説明

端子圧着装置

【課題】圧着の際の圧着端子と電線端末との位置合わせを精度良く行うことができる端子圧着装置を提供すること。
【解決手段】一定方向に間欠的に移動される帯板状の端子キャリア一側縁に等間隔に連設され、基端側に開放状態の圧着用バレルを有する圧着端子に電線端末を圧着する端子圧着装置において、端子キャリアの圧着端子の連設部位よりずらした部位に位置決め用パイロット穴を設け、該パイロット穴に位置決めピンを挿入して端子キャリアを位置決め固定する端子キャリア位置決め固定手段と、端子キャリアの圧着端子側とは反対側に位置して位置決め固定された端子キャリアの圧着端子に向けて電線端末を前進動させる電線端末供給手段と、前進動された電線端末が圧着端子の圧着用バレルの所定の位置に供給されると該電線端末の前進動を停止させる電線停止手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のワイヤーハーネス等に関し、更に詳しくは圧着端子に電線を圧着する端子圧着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カーナビゲーションシステム等の自動車の電気装置に内蔵される電子部品やIC(集積回路)等が実装された制御用のプリント基板へ伝送される電気信号は高速化(高周波化)され、また、そのプリント基板の基板パターンも密集し高密度化されてきている。一般的に、このような高周波の電気信号を伝送するために高周波対応のシールド電線が用いられるが、プリント基板等の電子機器の高密度化に伴って、シールド電線の端末部分に接続されるシールドコネクタの小型化の要求が高まっている。
【0003】
シールド電線の構造として、例えばいわゆる同軸電線と呼ばれるシールド電線は通常、電気信号等の伝送路として金属製の複数の素線を束ねた芯線とその外周を覆う絶縁体とからなる信号線の外周を同じく複数の素線を編んだ編組線よりなるシールド導体で覆い、更にそのシールド導体の外周を絶縁性のシースで覆った同軸の構造になっており、シールド導体が芯線の外周を隙間なく覆うことで電磁的にシールドしている。
【0004】
一般的に、このような高周波信号を伝送するシールド電線の端末部分に接続されるシールドコネクタは、例えば図14(a)に示されるようにシールド電線Wの芯線Waと接続される内導体端子301と、シールド電線Wのシールド導体Wdと接続されると共に内導体端子301の外周を覆って電磁的にシールドするための外導体端子101と、これら内導体端子301と外導体端子101の間に設けられる所定の誘電率を有する誘電体201とが備えられている。
【0005】
このような構成のシールドコネクタ400にシールド電線Wを接続する際には、先ず、図14(b)に示されるようにシールド電線Wの絶縁体WbとシースWeを剥ぎ取って芯線Waおよびシールド導体Wdを露出させ、その露出させた芯線Waにシールドコネクタ400の内導体端子301の圧着用バレル301aを圧着する。
【0006】
そして、外導体端子101の嵌合部101a内に予め収容された誘電体201に、内導体端子301を挿入して、シールド電線Wのシールド導体Wd端末とシースWe端末を外導体端子101のシールド導体圧着用バレル101bとシース圧着用バレル101c上に載置する。そして、外導体端子101のシールド導体圧着用バレル101bとシース圧着用バレル101cにてシールド導体Wd端末とシースWe端末を圧着する。
【0007】
通常、このような外導体端子101とシールド電線Wの圧着は、図14(b)に示されるような帯板状の端子キャリア100に外導体端子101を複数連設された状態のまま間欠的に移動して行われようになっている。
【0008】
この場合、端子キャリア100に開口形成されたパイロット穴100bは、外導体端子101の嵌合部101a、シールド導体圧着用バレル101b、シース圧着用バレル101cの折り曲げ加工の際の位置決めに用いられる。また、同じく端子キャリア100に開口形成された長穴100aは外導体端子101の折り曲げ加工の際や、外導体端子101とシールド電線Wの圧着加工の際に、端子キャリア100を間欠的に移動させるのに用いられる。そして、シールド電線Wに圧着された外導体端子101は、連結部100dを切断することにより端子キャリア100から切り離される。尚、本発明に関連する先行技術文献としては下記特許文献が挙げられる。
【0009】
