説明

符号化された高周波信号の生成のための装置および方法

【課題】特殊な作動ケースにおいて送信器に必要な電気エネルギの有利な生成を実現すること。
【解決手段】変換器を有し、該変換器は、プロセスまたは装置周辺から得られる非電気的な一次エネルギを低周波の電気エネルギに変換し、低周波の電気エネルギを高周波の電気エネルギに変換するための、非線形特性を備えた構成要素を有しており、高周波の電気エネルギから符号化された信号を生成するための符号化装置を有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、符号化された高周波信号の生成のための装置および方法に関している。
【背景技術】
【0002】
低周波の電気エネルギ、例えばバッテリからの直流電流エネルギ、電源周波数電流エネルギなどを用いて高周波エネルギを生成することは公知である。電源網から給電される高周波発信器やバッテリ駆動式の高周波送信機、例えば無線機器、移動電話(ハンディテレホン)、コードレス電話などはさらに広く知られている。そのような機器によっては、コード化されていない高周波信号やコード化ないしは変調されている高周波信号が多種多様の無線情報伝送のために送信されている。バッテリ駆動の場合には、太陽エネルギが一次エネルギ源として用いられる場合もある。この場合には太陽エネルギ用いて再充電可能なバッテリないし蓄電池が十分な照度のもとで再充電されるかないしは充電状態に維持され得る。
【0003】
物理的データおよび類似したデータ、測定変数などを遠隔問合せすることも公知である。この種の遠隔問合せに対する例は、例えば高熱容器の温度を測定してこの容器から離れた箇所で表示する遠隔サーモメータが挙げられる。純粋に電気的に動作する遠隔サーモメータは、それに対して、感温センサと本来の表示装置との間に2心の電気線路を有している。
【0004】
またセンサと表示装置との間の接続が無線経路での伝送である、遠隔問合せ装置も公知である。このデータ伝送は、ワイヤレスではあるが、センサの箇所において、すなわち送信機に対して、電気エネルギ源が必要とされる。
【0005】
完全にワイヤレスの接続が構築されるべきならば、データ問合せ箇所においては電気的なバッテリ式エネルギ給電が使用される(それ以外の電気的なソースが得られない限り)。さらに、次のようなセンサ、すなわちデータの伝送に必要なエネルギが相応に高エネルギで広帯域な問合せパルスによって表面波装置内へワイヤレスに入力結合されそこから適切な信号処理によってパッシブに返信されるようなセンサにおける電気的な給電なしの遠隔問合せ可能な装置が公知である。しかしながらこの場合、測定量がより正確に求められれば求められるほどあるいはより正確に監視されれば監視されるほど、高エネルギの問合せパルスを規則的にかつ頻繁に送信しなければならないことは欠点となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特殊な作動ケースでそのような送信器に必要な電気エネルギの有利な生成を実現することである。この特殊な作動ケースとは、比較的短い着目すべき時間間隔においてだけ無線情報の伝送が実施されるケースである。この場合そのつどのそのような時間間隔の長さは、そのような順次連続した時間間隔の間の休止期間よりも短い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は本発明の請求項1の特徴部分に記載された装置によって解決される。本発明の有利な構成例並びに、符号化された高周波信号の生成のための方法は従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明は有利には次のような考察を基礎としている。すなわち技術的コストの削減とメンテナンスの最小化の観点から有利な1つの原則を見いだすことである。これはそのつどのケース毎に完全に充足された無線情報伝送を、電気的な一次エネルギとは異なるエネルギを用いて可能にしている。
【0009】
本発明の別の有利な実施例は従属請求項に記載されている。
【0010】
既に前述したように太陽電池による変換のケースでは、これは周知のようにその使用に制限が加わる。この場合は十分な光の入射に依存し、大抵はエネルギ蓄積要素との接続の中でしか有意に使用できない。
【0011】
