説明

立坑接続部のシール構造

【課題】簡単な構造で、しかも、地震の揺れに対しても安定した確実なシール状態を長期間にわたって確保する。
【解決手段】シールドトンネル3のトンネル端部3aが接合される立坑1の立坑壁7に前記トンネル端部3aの外周を取囲む円筒状の取付けスリーブ13を設け、その取付けスリーブ13の内側に前記トンネル端部3aの外周面と弾接し合う断面袋状で液体17の入ったドーナツ形状のシール部材15を設ける。
シール部材15内部の液体17は膨張圧制御手段31によって水圧をかけて常に一定の膨張圧を確保することで、揺れに対して柔軟に対応させるようにし、安定したシール状態を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールドトンネルのトンネル端部が接合し合う立坑接続部のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にシールドトンネルのトンネル端部が接合し合う立坑の接続領域は、例えば、立坑内へ地下水等の水が侵入するのを阻止するシール構造がとられている。
【0003】
立坑接続部のシール構造は、シールドトンネルのトンネル端部の外周面にシール部材を設ける手段が一般に採用されているが、近年は地震等の災害時でもシール状態が確保される免震構造のものが提案されている。
【0004】
免震構造の概要は、シールドトンネルの坑口では立坑躯体の内側へセグメントを突出させ、坑口のセグメントの外周面に絶縁層を設け、且つ、絶縁層の外周部に立坑躯体を接合するコンクリートを打設し、シールドトンネルのセグメントと地盤との隙間に免震層を形成する。
【0005】
その際、立坑躯体より地盤側に形成される免震層はシールドトンネル軸直角方向の地震時の挙動により決定する長さとする。
【0006】
更に、免震構造の前方は、セグメントの外周面と裏込め材との間で小さなせん断力の作用によって剥離または滑動できる材料を装着した滑り型セグメントを配設し、地震時に裏込め材と滑り型セグメントとの間で滑りを発生させるようにするものである。
【特許文献1】特開2001−55894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の免震構造は、絶縁層、免震層の外に滑り型セグメントを設ける等部品点数が多くなると共に構造の複雑化を招くようになる。
【0008】
そこで、本発明にあっては簡単な構造で、しかも、地震の揺れに対しても安定したシール状態が長期間にわたって得られる立坑接続部のシール構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、シールドトンネルのトンネル端部が接合される立坑と、前記トンネル端部の外周を取囲むと共に前記立坑の立坑壁と外周面が接触し合う円筒状の取付けスリーブと、前記取付けスリーブの内周面に固定支持され膨張時に前記トンネル端部の外周面と弾接し合う断面袋状でドーナツ形状のシール部材と、前記シール部材の内部に充填され前記シール部材を膨張させる液体と、前記シール部材内に水圧をかけて常に一定の膨張圧を確保する膨張圧制御手段とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシール構造によれば、膨張したシール部材はシールドトンネルのトンネル端部外周と確実に密着し合いトンネル端部外周のシール状態を確保することができる。しかも、簡単なシール構造で済むようになる。
【0011】
一方、シール部材は膨張圧制御手段によって常に一定の膨張圧が確保されているため、地震等の揺れに対しても柔軟に対応しトンネル端部全外周面と確実に密着し合い、安定したシール状態を長期間にわたって確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明にあっては、第1に、前記膨張圧制御手段を、前記シール部材と接続連通し合う液体供給パイプを立坑に沿って上方へ延長し、その上下に長い液体供給パイプの水頭を利用する構造とし、動力を用いることなく長期間にわたって常に一定の膨張圧が確保できるようにする。
【0013】
第2に、前記膨張圧制御手段を、前記シール部材に水道管を接続連通し、その水道管の水道圧を利用する構造とし、動力を用いることなく長期間にわたって常に一定の膨張圧が確保できるようにする。
【実施例】
【0014】
以下、図1乃至図3の図面を参照しながら本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0015】
図1は本発明にかかるシール構造を立坑に実施した概要説明図で、1は立坑、3はシールドトンネル、5は地山をそれぞれ示している。
【0016】
立坑1の立坑壁7にはシールドトンネル3のトンネル端部3aが接続し、前記トンネル端部3aの外周面は本発明にかかるシール構造9によってシールされている。
【0017】
シール構造9から地山5へ続くシールドトンネル3の外周面はベントナイト、又はコンクリート等の裏込材11によって取囲まれ、トンネル内部への水侵入が阻止されている。
【0018】
図2はシール構造9の具体例を示している。シール構造9は、前記トンネル端部3aの外周を取囲む円筒状の取付けスリーブ13と、その取付けスリーブ13の内周面に固定支持され膨張時に前記トンネル端部3aの外周面と弾接し合うシール部材15と、前記シール部材15の内部へ充填することでシール部材15を膨張させる液体17と、前記シール部材15の内部へ液体17を供給する液体供給パイプ19とから成る一箇所に設けたシングルタイプの構造となっている。
