説明

立体表示装置および立体表示装置の作製方法

【課題】立体表示装置においてカラーフィルタの位置ずれを抑制する。
【解決手段】本発明による立体表示装置(100)は、 物体を立体的に表示する立体表示装置であって、白色光を出射する白色光源(10)と、カラーフィルタ(20)とを備える。カラーフィルタ(20)は、それぞれが白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、白色光源(10)およびカラーフィルタ(20)は、白色光源(10)から出射されてカラーフィルタ(20)の着色部を透過する光線が物体から散乱する光線に対応するように構成され、立体表示装置(100)は主面(42a、42b)を有する透過部材(40)をさらに備え、カラーフィルタ(20)は透過部材(40)の主面(42a)に印刷されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体表示装置および立体表示装置の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立体表示が注目されている。従来からよく知られた立体表示の手法としてステレオスコープ方式がある。ステレオスコープ方式では、立体像ではなく右眼用、左眼用の平面像を右眼、左眼でそれぞれ見えるように表示を行う。しかしながら、ステレオスコープ方式では、見る位置に応じて表示が変化しないため、自然な立体表示を行うことができない。
【0003】
立体表示の別の手法として、光線の再現(再生)を図る方式が知られている。この方式では、光源から出射された白色光を用いて、物体から散乱する光線を再現することによってカラーの立体表示を行う(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、白色光源から出射されてピンホールアレイ板を透過した光線を再生(再現)することによって立体表示を行う立体表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−239785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の立体表示装置では、ピンホールアレイ板および再生用フィルム(カラーフィルタ)によって規定された光線が物体から散乱する光線を再現しており、カラーフィルタを適切に配置することが必要である。しかしながら、特許文献1の立体表示装置のように、カラーフィルタが単体で配置されていると、カラーフィルタの形状の変化等に起因してカラーフィルタの位置がずれることがあり、適切な立体表示を行うことができなくなることがある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、カラーフィルタの位置ずれを抑制した立体表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による立体表示装置は、物体を立体的に表示する立体表示装置であって、白色光を出射する白色光源と、カラーフィルタとを備え、前記カラーフィルタは、それぞれが前記白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、前記白色光源および前記カラーフィルタは、前記白色光源から出射されて前記カラーフィルタの前記着色部を透過する光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成され、前記立体表示装置は第1主面および第2主面を有する透過部材をさらに備え、前記カラーフィルタは、前記透過部材の前記第1主面に印刷されている。
【0008】
ある実施形態において、前記立体表示装置は、光学部材をさらに備え、前記光学部材は、それぞれが前記カラーフィルタの前記着色部とともに前記光線を規定する複数の単位部を含み、前記光学部材および前記カラーフィルタは、前記単位部および前記着色部によって規定される光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成されている。
【0009】
ある実施形態において、前記光学部材は、前記白色光または前記着色光を選択的に透過するピンホールマスクを含む。
【0010】
ある実施形態において、前記ピンホールマスクは前記透過部材の前記第2主面に印刷されている。
【0011】
ある実施形態において、前記光学部材は、前記着色部に応じて異なる方向に屈折するように前記光線を規定するレンズアレイを含む。
【0012】
ある実施形態において、前記光学部材は、前記透過部材に対して観察者側に設けられている。
【0013】
ある実施形態において、前記カラーフィルタは、前記透過部材に対して観察者側に設けられている。
【0014】
ある実施形態において、前記白色光源は、複数の点光源の配列された点光源アレイを有する。
【0015】
ある実施形態において、前記白色光源は面光源を有する。
【0016】
ある実施形態において、前記カラーフィルタの前記着色部は静止画像に対応している。
【0017】
本発明による立体表示装置の作製方法は、物体を立体的に表示する立体表示装置の作製方法であって、白色光を出射する白色光源を用意する工程と、前記白色光源に対してカラーフィルタを配置する工程とを包含し、前記配置する工程において、前記カラーフィルタは、それぞれが前記白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、前記白色光源および前記カラーフィルタは、前記白色光源から出射されて前記カラーフィルタの前記着色部を透過する光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成され、前記立体表示装置の作製方法は、第1主面および第2主面を有する透過部材を用意する工程と、前記透過部材の前記第1主面に前記カラーフィルタを印刷する工程とをさらに包含する。
【0018】
本発明による光線規定部材は物体を立体的に表示する立体表示装置に用いられる光線規部材であって、カラーフィルタと、ピンホールマスクとを備え、前記カラーフィルタは、それぞれが白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、前記ピンホールマスクには、それぞれが前記白色光または前記着色光を透過する複数のピンホールが設けられており、前記ピンホールマスクおよび前記カラーフィルタは、前記ピンホールおよび前記着色部によって規定される光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成されており、前記光線規定部材は、第1主面および第2主面を有する透過部材をさらに備え、前記カラーフィルタは前記透過部材の前記第1主面に印刷されており、前記ピンホールマスクは前記透過部材の前記第2主面に印刷されている。
【0019】
ある実施形態において、前記カラーフィルタの前記着色部は静止画像に対応している。
【0020】
本発明による光線規定部材の作製方法は、物体を立体的に表示する立体表示装置に用いられる光線規定部材の作製方法であって、第1主面および第2主面を有する透過部材を用意する工程と、前記透過部材の前記第1主面に、カラーフィルタを印刷する工程と、前記透過部材の前記第2主面に、ピンホールマスクを印刷する工程とを包含する。
【0021】
