説明

端末、端末制御方法及びプログラム

【課題】携帯端末10において、間違っている現在位置の表示は中止するとともに、正しい現在位置情報をユーザに提示することにして、提示情報の信頼性についてのユーザの不信感を防止する。
【解決手段】GPS電波から現在位置を測位して、位置情報として記憶する。中心が前回の位置情報P1であって半径が前回の位置情報P1−今回の位置情報P2間の距離である円W2を設定し、円W2を今回の存在エリアとして表示部14に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置を測位、表示する端末、端末制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザにより携帯される携帯端末には、GPS(Global Positioning System)電波に基づき現在位置を測位、表示する機能を装備するものがある。このような携帯端末では、高層ビル街におけるマルチパスの影響や、電波発信元のGPS衛星切替わり等のために、現在位置の測位誤差が増大する。
【0003】
特許文献1,2は、GPS電波から測位した測位現在位置が現実の現在位置から大きく離れているにもかかわらず、測位現在位置を表示して、ユーザを混乱させてしまうのを防止するGPS受信装置及びナビゲーション装置をそれぞれ開示する。
【0004】
特許文献1のGPS受信装置によれば、過去の測位現在位置に基づき予測される今回の予測現在位置と、GPS電波の今回の受信に基づき測位した測位現在位置とを対比し、予測現在位置と測位現在位置との距離が所定の閾値以上である場合には、予測現在位置と測位現在位置とを結ぶ直線と、測位現在位置についての位置誤差範囲の円との交点を今回の現在位置として表示する(特許文献1の段落0022及び図3)。
【0005】
特許文献2のナビゲーション装置によれば、今回の現在位置が前回の現在位置から所定距離以上、離れている場合には、前回の測位現在位置と今回の測位現在位置とを結ぶ直線と、前回の測位現在位置を中心にして上記の所定距離を半径とする円との交点を今回の現在位置として表示する(特許文献2の図1)。
【0006】
特許文献3は、GPS電波から測位した今回の測位現在位置と共に、測位現在位置についての測位誤差の領域を地図上に表示する端末を開示する(特許文献3の図4)。特許文献3は、さらに、GPS電波に基づき測位誤差を算出する仕方を開示する(特許文献3の例えば0046及び0047)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−2759号公報
【特許文献2】特開2000−329578号公報
【特許文献3】特開2003−215228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜3の装置では、妥当な現在位置を算出して、点として表示するが、点として表示された現在位置が現実の現在位置であることの保証はまったくなく、現在位置表示についてユーザからの信頼が低下する。
【0009】
本発明の目的は、適切な現在位置情報を提示して、ユーザの不信感を防止する端末、方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、現在位置を測位するとともに、各時点の測位現在位置に係る位置情報を記憶する。そして、現在位置存在範囲を、過去及び今回の位置情報に基づき割り出して、ユーザに表示する。
【0011】
本発明の端末は、
自機の現在位置を測位する現在位置測位部と、
各時点の測位現在位置に係る位置情報を、測位時刻の先後が区別自在となるように記憶媒体に記憶させる記憶媒体制御部と、
前記記憶媒体から読み出した過去及び今回の位置情報に基づき現在位置存在範囲を割り出す割り出し部と、
前記現在位置存在範囲を表示器に表示する表示制御部と、
を備える。
【0012】
本発明の端末制御方法は、
自機の現在位置を測位する現在位置測位部と、
各時点の測位現在位置に係る位置情報を、測位時刻の先後が区別できるように記憶媒体に記憶させる記憶媒体制御部と、
現在位置存在範囲を、前記記憶媒体から読み出した過去及び今回の位置情報に基づき割り出す割り出し部と、
前記現在位置存在範囲を表示器に表示する表示制御部と、
を備える。
【0013】
本発明のプログラムは、コンピュータを本発明の端末として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、間違っている可能性のある情報をユーザに提示しない確率が高くなるので、ユーザからの信頼性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】携帯端末のブロック図である。
