説明

端子金具付き電線及び端子金具

【課題】電線の傷付きを防止する。
【解決手段】底板部22の端部から電線11が延出されてなる端子金具付き電線10であって、端子金具20は、複数の端子金具20が連なって構成されてなる連鎖端子30から各底板部22の電線11延出側の端部を切断することにより形成されており、底板部22には、切断により底板部22の電線延出側の端部から突出するように残されるタブ23と、このタブ23の両側に切り欠き部24,24を介して設けられタブ23の突出寸法以上に電線11の延出方向に突出する保護部25,25とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具付き電線及び端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図15に示すように、端子金具4のバレル部3で電線2を圧着し端子金具4の後端部から電線2が延出されてなる端子金具付き電線1が知られている。
【0003】
この種の端子金具付き電線を構成する端子金具は、特許文献1に示すように、帯状のキャリアを介して一体に形成された複数の端子金具について、電線が延出される側の端部を剪断することで、複数の端子金具が連結された状態から個別の端子金具に切り離すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−234925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の端子金具が連結された状態から個別の端子金具に切り離す際には、図16に示すように、端子金具の後端部(電線が延出される側の端部)にカットオフタブ5が突出する形態となる。このようなカットオフタブ5があると、例えば電線2をカットオフタブ5の側に曲げた際にカットオフタブ5のエッジ5Aが電線2を傷付けてしまうことが懸念される。上記引用文献1の構成では、剪断の際の寸法精度を向上させることで、カットオフタブの問題を解消しようとしている。しかし、このようにしてもやはりカットオフタブを完全になくすことは困難であるのに加えて、寸法精度を上げるために装置構成が複雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線の傷付きを防止可能な端子金具付き電線及び端子金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の構成に係る端子金具付き電線は、電線と、この電線が載置される底板部とこの底板部の両側縁部から延出され前記電線を圧着するバレル部とを備えた端子金具とを備え、前記底板部の端部から前記電線が延出されてなる端子金具付き電線であって、前記端子金具は、複数の端子金具が連なって構成されてなる連鎖端子から前記各底板部の前記電線延出側の端部を切断することにより形成されており、前記底板部には、前記切断により前記底板部の前記電線延出側の端部から突出するように残されるタブと、このタブの両側に切り欠き部を介して設けられ前記タブの突出寸法以上に前記電線の延出方向に突出する保護部とが形成されているところに特徴を有する。
【0008】
本構成によれば、電線がタブ側に曲げられた場合であっても、電線は底板部に設けられた保護部に当接しやすいため、タブのエッジによる電線の傷付きを防止することが可能になる。また、従来構成に対して端子金具の形状を変更すればよいため、例えば、製造装置の寸法精度を高めてカットオフタブを小さくする場合のように製造装置を複雑にする必要がない。
【0009】
上記構成に加えて以下の構成を有すればより好ましい。
(1)前記保護部の突出寸法は、前記タブの突出寸法よりも大きい。
このようにすれば、保護部の突出寸法がタブの突出寸法と同一である場合と比較して電線がタブよりも先に保護部に当接しやすくなるため、確実にタブのエッジにより電線が傷つくことを防止することができる。
【0010】
(2)前記保護部の前記タブ側の角部は丸みを帯びている。
保護部の角部が角張っていると電線が傷つくことが懸念されるが、このように前記保護部の前記タブ側の角部は丸みを帯びているようにすれば、保護部により電線が傷付くことを防止することができる。
【0011】
(3)保護チューブが被せられている。
このようにすれば、保護チューブにより外部の影響から保護することができる。ここで、端子金具付き電線に保護チューブを被せると、電線を曲げたときにタブのエッジにより保護チューブが傷つくことが懸念されるが、本構成によれば、保護部により電線だけでなく保護チューブが傷つくことも防止できる。よって、保護チューブにより外部の影響から保護し、かつ、保護チューブが傷つくことを防止することができる。
【0012】
(4)前記保護チューブは、熱収縮チューブである。