本発明による立体表示装置は、物体を立体的に表示する立体表示装置であって、白色光を出射する白色光源と、カラーフィルタとを備え、前記カラーフィルタは、それぞれが前記白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、前記白色光源および前記カラーフィルタは、前記白色光源から出射されて前記カラーフィルタの前記着色部を透過する光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成されており、前記立体表示装置は第1主面および第2主面を有する透過部材をさらに備え、前記カラーフィルタは前記透過部材の前記第1主面に脱着可能に設けられている。
【0022】
ある実施形態において、前記立体表示装置は、光学部材をさらに備え、前記光学部材は、それぞれが前記カラーフィルタの前記着色部とともに前記光線を規定する複数の単位部を含み、前記光学部材および前記カラーフィルタは、前記単位部および前記着色部によって規定される光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成されている。
【0023】
ある実施形態において、前記光学部材は、前記白色光または前記着色光を選択的に透過するピンホールマスクを含む。
【0024】
ある実施形態において、前記ピンホールマスクは前記透過部材の前記第2主面に脱着可能に設けられている。
【0025】
ある実施形態において、前記光学部材は、前記着色部に応じて異なる方向に屈折するように前記光線を規定するレンズアレイを含む。
【0026】
ある実施形態において、前記光学部材は、前記透過部材に対して観察者側に設けられている。
【0027】
ある実施形態において、前記カラーフィルタは、前記透過部材に対して観察者側に設けられている。
【0028】
ある実施形態において、前記白色光源は、複数の点光源の配列された点光源アレイを有する。
【0029】
ある実施形態において、前記白色光源は面光源を有する。
【0030】
ある実施形態において、前記カラーフィルタの前記着色部は静止画像に対応している。
【0031】
本発明による立体表示装置の作製方法は、物体を立体的に表示する立体表示装置の作製方法であって、白色光を出射する白色光源を用意する工程と、前記白色光源に対してカラーフィルタを配置する工程とを包含し、前記配置する工程において、前記カラーフィルタは、それぞれが前記白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、前記白色光源および前記カラーフィルタは、前記白色光源から出射されて前記カラーフィルタの前記着色部を透過する光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成されており、前記立体表示装置の作製方法は、第1主面および第2主面を有する透過部材を用意する工程と、前記透過部材の前記第1主面に、前記カラーフィルタを脱着可能なように貼り付ける工程とをさらに包含する。
【0032】
本発明による立体表示装置は、物体を立体的に表示する立体表示装置であって、白色光を出射する白色光源と、カラーフィルタとを備え、前記カラーフィルタは、それぞれが前記白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、前記白色光源および前記カラーフィルタは、前記白色光源から出射されて前記カラーフィルタの前記着色部を透過する光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成されており、前記立体表示装置は第1主面および第2主面を有する透過部材をさらに備え、前記カラーフィルタは前記透過部材の前記第1主面に設けられており、前記白色光源は、それぞれが白色光を出射する複数の発光ダイオードを有している。
【0033】
ある実施形態において、前記カラーフィルタの前記着色部は静止画像に対応している。
【0034】
本発明による立体表示装置の作製方法は、物体を立体的に表示する立体表示装置の作製方法であって、白色光を出射する白色光源を用意する工程と、前記白色光源に対してカラーフィルタを配置する工程とを包含し、前記配置する工程において、前記カラーフィルタは、それぞれが前記白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、前記白色光源および前記カラーフィルタは、前記白色光源から出射されて前記カラーフィルタの前記着色部を透過する光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成されており、前記立体表示装置の作製方法は、第1主面および第2主面を有する透過部材を用意する工程と、前記透過部材の前記第1主面に前記カラーフィルタを形成する工程とをさらに包含し、前記白色光源を用意する工程において、前記白色光源は、それぞれが白色光を出射する複数の発光ダイオードを有している。
【0035】
本発明による立体表示装置は、物体を立体的に表示する立体表示装置であって、白色光を出射する白色面光源と、カラーフィルタと、光学部材とを備え、前記カラーフィルタは、それぞれが前記白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、前記光学部材は、それぞれが前記カラーフィルタの前記着色部とともに光線を規定する複数の単位部を含み、前記カラーフィルタおよび前記光学部材は、前記着色部および前記単位部によって規定される光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成されており、前記立体表示装置は入射面および出射面を有する透過部材をさらに備え、前記カラーフィルタは前記透過部材の前記入射面に設けられており、前記光学部材は前記透過部材の前記出射面に設けられている。
【0036】
ある実施形態において、前記光学部材は、前記着色光を選択的に透過するピンホールマスクを含む。
【0037】
ある実施形態において、前記光学部材は、前記着色部に応じて異なる方向に屈折するように前記光線を規定するレンズアレイを含む。
【0038】
ある実施形態において、前記カラーフィルタの前記着色部は静止画像に対応している。
【0039】
本発明による立体表示装置の作製方法は、物体を立体的に表示する立体表示装置の作製方法であって、白色光を出射する白色面光源を用意する工程と、前記白色面光源に対してカラーフィルタおよび光学部材を配置する工程とを包含し、前記配置する工程において、前記カラーフィルタは、それぞれが前記白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、前記光学部材は、それぞれが前記カラーフィルタの前記着色部とともに光線を規定する複数の単位部を含み、前記カラーフィルタおよび前記光学部材は、前記着色部および前記単位部によって規定される光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成されており、前記立体表示装置の作製方法は、入射面および出射面を有する透過部材を用意する工程と、前記透過部材の前記入射面に前記カラーフィルタを形成する工程と、前記透過部材の前記出射面に前記光学部材を形成する工程とをさらに包含する。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、カラーフィルタの位置ずれを抑制した立体表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による立体表示装置の実施形態の模式図である。
【図2】本実施形態の立体表示装置における立体表示方法を説明するための模式図であり、(a)はある点から散乱する光を示す模式図であり、(b)は光線の記録を示す模式図であり、(c)は本実施形態の立体表示装置の模式図である。
