説明

端子接続構造

【課題】アルミ電線の端部を端子内側に電食などの不具合無く、電気的および機械的に十分高い信頼性で接合できるようにすること。
【解決手段】本端子接続構造は、端子主部と、端子片とを有し、前記端子主部にアルミ電線の端部が接続される端子接続構造であって、前記端子は、少なくとも前記端子主部の表面がアルミ面であり、このアルミ面に前記端部がヒュージング/超音波接合され、このヒュージング/超音波接合された前記端部が密封部材により外部から密封されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端部を端子に半田付けする端子接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線には軽量性とコスト面からアルミ電線が使用されることがある。また、端子の素材には、電気特性に優れる銅合金が使用されることがある。
【0003】
こうしたアルミ電線を銅合金製端子に半田接合する場合、半田接合が困難な上に接続されても、互いにイオン化傾向が異なる異種金属であるために、電食などの不具合が起きる場合もある。
【0004】
そこで これを防止するため合金銅端子面にアルミ電線を銅とアルミの中間程度のイオン化傾向をもつ半田で、半田接合することが行われている。
【0005】
この接合方法では アルミ電線の周りに半田合金層が形成され、電食を防ぐ構造になっている。
【0006】
しかし、撚り線などの場合、全ての撚り線の周りに一様にボイドなく、半田付けすることが難しい。
【0007】
また、この接合を半田ではなく、例えば特許文献1のようにヒュージング/超音波接合により行う場合もある。
【0008】
しかし、ヒュージング/超音波接合では、アルミ電線は端子に対しての接合が点接合的となって、電気的な接合は十分なされても、機械的な強度を充分得た状態に接合できないことがある。
【0009】
またヒュージングを銅合金に対して行うとアルミと銅合金が接触し、電食が起こり易いという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011−034879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、アルミ電線の端部を端子に電食などの不具合無く、電気的および機械的に十分高い信頼性で接合できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、
本発明の端子接続構造は、端子主部と、端子片とを有し、前記端子主部にアルミ電線の端部が接続される端子接続構造であって、前記端子は、少なくとも前記端子主部の表面がアルミ面であり、このアルミ面に前記端部がヒュージング/超音波接合され、このヒュージング/超音波接合された前記端部が密封部材により外部から密封されていることを特徴とする。
【0013】
なお、「ヒュージング/超音波接合」は、ヒュージング接合または超音波接合の意味であり、以下、同様である。
【0014】
また、「電線端部が外部から密封されている」とは、電線端部とそれに連続するアルミ電線の他の電線部分も前記「外部」に該当し、この外部からも密封されていることであり、当該他の電線部分から当該電線端部に水や空気その他が浸入することができない密封の意味である。
【0015】
本発明の一態様として、前記端子は、アルミ層と銅系金属層との少なくとも2層を有する板材を変形加工することにより、アルミ層を一部または全面に有する端子主部と、この端子主部に連成した端子片とを有する端子に作られており、前記端部は、前記端子主部の表面上にヒュージング/超音波接合されている。
【0016】
本発明の一態様として、前記端子において、少なくともアルミと銅系金属とが2層になって露出する界面が、半田、鍍金、樹脂等で覆われている。
【0017】
本発明の一態様として、当該端子は、その表面に亜鉛90wt%以上、コバルトが1−10wt%からなる亜鉛・コバルト合金が鍍金されており、その鍍金の上から前記端部がヒュージング/超音波接合されている。
【0018】
