隔を一定に保ったままで絶縁性樹脂60の塗布と平滑化を行うことができ、常に一定条件下で塗布及び平滑化が行われるので、均一な絶縁性樹脂60の塗布を行うことができる。
【0105】
このように、第2のリング状スキージ105は、第1のリング状スキージ100による絶縁性樹脂60の塗布が十分に平滑でない場合であっても、塗布後に絶縁性樹脂60を均して平滑にすることができる。
【0106】
図8は、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置の第1及び第2のリング状スキージの一例を拡大して示した図である。図8において、第1のリング状スキージ101を外側から覆うように保持した第1のスキージ保持部101と、絶縁性樹脂溜め102とを有するホルダ103の下方に、第2のリング状スキージ105及び第2のスキージ保持部106が設けられた断面図が示されている。第2のスキージ保持部106の上面は、フィルム回路基板実装体50及び実装体保持部80を内嵌したときのフィルム回路基板実装体50及び実装体保持部80の周面に沿った部分に溝107を有し、溝107上にはめ込むようにして第2のリング状スキージ105を保持する。つまり、第2のリング状スキージ105の上方は開放され、第2のスキージ保持部106に下方から支持された状態で保持される。かかる上面を開放した構成とすることにより、第2のリング状スキージ105に第2のスキージ保持部106が余分な力を加えることなく、第2のリング状スキージ105が有する平滑化の能力を十分に発揮させることができる。なお、第2のリング状スキージ105の上端は、図7に示したように、第2のスキージ保持部106の上面より高くてもよいし、図8に示したように、第2のスキージ保持部106の上面と同じ高さであってもよいし、図7と逆に第2のスキージ保持部106の上面より低く溝107内に収まる高さであってもよい。
【0107】
図9は、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置を用いた本発明の実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法の一例を示した図である。なお、図9においても、実施形態1及び図7、8で説明した構成要素と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
図9(a)は、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法のフィルム回路基板実装体設置工程を示した図である。フィルム回路基板実装体設置工程においては、上部実装体保持部81と、ホルダ103が外囲された下部実装体保持部82との間に、フィルム回路基板実装体50が設置されるが、ホルダ103内には第1のリング状スキージ100が保持されている。なお、図9においては、理解の容易のため、第1のスキージ保持部101を図示せず、模式的に第1のリング状スキージ100がホルダ103に支持された状態で各工程を示すものとする。
【0109】
ホルダ103及び第1のリング状スキージ100よりも下方には、所定間隔を有して第2のリング状スキージ105が第2のスキージ保持部106に保持されて配置される。
【0110】
また、その他の点については、実施形態1の図4(a)と同様であるので、その説明を省略する。
【0111】
図9(b)は、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法の塗布工程を示した図である。塗布工程においては、ホルダ103を上昇させ、フィルム回路基板実装体50の表面に絶縁性樹脂60を塗布するが、ホルダ103及び第1のリング状スキージ100の上昇に伴い、第2のリング状スキージ105及び第2のスキージ保持部106も所定間隔を保ったまま上昇し、塗布面を均して平滑化する。なお、図9(b)には図示されていないが、ホルダ103と第2のスキージ保持部106は、ホルダ移動機構122により連結されているので、ホルダ103の移動に伴い、第2のスキージ保持部106も移動するように構成されている。
【0112】
図9(c)は、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法の塗布工程の終了段階を示した図である。塗布工程の終了段階においては、第1のリング状スキージ100及び第2のリング状スキージ105は、最終的に上部実装体保持部81の位置まで上昇し、フィルム回路基板実装体50の全面に絶縁性樹脂60を平滑化した状態で塗布し、立体的回路基板70が作製される。第2のリング状スキージ100による均しにより、所定の厚さを有する均一な絶縁樹脂層61を形成することが可能となる。
【0113】
図9(d)は、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法の立体的回路基板取り外し工程を示した図である。立体的回路基板取り外し工程においては、下部実装体保持部82が下部実装体保持部移動機構111により下降し、部材10の突起部11と上部実装体保持部81及び下部実装体保持部82との嵌合が解除され、絶縁性樹脂104の塗布が終了した立体的回路基板70が取り外される。かかる工程は、上部実装体保持部81に第1及び第2のリング状スキージ100、105の双方が保持されている点以外は、実施形態1に係る立体的回路基板の製造方法の図4(d)と全く同様であるので、その説明を省略する。
【0114】