【図3】本実施形態の立体表示装置における立体表示方法を説明するための模式図であり、(a)はある点から散乱する光を示す模式図であり、(b)は光線の記録を示す模式図であり、(c)は本実施形態の立体表示装置の模式図である。
【図4】本実施形態の立体表示装置において立体表示装置よりも奥に物体を表示する手法を説明するための模式図であり、(a)は光線の記録を示す模式図であり、(b)は本実施形態の立体表示装置の模式図である。
【図5】本実施形態の立体表示装置において立体表示装置よりも手前に物体を表示する手法を説明するための模式図であり、(a)は光線の記録を示す模式図であり、(b)は本実施形態の立体表示装置の模式図である。
【図6】(a)および(b)は本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【図7】本実施形態の立体表示装置の模式的な斜視図である。
【図8】本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【図9】(a)〜(d)は本実施形態の立体表示装置の作製方法を説明するための模式図である。
【図10】本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【図11】(a)および(b)は本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【図12】本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【図13】(a)および(b)は本実施形態の立体表示装置の模式的な斜視図である。
【図14】本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【図15】(a)〜(d)は本実施形態の立体表示装置の作製方法を説明するための模式図である。
【図16】本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【図17】本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【図18】本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【図19】本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【図20】本実施形態の立体表示装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明による立体表示装置および立体表示装置の作製方法の実施形態を説明する。
【0043】
[立体表示装置1]
図1に、本実施形態の立体表示装置100の模式図を示す。立体表示装置100は、白色光源10と、カラーフィルタ20と、ピンホールマスク32とを備える。白色光源10は白色光を出射する。ここでは、白色光源10は面光源である。
【0044】
ピンホールマスク32では、透過率の低い領域に対して透過率の高い領域が所定のパターンに配列されている。ピンホールマスク32のうち透過率の高い領域はピンホールとも呼ばれ、ピンホールマスク32のうち透過率の低い領域はマスク部とも呼ばれる。ピンホールマスク32には複数のピンホールが設けられている。ここでは、ピンホールマスク32はカラーフィルタ20よりも白色光源10側に設けられており、ピンホールマスク32は、白色光源10から出射された白色光を選択的に透過する。
【0045】
本実施形態の立体表示装置100において、カラーフィルタ20はそれぞれが白色光を着色光に変更する複数の着色部を有している。着色部は、例えば、赤、緑および青が任意の割合で混ざった色を呈する。カラーフィルタ20の着色部は静止画像に対応している。ここでは、カラーフィルタ20はピンホールマスク32よりも観察者V側に設けられており、カラーフィルタ20は、ピンホールマスク32によってサンプリングされた白色光を着色光に変更する。
【0046】
立体表示装置100において、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32は、カラーフィルタ20の着色部およびピンホールマスク32のピンホールによって規定される光線が表示される物体から散乱する光線に対応するように構成されている。これにより、物体から散乱する光線を再現(再生)し、立体表示を行うことができる。例えば、物体は、カラーフィルタ20の着色部およびピンホールマスク32のピンホールによって規定される光線の交差する交点で表示される。
【0047】
立体表示装置100は主面42a、42bを有する透過部材40をさらに備えている。ここでは、透過部材40の主面42aは観察者Vに向いており、透過部材40の主面42bは白色光源10に向いている。例えば、透過部材40はアクリル樹脂、ガラスまたはプラスチックから形成された透明基板を有している。
【0048】
本実施形態の立体表示装置100において、透過部材40の主面42aにカラーフィルタ20が印刷されており、透過部材40の主面42bにピンホールマスク32が印刷されている。ここでは、主面42a、42bはいずれも平面である。透過部材40の厚さは、主面42aと主面42bとの距離によって規定される。本明細書の以下の説明において、主面42a、42bをそれぞれ第1主面42a、第2主面42bと呼ぶことがある。また、本明細書の以下の説明において立体表示装置100を単に表示装置100と呼ぶことがあり、白色光源10を単に光源10と呼ぶことがある。
【0049】
本実施形態の立体表示装置100では、カラーフィルタ20は透過部材40の主面42aに設けられており、カラーフィルタ20の形状は変化しにくい。このため、カラーフィルタ20の位置ずれを抑制することができ、また、形状変化に伴うカラーフィルタ20の交換を抑制することができる。さらに、本実施形態の立体表示装置100では、カラーフィルタ20は印刷で形成されており、カラーフィルタ20は、印刷精度と同様の高い精度で配置される。また、図1に示した立体表示装置100では、透過部材40の主面42bにピンホールマスク32が印刷されており、これにより、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32の位置合わせを簡略化することができる。
【0050】
また、図1に示した立体表示装置100では、カラーフィルタ20、ピンホールマスク32および透過部材40が一体的に設けられており、特定の色および進行方向を有する光線がカラーフィルタ20およびピンホールマスク32によって規定される。本明細書の以下の説明において、一体的に設けられたカラーフィルタ20、ピンホールマスク32および透過部材40全体を光線規定部材200と呼ぶことがある。
【0051】
なお、透過部材40は透明基板に貼り付けられた透明部材をさらに有してもよく、カラーフィルタ20またはピンホールマスク32の印刷された透明部材が透明基板に貼り合わせられてもよい。また、透過部材40は透明基板に取り付けられた少なくとも一部で光を透過する光学素子をさらに有してもよい。
【0052】
図2を参照して立体表示装置100を説明する。任意の物体は複数の点の集合として取り扱うことができるため、ここでは、説明が過度に複雑になることを避けるために、物体に含まれる点Aからの光線の記録および再生を説明する。
【0053】
図2(a)に示すように、点Aから光は散乱し、この光が観察者Vに到達する。観察者Vが点Aから広がった光を受け取ることにより、点Aが視認される。
【0054】
