説明

筆跡入力システム

【課題】電子ペンが内蔵する電池の消耗が早く、電子ペンと本体の間で、簡単で雑音等の影響が少なく、消費電力の少ない通信方法を提供する。
【解決手段】電子ペンに設けられたペンスイッチと1個以上設られているファンクションスイッチのON、OFF状態毎に赤外線信号の時間間隔を予め決めた信号表に基づいて本体へ赤外線信号を発信し、本体では電子ペンから発信された赤外線信号の発信周期を、本体に格納された信号表と照合し、電子ペンの使用状態に応じた赤外線信号の受信を行うことを特徴とする筆跡入力システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも、位置座標を検出するための超音波信号を発信する1個以上の超音波発信素子と、発光信号を発信する赤外線発信素子と、筆記状態であることを検知するペンスイッチと1個以上のファンクションキー(1個以上のファンクションキーの役割の一例を示すと、PCに接続して使用するマウスの右ボタンと左ボタンの役割、または筆記状態とマウス状態の切替とマウスの左ボタン、キーボードを使用した時のEnterキーの役割等の組合せなど。)を具備する電子ペンを設け、筆記時または浮遊筆記時(浮遊筆記時とは、筆記面上での筆記後、電子ペンの先端が筆記面に触れないで、予め定められた筆記入力範囲を移動している状態であり、前記状態でファンクションキーが押されている状態も含む。主に、筆記面上での電子ペンの移動の確認や、LCD上でカーソル機能等を実行して、電子ペンを移動させている状態。)に前記電子ペンから発せられる赤外線信号を受信する赤外線受信素子と、前記超音波信号を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信素子を具備し、前記赤外線信号と、前記超音波信号の到達時間差から前記電子ペンの筆記時および浮遊筆記時での位置座標を検出する本体とを有する筆跡入力システムにおいて、その赤外線信号間(たとえば電子ペンが発光する赤外線の時間間隔が、ペンスイッチを押している筆記状態の場合は10ミリ秒間隔、ファンクションキーが押されている場合は20ミリ秒間隔というように違う赤外線信号発光間隔にすることにより、本体に電子ペンの状態を連絡する。)の時間間隔からペンスイッチおよび1個以上設けられているファンクションキーのオン・オフ情報を得ることができる機能を持つ筆跡入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線もしくは電磁波と超音波を発信する回路とペン先が筆記されていることを検知できるセンサを備えた電子ペンと、電子ペンから発信される赤外線信号を受信する受信素子と、超音波信号を受信する複数の受信素子を組み込んだ本体を有する手書き筆跡入力システムが開発されている。この筆跡入力システムは、電子ペンで筆記すると本体が、電子ペンから発信された超音波信号と赤外線信号とを複数の受信素子により受信し、電子ペンの位置座標を計測し、位置座標とペン先のオン−オフ状態を合わせて筆跡データとして検出する。筆跡データを連続的に検出することにより、書いた文字や図形等を手書き筆跡データとして認識する筆跡入力システムが知られている。
【0003】
超音波と赤外線を利用する座標入力システムは、座標検出以外の機能(PCに接続されているようなマウスを使用して実現する機能や、アプリケーション機能)を持たなかったが、最近、上記したマウス機能やその他のアプリケーション機能を持つものが市場に現れている。前記したマウス機能やその他のアプリケーション機能(座標検出以外の機能)は、電子ペンから本体側への情報伝達を行う際に、複雑な手段(赤外線信号を超音波の発信開始の信号以外のタイミングでも複数回赤外線信号を発信することにより、その時間間隔や繰返しの回数や発光時間または、モールス信号やアスキーコード等の手段を用いることにより情報を本体側に通信していた。)を使用するため、電子ペン側の電力消費が多く、頻繁な電池交換または、大型の電池を使用することにより、電子ペンの外形が大型化してしまっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−310598号 超音波によるペン入力時に、ペン先の筆圧情報とペン情報を伝達するのに赤外線を使用している。情報の伝達方法は、赤外線のオン・オフによるビット列によるものである。
