説明

笠コンクリートブロックの施工用移動型枠

【課題】鋼矢板壁の凹凸形状の変化に対応することができる笠コンクリートブロックの施工用移動型枠を提供する。
【解決手段】鋼矢板壁の上部にブロック本体を配置し、該ブロック本体内にコンクリートを充填して鋼矢板壁と一体化する笠コンクリートブロックの施工に用いられる笠コンクリートブロックの施工用型枠である。鋼矢板壁の一側面との隙間を閉塞する底板部23とを備え、底板部23は、鋼矢板壁の一側面の凹部に係合する凸状係合部43を有し、この凸状係合部43を左右方向に分割した分割凸状係合部47,47を形成し、これら分割凸状係合部47,47を左右方向移動可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、河川,海等の鋼矢板壁に設ける笠コンクリートブロックの施工に用いる笠コンクリートブロックの施工用型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川,海等の岸壁、あるいは地上の擁壁等として一般にU型等の鋼矢板がその爪部を係合して連続打設してなる鋼矢板壁が使用されている。そして、この鋼矢板壁の上部には腐食防止、あるいは構造物としての美化等のために笠コンクリートブロックが設けられ、この笠コンクリートブロックは、鋼矢板壁の上部に縦,横の鉄筋を篭状に配筋固着し、その外周にコンクリート型枠をセットした後、コンクリート型枠内にコンクリートを打設し、硬化後、型枠を外して形成される。
【0003】
しかし、上記笠コンクリートブロックは、鉄筋あるいは型枠の組立て、コンクリートの打設などを現場で施工しなければならないため工期が長期化したり、型枠の支保工材として川側などに仮設ブラケットを設ける必要があったり、また、川側などの作業台としての足場が必要となるため仮設工事の費用や時間が掛かるという問題がある。さらに、冬期の施工においては施工性に劣り、コンクリートの品質,養生などに難点がある。
【0004】
そこで、このような型枠を用いる場合の問題を解消するため、笠コンクリートブロックの施工用型枠(例えば特許文献1)が提案されており、この施工用型枠は、鋼矢板を連続打設し、これら鋼矢板により凹凸が連続する鋼矢板壁を形成し、この鋼矢板壁の上部にブロック本体を配置し、該ブロック本体内に充填材を充填して前記鋼矢板壁と一体化する笠コンクリートブロックの施工に用いられる笠コンクリートブロックの施工用型枠において、前記ブロック本体に係止する係止部と、この係止部に吊設され前記ブロック本体の一側に配置する吊設部と、この吊設部の下部に設けられ前記ブロック本体の下部と前記鋼矢板壁の一側面との隙間を閉塞する底板部とを備え、前記底板部には、前記鋼矢板壁の一側面の凹部に係合する係合部を移動可能に設けている。
【特許文献1】特開平11−74330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記施工用移動型枠では、係止部をブロック本体の上面に係止し、吊設部により吊った状態で、底板部によりブロック本体の一側下部を塞ぎ、この後、ブロック本体内に充填材を充填して鋼矢板壁にブロック本体を一体に取り付けることができ、しかも、移動型枠をブロック本体にセットし、他側方向に移動すると、底板部が鋼矢板壁の凹部に係入し、鋼矢板壁の一側面に底板部が係合し、隙間を塞ぐことができる。
【0006】
ところで、この種の凹凸が連続する鋼矢板壁では、隣合う鋼矢板同士の爪部等を係合して連続打設されるが、施工誤差などにより、凹部の形状が広がったり、狭まったりする場合があり、施工誤差以外でも、曲線施工を行い場合は、凹部の形状が変化し、さらには、鋼矢板自体が変形する場合があり、これに対して、従来の係合部では対応することができず、係合部と凹部との間に隙間が発生すると、その隙間を別個に塞ぐ作業を必要とした。
【0007】