このようにすれば、保護チューブを被せる作業が容易になるのに加えて、電線の接続部分の防水が容易になる。
【0013】
(5)前記底板部のうち、前記電線の先端部の前方には、合成樹脂製の止水壁が装着されている。
止水壁により電線の接続部分に水が浸入することが防止できる。
【0014】
本発明の構成に係る端子金具は、電線が載置される底板部とこの底板部の両側縁部から延出され前記電線を圧着するバレル部とを備え、前記底板部の端部から前記電線が延出される端子金具であって、複数の端子金具が連なって構成されてなる連鎖端子から前記各底板部の前記電線延出側の端部を切断することにより形成されており、前記底板部には、前記切断により前記底板部の前記電線延出側の端部から突出するように残されるタブと、このタブの両側に切り欠き部を介して設けられ前記タブの突出寸法以上に前記電線の延出方向に突出する保護部とが形成されている。
【0015】
本構成によれば、電線がタブ側に曲げられた場合であっても、電線は底板部に設けられた保護部に当接しやすいため、タブのエッジによる電線の傷付きを防止することが可能になる。また、従来構成に対して端子金具の形状を変更すればよいため、例えば、製造装置の寸法精度を高めてカットオフタブを小さくする場合のように製造装置を複雑にする必要がない。
【0016】
上記構成に加えて以下の構成を有すればより好ましい。
(6)前記保護部の突出寸法は、前記タブの突出寸法よりも大きい。
このようにすれば、保護部の突出寸法がタブの突出寸法と同一である場合と比較して電線がタブよりも先に保護部に当接しやすくなるため、確実にタブのエッジにより電線が傷つくことを防止することができる。
【0017】
(7)前記保護部の前記タブ側の角部は丸みを帯びている。
保護部の角部が角張っていると電線が傷つくことが懸念されるが、このようにすれば、保護部により電線が傷付くことを防止することができる。
【0018】
(8)前記底板部のうち、前記電線の先端部の前方には、合成樹脂製の止水壁が装着される。
止水壁により電線の接続部分に水が浸入することが防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電線の傷付きを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態1に係る端子金具付き電線を示す斜視図
【図2】端子金具付き電線を示す側面図
【図3】端子金具付き電線を示す側断面図
【図4】端子金具を示す平面図
【図5】電線装着前の端子金具を示す斜視図
【図6】保護チューブを被せる前の端子金具付き電線を示す底面図
【図7】端子金具付き電線の所定位置まで保護チューブを挿通した状態を示す図
【図8】連鎖端子を示す平面図
【図9】止水壁が取付られた連鎖端子が過熱処理される工程を示す図
【図10】キャリアの連結部をスライドカッタで切断する工程を側面側から示す図
【図11】キャリアの連結部をスライドカッタで切断する工程を平面側から示す図
【図12】端子金具付き電線について保護チューブを有する部分について電線を曲げた状態を示す図
【図13】図12の比較例として保護部を有さない場合に電線を曲げた状態を示す図
【図14】他の実施形態における端子金具を示す側面図
【図15】従来の端子金具付き電線を示す斜視図
【図16】従来のカットオフタブを有する端子金具付き電線を示す底面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施形態1>
本発明の実施形態1に係る端子金具付き電線10を、図1ないし図13を参照しつつ説明する。
端子金具付き電線10は、図2に示すように、電線11と、この電線11の端末に取り付けられる端子金具20と、この端子金具20に取り付けられる止水壁28と、この止水壁28と共に、電線11と端子金具20との接続部分を包囲するように被せられる筒状の保護チューブ29とを備える。以下では、上下方向については図2を基準とし、図2の左方を前方、右方を後方として説明する。
【0022】
(電線)
電線11は、複数本の金属細線を撚り合せてなる芯線12(導体部)と、この芯線12の外周を被覆する合成樹脂製の絶縁層13(絶縁被覆)とを備える。芯線12を構成する材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられ、必要に応じて任意の金属材料の中から適宜選択される。本実施形態においては、芯線12の材料として、アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられている。電線11の端末部分の絶縁層13は除去されている。そのため、芯線12の端末部分は絶縁層13で覆われておらず、露出している。なお、芯線12は、より線に限らず、単芯線を用いることとしてもよい。