本発明の一態様として、当該端子は、アルミ系材からなる端子主部と、銅系材からなる端子片とを固相接合して構成し、この端子主部表面に前記端部がヒュージング/超音波接合され、前記ヒュージング/超音波接合された前記端部が密封部材により外部から密封されている。
【0019】
本発明の一態様として、前記アルミ系材からなる端子主部と銅系材からなる端子片とを固相接合した部位の周囲を防水構造とする。
【0020】
本発明の一態様として、前記密封部材が、導電性または絶縁性部材である。
【0021】
本発明の一態様として、前記ヒュージング/超音波接合された部分に半田付けがされ、この半田付け部分が、前記密封部材として前記端部を外部から密封している。
【0022】
なお、前記端子主部と前記端子片は、単一部材から構成されてもよいし、別々の部材から構成されてもよい。なお、別々の部材から構成された場合においては、それらは、一体化されてもよいし、一体化されなくてもよい。
【0023】
また、前記2層を形成する工法は、特に限定されるものではなく、例えば、メッキ、溶射、拡散接合、ロウ付け、固相、冷間鍛造、などを例示することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、端子に電食などの不具合が無く、電気的にも機械的にも強固で信頼性に優れた端子接続構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施形態において、アルミ電線の端部を端子内側に挿入する前の状態を示す側面断面図である。
【図2】図2は、アルミ電線の端部を端子内側に挿入した状態を示す側面断面図である。
【図3】図3は、図2に対応する斜視図である。
【図4】図4(a)は、端子接続構造の製造方法において図4のアルミ電線の端部を板材上でヒュージング/超音波接合した状態を示す平面図、図4(b)は、図4(a)の側面断面図である。
【図5】図5(a)は、図4(a)でヒュージング/超音波接合したアルミ電線の端部を板材上で半田付けした状態を示す平面図、図5(b)は図5(a)の側面断面図である。
【図6】図6(a)は、板材を筒状に折り曲げた状態を示す平面図、図6(b)は図6(a)の側面断面図である。
【図7】図7(a)は、筒状に折り曲げた板材の一端側を押し潰した状態を示す平面図、図7(b)は図7(a)の側面断面図である。
【図8】図8(a)は、図7(a)における板材の一端側に端子穴を形成した状態を示す平面図、図8(b)は図8(a)の側面断面図である。
【図9】図9(a)は、端子接続構造の別の製造方法においてアルミ電線の端部を板材上でヒュージング/超音波接合した状態を示す平面図、図9(b)は、図9(a)の側面断面図である。
【図10】図10(a)は、板材の一端側をアルミ電線の端部が載置されている他端側上に折り畳んだ状態を示す平面図、図10(b)は図10(a)の側面断面図である。
【図11】図11(a)は、折り畳まれた板材の一端側を押し潰した状態を示す平面図、図11(b)は図11(a)の側面断面図である。
【図12】図12(a)は、図11(a)における板材の一端側に端子穴を形成した状態を示す平面図、図12(b)は図12(a)の側面断面図である。
【図13】図13(a)は、端子接続構造の更に別の製造方法においてアルミ電線の端部にアルミ円筒体を被せ付けた状態を示す斜視図、図13(b)は図13(a)の側面断面図である。
【図14】図14は、深絞りする前の板材の側面図である。
【図15】図15は、図14の板材を有底円筒体形状に深絞りした状態を示す断面図である。
【図16】図16は、図15の有底円筒体形状に深絞りした板材の開口に図13で示すアルミ電線の端部を挿入した状態を示す側面断面図である。
【図17】図17は、図16でアルミ電線端部が挿入されている有底円筒体の一端側を押し潰した状態を示す断面図である。
【図18】図18は、図17の一端側を押し潰され有底円筒体の該一端側に端子穴を形成した状態を示す断面図である。
【図19】図19(a)(b)(c)は、板材の各変形例を示す断面図である。
