説明

競技用計時システム、無線機器、および、タイム送信方法

【課題】キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時できる競技用計時システム等を提供する。
【解決手段】各無線タグ60は、予め3つのグループ(A,B,Cグループ)に分けられている。そして、グループ毎に、互いに素となる通信間隔(2,3,5)を空けて通信(タイム情報の送信)が行われる。つまり、Aグループの無線タグ60は2α(α=1回の通信時間)、Bグループでは3α、そして、Cグループでは5αだけ、通信間隔を空けて通信を行う。また、各無線タグ60は、それぞれ合計3回に亘って通信を行う際に、1回目と2回目の通信は、第1のチャンネルを使用するが、3回目の通信は、第2のチャンネルを使用する。なお、チャンネルを変更して行う3回目の通信は、通信間隔を待たずに、変更直後(通信時間αの周期上)に開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することのできる競技用計時システム、無線機器、および、タイム送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マラソン競技において、競技者個々のゴールタイムを計測(計時)する試みがなされている。例えば、競技者のゼッケン等にバーコードを印刷しておき、ゴールした競技者のバーコードをリーダにて読み取った時刻に基づいて、競技者個々のゴールタイムを計測する計測システムも実用化されている。
最近では、各計時ポイントにおける通過タイムも含めた競技タイムを計測可能とするために、非接触にて競技者個々の競技タイムを計測する試みがなされている。例えば、競技者にタグ送信機を保持させ、このタグ送信機から送られる情報により、競技タイムを計測する計測システムが開発され、実用化に向けた運用試験等が試みられている。
【0003】
より具体的には、方形ループコイル等から競技トラック上の計測エリア内にトリガ信号を送信するようにしておき、タグ送信機を保持する競技者がその計測エリア内を走行すると、このトリガ信号に応答してタグ送信機からID(識別番号等)が送信される。そして、ID受信ユニットがこのIDを受信することにより、各競技者の周回数や競技タイム等を計測する(例えば、特許文献1参照)。
この他にも、タグ送信機がUHF帯の微弱無線電波等にてIDを送出することにより、タグ送信機の通信距離の拡大を図る技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−141497号公報 (第2−4頁、第2図)
【特許文献2】特開2004−125765号公報 (第3−4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1,2の技術では、計時エリア内にてトリガ信号を受信している間中、タグ送信機がIDを間断なく発信し続けている(特許文献2では、ランダムな間隔にて送信を繰り返している)。
これは、方形のループコイルによりトリガ信号が送信されるため、計時エリア内における正確なトリガポイント(例えば、ゴールライン等のような計時ライン)をタグ送信機にて検出することが極めて困難なことに起因している。そのため、タグ送信機は、競技者が計時エリアに入りトリガ信号を検出すると、直ちにIDの送信を開始し、計時エリアを抜けてトリガ信号の検出を終えるまで、IDを送信し続けている。
一方、ID受信ユニットは、このIDを最初に受信すると、その時刻を開始時刻とし、また、このIDの受信を終えると、その時刻を終了時刻とする。そして、開始時刻から終了時刻までの中間の時刻を求めることにより、このIDに対応する競技者の競技タイムを計時していた。
【0005】
ところが、このような特許文献1,2の技術では、同時期に大勢の競技者が計時エリア内に到達すると、ID受信ユニット側が、送信されるはずのIDを適切に受信できない場合があった。これは、計時エリア内にて、複数のタグ送信機がそれぞれにIDを送信し続けることにより、ID受信ユニット側の処理が追いつかない状況が生じたり、各IDの送信時にコリジョンが発生してしまうためである。
このため、ID受信ユニットにて、開始時刻や終了時刻が正しく得られずに不正確な競技タイムを計時してしまったり、IDの受信が殆ど行えずに計時すべき競技タイムをロストしてしまうという問題があった。
なお、特許文献2に開示されている技術では、コリジョンの発生を抑えるべく、タグ送信機側がランダムな間隔にてIDを送信している。それでも現実には、計時エリア内で各タグ送信機がそれぞれにIDの送信を繰り返すうちに、コリジョンが発生してしまっていた。
そのため、このようなコリジョンの発生を抑制すべく、送信前に、他のタグ送信機が送信中であるかを検出するためのキャリアセンスを、各タグ送信機にて行わせることも考えられる。
【0006】
しかしながら、競技者(人体)に接するようにタグ送信機が取り付けられているため、アンテナの形状や種類等によっては、タグ送信機の通信能力が著しく低下してしまう場合があった。また、競技中においては、タグ送信機と他のタグ送信機との間に競技者等が入り込むことも起こり得り、その場合もタグ送信機の通信能力が著しく低下してしまうことになる。
これらのような場合では、各タグ送信機にて、キャリアセンスが適切に行えなくなり、他のタグ送信機が送信中であっても、送信中でないと判別して送信を開始してしまい、結果としてコリジョンを生じさせてしまうことになる。
そのため、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制する技術が求められていた。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することのできる競技用計時システム、無線機器、および、タイム送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る競技用計時システムは、
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信側機器と、を含む競技用計時システムであって、
前記各無線機器には、
所定周期に同期した時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記トリガポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻をトリガポイント時刻として特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記トリガポイント時刻から無線通信が終了するまでの経過時間を含むタイム情報を、前記計時手段にて計時される前記所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御手段と、が設けられ、
前記受信側機器には、
競技における基準時刻を計時する基準時刻計時手段と、
前記各無線機器の前記無線通信手段から送信される前記タイム情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により前記タイム情報が受信された際に前記基準時刻計時手段にて計時された基準時刻から、前記タイム情報に含まれる前記経過時間を差し引くことにより、前記無線機器におけるトリガポイント検出時点の競技タイムを算定する競技タイム算定手段と、が設けられている、
ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、各無線機器において、計時手段は、例えば、走路上に生成された電磁場から受信した同期信号、言い換えれば、通信タイミングパターンの周期に同期した時刻を計時する。また、検出手段は、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する。特定手段は、トリガポイントが検出された際に、計時手段にて計時された時刻をトリガポイント時刻として特定する。無線通信手段は、特定されたトリガポイント時刻から無線通信が終了するまでの経過時間を含むタイム情報を、例えば、通信タイミングパターンの周期に同期したタイミングで受信側機器に向けて送信する。そして、送信制御手段は、無線通信手段が送信するタイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる。一方、受信側機器において、基準時刻計時手段は、競技における基準時刻となる例えば、ランニングタイムを計時する。また、受信手段は、各無線機器の無線通信手段から送信されるタイム情報を受信する。そして、競技タイム算定手段は、タイム情報が受信された際に基準時刻計時手段にて計時された基準時刻(ランニングタイム)から、タイム情報に含まれる経過時間を差し引くことにより、無線機器におけるトリガポイント検出時点の競技タイムを算定する。
【0010】
このように、各無線機器は、通信タイミングパターンの周期に同期したタイミングで、タイム情報を複数回に亘って送信する。その際、各無線機器は、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、タイム情報を送信する。例えば、1回目の通信から2回目の通信を行う際に、各無線機器において、互いに素となる通信間隔を空けて、タイム情報を受信側機器に送信する。
これにより、各無線機器の通信タイミングが適宜ずれることになり、通信時に発生し得るコリジョンをより一層低減することができる。
この結果、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0011】
前記各無線機器には、