また、鋼矢板壁の外側は河川や海等の場合が多く、前記係合部を移動して凹部に係入する作業は、鋼矢板壁外側の足場の取り難い場所で行われ、例えば、潜水夫などにより作業する場合、係合部が重いとこれを移動する作業に手間取るという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、作業性の向上が可能で、鋼矢板壁の凹凸形状の変化に対応することができる笠コンクリートブロックの施工用移動型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1の発明は、鋼矢板を連続打設し、これら鋼矢板により凹凸が連続する鋼矢板壁を形成し、この鋼矢板壁の上部にブロック本体を配置し、該ブロック本体内に充填材を充填して前記鋼矢板壁と一体化する笠コンクリートブロックの施工に用いられる笠コンクリートブロックの施工用型枠において、前記ブロック本体に係止する係止部と、この係止部に吊設され前記ブロック本体の一側に配置する吊設部と、この吊設部の下部に設けられ前記ブロック本体の下部と前記鋼矢板壁の一側面との隙間を閉塞する底板部とを備え、前記底板部は、前記鋼矢板壁の一側面の凹部に係合する凸状係合部を有し、この凸状係合部を左右方向に分割した分割凸状係合部を形成し、これら分割凸状係合部を左右方向移動可能に設けたものである。
【0010】
本発明の請求項2の発明は、前記分割凸状係合部の分割縁同士を重ね合わせたものである。
【0011】
本発明の請求項3の発明は、前記分割凸状係合部と、前記鋼矢板壁の一側面の凸部に係合する凹状係合部とを一体に設けたものである。
【0012】
本発明の請求項4の発明は、前記分割凸状係合部の分割縁部と該分割凸状係合部の先端縁との間に、逃げ溝部を設けたものである。
【0013】
本発明の請求項5の発明は、前記係止部には、前記底板部の高さを調整する底板高さ調整部材を設けたものである。
【0014】
本発明の請求項6の発明は、前記鋼矢板壁に高さ調整ボルトを回動可能に突設し、この高さ調整ボルトを前記ブロック本体の内面に当接して該ブロック本体を支持し、前記高さ調整ボルトの頭部には該頭部より面積の小さいブロック当接部を設けたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1によれば、係止部をブロック本体の上面に係止し、吊設部により吊った状態で、底板部によりブロック本体の一側下部を塞ぎ、この後、ブロック本体内に充填材を充填して鋼矢板壁にブロック本体を一体に取り付けることができる。しかも、移動型枠をブロック本体にセットし、他側方向に移動すると、底板部が鋼矢板壁の凹部に係入し、鋼矢板壁の一側面に底板部の凸状係合部が係合し、隙間が塞がれ、特に、前記凹部の形状にバラツキのある場合でも、凸状係合部を構成する分割凸状係合部の前後左右位置を調整することにより対応することができる。また、凸状係合部を分割した分割凸状係合部は、軽量なものになるから、施工性の向上を図ることができ、例えば足場などの取れない水中に一部が没していても、施工を行うことができる。
【0016】
本発明の請求項2によれば、分割縁部同士を重ね合わせことにより、分割凸状係合部間に隙間が発生することがなく、また、その重ね合わせ代の分だけ、分割凸状係合部の間隔を広げることができる。
【0017】
本発明の請求項3によれば、分割凸状係合部が鋼矢板壁の凹部に係入すると共に、その分割凸状係合部に一体に設けた凹状係合部が鋼矢板壁の凸部に係合する。
【0018】
本発明の請求項4によれば、鋼矢板壁の接続係合部が凹部の中央に突出する場合、その接続係合部に逃げ溝を合わせることにより、分割凸状係合部の周縁を、鋼矢板壁の凹部に沿わせることができる。
【0019】
本発明の請求項5によれば、ブロック本体の上下を挟むようにして移動型枠を配置した後、高さ調整部材を用いて、底板部を上昇せしめ、ブロック本体の下部に底板部を密着することができる。
【0020】
本発明の請求項6によれば、高さ調整ボルトが面積の小さいブロック当接部によりブロック本体を支持するから、高さ調整ボルトが荷重を受けた支持状態でも、高さ調整ボルトの回動操作が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる新規な笠コンクリートブロックの施工用移動型枠を採用することにより、従来にない笠コンクリートブロックの施工用移動型枠が得られ、その笠コンクリートブロックの施工用移動型枠について記述する。
【実施例1】
【0022】