【0023】
(端子金具)
端子金具20は、例えば、金属板材を所定形状にプレス加工することによって得られ、雌型であり、相手側の雄型端子(不図示)と接続される。
この端子金具20は、相手側の雄型の端子金具(図示しない)と接続される接続部21と、電線11が載置される底板部22と、この底板部22の両側縁部から延出され電線11をかしめて圧着するバレル部27とを備える。
【0024】
接続部21は、端子金具20の先端側に設けられ、断面が略正方形の筒状をなし、この接続部21内には、相手側の端子金具と弾性的に接触する弾性接触片が設けられている。
底板部22は、接続部21の後方に連なるように設けられており、前後方向(電線の軸方向)に長い形状であって、図5に示すように、幅方向に略U字状に湾曲することで内面側に凹状部22Aを有し、この凹状部22Aに納まるように配された電線11がこの底板部22の後端部から延出される。
電線11の露出した芯線12と、絶縁層13を有する部分とが凹状部22Aに載置される。
【0025】
ここで、端子金具20は、図8に示すように、複数の端子金具20がキャリア31によって連結された連鎖端子30のうち、キャリア31と端子金具20とを接続する連結部32を切断することにより形成されているが、この切断の際に、図6に示すように、底板部22の後端部(電線延出側の端部)に形成されるタブ23を有している。
このタブ23の左右の両側方には、所定寸法に亘って前方に切り込んで形成された切り欠き部24,24と、この切り欠き部24,24の更に側方に設けられタブ23よりも後方に突出する保護部25,25とが形成されている。
【0026】
切り欠き部24,24は、連鎖端子30の連結部32を切断装置により切断するために必要な構成であって、切断装置を構成するスライドカッタ43(図10参照)の進入位置に応じて、タブ23の突出寸法が異なる。切り欠き部24,24の基端は半円形状の曲面となっている。なお、スライドカッタ43を切り欠き部24,24の基端まで進入させてタブ23を完全になくすことはスライドカッタ43の特性や切断位置の精度等の関係から困難である。
【0027】
保護部25,25は、インシュレーションバレル27Bの基端部に連なる位置に形成されており、この保護部25,25の後端25A,25A(即ち、インシュレーションバレル27Bの後端に連なり底板部22の後端でもある(図4参照))は、タブ23の後端23Aよりも後方に位置している。
この保護部25,25のタブ23側の角部25Bは、(角が取られ)丸みを帯びた曲面状となっている。
なお、他の実施形態として、インシュレーションバレル27Bを設けない場合には保護部をワイヤーバレル27Aの基端側に連なるように設けたり、図14に示すように、インシュレーションバレル51(バレル部)と一体に設けない構成の端子金具52とすることも可能であり、この場合、例えば、タブ23よりも後方に突出し、タブ23側の角部が丸みを帯びた保護部50,50をタブ23の両側方に形成するようにすればよい。
【0028】
バレル部27は、図5に示すように、ワイヤーバレル27Aと、インシュレーションバレル27Bとからなる。
ワイヤーバレル27Aは板片状であり、端子金具20が電線11に取り付けられる前は、底板部22の両縁から立ち上がるように設けられている。このワイヤーバレル27Aは、端子金具20が電線11に取り付けられる際に、底板部22上の芯線12を抱きかかえるように芯線12に対して圧着される(かしめられる)。
【0029】
インシュレーションバレル27Bは、ワイヤーバレル27Aよりも幅が細い板片状であり、端子金具20が電線11に取り付けられる前は、ワイヤーバレル27Aと同様、底板部22の両縁から立ち上がるように設けられている。このインシュレーションバレル27Bは、底板部22上に載せられている根元の絶縁層13を抱きしめるようにして絶縁層13に圧着される。
【0030】
ワイヤーバレル27Aが延設されている部分の底板部22上には、複数個の略四角形状(略平行四辺形状)の凹部26が形成されている。このような凹部26によって、電気抵抗値の低下を抑制しつつ、ワイヤーバレル27Aと芯線12との固着力を高めることができる。
【0031】
端子金具20を構成する金属材料としては、例えば、銅、銅合金等が挙げられ、必要に応じて任意の金属材料の中から適宜選択される。なお、本実施形態の端子金具20を構成する金属板材の表面には、メッキ層(不図示)が形成されている。メッキ層を構成する金属としては、例えば、スズ、ニッケル等が挙げられ、必要に応じて任意の金属材料の中から適宜選択される。本実施形態においては、端子金具20を構成する金属材料(銅又は銅合金)の表面にスズメッキ層が形成されている。他の実施形態においては、メッキ層が形成されていない金属板材を、端子金具20の材料として用いてもよい。