本発明は、次のような方向性を有している。すなわち高周波信号(無線信号)生成のための本発明による電気エネルギの供給のために、大量に得ることのできるエネルギ(ここでは周辺環境から得られる一次エネルギと称する)を使用する方向性を有している。
【0012】
そのような、通常は使用されないような一次エネルギは、機械的な変形エネルギ、例えば圧力、その他の応力、摩擦力(低温)、熱エネルギ、加速力、放射エネルギ、振動質量等である。これらの応力に関する限り、本発明ではそれらの時間的グラジエントまたは位置的グラジエントが使用される。これらのグラジエントはエネルギに対して同等とみなされる。
【0013】
これまでに活用されなかった一次エネルギの例として例えば、電気的スイッチの操作に基本的に必要とされた圧力/変形エネルギや、空間的または時間的温度グラジエントと共に得られる例えば加熱体の熱、あるいは振動性の振動質量体(例えば自動車)における加速エネルギなどがある。さらに、震動、振動、空気の移動なども一次エネルギとして適している。しかしながらこれらの例示は、本発明の限定を意図するものではない。
【0014】
本発明の集積された原理は実質的に次のようなことからなる。すなわちそのような過程のエネルギから1つのエネルギ成分を分離させ、この分離成分を所定の低周波の電気的エネルギに変換することである。本発明による最も一般的な形態では、例えば摩擦によって生じる静電学的に蓄積された電荷の分離ともみなすことができる。低周波としては本発明によれば、徐々に上昇する振幅を有する電圧の生成とも理解できる。また本発明によれば、圧電的または光起電力式の構成要素において生成される電圧も使用できる。
【0015】
次のステップでは、そのようないわゆる低周波な電気エネルギが高周波の電気エネルギに変換される。それに対して本発明では、非線形的な特性曲線を有する構成要素(非線形特性の構成要素)が使用され得る。これに関して本発明の趣旨では次のような構成要素と理解されたい。すなわちその電気的な特性が印加電圧に依存して所定の限界値から跳躍的に変化するかまたはある限界値の範囲内で跳躍的に変化する電気的な構成要素、例えばトランジスタ、ダイオードなどと理解されたい。そのような構成要素では結果的に急峻なエッジを有する電流パルスが生成される。これは周波数領域においては高周波信号に相応する。
【0016】
このような高周波信号の帯域幅に応じて、場合によってはさらに狭帯域の周波数スペクトルをそこからフィルタリングする必要が生じる。しかしながら、既に十分な狭帯域の高周波信号を生成する、非線形特性の構成要素を適用することも可能である。それにより、高周波信号の全てのエネルギ成分を活用することが達成される。
【0017】
本発明のさらなるステップでは、この高周波の電気エネルギが情報を伴って符号化され、符号化された(狭帯域の)高周波信号として送信される。この符号化は識別化に適するものであってもよいし、さらにその他の情報、例えば符号化装置に作用するパラメータの種類やサイズに関する情報が含まれていてもよい。これらは所定の物理量、例えば温度、応力、または跳躍的なインピーダンス変化であってもよいし、あるいは化学的または生物学的パラメータ、例えばガス、蒸気、液体、原料などの濃度や種類、あるいは生物学的生体、例えばウイルス、遺伝子などの種類であってもよい。
【0018】
しかしながら送信される符号化された高周波信号は(このエネルギ成分は場合によっては実施される狭帯域選択のもとで強制的に僅かに抑えられる)、本発明の適用範囲にもかかわらず十分に大きなものである。この場合の特異的な特徴は、使用可能な一次エネルギから符号化されて生成される高周波信号エネルギへの変換レベルが僅かにも係わらず本発明の有効利用に係わる問題が何も生じないことである。
【0019】
これについては補足的に次のことを述べておきたい。すなわち測定上限定的に隔離されて位置付けされた無線受信ステーションが公知の形式で次のように構成されている、すなわち受信した(符号化された)狭帯域高周波信号の情報を検出できるように構成されていることを述べておきたい。これによって無線受信側で問題が生じることはない。なぜならそこでは受信機のエネルギ供給が従来の方式、例えば電流網、バッテリなどによって保証されるからである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】エネルギ流を示したブロック回路図
【図2】基本的な構造を示した図
【図3】集積された構造の概略的平面図
【図4a】集積された構造の2つの実施例を側面から示した図