【図2】携帯端末の情報記憶部における位置情報の格納状態を示す図である。
【図3】GPS受信処理方法のフローチャートである。
【図4】現在位置存在範囲を、前回の現在位置を中心とする所定半径の円として算出する方式の説明図である。
【図5】図4の算出方式に基づき現在位置存在範囲を算出する現在位置表示処理方法のフローチャートである。
【図6】図4の算出方式の変形例についての説明図である。
【図7】図4の算出方式の別の変形例についての説明図である。
【図8】現在位置存在範囲を、今回の現在位置を中心とする所定半径の円として算出する方式の説明図である。
【図9】図8の算出方式を採用した現在位置表示処理方法のフローチャートである。
【図10】図8の算出方式の変形例についての説明図である。
【0016】
【図11】図8の算出方式の別の変形例についての説明図である。
【図12】位置情報に基づき直径を算出してから該直径をもつ円を現在位置存在範囲として算出する方式の説明図である。
【図13】図12の算出方式を採用した現在位置表示処理方法のフローチャートである。
【図14】図12の算出方式の変形例についての説明図である。
【図15】図12の算出方式の別の変形例についての説明図である。
【図16】GPS電波から位置情報と共に誤差情報を算出して情報記憶部に格納する現在位置表示処理方法のフローチャートである。
【図17】情報記憶部における位置情報及び誤差情報の格納方式についての説明図である。
【図18】前回及び今回の誤差範囲を両端部に含む形状の現在位置存在範囲についての算出方式の説明図である。
【図19】図18の算出方式を採用した現在位置表示処理方法のフローチャートである。
【図20】図18の算出方式の変形例についての説明図である。
【図21】図20の算出方式を採用した現在位置表示処理方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、携帯端末10は、CPU11、GPS受信部12、無線通信部13、表示部14、操作部15、情報記憶部16及び時計・タイマ部17を備え、ユーザにより携帯される。携帯端末10は、例えば携帯電話機、携帯ナビゲーション装置又は携帯無線機である。CPU11は、実行中のプログラムに従い携帯端末10の各要素とのデータの授受及びデータの演算処理を行い、携帯端末10全体を制御する。
【0018】
本実施の形態の端末は、典型的には携帯端末10のようなユーザにより携帯される端末であるが、自動車に搭載される端末であってもよい。
【0019】
GPS受信部12は、複数のGPS衛星(図示せず)からのGPS電波をGPSアンテナ18において受信し、GPS電波に基づき算出した現在位置の測位データをCPU11へ出力する。GPS受信部12は、GPS電波の受信のみで、GPS電波からの測位処理をせず、受信信号をCPU11へ送るだけとなっていてもよい。その場合には、CPU11が現在位置の測位処理を実施する。
【0020】
本実施の形態で用いる現在位置測位部は測位用電波を用いて現在位置を測位してもよいし、各種センサや光ビーコンなどを用いて現在位置を測位してもよい。また、測位用電波は、典型的には複数のGPS衛星からのGPS電波であるが、所定の単一又は複数の地上無線局からの電波であってもよい。
【0021】
無線通信部13は、無線通信アンテナ19において相手機や基地局等からの通信電波を受信して、通信電波から復調した音声やデータをCPU11へ出力する。無線通信部13は、また、CPU11からの音声やデータにより変調したRF信号を無線通信アンテナ19から送信する。
【0022】
表示部14は各種の情報を表示する。操作部15は、ユーザにより操作され、操作情報をCPU11へ出力する。情報記憶部16は、RAM、ROM及び不揮発メモリを含み、プログラムやデータを記憶する。時計・タイマ部17は、時刻情報を生成するとともに、経過時間を計測する。
【0023】
図2は携帯端末10の情報記憶部16における位置情報P1,P2の格納状態を示す。GPS受信部12は、一定時間ごとにGPS電波に基づき現在位置を測位し、測位した現在位置は位置情報として情報記憶部16に格納される。位置情報P1,P2は、典型的にはそれぞれ前回及び今回の測位現在位置であり、位置情報は、前回のものか今回のものかを区別自在に情報記憶部16に格納される。なお、図6等において後述するように情報記憶部16に格納されている今回の位置情報が、今回の測位現在位置から補正した現在位置Q2に置き換えられることがあり、結果、位置情報P1は、前回の測位現在位置ではなく、前回の補正現在位置となっていることがある。