以下、本発明を添付図面を参照して説明する。図1〜図9は本発明の第1実施例を示し、同図に示すように鋼矢板壁1は、例えば断面略U形の鋼矢板2が接続部たる爪部3を互いに係合して連続打設され、前記鋼矢板壁1の外面には凹凸が連続し、各鋼矢板2の上端高さは打設時に略同一になるように揃えられている。前記鋼矢板壁1の上部を覆うように設けられる笠コンクリートブロックのブロック本体4は、鉄筋コンクリートからなるプレキャスト製であって、下部が開口した逆U字型をなし、鋼矢板壁1の上部に設けられる天端部5と、この天端部5の一側たる川A側に垂設した一側壁部6と、前記天端部5の他側たる陸B側に垂設した他側壁部7とを一体にしてなる。前記天端部5は平板状であり、前記一側壁部6及び他側壁部7は、下方に向かって僅かに薄くなるほぼ平板状である。すなわち、前記ブロック本体4は、所謂U字溝用ブロックを反転した形状にほぼ等しい。前記天端部5の略中央にはコンクリートなどの充填材を充填するための充填孔8が形成され、この充填孔8は、鋼矢板壁1の長さ方向に長い平面略長方形形状をなすと共に、上方に向かって拡大するテーパ状をなし、また、前記天端部5の長さ方向両側には切欠き部9が各々形成され、この切欠き部9の端壁には連結用鉄筋10が突出している。尚、鋼矢板壁1の反陸側には河川や湖岸などの水面(図示せず)が位置する。
【0023】
また、前記鋼矢板壁1には、前記ブロック本体4を支持する高さ調整手段11が設けられ、この高さ調整手段11は、高さ調整ボルト12と、この高さ調整ボルト12が螺合し前記鋼矢板2に設けられた雌螺子筒13とからなり、この雌螺子筒13に一体に掛け具14を設け、この掛け具14を鋼矢板2の上端に掛けることにより取り付けられる。
【0024】
また、必要に応じて、前記掛け具14は、鋼矢板2に溶接などにより固定される。さらに、前記高さ調整ボルト12の頭部12Aは、六角形形状をなす工具係合部であり、その頭部12Aはその上端部の面積が小さくなるように、上端に向かって先鋭な先鋭部12Bが形成され、この先鋭部12Bの上端部12Cが前記ブロック本体4の天端部5の下面に当接する。
【0025】
移動型枠21は、前記ブロック本体4を上下から挟むように略コ字型をなし、前記ブロック本体4の天端部5に係止する係止部22と、前記ブロック本体4の下部と鋼矢板壁1の一側面との隙間Sを閉塞する底板部23と、前記係止部22の一側に連結され前記底板部23を吊設する吊設部24とを備える。
【0026】
前記係止部22は、前記吊設部24の上端と接続した前後方向の上杆25を備え、この上杆25の前後に案内筒26,26を縦設し、これら案内筒26,26にそれぞれ昇降杆27,27を上下動可能に挿通し、これら昇降杆27,27の下端に前後方向の載置プレート28を固着する。さらに、上杆25に雌螺子筒29を設け、この雌螺子筒28に、昇降操作用の螺子棒30を螺合し、この螺子棒30の下端を、回動連結部31により前記載置プレート28に回動可能に連結している。また、前記螺子棒30の上端30Aには工具係合部が設けられ、この例では六角形に形成され、図示しない回転操作用ハンドルが着脱自在に設けられる。
【0027】
したがって、回転操作用ハンドルにより螺子棒30を回動することにより、上杆25に対して、載置プレート28が昇降する。尚、この載置プレート28の下面には、パッキンなどの緩衝材32が設けられている。そして、螺子棒30と雌螺子筒29とにより、ブロック本体4に対する前記底板部23の高さを調整する高さ調整部材を構成している。
【0028】
また、前記上杆25の前端には、雌螺子筒33を縦設し、この雌螺子筒33に前記螺子棒30を螺合し、この螺子棒30の下端に回動当接部34を回動可能に設けている。この回動当接部34は、前側の前記昇降杆27より前方で前記ブロック本体4の上面に当接する。
【0029】
前記吊設部24は、左右方向両側及び中央に位置する複数(3本)の縦杆35,35,35を備え、これら縦杆35,35,35の上端を左右方向の上横杆36により連結し、この上横杆36の左右に前記上杆25,25をそれぞれの後端を固着している。
【0030】
また、前記吊設部24は、前記3本の縦杆35,35,35の下端を、左右方向の下横杆37により連結している。
【0031】
尚、案内筒26,昇降杆27,載置プレート28,雌螺子筒29及び螺子棒30により、ブロック本体4に対する前記底板部23の高さを調整する底板高さ調整部材38を構成している。
【0032】
前記底板部23は、前記鋼矢板壁1の一側面の2つの凹部1A,1A,左右方向中央の凸部1B及び両側の凸部1Bの略2分の1に対応する平板状の底板部本体41と、この底板部本体41を載置状態で支持する支持体42とを備える。