前記トリガポイントの手前の走路上に生成された電磁場に重畳された同期信号を取得する同期信号取得手段と、
前記同期信号取得手段で取得した前記同期信号により前記計時手段の計時する時刻を前記所定周期に同期させる同期手段と、
が設けられている、
ことが好ましい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る競技用計時システムは、
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信側機器と、を含む競技用計時システムであって、
前記各無線機器には、
競技における基準時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記トリガポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻を競技タイムとして特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記競技タイムを含むタイム情報を、前記計時手段にて計時される所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御手段と、が設けられ、
前記受信側機器には、
前記各無線機器の前記無線通信手段から送信される前記タイム情報を受信する受信手段が設けられている、
ことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、各無線機器において、計時手段は、競技における基準時刻となる例えば、ランニングタイムを計時する。また、検出手段は、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する。特定手段は、トリガポイントが検出された際に、計時手段にて計時された時刻を競技タイムとして特定する。無線通信手段は、特定された競技タイムを含むタイム情報を、例えば、タイム情報の1回分の無線通信に要する通信時間を所定周期としてこの周期に同期したタイミングに受信側機器に向けて送信する。そして、送信制御手段は、無線通信手段が送信するタイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる。一方、受信側機器において、受信手段は、各無線機器の無線通信手段から送信されるタイム情報を受信する。
【0014】
このように、各無線機器は、通信時間の周期に同期したタイミングで、タイム情報を複数回に亘って送信する。その際、各無線機器は、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、タイム情報を送信する。例えば、1回目の通信から2回目の通信を行う際に、各無線機器において、互いに素となる通信間隔を空けて、タイム情報を受信側機器に送信する。
これにより、各無線機器の通信タイミングが適宜ずれることになり、通信時に発生し得るコリジョンをより一層低減することができる。
この結果、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0015】
前記各無線機器は、複数グループの何れかにグループ分けされており、
前記送信制御手段は、前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、他のグループの無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させてもよい。
【0016】
前記各無線機器は、無線通信に使用する複数のチャンネルが割り当てられており、
前記送信制御手段は、前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、チャンネルを変えつつ送信させてもよい。
【0017】
前記無線通信手段は、前記タイム情報の1回の無線通信に要する通信時間を前記所定周期として、前記タイム情報を前記受信側機器に向けて送信してもよい。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る無線機器は、
各競技者にそれぞれ携帯され、競技における基準時刻を計時している受信側機器に向けて情報を送信する無線機器であって、
所定周期に同期した時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記トリガポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻をトリガポイント時刻として特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記トリガポイント時刻から無線通信が終了するまでの経過時間を含むタイム情報を、前記計時手段にて計時される前記所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、計時手段は、例えば、走路上に生成された電磁場から受信した通信タイミングパターンの周期に同期した時刻を計時する。また、検出手段は、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する。特定手段は、トリガポイントが検出された際に、計時手段にて計時された時刻をトリガポイント時刻として特定する。無線通信手段は、特定されたトリガポイント時刻から無線通信が終了するまでの経過時間を含むタイム情報を、例えば、通信タイミングパターンの周期に同期したタイミングで受信側機器に向けて送信する。そして、送信制御手段は、無線通信手段が送信するタイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる。
【0020】
このように、無線機器は、通信タイミングパターンの周期に同期したタイミングで、タイム情報を複数回に亘って送信する。その際、無線機器は、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、タイム情報を送信する。例えば、1回目の通信から2回目の通信を行う際に、複数の無線機器において、互いに素となる通信間隔を空けて、タイム情報を受信側機器に送信する。
これにより、複数の無線機器において通信タイミングが適宜ずれることになり、通信時に発生し得るコリジョンをより一層低減することができる。
この結果、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係る無線機器は、
各競技者にそれぞれ携帯される無線機器であって、
競技における基準時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記トリガポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻を競技タイムとして特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記競技タイムを含むタイム情報を、前記計時手段にて計時される所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、計時手段は、競技における基準時刻となる例えば、ランニングタイムを計時する。また、検出手段は、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する。特定手段は、トリガポイントが検出された際に、計時手段にて計時された時刻を競技タイムとして特定する。無線通信手段は、特定された競技タイムを含むタイム情報を、例えば、1回分の無線通信に要する通信時間の周期に同期したタイミングで受信側機器に向けて送信する。そして、送信制御手段は、無線通信手段が送信するタイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる。
【0023】
このように、無線機器は、通信タイミングパターンの周期に同期したタイミングで、タイム情報を複数回に亘って送信する。その際、無線機器は、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、タイム情報を送信する。例えば、1回目の通信から2回目の通信を行う際に、複数の無線機器において、互いに素となる通信間隔を空けて、タイム情報を受信側機器に送信する。
これにより、複数の無線機器において通信タイミングが適宜ずれることになり、通信時に発生し得るコリジョンをより一層低減することができる。
この結果、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0024】
上記目的を達成するため、本発明の第5の観点に係るタイム送信方法は、
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信側機器と、を含む競技用計時システムにおけるタイム送信方法であって、
前記各無線機器において、所定周期に同期した時刻を計時する計時ステップと、
前記各無線機器において、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出ステップと、
前記各無線機器において、前記トリガポイントが検出された際に、前記計時ステップにて計時された時刻をトリガポイント時刻として特定する特定ステップと、
前記各無線機器において、前記特定ステップにて特定された前記トリガポイント時刻から無線通信が終了するまでの経過時間を含むタイム情報を、前記計時ステップにて計時される前記所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信ステップと、