【図4b】集積された構造の2つの実施例を側面から示した図
【実施例】
【0021】
図1のブロック回路図によれば、変換器10が設けられており、この変換器は、得られたそれぞれのプロセスエネルギを電気エネルギに変換する。例えばそのような変換器10に対する例として、圧力/変形エネルギの変換のための圧電素子、熱電体、熱電対、ゼーベック/ペルチエ効果を有する素子、温度グラジエントを有する熱エネルギ変換素子、振動/加速変化エネルギを低周波の所定の電気エネルギに変換するエレクトロダイナミック系ないし圧電系等が挙げられる。ソーラーセルも適している。また前記変換器(10)として摩擦素子を適用してもよい。これは2つの異なる充電材料の間の摩擦から低周波エネルギとしての静電電圧を生成する。
【0022】
所要の電圧の高さは非線形素子に依存し、スパーク区間に対しては数100V〜1000V、半導体構成素子に対しては数10V〜20V、リレーに対しては数Vまでで十分である。
【0023】
符号11で示されているのは非線形素子である。これは、間隔をおいて行われる蓄積された低周波エネルギから高周波の固有特性をとるエネルギへの遷移経過トリガのための切換過程との関連のもとで、いわゆる低周波エネルギから高周波エネルギへの変換のために用いられるものである。例えばそのような非線形素子に対する例として、スパーク区間、ガス放電管等が挙げられる。また例えばバラクタないしアバランシェ効果を有するダイオードやサイリスタ、同等の作用をする半導体素子なども適している。基本的には、低周波電気エネルギの部分的に僅かな電流の切換のためのスイッチやリレーも適しており、これらも相応の非線形特性を示す。ここではシリコンマイクロリレーや圧電リードを有するリレーなども挙げられる。
【0024】
場合によっては付加的なフィルタリング特性を備えた符号化装置12として、種々多様な装置が適している。特にこの場合表面弾性波(SW/SAW)、せん断波、表面近傍のバルク波と共に動作する装置が適している。またこれらは共振装置や、場合によっては分散またはタッピングされた遅延線であってもよい。一般的には電気音響変換器も適している。同様に誘電性フィルタ、メカニカルフィルタ、同軸セラミックフィルタ、バルクオシレータ、水晶発振器、LC共振回路フィルタなども適している。そのような電気音響変換器に対する圧電材料としては特にリチウムニオブ、リチウムタンタル、水晶、Li2B4O7、またはランタン−ガリウム−シリコン−酸化物などが適している。
【0025】
符号化装置としては有利にはパルス圧縮(スペクトル拡散通信方式または広帯域符号化方式)を備えた電気音響変換器が用いられてもよい。これは符号化された高周波信号の伝送を許容する。これは特に障害に強く、自然の(高周波)障害や符号化された信号の意図的な不正な影響からも保護する。これは例えば前記した分散またはタッピングされた遅延線などである。
【0026】
この高周波信号は、任意の、無線伝送に対して公知の適した周波数領域あるいは前述したフィルタまたは符号化装置によって生成可能な周波数領域におかれてもよい(例えば数kHz〜数GHz)。
【0027】
以下では具体的に適用可能な本発明の有利な実施形態を説明する。図2による第1の実施形態は、例えば機器や照明などのスイッチオンのためのスイッチとして使用可能である。非常に好適な適用例は、手動による照明装置のスイッチオン/オフを行う室内の光スイッチである。このスイッチは、配線を全く必要とせず、壁などへ電気ケーブルを敷設する必要がない。このスイッチがプッシュされた場合には、本発明によれば、高周波信号が送信され、つまりこのスイッチに外部から電流が供給されることはない。室内のどこかに、例えばランプの近傍に配置された受信機は、この高周波信号に反応し、当該の照明装置をワイヤレスで遠隔制御されながらオン/オフする。図2には、無線信号を伴った本発明によるプロセスエネルギを使用するワイヤレススイッチにおける、本発明の重要な考察を含んだ部分の構造が概略的に示されている。変換器10(従来のプッシュスイッチ)は、プッシュ操作Pによって作動され、この圧力Pが変換器10の圧電素子に圧電電圧を生じさせる。そのような変換器の圧電材料としては電気音響変換器に対して前述した以外のPVDF(ポリ弗化ビニリデン)や強誘電液晶エラストマー(FLCE)等が特に適している。
【0028】