立体表示装置100の作製に先立ち、図2(b)に示すように、点Aから散乱する光の範囲内にピンホールマスクPおよびカラー光検出器Dを配置する。ピンホールマスクPはカラー光検出器Dよりも点Aの近くに配置される。ピンホールマスクPでは、透過率の低い領域に対して透過率の高い領域が所定のパターンに配列されている。ピンホールマスクPのうち透過率の高い領域はピンホールとも呼ばれ、ピンホールマスクPのうち透過率の低い領域はマスク部とも呼ばれる。例えば、ピンホールマスクPは、所定のパターンにピンホール(穴)の設けられた光を透過しない板である。例えば、ピンホールは所定のピッチでマトリクス状に配置されている。ただし、ピンホールはマトリクス状に配置されていなくてもよい。カラー光検出器DはピンホールマスクPを透過した光の色成分および強度を検出する。例えば、カラー光検出器Dは対応するカラーフィルタの設けられた複数の光検出部を有している。カラーフィルタは、例えば、赤、緑および青の着色部を有している。
【0055】
ここで、点Aから広がる光に着目すると、点Aから無限本数の光線が散乱しているといえる。ピンホールマスクPのピンホールは点Aから広がる光を選択的に透過し、ピンホールマスクPを透過した光がカラー光検出器Dにおいて検出される。カラー光検出器Dにおいて、例えば、各ピンホールを通過した光の各色成分の強度が検出される。ピンホールマスクPのピンホールとカラー光検出器Dにおける光検出部の検出結果との組み合わせによって光線が規定される。このようにして点Aからの光線が記録される。本実施形態の立体表示装置100は、例えば、このピンホールマスクPの配置およびカラー光検出器Dの検出結果を利用して作製される。
【0056】
図2(c)に、本実施形態の立体表示装置100の模式図を示す。カラーフィルタ20は透過部材40の主面42aに設けられており、ピンホールマスク32は透過部材40の主面42bに設けられている。ピンホールマスク32は図2(b)に示したピンホールマスクPと同様の形状および配列パターンを有している。ここでは、光源10は、白色光を出射する面光源である。カラーフィルタ20は、図2(b)においてカラー光検出器Dを配置した箇所に配置される。カラーフィルタ20は、カラー光検出器Dの検出結果に対応した着色部を有している。
【0057】
立体表示装置100において、光源10から出射されてピンホールマスク32およびカラーフィルタ20によって規定される光線は、点Aから散乱する光線を再生(再現)しており、観察者Vには、立体表示装置100の奥に点像Aが表示されているように見える。立体表示装置100はこのようにして点像Aを形成する。なお、後述するように、光源10として点光源を用いてもよい。点光源は、図2(b)においてピンホールマスクPを配置した箇所に配置される。例えば、点光源は発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。
【0058】
なお、上述の説明で参照した図2(c)において、透過部材40の主面42a、42bは平面であったが、本発明はこれに限定されない。透過部材40の主面42a、42bは曲面であってもよい。
【0059】
図3を参照して立体表示装置100を説明する。図3(a)に示すように、点Aから光は散乱し、この光が観察者Vに到達する。
【0060】
立体表示装置100の作製に先立ち、図3(b)に示すように、点Aから散乱する光の範囲内にピンホールマスクPおよびカラー光検出器Dを配置する。ピンホールマスクPはカラー光検出器Dよりも点Aの近くに配置されている。ここでは、ピンホールマスクPの各ピンホールは曲面上に設けられており、カラー光検出器Dの各検出部も曲面上に設けられている。
【0061】
点Aから広がる光に着目すると、点Aから無限本数の光線が発散しているといえるが、ピンホールマスクPを設けることにより、ピンホールマスクPのピンホールに対応する光がピンホールマスクPを透過する。ピンホールマスクPを透過した光はカラー光検出器Dにおいて検出される。カラー光検出器Dにおいて、例えば、各ピンホールを通過した光の各色成分の強度が検出される。このようにして点Aからの光線が記録される。
【0062】
図3(c)に、本実施形態の立体表示装置100の模式図を示す。カラーフィルタ20は透過部材40の主面42aに設けられており、ピンホールマスク32が透過部材40の主面42bに設けられている。立体表示装置100において、光源10から出射してピンホールマスク32およびカラーフィルタ20によって規定される光線は、点Aから散乱する光線を再現しており、観察者Vには、立体表示装置100の奥に点像Aが表示されているように見える。立体表示装置100はこのようにして立体表示を行うことができる。なお、図2(c)および図3(c)では、透過部材40の厚さ(透過部材40の主面42aと主面42bとの距離)はほぼ一定であり、主面42aと主面42bは互いに平行であったが、本発明はこれに限定されない。主面42aと主面42bは非平行であり、透過部材40の厚さは一定でなくてもよい。
【0063】
表示装置100では、光源10から出射されてカラーフィルタ20およびピンホースマスク32によって規定され光線は立体的に表示される物体から散乱する光線に対応している。表示装置100は、観察者Vから見て、表示装置100よりも奥に物体を表示してもよいし、表示装置100よりも手前に物体を表示してもよい。
【0064】
例えば、表示装置100は、観察者Vから見て表示装置100よりも奥に物体を表示する。以下、図4を参照して立体表示装置100(光線の記録および再生)を説明する。
【0065】
図4(a)に示すように、物体Xから散乱しピンホールマスクPを透過した光がカラー光検出器Dにおいて検出される。ここで、物体Xの点Aおよび点Bに着目する。点AからピンホールマスクPのピンホールを通過した光はカラー光検出器Dにおいて検出され、同様に、点BからピンホールマスクPのピンホールを通過した光はカラー光検出器Dにおいて検出される。なお、ピンホールマスクPの同一のピンホールに着目した場合、点Aおよび点Bの位置が異なるため、点Aおよび点Bから同一のピンホールを通過した光は、カラー光検出器Dにおいて異なる位置に検出される。
【0066】
図4(b)に、立体表示装置100の模式図を示す。立体表示装置100は、例えば、図4(a)に示したピンホールマスクPの配置およびカラー光検出器Dの検出結果を利用して作製される。本実施形態の立体表示装置100では、光源10は面光源である。カラーフィルタ20は透過部材40の主面42aに設けられており、ピンホールマスク32は透過部材40の主面42bに設けられている。ピンホールマスク32は図4(a)に示したピンホールマスクPと同様の形状および配列パターンを有している。カラーフィルタ20は、カラー光検出器Dにおける検出結果を反映している。
【0067】
光源10から出射された光は、ピンホールマスク32およびカラーフィルタ20を順番に透過する。光源10から出射されて、ピンホールマスク32およびカラーフィルタ20によって規定される光線により、点A、Bから広がる光線が再生(再現)される。このため、観察者Vには、立体表示装置100の奥に点像A、Bを含む物体Xが表示されており、あたかも物体Xが立体表示装置100の奥に存在しているかのように見える。また、立体表示装置100では奥行を反転することなく物体Xの立体表示を行うことができる。なお、表示装置100では、ピンホールマスク32の1つのピンホールに、カラーフィルタ20における特定の着色部が対応している。典型的には、あるピンホールに対応する着色部の配置される領域は別のピンホールに対応する着色部の配置される領域とは重ならない。
【0068】
表示装置100は、観察者Vから見て、表示装置100よりも手前に物体を表示してもよい。以下、図5を参照して立体表示装置100(光線の記録および再生)を説明する。
【0069】