【0024】
図2では、過去の位置情報として前回の位置情報のみ記憶されるが、本実施の形態では、過去の位置情報として複数の位置情報を記憶して、後述の今回の存在エリアの算出に利用することもできる。例えば、前回の測位現在位置が前々回の測位現在位置と今回の測位現在位置とに対して突飛なものであると判断される場合には、前回の位置情報として、前々回の位置情報に置き換えたり、前々回の測位現在位置と今回の測位現在位置との中点の位置に対応する情報に置き換えたりすることができる。
【0025】
図3のGPS受信処理方法25のフローチャートにおいて、S26では、GPS受信部12が電源オンになったか否かを判定し、判定が正であれば、S27へ進み、否であれば、GPS受信処理方法25の処理を直ちに終了する。
【0026】
S27では、GPS電波が受信可能か否かを判定し、判定が正であれば、S28へ進み、否であれば、GPS受信処理方法25の処理を終了する。GPS電波が受信可能か否かは、具体的には例えばGPS電波の電界強度に基づき判定する。携帯端末10が屋内、地下街又はビルの谷間に存在する時には、携帯端末10へのGPS電波が、途絶えたり、許容値を超えて弱くなることがある。この時は、GPS電波による現在位置の測位は不能となる。
【0027】
S28では、GPS電波に含まれるGPS情報を解析し、現在位置を特定する。この特定した現在位置とは本実施の形態の測位現在位置に相当する。以下、「測位現在位置」とは、GPS電波等の測位用電波に基づき測位した現在位置と定義し、後述の図6等における補正した現在位置Q2とは区別して使用する。
【0028】
S29では、情報記憶部16において位置情報P2を位置情報P1に上書きし、S30では、S28で特定した現在位置、すなわち測位現在位置を位置情報P2に上書きする。こうして、図2に示すように、前回及び今回の現在位置の位置情報はそれぞれ位置情報P1,P2として情報記憶部16に保存される。
【0029】
図4は現在位置存在範囲を、前回の現在位置を中心とする所定半径の円として算出する方式の説明図である。現在位置存在範囲とは具体的には今回の存在エリアW2のことである。図4を参照して、算出方式を先に説明してから、該算出方式を採用した図5の現在位置表示処理方法40を説明する。なお、位置情報P1,P2は、現在位置についての情報という意味で、現在位置そのものより広い概念となっているが、図4等の実施例の説明では、現在位置そのものも意味するものと使用する。また、「前々回位置」、「前回位置」及び「今回の位置」における「位置」とは正確には「現在位置」を意味する。今回の存在エリアW2は、記憶媒体から読み出した過去及び今回の位置情報に基づき割り出したエリアである。また、W1は、前回の現在位置の測位時点で表示部14に今回の存在エリアW2として表示した範囲を意味し、表示部14には、W2は表示されるものの、W1は表示されない。
【0030】
図4では、W2は、中心がP1であり、半径がP1−P2間の距離Rである円に設定される。W2は、一定時間間隔Tごとに、最新のGPS電波に基づき算出されて、携帯端末10の表示部14に表示される。一旦、表示されたW2は、その後、時間Tだけ、すなわちW2の次の更新時まで維持される。
【0031】
表示部14における今回の存在エリアW2は、現在位置のオンタイム表示に比して、ユーザの位置があいまいとなるが、携帯端末10のユーザは、歩行中、適宜立ち止まって、表示部14の地図と現実の周囲の建物等とを照合することができるので、ユーザは、今回の存在エリアW2を提示されれば、周囲を見渡して自分の位置を正確に特定することができるので、不都合はない。
【0032】
表示部14における今回の存在エリアW2の具体的な表示態様は、例えば、今回の存在エリアW2の輪郭線のみを所定の色(例:黒)で表示したり、今回の存在エリアW2の領域全体を半透明等の透過性の薄い色で表示したりする。透過性の色にする理由は、今回の存在エリアW2に覆われる地図部分をユーザが適当に認知できるようにするためである。また、視覚的な効果を高めるために、存在エリアW2の大きさに対応させて、透過性の色の濃さや色を変えるようにしてもよい。例えば、半径と色の濃さを対応付けるテーブルを記憶しておき、存在エリアW2の半径が大きい場合は、透過性の色の濃さを薄くするようにすれば、視覚的な効果が高まるとともに、存在エリアW2に覆われる地図部分が大きいほど、透過性の色が薄くなるため、ユーザが地図部分を認知しやすくなる。
【0033】