そのようなスイッチは、高周波信号を生成しトリガを行うアクチュエータとして構成されていてもよい。この場合は符号化を用いて周辺パラメータに関する情報が印加されてもよい。
【0029】
高い圧電電圧の生成のためには特に上死点ばねを備えた機械的な操作装置が適している。このばねは、死点を越えた負荷の際に設定されたプレストレス(機械的)を衝撃的に変換器に作用させる。
【0030】
変換器10は、集積化されたまたは補足的な電気的充電キャパシタンス10′を含んでいる。これは生成ないし分離された電荷を、非線形素子のトリガまで蓄積する。それに対して圧電または熱電変換器の内部キャパシタンスは十分である。
【0031】
図示の電流回路では、非線形素子11として例えばスパーク区間が設けられている。この区間では、圧電的に生成された電圧が十分な高さに上昇した瞬間に火花放電が生じる。
【0032】
そのようなスパーク区間は、本発明の作用を充たすべき条件、例えばナノ秒領域で行われる高周波エネルギへの変換のための電気的な降伏の条件を充たす。選択的には既に前述したような、相応の迅速な降伏特性を備えた他の素子も適用可能である。
【0033】
このような火花放電の電流は、電流回路を閉成するためにインダクタンス、例えば広帯域フィルタ20を通流する。このインダクタンス20に現われる電圧降下は、表面弾性波フィルタ21の櫛形構造部22(変換器電極)を給電する。ここでは公知の形態でメカニカル/アコースティックウェーブが生成される。符号化は、フィルタの入力側および/または出力側の櫛形構造部22の特殊な構成によって行われる。符号化に従って配置される反射器ストライプのパターン23が設けられてもよい。その"エコー"が符号化を形成する。フィルタにおいて空洞が形成されるならばその空胴の共振振動が形成され、その正確な周波数によって正確な符号化が形成されるようになる。フィルタ出力側からは符号化された信号が得られる。
【0034】
前記実施例では、櫛形構造部と反射器ストライプの相互作用が周知のように次のことに結び付く。すなわち図示のアンテナ24のダイポールに前述した(ここでは構造部23のコードと共に符号化される)高周波無線信号が生成され、前述した受信機に送信される。反射遅延線として動作する表面弾性波装置は時間領域で符号化を提供し、共振器として動作する装置(図示されていない)周波数領域で符号化を提供する。その際符号化を周辺パラメータに依存して実施してもよい。
【0035】
次に本発明の別の実施例を、再び図2に基づいて説明する。熱的なプロセスエネルギを使用した実施形態では、変換器10は例えば電極を備えた熱電対体(ピロ素子)である。この実施形態では、矢印Pは熱エネルギの供給を表す。本発明による使用では、この熱的一次エネルギが例えば時間的な温度グラジエントを有する。これは例えばサーモスタット制御を伴う(例えばルームヒーティングに用いられる)加熱体のもとに存在し、この場合加熱体の温度変動は、本発明による目的のために全く十分である、数度のケルビン絶対温度領域で作用する。この実施形態では、変換器10の加熱と冷却が交互に行われ、このことはピロ素子に印加される電圧の大きさと極性の交互変化に結び付く。この非線形素子(ここでもこれはスパーク区間であってもよい)は、次のことに作用する。すなわち所定の(正または負の)電圧変化の達成のもとで火花放電が行われることに作用する。これは、圧電的実施形態について前述したような過程をトリガする。
【0036】
これに関する特異的な適用例は、これまでに他のエネルギ供給で動作するそれ自体公知の、ルームヒーティングシステムの熱消費データの遠隔検出である。本発明の原理による既に前述した実施形態は、詳細には電気的なエネルギの供給なしで、2重に有利に適用可能である。この第2の利点は、次のようなことからなる。すなわちそれ自体が基本的に公知の形式で、表面波素子21が直接的な温度検出にも利用できることである。表面波変換器の狭帯域の高周波出力信号の中間周波数ないし伝播時間は、温度に反応するものであってもよい。この表面波素子が例えば加熱体と熱的に接続した場合には、本発明の実施形態によれば、1つのユニット内で温度の測定のみならず、供給された熱によって、本発明に従って作用する高周波送信過程のための所要の電気エネルギが生成される。それにより各信号は温度変化ないしは切換過程を表し、同時に変換器に作用する相応の温度を供給する。この熱エネルギは、高周波パルスへの変換のみに用いてもよい。但し符号化は、装置周辺の任意の他の可変のパラメータに依存して行われる。
