説明

笠木の固定構造

【課題】ブロックにアンカー具を介して笠木を容易且つ強固に固定することが可能な笠木の固定構造を提供する。
【解決手段】笠木19は、ブロックの上端部にアンカー具20を介して固定される。笠木19の下面には、該笠木19の長手方向に沿って延びる一対の支持部24が笠木の短手方向に所定間隔を置いて位置するように設けられている。アンカー具20は、平面視で平行四辺形状(菱形状、長方形状、及び正方形状を除く)をなす本体部25と、該本体部の下面に突設された一対の脚部26とを備える。本体部25は、その長手方向側の両端縁部に両支持部24と各々係止可能な係止部27を有するとともに、その短手方向側の幅が両支持部24間の距離よりも短くなるように設定されている。そして、本体部25を両支持部24間に配置した状態で、該本体部25を90度回動することによって、両係止部27が両支持部24と各々係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば住宅などの外構におけるブロックの端部を覆う笠木の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅などの外構におけるブロックには、該ブロックの上端部に露出する溝や穴などの開口部を塞いで意匠性を向上したり、該ブロックの開口部から雨水などが入り込まないようにしたりするために、そのブロックの上端部を覆うように笠木が取着される。こうした場合、笠木はブロックの上端部から脱落しないように取着される必要があり、従来から、例えば特許文献1に示す笠木の固定構造が提案されている。
【0003】
この特許文献1に記載のブロック笠木構造(笠木の固定構造)では、笠木の長手方向に沿う両側縁部の下面側に略L字状をなすように屈曲して相対向する一対の支持嵌合部(支持部)を設け、その両支持嵌合部に断面視T字状をなすアンカー具の腕部(本体部)が係止されるようにしている。そして、そのように笠木の支持嵌合部に腕部が係止された状態にあるアンカー具の脚部(アンカー部)をブロックの開口部内にモルタルで固定するようにしている。
【0004】
すなわち、特許文献1のブロック笠木構造では、アンカー具の腕部の先端に引掛片部が立設されており、笠木の下面側における両支持嵌合部の間で腕部が回転されると、この引掛片部が笠木の下面と支持嵌合部の先端部で構成される足片部との間に嵌合されることで、アンカー具が笠木に固定されるようになっている。そして、さらに腕部が回転されると、引掛片部の支持嵌合部に対する嵌合状態が解除されて、アンカー具が笠木の長手方向に沿ってスライド移動可能な状態となり、笠木に対するアンカー具の取り付け位置を自由に変更できるようになっている。
【特許文献1】特開平11−303461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のブロック笠木構造では、アンカー具を笠木に取り付ける際に、腕部の回転量が少なすぎても多すぎても引掛片部が十分に笠木の支持嵌合部に嵌合されないので、腕部を回転させる際の力加減が難しかった。加えて、アンカー具の腕部は、正逆両方向に回転可能であるため、アンカー具の笠木に対する取り付け強度が十分であるとは言い難かった。このため、ブロックにアンカー具を介して笠木を容易且つ強固に固定することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、ブロックにアンカー具を介して笠木を容易且つ強固に固定することが可能な笠木の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ブロックの端部にアンカー具を介して笠木を固定する笠木の固定構造において、前記笠木の裏面には、該笠木の長手方向に沿って延びる一対の支持部が前記笠木の短手方向に所定間隔を置いて位置するように設けられ、前記アンカー具は、平面視で平行四辺形状(菱形状、長方形状、及び正方形状を除く)をなす本体部と、該本体部の裏面に突設されたアンカー部とを備え、前記本体部は、その長手方向側の両端縁部に前記両支持部と各々係止可能な係止部を有するとともに、その短手方向側の幅が前記両支持部間の距離よりも短くなるように設定され、前記本体部を前記両支持部間に配置した状態で、該本体部を前記笠木の裏面と垂直な軸線を中心として回動することによって、前記両係止部が前記両支持部と各々係止することを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、アンカー具の本体部が平面視で平行四辺形状(菱形状、長方形状、及び正方形状を除く)をなしているため、本体部の長い方の対角線は少なくとも両支持部間の距離よりも長くなる。そのため、両係止部が両支持部と各々係止した状態では、それ以上本体部を笠木の裏面と垂直な軸線を中心として回動することができなくなる。すなわち、両係止部が両支持部と各々係止した状態では、本体部は笠木の裏面と垂直な軸線を中心として一方の方向にしか回動することができない。
【0009】