【特許文献1】特開平9−148039号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したような外導体端子101の嵌合部101a内に予め収容された誘電体201への内導体端子301の挿入は、端末に内導体端子301が接続されたシールド電線Wを作業者が手で持って行っていたため、圧着の際のシールド導体圧着用バレル101bに対するシールド導体Wd端末の適正な位置と、シース圧着用バレル101cに対するシースWe端末の適正な位置がずれてしまう場合があった。
【0011】
近年、シールドコネクタ400の更なる小型化のため、図14(b)されるように外導体端子101の嵌合部101aとシールド導体圧着用バレル101bとの間の隙間P1およびシールド導体圧着用バレル101bとシース圧着用バレル101cとの間の隙間P2が狭くなるように外導体端子101の全長を短く設計したものがあり、このような外導体端子101に対してシールド電線W端末を適正な位置へ位置合わせすることが困難であった。
【0012】
そこで本発明が解決する課題は、圧着の際の圧着端子と電線端末との位置合わせを精度良く行うことができる端子圧着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明は、一定方向に間欠的に移動される帯板状の端子キャリアの一側縁に等間隔に連設され、基端側に開放状態の圧着用バレルを有する圧着端子に電線端末を圧着する端子圧着装置において、前記端子キャリアの圧着端子の連設部位よりずらした部位に位置決め用パイロット穴を設け、該パイロット穴に位置決めピンを挿入して前記端子キャリアを位置決め固定する端子キャリア位置決め固定手段と、前記端子キャリアの圧着端子側とは反対側に位置して前記位置決め固定された端子キャリアの圧着端子に向けて前記電線端末を前進動させる電線端末供給手段と、前進動された前記電線端末が前記圧着端子の圧着用バレルの所定の位置に供給されると該電線端末の前進動を停止させる電線停止手段とを備えたことを要旨とするものである。
【0014】
この場合、前記電線停止手段により停止された前記電線を把持する電線把持手段を備えた構成にすると良い。また、前記位置決め用パイロット穴は1つの圧着端子に対して2つずつ前記端子キャリアに設けられ、この位置決め用パイロット穴に挿入される前記位置決めピンが前記端子位置決め固定手段に2つ設けられている構成にすると良い。
【0015】
更に、前記端子キャリア位置決め固定手段には、前記位置決めピンを有する位置決め固定アームが設けられている構成や、前記電線端末供給手段には、先端に前記電線端末を挟持する電線端末挟持アームが設けられている構成にすると良い。また、前記電線停止手段は、前記端子キャリア位置決め固定手段の後端面に前進動された前記電線端末供給手段の前端面が当接される構成となっていると良い。
【0016】
更に、前記電線は、芯線と、その芯線の外側を覆う絶縁体と、その絶縁体の外側を覆うシールド導体と、更にそのシールド導体の外側を覆うシースを有するシールド電線であり、該シールド電線の芯線とシールド導体が露出され、その露出された芯線に内導体端子が接続された状態のシールド電線が前記電線端末供給手段により前進動される構成にすると良い。そして、前記圧着端子は前記シールド電線のシールド導体およびシースに圧着されるシールド導体圧着用バレルとシース圧着用バレルを有した外導体端子である構成にすると良い。
【発明の効果】
【0017】
上記構成を有する本発明によれば、端子キャリアの圧着端子の連設部位よりずらした部位に位置決め用パイロット穴を設け、該パイロット穴に位置決めピンを挿入して端子キャリアを位置決め固定する端子キャリア位置決め固定手段と、端子キャリアの圧着端子側とは反対側に位置して位置決め固定された端子キャリアの圧着端子に向けて電線端末を前進動させる電線端末供給手段と、前進動された電線端末が圧着端子の圧着用バレルの所定の位置に供給されると該電線端末の前進動を停止させる電線停止手段とを備えているので、圧着端子の圧着用バレルと電線端末との位置合わせを精度良く行うことができる。これにより圧着端子の圧着用バレルに対する電線端末の適正位置がずれてしまうことが防止される。
【0018】
したがって、本発明を例えば図14(b)に示したような外導体端子101の嵌合部101a内に予め収容された誘電体201へ、シールド電線W端末に接続された内導体端子301の挿入に適用すれば、圧着の際のシールド導体圧着用バレル101bに対するシールド導体Wd端末の適正な位置と、シース圧着用バレル101cに対するシースWe端末の適正な位置がずれてしまうことが防止される。