前記各無線機器において、前記無線通信ステップにて送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御ステップと、
前記受信側機器において、競技における基準時刻を計時する基準時刻計時ステップと、
前記受信側機器において、前記各無線機器の前記無線通信ステップにて送信される前記タイム情報を受信する受信ステップと、
前記受信側機器において、前記受信ステップにて前記タイム情報が受信された際に前記基準時刻計時ステップにて計時された基準時刻から、前記タイム情報に含まれる前記経過時間を差し引くことにより、前記無線機器におけるトリガポイント検出時点の競技タイムを算定する競技タイム算定ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、各無線機器において、計時ステップでは、例えば、走路上に生成された電磁場から受信した通信タイミングパターンの周期に同期した時刻を計時する。また、検出ステップでは、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する。特定ステップでは、トリガポイントが検出された際に、計時ステップにて計時された時刻をトリガポイント時刻として特定する。無線通信ステップでは、特定されたトリガポイント時刻から無線通信が終了するまでの経過時間を含むタイム情報を、例えば、通信タイミングパターンの周期に同期したタイミングで受信側機器に向けて送信する。そして、送信制御ステップでは、無線通信ステップにて送信するタイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる。一方、受信側機器において、基準時刻計時ステップでは、競技における基準時刻となる例えば、ランニングタイムを計時する。また、受信ステップでは、各無線機器の無線通信ステップにて送信されるタイム情報を受信する。そして、競技タイム算定ステップでは、タイム情報が受信された際に基準時刻計時ステップにて計時された基準時刻(ランニングタイム)から、タイム情報に含まれる経過時間を差し引くことにより、無線機器におけるトリガポイント検出時点の競技タイムを算定する。
【0026】
このように、各無線機器は、通信タイミングパターンの周期に同期したタイミングで、タイム情報を複数回に亘って送信する。その際、各無線機器は、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、タイム情報を送信する。例えば、1回目の通信から2回目の通信を行う際に、各無線機器において、互いに素となる通信間隔を空けて、タイム情報を受信側機器に送信する。
これにより、各無線機器の通信タイミングが適宜ずれることになり、通信時に発生し得るコリジョンをより一層低減することができる。
この結果、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0027】
上記目的を達成するため、本発明の第6の観点に係るタイム送信方法は、
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信側機器と、を含む競技用計時システムにおけるタイム送信方法であって、
前記各無線機器において、競技における基準時刻を計時する計時ステップと、
前記各無線機器において、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出ステップと、
前記各無線機器において、前記トリガポイントが検出された際に、前記計時ステップにて計時された時刻を競技タイムとして特定する特定ステップと、
前記各無線機器において、前記特定ステップにて特定された前記競技タイムを含むタイム情報を、前記計時ステップにて計時される所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信ステップと、
前記各無線機器において、前記無線通信ステップにて送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御ステップと、
前記受信側機器において、前記各無線機器の前記無線通信ステップにて送信される前記タイム情報を受信する受信ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、各無線機器において、計時ステップでは、競技における基準時刻となる例えば、ランニングタイムを計時する。また、検出ステップでは、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する。特定ステップでは、トリガポイントが検出された際に、計時ステップにて計時された時刻を競技タイムとして特定する。無線通信ステップでは、特定された競技タイムを含むタイム情報を、例えば、1回分の無線通信に要する通信時間の周期に同期したタイミングで受信側機器に向けて送信する。そして、送信制御ステップでは、無線通信ステップにて送信するタイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる。一方、受信側機器において、受信ステップでは、各無線機器の無線通信ステップにて送信されるタイム情報を受信する。
【0029】
このように、各無線機器は、通信時間の周期に同期したタイミングで、タイム情報を複数回に亘って送信する。その際、各無線機器は、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、タイム情報を送信する。例えば、1回目の通信から2回目の通信を行う際に、各無線機器において、互いに素となる通信間隔を空けて、タイム情報を受信側機器に送信する。
これにより、各無線機器の通信タイミングが適宜ずれることになり、通信時に発生し得るコリジョンをより一層低減することができる。
この結果、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態にかかる競技用計時システムについて、以下図面を参照して説明する。なお、一例として、マラソン競技に適用され、各競技者の競技タイムを計時する競技用計時システムについて説明する。
【0032】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施形態に適用される競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。なお、以下ではタイム計時を行う中継地点やゴール地点を、便宜的にまとめて計時地点として説明する。つまり、図中の計時地点は、中継地点やゴール地点を示している。
【0033】
図示するように、競技用計時システムは、スタート地点に設置されるタイマ機器10と、計時地点に設置されるタイマ機器10、変調磁場発生装置20、ループコイル21、磁場発生装置30、ループコイル31、受信コントロールボックス40、受信機41、処理装置50と、各競技者RNにそれぞれ携帯される無線タグ60と、を含んで構成される。
【0034】
タイマ機器10は、スタート地点及び計時地点にそれぞれ配置され、競技における基準時刻となるランニングタイムを計時する。一例として、各タイマ機器10は、競技のスタート予定時刻までダウンカウントし、スタート予定時刻からランニングタイムをアップカウントする。
例えば、競技の開始前に全てのタイマ機器10がスタート地点に集められ、図2(a)に示すように、各タイマ機器10をケーブルCBで接続して、同時にダウンカウントを開始させる。つまり、ダウンカウントする時間(残り時間)をセットすると共に、セットした時間を考慮した適切なタイミングで、グリップスイッチGSからダウンカウント開始信号を供給する。これにより、各タイマ機器10は、同期してダウンカウントを開始し、スタート予定時刻から同期したランニングタイムを計時することになる。
この他にも、GPS(Global Positioning System)衛星等から得られる標準時刻を共通に計時してもよい。
例えば、図2(b)に示すように、標準時刻受信機KJが接続されたタイマ機器10と他のタイマ機器10とをケーブルCBで接続して、個々に標準時刻の計時を開始させる。
【0035】
このように、各タイマ機器10にて同期した時刻(ランニングタイム等)の計時が開始した後に、計時地点に配置されるタイマ機器10が適宜搬送される。
その後、図2(c)に示すように、スタート地点に配置されるタイマ機器10がスタートピストルSPと接続され、競技開始の合図と共にスタートピストルSPからスタート信号が供給されると、このタイマ機器10は、実際のスタート時刻とランニングタイムとの時差、つまり差分を求める。そして、計時地点に運ばれたタイマ機器10にこの差分が入力されると、計時地点においても、時差が解消されて同期したランニングタイムを計時することになる。
なお、このような差分の入力は、例えば、競技者RNが最初の計時地点に到達する前に終えられるものとする。
【0036】
図1に戻って、計時地点の変調磁場発生装置20は、例えば、走路の沿道に配置され、ループコイル21上に電磁場を発生させる。具体的に変調磁場発生装置20は、所定周波数に同期した正弦波を発生させる正弦波発生回路と、所定の波形パターン(後述する通信タイミングパターン)に従った正弦波を所定方式にて変調させる変調回路と、変調させた信号(変調信号)を増幅してループコイル21に供給する電力増幅回路とを含んで構成される。
【0037】
ループコイル21は、略方形に形成されたコイルであり、競技者RNが走行する走路上に適宜配置される。なお、ループコイル21は、ループコイル31(計時ポイント)よりも手前の走路上に配置される。