【図20】図20(a)は、板材上にアルミ電線をヒュージング/超音波接合した状態を示す平面図、図20(b)は図20(a)の側面断面図である。
【図21】図21(a)は、アルミ系材と銅系材それぞれの円柱状部材の端面を付き合わせた状態を示す図、図21(b)は両円柱状部材をプレスした状態を示す図、図21(c)は端子主部側の両側を立ち上げ加工した状態を示す図である。
【図22】図22(a)は、図21(c)から防水カバーを付けた状態を示す図、図22(b)は図22(a)からプレスした状態を示す図、図22(c)はアルミ系板状部を両側から折り曲げた状態を示す図である。
【図23】図23(a)は端子主部用と端子片用の板状部材が重ね合わせてなる端子接続構造を示す図、図23(b1)はL形の端子主部と端子片とが重ね合わさった端子接続構造を示す図、図23(b2)はL形の端子片と端子主部とを重ね合わさった端子接続構造を示す図、図23(c)は、端子主部と端子片とが対向した端子接続構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係る端子接続構造およびその製造方法を説明する。
【0027】
図1を参照して、この構造に使用する電線および端子を説明する。アルミ電線1は、複数の素線から構成される。アルミ電線1は、その端部1aがコンパクト化されている。端部1aのコンパクト化には、図示しないが、上下一対の金型が使用される。電線端部1aは、この両金型の対向する金型面それぞれの半円筒形の凹部間に入れられ、次いで両金型の型締めが行われる。この型締めの状態で、両金型間に加熱用の電流が流される。これにより、端部1aは、素線同士がヒュージング接合されて電線径より細い径にコンパクト化される。なお、このヒュージング接合に限定されず、例えば、接合する金属同士をくっつけて圧力をかけ、その圧力をかけた部分に超音波振動を加えることで、両金属同士の界面を細かく振動させ、金属の原子同士を固相で接合する、いわゆる超音波接合でもよい。以下、ヒュージング接合と超音波接合とを含めて、ヒュージング/超音波接合ということにする。
【0028】
端子3は、筒状の端子主部3aと、これに連成する端子片3bとを有する。端子片3bには、端子穴3cが形成されている。端子3は、一枚の板材を折り曲げ加工や深絞り加工などの変形加工により形成されたものである。
【0029】
アルミ電線1の端部1aは、図1に示すように、この端子3の端子主部3aに対向した状態から、矢印方向へ、図1から図2で示すように端子3の端子主部3aの開口3dからその内側に挿入されている。この挿入状態は図3に斜視図で示される。
【0030】
なお、図3で示すように、アルミ電線1の端部1aの外周に、フラックス溜りとしての凹部1bが形成されてもよい。この凹部1bが形成されていると、アルミ電線1の端部1aが、端子主部3aの開口3dに挿入され、その後、フラックス、次いで半田が導入されて半田付けされる際、フラックスが凹部1bに保持されることができるので、アルミ電線1の端部1aは端子3の内側に確実に半田付けされる。こうして端子接続構造5が得られる。図2、図3では、図解の都合で半田の導入状態の図示は略されている。
【0031】
アルミ電線1の端部1aは、端子3の端子主部3aの開口3dに挿入される前に、半田粉あるいは半田ペーストが混ぜ込まれた状態で、端子主部3aの開口3dに挿入されてもよい。こうすると、端子3と電線端部1aとの間の接触抵抗が半田により低減され、その結果、電気抵抗が小さくなり、また、電気抵抗が小さいことで発熱も抑制されるなど、端子接続構造としての品質が大きく向上する。
【0032】
以上の端子接続構造では、電線端部が挿入される前に端子としては成形済みのものが使用されるが、一枚の板材上にまず電線端部をヒュージング/超音波接合し、次いで、当該板材が変形加工して端子形状に成形されてもよい。
【0033】
そのような端子接続構造の製造例を図4ないし図8を参照して説明する。
【0034】