【0033】
前記底板部本体41は、前記凹部1A,1Aに係入する凸状係合部43,43と、これら凸状係合部43,43の間に位置する凹状係合部44と、両側に位置する分割凹状係合部45,45とを備え、この分割凹状係合部45は前記凹状係合部44の略2分の1の左右寸法を有する。そして、前記底板部本体41を、その左右方向中央と前記凸状係合部43の中央で分割し、4つの分割底板部46,46,46,46を形成し、この分割底板部46は分割凹状係合部45と分割凸状係合部47とを一体に有し、かつ、その分割底板部46の分割縁部47F,45Fを左右方向に延設することにより、隣合う分割底板部46,46の分割縁部47F,47F同士及び分割縁部45F,45F同士を上下重ね合わせている。尚、中央においては、前記凹状係合部44を分割することにより2つの分割凹状係合部45,45が形成される。
【0034】
前記支持体42は、前記下横杆37に固定した凸部受台51,51を左右に有し、この中央受台51は、前記分割底板部46,46の分割縁部47F,47Fを挟んで支持する左右の受杆52,52と、これら受杆52,52の先端側を連結する連結部53とを備え、この連結部53には左右方向に長い長孔53Aが穿設されている。また、前記支持体42は、分割底板部46の分割縁部45F側を支持する端支持部54を備え、この端支持部54は各分割縁部45Fに対応して前記下横枠37に固定されている。尚、前記受杆52及び端支持部54は山形鋼などから形成されている。また、前記分割底板部46が支持体42上で向きを変更できるように、該分割底板部46と縦杆35との間には隙間48が形成されている。
【0035】
また、前記分割凸状係合部47を左右方向移動可能で、かつ向きを調整可能とする位置調整手段56を備え、この位置調整手段56は、前記分割底板部46を左右方向移動可能で、かつ向きを調整可能とするものであり、前記長孔53Aの左右一側に対応して、前記分割凸状係合部47の下面に移動杆たるボルト57を固着し、このボルト57を前記長孔53Aと、連結部53下面側の座金58とに遊挿し、この挿通したボルト57の先端に、抜止め部たるナット59を螺合してなる。
【0036】
したがって、ボルト57を長孔53Aの範囲で移動することにより、分割底板部46を左右に移動して位置調整を行うことができ、かつ、ボルト57を中心に角度回動することにより、分割底板部46の向きを調整することができる。
【0037】
図中、61は鋼矢板壁1に設けた腹起しであり、鋼矢板壁1を挿通したタイロッド62の一端が腹起し61に連結され、そのタイロッド62の他端が鋼矢板壁1の他側の陸B側に固定されている。また、前記腹起し61には、前記高さ調整手段11の前記掛け具14を取り付け、前記高さ調整ボルト12を前記雌螺子筒13に螺合し、ブロック本体4の川側を高さ調整手段11により支持する。
【0038】
次に、前記笠コンクリートブロックの施工方法につき説明すると、まず、鋼矢板2を打設した後、陸B側の土砂を床均し、次に、鋼矢板壁1の他側である陸B側を基礎砕石、川砂などにより敷均すと共に輾圧して、ブロック本体4の他側壁部7を載置する載置面71を形成する。また、鋼矢板壁1の各鋼矢板2の上端は、その高さが必ずしも一定ではないから、高さ調整ボルト12を鋼矢板2及び腹起し61に取り付け、これら高さ調整ボルト12を調整して、該高さ調整ボルト12の上端の高さを均一に設定する。
【0039】
そして、ブロック本体4を吊り上げ、他側壁部7を載置面71により支持する。さらに、天端部5の陸B側及び川側を、腹起し61側及び鋼矢板壁1側の高さ調整ボルト12,12に載置して該高さ調整ボルト12により支持し、このようにして鋼矢板壁1の上部にブロック本体4を配置する。この場合、高さ調整ボルト12,12がブロック本体4の陸側及び川側の左右を支持することにより安定した支持状態が得られる。また、この状態で高さ調整ボルト12を操作してブロック本体4の高さを調整することができ、この例の高さ調整ボルト12は、上端部12Cの面積が小さく形成されているから、ブロック本体4の荷重を受けた状態でも、比較的容易に回動操作が可能となり、高さ調整を容易に行うことができる。さらに、高さ調整ボルト12は切欠き部9に近接した位置にあるから、切欠き部9から容易に操作できる。