【0037】
震動質量体の加速度的に変化する機械的な動きからのプロセスエネルギを使用する実施形態も、図2に基づいて説明することが可能である。ここでの変換器はこの震動質量体を含み、矢印Pはこの機械的なエネルギの供給を表す。このエネルギ供給は変換器10に含まれている震動質量体の震動を引き起こす。この機械的なエネルギ供給は、連続的な交換エネルギであってもよく一度きりのパルスエネルギであってよい。偏心器を用いることにより回転する対象のエネルギを高周波信号に変換することも可能である。これも任意の周辺パラメータに関する情報をもとに符号化してもよい。振動も震動質量体を用いてあるいは圧電変換器を用いて検出したりおよび/または変換するのに用いることが可能である。
【0038】
本発明の適用分野は、多種多様に亘り、例えば機械の運転モードの領域、種々の形式の車両、例えば鉄道や市電、フォークリフトなどの車両の運転モード領域において、種々の形態の液状、溶媒状、ガス状、または蒸気状の媒体の監視に用いたり、あるいは生体の監視に用いることもできる。本発明による装置を備えたそのような対象または生体は、(電気的なバッテリを必要とすることなく)本発明によって、時間間隔の中で連続的に(それが動いている限り)符号化された高周波信号を送信することができる。このことは次のようなことに用いることも可能である。すなわち、それぞれの対象または生体における個々の/種々異なる符号化された高周波信号に基づいて、これらを遠くから相互に区別したり、同時にそれらの加速データまたは移動データ、温度またはその他の状態を検出するのに用いることができる。生体のもとでは例えば、野生動物や子供、その他の要監視人物などの活動が自動的に検出されてもよい。その際ここにおいてもそれらの活動に関する所定の限界値が設定される。この場合は符号化された信号がその限界値の上回りあるいは下回りによってトリガされたり送信されたりしてもよい。
【0039】
本発明による装置は、所定の限界的な負荷(例えば熱的負荷か機械的な負荷)の自動検出に用いることもできる。この場合は当該の限界的な負荷に達した時に高周波信号が生成され、これがワイヤレスで受信ステーションないし監視装置に転送される。それにより、簡単でかつ必要に応じて活動化される、物理量の監視が可能となる。限界的負荷のレベルは、非線形素子または変換器の応答点によって与えられるかまたは可変に設定され得る。機械的な限界負荷は、付加的なバイアスばねによって設定されてもよい。これにより、変換器の応答がバイアス応力に到達して初めて可能となる。それに伴い自動的な重量コントロールも実現できる。所定の重量を上回るかまたは下回った場合には、この情報が自動的に符号化された信号を介して受信器ないし伝送装置に送信される。重量変化ももちろん検出可能である。それにより、本発明による装置は盗難監視のためにも用いることも可能である。
【0040】
図3と図4には、集積されて構成された熱測定器として使用可能な本発明による装置の構成が示されている。符号101は、(例えば1cm2以上の)熱電特性を備えた扁平状の基板である。例えばこれはチタン酸バリウム、ジルコン酸チタン酸鉛などからのセラミックであってもよいし、あるいはニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどの単結晶材料からなっていてもよい。2つの小板表面には2つの平面電極41,42が設けられており、それらの電極からは発生した熱電電圧がピックアップ可能である。
【0041】
基板101状には図4bによる第2の変化例では熱電小板110、例えば接着されて配設される。これはさらに以下で表面弾性は装置におよびさらなる機能に用いられる。最適化された実施形態は図4aに示された変化実施例である。この場合この熱電小板110が基板101の集積化された領域である。前提となるのは、基板101の熱電材料がその他にも少なくともこの領域において圧電特性を有していることである(そして表面弾性波装置に対しても適している)。これはニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどのような(単結晶材料)場合である。
【0042】