まず、図4(a)(b)で示すように、平面視矩形形状の板材7の一端側寄り上にアルミ電線1の端部1aがヒュージング/超音波接合される。ヒュージング/超音波接合状態の具体構成は図示が略される。板材7は、アルミ層7a、銅層7b、および、これら両層間の異種金属による電食緩和層7cを有する。なお、表面に錫等の鍍金層が形成されてもよい。アルミ電線1の端部1aはヒュージング/超音波接合によりコンパクト化(縮径)されている。
【0035】
また、このヒュージング/超音波接合では、温度が上昇してアルミ電線1の端部1aの表面の酸化が進むことがある。この酸化層は絶縁層であるので、ヒュージング/超音波接合のための電流がさらに通りにくくなって接合に必要な温度にまで上昇しなくなって、接合不良が引き起こされる可能性がある。
【0036】
そこで、このヒュージング/超音波接合は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行い、アルミ電線1の端部1aの表面の酸化を防止するのがよい。
【0037】
また、このヒュージング/超音波接合により、アルミ電線1の接合部1cは、電気的に板材7に強く接合しているが、機械的には板材7に対しての接合強度は弱く、そのため、引っ張りや振動などによりアルミ電線1の接続端部1aが板材7の表面から剥離するおそれがある。
【0038】
そこで、ヒュージング/超音波接合の後は、図5で示すように、アルミ電線1の端部1aは、板材7上で半田付けにより半田9で覆い、この半田9を密封部材として外部から密封状態とする。なお、半田9は、端部1aを構成するアルミ素線周囲にも充填されることで、アルミ素線同士を半田付けする。このような状態で、前記密封状態が行われる。なお、前記密封は、電線端部1aと隣接するアルミ電線の他の電線部分も前記「外部」に該当し、この外部からも密封されている。これにより、当該他の電線部分から電線端部1aに水や空気その他が浸入することができない状態となっている。
【0039】
なお、半田9により、アルミ電線1の端部1aは、板材7の表面に高い接合強度で接合され、その機械的強度が向上する。さらに、この半田付けで、アルミ電線1の端部1aが密封されるので、その表面の酸化が防止され、該端部1aは腐食に強くなる。また、電線の回りまで、半田で覆われるので、接合部1cの抵抗値が低くなって、端子接続構造の電気的信頼性が向上する。
【0040】
なお、この半田付け方法としては、ヒュージング、トーチ付け、高周波加熱、窒素ガス等の不活性な高温ガスの吹き付け、またはハンダ漕への浸漬などが好ましい。また、半田としては線状の半田、半田ペースト、半田粉等の各種の半田を使用することが好ましい。
【0041】
なお、密封部材として、実施形態では、半田9であるが、これに限定されず、金属等の導電性部材でよく、また、導電性に限定されず、絶縁性を有する部材、例えば、絶縁性樹脂でもよい。
【0042】
次いで、図5(a)で示すように、板材7を、幅方向両側から矢印で示す同じ方向に折り曲げ、図6(a)(b)で示すように、両端が矩形に開口した筒状体11に形成する。この筒状体11の内側はアルミ層で、また、筒状体11の外側は銅層となる。
【0043】
次いで、図7(a)(b)で示すように、筒状体11の一端側11aをそのままの状態とし、その他端側11bを押し潰して該他端側開口を閉鎖することで、筒状体11を端子11の形状にする。これにより、端子11の気密性が向上する。前記一端側11aは、端子主部11aを構成し、前記他端側11bは、端子片11bを構成する。
【0044】
なお、筒状体11の内部に半田材料を予め入れた状態で半田付けを行うと、半田回りが改善される。
【0045】
次いで、図8(a)(b)で示すように筒状体11の閉鎖された前記他端側11bに、端子穴11cを形成する。こうして形成された端子11の端子主部11aの開口端面には、アルミ層と銅層との境界が現れる。この境界を、図示しないが、半田や樹脂などのシール材でシールすると、アルミ層と銅層との異種金属による電食が抑えられるようになる。
【0046】
なお、端子穴11cの内周面に銅層とアルミ層との境界が現れるので、両層間の電食を防止するため端子穴11cに挿入されるビスは、樹脂製とするか、あるいは、少なくともその外周が、例えば樹脂により構成してもよい。ワッシャがビスの頭部と銅層表面との間に挿入される場合、そのワッシャは銅または樹脂で構成するとよい。