【0019】
この場合、電線停止手段により停止された電線を把持する電線把持手段を備えた構成にすれば、圧着端子に位置合わせされた電線をその状態で保持することができる。また、位置決め用パイロット穴は1つの圧着端子に対して2つずつ端子キャリアに設けられ、この位置決め用パイロット穴に挿入される位置決めピンが端子位置決め固定手段に2つ設けられている構成にすれば、端子キャリアを端子キャリア位置決め固定手段により精度良く固定することができる。
【0020】
更に、端子キャリア位置決め固定手段には、位置決めピンを有する位置決め固定アームが設けられている構成にすれば、簡便に端子キャリアを位置決め固定することができる。また、電線端末供給手段には、先端に電線端末を挟持する電線端末挟持アームが設けられている構成にすれば、簡便に電線端末を圧着端子に向けて前進動させることができる。
【0021】
そして、電線停止手段は、端子キャリア位置決め固定手段の後端面に前進動された電線端末供給手段の前端面が当接される構成となっていれば、簡便に電線端末供給手段を所定の位置で停止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明に係る端子圧着装置の実施の形態について図面を参照して説明する。尚、以下の説明においては、図1に示される端子圧着装置の左側方向を前として説明する。
【0023】
図1は本発明に係る端子圧着装置1の概略構成を示した側面図である。図示されるように端子圧着装置1には、左側から順に端子圧着手段10、電線把持手段20、端子キャリア位置決め固定手段30、電線端末供給手段40が備えられている。
【0024】
端子圧着手段10は端子圧着装置1のフレーム2の前方部に設けられており、上方にクリンパ11,12、下方にアンビル13,14が備えられている。端子圧着装置1のフレーム2の後方部には、台座4が固定されている。この台座4の上面にはスライダ5が設けられており、このスライダ5の2つヘッド6,6には端子キャリア位置決め固定手段30のステージ31を上下に移動させるステージ昇降手段7が固定されている。
【0025】
このスライダ5により端子キャリア位置決め固定手段30のステージ31は台座4上においてステージ昇降手段7と共に端子圧着手段10方向に前後進動可能になっている。また、ステージ昇降手段7のハンドル8を回動させることで、ステージ昇降手段7のロッド9,9に固定された端子キャリア位置決め固定手段30のステージ31は昇降動させられる。
【0026】
端子キャリア位置決め固定手段30のステージ31上面にはスライダ32が設けられており、このスライダ32のヘッド33に電線端末供給手段40が着脱可能に設けられている。このスライダ32により電線端末供給手段40はステージ31上において端子圧着手段10方向に前後進動可能になっている。また、端子圧着手段10と端子キャリア位置決め固定手段30との間には、後述する電線把持手段20が設けられている。
【0027】
端子圧着手段10は、図2に示されるように複数の外導体端子101が連設された端子キャリア100が載置される端子キャリア載置台15と、外導体端子101のシールド導体圧着用バレル101bおよびシース圧着用バレル101cに圧着加工を施すクリンパ11,12とアンビル13,14が備えられている。
【0028】
端子キャリア載置台15には図示しない端子キャリア間欠移動手段が設けられており、端子キャリア100に開口形成された長穴100aが用いられて、端子キャリア100は図中の矢印方向に間欠的に移動されるようになっている。また、端子キャリア100の外導体端子101が連設された部位には、外導体端子101の嵌合部101a、シールド導体圧着用バレル101b、シース圧着用バレル101cの折り曲げ加工の際の位置決めに用いられるパイロット穴100bが開口形成されている。
【0029】
更に、端子キャリア100の外導体端子101の連設部位よりずらした部位には、位置決め用パイロット穴100cが開口形成されている。この位置決め用パイロット穴100cは端子キャリア位置決め固定手段30により端子キャリア100を端子キャリア載置台15に位置決め固定する際に用いられる。また、外導体端子101が圧着加工される位置にあるときのその両側の位置決め用パイロット穴100c,100cに対応して、端子キャリア載置台15の上面にはピン挿入穴15a,15aが形成されている。このピン挿入穴15a,15aには後述する端子キャリア位置決め固定手段30の位置決めピン34b,34bが、位置決めパイロット穴100c,100cを介して挿入される。