図4、後述の図6〜図8、図9及び図10では、P1−P2の距離、又はP1−Q2の距離を半径とする円を今回の存在エリアW2としているが、P1−P2の距離、又はP1−Q2の距離を長軸の半分の長さとし、該長軸をもつ楕円を今回の存在エリアW2とすることもできる。該楕円では、今回の存在エリアW2が円である場合に、該円の円周上にあるP1、P2又はQ2は該楕円の周上の位置、厳密には該楕円の長軸の端の位置となる。なお、今回の存在エリアW2を楕円とする方が円とするよりも、面積が小さくなって、その分、現在位置の範囲が絞られる。
【0034】
図4、後述の図6及び図7における今回の存在エリアW2の算出方式では、円の中心を前回の位置情報P1にしているのに対し、後述の図8、図9及び図10における今回の存在エリアW2の算出方式では、円の中心を今回の位置情報P2又は補正された現在位置Q2にしている。これは、前者では、前回の位置情報P1が重視され、後者では、今回の位置情報P2が重視されることを意味する。また、一般に、今回の存在エリアW2の円の面積が、前者に比して増大するが、後者の場合には、今回の存在エリアW2を、円にする代わりに、前述の楕円にして、面積を減少させるのが有利である。
【0035】
図5は図4の算出方式を採用した現在位置表示処理方法40のフローチャートである。典型的には、現在位置表示処理方法40は、図3のGPS受信処理方法25が終了しだい、実行する。S41では、表示部14への現在位置の表示タイミングであるか否かを判定し、判定が正であれば、次のS42へ進み、否であれば、現在位置表示処理方法40の処理を終了する。S42では、位置情報P1,P2が共に情報記憶部16に格納されているか否かを判定し、判定が正であれば、次のS43へ進み、否であれば、現在位置表示処理方法40を終了する。
【0036】
S43では、表示部14から現在位置表示を削除する。現在位置表示とは、具体的には表示部14における今回の存在エリアW2のことである。ここで削除された今回の存在エリアW2は、図4の前回の存在エリアW1を意味する。S44では、位置情報P1とP2の間の距離Rを算出する。S45では、位置情報P1を中心とした半径Rの円を地図上に描画する。円とは図4の今回の存在エリアW2のことである。また、地図は、W2を含む所定範囲の地図が表示部14に表示されている。
【0037】
図6は図4の算出方式の変形例についての説明図である。図4の算出方式との相違点についてのみ説明する。図6の算出方式では、P2がP1から所定距離以内であるときには、P2を有効と判断し、図4の算出方式でW2を算出する。所定距離とは、例えば特許文献1に説明されている位置誤差範囲(UERE)の円の半径、又は後述の図18の誤差範囲の円の半径である。
【0038】
これに対し、P2がP1から所定距離より大きい距離、離れているときには、補正位置Q2を算出し、P1,Q2に基づきW2を設定する。具体的には、W2は、中心がP1であって半径がP1−Q2間の距離Rである円となる。
【0039】
図6における補正された現在位置Q2の算出方式は例えば特許文献1の図3に説明されているとおりである。すなわち、Q2の算出に先立ち、今回の予測位置U2を算出する。U2は、位置P1における速度及び向きを算出し、算出した速度で算出した向きの方へP1から移動した場合のP2の算出時刻における到達位置とされる。補正位置Q2は、P2とU2とを結ぶ直線と、P2を中心として誤差範囲を半径とする円との交点である。
【0040】
補正位置Q2に基づき今回の存在エリアW2が表示された場合には、補正位置Q2が図2の位置情報P2として情報記憶部16において上書きされる。補正位置Q2が、図2の位置情報P2として情報記憶部16において上書きされるのは、図6における補正位置Q2の場合だけでなく、補正位置Q2を算出する後述の図7、図10、図11及び図15の場合にも行われる。
【0041】
図7は図4の算出方式の別の変形例についての説明図である。図4の算出方式との相違点についてのみ説明する。図7の算出方式では、P1がP2から所定距離以内であるときには、P2を有効と判断し、図4の算出方式でW2を算出する。
【0042】
所定距離とは、例えば、ユーザの最大歩行速度をVとし、W2の表示の更新時間間隔Tとすると、V・Tである。携帯端末10のユーザが自転車や自動車に乗っている場合もあり、所定距離は、最大歩行速度Vに代えて、直近の所定時間内の最大移動速度とTとの積としてもよい。中心がP1であって半径が所定距離である円は、図7において波線で示す。ただし、波線の円は、図7において今回の存在エリアW2の実線の円に一致するため、実線の円に隠れて見え難くなっている。波線の円は、後述の図11では、明瞭に示されているので、参考にされたい。
【0043】
