説明

立軸型発電機

【課題】容易にブレーキ装置の分解・組立てと保守点検作業を可能にし、さらに下部ブラケット周辺の保守点検スペースの拡大を可能にした立軸型発電機を提供すること。
【解決手段】鉛直方向に設けられた発電機軸と、前記発電機軸に固定されて共に回転する界磁巻線を備えた回転子と、前記回転子に対向して固定子巻線を備えた固定子と、前記回転子の上下において発電機軸を支えるための上部軸受及び下部軸受とを具備してなる立軸型発電機において、前記上部軸受を支持する床面より上側の発電機軸にこの発電機軸と共に回転する円盤状のブレーキリングを設けるとともに、このブレーキリングに対峙した位置にブレーキシューを圧接して制動を行うブレーキ装置を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に水力発電において使用される垂直方向に軸を持った立軸型発電機に関し、特に、ブレーキ装置の取付けに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より水力発電に用いられる発電機の一つとして立軸型発電機が存在する。図2は従来の立軸型発電機の構成を表した縦断面図である。この図2において、立軸型発電機の上部軸受12と略同じ高さの位置には発電機室床面18が設けられ、固定子15の外側には固定子床面19が設けられ、最も下層の位置には水車室床面20が設けられている。
【0003】
発電機軸11は垂直方向に配置されており、この発電機軸11は上部軸受12と下部軸受13によって安定に保持されている。また、この上部軸受12と下部軸受13をそれぞれ支える構成として、上部ブラケット25と下部ブラケット26がそれぞれ設けられており、これらは軸受部分を複数方向(例えば120°間隔で3方向)から支える構造となっている。さらに、上部軸受12と下部軸受13の間の発電機軸11上には界磁巻線を備えた回転子14が設けられ、この回転子14に対向して固定子巻線を備えた固定子15が設けられている。
【0004】
前記回転子14の下面にはブレーキリング16が設けられるとともに、このブレーキリング16の下側の1箇所或いは複数箇所にブレーキ装置17が設けられ、ブレーキリング16に対してブレーキ装置17のブレーキシューを圧接させて制動を行う構成となっている。
なお、前記上部軸受12の上側には、励磁器29が設けられている。
このような構成において、発電機軸11の下端に設けた水車部分(図示省略)に水流が作用することで、発電機軸11及び回転子14が回転して発電が行われる。
【0005】
この図2に示すような立軸型発電機は、従来から様々なものが提案されており、例えば、特許文献1〜3が存在する。
【特許文献1】特開平09−280154号公報
【特許文献2】特開2005−163563号公報
【特許文献3】特開平05−30700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、これらの立軸型発電機を安全に運転するためには定期的な保守点検が不可欠であるが、この必要な保守点検項目の1つにブレーキ部分の点検がある。図2に示すように、立軸型発電機のブレーキ装置17は回転子14の下側に設置されており、このブレーキ装置17のブレーキシューの磨耗状態を点検して場合によっては交換作業を行う。このブレーキ装置17を点検する場合、固定子床面19からの作業は固定子枠21があるため行えないことから、水車室床面20側から点検を行う。この場合、水車室床面20から梯子22を使って作業足場23に登って作業を行うが、この部分は整流板24が塞いでいるため、ブレーキ装置17の点検を行うにはこの整流板24の分解作業が必要であり、作業が煩雑であるという問題があった。また、整流板24を分解してもこの部分には下部ブラケット26が設けてあるため、ブレーキ装置17の設置された回転子14の下のスペースは非常に狭く、作業足場23から行う作業は整流板24の分解後であっても作業しづらいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、容易にブレーキ装置の分解・組立てと保守点検作業を可能にし、さらに下部ブラケット周辺の保守点検スペースの拡大を可能にした立軸型発電機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、鉛直方向に設けられた発電機軸と、前記発電機軸に固定されて共に回転する界磁巻線を備えた回転子と、前記回転子に対向して固定子巻線を備えた固定子と、前記回転子の上下において発電機軸を支えるための上部軸受及び下部軸受とを具備してなる立軸型発電機において、前記上部軸受を支持する床面より上側の発電機軸にこの発電機軸と共に回転する円盤状のブレーキリングを設けるとともに、このブレーキリングに対峙した位置にブレーキシューを圧接して制動を行うブレーキ装置を設けたことを特徴とする立軸型発電機である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に加えて、前記ブレーキリング及びブレーキ装置は、前記上部軸受を支持する床面より上側に設置したことを特徴とする立軸型発電機である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、上部軸受を支持する床面より上側の発電機軸にブレーキリングを設け、ブレーキリングと対峙させて固定的にブレーキ装置を配置することにより、ブレーキ装置の保守点検作業を前記床面から行うことが可能となり、図2に示す従来例のような整流板を分解する等の煩雑な作業を伴うことなく保守点検作業を行うことができる。