【0030】
外導体端子101は端子キャリア100に連結部100dを介して等間隔になるように連結されている。この連結部100dが図示しない連結部切断手段により切断されると、外導体端子101は端子キャリア100から切り離される。尚、外導体端子101の嵌合部101a内には、図示されるように予め誘電体201が収容されている。
【0031】
図3は端子圧着手段10の端子キャリア載置台15、端子キャリア位置決め固定手段30、電線端末供給手段40の外観斜視図を示しており、図4は図3の端子キャリア位置決め固定手段30と電線端末供給手段40の分解斜視図を示している。
【0032】
図示されるように端子キャリア位置決め固定手段30は、2本の位置決め固定アーム34a,34aを備えている。位置決め固定アーム34aは、位置決め固定アーム台34上面の左右両側において、外導体端子101方向に向けて延設されている。
【0033】
この位置決め固定アーム34aの先端の下面には下方に突出して設けられた位置決めピン34bが設けられている。この位置決めピン34bを上述した端子キャリア100の位置決め用パイロット穴100cを介して端子キャリア載置台15のピン挿入穴15aに挿入することで、端子キャリア100を端子キャリア載置台15上に位置決め固定することができる。
【0034】
また、位置決め固定アーム台34は、端子キャリア位置決め固定手段30のステージ31の前端に設けられた固定台35にネジ36により固定されている。固定台35の上面にはガイドピン35aが設けられており、ネジ止め固定された位置決め固定アーム台34が固定台35上で回ってしまうことが防止されている。
【0035】
また、位置決め固定アーム台34の上面の中央には円弧形状に切り欠かれた切欠部34cが形成されており、図10にも示されるように前進動する電線端末供給手段40の電線端末挟持アーム41と位置決め固定アーム台34が干渉しないようになっている。更に、位置決め固定アーム台34の後端の上方には、同じく図10に示されるように前進動する電線端末挟持アーム41の基端部41aの前端面に形成された凸面41bが当接する凹面34dが形成されている。
【0036】
このような端子キャリア位置決め固定手段30のステージ31上面に設けられたスライダ32のヘッド33には、固定台42がネジ43,43によりネジ止め固定されている。固定台42の上面には2つのガイドピン42a,42aが設けられており、電線端末供給手段40がこの固定台42に脱着可能に取り付けられている。
【0037】
図5は電線端末供給手段40の分解斜視図を示している。図示されるように、電線端末供給手段40は、電線端末挟持アーム41とアーム固定台44を備えている。電線挟持アーム41は、略T字形状を有しており、図6の拡大図にも示されるようにやや下方に垂れ下がった先端に切欠形成された電線端末挟持部41cにシールド電線Wの芯線Waを挟持することが可能になっている。
【0038】
この場合、シールド電線Wは、芯線Waとその外周を覆う絶縁体Wbとからなる信号線の外周をシールド導体Wdで覆い、更にそのシールド導体Wdの外周を絶縁性のシースWeで覆った同軸の構造になっている。図示されるように、芯線Waには予め内導体端子301の圧着用バレル301aが圧着されており、電線端末挟持アーム41の電線端末挟持部41cは圧着用バレル301aと絶縁体Wb端末との間の芯線Waを挟持する。
【0039】
また、電線端末挟持アーム41の基端部41aの左右前端には、前方に向かって突出形成された凸面41bが形成されている。この電線端末挟持アーム41は、ネジ45,45によりアーム固定台44の前端面にネジ止め固定される。
【0040】
アーム固定台44には、図7(a)にも示されるようにシールド電線Wが挿通される挿通穴44aが前後方向に貫通して形成されている。挿通穴44aは下方が逆テーパ状に開口しており、シールド電線Wを下方から挿通し易いようになっている。
【0041】