ループコイル21は、一例として、図3(a)に示すように、競技者RNの走行方向(矢印A方向)に対して直交する方向に延びる直線bを中心線として、平行に所定距離だけ隔てた直線a、cに沿って略方形(矩形)に形成されている。そして、1辺に給電点sを有するように形成され、この給電点sから矢印方向に電流が流れるようになっている。
そして、ループコイル21は、変調磁場発生装置20から給電点sを通じて変調信号が供給されると、コイル上に変調された交流電磁場を生成する。具体的には、図3(b)に示すような電磁場を生成する。この電磁場には、例えば、OOK(On-Off-Keying)等の振幅変調方式にて変調された図3(c)に示すような通信タイミングパターンが重畳されている。この通信タイミングパターンは、一例として、無線タグ60の1回分の通信時間α(例えば、100ミリ秒)を周期とした波形となるように成形されている。そのため、ループコイル21上を競技者RNが通過した際に、無線タグ60は、この通信タイミングパターンを受信し、波形の立ち上がりをトリガとして計時を開始することで、通信時間αの周期に同期させることができる。なお、この通信時間αの周期は、後述するように、通信を開始するタイミングに使用される。
【0038】
図1に戻って、磁場発生装置30は、例えば、走路の沿道に配置され、ループコイル31上に電磁場を発生させる。具体的に磁場発生装置30は、所定周波数に同期した正弦波を発生させる正弦波発生回路と、発生させた正弦波を増幅してループコイル31に供給する電力増幅回路とを含んで構成される。
【0039】
ループコイル31は、略「8の字」形状に形成されたコイルであり、走路上における計時ポイントに適宜配置される。
ループコイル31は、一例として、図4(a)に示すように、矩形(方形)のコイル部を競技者RNの走行方向(矢印A方向)に2つ連ねたような8の字に形成されている。より詳細には、ループコイル31は8の字順方向巻きとなっており、8の字の中心(中点)、すなわち交差部に給電点sを有するように形成され、この給電点sを通って競技者RNの走行方向に対して直交する方向に延びる直線bを中心線として、略平行に所定距離だけ隔てた直線a,bに沿って、8の字の上下部が形成されている。なお、ループコイル31は、この直線bが計時を行うための図1に示す計時ラインL上に重なるように配置される。
【0040】
そして、ループコイル31は、図4(a)の給電点sから矢印方向に電流が流れるようになっており、磁場発生装置30から正弦波が供給されると、コイル上に交流電磁場を生成する。具体的には、図4(b)に示すように、一方のコイル部上に第1の電磁場310aを生成するとともに、他方のコイル部上に第1の電磁場310aに対して競技者RNの走行方向(矢印A方向)に隣接し且つ第1の電磁場310aと電磁力を打ち消しあう第2の電磁場310bを生成する。
つまり、直線b上の電磁場の電磁界強度は、第1の電磁場310aと第2の電磁場310bとの電磁場の磁力の打ち消しにより、その両側の電磁界強度よりも極めて小さくなっている(例えば、電磁界強度が”0”となっている)。
【0041】
図4(b)に示すような電磁場中を、電磁場の検出方向(検出コイル面Dに対して直角な方向)が走路と垂直(つまり、検出コイル面Dが走路に対して平行方向)に配置された電磁場検出コイルC(後述する無線タグ60のLFアンテナ61)が矢印B方向に移動すると、図4(c)に示すような電磁界強度分布が得られる。つまり、電磁場検出コイルCは、走路に対して垂直方向の磁束をコイル面Dにて捉えることになるため、電磁界強度が極めて小さくなる(例えば、電磁界強度が”0”となる)図4(c)に示すような電磁界強度分布を検出する。
このため、競技者RNがループコイル31上を、矢印B方向に沿って通過した場合に、無線タグ60は、計時ラインL上(直線b上)を、第1の電磁場310aと第2の電磁場310bとの間の電磁場の変極点(後述するトリガポイント)として検出することができる。
【0042】
図1に戻って、計時地点に配置される受信コントロールボックス40は、受信機41を介して、無線タグ60から無線通信にて送られるタイム情報(後述する経過時間ΔT及び、タグID)を受信する。つまり、上述したループコイル31上の計時ラインLを通過した競技者RNの無線タグ60から送信される経過時間ΔT等を受信する。
なお、後述するように、経過時間ΔTは、計時ラインL上の計時タイミング(トリガポイント)から通信の終了までの所要時間(つまり、トリガポイントから通信終了までに要する時間)である。
また、受信コントロールボックス40は、タイマ機器10と接続されており、タイム情報を受信した時点でタイマ機器10が計時しているランニングタイムを取得する。そして、このランニングタイムから経過時間ΔTを差し引くことにより、競技者RNが計時ラインL上に到達した際の競技タイムを算出する。
【0043】
受信機41は、ループコイル31等の近傍に配置され、無線タグ60から送られるタイム情報を受信すると、このタイム情報に含まれる経過時間ΔT等を受信コントロールボックス40に供給する。
【0044】
処理装置50は、各競技者RNの競技タイム等を収集する。例えば、受信コントロールボックス40が算定した競技タイムと、対応するタグID(後述する無線タグ60のタグID)と収集する。
【0045】
一方、競技者RNに携帯(保持)される無線タグ60は、競技開始に伴い、競技者RNと共に走路上を移動し、スタート地点から途中の計時地点(中継地点等)を通過して最後の計時地点(ゴール地点)まで到達する。
これら各計時地点にて、無線タグ60は、ループコイル21上に生成される電磁場から通信タイミングパターンを受信し、通信時間α(例えば、100ミリ秒)の周期に同期させた計時を開始する。そして、ループコイル31上に生成される電磁場の変極点(トリガポイント)を検出すると、この検出時点から通信が終了するまでに要する経過時刻ΔTを求め、タイム情報として受信機41に向けて送信する。
その際、無線タグ60は、コリジョンの発生を抑制すべく、通信時間αをP倍した通信間隔(P・α)を空けながら、途中で送信周波数(チャンネル)を変えつつ、複数回(例えば、3回)に亘って、タイム情報を送信する。なお、後述するように、各無線タグ60は予めグループ分けされており、グループ毎に設定されるPには、互いに素となる異なった値(例えば、2,3,5等の素数)がそれぞれ割り当てられている。
【0046】
無線タグ60は、一例として、図5に示すように、LFアンテナ61と、増幅回路62と、検出回路63と、復調回路64と、制御部65と、計時部66と、記憶部67と、通信回路68と、通信アンテナ69と、を含んで構成される。
【0047】
LF(Low Frequency)アンテナ61は、上述したループコイル21及び、ループコイル31から発生される電磁場を検出する。つまり、変調磁場発生装置20によりループコイル21上に生成された電磁場(変調有り)を検出し、また、磁場発生装置30によりループコイル31上に生成された電磁場(変調無し)を検出する。
そして、LFアンテナ61は、検出した電磁界強度を示す検出信号を増幅回路62に供給する。
【0048】
増幅回路62は、LFアンテナ61から供給される検出信号を適宜増幅して、検出回路63及び、復調回路64に供給する。
【0049】
検出回路63は、増幅回路62から供給される検出信号に従って、ループコイル21上、又は、ループコイル31上への到達を検出し、更に、ループコイル31上における電磁場の変極点を検出する。
例えば、ループコイル21上において、検出回路63は、図6(a)に示すように、電磁場の電磁界強度が閾値以上になると検出出力を「HI」とし、電磁界強度が閾値以下になると検出出力を「LO」とする。なお、検出回路63は、変調の有無も合わせて検出する。つまり、一旦「HI」となった状態から通信タイミングパターンを示す「HI」「LO」の組み合わせが変調速度で表れるため、このパルス列を検出した際に、検出回路63は、競技者RN(無線タグ60)がループコイル21上に到達したことを検出可能となる。
一方、ループコイル31上において、検出回路63は、図6(b)に示すように、第1の電磁場310a及び、第2の電磁場310bの電磁場強度が閾値以上になると検出出力を「HI」とする。この際、ループコイル31上の電磁場には変調がかかっていないために、1回目で「HI」となった状態が所定期間以上持続し、これにより検出回路63は変調が無いことを検出する。つまり、検出回路63は、電磁場に変調が無いことから、競技者RNがループコイル31上に到達したことを検出する。
そして、第1の電磁場310aと第2の電磁場310bとの間で、電磁界強度が閾値以下になると検出回路63は、検出出力を「LO」とし、その後、第2の電磁場310bを検出して2回目に「HI」となった状態を電磁場の変極点として検出する。つまり、検出回路63は、図6(b)に示す2回目に「HI」となった状態を、ループコイル31上におけるトリガポイントとして特定する。
【0050】
図5に戻って、復調回路64は、検出回路63がループコイル21上に到達したことを検出すると(「HI」となった状態から変調も検出すると)、通信タイミングパターンを復調して取得する。つまり、ループコイル21上に生成された電磁場に重畳されている通信時間αを周期とした通信タイミングパターンを受信する。
つまり、図7(a)に示すような電磁場に変調がかかっている(通信タイミングパターンが重畳されている)場合に、復調回路64は、図7(b)に示すような通信タイミングパターンを復調する。この通信タイミングパターンは、無線タグ60の通信時間α(例えば、100ミリ秒)を周期とした波形となるように成形されている。このため、無線タグ60は、この通信タイミングパターンの立ち上がりをトリガとして計時部66に計時を開始させ、通信時間αの周期に同期させる。