【0032】
(止水壁)
止水壁28は、所定形状に加工された樹脂加工物を用いて製造される。本実施形態の樹脂加工物は、略円柱状であり、底板部22の内側に嵌るような形状に加工されている。この樹脂加工物に使用される樹脂材料としては、例えば、対金属良接着性エラストマー(商品名:ペルプレン(登録商標)、東洋紡績株式会社)が挙げられる。この樹脂材料は、適度な剛性(弾性)を備えると共に、加熱処理によって金属に対する接着性を発現する。
【0033】
この樹脂材料からなる樹脂加工物は、所定温度で加熱処理すると、全体としては形状(剛性)を維持しつつも、表面から溶融した液状の樹脂材料が滲み出してくる。この滲み出してきたもの(熱可塑性接着剤)が、金属に対して接着性を有する。なお、常温(室温)下では、樹脂加工物は、金属に対する接着性はなく、取り扱いやすい。このような樹脂加工物は、例えば、樹脂材料を、押出成形装置を利用して細長い円柱状の成形物に押出成形し、その成形物を所定形状(大きさ)に切り分けることによって得られる。
【0034】
樹脂加工物は、底板部22のうち、芯線12の先端の前方に位置する凹状部22Aに嵌め込まれる。この位置における凹状部22Aの大きさは、断面が略円形である樹脂加工物よりも、若干小さくなるように設定されている。このようなに設定されている凹状部22Aに対して、樹脂加工物が嵌め込まれて(圧入されて)取り付けられる。
【0035】
このようにして取り付けられた樹脂加工物は、底板部22の内側において、凹状部22Aを塞ぐように立設される。樹脂加工物は適度な弾性を有しており、底板部22の内側から外側に向かって押し返すようにして、底板部22の内側表面に対して密着している。なお、樹脂加工物を端子金具20に取り付ける作業は、端子金具20に電線11を取り付ける前に行ってもよいし、端子金具20に電線11を取り付けた後に行ってもよい。
【0036】
凹状部22Aに嵌め込まれた樹脂加工物は、その後、端子金具20と共に加熱処理される。この加熱処理は、樹脂加工物の外周面と、余地部分における底板部22の内側表面(金属表面)とを隙間なく液密的に密着させるために行われる。加熱処理後、液状の樹脂材料は冷え固まり、その結果、樹脂加工物は、底板部22に対して隙間なく密着した状態で固定され、止水壁28となる。
【0037】
なお、止水壁28は、その一部(上側部分)が凹状部22Aからはみ出しており、露出している。この露出した部分は、後述するように、最終的に筒状の保護チューブ29によって覆われる。
【0038】
(保護チューブ)
保護チューブ29は、筒状であり、図3に示すように、止水壁28と絶縁層13の端部との間に亘って、端子金具20と電線11との接続部分を包囲するように被せられている。保護チューブ29の先側の開口端部は、止水壁28とこの止水壁28を受け支える部分の底板部22とを取り囲むように、これらと密着している。後側の開口端部は、芯線12の根元の絶縁層13(絶縁層13の端部)を取り囲むように、絶縁層13と密着している。
【0039】
このような保護チューブ29は、端子金具20と電線11との接続部分を外側から締付けるように密着している。つまり、筒状の保護チューブ29によって、露出した芯線12と、止水壁28が設けられている部分よりも後側部分の端子金具20と、端末の絶縁層13とが包囲されるように覆われている。
【0040】
本実施形態の保護チューブ29は、所謂、熱収縮チューブからなり、加熱処理によって収縮する合成樹脂材料からなる。なお、保護チューブ29の内周面には、図示されない接着層又は粘着層が形成されている。接着層又は粘着層は、加熱されて軟化又は溶融することにより、接着性又は粘着性を発現する。接着層又は粘着層に用いられる接着剤又は粘着剤としては、この種の電線11で利用される公知のものを適用できる。なお、保護チューブ29の内周面に、接着層又は粘着層を設けない構成とすることも可能である。
【0041】
(製造工程)
次いで、本実施形態に係る端子金具付き電線10の製造工程の一例を示す。先ず、平板状の金属板材に対して展開形状に打ち抜く打ち抜き工程及び立体的な形状とする曲げ工程が施され、図8に示すような複数の端子金具20が連なって構成されてなる連鎖端子30が形成される。
打ち抜き工程の際には、ワイヤーバレル27Aが延設されている部分の底板部22上に、複数個の凹部26が形成される。なお、これらの凹部26は、打ち抜き工程とは別の工程において、形成されてもよい。
【0042】
連鎖端子30は、複数個の端子金具20と、複数個の端子金具20を等間隔で横並びに連結するキャリア31とを備えて構成される。