完全性の理由から次のことを示唆しておく。すなわち図4bの変化例の原理に対しては圧電小板110が電気的にのみ接続され、位置的には小板形状基板101から分離されて位置付けされてもよい。例えば小板110は基板101から熱的に絶縁されていてもよい。そのような変化例の場合でも、本発明による、熱エネルギから高周波信号への変換原理は完全に機能する。表面波装置における熱電体101と圧電小板110の間の熱結合の利点は、それに結び付くその都度の温度値の測定の可能性に関連して以下でさらに説明する。それに関して表面波装置に対する基板101および小板110として、集積化された一体型小板の適用、すなわちタンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの単結晶材料からの適用は、本発明では特に意味がある。
【0043】
図4aとbに示されているように、基板101の裏側(下方側)は有利には完全に扁平に例えばアルミニウム42によって金属化されている。基板101の対向する上部側はこの図4bの変化例では有利には全く扁平に金属化されている(41)。図4のaによる変化例では、基板101部分(これは圧電小板110として機能するように設けられている)が上方の金属化部において省かれている(これはこの省かれている面においてさらに以下で説明するような構造部を位置付けするためである)。図4bの変化例では、この構造部が別個の小板110上に配設されている。小板110がいずれにせよ所要のボンディングワイヤによって基板101に固定されている場合には、基板101と小板110の間の機械/熱緊張の減結合が図られる。
【0044】
符号13および14は、スパーク区間に対するそれぞれ1つの電極であり、これらの先端は図示のように相互に対峙している。火花電極13は、金属化部41と電気的に接続されている。火花電極14は、対向電極として電気的に金属化部15と接続されている。この金属化部15は線路と以下でさらに詳細する誘導コイル19を介してアース端子18に接続されている。これも基板101の裏側の金属化部42に接続されている。2つの電極41と42の間に熱電的電圧が生じた場合には、これらは火花電極13と14の間に現れ、このスパーク区間の非線形の点弧特性に基づいて火花放電が、火花電極13、14の所定の幾何学形状によって定まる累積熱電電圧値以上から生じる。前記誘導コイル19は、直流ライン/ローパスフィルタである。このコイルは有利には、小板110表面に導体ストリップとして被着された、曲折した構造またはらせん形の構造を有している。
【0045】
特に図4aに基づいて前述してきた本発明による装置は、温度も同時に測定することができる。基板101とそれに部分的に機能的に含まれる小板110は、熱源といずれにせよ熱電効果のために熱的に結合される。すなわち表面波構造部22/23の領域110は本発明による装置によって測定されるべき加熱体の温度を受け取る。
【0046】
SW構成要素は温度に依存する高周波信号を生成する。すなわち発信される符号化された信号は、小板(およびそれに伴う加熱体)の目下の温度の情報を含む。受け取る箇所において、ないしは受信ユニット、評価ユニットにおいて、このように送信された信号波からは加熱体温度を、符号化された信号から求めることができる。このことを第2の変化実施例においても得るために、この場合の小板110は熱源(加熱体など)に対して別個に熱結合されている。
【0047】
電極13および14の火花区間の相応の選定および当該装置の熱源(加熱体)との熱コンタクトの相応の選定、つまり熱電基板10における熱伝導の相応の選定によって、順次連続する火花放電の所定の時間シーケンスが選択ないし設定され得る。それによりアンテナ24から発信される信号のタイミングが与えられる。中央の受信ステーションは、そのような多くの測定ポイント、つまり種々の測定ポイントの入力信号を検出しなければならないので、個々の測定ポイントの信号送信を時間的に対応付けることが重要である。実際には、個々の測定ポイントからマイクロ秒だけの送信パルスが中央ステーションによって受信されることもある。すなわち時間的なパルス間隔に対する送信パルスのタイミングレシオが極端に短い。それ故にこのようなタイプの2つの異なる測定ポイントからの送信の一致はまずなくなり、不必要なエレクトロスモッグは生じない。
【0048】
本発明では、特にSW構成要素上の反射器構造部23のパターンでもって符号化が行われる。可能なコードの種類は、そのようなストリップパターンからも公知のように著しく多い。本発明による装置によれば、個々のそのような測定装置の識別が中央ステーションによって問題なく行われる。
【0049】