したがって、本体部を両支持部間に配置した状態で力加減をすることなく回動可能なところまで回動させることで、両係止部が両支持部と各々強固に係止する。この結果、ブロックにアンカー具を介して笠木を容易且つ強固に固定することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記両支持部は、互いに対向するように内側に向かって延びる支持片をそれぞれ備え、前記両係止部は、前記両支持片を挟持する挟持片をそれぞれ備えていることを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、両係止部が両支持部と各々係止した状態では、両挟持片が両支持片を各々挟持した状態となる。したがって、アンカー具の笠木に対する取り付け強度を高めることが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記アンカー部は複数本の脚部よりなり、該各脚部は前記本体部の裏面における前記笠木の短手方向の中央位置と対応する位置から外れた位置に設けられていることを要旨とする。
【0013】
ブロックを補強する鉄筋は、通常、笠木の短手方向の中央位置と対応する位置に配筋される。この点、上記構成によれば、アンカー部を構成する各脚部は、本体部の裏面における笠木の短手方向の中央位置と対応する位置から外れた位置に設けられているため、ブロックにアンカー具を介して笠木を固定した際に、アンカー部と鉄筋とが干渉することを抑制することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の発明において、前記アンカー部には、前記本体部側に向かって斜めに延びる返し部が設けられていることを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、例えばブロックにアンカー具のアンカー部をモルタルによって固定する場合に、アンカー部をモルタル内に挿入する際の返し部による抵抗が抑制され、アンカー部をモルタル内に挿入した後には返し部の作用によりモルタルからアンカー部が抜け難くなる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の発明において、前記アンカー部には、該アンカー部の長さを短くするために切断可能な脆弱部が設けられていることを要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、アンカー部を脆弱部において切断することで、該アンカー部の長さを容易に短くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ブロックにアンカー具を介して笠木を容易且つ強固に固定することが可能な笠木の固定構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を住宅などの外構におけるブロック塀の上端部を覆う笠木の固定構造に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、図1を基準とした場合の「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」と一致するものとする。
【0020】
図1に示すように、ブロック塀11は、直方体状をなす複数のコンクリート製のブロック12を上下方向に積み重ねるとともに左右方向に配列することで形成される。各ブロック12の上面における前後方向の中央部には、断面視略半円状をなす上面凹溝13が左右方向に沿って延びるように形成されている。また、各ブロック12の左右両側面における前後方向の中央部には、断面視略半円状をなす側面凹溝14が上下方向に沿って延びるように形成されている。
【0021】
各ブロック12の上面凹溝13内及び側面凹溝14内には、左右方向に延びる鉄筋である横筋15及び上下方向に延びる鉄筋である縦筋16がそれぞれ配筋されている。各縦筋16の上端部は湾曲して最も上側に位置する横筋15にそれぞれ係着されている。さらに、各ブロック12の上面凹溝13内、側面凹溝14内、及び各ブロック12の対向面間である目地17には、モルタル18(図2参照;図1ではモルタル18を省略して描いている)が充填されている。そして、最上段に位置する各ブロック12の上端部には、笠木19が、該各ブロックの上面を覆うように、上面凹溝13内に充填されたモルタル18(図2参照)をバインダとしてアンカー具20を介して固定されている。
【0022】
次に、笠木19について詳述する。
図2及び図3に示すように、笠木19は、アルミニウムの押出成形品であり、左右方向に長い中空の矩形板状をなしている。笠木19内における該笠木19の短手方向の中央部には、笠木19の長手方向(左右方向)に沿って延びる一対の補強用のリブ21が笠木19の短手方向(前後方向)に所定間隔を置いて位置するように設けられている。この場合、笠木19の前後方向の幅は、ブロック12の前後方向の幅よりも大きくなるように設定されている。
【0023】