キャリア31には、長手方向に沿って略等間隔に並んだ送り孔33が形成されている。送り孔33としては、略円形状のものと、略矩形状のものとが交互に並べられている。この送り孔33は、加工機(不図示)に設けられた送り爪(不図示)が係合するように設定されている。
【0043】
次に、キャリア31に形成されている送り孔33に、送り爪(不図示)を係合させて、順次、各端子金具20を送りながら、凹状部22Aに、予め所定形状に加工された樹脂加工物を、組立機によってそれぞれ嵌め込む。なお、樹脂加工物を底板部22の内側に嵌め込む間は、キャリア31の移動は停止される。嵌め込み後に、キャリア31の移動が再開される。
【0044】
樹脂加工物が嵌め込まれた端子金具20(端子金具20)には、図9に示すような加熱装置46により加熱処理工程が施される。この加熱処理工程において、樹脂加工物から、金属に対して接着性を有する熱可塑性接着剤が滲み出し、その滲み出した熱可塑性接着剤によって、樹脂加工物が底板部22に対して隙間なく密着して止水壁28となる。
【0045】
加熱処理工程後は、底板部22上に、電線11の端末部分が載せられる。電線11の端末部分は、予め芯線12が露出するように、絶縁層13が除去されている。この際、露出した芯線12部分は、ワイヤーバレル27Aが形成されている部分の底板部22上に載せられる。そして、芯線12の根元の絶縁層13(絶縁層13の端部)は、インシュレーションバレル27Bが形成されている部分の底板部22上に載せられる。
【0046】
上記のように、端子金具20の底板部22上に電線11の端末部分を載せた後、加工装置40を利用して、端子金具20のワイヤーバレル27A及びインシュレーションバレル27Bをかしめ付ける(圧着する)。
【0047】
加工装置40は、図10に示すように、端子金具20を下側から支えるアンビル41と、端子金具20に向けて下降し、バレル部27を変形させて電線11をかしめるクリンパ42と、各端子金具20をキャリア31から切断するスライドカッタ43と、スライドカッタ43を押し下げるパンチ44とを備えている。
アンビル41及びクリンパ42は、ワイヤーバレル27A及びインシュレーションバレル27Bのそれぞれに設けられている(図10ではインシュレーションバレル27B用のアンビル41及びクリンパ42のみ図示)。
【0048】
アンビル41の端子金具20が載置される上面は、底板部22の下面の形状に応じてやや凹状に湾曲した形状となっている。
クリンパ42は、各バレルを巻きこむように概ね山形にくりぬかれており、各クリンパ42の下降によりワイヤーバレル27Aは、芯線12に対して圧着され、インシュレーションバレル27Bは、絶縁層13を有する部分に対して強く巻き付けられる。
【0049】
スライドカッタ43は、上下にスライド移動可能であって、断面がコ字状で、キャリア31が挿通される溝部43Aが形成されている。
パンチ44は、上下に移動可能であって、インシュレーションバレル27B用のクリンパ42と連動するようになっており、インシュレーション用のクリンパ42が下降すると、パンチ44も下降し、溝部43Aにキャリア31が挿通されたスライドカッタ43を下方に押し下げる。
【0050】
このスライドカッタ43により、図11に示すように、キャリア31と端子金具20とを連ねる連結部32が切断され、端子金具20には、切断した位置に応じた長さのタブ23が残される。
この切断工程は、圧着工程と同時に行うことが可能である。このように端子金具20が電線11に対して圧着され、かつ端子金具20(端子金具20)がキャリア31から切り離されると、電線11の端末に端子金具20が取り付けられた状態の端子金具付き電線が得られる。
【0051】
次いで、図7に示されるように、熱収縮チューブからなる未加熱状態の筒状の保護チューブ29が、電線11と端子金具20との接続部分を包囲するように被せられる。保護チューブ29は、端子金具20側から挿通させて被せられてもよいし、電線11側から挿通させて被せられてもよい。なお、電線11側から被せられる場合、上記圧着工程の前に、予め電線11に保護チューブ29を挿通させておくことが好ましい。未加熱状態における保護チューブ29(熱収縮チューブ)の内径は、電線11と端子金具20との接続部分よりも大きく設定されている。保護チューブ29は、接続部分を包囲できるように先側の開口端部と、後側の開口端部との位置が、熱収縮量を考慮して、位置決めされる。
【0052】
上記のように位置決めされた後、熱収縮チューブ(保護チューブ29)が被せられた電線11及び端子金具20は、図示されない加熱装置内で加熱処理工程が施される。この加熱処理工程において、熱収縮チューブからなる保護チューブ29が熱収縮し、そして保護チューブ29の内周面上に形成されている接着層(不図示)が接着性を発現する。その結果、保護チューブ29の内面(内周面)が電線11及び端子金具20の接続部分に対して、その表面形状に対応して隙間なく密着する。