アーム固定台44の後方にはシールド電線Wの途中位置を挟持する平板形状の電線挟持ガイド46,46が設けられている。この電線挟持ガイド46,46はアーム固定台44の側方から挿入されるようになっている。電線挟持ガイド46の先端は下方に傾斜したテーパ面を有した挟持部46aを有している。また、電線挟持ガイド46の略中央には、長穴46bが形成されている。そして、電線挟持ガイド46の後端には外側に突出した凸部46c,46cが形成されており、この凸部46cの内側にコイルバネ47,47が収容されるようになっている。
【0042】
図示されるようにコイルバネ47を組み込んだ電線挟持ガイド46の長穴46bに、アーム固定台44の上面からネジ48を挿通させ、ガイド固定ブロック49にネジ止めすることで、電線挟持ガイド46はアーム固定台44に収容される。
【0043】
図7(a)は電線端末供給手段40の上面図、図7(b)は図7(a)のアーム固定台44のA−A線における断面図を示している。図7(b)に示されるように、電線挟持ガイド46,46の左右側面を作業者が指で挟み持ち、コイルバネ47,47の付勢に反して電線挟持ガイド46,46の電線挟持部46a,46aを内側に移動させることで、電線Wが電線挟持部46a,46aの間に挟持される。この場合、作業者が電線挟持ガイド46,46の左右側面を挟み持った指を離すと、コイルバネ47,47の付勢により電線挟持ガイド46,46は外側に押し戻され、挟持された電線Wが電線挟持部46a,46aから開放される。
【0044】
図8は電線把持手段20の外観斜視図を示している。図示されるようにシリンダ21の上方に設けられた左右のチャック部21a,21aの先端には、電線把持爪22,22がネジ23,23により固定されている。この場合、電線把持爪22,22は同形状を有しており、互いに対向するように設けることで、図11および図12にも示されるように先端の爪部22a,22a間にシールド電線Wを把持することができるようになっている。
【0045】
また、電線把持手段20が備えるシリンダ21には継ぎ手24,24を介してエア配管25,25が取り付けられている。エア配管25,25には、圧縮エアの送出先を切り換えることが可能な図示しないシリンダ用バルブが接続されており、このシリンダ用バルブの切り換え動作によって、電線把持爪22,22を開いたり閉じたりすることができるようになっている。
【0046】
次に、図3および図9〜図13を参照して上述した端子圧着装置1を用いた端子圧着方法について説明する。先ず、図1および図3に示されるように、台座4上面に設けられたスライダ5により端子キャリア位置決め固定手段30をステージ昇降手段7と共に端子圧着手段10方向に前進動させ、スライダ5前端位置で停止させる。次にステージ昇降手段7のハンドル8の回動により端子キャリア位置決め固定手段30を下降させる。
【0047】
図9はこのときの状態を示しており、位置決め固定アーム34a,34aの先端の位置決めピン34b、34bが、端子キャリア台15のピン挿入穴15a,15aに位置合わせされた端子キャリア100の位置決め用パイロット穴100c,100cに挿入され、端子キャリア100は端子キャリア載置台15に位置決め固定される。
【0048】
次に、図10に示すように、電線端末供給手段40をステージ31上面に設けられたスライダ32により前進動させ、電線端末挟持アーム41の凸面41bが位置決め固定アーム台34の後端の凹面34dに当接させることで、電線端末供給手段40はその前進動が停止される。
【0049】
このとき、シールド電線Wの端末に接続された内導体端子301は外導体端子101内の誘電体201に収容されると共に、シールド電線Wのシールド導体Wd端末およびシースWe端末が、外導体端子101のシールド導体圧着用バレル101b上およびシース圧着用バレル101c上の適正な位置に配置される。
【0050】
次に、図11に示されるように電線把持手段20の電線把持爪22,22によりこの状態のシールド電線Wを把持して固定する。そして、電線端末挟持アーム41およびアーム固定台44によるシールド電線Wの挟持を解除して、電線端末供給手段40を取り出す。具体的には、図中の矢印に示されるように、電線端末供給アーム41が電線Wや電線把持手段20と干渉しないように電線端末供給手段40を固定台42から持ち上げつつ後進動させる。
【0051】
