説明

第四級アンモニウム化合物、その製造法及びそれを含む現像液組成物

【課題】 強塩基性の第四級アンモニウム化合物、その製造法、及びそれを使用した現像液を提供する。
【解決手段】 (CHNCHCHN(CH・(OH)で示される第4級アンモニウム化合物、この化合物はハロゲン化メチル、硫酸ジメチル又は炭酸ジメチル並びにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとを反応させ、強塩基で処理することで製造でき、この化合物を含む水溶液をフォトレジストの現像液として使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第四級アンモニウム化合物、その製造法及びそれを含むフォトレジストの現像液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやフラットパネルディスプレイの製造工程では、微細加工するために、フォトレジストを使用する。フォトレジストは、マスクをとおして所定のパターンに露光した後、アルカリ系現像液で不要な部分を溶解除去される。この現像液として、金属イオンを忌避する半導体デバイス、フラットパネルディスプレイの製造工程では、金属イオンを含まない有機系塩基として、広く水酸化テトラメチルアンモニウム(以下TMAH)水溶液が使用されている(例えば特許文献1,2参照)。TMAHは塩基性が強く、安定であり、工業的に入手が容易である優れた化合物ではあるが、近年、その毒性ため、代替物質が求められている。
【0003】
一方、有機系塩基としては、種々の化合物が提案されている。例えば、トリメチルアダマンチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、(2−ジメチルアミノエチル)エチルジメチルアンモニウムなどが挙げられる(例えば特許文献3参照)。しかし、これらの第四級アンモニウム塩は塩基性が弱いため、フォトレジストの現像液と使用するには適さず、主にゼオライト製造、ポリウレタン製造などに使用されている。
【0004】
以上のように従来知られている化合物は、いずれも十分なものとは言えず、工業的な実用化を図るために更なる検討が要望されていた。すなわち、塩基性の高い第四級アンモニウム化合物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−11458号公報
【特許文献2】特開平5−142787号公報
【特許文献3】特開2005−145924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、強塩基性の第四級アンモニウム化合物、その製造方法及びそれを使用した現像液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、第四級アンモニウム化合物について鋭意検討した結果、(CHNCHCHN(CH・(OH)で表される化合物が、強塩基性を示し、上記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの化合物、その製造法、及びそれを含む現像液組成物に関するものである。
[1](CHNCHCHN(CH・(OH)で示される第4級アンモニウム化合物。
[2]ハロゲン化メチル、硫酸ジメチル又は炭酸ジメチル並びにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとを反応させ、強塩基で処理することを特徴とする(CHNCHCHN(CH・(OH)の製造法。
[3]ハロゲン化メチルが臭化メチル又は沃化メチルである上記[2]の製造法。
[4]強塩基がアルカリ金属水酸化物、イオン交換樹脂から選ばれる少なくとも一種である上記[2]又は[3]のいずれかに記載の製造法。
[5]上記[1]の化合物及び水を含んでなるフォトレジスト現像液用組成物。
[6]上記[1]の化合物の濃度が、0.5重量%〜5重量%である上記[5]に記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以下に示す効果を奏する。
本発明の化合物は、工業的に入手可能な原料から容易に製造することが可能で、強塩基性を発現することができる。しかも、フォトレジストを安全に効率的に現像することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明の化合物は、エチレンジアミンをメチル化し、第四級アンモニム水酸化物にした化合物、すなわち(CHNCHCHN(CH・(OH)で示される第四級アンモニウム化合物である(以下EDA四級塩と称する)。
【0012】
具体的には下記構造式である。
【0013】
【化1】