【0040】
次に、移動型枠21を吊り上げ、上下の係止部22と底板部23とにより、ブロック本体4の一側を上下から挟むように配置する。そして、天端部5に載置プレート28を載置して、底板部23が鋼矢板壁1に係合するようにセットする。この場合、移動型枠21を他側に向かって移動せしめることにより、移動可能な底板部23が鋼矢板壁1の凹部1Bに係入し、鋼矢板壁1の一側面に底板部23が係合し、隙間Sが塞がれる。また、底板高さ調整部材38の雌螺子筒29が上方に移動するように螺子棒30を回動操作し、これにより底板部23が上昇し、該底板部23が一側壁部6の下面に当接する。
【0041】
また、昇降杆27より前側において、雌螺子筒33に螺合した螺子棒30を操作して、回動当接部34をブロック本体4の上面に当接することにより、陸Bの載置面71側にブロック本体4を押え付けることができ、ブロック本体4が安定する。
【0042】
そして、前記分割底板部46は、左右方向に移動可能で、かつ螺子棒30を中心に向きを調整可能であるから、例えば凹部1Aが開くように隣合う鋼矢板2,2が曲がっている場合は、両側の分割底板部46,46がハの字状に開くように調節して、鋼矢板壁1の凹部1Aに分割凸状係合部44,44を沿わせることができ、また、逆に凹部1Aが狭まるように鋼矢板2,2が曲がっている場合は、両側の分割底板部46,46が逆ハの字状に開くように調節し、また、隣合う鋼矢板2,2が曲がっている場合以外でも、鋼矢板2が変形などしている場合でも、分割底板部46の左右位置と向きを調整することにより、ブロック本体4の下部と鋼矢板壁1の一側面との隙間Sを良好に閉塞することができる。尚、隣合う移動型枠21,21同士は、両端の分割縁部45F,45F同士を重ね合わせる。また、分割縁部45F,45Fの重ね合わせ代は、分割底板部46の移動範囲に対応して設定すればよい。また、ブロック本体4及び移動型枠21は、鋼矢板壁1の長さ方向に連続して設けられる。
【0043】
さらに、底板部本体41を4分割した分割底板部46から構成することにより、1枚の分割底板部46の重量が軽くなり、例えば、川の中での潜水夫による作業などでも、底板部23の鋼矢板壁1の位置合わせ作業を容易に行うことができる。
【0044】
このようにして、底板部23により隙間Sを塞いだら、充填孔8から図示しない吊り鉄筋を挿入し組立てる。このようにして内部に鉄筋を配置した後、上部の充填孔8から充填材たるコンクリート63を中空なブロック本体4の内部に充填し、そのコンクリート63を、充填孔8と切欠き部9の上面まで充填し、天端部5の上面を面一とする。そして、ブロック本体4にコンクリート63を充填すると、このコンクリート63は鋼矢板壁1の一側及び他側にそれぞれ充填され、一側においては、一側壁部6の下部と鋼矢板壁1との間が底板部23により塞がれているため、下部に漏れることがない。この場合、充填孔8からコンクリート63を充填すると、このコンクリート63の荷重が底板部23に加わり、重ね合わせた分割縁部47F,47F同士及び分割縁部45F,45F同士が密着し、ここからコンクリート63が漏れることがない。そして、充填したコンクリート63が所定の強度まで硬化したら、底板高さ調整部材38の雌螺子棒30を逆に回動すると、底板部23が一側壁部6の下面から離れ、移動型枠21を前方に引き抜いて取り外すことができる。
【0045】
このようにして取り外した移動型枠21を、同様にコンクリート63充填前のブロック本体4にセットし、繰り返し使用する。
【0046】
また、現場施工において、鋼矢板壁1の長さに合せて寸法合わせのために、ブロック本体4を切断する場合は、該ブロック本体4は略U字型であるから、製造が容易であると共に、その切断作業も比較的容易となる。
【0047】