【0047】
板材7は、図5で示すように、アルミ電線1の端部1aに対してその両側から折り曲げてもよいし図9(a)(b)で示すように、板材13は一端側13aから他端側13bへ矢印方向に折り畳んでもよい。この折り畳の構成は、図10(a)(b)で示す。さらに図11(a)(b)で示すように折り畳み開口側はそのままの状態で、折り畳み閉鎖側を押し潰して端子15形状としてもよい。この端子15形状では、端子折り畳み開口側は、端子主部15aを構成し、折り畳み閉鎖側は端子片15bを構成する。次いで、図12(a)(b)で示すように端子片15bに、端子穴15cを形成して端子接続構造17を得る。
【0048】
次に、図13ないし図18を参照して本発明のさらに他の実施形態の製造方法を説明する。図13(a)は、端部1aにアルミ筒19を被せ付けたアルミ電線1の斜視図、図13(b)は、同アルミ電線1の断面図である。図14は板材の側面図である。図13(a)(b)で示すように、アルミ電線1の端部1aに、アルミ筒19が被せ付けられている。このアルミ筒19は、アルミ電線1の端部1aに、ヒュージング/超音波接合してもよい。次に、図14で示す板材21は、図15で示すように矢印方向に深絞りされ、一端側が開口23aした有底円筒体23とされる。
【0049】
次いで、図16で示すように、この有底円筒体23に、フラックスと半田部材27を先に入れた後、アルミ電線1の端部1aを挿入する。この挿入の後、有底円筒体23の後半側を図17で示すように押し潰して、端子25の形状に形成する。この端子25は、アルミ電線1の端部1aが挿入された端子主部25aと、前記押し潰された後半部である端子片25bとからなる。そして、端子主部25aを加熱することで、フラックス、半田部材27を溶融させて、有底円筒体23内部にアルミ電線1の端部1aを半田27aで半田付けする。この端部1aは、この半田27aを密封部材として、有底円筒体23内に密封される。そして、図18で示すように端子片25bに端子穴25cが形成され、端子接続構造26を得る。
【0050】
なお、板材21は、深絞り加工されたが、インパクト加工でもよい。このインパクト加工は、図示しないが、一般的な絞り加工とは違って、材料にパンチでインパクトを与え、材料がパンチに沿って伸び上がってくる加工である。インパクト加工は、1工程成形のため、余計な金型が必要なく、金型費用を抑えることができ、また、加工速度が早く、作業時間を短縮することができる。
【0051】
なお、上記板材は、メッキで化学的に結合したタイプでもよいが、図19(a)の板材27のように、アルミ層27aが主体となり、その上側半分にクラッド部が銅層27bで構成されたエッジレイクラッドタイプの構成とか、図19(b)の板材29のように、アルミ層29aが主体となり、クラッド部が銅層29bで構成されたインレイクラッドタイプの構成とか、図19(c)の板材31のようにアルミ層31aが主体となり、その上にクラッド部として銅層31bが設けられたクラッドタイプの構成でもよい。これらアルミ層と銅層との異種金属の界面は爆着(爆発圧着)とか、FSW(摩擦攪拌溶接)などによる固相接合とすることができる。
【0052】
なお、上記端子接続構造は、袋端子形状で2重構造端子であるが、このような端子に、ヒュージング/超音波接合により、電線端部を接合した後、半田槽に浸漬して半田付けすると、以下の効果がある。すなわち、 ヒュージング/超音波接合してあるので、半田槽に浸漬しても端子は脱落せず、半田槽から引き上げるときに、接合部が動かないから、強固に半田付けすることができる。また、アルミと銅系金属との金属界面を効率的に半田で覆うことができるうえ、生産性が良く、低コストで接合を完成することができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、端子内側がアルミ、端子外側が銅系金属としたが、これに限定されず、端子内側が銅系金属、端子外側がアルミとし、端子外側にアルミ電線が接続され、端子内側に外部の銅導体が接続されたものとしてもよい。
【0054】