また、ブレーキ装置を前記のごとく配置することにより、下部ブラケット周辺の保守点検スペースの拡大が図れる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、ブレーキリング及びブレーキ装置を前記上部軸受を支持する床面より上側に設置したので、図2に示す従来例においては、ブレーキシューの交換の有無に拘わらず保守点検作業を行う場合には常に整流板を分解する等の煩雑な作業を必要としていたが、本発明においては、前記床面から覗いてブレーキ装置の保守点検作業を行って、その結果ブレーキシューの交換が必要であると判断した場合にのみ交換作業を行えばよいため、従来の無駄な作業時間を軽減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による立軸型発電機は、鉛直方向に設けられた発電機軸と、前記発電機軸に固定されて共に回転する界磁巻線を備えた回転子と、前記回転子に対向して固定子巻線を備えた固定子と、前記回転子の上下において発電機軸を支えるための上部軸受及び下部軸受とを具備してなる立軸型発電機において、前記上部軸受を支持する床面より上側の発電機軸にこの発電機軸と共に回転する円盤状のブレーキリングを設けるとともに、このブレーキリングに対峙した位置にブレーキシューを圧接して制動を行うブレーキ装置を設けたことを特徴とするものであり、また、前記ブレーキリング及びブレーキ装置は、前記上部軸受を支持する床面より上側に設置したことを特徴とするものである。
以下、図面に基づいて詳細な説明を行う。
【実施例1】
【0013】
本発明による立軸型発電機の構成を図1に基づいて説明する。なお、従来の立軸型発電機の構成を表した図2と同様の構成のものについては同一符号を使用している。この図1において、発電機軸11は垂直方向に配置されており、この発電機軸11は上部軸受12と下部軸受13によって安定に保持されている。また、この上部軸受12と下部軸受13をそれぞれ支える構成として、上部ブラケット25と下部ブラケット26がそれぞれ設けられており、これらは軸受部分を複数方向(例えば120°間隔で3方向)から支える構造となっている。さらに、上部軸受12と下部軸受13の間の発電機軸11上には界磁巻線を備えた回転子14が設けられ、この回転子14に対向して固定子巻線を備えた固定子15が設けられている。
【0014】
この本発明の立軸型発電機は、図2に示す従来例と同様に、上部軸受12が略同じ高さの位置の発電機室床面18に設けられ、下部軸受13が固定子15の外側の固定子床面19に設けられている。最も下層の位置には水車室床面20が設けられている。また、図2と同様、発電機軸11の上端部には励磁器29が設けられている。
【0015】
ここで、本発明の立軸型発電機においては、図2の従来例において回転子14の下側に設けられていたブレーキ装置17に替えて、上部軸受12の上側にて発電機軸11に固定されて共に回転するブレーキリング27を設けるとともに、このブレーキリング27に側面からブレーキシューを圧接させて制動を行うブレーキ装置28を、上部ブラケット25の上の1箇所或いは複数箇所に固定的に設ける。このブレーキ装置28は、例えば、電磁ブレーキが用いられるが、その他の空気圧や油圧を用いたものであってもよい。
また、ブレーキリング27及びブレーキ装置28の外側には、これらを覆うブレーキ枠30が設けられているが、このブレーキ枠30に目視でブレーキシューの磨耗状態を確認するための内部観察用の窓を設ける。
このような構成において、発電機軸11の下端に設けた水車部分(図示省略)に水流が作用することで、発電機軸11及び回転子14が回転して発電が行われる。また、運転を停止する場合には、ブレーキ装置28を駆動してブレーキリング27にブレーキシューを圧接させて行う。
【0016】
以上のように、ブレーキリング27及びブレーキ装置28を上部軸受12の上側に設けることにより、このブレーキリング27及びブレーキ装置28が発電機室床面18と略同じ高さの位置或いはやや高い位置に配置されることになる。この位置に設けられることにより、ブレーキ装置28の保守点検作業を発電機室床面18から覗いて行うことが可能となり、図2に示す従来例のような整流板24を分解する等の煩雑な作業を伴うことなく保守点検作業を行うことができる。
【0017】
また、図2に示す従来例においては、ブレーキシューの交換の有無に拘わらず保守点検作業を行う場合には常に整流板24を分解する等の煩雑な作業を必要としていたが、本発明においては、発電機室床面18から覗いてブレーキ装置28の保守点検作業を行って、その結果ブレーキシューの交換が必要であると判断した場合にのみ交換作業を行えばよいため、従来の無駄な作業時間を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による立軸型発電機の構成を表した縦断面図である。
【図2】従来の立軸型発電機の構成を表した縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
11…発電機軸、12…上部軸受、13…下部軸受、14…回転子、15…固定子、16…ブレーキリング、17…ブレーキ装置、18…発電機室床面、19…固定子床面、20…水車室床面、21…固定子枠、22…梯子、23…作業足場、24…整流板、25…上部ブラケット、26…下部ブラケット、27…ブレーキリング、28…ブレーキ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に設けられた発電機軸と、前記発電機軸に固定されて共に回転する界磁巻線を備えた回転子と、前記回転子に対向して固定子巻線を備えた固定子と、前記回転子の上下において発電機軸を支えるための上部軸受及び下部軸受とを具備してなる立軸型発電機において、前記上部軸受を支持する床面より上側の発電機軸にこの発電機軸と共に回転する円盤状のブレーキリングを設けるとともに、このブレーキリングに対峙した位置にブレーキシューを圧接して制動を行うブレーキ装置を設けたことを特徴とする立軸型発電機。
【請求項2】
前記ブレーキリング及びブレーキ装置は、前記上部軸受を支持する床面より上側に設置したことを特徴とする請求項1記載の立軸型発電機。

【図1】
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【図2】
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