なお、電磁場には、図7(c)に示すように、プリアンブルと通信タイミングパターンとが重畳されていてもよい。この場合、復調回路64は、プリアンブルを受信した際に、図示しない周知のAGC回路(Automatic Gain Control)により、レベル調整を行った後に、通信タイミングパターンを復調する。
【0051】
図5に戻って、制御部65は、無線タグ60全体を制御する。
例えば、競技開始前に所定の動作確認を終えると、制御部65は、電力消費を抑えたスリープモード(省電力モード)に移行する。その後、競技が開始され、競技者RNが計時地点のループコイル21上に到達すると、制御部65は、スリープモードから動作モードに移行する。そして、復調回路64が通信タイミングパターンを復調した通信タイミングパターンの立ち上がりをトリガとして計時部66をリセットし、通信時間αの周期に同期させた計時を開始させる。
すなわち、図8に示すように、競技者RNがループコイル21上に到達すると、検出回路63が変調された電磁場210を検出し、また、復調回路64が通信タイミングパターン211を復調する。そして、制御部65は、通信時間αを周期とした通信タイミングパターン211の立ち上がりをトリガとして、計時部66をリセットする。これにより、計時部66は、この時点(0.000秒)から計時を開始する。
続いて、競技者RNがループコイル31上に到達し、検出回路63が電磁場310の変極点(トリガポイント)を検出すると、制御部65は、その時点で計時部66が計時している時刻をトリガポイント時刻TPとして特定する。そして、制御部65は、1回目の通信を開始する時刻St(通信時間αの周期に同期したタイミング、以下、通信時間αの周期上という)を求め、更に、トリガポイント時刻TPから1回目の通信が終了する時刻Edまでの経過時間ΔTを算定する。
その後、制御部65は、1回目の通信を開始する時刻Stになるまで待機し、その時刻Stになると、通信回路68を制御して、経過時間ΔT及びタグIDを含んだタイム情報を、受信機41に送信する。
また、制御部65は、2回目の通信を行う際に通信間隔(P・α)を空けて、また、3回目の通信を行う際にチャンネルを変えて、タイム情報(経過時間ΔT及びタグID)を送信する。なお、経過時間ΔTは、各回の通信毎の値が求められる。以降の説明では、経過時間ΔTは、通信の都度求められる(再計算される)こととするが、トリガポイント時刻TPの時刻が特定された直後に通信間隔に応じて総ての値が求められ通信の都度選択されるような構成をとってもよい。
以下、このようなタイム情報の送信について、図9を参照して、より具体的に説明する。
【0052】
各無線タグ60は、予め3つのグループ(A,B,Cグループ)に分けられている。そして、グループ毎に設定されるPには、互いに素となる値(2,3,5の素数)がそれぞれ割り当てられている。
つまり、各グループの通信間隔(P・α)は、図示するように、Aグループが2αであり、Bグループが3αであり、そして、Cグループが5αとなっている。
また、各無線タグ60は、それぞれ合計3回に亘ってタイム情報を送信する。その際、1回目と2回目の通信は、第1のチャンネルを使用するが、3回目の通信は、第2のチャンネルを使用する。なお、チャンネルを変更して行う3回目の通信は、通信間隔を待たずに、変更直後(通信時間αの周期上)に開始する。この場合、チャンネルを変更した直後に通信信を開始しても、直前の互いに素である通信タイミング(通信間隔)の状態が継続するので、衝突(コリジョン)は少なくなる。
【0053】
また、図示するように、全グループの無線タグ60が3回に亘る通信を終えるのに、8αかかることになる。なお、無線タグ60が通信時間αに100ミリ秒を要する場合では、8αで800ミリ秒となり、1秒(1000ミリ秒)以内に収まることになる。
ここで、同時期に競技者RNがループコイル31上に到達する最大数を、1秒間に20人(20人/秒)と想定した場合、3グループで7チャンネル(3×7=21)が必要であり、更に、第1及び第2のチャンネルを使用することから、その2倍の14チャンネルが最低限必要となる。そして、実情に即してある程度の余裕(70%)を勘案すると、20チャンネル(14/0.7)が現実の運用時に必要となる。
なお、20チャンネル(10チャンネル×2)を使用した場合、ある程度の余裕(70%)を勘案しても、1秒間に21個分(10×3×0.7)の無線タグ60を処理できる計算となる。
【0054】
制御部65は、このような3回に亘る通信(タイム情報の送信)を適宜制御する。そして、3回目の通信を終えると、制御部65は、動作モードから再びスリープモードに移行する。つまり、次の計時地点に競技者RNが到着するまで、電力の消費をできるだけ抑制する。
【0055】
図5に戻って、計時部66は、競技者RNがループコイル21上に到達した際に、制御部65により適宜リセットされ、その時点からの計時を開始する。
すなわち、計時部66は、復調回路64が通信時間αを周期とした通信タイミングパターンを復調すると、その通信タイミングパターンの立ち上がりで、制御部65によりリセットされる。これにより、計時部66は、通信時間αの周期に同期したタイミングで0.000秒からの計時を開始することになる。
そして、計時部66は、競技者RNがループコイル31上に到達し、検出回路63がトリガポイントを検出したタイミングで、トリガポイント時刻を計時する。また、タイム情報の送信を開始する通信開始時刻が、通信時間αの周期上となるように、例えば、100ミリ秒単位(X.000ミリ秒,X.100ミリ秒,X.200ミリ秒,・・・,X.900ミリ秒)の時刻を適宜計時する。
なお、計時部66は、高安定水晶発振器を備えており、同期後の時刻の計時を安定して維持することが可能となっている。
【0056】
記憶部67は、例えば、不揮発性メモリ等からなり、タイム情報の送信に必要な情報を記憶する。
具体的に記憶部67は、ループコイル31上でトリガポイントが検出された際に、計時部66により計時されたトリガポイント時刻を記憶する。そして、通信開始時刻や経過時間ΔTが算出されると、これら経過時間ΔT等を記憶する。なお、経過時間ΔT等は、通信の度に再計算される。
更に、記憶部67は、無線タグ60毎(競技者RN毎)に異なるタグID(固有の識別情報)を予め記憶している。なお、このタグIDは、無線タグ60のグループ分けや、通信に使用するチャンネル(第1及び第2のチャンネル)の割り当てに使用される。
【0057】
通信回路68は、制御部65に制御され、所定のチャンネルを使用して複数回に亘ってタイム情報を受信機41に向けて送信する。
具体的に通信回路68は、20チャンネルの周波数のうち、自己に割り当てられた2つのチャンネル(第1及び第2のチャンネル)を使用して、3回に亘ってタイム情報(経過時間ΔT及びタグID)を送信する。つまり、第1のチャンネルを使用して1回目のタイム情報及び、2回目のタイム情報を送信し、また、第2のチャンネルを使用して3回目のタイム情報を送信する。
なお、通信を開始するタイミングは、計時部66によって計時された通信時間αの周期上となり、また、1回目の通信と2回目の通信との間は、自己の属するグループに割り当てられた通信間隔(P・α)が空けられる。
【0058】
通信アンテナ69は、通信に使用されるアンテナであり、通信回路68により送信されるタイム情報を、所定周波数(第1又は第2のチャンネル)の電波に重畳して発する。
【0059】
以下、上述した構成の競技用計時システムの動作について、図10を参照して説明する。図10は、無線タグ60が実行するタイム送信処理、及び、受信コントロールボックス40が実行する競技タイム算定処理を説明するためのフローチャートである。
このタイム送信処理は、競技者RNと共に移動する無線タグ60がループコイル21上の電磁場を検出する度に開始され、また、競技タイム算定処理は、無線タグ60から送信されたタイム情報を受信する度に開始される。
なお、競技者RNが計時地点に至る途中において、無線タグ60は、電力消費を抑えたスリープモードに移行しているものとする。
【0060】
まず、タイム送信処理について説明する。
無線タグ60は、変調ありの電磁場を検出するまで待機する(ステップS11)。つまり、検出回路63が、ループコイル21上の変調された電磁場を検出するまで、後続処理の実行を待機する。
やがて、競技者RNがループコイル21上に到達し、変調された電磁場を検出すると、無線タグ60は、スリープモードから動作モードに移行する。
【0061】
動作モードに移行した無線タグ60は、通信タイミングパターンを復調し、その立ち上がりをトリガとして、計時部66をリセットする(ステップS12)。
すなわち、復調回路64が、上述した図7(b)に示すような通信タイミングパターンを復調すると、制御部65は、復調した通信タイミングパターンの立ち上がりをトリガとして計時部66をリセットし、通信時間αの周期に同期させた計時を開始させる。
【0062】
無線タグ60は、変調なしの電磁場を検出するまで待機する(ステップS13)。つまり、検出回路63が、ループコイル31上の変調されていない電磁場を検出するまで、後続処理の実行を待機する。
やがて、競技者RNがループコイル31上に到達すると、無線タグ60は、変調なしの電磁場を検出する。
【0063】
無線タグ60は、電磁場からトリガポイントを検出し、トリガポイント時刻を特定する(ステップS14)。