その後、図12に示されるように、端子キャリア位置決め固定手段30によって端子キャリア100を端子キャリア載置台15に位置決め固定した状態のまま、端子圧着手段10のクリンパ11,12およびアンビル13,14により外導体端子101のシールド導体圧着用バレル101bおよびシール圧着用バレル101cに圧着加工を施す。そして、圧着後の外導体端子101を端子キャリア100から連結部100dを切断して切り離すと、図13に示されるようなシールドコネクタ400が得られる。
【0052】
以上説明したように本発明に係る端子圧着装置1によれば、端子キャリア100の外導体端子101の連設部位よりずらした部位に位置決め用パイロット穴100c,100cを設けて、その位置決め用パイロット穴100c,100cに端子キャリア位置決め固定手段30の位置決めピン34b,34bを挿入して端子キャリア100を位置決め固定するので、確実に端子キャリア100が端子キャリア固定台15上に位置決め固定される。
【0053】
また、このように位置決め固定された端子キャリア100の外導体端子101に向けて、内導体端子301が接続されたシールド電線Wを電線端末供給手段40により前進動させるので、外導体端子101に予め収容された誘電体201に確実に内導体端子301を挿入することができる。
【0054】
更に、前進動されたシールド電線Wのシール導体Wd端末およびシースWe端末が外導体端子101のシールド導体圧着用バレル101bおよびシース圧着用バレル101cの所定の位置に供給されるとシールド電線W端末の前進動を停止させるので、外導体端子101とシールド電線W端末の圧着のための位置合わせを精度良く行うことができる。これにより外導体端子101のシールド導体圧着用バレル101bおよびシース圧着バレル101cに対するシールド電線Wのシールド導体Wd端末およびシースWe端末の適正位置がずれてしまうことが防止される。
【0055】
また、上述したシールド電線W端末が外導体端子101の圧着用バレル101b,101cの所定の位置に供給されるとそのシールド電線Wの前進動を停止させる手段として、電線端末挟持アーム41の凸面41bが位置決め固定アーム台34の後端の凹面34dに当接させるという構成にしたので、簡便に精度良くシールド電線W端末の前進動を所定の位置に停止させることができる。
【0056】
この場合、前進動が停止されたシールド電線Wを把持する電線把持手段20を備えているので、外導体端子101に位置合わせされたシールド電線Wをその状態で保持することができる。これにより、電線端末挟持アーム41およびアーム固定台44によるシールド電線Wの挟持を解除してもこの状態が保持される。
【0057】
尚、上記実施の形態は本発明を何ら限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施することができる。例えば、上記実施の形態では芯線Waとその外周を覆う絶縁体Wbとからなる信号線を一本有するシールド電線Wに適用した例について説明したが、このような信号線を多数本有する多極シールド電線にも適用可能であり、信号線の数は限定されない。
【0058】
また、シールド電線W端末が外導体端子101の圧着用バレル101b,101cの所定の位置に供給されるとそのシールド電線Wの前進動を停止させる手段として、電線端末挟持アーム41の凸面41bが位置決め固定アーム台34の後端の凹面34dに当接させるという構成について説明したが、このようなシールド電線Wの前進動を所定の位置で停止させる電線停止手段としては種々なる構成のものが適用可能であり、上述した実施の形態には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る端子圧着装置の概略構成を示した側面図である。
【図2】図1の端子圧着装置が備える端子圧着手段の外観斜視図である。
【図3】図1の端子圧着装置が備える端子圧着手段、端子キャリア位置決め固定手段、電線端末供給手段の外観斜視図である。
【図4】図3の端子キャリア位置決め固定手段、電線端末供給手段の分解斜視図である。
【図5】図4の電線端末供給手段の分解斜視図である。
【図6】電線端末供給手段が備える電線端末供給アームの拡大図である。
【図7】(a)は電線端末供給手段の上面図、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図8】図1の端子圧着装置が備える電線把持手段の外観斜視図である。
【図9】端子キャリア位置決め固定手段の動作の手順を示した外観斜視図である。
【図10】電線端末供給手段の動作の手順を示した外観斜視図である。