なお、上記実施形態の端子接続構造は単一袋状の構造であったが、これに限定されず、複数袋状の構造としてもよい。
【0055】
次に、図20を参照してさらに別の端子接続構造の製造方法を説明する。図20(a)(b)で示すように、板材40の一端側寄り上にアルミ電線1の端部1aを、ヒュージング/超音波接合する。板材40は、銅系金属製であり、その表面全体に、亜鉛をベースにした亜鉛・コバルト合金が鍍金40aされているものである。前記亜鉛は、90wt%程度であり、コバルトは1−10wt%、好ましくは、1−5wt%、より好ましくは、2−4wt%である。前記鍍金には他の金属を含んでもよい。この合金鍍金40aは、通常の亜鉛鍍金や、亜鉛・ニッケル合金鍍金、などよりも耐電食性に優れている。
【0056】
板材40は、上記のように、アルミ電線1とは異種金属である銅系金属で構成されているが、板材40の表面に前記した亜鉛・コバルト合金が鍍金40aされているので、電食を有効に防止することができる。
【0057】
板材40の鍍金40a上に電線端部1aをヒュージング/超音波接合し、その後、板材40を端子形状に変形加工し、それから半田付け接合するが、この変形加工とは異なり、板材40を先に端子形状に変形加工し、その後で、電線端部1aをヒュージング/超音波接合してもよい。なお、変形加工には、折り曲げ加工、絞り加工などがあり、これら加工は、上述の実施形態と同様であるので、その詳しい説明は略する。なお、ヒュージング/超音波接合により、アルミ電線1の接合部1cは、電気的に板材40に強く接合しているが、機械的には板材40に対しての接合強度は弱いので、ヒュージング/超音波接合の後は、アルミ電線1の端部1aを、板材40上で半田付けで接合強度を高めると共に、半田で覆うことで外部から密封状態とする。これらは、上述した実施形態と同様である。なお、この半田付けには、亜鉛系のアルミ半田が使用される。
【0058】
このように、半田により、アルミ電線1の端部1aは、板材40の表面に高い接合強度で接合され、その機械的強度が向上し、さらに、密封されることで、その表面の酸化が防止され、耐腐食性が向上することに加えて、電線の回りまで、半田で覆われるので、接合部の抵抗値が低くなって、端子接続構造の電気的信頼性が向上する。なお、この半田付け方法としては、前記実施形態と同様に、ヒュージング、トーチ付け、高周波加熱、窒素ガス等の不活性な高温ガスの吹き付け、またはハンダ漕への浸漬などを適用することができる。半田としては線状の半田、半田ペースト、半田粉等の各種の半田を使用することができる。
【0059】
また、図21を参照してさらに他の実施形態を説明する、この実施形態は、冷間圧接で作成した端子接続構造である。すなわち、図21(a)で示すように、共に同じ直径で棒状に延びるアルミ系円柱体50と銅系円柱体52との端面50a,52aを同軸上で矢印方向に突き当て面接触状態とし、図21(b)で示すように、その端面50a,52a同士を常温下で強く押圧して接合するいわゆる冷間圧接法で接合し、次いで、図21(c)で示すようにこれらを矢印方向にプレスで押し潰して、図21(d)で示すようにアルミ系板状部50と銅系板状部52とからなる全体が平板状体とする。この場合、アルミ系板状部50は、その両側を矢印方向に折り曲げるために、その幅が銅系板状部52より広くなるように押し潰す。次いで、図21(e)で示すようにアルミ系板状部50を両側から同方向に折り曲げ、銅系板状部52に端子穴52bを形成して、図21(f)で示すように、端子54を成形する。この端子54は、アルミ系板状部50が、両側に折り曲げ壁50bを有する端子主部を構成し、銅系板状部52が端子穴52bを有する端子片を構成し、図4ないし図6と同様にして、図示略の電線端部がアルミ系板状部50からなる端子主部上にヒュージング接合/超音波接合することで、端子接続構造を得る。この端子54では、アルミ系板状部50の両側の折り曲げ方向を選択することで、電線端部の半田付け接続にその両面を利用することができる。
【0060】