このように本実施例では、請求項1に対応して、鋼矢板2を連続打設し、これら鋼矢板2により凹凸が連続する鋼矢板壁1を形成し、この鋼矢板壁1の上部にブロック本体4を配置し、該ブロック本体4内に充填材たるコンクリート63を充填して鋼矢板壁1と一体化する笠コンクリートブロックの施工に用いられる笠コンクリートブロックの施工用型枠において、ブロック本体4の天端部5の上面に係止する係止部22と、この係止部22に吊設されブロック本体4の一側に配置する吊設部24と、この吊設部24の下部に設けられブロック本体4の下部と鋼矢板壁1の一側面との隙間Sを閉塞する底板部23とを備え、底板部23は、鋼矢板壁1の一側面の凹部1Aに係合する凸状係合部43を有し、この凸状係合部43を左右方向に分割した分割凸状係合部47,47を形成し、これら分割凸状係合部47,47を左右方向移動可能に設けたから、係止部22をブロック本体4の上面に係止し、吊設部24により吊った状態で、底板部23によりブロック本体4の一側下部を塞ぎ、この後、ブロック本体4内に充填材たるコンクリート63を充填して鋼矢板壁1にブロック本体4を一体に取り付けることができる。しかも、移動型枠21をブロック本体4にセットし、他側方向に移動すると、底板部23が鋼矢板壁1の凹部1Aに係入し、鋼矢板壁1の一側面に底板部23の凸状係合部43が係合し、隙間Sが塞がれ、凹部1Aの形状にバラツキのある場合は、凸状係合部43を構成する分割凸状係合部47,47の前後左右位置を調整することにより対応することができる。また、凸状係合部43を分割した分割凸状係合部47,47は、軽量なものになるから、施工性の向上を図ることができ、例えば足場などの取れない水中に一部が没していても、施工を行うことができる。
【0048】
このように本実施例では、請求項2に対応して、分割凸状係合部47,47の分割縁同士47F,47Fを重ね合わせたから、分割縁部47F,47F同士を重ね合わせことにより、分割凸状係合部47,47間に隙間が発生することがなく、また、その重ね合わせ代の分だけ、分割凸状係合部47F,47Fの間隔を広げることができる。
【0049】
このように本実施例では、請求項3に対応して、分割凸状係合部47と、鋼矢板壁1の一側面の凸部1Bに係合する凹状係合部である分割凹状係合部45とを一体に設けたから、分割凸状係合部47が鋼矢板壁1の凹部1Aに係入すると共に、その分割凸状係合部47に一体に設けた分割凹状係合部45が鋼矢板壁1の凸部1Bに係合する。
【0050】
このように本実施例では、請求項5に対応して、係止部22には、底板部23の高さを調整する高さ調整部材38を設けたから、ブロック本体4の上下を挟むようにして移動型枠21を配置した後、高さ調整部材38を用いて、底板部23を上昇せしめ、ブロック本体4の下部に底板部23を密着することができる。
【0051】
このように本実施例では、請求項6に対応して、鋼矢板壁1に高さ調整ボルト12を回動可能に突設し、この高さ調整ボルト12をブロック本体4の内面に当接して該ブロック本体4を支持し、高さ調整ボルト12の頭部12Aには該頭部12Aより面積の小さいブロック当接部たる上端部12Cを設けたから、高さ調整ボルト12が上端部12Cによりブロック本体4を支持することにより、高さ調整ボルト12が荷重を受けた支持状態でも、高さ調整ボルト12の回動操作が容易になり、これにより、鋼矢板壁1に対するブロック本体4の高さ調整を簡便に行うことができる。尚、先端部12Bは曲面状に形成されている。
【0052】
また、実施例上の効果として、昇降杆27より前側において、雌螺子筒33に螺合した螺子棒30を操作して、回動当接部34をブロック本体4の上面に当接することにより、陸Bの載置面71側にブロック本体4を押え付けることができ、充填材の充填前でも、ブロック本体4を安定して据付けることができる。
【実施例2】
【0053】
図10は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、鋼矢板壁1の爪部3に対応して、分割凸状係合部47の分割縁部47Fと該分割凸状係合部47の先端縁との間に、逃げ溝部81を設けており、この逃げ溝部81を爪部3に合わせることにより、分割底板部46を鋼矢板壁1の一側面に隙間なく、沿わせることができる。
【0054】
このように本実施例でも、上記実施例1と同様な作用・効果を奏し、また、このように本実施例では、請求項4に対応して、分割凸状係合部47の分割縁部47Fと該分割凸状係合部47の先端縁との間に、逃げ溝部81を設けたから、鋼矢板壁の爪部3が凹部1Aの中央に突出する場合、その爪部3に逃げ溝81を合わせることにより、分割凸状係合部47の周縁を、鋼矢板壁1の凹部1Aに沿わせることができる。
【0055】