図5(a)に示すように、点Aから散乱する光はレンズLを介して点A’に集められて点像A’が形成され、点Bから散乱する光はレンズLを介して点B’に集められて点像B’が形成される。点Aからの光は点像A’に集まった後、点像A’から散乱する。同様に、点Bからの光は点像B’に集まった後、点像B’から散乱する。このように、レンズLによって物体Xの倒立像が形成される。レンズLと点像A’、B’との間にピンホールマスクPおよびカラー光検出器Dを配置し、カラー光検出器DはピンホールマスクPを透過した光を検出する。ピンホールマスクPのピンホールは、倒立像を形成する光をサンプリングしており、ピンホールと光検出部との組み合わせによって光線が規定される。
【0070】
図5(b)に、立体表示装置100の模式図を示す。光源10は面光源であり、ピンホールマスク32は図5(a)に示したピンホールマスクPと同様の形状および配列パターンを有している。カラーフィルタ20は、カラー光検出器Dにおける検出結果を反映している。カラーフィルタ20は透過部材40の主面42aに設けられており、ピンホールマスク32は透過部材40の主面42bに設けられている。
【0071】
光源10から出射され、カラーフィルタ20の着色部およびピンホールマスク32のピンホールによって規定された光線により、点像A’から散乱する光線が再現される。同様に、光源10から出射され、カラーフィルタ20の着色部およびピンホールマスク32のピンホールによって規定された別の光線により、点像B’から散乱する光線が再現される。なお、異なる光線は、カラーフィルタ20の着色部およびピンホールマスク32のピンホールの少なくとも一方が異なるように規定されていればよく、点像A’を再現する1つの光線は、点像B’を再現する1つの光線と、ピンホールマスク32の同じピンホールを通過してもよい。点像A’、B’を通過して進行する光線は、点像A’、B’から散乱する光線を再生(再現)したものである。このため、観察者Vには、立体表示装置100の手前に物体Xの倒立像が表示されており、あたかも物体Xが立体表示装置100の手前に存在しているかのように見える。図5では、光線の記録時にレンズLによって結像が形成されたが、立体表示装置100では、結像を形成することなく、記録された倒立像に対して奥行を反転することなく物体Xの立体表示を行うことができる。なお、ここでは、説明を簡略化するために、記録時にレンズLによって物体Xの倒立像を形成したが、レンズ系の変更により、正立像を形成してもよい。
【0072】
また、ここでは図示していないが、表示装置100は、観察者Vから見て、表示装置100よりも奥に見える物体および手前に見える物体の両方を表示してもよい。また、カラーフィルタ20のうちの特定の着色部が特定の物体を立体表示するのに用いられ、別の着色部が背景または別の物体を表示するために用いられてもよい。
【0073】
上述した説明では、物体Xからの光をカラー光検出器Dで検出した検出結果を利用してカラーフィルタ20を作製したが、カラーフィルタ20は演算処理に基づいて作製されてもよい。例えば、カラーフィルタ20は撮影方向の異なる複数枚の写真から演算することによって形成されてもよい。また、透過部材40は、透明基板に加えて別の部材を有してもよい。例えば、透過部材40は、観察者Vの見る方向に応じて透過率が大きく異なる視野角調整フィルムをさらに有してもよい。
【0074】
上述した立体表示装置では、光線の記録および再生を行っており、これにより、立体表示装置100の簡便化が図られている。なお、上述したように、サンプリングされた白色光は、それぞれが白色光を出射する複数の点光源によって生成されてもよく、あるいは、白色光を出射する面光源およびピンホールマスクによって形成されてもよい。表示装置100において光源10は面光源であってもよく、複数の点光源の配列された点光源アレイであってもよい。なお、ここでは、図2〜図5を参照して図1に示した立体表示装置100における立体表示を説明したが、後述の立体表示装置も同様に立体表示を行う。
【0075】
図6(a)に、本実施形態の表示装置100の模式図を示す。カラーフィルタ20およびピンホールマスク32は、表示装置100よりも奥の点像Aを表示するように構成されている。あるいは、図6(b)に示すように、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32は、表示装置100よりも手前の点像Aを表示するように構成されてもよい。
【0076】
図7に示すように、本実施形態の立体表示装置100では、透過部材40に、主面42aにカラーフィルタ20が設けられ、主面42bにピンホールマスク32が設けられている。ピンホールマスク32においてピンホールは所定のピッチで配列されている。各ピンホールはほぼ円形状である。例えば、主面42a、42bがA3(297mm×420mm)またはA4(210mm×297mm)と同様のサイズの場合、ピンホールのピッチは1.5mm以上2.5mm以下であり、ピンホールの直径は約0.1mmである。透過部材40は例えば0.5mm以上の厚さを有していることが好ましい。透過部材40の厚さが0.5mm未満である場合、立体表示装置100のサイズがそれほど大きくないと、奥行、視域角および解像度のうちの少なくとも1つの表示特性を十分に満たさないことがある。
【0077】
例えば、ピンホールマスク32は、所定のピッチで微細な穴の設けられた黒色層である。黒色層は、インクから形成されてもよい。例えば、インクは紫外線硬化樹脂から形成される。あるいは、黒色層はスタンプによって形成されてもよい。あるいは、ピンホールマスク32は、光を透過しない金属板に穴の設けられたものであってもよい。なお、この場合、穴の径は、光源10から離れるにしたがって増加することが好ましい。このようなピンホールマスク32は光源10とともに白色点光源として機能する。
【0078】
表示装置100では、光源10は面光源であるが、ピンホールマスク32を設けることにより、光源10が点光源アレイまたは面光源のいずれであってもサンプリングされた光線を生成することができる。また、ピンホールマスク32が黒の板から形成されている場合、観察者Vには黒の背景上に物体が立体的に表示されているように見える。
【0079】
ここで、図8を参照してカラーフィルタ20およびピンホールマスク32の配置を説明する。ピンホールマスク32の1つのピンホールに、カラーフィルタ20における特定の着色部が対応している。ピンホールマスク32のピンホールおよびカラーフィルタ20の着色部によって規定される光線の交差する交点に点像Aが形成される。カラーフィルタ20の同じ色の着色部を透過した光線により、点像Aが形成される。
【0080】
本実施形態の立体表示装置100は以下のように作製される。図9(a)に示すように、白色光を出射する光源10を用意する。ここでは、光源10は面光源である。
【0081】
図9(b)に示すように、主面42a、42bを有する透過部材40を用意する。次に、図9(c)に示すように、透過部材40の主面42aにカラーフィルタ20を印刷する。印刷は、例えば、インクジェット方式で行われる。例えば、カラーフィルタ20は、透過部材40の主面42aに、カラーフィルタ20の着色部を直接印刷することによって形成されてもよい。あるいは、カラーフィルタ20は、着色部を保持する透明部材を印刷することによって形成されてもよい。また、透過部材40の主面42bにピンホールマスク32を印刷する。印刷は、例えば、インクジェット方式で行われる。
【0082】
その後、図9(d)に示すように、光源10に対してカラーフィルタ20およびピンホールマスク32を配置する。カラーフィルタ20およびピンホールマスク32はいずれも透過部材40に設けられており、カラーフィルタ20の着色部およびピンホールマスク32のピンホールがそれぞれ所定の位置関係になるように配置される。このようにして立体表示装置100を作製することができる。