なお、図21(c)では、アルミ系円柱体50と銅系円柱体52との端面50a,52aにおける接合部56は、水等により腐食するおそれがあるので、図22(a)で示すように、ゴム等の防水部材58を被せ付け、それから、図22(b)で示すように、防水部材58を被せ付けた部位を残してアルミ系円柱体50と銅系円柱体52とをプレスしてもよい。防水部材58は、プレス前に被せ付けたが、プレスの後でもよいことは勿論である。
【0061】
さらに、図22(c)で示すように、折り曲げ壁50bを有する端子主部を構成し、銅系板状部52が端子穴52bを有する端子片を構成し、図示略の電線端部がアルミ系板状部50からなる端子主部上にヒュージング接合/超音波接合することで、端子54に成形してもよい。なお、防水部材58を被せ付ける以外に、樹脂被覆して防水してもよいし、他の防水構造を施してもよいことは勿論である。また、アルミ系円柱体50と銅系円柱体52との端面50a,52aにおける接合部56は、冷間圧接法で接合したが、これに限定するものではなく、前記FSW、爆着、電磁圧着など他の固相接合でもよいことは勿論である。
【0062】
図21、図22では、アルミ系円柱体50と銅系円柱体52との端面を固相接合したが、これに限らず、図23の固相接合でもよい。
【0063】
図23(a)は、アルミ系材からなる端子主部60と、銅系材からなり端子穴62aを有する端子片62とを接合面64で固相接合してなる端子接続構造を示す。この端子接続構造では、端子片62は、その端部下面が、端子主部60の端部上面と重ね合わされ、その重ね合わせ面64が接合面として固相接合されている。
【0064】
図23(b1)は、アルミ系材からなるL形の端子主部66と、銅系材からなり端子穴68aを有する端子片68とを接合面70で固相接合してなる端子接続構造を示す。この端子接続構造では、端子主部66はL形で、その端部66aの端面が、端子片66の端部上面と重ね合わされ、その重ね合わせ面が固相接合されている。この構造により、端子片66は、水平面に対して端子主部66よりも相対的に低い段差構造となっている。この構造により、端子片62は、水平面に対して端子主部60よりも相対的に低い段差構造となっている。この段差構造により、端子片62の端子穴62aにネジを入れて、図示略の基板等に固定する場合、端子主部60の裏面側が基板等に接触しないようにすることができる。
【0065】
図23(b2)は、アルミ系材からなる端子主部66´と、銅系材からなり端子穴68a´を有するL形の端子片68´とを接合面70´で固相接合してなる端子接続構造を示す。この端子接続構造では、端子片68´はL形で、その端部68b´の上端面が、端子主部66´の端部下面と重ね合わされ、その重ね合わせ面が固相接合されている。この構造により、端子片68´は、水平面に対して端子主部66´よりも相対的に低い段差構造となっている。
【0066】
図23(c)は、アルミ系材からなりフラックス保持穴72aを有する端子主部72と、銅系材からなり端子穴74aを有するL形の端子片74とを接合面76で固相接合してなる端子接続構造を示す。この場合、端子主部72と、端子片74とは、水平面に対して相対的に対向していればよいので、端子主部72をL形としたり、双方をL形としたりしてもよいことは勿論である。
【0067】
なお、半田付け方法は、ディップ半田付けやその他の半田付け方法でよいことは勿論であり、本発明では、特定の半田付け方法に限定されない。
【0068】
なお、本発明の端子接続構造は、以下の製造方法で製造することができる。
【0069】
(1) 端子主部と端子片とを有し、前記端子主部にアルミ電線の端部が接続される端子接続構造を製造する方法であって、前記端子の少なくとも前記端子主部の表面をアルミ面とし、このアルミ面に前記端部をヒュージング/超音波接合し、次いで、前記ヒュージング/超音波接合された前記端部を密封部材により外部から密封する、ことを特徴とする製造方法。
【0070】
(2) 前記(1)において、アルミ層と銅系金属層との少なくとも2層を有する板材を変形加工することにより、アルミ層を一部または全面に有する端子主部と、この端子主部に連成した端子片とを有する端子を作り、前記端部を、前記端子主部の表面上にヒュージング/超音波接合する製造方法。