一方、P2がP1から所定距離より大きい距離、離れているときには、W2は、中心がP1であって半径が該所定距離である円とする。また、P1とP2とを結ぶ直線と、W2の円周との交点を補正位置Q2として算出し、補正位置Q2は、図2の位置情報P2として情報記憶部16に上書きされる。
【0044】
図8は現在位置存在範囲を、今回の現在位置を中心とする所定半径の円として算出する方式の説明図である。図8を参照して、算出方式を先に説明してから、該算出方式を採用した図9の現在位置表示処理方法50を説明する。図8の算出方式において、図4の算出方式と相違する点は、図8の算出方式では、今回の存在エリアW2は、中心がP2であって半径がP1−P2間の距離Rである円に設定されることである。
【0045】
図9は図8の算出方式を採用した現在位置表示処理方法50のフローチャートである。S51〜S54までは、図5の現在位置表示処理方法40のS41〜S44と同一であるので、説明は省略する。S55では、位置情報P2を中心とした半径Rの円を地図上に描画する。該円は、図8のW2のことである。
【0046】
図10は図8の算出方式の変形例についての説明図である。図8の算出方式との相違点についてのみ説明する。図10の算出方式では、P2がP1から所定距離以内であるときには、P2を有効と判断し、図8の算出方式でW2を算出する。
【0047】
これに対し、P2がP1から所定距離より大きい距離、離れているときには、補正位置Q2を算出し、W2は、半径がP1−Q2間の距離であって中心がQ2である円となる。図10における予測位置U2及び補正位置Q2の決め方は図6の場合と同様である。
【0048】
図11は図8の算出方式の別の変形例についての説明図である。図8の算出方式との相違点についてのみ説明する。図11では、図7と同様の仕方で補正位置Q2が決められる。図11の算出方式では、P2がP1から所定距離以内(図11の波線の円内)であるときには、P2を有効と判断し、図8の算出方式でW2を算出する。該所定距離とは、図7の場合の所定距離と同一である。
【0049】
P2がP1から所定距離より大きい距離、離れているときには、補正位置Q2を算出し、W2は、半径がP1−Q2間の距離であって中心がQ2である円となる。
【0050】
図12は位置情報に基づき直径を算出してから該直径をもつ円を現在位置存在範囲として算出する方式の説明図である。図12を参照して、算出方式を先に説明してから、該算出方式を採用した図13の現在位置表示処理方法60を説明する。図12の算出方式では、W2は、P1,P2を直径の両端とする円に設定される。
【0051】
直径がP1−P2の距離である円とする今回の存在エリアW2は、半径がP1−P2の距離である円とする今回の存在エリアW2(図4〜図11)に比して、面積が減少し、ユーザは現在位置の存在範囲を絞り易くなる。
【0052】
図13は図12の算出方式を採用した現在位置表示処理方法60のフローチャートである。S61〜S64までは、図5の現在位置表示処理方法40のS41〜S44と同一であるので、説明は省略する。S65では、位置情報P1とP2とを直径の両端とする中心の座標Pを算出する。S66では、座標Pを中心とした直径Rの円を地図上に描画する。該円は、図12のW2のことである。
【0053】
図14は図12の算出方式の変形例についての説明図である。図14では、図6と同様の仕方で予測位置U2及び補正位置Q2を決める。今回の存在エリアW2は、P1とQ2とを直径の両端とする円となる。
【0054】
図15は図12の算出方式の別の変形例についての説明図である。図15では、図7と同様の仕方で補正位置Q2が決められる。今回の存在エリアW2は、P1とQ2とを直径の両端とする円となる。
【0055】
図16はGPS電波から位置情報と共に誤差情報を算出して情報記憶部16に格納する現在位置表示処理方法70のフローチャートである。現在位置表示処理方法70によって格納された位置情報及び誤差情報は後述の図18及び図20における今回の存在エリアW2の算出に利用される。現在位置表示処理方法70の実行時間間隔は典型的には今回の存在エリアW2の更新時間間隔に一致させる。S71,S72は図3のGPS受信処理方法25のS26,S27と同一であるので、説明は省略する。
【0056】
S73では、受信したGPS情報を解析し、携帯端末10の現在位置、速度及び方向を特定する。S74では、S73で特定した現在位置、速度及び方向から現在位置の誤差範囲の円を算出する。誤差範囲の円とは、後述の図18及び図19のE1,E2に相当する。
【0057】