図9(e)は、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法の実装体保持部材交換工程の一例を示した図である。実装体保持部材交換工程においては、下部実装体保持部82が取り外されるとともに、上部実装体保持部81が下部実装体保持部82の位置に移動し、上部実装体保持部81の位置には、新たな上部実装体保持部83が設置される。移動中の上部実装体保持部81には、第1のリング状スキージ100及びホルダ103とともに、第2のリング状スキージ105及び第2のスキージ保持部106も設置されており、ともに下部実装体保持部82の位置に移動する。その他の点は、実施形態1の図4(e)に示す工程と同様であるので、その説明を省略する。
【0115】
図9(f)は、実施形態2に係る立体的基板の製造方法のフィルム回路基板実装体設置工程の一例を示した図である。図9(f)において、第1のリング状スキージ100、ホルダ103、第2のリング状スキージ105及び第2のスキージ保持部106が、元々の下部実装体保持部82の位置に移動した実装体保持部81に設けられており、元々の上部実装態保持部81の位置には、新たな上部実装体保持部83が設けられている。この状態で、新たなフィルム回路基板実装体51を設置することにより、図9(a)の状態となり、一連の工程を経て立体的回路基板70を製造することができる。
【0116】
このように、実施形態2に係る立体的回路基板の製造方法においては、第2のリング状スキージ105を用いて、立体的回路基板実装体50の絶縁性樹脂60の塗布後の表面を均し、平滑化を行うことができるが、その駆動は実施形態1と同様の駆動でよく、制御内容を複雑化することなく平滑な塗布を実現することができる。
【0117】
なお、製造された立体的回路基板70の断面構成や、研磨工程については、実施形態1において説明した図5、図6と同様であるので、その説明を省略する。
【0118】
〔実施例2〕
次に、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置及び製造方法を実施した実施例について説明する。なお、理解の容易のため、今まで説明した構成要素に対応する構成要素については、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0119】
実施例2に係る立体的回路基板製造装置及び製造方法は、立体的回路基板実装体50の準備については、実施例1に係る立体的回路基板製造装置及び製造方法と同様の材料、製造方法を用いて、実施例1と同様の立体的回路基板実装体50を準備した。よって、その詳細な説明は省略する。
【0120】
次に、得られたそれぞれの立体的回路基板の表面の軸方向一端部に、手動によりヘラを用いて、全周にわたってエポキシ樹脂(コニシ株式会社製、Eセット)を付着させた。エポキシ樹脂の付着後の立体的回路基板を固定治具として(寿貿易株式会社・株式会社メカニクス製、ミニ卓上旋盤FL−350E)に固定した。なお、この段階も、実施例1と同様である。
【0121】
次に、第1及び第2のリング状スキージ100、105として、ニトリルゴムとシリコーンゴム製で、内径15.8mmのリング状の円形スキージを用意した。この円形スキージをホルダ103及び第2のスキージ保持部106に装着した。第2のリング状スキージ105は、第1のリング状スキージ100の下方に5mmの距離を置いて保持した。
【0122】
次いで、ホルダ103を下部実装体保持部81から、移動速度を10mm/secとして、上部実装体保持部82に向かって上昇させ、第1及び第2のリング状スキージ100、105を立体的回路基板実装体50の軸方向に一端から他端まで移動させることで、塗布したエポキシ樹脂60をフィルム回路基板に生じているつなぎ目に押し込むと共に、立体的回路基板の全周にほぼ均一な厚さのエポキシ樹脂層61を形成した。第2のリング状スキージ105により、エポキシ樹脂層61は表面を平滑化することができた。なお、エポキシ樹脂層の厚さは、12.4μmであった。
【0123】
なお、使用したエポキシ樹脂60は、2液混合タイプのものであり、混合後の放置時間によって粘度が変化するため、放置時間を20分と40分の条件とした。それぞれの放置時間後の粘度は、20分で約50Pa・s、40分で約62Pa・sであった。
【0124】
その後、150℃で60分間加熱して、エポキシ樹脂層61を硬化させた。
【0125】
このようにして得られた立体的回路基板の表面の凹凸は、最大で±1.8μmであり、2.3μmの段差が生じていた(最大高さRy=2.3μm)。
【0126】
これは、実施例1で得られた表面凹凸の最大が2.7μm、5.4μmの段差(最大高さRy=5.4μm)よりも小さい凹凸、段差であり、第2のリング状スキージ105を設けたことにより効果を確認することができた。
【0127】
〔実施形態3〕
図10は、本発明の実施形態3に係る立体的回路基板製造装置の一例を示した図である。図10において、実施形態3に係る立体的回路基板製造装置の第1のリング状スキージ100及び第2のリング状スキージ105の箇所の拡大図が示されている。その他の構成要素については、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置と同様であるので、図示及びその説明を省略する。また、図10においても、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置と同様の構成要素については、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0128】