【特許文献2】特開2004−302761号 超音波によるペン入力時に、ペン先の筆圧情報とペン情報を伝達するのに赤外線を使用している。情報の伝達方法は、ペンの状態が変化したときのみ赤外線を変調し、それ以外は、同期に必要な最低限の赤外線を送信するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超音波を利用した座標入力装置おいて、座標検出情報以外の情報を本体へ情報伝達するには、ケーブルを使用したシリアル通信や、光や電波による赤外線発信素子もしくは電波発信素子を利用したシリアル通信により行っていた。具体的には、超音波の発信タイミングを本体へ伝達する赤外線発信素子による多数回の発光を行い、ビット対応やコードによる複雑な通信を行っていた。このため、電子ペンが内蔵する電池の消耗が早く、電子ペンと本体の間で、簡単で雑音等の影響が少なく、消費電力の少ない通信方法を確立することが大きな課題となっていた。
【0006】
本発明の目的は、上記課題を解決し、特別な部品を設けることなく、現状の発光信号の時間間隔を変えるだけで、その時間間隔からペンスイッチおよび1個以上のファンクションキーのオン・オフ情報を得る機能を持つ筆跡入力システムをより省電力で提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも、位置座標を検出するための超音波信号を発信する1個以上の超音波発信素子と、赤外線信号を発信する赤外線発信素子と、筆記状態であることを検知するセンサであるペンスイッチと1個以上のファンクションスイッチを具備し、赤外線信号の発信周期を、前記ペンスイッチと1個以上のファンクションスイッチのON、OFF状態の組み合わせ毎に予め定めた信号表に基づいて発信する電子ペンと、筆記時及び浮遊筆記時に、前記電子ペンから発せられる超音波信号を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信素子と、前記電子ペンから発せられる赤外線信号を受信する赤外線受信素子を具備し、前記超音波信号と赤外線信号の到達時間差から、前記電子ペンの筆記時及び浮遊筆記時の位置座標を検出すると共に、該電子ペンから発信される赤外線信号の時間間隔を判別するために、前記電子ペンに設けられた信号表と同一の信号表を設けた本体とからなる筆跡入力システムであり、電子ペンに設けられたペンスイッチと1個以上設けられているファンクションスイッチのON、OFF状態毎に赤外線信号の時間間隔を予め決めた信号表に基づいて本体へ赤外線信号を発信し、本体では電子ペンから発信された赤外線信号の発信周期を、本体に格納された信号表と照合し、電子ペンの使用状態に応じた赤外線信号の受信を行う筆跡入力システムを提案するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、電子ペンから1回の赤外線発光信号と超音波発信信号を送り、電子ペンの位置座表測定を実施する。繰返し実行することで連続的に位置座標データを得る。また前記した赤外線発光信号と超音波発信信号の発信時間間隔からペンスイッチおよび1個以上のファンクションキーのオン・オフ情報(ペンスイッチおよび1個以上のファンクションキーのオン・オフ情報の他にも赤外線発信信号と超音波発信信号の発信時間間隔から、ペン先の筆圧情報や筆記具のペン先のカラー情報、ペン先の太さ情報や、筆等のペン先の変化情報、筆記部に触れている人間の体温情報や握り圧情報や濡れ具合情報、ペーハー情報等の通信が考えられる。)等を得ることができる。
【0009】
本体側で、電子ペンから発光される赤外線信号の時間間隔の測定が増加するだけで、部品の追加もない。また浮遊筆記時には電子ペンの発光信号の時間間隔が長くなるので消費電力を大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施例の手書き筆跡入力システム構成図。
【図2】本実施例の電子ペン構成図。
【図3】本実施例の電子ペンブロック図。
【図4】本実施例の本体構成図。
【図5】本実施例の本体ブロック図。
【図6】本実施例の信号表。
【図7】本実施例の赤外線信号タイミング図。
【図8】本実施例の超音波信号・赤外線信号タイミング図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、超音波と赤外線を利用する座標検出装置に適用される。通常、超音波は、電子ペンから超音波受信器の距離が遠くなるに従って、減衰する。超音波による筆記時の位置座表検出は通常100〜50ppsで10〜20msecごとである。一方、超音波の速度は330m/secであるので、例えば0.4m四方の座標検出装置の場合、超音波受信器と電子ペンの最大検出距離は0.4m×1.41=0.57m程度で、時間にして0.57m÷330m/sec=1.8msecである。残りの八〜九割以上の時間は超音波を利用する座標検出には使用していない。上記の時間間隔で位置座標を検出することにより通常の文字等の筆記時においては1mm以下の分解能を得ることができる。