笠木19の下面(裏面)において、両リブ21を挟んだ前後両側には、笠木19の長手方向に沿って延びるスペーサ22が対をなすように設けられている。両スペーサ22は、断面視L字状をなすように内側に屈曲して互いに対向している。両スペーサ22の上下方向の幅は、上下の各ブロック12間に形成されて左右方向に延びる目地17(図1参照)の上下方向の幅と同じになるように設定されている。
【0024】
また、両スペーサ22の下面は、最上段に位置するブロック12の上面における前端縁部及び後端縁部にそれぞれ当接している。さらに、前側のスペーサ22の前面とブロック12の前面とは面一になっているとともに、後側のスペーサ22の後面とブロック12の後面とは面一になっている。また、両スペーサ22の内側において、両スペーサ22と笠木19の下面とで形成されるコーナ部には、断面視C字状をなすネジ穴23がそれぞれ左右方向に延びるように形成されている。ネジ穴23にはタッピングネジが螺入されるようになっており、例えば笠木19の左右両端の開口を塞ぐためのカバー部材などの他の部材がタッピングネジによって螺着可能になっている。
【0025】
笠木19の下面においてブロック12の上面凹溝13と両スペーサ22との間となる位置には、それぞれ左右方向に沿って延びる支持部24が前後で一対をなすようにそれぞれ設けられている。すなわち、両支持部24は、笠木19の下面に前後方向に所定間隔を置いて位置するように設けられている。両支持部24は、断面視L字状をなすように内側に屈曲して互いに対向している。すなわち、両支持部24は、笠木19の下面から垂下した垂下部24aと、該垂下部24aの下端から内側に直角に屈曲した部分からなる支持片24bとをそれぞれ備えている。
【0026】
両支持部24の垂下部24aの長さ(両支持部24の上下方向の幅)は、両スペーサ22の上下方向の幅の半分程度となるように設定されている。そして、両支持片24bの先端には両支持部24における他の部分よりも肉厚とされた断面視略円形の肉厚部24cがそれぞれ形成されている。
【0027】
次に、アンカー具20について詳述する。
図2及び図4に示すように、アンカー具20は、アルミニウムの押出成形品であり、平面視で平行四辺形状(菱形状、長方形状、及び正方形状を除く)をなす略平板状の本体部25と、該本体部25の下面(裏面)から下方に向かって突設されたアンカー部としての一対の略平板状をなす脚部26とを備えている。
【0028】
アンカー具20の本体部25は、図4における前後方向が長手方向とされるとともに、図4における左右方向が短手方向とされている。そして、本体部25の短手方向側の幅は、笠木19における両支持部24の肉厚部24c間の距離よりも短くなるように設定されている。一方、本体部25の長手方向側の幅は、笠木19における両支持部24の肉厚部24c間の距離よりも長く、且つ笠木19における両支持部24の垂下部24a間の距離よりも短くなるように設定されている。
【0029】
また、本体部25は、その長手方向側の両端縁部に、笠木19の両支持部24と各々係止可能な断面視コ字状をなす係止部27を備えている。両係止部27は、上下方向に所定間隔をおいて左右方向に平行に延びる一対の矩形板状の挟持片28と、両挟持片28の内側端部間を連結する連結部29とをそれぞれ備えている。したがって、両係止部27は、左右の両端部及び前後方向の各先端部において開口している。
【0030】
また、両係止部27における両挟持片28間の間隔は、笠木19における両支持部24の肉厚部24cの上下方向の厚さと同じになるように設定されている。さらに、両挟持片28の上下方向の厚さは、笠木19における両支持部24の肉厚部24cと笠木19の下面との間の隙間よりも薄くなるように設定されている。なお、本体部25の上面において、両係止部27と本体部25の前後方向における中央部とのそれぞれの間には、左右方向に延びる前後一対の凹部30が形成されている。
【0031】
アンカー具20の両脚部26は本体部25の前後方向における中央部を挟んだ前後両側に所定間隔を置いて互いに平行となるように対向して配置されており、両脚部26の左右方向の幅は本体部25の左右方向の幅と同じになっている。したがって、ブロック12にアンカー具20を介して笠木19を固定した状態では、両脚部26が横筋15と対応する位置である笠木19の左右方向(短手方向)の中央位置から外れた位置に配置されるようになっている。
【0032】
両脚部26の上下方向の中央部における外側の面には、左右方向から見て横V字状をなす脆弱部としての窪み部31が左右方向に延びるように形成されている。すなわち、窪み部31は、両脚部26において、他の部分よりも強度が弱くなっている部分である。そして、両脚部26は、窪み部31において繰り返し外側に折り曲げることで、窪み部31において切断可能となっている。さらに、両脚部26における前後方向の肉厚は、窪み部31の上側よりも下側の方が薄くなっている。すなわち、両脚部26は、該両脚部26の突設方向(上下方向)における窪み部31を挟んだ上側(基端側)と下側(先端側)とでは、上側の方が下側よりも強度が強くなっている。
【0033】