【0083】
なお、上述した説明では、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32の両方が印刷されていたが、本発明はこれに限定されない。カラーフィルタ20およびピンホールマスク32の一方が印刷され、他方は別の手法で形成されてもよい。上述したように、カラーフィルタ20および/またはピンホールマスク32を印刷で形成することにより、大量生産を容易に行うことができる。
【0084】
また、上述した説明では、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32の少なくとも一方が印刷されていたが、本発明はこれに限定されない。カラーフィルタ20およびピンホールマスク32の少なくとも一方は脱着可能に貼り付けられてもよい。特に、カラーフィルタ20が脱着可能であることが好ましい。カラーフィルタ20が1つの静止画像に対応している場合、カラーフィルタ20を剥がした後で、別のカラーフィルタ20を貼り付けることにより、別の静止画像を立体的に表示することができる。また、ピンホールマスク32も脱着可能であってもよい。あるいは、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32の少なくとも一方は脱着可能な透明部材に印刷されており、この透明部材が透過部材40に貼り付けられてもよい。
【0085】
また、上述した説明では、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32によって規定される光線の交差する交点で物体が表示されたが、本発明はこれに限定されない。厳密な意味において光線が交差しない場合でも、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32によって規定される光線が物体から散乱する光線を実質的に再現することにより、視点の移動する観察者にも物体は立体的に見える。
【0086】
また、立体表示装置100においてカラーフィルタ20およびピンホールマスク32によって規定されるすべての光線が物体から散乱する光線に対応していなくてもよい。立体表示装置100から比較的離れた物体を表示する場合、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32によって規定される複数の光線で物体から散乱する光を再現することが可能であるが、立体表示装置100に比較的近い物体を表示する場合、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32によって規定される光線のうち物体を透過する光線が少なく、物体を適切に表示できないことがある。この場合、立体表示装置100の比較的近くの物体を多眼パララックス方式で表示することが好ましい。カラーフィルタ20およびピンホールマスク32は、着色部およびピンホールによって規定される光線の一部によって観察者に視差を与えるように、構成されてもよい。
【0087】
図1を参照して上述したように、カラーフィルタ20、ピンホールマスク32および透過部材40は一体的に光線規定部材200として形成されている。光線規定部材200は、所定の面積を有する面光源10であれば、任意の面光源10と組み合わせて立体表示を行うことができる。例えば、面光源10として、一般の照明装置を用いてもよく、あるいは、いわゆるテレビジョン装置を用いてもよい。
【0088】
透過部材40は複数の透明基板を有してもよい。図10に、本実施形態の立体表示装置100の模式図を示す。ここでは、透過部材40は、透明基板40Aと、バリア層50と、透明基板40Bとを有している。バリア層50は、透明基板40Aと透明基板40Bとの間に設けられており、透明基板40A、バリア層50および透明基板40Bは積層されている。
【0089】
透明基板40Aは主面42a、42cを有しており、透明基板40Bは主面42b、42dを有している。本明細書の以下の説明において透明基板40A、40Bをそれぞれ第1透明基板40A、第2透明基板40Bとも呼ぶ。ここでは、第1透明基板40Aは第2透明基板40Bよりも観察者V側に配置されている。また、透明基板40Aの主面42a、透明基板40Bの主面42dは、それぞれ、透明基板40Aの主面42c、透明基板40Bの主面42bよりも観察者V側に配置されている。図10に示した立体表示装置100でも、透明基板40Aの主面42aにカラーフィルタ20が設けられており、透明基板40Bの主面42bにピンホールマスク32が設けられている。
【0090】
バリア層50は、通過する光の強度および色の少なくとも一方を変調することができる単位領域を有している。バリア層50の単位領域はカラーフィルタ20の着色部よりも小さい。この表示装置100では、異なる点光源10aがカラーフィルタ20の同一の着色部に対応していても、バリア層50により、不要な光を遮断することができる。バリア層50は、例えば、液晶層によって実現される。このようなバリア層50により、奥行(飛出し)、視域角および解像度を適切に設定することができる。なお、図10では、立体表示装置100は2つの透明基板40A、40Bを備えていたが、立体表示装置100は3以上の透明基板40を備えていてもよく、また、各透明基板40の隣接する主面42の間に光学素子を設けてもよい。
【0091】
なお、図10に示した立体表示装置100では、透明基板40Aと透明基板40Bとの間に設けられたバリア層50は透明基板40A、40Bと積層するように構成されていたが、本発明はこれに限定されない。透明基板40A、40Bは互いの距離を固定する固定部材によって固定されており、この固定部材を除いて、透明基板40Aと透明基板40Bとの間に何も設けなくてもよい。このように、透明基板40Aと透明基板40Bとを実質的に分離して配置することにより、飛出し距離の大きな表示を可能な立体表示装置100を比較的低いコストで作製することができる。
【0092】
上述したような立体表示装置100は、広告用看板またはアミューズメント用ディスプレイといった比較的大きな表示装置に好適に用いられる。なお、立体表示の行われる物体は立体表示装置100で表示される画像全体であってもよく、画像の一部であってもよい。
【0093】
[立体表示装置2]
図11に、本実施形態の立体表示装置100の模式図を示す。立体表示装置100は、光源10、カラーフィルタ20および透過部材40を備えている。なお、本実施形態の立体表示装置100の構成は、ピンホールマスク32が設けられていない点を除いて図1〜図10を参照して上述した立体表示装置と同様の構成を有しており、冗長を避けるために重複する説明を省略する。
【0094】
本実施形態の立体表示装置100において光源10は複数の行および複数の列のマトリクス状に配列された複数の点光源10aを有している。ここでは、点光源10aは発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。点光源10aとしてLEDを用いることにより、立体表示を高輝度で行うことができる。
【0095】
また、本実施形態の立体表示装置100において、カラーフィルタ20は透過部材40の主面42aに設けられており、カラーフィルタ20の形状は変化しにくい。このため、カラーフィルタ20の位置ずれを抑制することができ、また、形状変化に伴うカラーフィルタ20の交換を抑制することができる。なお、本実施形態の立体表示装置100においても、カラーフィルタ20は透過部材40の主面42aに印刷されてもよく、また、カラーフィルタ20は脱着可能に貼り付けられてもよい。