以上の製造工程によって端子金具付き電線10が得られる。
【0053】
ところで、図13に示すように、本実施形態とは異なり、保護部25,25を有さない端子金具付き電線60に保護チューブ29を被せると、電線11を曲げたときにカットオフタブ(タブ23)のエッジにより保護チューブ29が傷付いたり破れたりすることが懸念される。一方、本実施形態によれば、図12に示すように、電線11を曲げた場合であっても、保護部25,25がタブ23よりも先に保護チューブ29の内面に当接するため、保護チューブ29が傷付いたり破れたりすることを防止できる。
【0054】
本実施形態においては以下の効果を奏する。
(1)本実施形態は、電線11と、この電線11が載置される底板部22とこの底板部22の両側縁部から延出され電線11を圧着するバレル部27とを備えた端子金具20とを備え、底板部22の端部から電線11が延出されてなる端子金具付き電線10であって、端子金具20は、複数の端子金具20が連なって構成されてなる連鎖端子30から各底板部22の電線11延出側の端部を切断することにより形成されており、底板部22には、切断により底板部22の電線11延出側の端部から突出するように残されるタブ23と、このタブ23の両側に切り欠き部24,24を介して設けられタブ23の突出寸法以上に電線11の延出方向に突出する保護部25,25とが形成されている。
このようにすれば、電線11がタブ23側に曲げられた場合であっても、電線11は底板部22に設けられた保護部25,25に容易に当接するため、タブ23のエッジによる電線11の傷付きを防止することが可能になる。また、従来構成に対して端子金具20の形状を変更すればよいため、例えば、製造装置の寸法精度を高めてカットオフタブを小さくする場合のように製造装置を複雑にする必要がない。
【0055】
(2)保護部25,25の突出寸法は、タブ23の突出寸法よりも大きいため、保護部の突出寸法がタブの突出寸法と同一の場合と比較して、電線11がタブ23よりも先に保護部25,25に当接しやすくなり、確実にタブ23のエッジにより電線11が傷つくことを防止することができる。
(3)保護部25,25の角部が角張っていると電線11が傷つくことが懸念されるが、本実施形態によれば、保護部25,25のタブ23側の角部25Bは丸みを帯びているため保護部25,25により電線11が傷付くことを防止することができる。
【0056】
(4)保護チューブ29が被せられているため、保護チューブ29により外部の影響から保護することができる。また、このように保護チューブ29を設けたとしても、保護部25,25により保護チューブ29が傷つくことを防止することができる。
【0057】
(5)保護チューブ29は、熱収縮チューブであるため、保護チューブ29を被せる作業が容易になるのに加えて、電線11の接続部分の防水が容易になる。
(6)底板部22のうち、電線11の先端部の前方には、合成樹脂製の止水壁28が装着されているため、止水壁28により電線11の接続部分に水が浸入することが防止できる。
【0058】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、保護部25,25の突出寸法(保護部25,25の後端位置25A)は、タブ23の突出寸法よりも大きい(タブ23の後端位置25Aよりも後方に位置する)こととしたが、これに限られず、保護部25,25の突出寸法(保護部25,25の後端位置)が、タブ23の突出寸法と同一(タブ23の後端位置と前後方向に同じ位置。保護部25,25とタブ23とが面一)でもよい(即ち、保護部25,25は、タブ23の突出寸法以上に電線11の延出方向に突出するものであればよい)。
【0059】
(2)上記実施形態においては、端子金具付き電線10には、保護チューブ29が被せられていたが、保護チューブ29を有さない端子金具付き電線10に本発明を適用することも可能である。この場合であっても、保護部25,25により、タブ23の方向に電線11が曲げられた場合等にタブ23により被覆電線11の絶縁被覆や、芯線12が傷付くことを防止できるという効果を生じさせることができる。
【0060】
(3)上記実施形態においては、端子金具20がインシュレーションバレル27Bを備えていたが、他の実施形態においては、インシュレーションバレル27Bを備えていない構成であってもよい。
(4)上記実施形態においては、端子金具20が所謂、雌型であったが、端子金具が雄型であってもよいし、丸型端子(所謂、LA端子)であってもよい。つまり、端子金具20の形状は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0061】