実施形態3に係る立体的回路基板製造装置は、第1のリング状スキージ100及びホルダ103の構成と、第2のリング状スキージ105の構成は実施形態2に係る立体的回路基板製造装置と同様であるが、第2のスキージ保持部108の上面が、溝107より外側においてテーパー形状を有している点で、実施形態2に係る立体的回路基板製造装置と異なっている。
【0129】
このように、第2のスキージ保持部108の上面が、庇のように外側に傾斜したテーパー形状を有することにより、第2のスキージ保持部108の上面に絶縁性樹脂60が溜まることを防ぐことができる。実施形態2で説明したように、第2のリング状スキージ105は、第1のリング状スキージ100による塗布で立体的回路基板実装体50の表面に溜まってしまった絶縁性樹脂60を均して平滑化する役割を果たすが、平滑化の際の余分な絶縁性樹脂60は、第2のスキージ保持部108の上面に溜まることになる。かかる絶縁性樹脂60をスムーズに除去するために、実施形態3に係る立体的回路基板製造装置の第2のスキージ保持部108は、傾斜した上面を有している。これにより、第2のスキージ保持部108の上面に溜まった絶縁性樹脂60を下に落とすことができ、第2のリング状スキージ105による平滑化を確実に安定的に行うことができる。
【0130】
なお、図10においては、第2のスキージ保持部108の上面は、直線的なテーパー形状を有しているが、中心から外側に向かって面の高さが下がってゆくような傾斜面を有する限り、曲面的なテーパー形状であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0131】
また、第2のスキージ保持部108の上面は、必ずしも溝107より外側の総ての領域がテーパー形状となっていなくてもよい。例えば、第2のスキージ保持部108の上面の中心寄りの部分のみがテーパー形状を有する場合であっても、一定の効果は得られるので、第2のスキージ保持部108の上面が、テーパー形状を含んでいればよい。
【0132】
なお、第2のスキージ保持部108の溝107については、実施形態2に係る立体回路基板製造装置と同様であるので、その説明を省略する。
【0133】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、円筒形状又は円柱形状を有する部材の表面に回路基板を実装する部品及び装置全般に利用することができ、例えば、現像用ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等の印刷用のローラに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0135】
10 部材
20 フィルム回路基板
21 絶縁性フィルム
22 回路配線
30 接着剤層
40 隙間
50 フィルム回路基板実装体
60 絶縁性樹脂
61 絶縁性樹脂層
70 立体的回路基板
80 実装体保持部
81 上部実装体保持部
82 下部実装体保持部
90 針状部
91 上部針状部
92 下部針状部
100、105 リング状スキージ
101、106、108 スキージ保持部
107 溝
102 絶縁性樹脂溜め
103 ホルダ
110 下部実装体保持部支持軸
111 下部実装体保持部移動機構
120 ホルダ支持軸
121 ホルダ移動機構
130 上部実装体保持部固定手段
131 エアー供給管
132 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状又は円柱形状の部材の曲面上にフィルム回路基板を実装したフィルム回路基板実装体の表面に、絶縁性樹脂を塗布して絶縁樹脂層を形成する立体的回路基板の製造装置であって、
前記フィルム回路基板と同径の円筒形状を有し、前記フィルム回路基板実装体の両端を上下から挟むように固定し、前記フィルム回路基板実装体を上下に立てた状態で保持する実装体保持部と、
該実装体保持部及び前記フィルム回路基板実装体を内嵌可能なリング状スキージと、
該リング状スキージを、前記フィルム回路基板実装体の軸方向に移動可能に外側から覆うように保持するスキージ保持部と、
該スキージ保持部の直上に設けられた絶縁性樹脂溜めと、を有し、
該絶縁性樹脂溜めに絶縁性樹脂を溜めた状態で、前記フィルム回路基板実装体の表面に前記絶縁性樹脂を供給しながら前記スキージ保持部を前記フィルム回路基板実装体の下方から上方に移動させることにより、前記リング状スキージにより前記フィルム回路基板実装体の表面に前記絶縁性樹脂を塗布することを特徴とする立体的回路基板の製造装置。
【請求項2】
前記絶縁性樹脂溜めは、前記スキージ保持部と一体的に構成され、
前記スキージ保持部は、前記フィルム回路基板実装体を下から保持する下部実装体保持部から、前記フィルム回路基板実装体を上から保持する上部実装体保持部まで含めて移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項3】
前記下部実装体保持部は、前記フィルム回路基板実装体を保持していないときに取り外し可能であることを特徴とする請求項2に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項4】
前記上部実装体保持部は、前記フィルム回路基板実装体を保持していないときには、前記下部実装体保持部の位置に移動可能であることを特徴とする請求項3に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項5】