【図11】電線把持手段の動作の手順を示した外観斜視図である。
【図12】端子圧着手段の動作の手順を示した外観斜視図である。
【図13】図1の端子圧着装置により製造されたシールドコネクタの外観斜視図である。
【図14】(a)は従来用いられてきたシールドコネクタの外観斜視図、(b)は(a)の外導体端子にシールド電線を供給する手順を示した図である。
【0060】
1 端子圧着装置
7 ステージ昇降手段
10 端子圧着手段
11,12 クリンパ
13,14 アンビル
15 端子キャリア載置台
20 電線把持手段
22 電線把持爪
30 端子キャリア位置決め固定手段
34a 位置決め固定アーム
34b 位置決めピン
34c 切欠部
34d 凹面
40 電線端末供給手段
41 電線端末挟持アーム
41b 凸面
41c 電線端末挟持部
100 端子キャリア
100c 位置決め用パイロット穴
101 外導体端子
101b シールド導体圧着用バレル
101c シース圧着用バレル
201 誘電体
301 内導体端子
400 シールドコネクタ
W シールド電線
Wa 芯線
Wb 絶縁体
Wd シールド導体
We シース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に間欠的に移動される帯板状の端子キャリアの一側縁に等間隔に連設され、基端側に開放状態の圧着用バレルを有する圧着端子に電線端末を圧着する端子圧着装置において、前記端子キャリアの圧着端子の連設部位よりずらした部位に位置決め用パイロット穴を設け、該パイロット穴に位置決めピンを挿入して前記端子キャリアを位置決め固定する端子キャリア位置決め固定手段と、前記端子キャリアの圧着端子側とは反対側に位置して前記位置決め固定された端子キャリアの圧着端子に向けて前記電線端末を前進動させる電線端末供給手段と、前進動された前記電線端末が前記圧着端子の圧着用バレルの所定の位置に供給されると該電線端末の前進動を停止させる電線停止手段とを備えたことを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
前記電線停止手段により停止された前記電線を把持する電線把持手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の端子圧着装置。
【請求項3】
前記位置決め用パイロット穴は1つの圧着端子に対して2つずつ前記端子キャリアに設けられ、この位置決め用パイロット穴に挿入される前記位置決めピンが前記端子位置決め固定手段に2つ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の端子圧着装置。
【請求項4】
前記端子キャリア位置決め固定手段には、前記位置決めピンを有する位置決め固定アームが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の端子圧着装置。
【請求項5】
前記電線端末供給手段には、先端に前記電線端末を挟持する電線端末挟持アームが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の端子圧着装置。
【請求項6】
前記電線停止手段は、前記端子キャリア位置決め固定手段の後端面に前進動された前記電線端末供給手段の前端面が当接される構成となっていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の端子圧着装置。
【請求項7】
前記電線は、芯線と、その芯線の外側を覆う絶縁体と、その絶縁体の外側を覆うシールド導体と、更にそのシールド導体の外側を覆うシースを有するシールド電線であり、該シールド電線の芯線とシールド導体が露出され、その露出された芯線に内導体端子が接続された状態のシールド電線が前記電線端末供給手段により前進動されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の端子圧着装置。
【請求項8】
前記圧着端子は前記シールド電線のシールド導体およびシースに圧着されるシールド導体圧着用バレルとシース圧着用バレルを有した外導体端子であることを特徴する請求項6また7に記載の端子圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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