それにより本発明による装置は、最小の基板面101に集積化させることが可能である。それによりこれは扱いが容易となり、様々な困難な箇所にも問題なく配置することができる。集積化された構造様式によって、装置自体も低コストで製造することができる。ここでは熱測定器として実施されている例は、相応の圧電素子やその他のセラミック変換器、または半導体からなる変換器10に、使用される一次エネルギのために問題なく伝送可能である。
【0050】
本発明による装置と共に動作するシステムには、既に前述した信号評価部を備えた多重の無線受信ステーションが所属する。このシステム内部では、当該装置と受信ステーションの間でワイヤコネクションが必要とされない。さらに当該装置自体は外部からの電気エネルギの供給を、自身でのバッテリの有無にかかわらず必要としない。しかしながら特別なケースでは、本発明によってもたらされる装置が充電可能なバッテリを含む。しかしながら(外部からのエネルギ供給なしで)本発明によって生成される、ここでは所定の低周波の電気的エネルギはタイムシーケンス中に常に再充電される。それによって得られるこの装置の自律は本発明の完全な使用に基づいている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化された高周波信号の生成のための装置において、
変換器(10)を有し、該変換器(10)は、プロセスまたは装置周辺から得られる非電気的な一次エネルギ(P)を低周波の電気エネルギに変換し、
低周波の電気エネルギを高周波の電気エネルギに変換するための、非線形特性を備えた構成要素(11)を有しており、
高周波の電気エネルギから符号化された信号を生成するための符号化装置(23)を有していることを特徴とする、符号化された高周波信号生成のための装置。
【請求項2】
前記構成要素(11)と符号化装置(23)の間に、高周波の電気エネルギから狭帯域信号を選択するためのフィルタ(12)が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
符号化装置(12,23)は、少なくとも周辺パラメータに対して感応し、符号化された信号にこの周辺パラメータの種別および/またはサイズに関する情報が含まれている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記変換器(10)は、機械的な一次エネルギ(P)を電気エネルギに変換するように構成されている、請求項1〜3いずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記変換器(10)は、圧電素子として構成されるか、または例えばマグネットと電気コイルを備えた誘導装置として構成されるか、静電的電荷の生成のための装置として構成される、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記変換器(10)は、電気エネルギ中に時間的または位置的グラジエントを有する、熱的な一次エネルギ(P)の変換のために、構成されている、請求項1〜3いずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記変換器(10)は、熱電素子(101)としてまたは熱電素子装置として構成されている、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記変換器(10)は、IR、可視光、またはUVに対するビーム感応形構成要素として構成されている、請求項1〜3いずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記非線形特性を備えた構成要素(11)として、放電要素(13,14)が設けられている、請求項1〜8いずれか1項記載の装置。
【請求項10】
前記放電要素(13,14)として、スパーク区間またはガス放電管が設けられている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記非線形特性を備えた構成要素(11)として、半導体構成素子が設けられており、該半導体構成素子は限界電圧のもとで迅速な抵抗変化を示す、請求項1〜8いずれか1項記載の装置。
【請求項12】