誤差範囲の具体的な決め方は、例えば特許文献3に開示されているものを採用する。決め方として、(a)GPSの世界では、測位誤差は2drms(twice the distance root meansquare)として表されるのが一般的であり、この2drmsの半径内で正しい位置が存在する可能性は95.45%〜98.16%であるので、この2drmsの値を誤差円の半径とする仕方、及び(b)横軸をGPS電波の受信感度、GPS電波に含まれるDOP(Dilution of Precision)値や標準偏差,衛星数及び/又は端末の速度にするとともに、それらに関して携帯端末10の機種について経験的に調べた誤差量を縦軸にしたグラフ情報を情報記憶部16のROMに格納しておき、検出した受信感度やDOP値等に基づき誤差量を算出し、誤差量を誤差円の半径とする仕方がある。
【0058】
S75では、情報記憶部16において、位置情報P2及び誤差情報E2を位置情報P1及び誤差情報E1へ上書きする。情報記憶部16における位置情報及び誤差情報の具体的な格納方式については後述の図17で説明する。S76では、S73で解析した現在位置とS74で算出した誤差情報とを情報記憶部16の位置情報P2及び誤差情報E2にそれぞれ上書きする。
【0059】
図17は情報記憶部16における位置情報及び誤差情報の格納方式についての説明図である。図2との差異についてのみ説明する。図2では、位置情報P1,P2のみが相互に区別自在に情報記憶部16に格納されていたのに対し、図17では、位置情報P1,P2のそれぞれに対応付けて誤差情報E1,E2も格納される。位置情報P1及び誤差情報E1はS75で上書きされたものであり、位置情報P2及び誤差情報E2はS76で上書きされたものである。
【0060】
図18は前回及び今回の誤差範囲を両端部に含む形状の現在位置存在範囲についての算出方式の説明図である。前回の位置情報P1及び誤差情報E1、並びに今回の位置情報P2及び誤差情報E2は情報記憶部16に記憶されている図17のものを使用する。
【0061】
中心が前回の位置情報P1であって直径が誤差情報E1から抽出した誤差範囲の両端距離である円Aと、中心が今回の位置情報P2であって直径が誤差情報E2から抽出した誤差範囲の両端距離である円Bとを設定する。次に、円A,Bに対し、それらの共通接線C,Dを設定する。次に、円Aにおける接線C,Dとの接点a1,a2を設定する。また、円Bにおける接線C,Dとの接点b1,b2を設定する。
【0062】
今回の存在エリアW2は、線分a1−b1と、線分a2−b2と、点a1,a2から外側に膨出してそれらをつなぐ円Aの円周部分と、点b1,b2から外側に膨出してそれらをつなぐ側の円Bの円周部分とから囲われる領域に設定する。
【0063】
図19は図18の算出方式を採用した現在位置表示処理方法100のフローチャートである。S101,S102は現在位置表示処理方法40(図5)のS41,S42と同一であり、説明は省略する。
【0064】
S103では、位置情報P1に対する誤差情報E1が情報記憶部16に格納されているか否かを判定し、判定が正であれば、S104へ進み、否であれば、S105へ進む。S104では、誤差情報E1の誤差範囲の円Aを設定する。S105では、予め定めていた半径の円Aを設定する。なお、円Aの中心は位置情報P1である。S104及び後述のS108において、誤差情報E1,E2がなくても、円A,Bを設定するのは、少なくとも位置情報P1,P2さえあれば、ユーザへのW2の提示を確保するためである。
【0065】
S106では、位置情報P2に対する誤差情報E2が情報記憶部16に格納されているか否かを判定し、判定が正であれば、S107へ進み、否であれば、S108へ進む。S107では、誤差情報E2の誤差範囲の円Bを設定する。S108では、予め定めていた半径の円Bを設定する。なお、円Bの中心は位置情報P2である。
【0066】
S109では、現在位置表示を表示更新のために削除する。S110では、円A,Bに対する共通接線C,Dを算出する。S111では、円Aにおける接線C,Dの接点a1,a2、及び円Bにおける接線C,Dの接点b1,b2を算出する。
【0067】
最後に、S112において、円A,B及び接点a1,a2,b1,b2により構成された台形、すなわち図18のW2を表示部14に描画する。なお、この描画方法では円A、円B、台形で重なる部分が無駄になるが、このような描画方法が最も単純でミスが少ない。
【0068】
図20は図18の算出方式の変形例についての説明図である。図20の今回の存在エリアW2は、両端部に円A,Bを含む楕円状範囲になっている。W2の楕円は、高さ(短軸長さ)が、円A,B間の中心距離とされ、幅(長軸長さ)は、円Aの半径+円Bの半径+高さとされ、幅方向両端において円A,Bに接したものにされる。
【0069】