また、長い直線やデッサン時の長い曲線を高速で書くときにも十分になめらかなカーブを再現できる。しかし、浮遊筆記時にはこのような細かい位置座標は必要としないばかりか邪魔である。人が空間にペンを停止維持することは困難であり、モーションも大きくなりがちである。この必要とされない状態の位置座標検出回数を少なくすることにより測定する時間間隔を変えることができる。またペンスイッチおよび1個以上のファンクションキーのオン・オフ情報の変化は、スイッチのチャッタリング等の問題を避けるために20〜40msec以上の時間が経過してから変更される。そのため、それぞれの情報1〜5(図6を参照)は、最低でも複数回連続して送信される。さらに、全てのスイッチがオフになってもペンの位置情報を継続して本体側に通報するために1分間、情報4または情報5を送信し続ける。これは、いずれかのスイッチが押されれば、再度繰返す。1分間以上、全てのスイッチがオフであれば、省エネのために送信は中止される。本体側ではその測定時間間隔の変化から図6の信号表に対応したペンスイッチとファンクションキーのオン・オフ情報等を得る。
【実施例】
【0012】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。図1〜8は、装置図面が煩雑にならないよう単純な構成を模式的に表現した物である。本発明は、以下の実施例に限定される物ではなく、本発明の技術範囲において、種々の変形例を含むものである。また、各実施例において、同じ構成については同じ参照符号を付けた。
【0013】
図1に、本発明の筆跡入力システム構成図を示す。電子ペン4はペンスイッチ7、第1ファンクションキー8、第2ファンクションキー9を持ち、どれかが押されると赤外線6が電子ペン4から発信され本体1に受信される。同時に超音波5が電子ペン4から発信され距離に比例した時間後、本体1に受信される。その後、ペンスイッチ7、第1ファンクションキー8、第2ファンクションキー9のオン・オフ状態に対応する情報1〜情報5の時間経過後(図7参照)、再度赤外線6が電子ペン4から発信され、本体1に受信される。それらの情報は、USBケーブル2を経由して本体1と接続されたパーソナルコンピュータ3に連絡される。
【0014】
図2に、本発明の電子ペン4の構成図を示す。電子ペン4は先端に筆記状態をセンスするペンスイッチ7、電子ペン4は前部横に第1ファンクションキー8、第2ファンクションキー9を持つ。電子ペン4は、電池10から電力を供給され、回路部11で制御される。赤外線は、赤外線発信素子12で発信され、超音波は、超音波発信素子13から発信される。
【0015】
図3に、本発明の電子ペンブロック図を示す。ペンスイッチ7は、電子ペン4の筆記時の検出に使用し、第1ファンクションキー8、第2ファンクションキー9は、マウスモードの浮遊筆記時の検出に使用する。第1ファンクションキー8は、マウスモードへの切替に使用する。第2ファンクションキー9は、マウスモードの左ボタンに使用する。第1ファンクションキー8、第2ファンクションキー9の情報は個別にマイクロコンピュータ14に連絡される。このマウスモードの対応は、ユーザが使用しやすいように、第1ファンクションキー8と、第2ファンクションキー9の役割を逆にして使用しても良いように、パーソナルコンピュータ3にはファンクションキーのオン・オフ情報として連絡する。電池10(図2参照)はマイクロコンピュータ14経由で他のブロックに電源を供給する。
【0016】
電池10の電圧は電池電圧検出回路17で監視され、規定された電圧以下になるとマイクロコンピュータ14に警報を出す。赤外線発信回路15は、マイクロコンピュータ14からの指示で赤外線発信素子12を発光させる。超音波発信回路16は、マイクロコンピュータ14からの指示で超音波発振素子13を振動させ、超音波を出力させる。
【0017】
電子ペン4は、ペンスイッチ7、第1ファンクションキー8、第2ファンクションキー9が一つ以上オンであれば、図6の信号表に記載されている情報1〜5を選択し、これを図7に示した赤外線信号タイミング図(送信側はペン内部のCPU、受信側は本体のCPU内に格納されている。)に従い発信する。
【0018】
図4に、本発明の本体構成図を示す。本体1は、赤外線受信素子14を1つと、超音波受信素子15を2つ持ち、USBケーブル2で図1に図示したパーソナルコンピュータ3に接続される。
【0019】
図5に、本発明の本体1のブロック図を示す。電子ペン4から発信された赤外線信号は赤外線受信素子14により受信され、その信号は、赤外線受信回路19で増幅フィルタリングされ、パルス信号になり赤外線信号解析回路21に送られる。赤外線信号解析回路21は、その信号を2つの超音波距離測定回路20とマイクロコンピュータ14に送る。