前記構成要素(11)として、逆降伏において動作するダイオード、バラクタダイオード、アバランシェ半導体素子またはサイリスタが設けられている、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記非線形特性を備えた構成要素(11)として、リレーが設けられている、請求項1〜8いずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記リレーは、シリコンマイクロリレーまたは圧電リードを備えたリレーとして構成されている、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記フィルタ(12)として、および/または符号化装置として、電気音響変換器(110)が設けられている、請求項1〜14いずれか1項記載の装置。
【請求項16】
前記電気音響変換器は、SW装置(110)として、またはせん断波ないし表面近傍波と共に動作する装置として構成されている、請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記SW装置(110)は、共振装置として、または遅延線として、あるいは分散もしくはタッピングされた遅延線として構成されている、請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記符号化装置(12)は、符号化された信号の障害のない伝送のために、パルス圧縮を実施するように構成されている、請求項1〜17いずれか1項記載の装置。
【請求項19】
前記フィルタ(12)として、誘電フィルタ、メカニカルフィルタ、セラミックフィルタ、同軸セラミックフィルタ、バルクオシレータ、またはLCフィルタが設けられている、請求項1〜15いずれか1項記載の装置。
【請求項20】
前記装置は、符号化された信号の送信と、受信装置の制御/トリガのためにアンテナ(24)に結合されている、請求項1〜19いずれか1項記載の装置。
【請求項21】
符号化された高周波無線信号の生成のための方法において、
プロセスまたは装置周辺から得られる非電気的一次エネルギ(P)を、摩擦効果、圧電効果、ピロ電気効果、熱電効果、光電効果、光起電力効果、動的電気効果などを用いて、低周波の電気エネルギに変換し、
前記低周波の電気エネルギを非線形特性を備えた構成要素(11)を用いて高周波の電気エネルギに変換し、
場合によって広帯域の高周波エネルギから狭帯域の高周波信号のフィルタリングを行い、
前記狭帯域の高周波信号に対してコーディングを与えることを特徴とする方法。
【請求項22】
少なくとも1つの周辺パラメータに感応する符号化装置(23)を適用し、該符号化装置によって周辺パラメータの種別またはサイズに依存して狭帯域高周波信号の符号化が形成される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記周辺パラメータとして、応力、圧力、温度、ビーム、跳躍的インピーダンス変化、あるいはガス、液体、蒸気、化学物質、生体などの種別または濃度などを符号化装置に作用させ、この場合周辺パラメータに依存して狭帯域高周波信号の符号化が形成される、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
スイッチとして、無線に応答可能な電気装置および/または無線によってスイッチング可能な電気装置のためのスイッチを用いる、請求項1〜20に記載の装置に対する適用。
【請求項25】
送信器毎に特定化され符号化された信号を監視装置に無線伝送させる、請求項1〜20に記載の装置に対する適用。
【請求項26】
ワイヤレスデータ伝送機能を備え付加的な給電なしで活動する、周辺パラメータのためのセンサを用いる、請求項1〜20に記載の装置に対する適用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公開番号】特開2010−287244(P2010−287244A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163104(P2010−163104)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【分割の表示】特願平10−535235の分割
【原出願日】平成10年2月12日(1998.2.12)
【出願人】(502425145)エノーシャン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】