【0096】
図12(a)に、表示装置100の模式図を示す。光源10は、点光源10aがマトリクス状に配列された点光源アレイである。ここでは、表示装置100の点光源10aおよびカラーフィルタ20は、表示装置100よりも奥の点像Aを表示するように構成されている。あるいは、図12(b)に示すように、表示装置100の光源10およびカラーフィルタ20は、表示装置100よりも手前の点像Aを表示するように構成されてもよい。
【0097】
図13を参照して点光源10aおよびカラーフィルタ20の配置を説明する。点光源アレイ10の各点光源10aに、カラーフィルタ20における特定の着色部が対応している。点光源10aからカラーフィルタ20を透過した光線によって点像Aが形成される。カラーフィルタ20の同じ色の着色部を透過した光線により、点像Aが形成される。
【0098】
本実施形態の立体表示装置100において、光源10およびカラーフィルタ20は、光源10から出射されてカラーフィルタ20の着色部によって規定される光線の交差する交点で物体が表示されるように構成されている。このように、物体からの光線を再現(再生)することにより、立体表示を行うことができる。
【0099】
図14に示すように、光源10が複数の点光源10aの配列された点光源アレイである場合、透過部材40には、主面42aにカラーフィルタ20が設けられ、主面42bに何も設けられておらず、光源10は透過部材40の主面42bと空気を介して対向していてもよい。ただし、光源10は図示していない光学素子を介して透過部材40の主面42bと対向してもよい。
【0100】
本実施形態の立体表示装置100は以下のように作製される。図15(a)に示すように、白色光を出射する光源10を用意する。ここでは、光源10はマトリクス状に配列された複数の点光源10aを有する点光源アレイである。
【0101】
図15(b)に示すように、主面42a、42bを有する透過部材40を用意する。次に、図15(c)に示すように、透過部材40の主面42aにカラーフィルタ20を形成する。例えば、カラーフィルタ20は、透過部材40の主面42a上に直接印刷される。
【0102】
その後、図15(d)に示すように、光源10およびカラーフィルタ20を配置する。点光源10aおよび着色部がそれぞれ所定の位置関係になるように配置される。このようにして立体表示装置100を作製することができる。
【0103】
なお、冗長を避けるために、重複する記載は省略するが、本実施形態の立体表示装置100においても、図10を参照して上述したのと同様に、透過部材40は、透明基板40Aと、バリア層50と、透明基板40Bとを有してもよく、バリア層50により、奥行(飛出し)、視域角および解像度を適切に設定することができる。同様に、本実施形態の立体表示装置100においても、表示装置100近傍の物体を多眼パララックス式で表示してもよい。
【0104】
また、図11に示した表示装置100では、透過部材40の主面42bに何も設けられていなかったが、本発明はこれに限定されない。図16に示すように、透過部材40の主面42bにバリア層50が設けられてもよい。
【0105】
また、点光源10aとしてLEDを用いた場合でも、透過部材40の主面42bにピンホールマスク32を設けてもよい。例えば、LED10aを保持する部材においてLED10aから出射された光が反射されて透過部材40に入射する光のコントラストがそれほど高くならないことがある。この場合、透過部材40の主面42bにピンホールマスク32を設けることにより、コントラストを向上させることができる。また、LED10aを高精度に配置できない場合でも、ピンホールマスク32を設けることにより、コントラストを向上させるとともに光線をピンホールマスク32の精度(好ましくは印刷精度)で再現することができる。
【0106】
[立体表示装置3]
上述した説明では、カラーフィルタ20は、透過部材40に対して観察者V側に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。カラーフィルタ20は、透過部材40に対して白色光源10側に設けられてもよい。
【0107】
以下、図17を参照して本実施形態の立体表示装置100を説明する。立体表示装置100は、白色光源10と、カラーフィルタ20と、光学部材30と、透過部材40とを備える。なお、冗長を避けるために、白色光源10、カラーフィルタ20および透過部材40について上述の立体表示装置と重複する説明を省略する。
【0108】
ここでは、白色光源10は面光源である。透過部材40は主面42a、42bを有しており、透過部材40の主面42aは入射面であり、透過部材40の主面42bは出射面である。透過部材40の主面42aにカラーフィルタ20が設けられており、透過部材40の主面42bには光学部材30が設けられている。
【0109】
本実施形態の立体表示装置100において、カラーフィルタ20は透過部材40の主面42aに設けられており、カラーフィルタ20の形状は変化しにくい。このため、カラーフィルタ20の位置ずれを抑制することができ、また、形状変化に伴うカラーフィルタ20の交換を抑制することができる。
【0110】
カラーフィルタ20は、それぞれが白色光を着色光に変更する複数の着色部を有している。着色部は、例えば、赤、緑および青が任意の割合で混ざった色を呈する。
【0111】
光学部材30はそれぞれがカラーフィルタ20の着色部とともに光線を規定する複数の単位部を有している。光学部材30は、例えば、ピンホールマスクまたはレンズアレイであり、単位部は、例えば、ピンホールまたはレンズ(凸レンズ)である。
【0112】
本実施形態の立体表示装置100において、カラーフィルタ20および光学部材30は、カラーフィルタ20の着色部および光学部材30の単位部によって規定される光線が物体から散乱する光線に対応するように構成されている。このように、物体からの光線を再現(再生)することにより、立体表示を行うことができる。本実施形態の立体表示装置100では、透過部材40の主面42aにカラーフィルタ20が設けられるとともに主面42bに光学部材30が設けられており、これにより、カラーフィルタ20および光学部材30の空間的な位置合わせを簡便に行うことができる。
【0113】
冗長を避けるために、重複する記載は省略するが、本実施形態の立体表示装置100においても、図10を参照して上述したのと同様に、透過部材40は、透明基板40Aと、バリア層50と、透明基板40Bとを有してもよく、バリア層50により、奥行(飛出し)、視域角および解像度を適切に設定することができる。同様に、本実施形態の立体表示装置100においても、表示装置100近傍の物体を多眼パララックス式で表示してもよい。
【0114】
図18に、本実施形態の立体表示装置100の模式図を示す。ここでは、光学部材30としてピンホールマスク32が設けられている。ピンホールマスク32には複数のピンホールが設けられている。ピンホールマスク32はカラーフィルタ20よりも観察者V側に設けられており、ピンホールマスク32は、カラーフィルタ20を透過した着色光を選択的に透過する。なお、図2〜図5を参照して上述した立体表示装置では、カラーフィルタは、カラー光検出器Dの検出結果を直接的に用いて作製可能であるが、図18に示した立体表示装置100では、光源10に対してカラーフィルタ20とビンホールマスク32との配置が反転しているため、カラーフィルタ20は、カラー光検出器Dの検出結果を変換して作製される。
【0115】