【0019】
この場合、並列に設けたダブルタイプのシール構造とすることも可能である。また、液体17は、コスト、維持管理、入手が容易等の条件を考えると水が最適であるが、必ずしも、水でなくてもよい。
【0020】
取付けスリーブ13は金属製でその外周面は立坑3の立坑壁7と密着接触し、密着接触領域のシール状態が確保されている。
【0021】
シール部材15の構造は、中心にナイロンあるいは、ポリエステルの補強維持21が編み込まれたゴム(天然、合成樹脂)の材質により帯板状の形状に作られていて、既に使用済みの材質で耐用年数については保証付きである。シール部材15の両サイド部は補強用の硬質ゴム23を介してリング状の押え金具25が設けられた形状となっている。左右の押え金具25は、円筒状の取付けリング13に対してボルト27,ナット29によって固定支持されることで、シール部材15は取付けリング13の内周面に沿って配置される断面袋状のドーナツ形状となっている。
【0022】
シール部材15は、その内部と接続連通し合う前記した液体供給パイプ19を介して水等の液体17が充填されている。これによりシール部材15は充填された液体17によって膨張したシール作動状態が確保されるようになっている。
【0023】
液体供給パイプ19は、前記シール部材15内に水圧Pを掛けて常に一定の膨張圧を確保する膨張圧制御手段31を兼ねている。
【0024】
具体的には、前記シール部材15の取入口33から逆止弁35を介して立坑壁7内を通過した後、ジョイント37を介して立坑1の立坑壁7に沿って液体供給パイプを上方へ延長し、その上下に長い液体供給パイプ19の水頭Hを利用する構造となっている。
【0025】
水頭Hによる水圧は、立坑1の深さによってかわるようになるが、地山5からのシールドトンネル3のトンネル端部3aに作用する水圧の約1.2〜2倍の水圧になっていることが望ましい。
【0026】
基本的には立坑1に沿って配置される液体供給パイプ19の水頭Hで充分対応可能であるが、圧力不足の場合には水道管を接続し、その水道管の水道圧を組合せる手段としてもよい。
【0027】
また、立坑1の深さによっては、シール部材15に水道管(図示していない)を接続し、水道管の水道圧を直接利用した膨張圧制御手段31とすることも可能である。
【0028】
液体供給パイプ19は、金属製で、途中箇所は取付け金具39によって立坑壁7に固定支持され、その上端は地表面GLに近い位置で水槽枡41と接続連通している。
【0029】
水槽枡41は、一定の水を蓄えることで液体供給パイプ19内の液面、即ち、水頭Hを確保するためのもので、地表面GLに近いこともあって地上から容易に液面管理が行なえるようになっている。
【0030】
この場合、水補給用の水道栓、あるいは、フィルタを介して濾過された雨水等が排水枡を介して水槽枡41内に供給されるようにすることが望ましい。
【0031】
このように構成されたシール構造によれば、シール部材15はシールドトンネル3のトンネル端部3a外周と密着し合いトンネル端部外周のシール状態を確保する。
【0032】
一方、地震が発生した場合、その地震の揺れに対してトンネル端部3aの軸心とシール部材15との軸心とに位置ずれが起きても一定の膨張圧によって柔軟に対応しシール部材15はトンネル端部3aの全外周面と確実に密着し合い安定したシール状態を長期間にわたって確保できる。しかも、一定の膨張圧を確保するにあたって動力を必要としないため、維持・管理が容易になると共に、ランニングコストも安く済むようになる。
【0033】
また、液体供給パイプ19は立坑壁7に沿って配置してあるため、保守、点検が容易に行なえるメリットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかるシール構造を立坑に実施した概要説明図。
【図2】シール構造の一部分を示した拡大説明図。
【図3】シール構造の全体の概要説明図。
【符号の説明】
【0035】
1 立坑
3 シールドトンネル
3a トンネル端部
5 地山
7 立坑壁
9 シール構造
13 取付けスリーブ
15 シール状態
17 液体
19 液体供給パイプ
31 膨張圧制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネルのトンネル端部が接合される立坑と、前記トンネル端部の外周を取囲むと共に前記立坑の立坑壁と外周面が接触し合う円筒状の取付けスリーブと、前記取付けスリーブの内周面に固定支持され膨張時に前記トンネル端部の外周面と弾接し合う断面袋状でドーナツ形状のシール部材と、前記シール部材の内部に充填され前記シール部材を膨張させる液体と、前記シール部材内に水圧をかけて常に一定の膨張圧を確保する膨張圧制御手段とからなることを特徴とする立坑接続部のシール構造。
【請求項2】
前記膨張圧制御手段は、前記シール部材と接続連通し合う液体供給パイプが立坑に沿って上方へ延長され、その上下に長い液体供給パイプの水頭を利用する構造となっていることを特徴とする請求項1記載の立坑接続部のシール構造。
【請求項3】
前記膨張圧制御手段は、前記シール部材に水道管を接続連通し、その水道管の水道圧を利用する構造となっていることを特徴とする請求項1記載の立坑接続部のシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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