すなわち、検出回路63がループコイル31上における電磁場の変極点を検出すると、制御部65は、その時点で計時部66が計時している時刻をトリガポイント時刻として特定する。
【0064】
無線タグ60は、通信回数をカウントする変数nに初期値の1を設定し、また、これから使用する通信チャンネルに第1のチャンネルを設定する(ステップS15)。なお、無線タグ60は、例えば、タグIDの値に従って、20チャンネルの周波数のうち2つのチャンネル(第1及び第2のチャンネル)が割り当てられている。
【0065】
無線タグ60は、n回目(次回)の通信開始時刻を求め、更に、経過時間ΔTを算定する(ステップS16)。
すなわち、制御部65は、計時部66が計時する時刻等を参照し、通信回数(n回目)に応じて、通信を開始する時刻を求める。そして、トリガポイント時刻からその通信が終了する時刻までの経過時間ΔTを算定する。
例えば、1回目(n=1)及び3回目(n=3)の通信であれば、制御部65は、計時部66にて計時される直近の通信時間αの周期上の時刻を、通信開始時刻として求める。
一方、2回目(n=2)の通信であれば、制御部65は、1回目の通信開始時刻から通信間隔(P・α)を空けた時刻を、通信開始時刻として求める。つまり、上述した図9に示すように、無線タグ60がグループAに属していると、1回目の通信開始時刻に2αを加えた時刻を通信開始時刻として求め、また、グループBに属していると、1回目の通信開始時刻に3αを加えた時刻を通信開始時刻として求め、そして、グループCに属していると、1回目の通信開始時刻に5αを加えた時刻を通信開始時刻として求める。なお、無線タグ60は、例えば、タグIDの値に従って、3つのグループのうち何れかのグループが割り当てられている。
このようにn回目(次回)の通信開始時刻を求めると、制御部65は、トリガポイント時刻からn回目の通信が終了する時刻までの経過時間ΔTを算定する。
【0066】
無線タグ60は、通信開始時刻になるまで待機する(ステップS17)。つまり、計時部66が通信開始時刻を計時するまで、後続処理の実行を待機する。
【0067】
通信開始時刻となると、無線タグ60は、n回目のタイム情報を送信する(ステップS18)。
すなわち、制御部65は、通信回路68を制御して、経過時間ΔT及びタグIDを含んだタイム情報を、受信機41に送信する。
【0068】
無線タグ60は、変数nに1を加算する(ステップS19)。そして、変数nが3になったか否かを判別する(ステップS20)。つまり、次の通信が3回目であるかどうかを判別する。
無線タグ60は、変数nが3でないと判別すると、後述するステップS22に処理を進める。
【0069】
一方、変数nが3であると判別した場合に、無線タグ60は、これから使用する通信チャンネルに第2のチャンネルを設定する(ステップS21)。つまり、3回目の通信が第2のチャンネルを使用して行われるように変更する。
【0070】
無線タグ60は、変数nが3より大きいか否かを判別する(ステップS22)。つまり、3回目の通信を終えたかどうかを判別する。
無線タグ60は、変数nが3より大きくない(3以下である)と判別すると、ステップS16に処理を戻し、上述したステップS16〜S22の処理を繰り返し実行する。
一方、変数nが3より大きい(3回目の通信が終了した)と判別すると、無線タグ60は、タイム送信処理を終える。そして、無線タグ60は、動作モードから再びスリープモードに移行する。
【0071】
続いて、競技タイム算定処理について説明する。
受信コントロールボックス40は、無線タグ60から送られるタイム情報を、受信機41を介して受信するまで待機する(ステップS31)。つまり、上述したタイム送信処理のステップS18にて送られるタイム情報を受信するまで、後続処理の実行を待機する。
【0072】
タイム情報を受信すると、受信コントロールボックス40は、タイマ機器10で計時しているランニングタイムを取得する(ステップS32)。つまり、タイム情報を受信した時点でタイマ機器10が計時しているランニングタイムを取得する。
【0073】
受信コントロールボックス40は、取得したランニングタイムから経過時間ΔTを差し引き、競技タイムを算定する(ステップS33)。
すなわち、ランニングタイム(Hr:Mr:Sr.sr)−経過時間ΔT(0:0:Sk.sk)を算出し、トリガポイント検出時における競技タイム(Ht:Mt:St.st)を算定する。
【0074】
そして、受信コントロールボックス40は、算定した競技タイムとタイム情報に含まれていたタグIDとを組みにして、処理装置50に供給する(ステップS34)。
【0075】
このようなタイム送信処理及び、競技タイム算定処理によって、各グループの無線タグ60から、互いに素である通信間隔を空けて、タイム情報が送信される。しかも、各無線タグ60がループコイル21上で受信した通信タイミングパターンにより、通信開始のタイミングも通信時間αの周期にそれぞれ同期されている。そして、複数回に亘ってタイム情報を送信し、その際に、途中でチャンネルを変更して通信を行っている。このため、各無線タグ60の通信タイミングが適宜ずれることになり、通信時に発生し得るコリジョンをより一層低減することができる。
また、タイム情報の経過時間ΔTを、タイマ機器10が計時するランニングタイムから差し引くことにより、競技者RNが計時ラインL上に到達した時点(トリガポイントを検出した時点)の競技タイムを算定することができる。
この結果、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0076】
上記のタイム送信処理において、各無線タグ60が3回に亘って、通信を行う場合について説明した。しかしながら、通信回数は、3回に限られず、4回以上であってもよい。
例えば、図11に示すように、各無線タグ60が4回に亘って通信を行ってもよい。
この場合、各無線タグ60は、1回目と2回目の通信には第1のチャンネルを使用し、3回目と4回目の通信には第2のチャンネルを使用する。
なお、2回目と4回目の通信を行う際に、無線タグ60は、互いに素である通信間隔(P・α)を空けて、コリジョンの発生を抑制する。つまり、上記と同様に、Aグループの無線タグ60が2αの通信間隔を空け、Bグループが3αの通信間隔を空け、そして、Cグループが5αの通信間隔を空ける。
また、チャンネルを変更して行う3回目の通信は、同様に通信間隔を待たずに、変更直後(通信時間αの周期上)に開始する。
【0077】
また、図11の場合、全グループの無線タグ60が4回に亘る通信を終えるのに、13αかかることになる。なお、無線タグ60が通信時間αに100ミリ秒を要する場合では、13αで1300ミリ秒となり、これを1秒以内に収めるためには、3割増しのチャンネル数が必要となる。
つまり、14チャンネルの3割り増しで19チャンネル(7×2×1.3=18.2)が最低限必要となる。そして、実情に即してある程度の余裕(70%)を勘案すると、28チャンネル(19/0.7=27.2)が現実の運用時に必要となる。
なお、28チャンネル(14チャンネル×2)を使用した場合、ある程度の余裕(70%)を勘案しても、1秒間に20個程度(14×3×0.7×0.7=20.58)の無線タグ60を処理できる計算となる。
【0078】
この場合も、各グループの無線タグ60から、互いに素である通信間隔を空けて、タイム情報が送信されるため、通信時に発生し得るコリジョンをより一層低減することができる。
この結果、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0079】
(他の実施形態)
上記の実施形態では、無線タグ60側でランニングタイムを計時せずに、受信側(タイマ機器10)だけでランニングタイムを計時するようにし、受信側(受信コントロールボックス40)が、無線タグ60側から送られた経過時刻ΔT(タイム情報)を、その時点のランニングタイムから差し引くことにより競技タイムを算定する場合について説明した。
しかしながら、無線タグ60側でもランニングタイムを計時するようにし、競技タイムを無線タグ60側が自ら計測するようにしてもよい。
以下、無線タグ60がランニングタイムを計時するようにし、無線タグ60側で競技タイムを計測する本発明の他の実施形態について説明する。
【0080】
図12は、本発明の他の実施形態に係る競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
図示するように、この競技用計時システムは、図1の競技用計時システムの構成に加えて、送信コントロールボックス70、送信機71、及び、時刻同期コンソール80が計時地点に配置されている。
つまり、他の構成は、図1の競技用計時システムと同様である。
【0081】
計時地点に配置される送信コントロールボックス70は、タイマ機器10と接続され、送信機71を介して、ループコイル21を通過してきた競技者RNの無線タグ60に向けて、ランニングタイムを送信する。つまり、ループコイル21上にて、スリープモードから動作モードに移行した無線タグ60に向けて、時刻配信を行う。
【0082】
送信機71は、送信コントロールボックス70に制御され、同期のための時刻情報を送信する。つまり、無線タグ60に向けて、時刻配信を行う。
例えば、送信機71は、タイマ機器10にて計時されるランニングタイム(Hr:Mr:Sr.sr)を含む時刻情報を無線タグ60に送信して、このランニングタイムに同期させる。
つまり、無線タグ60は、この時刻情報を受信すると、ランニングタイムを計時部66に再セットし、各タイマ機器10と同期がとれた正確なランニングタイムの計時を開始する。
【0083】