立体表示装置100において、カラーフィルタ20およびピンホールマスク32は、カラーフィルタ20の着色部およびピンホールマスク32のピンホールによって規定される光線が物体から散乱する光線に対応するように構成されている。このように、物体からの光線を再現(再生)することにより、立体表示を行うことができる。本実施形態の立体表示装置100においても、カラーフィルタ20は透過部材40の主面42aに印刷されてもよく、また、カラーフィルタ20は脱着可能に貼り付けられてもよい。ピンホールマスク32は透過部材40の主面42bに印刷されてもよく、また、ピンホールマスク32は脱着可能に貼り付けられてもよい。
【0116】
図18に示した立体表示装置100において、カラーフィルタ20、ピンホールマスク32および透過部材40は一体的に光線規定部材200として形成される。上述したように、光線規定部材200は、所定の面積を有する面光源10であれば、任意の面光源10と組み合わせて立体表示を行うことができる。
【0117】
図19に、本実施形態の立体表示装置100の模式図を示す。ここでは、光学部材30としてレンズアレイ34が設けられている。レンズアレイ34は、カラーフィルタ20の着色部に応じて光線を異なる方向に屈折させる。この表示装置100においてレンズアレイ34の各レンズの焦点がカラーフィルタ20上に位置するようにカラーフィルタ20およびレンズアレイ34は配置されており、レンズアレイ34は、白色光源10から出射されてカラーフィルタ20の着色部を透過した光を平行に出射するように透過する光を屈折させる。このように、レンズアレイ34の各レンズは、光のコリメーションに利用される。
【0118】
なお、レンズアレイ34は透過部材40と一体的に形成されることが好ましい。また、図19に示した立体表示装置100においても、カラーフィルタ20は透過部材40の主面42aに印刷されてもよく、また、カラーフィルタ20は脱着可能に貼り付けられてもよい。
【0119】
なお、上述した説明では、透過部材40の主面42aにカラーフィルタ20が直接設けられていたが、本発明はこれに限定されない。カラーフィルタ20として、液晶パネルに含まれるカラーフィルタを用いてもよい。
【0120】
図20に、表示装置100の模式図を示す。図20に示した表示装置100では透明部材40の主面42bに光学部材30が設けられており、この表示装置100はカラーフィルタ20を有する液晶パネル60をさらに備えている。液晶パネル60は、透明部材40の主面42aに設けられている。例えば、液晶パネル60は、いわゆる液晶表示装置に用いられるものであってもよい。
【0121】
液晶パネル60は、光源10と、液晶素子62とを有している。光源10は、いわゆるバックライトとして用いられるものであってもよい。液晶素子62は、前面基板62a、背面基板62b、および、前面基板62aと背面基板62bとの間に設けられた液晶層62cを有している。ここでは、カラーフィルタ20は前面基板62aに設けられている。ただし、カラーフィルタ20は背面基板62bに設けられていてもよい。液晶層62cに印加する電圧を制御することにより、液晶素子62の透過率を制御でき、これにより、表示装置100は動画を立体的に表示することができる。
【0122】
本明細書において、本発明の複数の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されない。当業者に理解されるように、異なる実施形態を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明によれば、カラーフィルタの位置ずれを抑制することができ、これにより、適切な立体表示を行うことができる。本発明の立体表示装置は、広告用看板またはアミューズメント用ディスプレイといった比較的大きな表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0124】
10 白色光源
20 カラーフィルタ
30 光学部材
32 ピンホールマスク
34 レンズアレイ
40 透過部材
50 バリア層
60 液晶パネル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を立体的に表示する立体表示装置であって、
白色光を出射する白色光源と、
カラーフィルタと
を備え、
前記カラーフィルタは、それぞれが前記白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、
前記白色光源および前記カラーフィルタは、前記白色光源から出射されて前記カラーフィルタの前記着色部を透過する光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成され、
前記立体表示装置は第1主面および第2主面を有する透過部材をさらに備え、
前記カラーフィルタは、前記透過部材の前記第1主面に印刷されている、立体表示装置。
【請求項2】
光学部材をさらに備え、
前記光学部材は、それぞれが前記カラーフィルタの前記着色部とともに前記光線を規定する複数の単位部を含み、
前記光学部材および前記カラーフィルタは、前記単位部および前記着色部によって規定される光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成されている、請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項3】
前記光学部材は、前記白色光または前記着色光を選択的に透過するピンホールマスクを含む、請求項2に記載の立体表示装置。
【請求項4】
前記ピンホールマスクは前記透過部材の前記第2主面に印刷されている、請求項3に記載の立体表示装置。
【請求項5】
前記光学部材は、前記着色部に応じて異なる方向に屈折するように前記光線を規定するレンズアレイを含む、請求項2に記載の立体表示装置。
【請求項6】
前記光学部材は、前記透過部材に対して観察者側に設けられている、請求項2から5のいずれかに記載の立体表示装置。
【請求項7】
前記カラーフィルタは、前記透過部材に対して観察者側に設けられている、請求項1から5のいずれかに記載の立体表示装置。
【請求項8】
前記白色光源は、複数の点光源の配列された点光源アレイを有する、請求項1から7のいずれかに記載の立体表示装置。
【請求項9】
前記白色光源は面光源を有する、請求項1から7のいずれかに記載の立体表示装置。
【請求項10】
前記カラーフィルタの前記着色部は静止画像に対応している、請求項1から9のいずれかに記載の立体表示装置。
【請求項11】
物体を立体的に表示する立体表示装置の作製方法であって、
白色光を出射する白色光源を用意する工程と、
前記白色光源に対してカラーフィルタを配置する工程と
を包含し、
前記配置する工程において、
前記カラーフィルタは、それぞれが前記白色光を着色光に変更する複数の着色部を含み、
前記白色光源および前記カラーフィルタは、前記白色光源から出射されて前記カラーフィルタの前記着色部を透過する光線が前記物体から散乱する光線に対応するように構成され、
前記立体表示装置の作製方法は、
第1主面および第2主面を有する透過部材を用意する工程と、
前記透過部材の前記第1主面に前記カラーフィルタを印刷する工程と
をさらに包含する、立体表示装置の作製方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−234111(P2012−234111A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104085(P2011−104085)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】