また、両脚部26の下端には、内側斜め上方に向かって延びる下側返し部32が設けられている。さらに、両脚部26の内側面における窪み部31の上側に隣接する位置には、斜め上方に向かって延びる上側返し部33が設けられている。この場合、上側返し部33の長さは、下側返し部32の長さよりも長くなっている。
【0034】
次に、ブロック12にアンカー具20を介して笠木19を固定する際の作用について説明する。なお、図5は笠木19及びアンカー具20を下側から見た図である。
ブロック12にアンカー具20を介して笠木19を固定する場合には、まず、笠木19にアンカー具20を取り付ける必要がある。すなわち、図5に示すように、笠木19の両支持部24間にアンカー具20の本体部25を配置する。このとき、アンカー具20は、その本体部25の上面と笠木19の下面とを接触させるとともに、その本体部25の長手方向が笠木19の長手方向とほぼ平行となるようにする(図5の2点鎖線で示す状態)。
【0035】
引き続き、アンカー具20の本体部25を、笠木19の下面(図5の紙面)と垂直な軸線を中心に図5における時計回り方向に回動する。すなわち、本体部25を図5において該本体部25の短い方の対角線上の頂点が回動方向の先頭となるように回動する。そして、本体部25(アンカー具20)が図5において2点鎖線で示す状態から実線で示す状態に回動した状態、すなわち本体部25が90度回動された状態になると、図2に示すように、笠木19における両支持部24の肉厚部24cが、本体部25の左右両端縁部にそれぞれ備えられた両挟持片28間にそれぞれ嵌入された状態となる。すなわち、両支持部24の肉厚部24cが、本体部25の2対の挟持片28によってそれぞれ挟持された状態となって、笠木19に対してアンカー具20が取り付けられる。
【0036】
また、上記のように笠木19に対してアンカー具20を取り付ける際に、アンカー具20の本体部25を、笠木19の下面と垂直な軸線を中心に時計回り方向に90度よりも大きく回動しようとした場合には、本体部25の長い方の対角線と対応する両コーナ部において、本体部25の係止部27の連結部29が笠木19における両支持部24の肉厚部24cに当接する。
【0037】
このため、本体部25は、時計回り方向に90度よりも大きく過剰に回動されない。したがって、本体部25を、笠木19の下面と垂直な軸線を中心に時計回り方向に力加減をすることなく力一杯回動することで、笠木19に対してアンカー具20が容易且つ確実に取り付けられる。
【0038】
そして、上記と同様にして、笠木19の長手方向に沿って所望の位置に所望の間隔を開けて所望の数だけ笠木19に対してアンカー具20を順次取り付ける。この場合、笠木19に対するアンカー具20の取り付け位置、取り付け間隔、及び取り付け数は、笠木19を固定するブロック12の形状や種類などを考慮して必要に応じて適宜変更される。
【0039】
また、笠木19に対して一旦取り付けたアンカー具20の取り付け位置を変更する場合には、アンカー具20の本体部25を、笠木19の下面と垂直な軸線を中心に図5における反時計回り方向に90度回動する。この状態で、本体部25を笠木19の長手方向に沿って変更したい取り付け位置にスライド移動させ、再び本体部25を、笠木19の下面と垂直な軸線を中心に図5における時計回り方向に90度回動すればよい。
【0040】
引き続き、図2に示すように、最上段に位置する各ブロック12の上面凹溝13内にモルタル18を充填し、上記の各アンカー具20が取り付けられた笠木19を、該笠木19の下面が各ブロック12の上面と対向するように配置する。このとき、笠木19の短手方向(前後方向)における中央位置は、各ブロック12の上面凹溝13内においてモルタル18によって埋没された横筋15と対応している。
【0041】
引き続き、笠木19を各ブロック12の上面に向かって押し下げると、各アンカー具20の両脚部26がそれぞれモルタル18に突き刺さり、さらに笠木19を押し下げると、各アンカー具20の両脚部26がそれぞれモルタル18内に没入される。そして、笠木19の両スペーサ22が各ブロック12の上面に当接するまで笠木19を押し下げると、各アンカー具20の両脚部26は、その上側返し部33まで完全にモルタル18内に埋没する。
【0042】
このとき、各アンカー具20の両脚部26は、横筋15と対応する位置から外れた位置、すなわち横筋15を挟んだ前後両側にそれぞれ配置されているため、各アンカー具20の両脚部26と横筋15とが干渉することはない。また、各アンカー具20の両脚部26に設けられた上側返し部33及び下側返し部32は、内側斜め上方に向かって延びているため、該両脚部26をモルタル18内に突き刺して埋没する際の抵抗が抑制されるとともに、各ブロック12の上面凹溝13内において上側返し部33及び下側返し部32の上側にモルタル18が回り込み易くなる。加えて、上側返し部33及び下側返し部32の作用により、一旦モルタル18内に突き刺して埋没させた両脚部26は、上方へ抜けにくくなる。その後、モルタル18が乾燥して固まることで、ブロック12の上面に各アンカー具20を介して笠木19が固定される。
【0043】