【0020】
電子ペン4から発信された超音波信号は、空気中を約330m/secで伝搬し、距離に対応した時間遅れで2つの超音波受信素子15に受信され、受信された超音波信号は、2つの超音波受信回路18で増幅フィルタリングされたサイン波形になり、2つの超音波距離測定回路20に送る。これを、図8の超音波信号タイミング図に示す。
【0021】
2つの超音波距離測定回路20は、赤外線信号解析回路21からの信号で時間の計測を開始し、2つの超音波距離測定回路20からの信号で、時間の計測を完了し、2つの超音波到達時間をマイクロコンピュータ14に送る。ここまで、最長1.8msecで完了する。その後、マイクロコンピュータ14は、2つの超音波の飛翔時間から、電子ペンの座標情報を計算する。
【0022】
マイクロコンピュータ14は、赤外線信号解析回路21からの信号と前回の信号との時間間隔を測定し、図7に示した赤外線信号タイミング図から該当する情報1〜5を選択し、図6に示した信号表からペンスイッチ7、第1ファンクションキー8、第2ファンクションキー9のオン・オフ情報を得、座標情報とともにUSB I.F.22経由でパーソナルコンピュータに3に送る。また、バッテリー不十分情報は、図7に示した赤外線信号タイミング図から該当する情報5を選択し、電子ペン4の3種類のスイッチが最低一つ以上オンになった時から始まり、3種類のスイッチが全てオフになったときに1分間の情報通信時間があることを利用して情報5を本体1に送信する。この結果3種類のスイッチが全てオフになった状態では消費電流がおよそ半分に減る。ペンスイッチがオンからオフになり、第1または第2ファンクションキーがオンの場合は、消費電流がおよそ2/3に減る。その結果、全体では20〜25%電池の寿命を延ばすことができた。
【0023】
図7にあるように、情報1は11msec、情報2は17msecと情報1〜5は、素数または、数倍の整数で相互に割れない時間間隔を使用することで赤外線信号が外部からの外乱光ノイズ等により1回または連続して複数回受信できないことが発生しても情報を失わないようにすることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 本体
2 USBケーブル
3 IBM−PC
4 電子ペン
5 超音波
6 赤外線
7 ペンスイッチ
8 ファンクションキー1
9 ファンクションキー2
10 電池
11 回路部
12 赤外線発信素子
13 超音波発信素子
14 赤外線受信素子
15 超音波受信素子
16 マイクロコンピュータ
17 電池電圧検出回路
18 超音波受信回路
19 赤外線受信回路
20 超音波距離測定回路
21 赤外線信号解析回路
22 USB I.F.回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、位置座標を検出するための超音波信号を発信する1個以上の超音波発信素子と、赤外線信号を発信する赤外線発信素子と、筆記状態であることを検知するセンサであるペンスイッチと1個以上のファンクションスイッチを具備し、赤外線信号の発信周期を、前記ペンスイッチと1個以上のファンクションスイッチのON、OFF状態の組み合わせ毎に予め定めた信号表に基づいて発信する電子ペンと、筆記時及び浮遊筆記時に、前記電子ペンから発せられる超音波信号を受信する少なくとも2つ以上の超音波受信素子と、前記電子ペンから発せられる赤外線信号を受信する赤外線受信素子を具備し、前記超音波信号と赤外線信号の到達時間差から、前記電子ペンの筆記時及び浮遊筆記時の位置座標を検出すると共に、該電子ペンから発信される赤外線信号の時間間隔を判別するために、前記電子ペンに設けられた信号表と同一の信号表を設けた本体とからなる筆跡入力システムであり、電子ペンに設けられたペンスイッチと1個以上設けられているファンクションスイッチのON、OFF状態毎に赤外線信号の時間間隔を予め決めた信号表に基づいて本体へ赤外線信号を発信し、本体では電子ペンから発信された赤外線信号の発信周期を、本体に格納された信号表と照合し、電子ペンの使用状態に応じた赤外線信号の受信を行うことを特徴とする筆跡入力システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−159002(P2011−159002A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18538(P2010−18538)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】