図21は図20の算出方式を採用した現在位置表示処理方法130のフローチャートである。現在位置表示処理方法130において、図19の現在位置表示処理方法100のステップと同一処理のステップについては、現在位置表示処理方法100の対応ステップと同一のステップ番号を付して、説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0070】
S131では、円Aの半径Ra、円Bの半径Rb及び円A,B間の中心距離Rcを算出する。S132では、高さ=Rc、幅=Ra+Rb+Rcを算出する。S133では、円A,Bに外接し、算出した高さ及び幅の楕円、すなわち図20のW2を表示部14に描画する。
【0071】
携帯端末10について上述した今回の存在エリアW2の算出及び表示は、装置としてだけでなく、方法やプログラムとしても実現できる。方法として実現する場合には、携帯端末10の各機能部又は各機能手段は、各機能と実質的に同一内容の処理を実行する各ステップに置き換える。その場合に、携帯端末10における単一の機能部又は機能手段が複数のサブ機能部又はサブ手段から成るときには、それらサブ機能部又はサブ手段は、各サブ機能と実質的に同一内容のサブ処理を実行するサブステップに置き換えられる。
【0072】
同様に、本実施の形態の装置の各部又は各手段はその機能及びサブ機能と実質的に同一内容の処理及びサブ処理を実行するステップ及びサブステップに置き換えて、本実施の形態の方法を実現することができる。
【0073】
さらに、本実施の形態を適用したプログラムは、本実施の形態の装置の各部又は各手段として機能させる。本実施の形態を適用した別のプログラムは、本実施の形態の方法の各ステップをコンピュータに実行させる。
【0074】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更(付加及び削除も含む。)が可能であることは言うまでもない。
【0075】
本明細書は様々な範囲及びレベルの発明を開示している。それら発明は、本明細書で説明した様々な技術的範囲及び具体的レベルの各装置及び各方法だけでなく、拡張ないし一般化の範囲で、各装置及び各方法から独立の作用、効果を奏する1つ又は複数の要素を抽出したものや、1つ又は複数の要素を拡張ないし一般化の範囲で変更したものや、さらに、各装置間及び各方法間で1つ又は複数の要素の組合せを入れ換えたものを含む。
【符号の説明】
【0076】
10:携帯端末、11:CPU、12:GPS受信部、13:無線通信部、14:表示部、15:操作部、16:情報記憶部、17:時計・タイマ部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機の現在位置を測位する現在位置測位部と、
各時点の測位現在位置に係る位置情報を、測位時刻の先後が区別できるように記憶媒体に記憶させる記憶媒体制御部と、
前記記憶媒体から読み出した過去及び今回の位置情報に基づき現在位置存在範囲を割り出す割り出し部と、
前記現在位置存在範囲を表示器に表示する表示制御部と、
を備えることを特徴とする端末。
【請求項2】
前記測位現在位置に係る位置情報とは、測位現在位置そのもの又は測位現在位置を補正した位置を特定する情報であることを特徴とする請求項1記載の端末。
【請求項3】
前記現在位置存在範囲は、前回又は今回の位置情報により特定される位置を中心とする円であるか、又は前記位置を周上の点とする円若しくは楕円であることを特徴とする請求項1又は2記載の端末。
【請求項4】
前記現在位置存在範囲は、前回及び今回の測位現在位置についての誤差範囲を両端部に含む範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の端末。
【請求項5】
自機の現在位置を測位する現在位置測位ステップと、
各時点の測位現在位置に係る位置情報を区別できるように記憶媒体に記憶させる記憶媒体制御ステップと、
前記記憶媒体から読み出した過去及び今回の位置情報に基づき現在位置存在範囲を割り出す割り出しステップと、
前記現在位置存在範囲を表示器に表示する表示制御ステップと、
を備えることを特徴とする端末制御方法。
【請求項6】
コンピュータを請求項1〜4のいずれか1項に記載の端末として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−237336(P2011−237336A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110337(P2010−110337)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】