尚、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。例えば、実施例では、分割凸状係合部に分割凹状係合部を一体に設けたが、鋼矢板壁の凹部に当接する板材を、底板部に設け、その板材に、分割凸状係合部のみを左右方向移動可能で、向き調整可能に設けてもよい。また、分割凸状係合部を、左右方向移動可能で、かつ前後方向移動可能に設けてもよい。さらに、実施例の鋼矢板は、鋼矢板壁の凹部の中央に爪部を備えるものを示したが、中央両側に位置する傾斜部に爪部を設ける鋼矢板からなる鋼矢板壁にも、本移動型枠を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施例を示すブロック本体に充填材を充填する前の断面図である。
【図2】同上、ブロック本体に充填材を充填した後の断面図である。
【図3】同上、平面図である。
【図4】同上、高さ調整ボルトの正面図である。
【図5】同上、高さ調整部材の掛け具を示し、図5(A)は側面図、図5(B)は正面図である。
【図6】同上、移動型枠の底板部の平面図である。
【図7】同上、底板部本体と支持体の分解状態の正面図である。
【図8】同上、位置調整手段の要部の断面図である。
【図9】同上、底板部本体の要部の分解斜視図である。
【図10】本発明の実施例2を示す同上、底板部本体の要部の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 鋼矢板壁
1A 凹部
1B 凸部
2 鋼矢板
3 爪部(接続部)
4 ブロック本体
6 一側壁部
12C 上端部
21 移動型枠
22 係止部
23 底板部
24 吊設部
38 底板高さ調整部材
43 凸状係合部
44 凹状係合部
45 分割凹状係合部(凹状係合部)
45F 分割縁部
47 分割凸状係合部
47F 分割縁部
53A 長孔
56 位置調整手段
57 ネジ棒(移動杆)
81 逃げ溝部
B 陸
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼矢板を連続打設し、これら鋼矢板により凹凸が連続する鋼矢板壁を形成し、この鋼矢板壁の上部にブロック本体を配置し、該ブロック本体内に充填材を充填して前記鋼矢板壁と一体化する笠コンクリートブロックの施工に用いられる笠コンクリートブロックの施工用型枠において、
前記ブロック本体に係止する係止部と、この係止部に吊設され前記ブロック本体の一側に配置する吊設部と、この吊設部の下部に設けられ前記ブロック本体の下部と前記鋼矢板壁の一側面との隙間を閉塞する底板部とを備え、
前記底板部は、前記鋼矢板壁の一側面の凹部に係合する凸状係合部を有し、この凸状係合部を左右方向に分割した分割凸状係合部を形成し、これら分割凸状係合部を左右方向移動可能に設けたことを特徴とする笠コンクリートブロックの施工用移動型枠。
【請求項2】
前記分割凸状係合部の分割縁同士を重ね合わせたことを特徴とする請求項1記載の笠コンクリートブロックの施工用移動型枠。
【請求項3】
前記分割凸状係合部と、前記鋼矢板壁の一側面の凸部に係合する凹状係合部とを一体に設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の笠コンクリートブロックの施工用移動型枠。
【請求項4】
前記分割凸状係合部の分割縁部と該分割凸状係合部の先端縁との間に、逃げ溝部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の笠コンクリートブロックの施工用移動型枠。
【請求項5】
前記係止部には、前記底板部の高さを調整する底板高さ調整部材を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の笠コンクリートブロックの施工用移動型枠。
【請求項6】
前記鋼矢板壁に高さ調整ボルトを回動可能に突設し、この高さ調整ボルトを前記ブロック本体の内面に当接して該ブロック本体を支持し、前記高さ調整ボルトの頭部には該頭部より面積の小さいブロック当接部を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に笠コンクリートブロックの施工用移動型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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