また、図6に示すように、ブロック12の上面凹溝13の深さが浅くて、アンカー具20の両脚部26をそれぞれモルタル18内に没入した際に両脚部26が上面凹溝13の底面に突き当たる場合には、図7に示すように、両脚部26を窪み部31から外側に繰り返し折り曲げることで、両脚部26を窪み部31において切断して短くすればよい。この場合、両脚部26を窪み部31において切断した後においても、上側返し部33は残るため、上側返し部33の作用により両脚部26はモルタル18から抜けにくくなる。
【0044】
以上詳述した実施形態によれば次のような効果が発揮される。
(1)アンカー具20の本体部25は、その本体部25の長い方の対角線が両支持部24の肉厚部24c間の距離よりも長くなるように形成された平面視で平行四辺形状(菱形状、長方形状、及び正方形状を除く)をなしている。このため、笠木19の両支持部24間にアンカー具20の本体部25を配置した状態で、本体部25を笠木19の下面と垂直な軸線を中心に図5において時計回り方向に回動すると、両係止部27が両支持部24と各々係止した状態となり、その係止した状態よりも先へは本体部25を回動することが不可能になる。すなわち、アンカー具20は、本体部25の両係止部27が笠木19側の両支持部24と各々係止した状態では、従来とは異なり、図5において反時計回り方向(一方の方向)にしか回動することができないため、両係止部27と両支持部24との係止状態が解除されにくくなる。したがって、本体部25を両支持部24間に配置した状態で力加減をすることなく回動可能なところまで図5において時計回り方向に回動させることで、両係止部27を両支持部24と各々強固に係止することができる結果、ブロック12にアンカー具20を介して笠木19を容易且つ強固に固定することができる。
【0045】
(2)両係止部27が両支持部24と各々係止した状態では、両挟持片28が両支持片の肉厚部24cを各々挟持した状態となるため、アンカー具20の笠木19に対する取り付け強度を高めることができる。
【0046】
(3)アンカー具20の両脚部26は、本体部25の下面における横筋15と対応する位置である笠木19の短手方向の中央位置から外れた位置に設けられているため、ブロック12にアンカー具20を介して笠木19を固定した際に、アンカー具20の両脚部26と横筋15とが干渉することを回避することができる。
【0047】
(4)アンカー具20の両脚部26には、斜め上方に向かって延びる上側返し部33及び下側返し部32がそれぞれ設けられている。このため、両脚部26をブロック12の上面凹溝13内に充填されたモルタル18に突き刺して埋没する際に、上側返し部33及び下側返し部32による抵抗を抑制することができるとともに、上側返し部33及び下側返し部32の上側にモルタル18を回り込み易くすることができる。加えて、両脚部26をモルタル18内に埋没した後には、上側返し部33及び下側返し部32の作用によりモルタル18内から両脚部26を抜けにくくすることができる。
【0048】
(5)上側返し部33及び下側返し部32は、アンカー具20の両脚部26の内側にそれぞれ設けられているため、作業時に、上側返し部33及び下側返し部32が無駄に手や物などに引っかからないようにすることができる。
【0049】
(6)アンカー具20の両脚部26には、該両脚部26の長さを短くするために切断可能な窪み部31が設けられているため、両脚部26を窪み部31において切断することで、該両脚部26の長さを容易に短くすることができる。特に本実施形態では、アンカー具20がアルミニウム製であるため、両脚部26を窪み部31において道具を使うことなく素手で容易に切断することができる。
【0050】
(7)アンカー具20の両脚部26における前後方向の肉厚は、窪み部31の上側よりも先端側となる下側の方が薄くなっているため、両脚部26の窪み部31において該窪み部31から下側を素手でより一層容易に切断除去することができる。
【0051】
(8)アンカー具20の両脚部26における窪み部31の上側に隣接する位置には、上側返し部33が設けられているため、両脚部26の長さを短くするために該両脚部26を窪み部31において切断して該窪み部31よりも下側を除去したとしても、両脚部26には上側返し部33が残る。したがって、両脚部26を窪み部31において切断しても、両脚部26を残った上側返し部33によりモルタル18から抜けにくくすることができる。
【0052】
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・アンカー具20の両脚部26において、窪み部31を省略してもよい。
【0053】
・アンカー具20の両脚部26において、上側返し部33及び下側返し部32を外側に設けるようにしてもよい。
・アンカー具20の両脚部26は、平板状でなく棒状に形成してもよい。
【0054】
・笠木19の両支持部24の形状とアンカー具20の本体部25の左右両端縁部にそれぞれ備えられた両挟持片28の形状とを入れ替えた構成とし、笠木19に対してアンカー具20を取り付けた際に、両支持部24が本体部25を挟持するように構成してもよい。
【0055】