時刻同期コンソール80は、送信コントロールボックス70を制御したり、送信コントロールボックス70の動作状況等を表示したりするコンソール端末であり、競技役員等により、制御・監視用として適宜使用される。
【0084】
なお、これら送信コントロールボックス70、送信機71、及び、時刻同期コンソール80をスタート地点にも配置し、例えば、スタート前に、無線タグ60に、ランニングタイムをセットするようにしてもよい。
【0085】
一方、無線タグ60では、自己の計時部66がランニングタイムを計時するため、ループコイル21上で通信タイミングパターンを受信する必要がなくなる。そのため、ループコイル21上に生成される電磁場には、通信タイミングパターンの代わりに、例えば、関門ID等が重畳されていてもよい。
また、無線タグ60は、競技者RNがループコイル31上に到達し、検出回路63が電磁場の変極点(トリガポイント)を検出すると、その時点で計時部66が計時しているランニングタイムの時刻を競技タイムとして計測する。
そして、無線タグ60は、計測した競技タイム及びタグIDを含んだタイム情報を、同様に、通信間隔(P・α)を空けながら、途中でチャンネルを変えつつ、複数回(例えば、3回)に亘って送信する。
【0086】
以下、上述した構成の他の実施形態に係る競技用計時システムの動作(特に、無線タグ60の動作)について、図13を参照して説明する。図13は、無線タグ60が実行するタイム送信処理、及び、受信コントロールボックス40が実行するタイム受信処理を説明するためのフローチャートである。
このタイム送信処理も、競技者RNと共に移動する無線タグ60がループコイル21上の電磁場を検出する度に開始され、また、タイム受信処理も、無線タグ60から送信されたタイム情報を受信する度に開始される。なお、競技者RNが計時地点に至る途中において、無線タグ60は、電力消費を抑えたスリープモードに移行しているものとする。
【0087】
まず、タイム送信処理について説明する。
無線タグ60は、変調ありの電磁場を検出するまで待機する(ステップS41)。やがて、競技者RNがループコイル21上に到達し、変調された電磁場を検出すると、無線タグ60は、スリープモードから動作モードに移行する。
【0088】
動作モードに移行した無線タグ60は、時刻情報を受信し、自己のランニングタイムを補正する(ステップS42)。つまり、通信回路68が送信コントロールボックス70(送信機71)から送られる時刻情報を受信すると、制御部65が計時部66にて計時されているランニングタイムを補正する。
【0089】
無線タグ60は、変調なしの電磁場を検出するまで待機する(ステップS43)。やがて、競技者RNがループコイル31上に到達すると、無線タグ60は、変調なしの電磁場を検出する。
【0090】
無線タグ60は、電磁場からトリガポイントを検出し、競技タイムを計測する(ステップS44)。
すなわち、検出回路63がループコイル31上における電磁場の変極点を検出すると、制御部65は、その時点で計時部66が計時しているランニングタイムの時刻を競技タイムとして計測する。
【0091】
無線タグ60は、通信回数をカウントする変数nに初期値の1を設定し、また、これから使用する通信チャンネルに第1のチャンネルを設定する(ステップS45)。そして、無線タグ60は、n回目(次回)の通信開始時刻を求める(ステップS46)。
すなわち、制御部65は、計時部66が計時するランニングタイム等を参照し、通信回数(n回目)に応じて、通信を開始する時刻を求める。
例えば、1回目(n=1)及び3回目(n=3)の通信であれば、制御部65は、計時部66にて計時されるランニングタイムに基づいて、直近の通信時間αの周期上の時刻を、通信開始時刻として求める。例えば、100ミリ秒単位(Hr:Mr:Sr.000,Hr:Mr:Sr.100,Hr:Mr:Sr.200,・・・,Hr:Mr:Sr.900)の時刻を通信開始時刻として求める。
一方、2回目(n=2)の通信であれば、制御部65は、1回目の通信開始時刻から通信間隔(P・α)を空けた時刻を、通信開始時刻として求める。つまり、無線タグ60がグループAに属していると、1回目の通信開始時刻に2αを加えた時刻を通信開始時刻として求め、また、グループBに属していると、1回目の通信開始時刻に3αを加えた時刻を通信開始時刻として求め、そして、グループCに属していると、1回目の通信開始時刻に5αを加えた時刻を通信開始時刻として求める。
【0092】
無線タグ60は、通信開始時刻になるまで待機し(ステップS47)、通信開始時刻となると、n回目のタイム情報を送信する(ステップS48)。
すなわち、制御部65は、通信回路68を制御して、競技タイム及びタグIDを含んだタイム情報を、受信機41に送信する。
【0093】
無線タグ60は、変数nに1を加算する(ステップS49)。そして、変数nが3になったか否かを判別する(ステップS50)。
無線タグ60は、変数nが3でないと判別すると、後述するステップS52に処理を進める。
【0094】
一方、変数nが3であると判別した場合に、無線タグ60は、これから使用する通信チャンネルに第2のチャンネルを設定する(ステップS51)。つまり、3回目の通信が第2のチャンネルを使用して行われるように変更する。
【0095】
無線タグ60は、変数nが3より大きいか否かを判別する(ステップS52)。そして、変数nが3より大きくない(3以下である)と判別すると、ステップS46に処理を戻して、上述したステップS46〜S52の処理を繰り返し実行する。
一方、変数nが3より大きい(3回目の通信が終了した)と判別すると、無線タグ60は、タイム送信処理を終える。そして、無線タグ60は、動作モードから再びスリープモードに移行する。
【0096】
続いて、タイム受信処理について説明する。
受信コントロールボックス40は、無線タグ60から送られるタイム情報を、受信機41を介して受信するまで待機する(ステップS61)。つまり、上述したタイム送信処理のステップS48にて送られるタイム情報を受信するまで、後続処理の実行を待機する。
【0097】
タイム情報を受信すると、受信コントロールボックス40は、タイム情報に含まれている競技タイムとタグIDとを組みにして、処理装置50に供給する(ステップS62)。つまり、タイム情報を受信した受信コントロールボックス40は、そのまま、競技タイム及びタグIDを、処理装置50に供給する。
【0098】
このようなタイム送信処理及び、タイム受信処理によって、各グループの無線タグ60から、互いに素である通信間隔を空けて、タイム情報が送信される。しかも、各無線タグ60が計時する正確なランニングタイムにより、通信開始のタイミングも通信時間αの周期にそれぞれ同期されている。そして、複数回に亘ってタイム情報を送信し、その際に、途中でチャンネルを変更して通信を行っている。このため、各無線タグ60の通信タイミングが適宜ずれることになり、通信時に発生し得るコリジョンをより一層低減することができる。
この結果、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0099】
上記の図13に示すタイム送信処理において、各無線タグ60が3回に亘って、通信を行う場合について説明した。しかしながら、通信回数は、3回に限られず、4回以上であってもよい。
【0100】
上記の実施の形態では、マラソン競技を一例として説明したが、計時対象の競技は、これに限られず任意である。
例えば、駅伝、競歩、身障者車椅子ロードレース、自転車ロードレース、トライアスロン、及び、ランニングやオリエンテーション等の山岳競技等にも適宜適用可能である。
【0101】
以上説明したように、本発明によれば、キャリアセンスが行えない状況でも、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態に係る競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】(a),(b)が各タイマ機器におけるランニングタイムの同期を説明するための模式図であり、(c)が競技スタート後の差分について説明するための模式図である。
【図3】(a)が走路上に配置されるループコイル(略矩形形状)の一例を示す模式図であり、(b)が生成される電磁場と磁場検出コイルの向きを説明するための模式図であり、(c)が電磁場に重畳される通信タイミングパターンの一例を示す模式図である。
【図4】(a)が走路上に配置されるループコイル(略8の字形状)の一例を示す模式図であり、(b)が生成される電磁場と磁場検出コイルの向きを説明するための模式図であり、(c)が電磁場の強度分布を説明するための模式図である。
【図5】無線タグの構成の一例を示すブロック図である。
【図6】(a),(b)共に、電磁場の検出の様子を説明するための模式図である。
【図7】(a)が生成される電磁場を説明するための模式図であり、(b),(c)が復調された通信タイミングパターン等を説明するための模式図である。
【図8】無線タグ(計時部)のリセットタイミングと、経過時間ΔTを算定する様子を説明するための模式図である。
【図9】各無線タグが互いに素となる通信間隔を空けながら、途中でチャンネルを変えつつ、3回に亘って、タイム情報を送信する様子を説明するための模式図である。
【図10】本発明の実施形態に係るタイム送信処理及び、競技タイム算定処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】各無線タグが互いに素となる通信間隔を空けながら、途中でチャンネルを変えつつ、4回に亘って、タイム情報を送信する様子を説明するための模式図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係るタイム送信処理及び、タイム受信処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