【0014】
本発明の化合物は、水に溶解すると強塩基性を示す常温で固体の化合物である。EDA四級塩の製造方法としては、例えばハロゲン化メチル、硫酸ジメチル又は炭酸ジメチル並びにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとを反応させ、強塩基で処理することにより製造できる。用いるハロゲン化メチルとしては、例えば臭化メチル、沃化メチル等が挙げられ、これらのいずれも使用することができる。
【0015】
ハロゲン化メチル、硫酸ジメチル又は炭酸ジメチルを使用してメチル化すると、生成した第四級アンモニウム塩のアニオンが、臭化物イオン、沃化物イオン、メチル硫酸イオン、硫酸イオン、メチル炭酸イオン、炭酸イオンになっているため、目的とする水酸化物イオンにするには、強塩基でイオン交換しなければならない。強塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
【0016】
イオン交換の方法も一般に知られている方法を使用することができ、例えば電気分解法、金属水酸化物で処理する方法、イオン交換樹脂で処理する方法を用いることができる。いずれの方法でもEDA四級塩を得ることができ、その中でも特殊な設備を必要としない、金属水酸化物で処理する方法、イオン交換樹脂で処理する方法が好ましい。
【0017】
イオン交換樹脂としては塩基性イオン交換樹脂を使用することができ、特に強塩基性イオン交換樹脂が好ましい。強塩基性イオン交換樹脂としては工業的に流通しているものを使用することができ、イオン形としてはOH形のものが使用できる。
【0018】
EDA四級塩は、水を含んでなる組成物とすると、広く使用されているTMAHと同様、フォトレジストの現像液として使用することができる。現像液として使用するのに必要なEDA四級塩の濃度は、現像時間及びフォトレジストの膨潤の観点から0.5〜5重量%であることが好ましい。
【0019】
本発明のフォトレジスト現像液組成物には、界面活性剤、有機溶媒、キレート剤などを適宜添加してもよい。また、他の第四級アンモニウム塩、例えばTMAH,コリン、テトラエチルアンモニウム水酸化物などを添加することもできる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0021】
実施例1 EDA四級塩の合成
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン1g、沃化メチル2.5gをテトラヒドロフラン5gに加え、室温で1時間撹拌した後、50度で1時間撹拌した。析出したEDA四級塩の沃化物にエタノール50gを加え、さらに水酸化ナトリウムを0.68g添加した。析出した沃化ナトリウムを除き、水を加えた後エタノールを減圧で留去し、EDA四級塩1.4gを含有する水溶液を得た。
【0022】
EDA四級塩のH−NMR(DO) δ 2.6ppm(s,4H,CH),3.2ppm(s,18H,CH)。
【0023】
実施例2 EDA四級塩の合成
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン1g、臭化メチル1.7gをテトラヒドロフラン5gに加え、室温で1時間撹拌した後、1時間加熱還流した。析出したEDA四級塩の臭化物にエタノール50gを加え、さらに水酸化カリウムを0.96g添加した。析出した臭化カリウムを除き、水を加えた後エタノールを減圧で留去し、EDA四級塩1.1gを含有する水溶液を得た。
【0024】
実施例3 EDA四級塩の合成
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン1g、硫酸ジメチル2.2gをテトラヒドロフラン5gに加え、室温で1時間撹拌した後、50度で1時間撹拌した。析出したEDA四級塩の硫酸塩にエタノール50gを加え、さらに水酸化ナトリウムを0.68g添加した。析出した硫酸ナトリウムを除き、水を加えた後エタノールを減圧で留去し、EDA四級塩1.4gを含有する水溶液を得た。
【0025】
実施例4 EDA四級塩の合成
N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン1g、炭酸ジメチル20gを耐圧ガラス管に入れ、80度で3時間加熱した。減圧で溶媒を留去した後、固体状になったEDA四級塩の炭酸塩を水に溶解した。この水溶液に強塩基性イオン交換樹脂(三菱化学(株)製、ダイヤイオンSA10A(OH形))を添加し、室温で8時間撹拌した。イオン交換樹脂を除き、EDA四級塩の水溶液を得た。
【0026】
実施例5 現像液の評価
実施例1で合成したEDA四級塩を水で希釈し、5%EDA四級塩水溶液とした。
【0027】
ノボラック樹脂系フォトレジストをシリコンウエハ上に塗布し、乾燥させて、厚さ2.2μmのフォトレジスト層にした。これを100℃に加熱し、マスク基板をとおして露光した。
【0028】
この露光フォトレジスト膜を前述の5%EDA四級塩水溶液に室温で2分浸漬し、現像した。この現像処理の後、純水で2分間洗浄し、SEMで基板を観察し、レジストパターンが形成されているのを確認した。
【0029】
実施例6 現像液の評価
実施例5で使用した現像液をさらに水で希釈し、0.5%EDA四級塩水溶液とした。現像時間を10分とした以外は実施例5と同じ方法でフォトレジストを現像したところ、レジストパターンが形成されているのを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(CHNCHCHN(CH・(OH)で示されることを特徴とする第4級アンモニウム化合物。
【請求項2】
ハロゲン化メチル、硫酸ジメチル又は炭酸ジメチル並びにN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンとを反応させ、強塩基で処理することを特徴とする請求項1に記載の化合物の製造法。
【請求項3】
ハロゲン化メチルが臭化メチル又は沃化メチルであることを特徴とする請求項2に記載の製造法。
【請求項4】
強塩基がアルカリ金属水酸化物、イオン交換樹脂から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2又は3に記載の製造法。
【請求項5】
請求項1の化合物及び水を含んでなることを特徴とするフォトレジスト現像液用組成物。
【請求項6】
請求項1の化合物の濃度が、0.5重量%〜5重量%であることを特徴とする請求項5に記載の組成物。

【公開番号】特開2012−208325(P2012−208325A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74064(P2011−74064)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】