・本体部25の両係止部27を平板状に構成し、笠木19に対してアンカー具20を取り付けた際に、本体部25の両係止部27が笠木19の下面と該笠木19の両支持部24の肉厚部24cとの間にそれぞれ嵌入されるように構成してもよい。
【0056】
・アンカー具20の両脚部26において、窪み部31を上下方向に所定間隔を置いて2つ以上並設するように構成してもよい。このようにすれば、各窪み部31を下から順次切断することで、両脚部26を段階的に短くすることができる。
【0057】
・笠木19は、各ブロック12の左右の側面に側面凹溝14を覆うように固定してもよい。
・ブロック12の前後方向の幅を笠木19の前後方向の幅と同じにしてもよい。
【0058】
さらに、上記実施形態より把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記アンカー部は、該アンカー部の突設方向における前記脆弱部を挟んだ基端側と先端側とでは、該基端側の方が該先端側よりも強度が強くなっていることを特徴とする請求項5に記載の笠木の固定構造。
【0059】
上記構成によれば、アンカー部の脆弱部において該脆弱部から先端側を容易に切断することができる。
(ロ)前記返し部は、前記アンカー部の内側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の笠木の固定構造。
【0060】
上記構成によれば、作業時に、返し部が無駄に手や物などに引っかからないようにすることができる。
(ハ)前記返し部は、前記アンカー部の延びる方向(突設方向)における前記脆弱部よりも基端側に設けられていることを特徴とする請求項4または上記(ロ)に記載の笠木の固定構造。
【0061】
上記構成によれば、前記アンカー部の長さを短くするために該アンカー部を脆弱部において切断して該脆弱部よりも先端側を除去したとしても、該アンカー部から返し部がなくならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態において、ブロック塀にアンカー具を介して笠木を固定した状態を示す要部斜視図。
【図2】図1の2−2線矢視断面図。
【図3】笠木を斜め下方から見た場合の斜視図。
【図4】アンカー具を斜め上方から見た場合の斜視図。
【図5】笠木にアンカー具を取り付けるときの状態を示す底面図。
【図6】ブロック塀に両脚部を短くしたアンカー具を介して笠木を固定した状態を示す断面図。
【図7】アンカー具の両脚部を窪み部において切断して短くするときの状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0063】
12…ブロック、19…笠木、20…アンカー具、24…支持部、24b…支持片、25…本体部、26…アンカー部としての脚部、27…係止部、28…挟持片、31…脆弱部としての窪み部、32…返し部としての下側返し部、33…返し部としての上側返し部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックの端部にアンカー具を介して笠木を固定する笠木の固定構造において、
前記笠木の裏面には、該笠木の長手方向に沿って延びる一対の支持部が前記笠木の短手方向に所定間隔を置いて位置するように設けられ、
前記アンカー具は、平面視で平行四辺形状(菱形状、長方形状、及び正方形状を除く)をなす本体部と、該本体部の裏面に突設されたアンカー部とを備え、
前記本体部は、その長手方向側の両端縁部に前記両支持部と各々係止可能な係止部を有するとともに、その短手方向側の幅が前記両支持部間の距離よりも短くなるように設定され、
前記本体部を前記両支持部間に配置した状態で、該本体部を前記笠木の裏面と垂直な軸線を中心として回動することによって、前記両係止部が前記両支持部と各々係止することを特徴とする笠木の固定構造。
【請求項2】
前記両支持部は、互いに対向するように内側に向かって延びる支持片をそれぞれ備え、
前記両係止部は、前記両支持片を挟持する挟持片をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1に記載の笠木の固定構造。
【請求項3】
前記アンカー部は複数本の脚部よりなり、該各脚部は前記本体部の裏面における前記笠木の短手方向の中央位置と対応する位置から外れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の笠木の固定構造。
【請求項4】
前記アンカー部には、前記本体部側に向かって斜めに延びる返し部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の笠木の固定構造。
【請求項5】
前記アンカー部には、該アンカー部の長さを短くするために切断可能な脆弱部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の笠木の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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