前記上部実装体保持部及び前記下部実装体保持部は、固定された針状部に着脱可能に嵌合した筒状部材から構成されることを特徴とする請求項4に記載の立体回路基板実装体の製造装置。
【請求項6】
前記下部実装体保持部は、取り外し後は、前記上部実装体保持部として装着利用可能であることを特徴とする請求項5に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項7】
前記部材は、軸方向に突出する突起部を両端部に有し、
該突起部は、前記筒状部材に挿入されて前記上部実装体保持部及び前記下部実装体保持部に固定されることを特徴とする請求項6に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項8】
前記スキージ保持部は、複数の前記リング状スキージが保持可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項9】
前記リング状スキージは、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム又はこれらの混合材料からなり、内径が、前記フィルム回路基板実装体の外径よりも0〜1mm小さいことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項10】
前記リング状スキージは、セラミック材料からなり、内径が、前記フィルム回路基板実装体の外径よりも前記絶縁樹脂層の厚さ分大きいことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項11】
前記リング状スキージより下方に所定間隔を有して設けられ、前記実装体保持部及び前記フィルム回路基板実装体を内嵌可能な第2のリング状スキージと、
該第2のリング状スキージを、前記フィルム回路基板実装体の軸方向に移動可能に保持する第2のスキージ保持部と、を更に有することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の立体回路基板の製造装置。
【請求項12】
前記第2のスキージ保持部は、上面に前記フィルム回路基板実装体の周面に沿ったリング状の溝を有し、
該溝上に前記第2のリング状スキージを保持することを特徴とする請求項11に記載の立体回路基板の製造装置。
【請求項13】
前記第2のスキージ保持部の上面は、前記溝よりも外側はテーパー形状を含むことを特徴とする請求項12に記載の立体回路基板の製造装置。
【請求項14】
前記第2のスキージ保持部は、前記絶縁性樹脂溜め又は前記スキージ保持部と連結されていることを特徴とする請求項11乃至13のいずれか一項に記載の立体回路基板の製造装置。
【請求項15】
前記第2のリング状スキージは、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム又はこれらの混合材料からなり、内径が、前記フィルム回路基板実装体の外径よりも0〜1mm小さいことを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項16】
前記第2のリング状スキージは、セラミック材料からなり、内径が、前記フィルム回路基板実装体の外径よりも前記絶縁樹脂層の厚さ分大きいことを特徴とする請求項11乃至14のいずれか一項に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項17】
前記所定間隔は、5mm以上50mm以下の間隔であることを特徴とする請求項11乃至16のいずれか一項に記載の立体的回路基板の製造装置。
【請求項18】
円筒形状又は円柱形状の部材の曲面上にフィルム回路基板を実装したフィルム回路基板実装体の表面に、絶縁性樹脂を塗布して絶縁樹脂層を形成する立体的回路基板の製造方法であって、
前記フィルム回路基板と同径の円筒形状を有する上部実装体保持部及び下部実装体保持部で、前記フィルム回路基板実装体の両端を上下から挟むように固定し、前記フィルム回路基板実装体を上下に立てた状態で保持する工程と、
前記下部実装体保持部を内嵌したリング状スキージの上方に前記絶縁性樹脂を溜めた状態で、前記絶縁性樹脂を前記フィルム回路基板の表面に供給しながら前記リング状スキージを上方に移動させ、前記フィルム回路基板の表面に前記絶縁性樹脂を層状に塗布する工程と、を有することを特徴とする立体的回路基板の製造方法。
【請求項19】
前記リング状スキージは、外側からスキージ保持部に覆われて支持され、
該スキージ保持部の直上には、前記絶縁性樹脂を溜める絶縁性樹脂溜めが一体的に構成され、該スキージ保持部の移動により前記リング状スキージを移動させることを特徴とする請求項18に記載の立体的回路基板の製造方法。
【請求項20】
前記リング状スキージより所定間隔下方に、前記実装体保持部及び前記フィルム回路基板実装体を内嵌可能な第2のリング状スキージが設けられ、
該第2のリング状スキージは、前記リング状スキージの上方への移動に伴って移動し、前記フィルム回路基板の表面に層状に塗布された前記絶縁性樹脂を均すことを特徴とする請求項18又は19に記載の立体的回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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