(5)上記実施形態において、保護チューブ29は、予め筒状に成形されたものが利用されていたが、これに限らず、例えば、シート状の止水テープを、電線11及び端子金具20の接続部分に対して巻きつけてチューブ状に形成されたものを用いてもよい。
【0062】
(6)端子金具20を電線11に対して圧着する圧着工程と、キャリア31から端子金具20(端子金具20)を切り離す切断工程とは、同時に行ってもよいが、別々に行う場合には、圧着工程を行う前に切断工程を行ってもよいし、切断工程を行った後に圧着工程を行ってもよい。
(7)上記実施形態において、保護チューブ29として熱収縮チューブを利用していたが、他の実施形態においては、例えば、ゴムチューブ等の弾性を有する筒状部材を保護チューブとして利用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…端子金具付き電線
11…電線
12…芯線
13…絶縁層
20,52…端子金具
21…接続部
22…底板部
22A…凹状部
23…タブ
23…タブの後端
24…切り欠き部
25,50…保護部
25A…保護部の後端
25B…保護部の角部
26…凹部
27…バレル部
27A…ワイヤーバレル
27B,51…インシュレーションバレル
28…止水壁
29…保護チューブ
30…連鎖端子
31…キャリア
32…連結部
40…加工装置
41…アンビル
42…クリンパ
43…スライドカッタ
44…パンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、この電線が載置される底板部とこの底板部の両側縁部から延出され前記電線を圧着するバレル部とを備えた端子金具とを備え、前記底板部の端部から前記電線が延出されてなる端子金具付き電線であって、
前記端子金具は、複数の端子金具が連なって構成されてなる連鎖端子から前記各底板部の前記電線延出側の端部を切断することにより形成されており、
前記底板部には、前記切断により前記底板部の前記電線延出側の端部から突出するように残されるタブと、このタブの両側に切り欠き部を介して設けられ前記タブの突出寸法以上に前記電線の延出方向に突出する保護部とが形成されている端子金具付き電線。
【請求項2】
前記保護部の突出寸法は、前記タブの突出寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の端子金具付き電線。
【請求項3】
前記保護部の前記タブ側の角部は丸みを帯びていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の端子金具付き電線。
【請求項4】
保護チューブが被せられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の端子金具付き電線。
【請求項5】
前記保護チューブは、熱収縮チューブであることを特徴とする請求項4に記載の端子金具付き電線。
【請求項6】
前記底板部のうち、前記電線の先端部の前方には、合成樹脂製の止水壁が装着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の端子金具付き電線。
【請求項7】
電線が載置される底板部とこの底板部の両側縁部から延出され前記電線を圧着するバレル部とを備え、前記底板部の端部から前記電線が延出される端子金具であって、
複数の端子金具が連なって構成されてなる連鎖端子から前記各底板部の前記電線延出側の端部を切断することにより形成されており、
前記底板部には、前記切断により前記底板部の前記電線延出側の端部から突出するように残されるタブと、このタブの両側に切り欠き部を介して設けられ前記タブの突出寸法以上に前記電線の延出方向に突出する保護部とが形成されている端子金具。
【請求項8】
前記保護部の突出寸法は、前記タブの突出寸法よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の端子金具。
【請求項9】
前記保護部の前記タブ側の角部は丸みを帯びていることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の端子金具。
【請求項10】
前記底板部のうち、前記電線の先端部の前方には、合成樹脂製の止水壁が装着されることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−169122(P2012−169122A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28619(P2011−28619)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】