【0071】
(3) 前記(1)において、アルミ系材からなる端子主部と銅系材からなる端子片とを固相接合して端子を作り、この端子主部表面に前記端部をヒュージング/超音波接合し、このヒュージング/超音波接合した部分に半田付けをし、このヒュージング/超音波接合した前記端部を、前記密封部材により外部から密封する製造方法。
【0072】
(4) 前記(3)において、前記アルミ系材からなる端子主部と銅系材からなる端子片とを固相接合した部位の周囲を防水構造とした、製造方法。
【0073】
(5) 前記(3)または(4)において、前記固相接合が、少なくとも、冷間圧接接合、FSW、爆着、電磁圧着のいずれかによる、製造方法。
【0074】
(6) 前記(1)ないし(5)のいずれかにおいて、前記ヒュージング/超音波接合された部分に半田付けをし、この半田付け部分を、前記密封部材として前記端部を外部から密封する、製造方法。
【0075】
(7) 前記(1)ないし(6)のいずれかにおいて、前記ヒュージング/超音波接合を、不活性ガスの雰囲気下で行う、製造方法。
【符号の説明】
【0076】
1 電線
1a 電線端部
1b アルミ素線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子主部と、端子片とを有し、前記端子主部にアルミ電線の端部が接続される端子接続構造であって、前記端子は、少なくとも前記端子主部の表面がアルミ面であり、このアルミ面に前記端部がヒュージング/超音波接合され、このヒュージング/超音波接合された前記端部が密封部材により外部から密封されている、ことを特徴とする端子接続構造。
【請求項2】
前記端子は、アルミ層と銅系金属層との少なくとも2層を有する板材を変形加工することにより、アルミ層を一部または全面に有する端子主部と、この端子主部に連成した端子片とを有する端子に作られており、前記端部は、前記端子主部の表面上にヒュージング/超音波接合されている、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記端子において、少なくともアルミと銅系金属とが2層になって露出する界面が、半田、鍍金、樹脂等で覆われている、請求項2に記載の構造。
【請求項4】
当該端子は、その表面に亜鉛90wt%以上、コバルトが1−10wt%からなる亜鉛・コバルト合金が鍍金されており、その鍍金の上から前記端部がヒュージング/超音波接合されている、ことを特徴とする請求項2または3に記載の構造。
【請求項5】
当該端子は、アルミ系材からなる端子主部と、銅系材からなる端子片とが固相接合され、かつ、これらが板状にプレス成形されて構成され、この端子主部表面に前記端部がヒュージング/超音波接合され、前記ヒュージング/超音波接合された前記端部が密封部材により外部から密封されている、請求項1に記載の構造。
【請求項6】
前記固相接合は、前記端子主部と前記端子片の端面同士が固相接合されている、請求項5に記載の構造。
【請求項7】
前記固相接合は、前記端子主部の端部と前記端子片の端部との重なり面同士が固相接合されている、請求項5に記載の構造。
【請求項8】
前記アルミ系材からなる端子主部と銅系材からなる端子片とを固相接合した部位の周囲を防水構造とした、請求項5に記載の構造。
【請求項9】
前記ヒュージング/超音波接合された部分に半田付けがされ、この半田付け部分が、前記密封部材として前記端部を外部から密封している、請求項1ないし8のいずれかに記載の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−105648(P2013−105648A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249434(P2011−249434)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000217491)田淵電機株式会社 (67)
【出願人】(596008817)ナグシステム株式会社 (8)
【Fターム(参考)】