10 タイマ機器
20 変調磁場発生装置
21 ループコイル
30 磁場発生装置
31 ループコイル
40 受信コントロールボックス
41 受信機
50 処理装置
60 無線タグ
70 送信コントロールボックス
71 送信機
80 時刻同期コンソール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信側機器と、を含む競技用計時システムであって、
前記各無線機器には、
所定周期に同期した時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記トリガポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻をトリガポイント時刻として特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記トリガポイント時刻から無線通信が終了するまでの経過時間を含むタイム情報を、前記計時手段にて計時される前記所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御手段と、が設けられ、
前記受信側機器には、
競技における基準時刻を計時する基準時刻計時手段と、
前記各無線機器の前記無線通信手段から送信される前記タイム情報を受信する受信手段と、
前記受信手段により前記タイム情報が受信された際に前記基準時刻計時手段にて計時された基準時刻から、前記タイム情報に含まれる前記経過時間を差し引くことにより、前記無線機器におけるトリガポイント検出時点の競技タイムを算定する競技タイム算定手段と、が設けられている、
ことを特徴とする競技用計時システム。
【請求項2】
前記各無線機器には、
前記トリガポイントの手前の走路上に生成された電磁場に重畳された同期信号を取得する同期信号取得手段と、
前記同期信号取得手段で取得した前記同期信号により前記計時手段の計時する時刻を前記所定周期に同期させる同期手段と、
が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の競技用計時システム。
【請求項3】
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信側機器と、を含む競技用計時システムであって、
前記各無線機器には、
競技における基準時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記トリガポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻を競技タイムとして特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記競技タイムを含むタイム情報を、前記計時手段にて計時される所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御手段と、が設けられ、
前記受信側機器には、
前記各無線機器の前記無線通信手段から送信される前記タイム情報を受信する受信手段が設けられている、
ことを特徴とする競技用計時システム。
【請求項4】
前記各無線機器は、複数グループの何れかにグループ分けされており、
前記送信制御手段は、前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、他のグループの無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の競技用計時システム。
【請求項5】
前記各無線機器は、無線通信に使用する複数のチャンネルが割り当てられており、
前記送信制御手段は、前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、チャンネルを変えつつ送信させる、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の競技用計時システム。
【請求項6】
前記無線通信手段は、前記タイム情報の1回の無線通信に要する通信時間を前記所定周期として、前記タイム情報を前記受信側機器に向けて送信する、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の競技用計時システム。
【請求項7】
各競技者にそれぞれ携帯され、競技における基準時刻を計時している受信側機器に向けて情報を送信する無線機器であって、
所定周期に同期した時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記トリガポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻をトリガポイント時刻として特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記トリガポイント時刻から無線通信が終了するまでの経過時間を含むタイム情報を、前記計時手段にて計時される前記所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御手段と、
を備えることを特徴とする無線機器。
【請求項8】
各競技者にそれぞれ携帯される無線機器であって、
競技における基準時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記トリガポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻を競技タイムとして特定する特定手段と、
前記特定手段により特定された前記競技タイムを含むタイム情報を、前記計時手段にて計時される所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段が送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御手段と、
を備えることを特徴とする無線機器。
【請求項9】
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信側機器と、を含む競技用計時システムにおけるタイム送信方法であって、
前記各無線機器において、所定周期に同期した時刻を計時する計時ステップと、
前記各無線機器において、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出ステップと、
前記各無線機器において、前記トリガポイントが検出された際に、前記計時ステップにて計時された時刻をトリガポイント時刻として特定する特定ステップと、
前記各無線機器において、前記特定ステップにて特定された前記トリガポイント時刻から無線通信が終了するまでの経過時間を含むタイム情報を、前記計時ステップにて計時される前記所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信ステップと、
前記各無線機器において、前記無線通信ステップにて送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御ステップと、
前記受信側機器において、競技における基準時刻を計時する基準時刻計時ステップと、
前記受信側機器において、前記各無線機器の前記無線通信ステップにて送信される前記タイム情報を受信する受信ステップと、
前記受信側機器において、前記受信ステップにて前記タイム情報が受信された際に前記基準時刻計時ステップにて計時された基準時刻から、前記タイム情報に含まれる前記経過時間を差し引くことにより、前記無線機器におけるトリガポイント検出時点の競技タイムを算定する競技タイム算定ステップと、
を備えることを特徴とするタイム送信方法。
【請求項10】
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信側機器と、を含む競技用計時システムにおけるタイム送信方法であって、
前記各無線機器において、競技における基準時刻を計時する計時ステップと、
前記各無線機器において、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイントを検出する検出ステップと、
前記各無線機器において、前記トリガポイントが検出された際に、前記計時ステップにて計時された時刻を競技タイムとして特定する特定ステップと、
前記各無線機器において、前記特定ステップにて特定された前記競技タイムを含むタイム情報を、前記計時ステップにて計時される所定周期に同期したタイミングで前記受信側機器に向けて送信する無線通信ステップと、
前記各無線機器において、前記無線通信ステップにて送信する前記タイム情報を、他の無線機器が行う無線通信との関係において、互いに素である通信間隔を空けて、複数回に亘って送信させる送信制御ステップと、
前記受信側機器において、前記各無線機器の前記無線通信ステップにて送信される前記タイム情報を受信する受信ステップと、
を備えることを特徴とするタイム送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−142248(P2008−142248A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331860(P2006−331860)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】